JP2827703B2 - シリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定方法及び測定装置 - Google Patents

シリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定方法及び測定装置

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JP2827703B2
JP2827703B2 JP15140792A JP15140792A JP2827703B2 JP 2827703 B2 JP2827703 B2 JP 2827703B2 JP 15140792 A JP15140792 A JP 15140792A JP 15140792 A JP15140792 A JP 15140792A JP 2827703 B2 JP2827703 B2 JP 2827703B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリコン単結晶の格子間
酸素濃度を安定的に、かつ、正確に測定することができ
るシリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定方法及び測定
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、シリコン単結晶の引上げには
チョクラルスキー(CZ)法が採用されており、該方法
ではシリコン溶融体を収容するルツボとして石英製のル
ツボが用いられるため、石英製のルツボからシリコン溶
融体中に酸素が溶解し、それがシリコン単結晶中に取り
込まれることが知られている。シリコン単結晶中に取り
込まれた酸素はシリコン単結晶中において格子間酸素と
して存在したり、酸素原子どうしが集まってクラスター
を形成して析出した状態で存在したりする。
【0003】そして、シリコン単結晶中に存在する酸素
は、ある場合は素子としてのトランジスターの特性不良
を引き起こす欠陥の原因となり、他の場合はゲッター効
果を発現したりウェーハの機械的強度を増大させたりす
るという集積回路製造における重要な効果をもたらすた
め、シリコン単結晶中の格子間酸素濃度(〔Oi〕)を
正確に測定する技術が求められている。特に最近の高集
積化に対応するためには、用いる単結晶Si基板中の
〔Oi〕は0.1ppmaのオーダーあるいは0.01
ppmaのオーダーで精密にコントロールされている必
要があり、このための評価に対応できる高精度な〔O
i〕の測定方法及び測定装置が強く求められている。
【0004】従来は、このようなシリコン単結晶中の格
子間酸素濃度〔Oi〕を測定するために、格子間酸素の
赤外局在振動モードの吸収を利用した方法、すなわち室
温での1106cm-1吸収ピークについて格子間酸素
(Oi)による光吸収係数αoを求め、これに濃度換算
係数kを乗ずることによって格子間酸素濃度を
【0005】
【数1】〔Oi〕=kα0
【0006】として算出する方法が最も基本的な方法と
して知られている。濃度換算係数kは、(社)日本電子
工業振興協会(JEIDA)の報告[T. Iizuka et al., J. E
lectrochem. Soc., 132, 1707 (1985)]によれば、k=
3.03×1017cm-2である。光吸収係数αo は、T.
Iizuka et al.の報告にも示されているように、110
6cm-1 Oi吸収のピーク高さにほぼ比例する量であ
り、より厳密には、試料内多重反射効果によって生ずる
比例関係からのわずかなズレをピーク高さ、試料厚さ等
のパラメータを用いて以下の[数2],[数3]によっ
て補正して求められる量である。つまり、T. Iizuka et
al.の文献に報告される方法(JEIDA法)によって
αo を決定することができる。これによれば、Si結晶
の〔Oi〕測定において、試料内多重反射効果のために
Oi局在振動による正味の赤外光透過率Tは[数2]に
より
【0007】
【数2】
【0008】と表わされる。ここで、f(R,d,
αl ,αo )は下記[数3]で表わされる。
【0009】
【数3】
【0010】上記[数3]において、RはSi表面での
反射率でR=0.30、dは酸素を含有する試料結晶及
び酸素濃度検出下限以下の参照結晶の結晶厚さ、αl
Si結晶格子の振動に基づく光吸収係数でαl =0.8
5cm-1、αo は格子間酸素原子の局在振動に基づく光
吸収係数である。
【0011】正味の透過率Tの測定は次のように行われ
る。先ず、酸素を含有する試料結晶の透過率T
sampleを、参照結晶の透過率Treference で除して得ら
れる値Tsample/Treference のスペクトル、つまり対
比スペクトルを求める。図4にOi吸収波長域での対比
スペクトルが示されているが、図中のOi吸収における
ピーク値Tpeakとベース値Tbaseとの比Tpeak/Tbase
がOi局在振動による正味の透過率Tである(すなわ
ち、T=Tpeak/Tbase)。
【0012】上述のJEIDA法以外に産業上ひろく用
いられている〔Oi〕測定方法として、以下に示す方法
(B法)がある。つまり、上記[数2]は、仮に試料内
多重反射が起こらないとした場合に成立するLambert-Be
er則
【0013】
【数4】
【0014】とは多重反射補正関数f(R,d,αl
αo )のファクター分だけ異なる訳であるが、Lambert-
Beer則に準じた次の[数5]の近似式が成立すると仮定
する方式である。
【0015】
【数5】
【0016】ここで、deff は試料の実効厚さである。
[数5]の近似において、実際の試料厚さdの替わりに
実効厚さdeff を用いるのは、図5に模式的に示したよ
うに、赤外光が結晶内を多重反射するために実効的な光
路長が増加し、実際の厚さdより幾分大きなdeff にな
ると想定するためである。この実効厚さdeff は、例え
ば、図6に示された試料結晶の吸光度スペクトル(A
sample=log[1/Tsample])における738cm
-1でのLO+LAフォノンのピーク高さ(p)に比例す
る量として経験的に決めることができる。つまり、
【0017】
【数6】deff ≒(定数)×(LO+LAフォノンのピ
ーク高さp)
【0018】と想定する。このようにして求められるd
eff とOi振動による正味の透過率Tを用いると、Oi
の実効光吸収係数は[数5]から
【0019】
【数7】
【0020】と決められる。格子間酸素濃度〔Oi〕
は、このαo,eff 及び濃度検量によって決められる実効
的な濃度換算係数keff を使って
【0021】
【数8】〔Oi〕≒keff αo,eff
【0022】と評価される。この測定方式では、[数
6]のように赤外吸収法によって求められる実効厚さd
eff を用いるため、実際の試料厚さdを実測する必要が
なく、従って厚み測定の不要な自動計測が可能であるた
め産業上ひろく用いられている。しかし、この方式が想
定する[数5]は、多重反射補正式[数2]の近似であ
るため、厳密な〔Oi〕評価法ではない。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の方法
によりシリコン単結晶中の格子間酸素濃度の測定を行う
場合、測定中に試料結晶の温度が変化してしまうという
現象が起こる。これは、赤外分光光度計の光源、干渉
計、電気回路等の収納部の雰囲気が赤外光源や電気回路
での発熱によって暖められて30〜40℃もの温度にな
っており、この収納部の雰囲気ガスが赤外光光路の開口
部を通して試料室内へも流入し、その結果、試料室内も
30℃程度の温度に暖められるからである。試料結晶が
通常保管されている測定室の温度は22〜25℃程度で
あるから、測定のために赤外分光光度計の試料室内に設
置された試料結晶は、より温度の高い試料室内の雰囲気
によって暖められ、時間の経過とともに徐々に昇温する
ことになる。しかし、上述のJEIDA法に従った[数
1]による〔Oi〕評価においても、また、上述のB法
に従った[数8]による〔Oi〕評価においても、試料
室内で結晶が昇温することによって生ずる影響、すなわ
ち評価結果の試料温度依存性までは考慮していない。実
際に、JEIDA法及びB法による同一試料結晶の〔O
i〕評価値を、試料温度の関数として調べた結果が図3
の◇印及び□印である。JEIDA法、B法ともに、試
料温度が高くなるほど〔Oi〕評価値が低くなるという
問題があった。特に、B法における温度依存性は著し
く、高精度な〔Oi〕測定には適さない。
【0024】本発明は上記の問題点を解決しようとする
もので、その目的は、上記のようなシリコン単結晶中の
格子間酸素濃度の測定上の撹乱要因を取り除き、安定
的、かつ、正確に格子間酸素濃度測定を行うことができ
るシリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定方法及び測定
装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明の測定方法(請求
項1)は、シリコン単結晶中の格子間酸素の赤外局在振
動モードの吸収を利用した格子間酸素濃度測定におい
て、1106cm−1の格子間酸素の吸収ピークを求
め、この吸収ピークに関する (光吸収係数)×〔1+a×(ピーク半値幅)〕 の値、あるいは (光吸収係数)×〔1+b×(ピーク面積)/(ピーク高さ)〕 の値(ここで、aあるいはbの値は、測定条件や測定装
置に依存し、あらかじめ特定の測定条件及び装置につい
て経験的に決めておくパラメータ)によりシリコン単結
晶中の格子間酸素濃度を測定することを特徴とする。
【0026】本発明の測定装置(請求項2)は、赤外光
の光源と、光源からの光を集光するとともに干渉計に入
射する光のうちその入射角が最適入射孔径より決まる角
度より大きなものを遮断するための入射孔と、半透鏡と
固定鏡と移動鏡を有した干渉計と、試料を取り付けるサ
ンプルステージを有し干渉計からの出射光が入射される
試料室と、試料に入射後、試料特有の特性波数の光が吸
収されて透過又は反射された光を検知するための検知器
とを備えた赤外分光光度計において、前記試料室内にお
けるサンプルステージに、試料を一定温度に維持するた
めの温調手段が設けられており、更に上記の測定方法
(請求項1)に従って〔Oi〕値を算出し表示すること
を特徴とする。
【0027】また、本発明の測定装置(請求項3)は、
赤外光の光源と、光源からの光を集光するとともに干渉
計に入射する光のうちその入射角が最適入射孔径より決
まる角度より大きなものを遮断するための入射孔と、半
透鏡と固定鏡と移動鏡を有した干渉計と、試料を取り付
けるサンプルステージを有し干渉計からの出射光が入射
される試料室と、試料に入射後、試料特有の特性波数の
光が吸収されて透過又は反射された光を検知するための
検知器とを備えた赤外分光光度計において、光源や干渉
計を収納する空間と試料室の空間とが、試料室の仕切板
等の部材によって仕切られているだけでなく、赤外光の
通過する部分も赤外光の透過する光学窓材によって完全
に仕切られており、更に上記の測定方法(請求項1)
従って〔Oi〕値を算出し表示することを特徴とする。
さらに、本発明の測定装置(請求項4)は、上記仕切り
部材を設けた赤外分光光度計(請求項3)において、前
記試料室内におけるサンプルステージに、試料温度を一
定に維持するための温調手段が設けられていることを特
徴とする。
【0028】また更に、本発明の測定装置(請求項5)
は、請求項2,3または4の装置において試料の収納部
と、接触式又は非接触式の試料厚さ自動測定機と、前記
試料室とが、該試料室に対して試料を出し入れするため
の自動搬送機を介して連結されているとともに、コンピ
ュータを備え、該コンピュータは前記試料厚さ自動測定
機、前記自動搬送機、前記赤外分光光度計の各動作、お
よび請求項1に記載の測定方法による格子間酸素濃度の
計算を総括的に制御するものであることを特徴とする。
【0029】〔Oi〕測定を行う際に、先に述べたJE
IDA法やB法を用いると、図3に示した試料温度依存
性が明瞭である。これは、JEIDA法においては[数
1]の換算式〔Oi〕=kαo (kは定数)において、
光吸収係数αo が試料温度依存性をもつことを意味す
る。図3は同一試料に関するものであるから、この事実
を換言すれば、1106cm-1 Oi吸収ピークのピー
ク高さが温度の上昇とともに低くなることを意味する。
【0030】B法においては[数8]の換算式〔Oi〕
≒keff αo,eff (keff は定数)において、αo,eff
≒ln(1/T)/deff が図3に見られるような強い
温度依存性をもつことを意味する。ln(1/T)はピ
ーク高さであり、これはJEIDA法による〔Oi〕評
価値の温度依存性(αo の温度依存性)と同等であるか
ら、B法による〔Oi〕評価値の強い温度依存性(α
o,eff の温度依存性)は、ピーク高さ(ln(1/T) )の温
度依存性に加えてdeff が更なる温度依存性をもってい
ることを意味する。すなわち、[数6]によってdeff
を決めているLO+LAフォノンのピーク高さp(図6
参照)は、実際の試料厚さが同じでも、試料温度の上昇
とともに高くなるのである。
【0031】このような状況下ではJEIDA法、B法
いずれを用いたとしても、特にB法を用いた場合には、
測定値の安定した高精度な測定が困難である。この測定
法上の問題を解決するためには、αo やαo,eff 以外の
量で〔Oi〕と比例関係にあり、なおかつ試料温度に対
する依存性の小さなものを考案することが重要である。
これを考えるために、先ず、αo 以外にOi吸収の強度
を表現する量として(光吸収係数)×(ピーク半値幅)
及び同様な量として(ピーク面積)を考え、これらの量
の試料温度に対する依存性を調べた。ピーク高さ、ピー
ク半値幅、ピーク面積の定義は図7の模式図に示される
通りである。αo は1106cm-1ピークの高さに相当
する光吸収係数であるから、ピーク半値幅をΔで表わす
と、(光吸収係数)×(ピーク半値幅)による〔Oi〕
の換算は
【0032】
【数9】〔Oi〕=k1 αo Δ
【0033】で表わされ、ピーク面積Sによる〔Oi〕
の換算は
【0034】
【数10】〔Oi〕=k2
【0035】と表わされる。[数9],[数10]にお
けるk1 ,k2 は、それぞれの場合について酸素濃度標
準Si単結晶試料を用いて得られる濃度換算係数であ
る。[数9]及び[数10]による〔Oi〕評価値の試
料温度依存性の調査結果が、図3の△印及び+印で示さ
れている。図7においてもわかる通り、(光吸収係数)
×(ピーク半値幅)と(ピーク面積)とはほぼ同等の量
であるから、図3の△印と+印もほとんど同様の挙動を
示している。従って、以後の説明においては、(光吸収
係数)×(ピーク半値幅)に関する取り扱い、つまり
[数9]に関する取り扱いのみとする。
【0036】この段階で、図3において気づくべきこと
は、αo Δの試料温度依存性が、先のJEIDA法(α
o による定量)の場合とは逆に、試料温度の上昇ととも
にわずかづつ上昇傾向にあることである。従って、〔O
i〕と比例関係にあり、しかも試料温度依存性の小さい
量は、αo とαo Δの適切な荷重平均によって実現でき
ることが容易に理解できる。すなわち、次式の荷重平均
【0037】
【数11】〔Oi〕=k3 (αo +aαo Δ)=k3 α
o (1+aΔ)
【0038】において、(ピーク高さ)に相当するαo
と(光吸収係数)×(ピーク半値幅)に相当するαo Δ
の荷重平均の重みパラメータaが適切に選ばれていると
き、[数11]の示す試料温度依存性は極小になるので
ある。濃度換算係数k3 は、酸素濃度標準Si単結晶試
料を測定することによって決定される。実施例で後述す
るように、適切に選ばれた重みパラメータaに対して
[数11]を適用すると、たとえ試料の温度が測定中に
変動しても、〔Oi〕評価値がほとんど変動しない安定
した測定ができることが判明した。
【0039】[数11]の代わりに、(ピーク高さ)に
相当するαo と(ピーク面積)Sの荷重平均を適切な重
みパラメータbに対して適用しても全く同様な結果を得
るが、このとき、[数11]に相当する式は、濃度換算
係数をk4 として
【0040】
【数12】〔Oi〕=k4 αo (1+bS/αo
【0041】である。
【0042】次に、本発明のシリコン単結晶の格子間酸
素濃度の測定装置について説明する。本発明の測定装置
においては、試料温度を一定に維持した状態で格子間酸
素濃度の測定が行えるように、その構造に配慮がなされ
ている。具体的には、 (1)試料室内のサンプルステージに、試料温度を一定
に維持するための温調手段を設けたもの、 (2)試料室とその外部との境界に、適宜の仕切り部材
を設けることで、試料室内の温度変化を防止するように
したもの、 (3)上記温調手段と、仕切り部材とを併設したもの、
が挙げられる。 以下、本発明の測定装置の構造につい
て、更に具体的に説明する。
【0043】サンプルステージに上記温調手段を設けな
い場合、図3に示した一般的な濃度換算方法のいずれに
対しても、試料結晶の温度上昇に伴い測定値が低くなっ
たり、あるいは高くなったりするという明確な傾向を示
す。そこで、本発明の測定装置(上記(1)の場合)に
おいてはサンプルステージに温調手段を設け、サンプル
ステージの温度を一定にすることにより、正確な測定値
を得るものである。
【0044】すなわち、本発明の測定方法では試料結
晶の温度変化により1106cm−1ピークに基づく一
般的な〔Oi〕評価値は図3のように変動するが、[数
11]または[数12]による〔Oi〕評価値は試料温
度にほとんど依存しないことを利用して、正確な格子間
酸素濃度を得ようとするものであるのに対し、本発明に
かかる測定装置の一例では、サンプルステージに温調手
段を設け、サンプルステージひいては試料の温度を一定
にし、試料の温度変化を防止して正確な格子間酸素濃度
を得ようとするものである。
【0045】また、本発明の測定装置(上記(2)の場
合)では、光源、干渉計、電気回路部の収納される部分
が試料室とは空間的に完全に分離されており、光源等の
収納部の温度の高い雰囲気が試料室に流れ込んで試料結
晶の温度上昇が起こらないように設計される。このため
には、光源等の収納部と試料室とは仕切板等で単に仕切
られるだけでなく、赤外光の通路さえも赤外光を透過す
る光学窓材によって仕切られる。このようにすると、た
とえサンプルステージに温調手段を設けなくとも、試料
室内温度は測定室の温度と大きく変わらないため、試料
が試料室内に導入された際の試料温度の変化がほとんど
なく、従ってOi濃度換算において[数11]または
[数12]の試料温度依存性の小さな〔Oi〕評価手法
を併用することによって、充分に正確な格子間酸素濃度
を測定しようとするものである。さらに、上記仕切り部
材を設けるとともに、サンプルステージに温調手段を設
ける(上記(3)の場合)ことによって、格子間酸素濃
度測定の正確さを最大限に高めることができる。
【0046】更にまた本発明の測定装置では、[数1
1]または[数12]における光吸収係数αo の算出に
必要な試料厚さを自動的に測定する機能を有し、これに
加えて、赤外吸収測定、〔Oi〕計算、試料の自動搬送
をコンピュータにより統括的にコントロールして、正確
な〔Oi〕測定を完全自動で行おうとするものである。
【0047】図2に本発明の測定装置の概略の構成を示
す。図2において、1は赤外光の光源であり、一般に、
炭化ケイ素(SiC)を棒状に焼結したグローバ光源が
使用できる。グローバ光源はほぼ黒体放射に近いスペク
トル分布を有しており、ほぼ9000〜100cm-1
波数域で使用可能である。又、棒状のセラミック光源も
ひろく用いられている。
【0048】2は入射孔、3は干渉計である。入射孔2
は光源1からの光を集光するとともに干渉計3に入射す
る光のうち、その入射角が最適入射孔径より決まる角度
より大きなものを遮断するためのものである。干渉計3
は、入射した光を二分する半透鏡31と、その二分され
た各々の光を再び半透鏡31に戻す移動鏡32と、固定
鏡33を有している。移動鏡32は光軸に沿って平行に
移動する鏡で、干渉計3の光路差を変化させる役割を持
っている。34は移動鏡駆動機構であり、図示しないコ
ンピュータ部により制御され、移動鏡を移動させるもの
である。
【0049】4は試料室である。試料室4には試料を取
り付けるためのサンプルステージ41が設けられ、この
サンプルステージ41には温調手段42が設けられてい
る。温調手段42は、例えば所定の温度の媒体が流れる
管をサンプルステージに埋設し、媒体の吸熱あるいは放
熱によりサンプルステージ41を一定の温度に保持する
ようにしたものが用いられる。他の例としては、ペルチ
エ効果により冷却作用をなす素子をサンプルステージに
埋め込み、該素子への電流の量を調節することでサンプ
ルステージ41を一定の温度に保持するようにしたもの
が挙げられる。また他の例としては、温調機能付のヒー
ターをサンプルステージ41に埋め込み、一定の温度に
保持するようにしたものがある。試料室4内のサンプル
ステージ41に取り付けられた試料には干渉計3からの
出射光が入射される。試料に入射後、試料特有の特性波
数の光が吸収されて透過又は反射された光は検知器5に
より検知される。
【0050】また、試料室4を光源や干渉計の収納部か
ら完全に仕切るために、試料室4の仕切板の赤外光通過
部を赤外光の透過する光学窓材43によって完全に仕切
る。これによって、光源や干渉計収納部から暖められた
雰囲気が試料室へ流入することを防止できる。光学窓材
43としてはヨウ化セシウム(CsI)や臭化カリウム
(KBr)を用いることができる。
【0051】また、試料室4は、試料の自動搬送系7に
よって、接触式又は非接触式の自動厚さ測定機6及び試
料結晶収納部8と連結されており、これらの各部分の動
作は分光光度計による赤外吸収測定及び格子間酸素濃度
の計算・データ処理と合わせて、コンピュータによって
統括的に制御され、試料厚さ測定の必要な[数11]又
は[数12]による〔Oi〕計測を完全自動で実行す
る。
【0052】
【作用】本発明のシリコン単結晶の格子間酸素濃度の測
定方法においては、1106cm-1の吸収ピークについ
て[数11]または[数12]によって格子間酸素濃度
を求めるようにしたので、試料結晶温度が測定中に変化
しても、格子間酸素濃度測定値は変動しないようにする
ことができる。
【0053】また、本発明の測定装置においては、サン
プルステージに温調手段を設け、サンプルステージひい
ては試料の温度を一定にすることにより〔Oi〕評価値
の変動をなくすことができる。また、試料室を光源、干
渉計、電気回路を収納する部分から、赤外光光路開孔部
に設置する光学窓材によって完全に仕切ることによって
も、試料結晶の温度変化を抑えることができ、この状態
で[数11]または[数12]に基づく〔Oi〕計算を
行うことによって〔Oi〕評価値の変動をなくすことが
できる。また、これらの測定装置を試料厚さ自動測定機
能及び試料自動搬送システムと組み合わせることによっ
て、[数11]または[数12]による高精度〔Oi〕
評価を、コンピュータ制御によって完全自動で実行する
ことができる。そして、上記測定方法、測定装置のいず
れもシリコン単結晶中の格子間酸素濃度を高精度に測定
することを可能ならしめる。
【0054】
【実施例】次に、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を
説明する。 実施例1 チョクラルスキー法によりシリコン単結晶棒を引き上
げ、得られた単結晶棒をダイヤモンドソーにより切り出
し、ラッピング、ケミカルエッチング、洗浄、鏡面研磨
等を行い、両面鏡面研磨シリコンスラブを得た。この両
面鏡面スラブについて、フーリエ変換型赤外分光光度計
(FT−IR)により、格子間酸素の赤外局在振動モー
ドの吸収が起こる1106cm-1の吸収ピークを測定
し、試料温度と[数11]による〔Oi〕評価値との関
係を調べた。図1に[数11]による〔Oi〕評価値と
試料温度との関係を示す。ここでは[数11]中の荷重
平均の重みパラメータaとして0.015が採用されて
いる。図1から明らかなように、本発明の方法によれ
ば、試料温度が変化しても格子間酸素濃度評価値はほと
んど変化せず、安定して正確な測定値が得られることが
わかった。
【0055】実施例2 実施例1に用いた試料と同一のものを使って、1106
cm-1のOi吸収ピークについて、[数11]及びa=
0.015の重みパラメータを用いて〔Oi〕評価の繰
り返し測定を実施した。このとき、サンプルステージの
温調は行わず、また、図2の光学窓材43の仕切りも設
けなかった。結果を図8の△印で示す。測定次数1回目
のデータは試料が試料室内に挿入された直後の積算時間
1分間のデータである。2回目の測定は、1回目の測定
が終了した後ただちに開始され、積算時間は同じく1分
間である。1回目と2回目の間に試料の出し入れは行わ
れておらず、1回目から2回目にかけて試料温度は徐々
に上昇している。3回目以降も、同様の1分間繰り返し
測定である。[数11]を用いると、試料温度がコント
ロールされていなくても安定した再現性の良い結果が得
られることがわかった。
【0056】実施例3 実施例2と同様に、[数11]による〔Oi〕評価の繰
り返し測定を実施した。このとき、同時にサンプルステ
ージの温調を行い、試料温度を28℃にコントロールし
た。結果を図8の+印で示す。実施例2と同等またはそ
れ以上の優れた測定値の安定性と再現性が得られること
がわかった。
【0057】実施例4 実施例2と同様に、[数11]による〔Oi〕評価の繰
り返し測定を実施した。このとき、サンプルステージの
温調は行わず、図2の光学窓材43の仕切りを設けて、
光源等の収納部からの暖かい雰囲気の流入を防ぎ、試料
室温度を室温と同一の25℃となるようにして繰り返し
測定を行った。結果を図8の○印で示す。実施例2と同
等またはそれ以上の優れた測定値の安定性と再現性が得
られることがわかった。
【0058】比較例1 測定値として1106cm-1の吸収ピークに関するJE
IDA法及びB法による〔Oi〕評価値を採用すること
以外は、実施例1と同様にして、シリコン単結晶中の
〔Oi〕評価値とシリコン単結晶の試料温度との関係を
求めた。その結果を図3の◇印及び□印で示す。図3か
ら明らかなように、試料温度の上昇とともに〔Oi〕評
価値はJEIDA法の場合もB法の場合も低下してゆ
き、正確な測定値を得ることが困難なことがわかった。
とりわけ、B法における試料濃度依存性は著しく、高精
度な測定を行うには大きな問題であることが分かった。
【0059】比較例2 測定値として1106cm-1吸収ピークに関するJEI
DA法及びB法による〔Oi〕評価値を採用すること以
外は、実施例2と同様にして、〔Oi〕評価の繰り返し
測定を実施した。結果を図8の◇印(JEIDA法)及
び□印(B法)で示す。いずれの場合も、繰り返し測定
の次数が上がり、試料が試料室内雰囲気によって暖めら
れるに従って、〔Oi〕評価値の低下を示した。特にB
法においては、3回目までの評価値が大きく変化してゆ
き、正確な測定を行うことは困難であることがわかっ
た。
【0060】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に係るシリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定方法(請
求項1)によれば、試料温度にほとんど影響されずに、
安定的、かつ、正確に格子間酸素濃度を測定することが
できる。また、本発明に係るシリコン単結晶の格子間酸
素濃度の測定装置(請求項2)によれば、測定装置内で
サンプルステージひいては試料の温度を一定にした状態
で測定できるため、試料の温度変化の影響がなく、安定
的、かつ、正確にシリコン単結晶の格子間酸素濃度を測
定することができる。また更に、本発明に係るシリコン
単結晶の格子間酸素濃度の測定装置(請求項3)によれ
ば、光学窓材によって試料室の雰囲気が光源等の収納部
のより高温の雰囲気と完全に分離されるため、試料室内
温度を測定室の温度とほぼ同一にすることができ、従っ
て、測定中の試料温度の変化がほとんどなく、安定的、
かつ、正確にシリコン単結晶中の格子間酸素濃度を測定
することができる。また更に、本発明に係るシリコン単
結晶の格子間酸素濃度の測定装置(請求項4)によれ
ば、試料室内温度を測定室の温度とほぼ同一にすること
ができるとともに、測定装置内でサンプルステージひい
ては試料の温度を一定にした状態で測定できるため、き
わめて安定的、かつ、正確にシリコン単結晶の格子間酸
素濃度を測定することができる。また更に、本発明に係
るシリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定装置(請求項
5)によれば、本発明の方法を実施する際に必要となる
試料の厚み測定を接触式または非接触式の自動厚み測定
機で行い、更に赤外吸収測定、試料の自動搬送、本発明
方法の〔Oi〕濃度計算を統括的にコンピュータで制御
し完全自動測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定方法により得られた酸素濃度評価
値と試料温度との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の測定装置の概略の構成を示す説明図で
ある。
【図3】比較例1における格子間酸素濃度評価値、及び
[数9],[数10]により得られた酸素濃度評価値と
試料温度との関係を示すグラフである。
【図4】格子間酸素による赤外吸収の正味の透過率を定
義するための説明図である。
【図5】試料内多重反射効果を説明するための模式図で
ある。
【図6】従来法であるB法に用いられる試料の実効厚さ
eff を説明する吸光度スペクトル図である。
【図7】吸収ピークのピーク半値幅、ピーク高さ、ピー
ク面積の定義を説明するための模式図である。
【図8】実施例2,3,4及び比較例2における格子間
酸素濃度評価値の繰り返し測定における変化の様子を示
すグラフである。
【符号の説明】
1 光源 2 入射孔 3 干渉計 31 半透鏡 32 移動鏡 33 固定鏡 34 移動鏡駆動機構 4 試料室 41 サンプルステージ 42 温調手段 43 光学窓材 5 検知器 6 自動厚さ測定機 7 自動搬送系 8 試料結晶収納部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹中 卓夫 群馬県安中市磯部2丁目13番1号 信越 半導体株式会社 半導体磯部研究所内 (56)参考文献 特開 平1−195345(JP,A) 特開 昭59−18650(JP,A) 特開 平2−168141(JP,A) 特開 平4−109648(JP,A) 特開 平3−111739(JP,A) 特開 昭61−231438(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 21/00 - 21/01 G01N 21/17 - 21/61

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリコン単結晶中の格子間酸素の赤外局
    在振動モードの吸収を利用した格子間酸素濃度測定にお
    いて、1106cm−1の格子間酸素の吸収ピークを求
    め、この吸収ピークに関する (光吸収係数)×〔1+a×(ピーク半値幅)〕 の値、あるいは (光吸収係数)×〔1+b×(ピーク面積)/(ピーク高さ)〕 の値(ここで、aあるいはbの値は、測定条件や測定装
    置に依存し、あらかじめ特定の測定条件及び装置につい
    て経験的に決めておくパラメータ)によりシリコン単結
    晶中の格子間酸素濃度を測定することを特徴とするシリ
    コン単結晶の格子間酸素濃度の測定方法。
  2. 【請求項2】 赤外光の光源と、光源からの光を集光す
    るとともに干渉計に入射する光のうちその入射角が最適
    入射孔径より決まる角度より大きなものを遮断するため
    の入射孔と、半透鏡と固定鏡と移動鏡を有した干渉計
    と、試料を取り付けるサンプルステージを有し干渉計か
    らの出射光が入射される試料室と、試料に入射後、試料
    特有の特性波数の光が吸収されて透過又は反射された光
    を検知するための検知器とを備えた赤外分光光度計にお
    いて、前記試料室内におけるサンプルステージに、試料
    を一定温度に維持するための温調手段が設けられてお
    り、更に請求項1の方法に従って格子間酸素濃度を求め
    ることを特徴とするシリコン単結晶の格子間酸素濃度の
    測定装置。
  3. 【請求項3】 赤外光の光源と、光源からの光を集光す
    るとともに干渉計に入射する光のうちその入射角が最適
    入射孔径より決まる角度より大きなものを遮断するため
    の入射孔と、半透鏡と固定鏡と移動鏡を有した干渉計
    と、試料を取り付けるサンプルステージを有し干渉計か
    らの出射光が入射される試料室と、試料に入射後、試料
    特有の特性波数の光が吸収されて透過又は反射された光
    を検知するための検知器とを備えた赤外分光光度計にお
    いて、光源や干渉計を収納する空間と試料室の空間と
    が、試料室の仕切板等の部材によって仕切られているだ
    けでなく、赤外光の通過する部分も光学窓材によって完
    全に仕切られており、更に請求項1の方法に従って格子
    間酸素濃度を求めることを特徴とするシリコン単結晶の
    格子間酸素濃度の測定装置。
  4. 【請求項4】 前記赤外分光光度計の試料室内における
    サンプルステージに、試料を一定温度に維持するための
    温調手段が設けられていることを特徴とする請求項3に
    記載のシリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定装置。
  5. 【請求項5】 試料の収納部と、接触式又は非接触式の
    試料厚さ自動測定機と、前記試料室とが、該試料室に対
    して試料を出し入れするための自動搬送機を介して連結
    されているとともに、コンピュータを備え、該コンピュ
    ータは前記試料厚さ自動測定機、前記自動搬送機、前記
    赤外分光光度計の各動作、および請求項1に記載の測定
    方法による格子間酸素濃度の計算を総括的に制御するも
    のであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一
    つの項に記載のシリコン単結晶の格子間酸素濃度の測定
    装置。
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