JP2825800B2 - 中央部に略球状の膨出部を有する筒状部品の鍛造・圧造成形方法 - Google Patents

中央部に略球状の膨出部を有する筒状部品の鍛造・圧造成形方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、中央部に略球状の膨出
部を有する筒状部品を、円柱状のブランクから鍛造・圧
造成形する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車等に於て、クッションゴム
の支持に図1Fに示す如く、中央部に略球状の膨出部(1
7)を有する筒状部品(1)が用いられている。出願人は以
前、上記筒状部品(1)を鍛造・圧造によって、材料部止
りを向上し、能率的に製造できる製造方法を提案した
(特公平8−18101号)。
【0003】上記筒状部品の製法は、中実ブランクに打
込みピンを該ブランクの反対側端面近くまで深く打込ん
で、底付き円筒部材を形成し、次工程で、該底付き円筒
部材の底部を打抜いて両端開口の筒部材を形成し、次工
程で 該筒部材の中央部を少し膨らませ、最終工程によ
って筒部材の中央を球面状に膨らませるのである。
【0004】
【解決すべき課題】上記製法により得られた筒状部品
(1)は、両端側はパンチの打込みにより、中空に形成さ
れただけで、外径は円柱状ブランクの外径と殆ど変わり
なく、加工度が小さい。そのため、筒状部品(1)の両端
側筒部が変形し易い問題があった。本発明は、鍛造・圧
造成形に特有の鍛流線によって強度的に優れ、耐久性の
高い筒状部品の製造方法を明らかにするものである。
【0005】
【課題を解決する手段】本発明の筒状部品の鍛造・圧造
成形方法は、中実ブランク(1b)に打込みピン(6)を該ブ
ランクの反対側端面近くまで深く打込んで、底付き円筒
部材(1c)を形成し、次工程で、該底付き円筒部材(1c)の
底部を打抜いて両端開口の筒部材(1d)を形成し、次工程
で 該筒部材(1d)の両端側を径小に絞り、最終工程によ
って筒部材の中央を球面状に膨らませる。
【0006】
【作用及び効果】中実ブランク(1b)に打込みピン(6)を
該ブランクの反対側端面近くまで深く打込んで、底付き
円筒部材(1c)を形成するため、底部(14)の外周と筒体の
繋がり部近傍に生じる加工硬化は、円筒部材(1c)の端部
側で生じる。従って、後工程で球形に膨らませる円筒部
材の中央部の加工硬化は小さく且つ均一化しており、無
理なく膨らませることができる。
【0007】又、次工程で該筒部材(1d)の両端側を径小
に絞るため、この部分の加工度が一層大きくなり、加工
硬化を起こして変形し難くなる。更に、筒状部品(1)
は、鍛造・圧造により材料の流れは途切れておらず、即
ち、鍛造・圧造成形に特有の鍛流線によって、強度的に
優れ、耐久性を向上できる。
【0008】
【実施例】図1A〜Fは、原材料の円柱状のブランク
(図示せず)から筒状部品(1)に至る6段階のブランクの
塑性変形を示しており、各ブランクの右側半分は断面を
示している。原材料の円柱状ブランクは、外径約24m
m、長さ約25mmである。図1Fの完成筒状部品(1)
は、中央部に略球状の膨出部(17)を膨出し、両端が円筒
体(16)(16)である。実施例の筒状部品(1)は全長約44
mm、円筒体(16)の外形は約22mm、略球状の膨出部(17)
の外径は、約26mm、肉厚は、全体に約4mmである。
【0009】ブランクを筒状部品に成形する鍛造・圧造
該工程は、図2、図3に示す如く、1番から6番の固定
ダイス(31)(32)(33)(34)(35)(36)の型孔(41)(42)(43)(4
4)(45)(46)に、1番から4番まではパンチ(51)(52)(53)
(54)を打込み、5番、6番では、夫々パンチ側打込みダ
イス(7)(8)を打ち込んで行なう。各固定ダイス(31)(3
2)(33)(34)(35)(36)は、パーツホーマと称される横型ト
ランスファープレスのダイブロック(図示せず)に、横一
列に等間隔に固定配備される。図2、図3に於て、下部
はダイス側、上部はパンチ側である。図1A〜Fに示す
ブランクの塑性変形工程は、図2、図3a〜fに示す工
程にに対応している。
【0010】図2aに示す第1工程により、1番ダイス
(31)の1番型穴(41)に、1番パンチ(51)によって円柱状
ブランク(1a)を打込み、該パンチ(51)の先端の食込み、
及びノックアウトピン(67)の食込みによって、ブランク
の両端面に浅い凹み(13)を形成すると共に、ブランクの
型穴(41)の奥側先端外周縁に丸み(11)を形成する。第1
工程による塑性変形により、ブランク(1a)は外径が0.
2mm大きくなり、全長は0.4mm低くなる。
【0011】図2bに示す第2工程により、図2aのブ
ランク(1a)を反転して、2番パンチ(52)によって、2番
ダイス(32)の型穴(42)に打込み、ブランクの型穴(42)の
奥側先端外周縁に丸み(12)を形成する。これによって、
ブランクの両端面外周縁に丸み(11)(12)が形成されたこ
とになる。第2工程を終えたブランク(1b)の直径及び全
長は、第1工程を終えたブランク(1a)のそれと殆ど変化
はない。
【0012】図2cに示す第3工程により、図2bのブ
ランク(1b)を再び反転して、3番パンチ(53)によって、
3番ダイス(33)の型穴(43)に打込み、該型穴(43)中央に
待機する打込みピン(6)をブランクのパンチ側端面に接
近する程度に深く食込ませて、底付き円筒部材(1c)を形
成する。底付き円筒部材(1c)の底部(14)は、該円筒部材
(1c)のパンチ側先端近傍に位置し、後記する略球状の膨
出部(17)の形成領域から外れている。底付き円筒部材(1
c)の外径は約24mm、全長は約40mmである。
【0013】図3dに示す第4工程により、図2cの底
付き円筒部材(1c)を、筒状の4番パンチ(54)によって、
4番ダイス(34)の型穴(44)に打込み、4番ダイス(34)の
型穴(44)中央に待機する孔抜きピン(61)によって底付き
円筒部材の底部(14)を打ち抜き、両端開口の筒部材(1d)
を形成する。底部(14)であった抜きカス(19)は、筒状4
番パンチ(54)の内孔(55)を通って外部に排出される。筒
部材(1d)の外径は24.3mm、肉厚は約4mmである。
【0014】図3eに示す第5工程により、図3dの両
端開口筒部材(1d)を、5番のパンチ側ダイス(7)にて、
5番ダイス(35)の型穴(45)に打込む。5番ダイス(35)の
型穴(45)は、奥側の丸穴(45a)及び該丸穴(45a)に連続
し、少し拡大して開口する拡大穴(45b)からなり、型穴
(45)の中央にはピン(63)が臨出しており、ピン(65)と型
穴(45)との間の環状空間の奥側丸穴(45a)の径は、約2
1.7mm、拡大穴(45b)の径は24.4mmである。丸穴(45
a)と拡大穴(45b)の境界部は、テーパ面(45c)となってい
る。ピン(65)の先端の直径は13.5mmである。
【0015】5番のパンチ側ダイス(7)にも、上記5番
ダイス(35)と同様にして、丸穴(75a)と拡大穴(75b)から
なる型穴(75)及び型穴(75)に臨出するピン(74)が設けら
れており、5番のパンチ側ダイス(7)によって、5番ダ
イス(35)に打込まれた両端開口の筒部材(1d)の両端は、
型穴(45)(75)のピン(63)(74)と丸穴(45a)(75a)との環状
空間に対応して円筒体(16)(16)に絞られ、中央部は、拡
大穴(45a)(75a)に対応して断面台形状を呈する。ピン(6
3)(74)は、筒状ノックアウトピン(64)(73)に嵌まってお
り、該筒状ノックアウトピン(64)(73)の突出しにより、
5番ダイス(35)とパンチ側ダイス(7)から筒部材(1e)を
外す。
【0016】図3fに示す第6工程により、図3eの筒
部材(1e)を、6番のパンチ側ダイス(8)にて、6番ダイ
ス(35)の型穴(46)に打込む。6番ダイス(36)の型穴(46)
は、奥側の丸穴(46a)及び該丸穴(46a)に連続し、半球状
に拡大して開口する球面穴(46b)からなり、型穴(46)の
中央にはピン(65)が臨出しており、ピン(65)と丸穴(46)
との環状空間は、成形すべき筒状部品(1)の円筒体(16)
に対応している。丸穴(46a)の径は、筒状部品(1)の端
部の外径に一致し、球面穴(46b)は、筒状部品(1)の略
球状の膨出部(17)の球面に対応している。
【0017】6番のパンチ側ダイス(8)にも、上記6番
ダイス(36)と同様にして、丸穴(85a)と球面穴(85b)から
なる型穴(85)及び型穴(85)に臨出するピン(84)が設けら
れており、6番のパンチ側ダイス(8)によって、6番ダ
イス(36)に打込まれた予備膨出筒部材(1e)の中央部は、
球面穴(46b)(85b)に対応して球面に膨らむ。ピン(65)(8
4)は、筒状ノックアウトピン(66)(83)に嵌まっており、
該筒状ノックアウトピン(66)(83)の突出しにより、6番
ダイス(36)とパンチ側ダイス(8)から筒状部品(1)を外
す。
【0018】上記の如く、中実ブランク(1b)に打込みピ
ン(6)を該ブランクの反対側端面近くまで深く打込ん
で、底付き円筒部材(1c)を形成するため、底部(14)の外
周と筒体の繋がり部近傍に生じる加工硬化は、円筒部材
(1c)の端部側で生じる。従って、後工程で球形に膨らま
せる円筒部材の中央部の加工硬化は小さく且つ均一化し
ており、無理なく膨らませることができる。
【0019】又、円筒部材の両端側を径小に絞るため、
この部分の加工度が大きくなり、加工硬化を起こして変
形し難くなる。更に、完成した筒状部品(1)は、鍛造・
圧造により材料の流れは途切れておらず、即ち、鍛造・
圧造成形に特有の鍛流線によって、強度的に優れ、耐久
性を向上できる。筒状部品(1)にシャフト(図示せず)を
嵌めても、略球状の膨出部(17)とシャフトとの間は、中
空となり、軽量化に寄与できる。
【0020】本発明の実施に際し、図3eに示す第5工
程で、筒部材(1e)の両端を絞ると同時に、中央部を予備
的に少し膨らませてもよい。筒部材の中央を最終の球形
に膨らす前に、予備膨出すれば、最終工程で無理なく球
形に膨らませることができ、偏肉、亀裂のない美しい略
球状の膨出部(17)を有する筒状部品を製造できる。又、
本発明の実施に際し、図2bの第2工程を省略して、全
5工程で筒状部品(1)の鍛造・圧造成形を行なうことも
できる等、本発明は上記実施例の構成に限定されること
はなく、特許請求の範囲に記載の範囲で種々の変形が可
能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】A図は、第1工程の、一部を断面で表したブラ
ンクの正面図、B図は、第2工程の、一部を断面で表し
たブランクの正面図、C図は、第3工程の、一部を断面
で表した底付き円筒部材の正面図、D図は、第4工程
の、一部を断面で表した両端開口筒部材の正面図、E図
は、第5工程の、一部を断面で表した予備膨出部材の正
面図、F図は、第6工程の、一部を断面で表した筒状部
品の正面図である。
【図2】a図は、第1工程の鍛造・圧造状態の断面図、
b図は、第2工程の鍛造・圧造状態の断面図、c図は、
第3工程の鍛造・圧造状態の断面図である。
【図3】d図は、第4工程の鍛造・圧造状態の断面図、
e図は、第5工程の鍛造・圧造状態の断面図、f図は、
第6工程の鍛造・圧造状態の断面図である。
【符号の説明】
(1) 筒状部品 (16) 円筒体 (17) 略球状の膨出部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21K 21/08 B21J 5/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中央部に略球状の膨出部を有し、両端が
    円筒体(16)(16)である筒状部品(1)を、複数のダイスを
    隣接配備したトランスファープレスにて鍛造・圧造成形
    する方法において、 中実ブランクに打込みピン(6)を該ブランクの反対側端
    面近くまで深く打込んで、底付き円筒部材(1c)を形成
    し、次工程で、該底付き円筒部材(1c)の底部を打抜いて
    両端開口の筒部材(1d)を形成し、次工程で 該筒部材(1
    d)の両端側を径小に絞り、最終工程によって筒部材の中
    央を球面状に膨らませることを特徴とする中央部に略球
    状の膨出部を有する筒状部品の鍛造・圧造成形方法。
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