JP2825756B2 - 薄膜el素子の製造方法および製造装置 - Google Patents

薄膜el素子の製造方法および製造装置

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JP2825756B2
JP2825756B2 JP6115657A JP11565794A JP2825756B2 JP 2825756 B2 JP2825756 B2 JP 2825756B2 JP 6115657 A JP6115657 A JP 6115657A JP 11565794 A JP11565794 A JP 11565794A JP 2825756 B2 JP2825756 B2 JP 2825756B2
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康一 田中
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    • HELECTRICITY
    • H05ELECTRIC TECHNIQUES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H05BELECTRIC HEATING; ELECTRIC LIGHT SOURCES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; CIRCUIT ARRANGEMENTS FOR ELECTRIC LIGHT SOURCES, IN GENERAL
    • H05B33/00Electroluminescent light sources
    • H05B33/10Apparatus or processes specially adapted to the manufacture of electroluminescent light sources

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、交流電界を印加するこ
とによって生じるエレクトロルミネセンス(電界発光)
現象を利用した薄膜EL素子の製造方法に関し、特に薄
膜EL素子の輝度を向上するためのアニール処理の方法
に関し、また前記アニール処理を施す薄膜EL素子の製
造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜EL(エレクトロルミネセント)素
子は、完全固体で自発光型の薄型平面表示デバイスとし
ての利用が可能であり、また液晶表示デバイスと比較し
てコントラストおよび視認性の高い優れた表示特性が得
られることから、実用化に向けての研究、開発が幅広く
行われている。たとえば、カラー表示を実現するための
研究、開発が行われている。また、白黒表示が可能な薄
膜EL素子は、FA(ファクトリーオートメーション)
用あるいはOA(オフィスオートメーション)用機器の
表示手段として好適に用いられている。
【0003】現在実用化に向けての研究、開発が進めら
れている薄膜EL素子の一例として、二重絶縁層構造の
薄膜EL素子が挙げられる。当該素子は、たとえばガラ
スで実現される透光性基板の一方表面に、ITO(イン
ジウム錫酸化物)などの透明電極で実現される下部電
極、下部絶縁層、EL発光層、上部絶縁層、およびAl
(アルミニウム)などで実現される上部電極をこの順に
積層して構成される。
【0004】前記EL発光層は、母材と当該母材中に添
加される発光中心とを含んで構成される。前記下部およ
び上部電極間に交流電圧を印加することによって、自由
電子が発光中心に衝突し、発光中心が励起される。励起
状態の発光中心が安定なエネルギー準位(基底状態)に
戻る際にエレクトロルミネセンス現象が生じる。このた
め前記電極間に印加する交流電圧を制御することによっ
て、発光/非発光状態を組合わせた表示画像を得ること
ができる。
【0005】図19は、従来の薄膜EL素子の製造時に
用いられるアニール装置1の概略的構成を示す断面図で
ある。前述した薄膜EL素子のEL発光層は、一般に電
子ビーム蒸着法、スパッタリング法、あるいはCVD
(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて作成さ
れる。EL発光層は、当該EL発光層とは材料の異なる
下部絶縁層上に形成されるので、母材の結晶性が比較的
悪くなり、母材中に非輻射中心が形成されたり、母材結
晶中の結晶場が乱れることとなる。また、発光中心の前
記母材中での分布が均一ではなく、発光中心の密度の高
い領域と低い領域とが存在して、前記密度の高い領域が
母材結晶中の結晶場を乱すこととなる。このため、高密
度領域では発光中心を励起するための電子の走行が妨げ
られるとともに、低密度領域では前記電子が発光中心と
出合う回数が少なくなって、励起効率が低下して発光輝
度が低下する。特に、発光中心の密度の高い領域で発光
輝度が低下する。
【0006】このような発光輝度の低下を防止するため
に、前記方法で作成されたEL発光層に対するアニール
処理が施される。図示される従来のアニール装置1は、
処理対象である複数の薄膜EL素子2を保持するステー
ジ3と、ステージ3が固定される基台4と、前記基台4
のステージ3が固定された表面に載置されて、ステージ
3と当該ステージ3に保持される複数の薄膜EL素子2
とが配置される空間5を形成するハウジング6と、前記
空間5内を加熱するヒータ7と、前記空間5内を減圧す
るためのポンプ8とを含んで構成される。
【0007】図20は、前記アニール装置1を用いた従
来のアニール処理の手順を示す工程図である。工程c1
では、基台4に固定されたステージ3に複数の薄膜EL
素子2が保持されて、ハウジング6が基台4上に載置さ
れる。工程c2では、ステージ3および複数の薄膜EL
素子2が配置される空間5内が、たとえば油拡散ポンプ
および油回転ポンプで実現されるポンプ8によって、減
圧される。たとえば、10-4Pa以下の真空度まで減圧
される。
【0008】工程c3では、ヒータ7によって、前記空
間5内が加熱される。たとえば、10℃/分〜20℃/
分の範囲に選ばれる昇温速度で、600℃まで加熱され
る。これによって、空間5内に配置される複数の薄膜E
L素子2が加熱される。工程c4では、所定の温度に到
達すると、当該温度で、たとえば1時間〜2時間保持さ
れる。この間、ヒータ7によって断続的に空間5内が加
熱される。これによって、前記複数の薄膜EL素子2が
所定の温度に保持される。工程c5では、空間5内が冷
却される。たとえば、ヒータ7による加熱を停止し、そ
のまま放置して自然冷却される。これによって、前記複
数の薄膜EL素子2が冷却される。
【0009】このようなアニール処理を施すことによっ
て、母材分子が再配列して結晶性が改善される。また、
発光中心が母材中に拡散して、母材中での分布の均一性
が向上する。母材の結晶性が改善されるので、非輻射中
心が少なくなり、また母材結晶中の結晶場の乱れが少な
くなる。これによって、発光中心を励起する自由電子の
走行がより自由になる。また、発光中心の分布がより均
一になるので、母材結晶中の結晶場を乱す発光中心の密
度の高い領域は少なくなる。これによって、前記自由電
子が発光中心に出合う回数が増す。したがって、発光中
心の励起効率が向上して発光輝度が向上する。このよう
な効果が得られるアニール処理は、優れた発光特性を得
るために薄膜EL素子の製造プロセスにおいて不可欠な
ものである。また、一般に高い温度で処理するほど高い
発光輝度が得られる。
【0010】上述したようなアニール処理は、たとえば
特公昭52−10358号公報に開示されている。ま
た、特開平3−141584号公報には、下部絶縁層上
にSi層を形成し、当該Si層上にEL発光層を形成す
る例が開示されている。前記Si層は、Siを堆積した
後にアニール処理されて結晶性の改善が図られる。結晶
性の高いSi層上に形成されるEL発光層は、結晶性の
優れたものとなる。このアニール処理には、レーザ光や
電子線が使用される。
【0011】さらに、特開平5−159878号公報に
は、まず発光中心の吸収波長帯域を含む光を照射して加
熱し、次に母材の吸収波長帯域を含む光を照射して加熱
することによって、アニール処理を行う例が開示されて
いる。照射される光としては、レーザ光が使用され、波
長帯域は100nm〜750nmの範囲に選ばれる。ま
たさらに、特開平5−251182号公報には、不活性
ガス雰囲気中でアニール処理する例が開示されている。
【0012】上述の開示例は、薄膜EL素子に対するア
ニール処理に関するものであるけれども、ガラス基板上
に形成されたシリコン薄膜に対するアニール処理の例
が、特開平2−275622号公報に開示されている。
該公報によれば、ガラス基板の吸収波長成分を除去した
光をシリコン薄膜に照射して加熱することによって、シ
リコン薄膜が短時間で処理することができ、かつガラス
基板の熱による変形がなくなる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前述した特公昭52−
10358号公報および特開平5−251182号公報
の例では、減圧のための時間、加熱のための時間、保持
時間および冷却のための時間が必要であり、また各時間
が長くなる。このため、アニール処理時間が長いことに
よって、薄膜EL素子の生産性が低下する。
【0014】また、特開平3−141584号公報の例
では、Si層を形成し、当該Si層に対するアニール処
理を行った後、EL発光層が形成されるので、Si層を
形成する工程を設けなければならない。また、照射領域
が微小なレーザ光や電子線が使用されるので、EL発光
層が大面積であったときには、アニール処理に時間がか
かり、薄膜EL素子の生産性が低下する。
【0015】さらに、特開平5−159878号公報の
例では、2段階のアニール処理が必要であり、またレー
ザ光が使用されるので、前述したのと同様に薄膜EL素
子の生産性が低下する。
【0016】またさらに、特開平2−275622号公
報の例は、ガラス基板上に形成されたシリコン薄膜に対
するアニール処理の例であり、薄膜EL素子に対するも
のではないけれども、薄膜EL素子のEL発光層は、ガ
ラスなどで実現される透光性基板上に形成され、該透光
性基板とともにアニール処理される。このため、高い温
度に長時間保持すると、透光性基板が変形する恐れがあ
る。
【0017】本発明の目的は、アニール処理時間が短
く、生産性の優れた薄膜EL素子の製造方法および製造
装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも1
つのEL発光層と、前記EL発光層に電界を印加するた
めの電極とを含む薄膜EL素子の製造方法において、母
材と当該母材中に添加される発光中心とを含んで成る前
記EL発光層を加熱して、前記母材の結晶性を向上する
とともに前記発光中心の母材への分布を均一にするアニ
ール処理を、前記電極を構成する電極材料の吸収波長帯
域を含む光を照射することによって行うことを特徴とす
る薄膜EL素子の製造方法である。
【0019】また本発明は、前記電極材料としてインジ
ウム錫酸化物が選ばれ、前記光として1.1μm〜1.
5μmの波長帯域にピーク波長を有する光が選ばれるこ
とを特徴とする。
【0020】また本発明は、前記アニール処理時の昇温
速度は、200℃/分以上600℃/分以下の範囲に選
ばれることを特徴とする。
【0021】また本発明は、前記アニール処理時の昇温
速度は、400℃/分以上500℃/分以下の範囲に選
ばれることを特徴とする。
【0022】また本発明は、前記EL発光層が所定の温
度に到達した直後に光照射を停止することを特徴とす
る。
【0023】また本発明は、不活性ガス雰囲気中で光を
照射することを特徴とする。
【0024】また本発明は、少なくとも1つのEL発光
層と、前記EL発光層に電界を印加するための電極とが
形成された処理用基板を、所定の保持面に載置して保持
する保持手段と、前記電極を構成する電極材料の吸収波
長帯域を含む光を、前記保持面に載置された処理用基板
に向けて照射する光照射手段とを含むことを特徴とする
薄膜EL素子の製造装置である。
【0025】また本発明は、前記光照射手段による光の
照射領域は、前記保持面に載置された処理用基板の表面
の大きさにほぼ等しく、またはより大きく選ばれること
を特徴とする。
【0026】また本発明は、前記光照射手段による光の
照射領域は、前記保持面に載置された処理用基板の表面
の大きさよりも小さく選ばれ、前記保持手段および前記
光照射手段のうち少なくともいずれか一方を移動させる
ことによって、処理用基板の全面に、前記光照射手段か
らの光を照射することを特徴とする。
【0027】
【作用】本発明に従えば、薄膜EL素子は、少なくとも
1つのEL発光層と、前記EL発光層に電界を印加する
電極とを含み、前記EL発光層は、母材と、当該母材中
に添加される発光中心とを含んで成る。このような薄膜
EL素子は、前記EL発光層を加熱して、前記母材の結
晶性を向上するとともに前記発光中心の母材への分布を
均一にするアニール処理が施される。本発明では前記ア
ニール処理は、前記電極を構成する電極材料の吸収波長
帯域を含む光を照射することによって行われる。照射さ
れた光は、電極によって吸収され、熱エネルギーとして
蓄積される。電極に熱が蓄積されてEL発光層からの放
熱が少なくなるので、EL発光層が効率良く加熱され
る。したがって、アニール処理に要する時間を短くする
ことができる。また、アニール処理されるべき基板が配
置された空間を加熱する従来技術と同じ設定温度となる
ように光を照射しても、従来技術よりもEL発光層が高
温になるので、発光輝度の高い素子を得ることが可能と
なる。さらに、前記EL発光層と電極とが形成される透
光性基板の変形が生じる限界温度以下でアニール処理を
施しても、高い発光輝度を有する薄膜EL素子を得るこ
とができる。
【0028】また本発明に従えば、前記電極材料として
はインジウム錫酸化物が選ばれ、前記光としては1.1
μm〜1.5μmの波長帯域にピーク波長を有するもの
が選ばれる。これによって、前述したような効果が得ら
れることが確認された。
【0029】また本発明に従えば、前記アニール処理時
の昇温速度は、200℃/分以上600℃/分以下の範
囲に選ばれる。昇温速度が200℃/分以上では、発光
輝度が10%以上改善することが認められた。また、昇
温速度が600℃/分以下では、温度制御が比較的容易
である。
【0030】また好ましくは、前記昇温速度は、400
℃/分以上500℃/分以下の範囲に選ばれる。400
℃/分以上では、発光輝度がさらに向上するとともに、
アニール処理の時間がさらに短縮されて、薄膜EL素子
の生産性が向上する。また、500℃/分以下では、さ
らに温度制御が容易となる。
【0031】また本発明に従えば、EL発光層が所定の
温度に到達した直後に光照射が停止される。これによっ
ても、上述したような効果が得られることが確認され
た。したがって、従来技術のように設定温度で一定時間
保持する必要はなく、さらに生産性が向上する。
【0032】また本発明に従えば、光照射は不活性ガス
雰囲気中で行われる。また好ましくは、不活性ガスとし
て、N2 、Ar、Heのうちのいずれか1つ、または少
なくともいずれか2つの混合物が選ばれる。不活性ガス
中でアニール処理を行うことによって、比較的高い温度
に加熱した場合にEL発光層が受ける酸素の影響をなく
すことができ、発光むらをなくすことが可能となる。本
発明のように不活性ガス雰囲気中でアニール処理を行う
ことは、高価な真空排気装置を必要とせず、従来技術と
比較して安価にアニール処理を行うことができる。
【0033】また本発明に従えば、薄膜EL素子の製造
装置は、アニール処理されるべき処理用基板を保持する
保持手段と、前記保持手段に保持された処理用基板に光
を照射する光照射手段とを備える。前記処理用基板と
は、少なくとも1つのEL発光層と、前記EL発光層に
電界を印加するための電極とが形成された基板である。
前記光照射手段は、たとえば、前記保持面に平行な平面
内であって、保持手段に保持された処理用基板表面のほ
ぼ全面に対向する領域に、互いに等間隔に配置される複
数の光源と、前記保持手段の保持面に前記光源からの光
を反射する反射板とを含み、前記光源から光を照射する
ことによってEL発光層が加熱される。このような製造
装置を用いてEL発光層をアニール処理することは、E
L発光層が大面積であっても均一に、かつ一括してアニ
ール処理することができる。
【0034】なお、前記光照射手段による光照射領域と
は、前記光源から所定の距離の全光照射領域内であっ
て、光強度が所定の強さ以上である有効光照射領域のこ
とをいい、該有効光照射領域は、前記保持手段の保持面
に載置された処理用基板の表面の大きさにほぼ等しく選
ばれる。
【0035】また好ましくは、前記有効光照射領域は、
前記保持手段の保持面に載置された処理用基板の表面の
大きさよりも大きく選ばれる。前記有効光照射領域の周
縁部分は中心付近よりも放熱量が多いので、周縁部分の
温度が低くなる。前述したように有効光照射領域の大き
さを選ぶことによって、EL発光層をより均一に加熱す
ることができる。
【0036】また本発明に従えば、薄膜EL素子の製造
装置は、前記保持手段と、前記光照射手段と、前記保持
手段を、当該保持手段が配置された平面内で移動させる
駆動手段とを備える。前記光照射手段は、前記保持面に
平行な平面内に設けられる光源と、前記光源からの光を
前記保持手段の保持面に向けて集光して反射する反射板
とを含む。前記保持手段に処理用基板を保持し、光源か
らの光を照射するとともに、前記駆動手段によって前記
保持手段を移動させて、当該保持手段に保持された処理
用基板のほぼ全面に光を照射することによってアニール
処理が施される。
【0037】また本発明に従えば、薄膜EL素子の製造
装置は、前記保持手段と、前記光照射手段と、前記光照
射手段を、当該光照射手段が配置された平面内で移動さ
せる駆動手段とを備える。前記光照射手段は、前記光源
と、前記反射板とを含む。前記保持手段に処理用基板を
保持し、光源からの光を照射するとともに、前記駆動手
段によって前記光照射手段を移動させ、前記保持手段に
保持された処理用基板のほぼ全面に光を照射することに
よってアニール処理が施される。
【0038】このような製造装置を用いてアニール処理
を行うと、光を集光するため、光照射部分の温度が比較
的速く上昇する。また、比較的高温となる。保持手段あ
るいは光照射手段を移動させる駆動手段が設けられるの
で、アニール処理される処理用基板のほぼ全面を加熱す
ることができる。
【0039】
【実施例】図1は、本発明の一実施例である薄膜EL素
子の製造方法に基づいて作成された薄膜EL素子11の
構成を示す断面図である。薄膜EL素子11は、透光性
基板12、下部電極13、下部絶縁層14、EL発光層
15、上部絶縁層16および上部電極17を含んで構成
される。
【0040】たとえばガラスで実現され、10cm×8
cmの大きさに選ばれる透光性基板12の一方表面12
aには、互いに平行な複数の帯状の下部電極13が積層
される。下部電極13は、たとえばITOで実現され
る。透光性基板12の一方表面12aには、前記下部電
極13を覆って下部絶縁層14が積層される。下部絶縁
層14は、たとえばSiO2、SiNx、Ta25、また
はSrTiO3 などで実現される。下部絶縁層14上の
所定の領域には、たとえばZnSで実現される母材中に
Mnで実現される発光中心を添加したEL発光層15が
積層される。前記所定の領域とは、薄膜EL素子11の
表示画面に対応した領域である。下部絶縁層14上に
は、前記EL発光層15を覆って上部絶縁層16が積層
される。上部絶縁層16は、たとえば前記下部絶縁層1
4と同様の材料で実現される。上部絶縁層16上には、
前記下部電極13と直交する方向に、複数の帯状の上部
電極17が積層される。上部電極17は、たとえばAl
で実現される。
【0041】このような薄膜EL素子11は、下部およ
び上部電極13,17間に交流電圧を印加することによ
って表示が行われる。すなわち、閾値電圧以上の交流電
圧を印加すると、前記電極13,17間のEL発光層1
5が発光し、閾値電圧に満たない交流電圧を印加する
と、前記電極13,17間のEL発光層15は発光しな
い。したがって、印加電圧を制御することによって、発
光/非発光状態の組合わせによる表示を実現することが
できる。本実施例の構成では、マトリクス表示を実現す
ることができる。
【0042】図2は、前記薄膜EL素子11の形成方法
を示す工程図であり、図3はその手順を段階的に示す断
面図である。工程a1では、図3(1)に示されるよう
に、透光性基板12の一方表面12aに下部電極13が
形成される。下部電極13は、まず前記表面12aの全
面に下部電極材料を、たとえばスパッタリング法、電子
ビーム蒸着法またはスプレー法などによって150nm
〜300nmの範囲で選ばれる膜厚に成膜し、次に成膜
された下部電極材料を前述した形状にフォトエッチング
法によってパターン形成して作成される。工程a2で
は、図3(2)に示されるように透光性基板12の一方
表面12a上に、前記下部電極13を覆って下部絶縁層
14が形成される。下部絶縁層14は、たとえばスパッ
タリング法によって、200nm〜500nmの範囲で
選ばれる膜厚に形成される。
【0043】工程a3では、図3(3)に示されるよう
に、下部絶縁層14上の所定の領域に、EL発光層15
が形成される。EL発光層15は、たとえば電子ビーム
蒸着法によって作成される。たとえば、ZnSに0.3
wt%〜0.6wt%のMnを添加した材料から成るペ
レットを作成し、該ペレットを蒸発源とし、蒸着される
べき基板を200℃〜300℃に保持して、500nm
〜1000nmの範囲で選ばれる膜厚に成膜される。
【0044】工程a4では、図3(4)に示されるよう
に、下部絶縁層14上に前記EL発光層15を覆って上
部絶縁層16が形成される。上部絶縁層16は、たとえ
ば前記下部絶縁層14と同様にして形成される。工程a
5では、図3(5)に示されるように上部絶縁層16上
に上部電極17が形成される。上部電極17は、たとえ
ば前記下部電極13と同様にして、上部絶縁層16の表
面の全面に、上部電極材料を成膜した後、パターン形成
することによって作成される。
【0045】本発明において注目すべきは、前記EL発
光層15に対して施されるアニール処理が、後述するア
ニール装置21を用いた方法によって実施されることで
あり、このアニール処理は、EL発光層15が形成され
た後に施される。すなわち、図3(3)〜図3(5)に
示される3種類の基板11a〜11cのうちのいずれか
1つがアニール処理用基板である。
【0046】EL発光層15に対して施されるアニール
処理とは、EL発光層15を加熱して、母材の結晶性を
向上するとともに、発光中心の母材への分布を均一にす
る処理である。このようなアニール処理によって、EL
発光層15以外の構成部材に、たとえば加熱による変形
が生じることは、好ましいことではない。たとえば、本
実施例のように上部電極17としてAlを用いた場合、
後述するアニール処理によってAlが溶融してしてしま
い上部電極17が変形する恐れがある。このため、本実
施例の場合には、基板11aまたは基板11bをアニー
ル処理用基板とするのが好ましい。なお、上部電極17
として、たとえばITOを用いた場合、ITOは前記A
lと比べて溶融しにくいので、基板11cをアニール処
理用基板とすることが可能である。以下では、基板11
bをアニール処理用基板とした例について説明する。
【0047】図4は、前記薄膜EL素子11を作成する
ための製造装置であるアニール装置21の概略的構成を
示す断面図である。図5は、光照射手段29の光照射面
を示す平面図であり、図6は図4とは直交する方向で切
断したときの光源23および反射板24を示す断面図で
ある。アニール装置21は、ステージ22、ハウジング
27および光照射手段29を含んで構成される。ステー
ジ22の表面22a上にはアニール処理用基板11bが
載置される。ステージ22の表面22aに対向する上方
には光照射手段29が設けられる。
【0048】光照射手段29は、複数の光源23、反射
板24、一対の電極25および電源26を含んで構成さ
れる。複数(本実施例では5)の光源23は、図5に示
されるように棒状であり、ステージ22の基板11bが
載置される表面22aに平行な平面内であって、前記ス
テージ22上に載置された基板11bの表面のほぼ全面
に対向する領域に、互いに等間隔に配置される。このよ
うな光源23は、前記下部電極13の電極材料であるI
TOの吸収波長帯域を含む光を照射するもので実現さ
れ、本実施例では、石英ガラス製の管の中にタングステ
ンフィラメントを封じ込んだ赤外線ランプ(真空理工株
式会社製、型式Pss68V)を用いた。
【0049】ITOの透過および反射スペクトルは、J.
Electrochem.Soc.:SOLID-STATESCIENCE AND TECHNOLOG
Y,VOL.119,No.10,(October 1972),pp.1368〜1374,“Hig
hly Conductive,Transparent Films of Sputtered In(2
-x)Sn(x)O(3-y)”に示されてあり、このスペクトルから
各波長における吸収率を算出すると、表1のようにな
る。
【0050】
【表1】
【0051】前記文献に記載の透過スペクトルに基づく
透過率(実測値)をAとすると、反射率(計算値)Bは
B=100−Aで求められる。また、前記文献に記載の
反射スペクトルに基づく反射率(実測値)をCとする
と、吸収率DはD=B−Cで求められる。このようにし
て算出される吸収率Dから、ITOは1.2μm程度の
波長帯域において30%〜40%の赤外光を吸収するこ
とがわかる。前記赤外線ランプからの照射光は赤外領域
であって1.15μmの波長にピークを有する発光スペ
クトルを示し、投入電力を調整することによってピーク
を長波長側にシフトすることができる。なお、前記文献
に記載されている赤外光の吸収率は、ITOの材質、形
成方法などによって異なるものと思われる。
【0052】反射板24は、前記光源23からの光をス
テージ22上に載置される基板11bの表面に向けて反
射するものであり、複数(本実施例では5)の凹所24
aを有する。凹所24aは、図4および図6に示される
ように凹所24aの長手方向とは直交する方向における
断面形状は放物線状であり、前記長手方向に沿った方向
における断面形状は矩形状である。前記複数の光源23
は複数の凹所24aに沿ってそれぞれ配置される。前記
凹所24aの形状を最適化することによって、光源23
からの光がステージ22上に載置される基板11bの表
面に均一に照射される。
【0053】光源23の数、長さおよび間隔、反射板2
4の凹所24aの数、長さおよび間隔、光源23と基板
11bの表面との距離を選ぶことによって、全ての光源
23から光を照射した際の光照射面積を選ぶことができ
る。前記光照射面積とは、光源23から所定の距離の全
光照射面積内であって、光強度が所定の強さ以上である
有効光照射面積のことである。本実施例では前記光照射
面積を透光性基板12の面積よりも大きい20cm×1
2cmとした。光照射面積内における周辺部分の温度
は、中心付近よりも周辺部分の方が放熱量が多いために
低くなっている。このように光照射面積を透光性基板1
2の面積よりも大きくすることによって、より均一にE
L発光層15をアニール処理することができる。なお、
前記光源23が配置された平面と、基板11bの表面と
の距離Lを10cmとした。これは、たとえばステージ
22を上下方向に移動させることによって、あるいは光
照射手段29を上下方向に移動させることによって選ば
れる。
【0054】前記光源23には、一対の電極25を介し
て電源26からの電源電圧が供給される。これによっ
て、光源23から光が照射される。基板11bが載置さ
れるステージ22と、前記光照射手段29を構成する光
源23、反射板24および電極25は、ハウジング27
内に配置される。また、熱電対28によって基板11b
の透光性基板12の一方表面12aとは反対側の他方表
面12bにおける温度が測定される。
【0055】図7は、アニール処理の手順を示す工程図
である。工程b1では、ステージ22上に基板11bが
載置される。このとき、前記距離Lが10cmに設定さ
れる。工程b2では、電源26からの電源電圧が印加さ
れて、基板11bに向けての光照射が開始される。基板
11bの光照射された領域は、加熱される。このとき、
前記熱電対28からの測定結果が、100℃/分以上6
00℃/分以下の範囲の昇温速度となるように、光源2
3への印加電圧が調整される。
【0056】本実施例では、3kwの投入電力で200
℃/分の昇温速度となり、5kwの投入電力で300℃
/分の昇温速度となり、10kwの投入電力で400℃
/分の昇温速度となった。この光照射によって所定の設
定温度まで基板11bが加熱される。なお、所定の温度
に達したかどうかは、前記熱電対28からの測定結果に
よって判断される。
【0057】工程b3では、電源26からの電源電圧が
遮断されて、光照射が停止される。これによって、基板
11bが冷却される。
【0058】図8は、アニール処理時の設定温度と、当
該温度でアニール処理を行ったEL発光層15のX線回
折強度との関係を示すグラフである。アニール処理時の
昇温速度は400℃/分とし、X線回折強度としては
(111)面の回折強度値を選んで示した。破線31
は、本実施例のアニール処理を施した場合の結果を示
し、実線32は比較例である従来技術のアニール処理を
行った場合の結果を示す。従来技術のアニール処理と
は、真空雰囲気中で設定温度まで加熱した後、各設定温
度で1時間保持し、自然冷却する方法である。
【0059】図8から、検討した設定温度において、本
実施例のアニール処理を施したEL発光層15の方が全
てX線回折強度が強く、このことから結晶性がより高い
ことがわかる。また、比較的低い設定温度で、結晶性の
改善効果が大きいことがわかる。これは、測定される温
度が透光性基板12の他方表面12b側からであり、実
際にEL発光層15の温度を測定したものではないこと
から、実際にはEL発光層15の温度が測定される値よ
りも高くなっているものと考えられる。
【0060】図9は、アニール処理時の設定温度と、作
成された薄膜EL素子11の発光輝度との関係を示すグ
ラフである。昇温速度は、前述したのと同様に400℃
/分とした。発光輝度の測定は前記電極13,17間に
100Hzの交流電圧を印加したときのものである。破
線33は本実施例のアニール処理を施した場合の結果を
示し、実線34は比較例である従来技術のアニール処理
を行った場合の結果を示す。なお、以下の表2は、図9
のグラフで示される結果を、数値で表したものである。
【0061】
【表2】
【0062】図9および表2から、本実施例のアニール
処理を施した薄膜EL素子11の方が、発光輝度が高い
ことがわかる。輝度が約20%向上していることがわか
る。このことから、従来と同じ発光輝度を得るために
は、アニール処理時の設定温度を低くすることができ、
したがって、従来技術では歪みが生じにくく、温度が高
く、高温処理にも耐え得る、たとえばノンアルカリガラ
スなどの高価なガラス基板を透光性基板12として用い
ていたけれども、本実施例のようなアニール処理を行う
ことによって、比較的歪みが生じやすい安価なソーダガ
ラスなどを用いることも可能となり、薄膜EL素子11
の製造コストの低減を図ることが可能となる。図9か
ら、たとえば設定温度を400℃とした本実施例のアニ
ール処理を行うと、従来技術の設定温度を600℃とし
たアニール処理を行ったときと同レベルの発光輝度が得
られることがわかる。
【0063】図10は、昇温温度と発光輝度改善率との
関係を示すグラフである。アニール処理時の昇温速度
を、1分当たり100℃、200℃、300℃、400
℃、500℃および600℃として薄膜EL素子11を
作成し、各素子の発光輝度を評価した。設定温度は40
0℃とした。また、発光輝度は従来技術のアニール処理
を行った薄膜EL素子の発光輝度を1として、当該発光
輝度に対する比率で、発光輝度改善率として表してい
る。
【0064】図10から、全ての昇温速度において従来
技術よりも発光輝度が高いことがわかる。また、昇温速
度が速い方が輝度の改善効果が優れていることがわか
る。これは、昇温速度が比較的速いと、熱電対の測定精
度が低いことによって、測定結果が温度上昇に追随でき
ず、EL発光層15の実際の温度と熱電対28で測定し
た温度との差が大きくなるためと考えられる。また、昇
温速度が比較的遅いと、EL発光層15の実際の温度と
熱電対28で測定した温度との差が小さくなるととも
に、従来技術とほぼ同様の温度となって、同程度の発光
輝度となったものと考えられる。
【0065】図11は、アニール処理に要する時間を、
本実施例と従来技術とで比較して示すグラフである。横
軸は時間を示しており、縦軸は温度を示している。実線
35は本実施例によるアニール処理を行った場合を示し
ており、実線36は従来技術によるアニール処理を行っ
た場合を示している。本実施例では、所定の設定温度K
に加熱した後、直ちに冷却する。たとえば、設定温度K
=630℃とすると、昇温時間T1が1.5分、降温時
間T2が3.5分となり、全アニール処理時間Tは5分
となる。一方、従来技術では、所定の設定温度Kに加熱
して、一定時間保持した後冷却する。たとえば、昇温時
間t1が1時間、保持時間t2が1.5時間、降温時間
t3が4.5時間となり、全アニール処理時間tは7時
間となる。
【0066】ここで、従来技術で、1回のアニール処理
での処理枚数を、たとえば60枚とすると、1分当たり
0.143枚処理できることとなる。また、本実施例で
は1枚の処理に5分かかるので、1分当たり0.2枚処
理できることとなる。このことから、従来技術に比べ
て、処理効率が1.4倍となることがわかる。
【0067】なお、本実施例のアニール処理は、アニー
ル装置の光照射面積を拡大することによって、さらに処
理効率を向上させることができ、たとえば同時に5枚の
アニール処理を可能とすれば、1分当たり1枚処理でき
ることとなって、処理効率が7倍となる。
【0068】図12は、一定出力で光照射したときの光
照射時間と、熱電対28から測定された温度との関係を
示すグラフである。破線37は、前記基板11bに代わ
ってITOを形成したガラス基板を配置した場合を示
し、実線38は前記基板11bに代わってITOを形成
しないガラス基板を配置した場合を示す。なお、ガラス
基板と熱電対28とは接触させずに測定した。
【0069】同じ時間だけ光を照射しても、破線37で
表されるITOを形成したガラス基板の方が温度が低い
ことがわかる。これは、ITOの吸収波長帯域を含む赤
外光を照射するので、光がITOによって吸収され、ガ
ラス基板を通過してくる熱エネルギが小さくなったため
と考えられる。したがって、ITOを形成したガラス基
板では、ITOの温度が上昇しているものと考えられ
る。このことから、ITOから成る下部電極13の上に
形成されたEL発光層15の温度が高くなっているもの
と考えられ、これによって従来技術と比較して、低い設
定温度においてアニール処理しても高い発光輝が得られ
たものと考えられる。
【0070】なお、本実施例によれば、設定温度に達す
ると直ちに光照射を停止しても、本発明の効果が得られ
る。したがって、従来技術では昇温速度が10℃/分程
度と穏やかであり、母材の結晶性の改善が徐々に進み、
また発光中心の拡散が結晶性が改善された後に生じると
思われるのに対して、本実施例では昇温速度が100℃
/分以上600℃/分以下と急激であり、結晶性の改善
と発光中心の拡散とが同時に、効率良く進んでいるもの
と思われる。なお、従来技術と同様に光照射によって設
定温度に達した後、その温度に一定時間保持しても、本
実施例と同様の効果が得られるものと考えられる。
【0071】本実施例において設定温度は600℃以下
に選ばれる。これは、薄膜EL素子11の透光性基板1
2として用いられるガラス基板に歪みが生じるため、ま
た温度制御が困難であり、温度が設定温度以上となった
場合に透光性基板12が変形する恐れがあるためであ
る。また、設定温度を高くするためには、光源23への
投入電力を増大しなければならず、大容量の電源26が
必要となり、また光源23の寿命を急激に短縮すること
となり、薄膜EL素子11の製造コストが増大するため
である。また、昇温速度としては、10%以上の発光輝
度の改善が認められた200℃/分以上で、温度制御が
容易な600℃/分以下の範囲に選ばれ、好ましくは処
理時間を短縮して、製造効率を向上するために400℃
/分以上で、温度制御がさらに容易な500℃/分以下
の範囲に選ばれる。
【0072】なお本実施例のアニール処理を不活性ガス
雰囲気中で行う例も本発明の範囲に属するものである。
前記不活性ガスとしては、N2 、Ar、Heのうちのい
ずれか1つ、または少なくともいずれか2つの混合物が
選ばれる。不活性ガス中で行うのは、たとえば400℃
以上に加熱した場合の酸素の影響と考えられる発光むら
をなくすためである。従来技術では、真空雰囲気中でア
ニール処理を行うことによって、前記酸素の影響と考え
られる発光むらを防止している。この方法では、高価な
真空排気装置を必要となるけれども、本実施例では、安
価なガス供給装置を用いるだけで実現することができ
る。具体的には、たとえば石英管内にアニール処理基板
を配置し、管内を真空排気してN2 ガスで置換した後
に、アニール処理を行う。アニール処理の方法は、前述
したのと同様である。
【0073】図13は、本発明の他のアニール装置41
の概略的構成を示す断面図である。図14は光照射手段
49の光照射面を示す平面図であり、図15は図13と
は直交する方向で切断したときの光源43および反射板
44を示す断面図である。アニール装置41は、ステー
ジ42、ハウジング47、光照射手段49および駆動手
段50を含んで構成される。アニール装置41の光照射
手段49が、前記アニール装置21の光照射手段29と
異なり、また駆動手段50を含むこと以外は、前述した
のと同様にして構成される。
【0074】光照射手段49は、1つの光源43、反射
板44、一対の電極45および電源46を含む。光源4
3は、図14に示されるように棒状であり、前記光源2
3と同様の特性を有するもので実現される。本実施例で
は、赤外線ランプ(真空理工株式会社製、型式E110
L)を用いた。光源43は、ステージ42の基板11b
が載置される表面42aに対向する平面内に配置され
る。
【0075】反射板44は、光源43からの光を、ステ
ージ42上に載置される基板11bの表面に向けて反射
するものであり、1つの凹所44aを有する。凹所44
aは、図13および図15に示されるように、凹所44
aの長手方向とは直交する方向における断面形状は楕円
状であり、前記長手方向に沿った方向における断面形状
は矩形状である。前記光源43は、凹所44aに沿って
配置される。
【0076】本実施例では、薄膜EL素子11bの透光
性基板12の大きさを10cm×5cmに選んだ。ま
た、光源43からの光を照射した際の光照射面積を、2
6.5cm×0.3cmとした。また、光源43と基板
11bの表面との距離Lを10cmとした。
【0077】駆動手段50は、前記光照射手段49を矢
符51で示される方向に移動する手段である。なお、方
向51とは、光源43の長手方向と直交する方向であ
る。光照射手段49を移動することによって、基板11
bの表面のほぼ全面に光を照射することが可能となる。
均一なアニール処理を行うためには、投入電力、移動ス
ピードなどが最適化される。なお、光照射手段49を移
動させるのに代わって、基板11bが載置されたステー
ジ42を方向51に移動させることによっても同様の効
果が得られる。
【0078】図16は、前記光照射手段49の移動速度
を2mm/秒として、熱電対48からの測定温度が設定
温度となったときに移動を開始した際の、設定温度と発
光輝度との関係を示すグラフである。破線52は、本実
施例によるアニール処理を施した場合の結果を示してお
り、実線53は前述した従来技術によるアニール処理を
施した場合の結果を示している。
【0079】図16から、本実施例の方が従来技術より
も発光輝度が高いことがわかる。また、設定温度が低い
方が輝度がより高くなっており、設定温度が高くなる
と、従来と同程度の発光輝度であることがわかる。これ
は、設定温度が高くなると、光源43が1つであること
から、十分にEL発光層15を加熱することができず、
またEL発光層15からの放熱量が多くなって、前述し
た実施例ほどEL発光層15の温度が高くならなかった
ためと考えられる。しかしながら、本実施例でも従来と
同レベルの輝度の薄膜EL素子を効率良く得ることがで
きる。
【0080】なお、前述した実施例と比較すると、光が
集光されるため、光照射部分の温度を高速に昇温するこ
とができ、かつ高温にすることができる。また、使用す
る赤外線ランプの数が減少し、消費電力が減少するとと
もに、装置の小型化を図ることができる。
【0081】図17および図18は、他の薄膜EL素子
61,70の構成を示す断面図である。なお、前記薄膜
EL素子11と同様の構成部材には同じ参照符を付して
いる。薄膜EL素子61は、前述した薄膜EL素子11
と同様に、透光性基板12の一方表面12a上に下部電
極13、下部絶縁層14、EL発光層15および上部絶
縁層16をこの順に形成し、さらに前記EL発光層15
と同様にして構成されるEL発光層62と、絶縁層63
とをこの順に形成し、さらに前記絶縁層63上に上部電
極17を形成したものである。
【0082】また薄膜EL素子70は、透光性基板12
の一方表面12a上に、下部電極13、下部絶縁層1
4、EL発光層15、上部絶縁層16および上部電極1
7を形成し、さらに絶縁層64を形成し、続いて前述し
たのと同様にして構成される下部電極65、下部絶縁層
66、EL発光層67、上部絶縁層68および上部電極
69を形成したものである。このように、複数のEL発
光層15,62,67を有する薄膜EL素子61,70
であっても、上述したようなにしてアニール処理をする
ことが可能である。この場合、最後のEL発光層(薄膜
EL素子61ではEL発光層62、薄膜EL素子70で
はEL発光層67)が形成された後にアニール処理が行
われる。
【0083】本実施例では、薄膜EL素子11の下部電
極13の材料としてITOを用い、赤外光を照射してア
ニール処理する例について説明したけれども、ITO以
外の電極材料、たとえばSnO2、Cd2SnO4、Cd
Oなど、あるいはZnOとAlとの混合物などを用いて
薄膜EL素子11を作成することも可能であり、この場
合、用いた電極材料の吸収波長帯域を含む光を照射する
ことによってアニール処理が施される。用いる電極材料
の吸収波長帯域は、本実施例で用いたITOと同様にし
て求めることが可能である。
【0084】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、EL発光
層に対してのアニール処理は、前記EL発光層に電界を
印加するための電極を構成する電極材料の吸収波長帯域
を含む光を照射することによって行われる。照射された
光は、前記電極によって吸収され、熱エネルギとして蓄
積されるので、EL発光層が効率良く加熱される。した
がって、アニール処理に要する時間が短くなり、また、
従来技術と同じ設定温度となるように光を照射して、発
光輝度の高い素子を得ることができる。さらに、前記E
L発光層および電極が形成される透光性基板の変形が生
じる限界温度以下でアニール処理を行って、高い発光輝
度を得ることができる。
【0085】また本発明によれば、前記電極材料として
はインジウム錫酸化物が選ばれ、前記光としては1.1
μm〜1.5μmの波長帯域にピーク波長を有する光が
選ばれる。これによって、前記効果が得られることが確
認された。
【0086】また本発明によれば、前記アニール処理時
の昇温速度は、200℃/分以上600℃/分以下の範
囲に選ばれ、好ましくは400℃/分以上500℃/分
以下の範囲に選ばれる。これによって、発光輝度が10
%以上改善し、また処理時間が短縮されて生産性が向上
するとともに、温度制御が容易となることが確認され
た。
【0087】また本発明によれば、EL発光層が所定の
温度に到達した直後に光照射が停止される。これによっ
ても、上述した効果が得られることが確認され、さらに
生産性が向上する。
【0088】また本発明によれば、前述したアニール処
理は不活性ガス雰囲気中において行われる。前記不活性
ガスとしてはN2 、Ar、Heのうちのいずれか1つ、
または少なくともいずれか2つの混合物が選ばれる。し
たがって、比較的安価に、加熱時における酸素の影響に
よって生じる発光むらをなくすことができる。
【0089】また本発明によれば、保持手段に保持され
るアニール処理されるべき処理用基板の表面のほぼ全面
に光が照射される。したがって、一括して均一にアニー
ル処理を行うことができる。
【0090】また好ましくは前記処理用基板の表面より
も大きい領域に光が照射される。これによってさらに均
一にアニール処理を行うことができる。
【0091】また本発明によれば、光源からの光は集光
されて保持手段に保持された基板に向けて照射される。
光源および反射板を含む光照射手段は駆動手段によって
移動し、保持手段に保持された処理用基板のほぼ全面に
光が照射される。またあるいは保持手段が駆動手段によ
って移動し、前記光源からの光が保持手段に保持された
処理用基板のほぼ全面に照射される。このように光源か
らの光が集光されて照射されるので、光照射部分の温度
を高速に昇温することができ、かつ、高温にすることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である薄膜EL素子の製造方
法に基づいて作成された薄膜EL素子11の構成を示す
断面図である。
【図2】前記薄膜EL素子11の形成方法を示す工程図
である。
【図3】前記形成方法を段階的に示す断面図である。
【図4】前記薄膜EL素子11を作成するための製造装
置であるアニール装置21の概略的構成を示す断面図で
ある。
【図5】光照射手段29の光照射面を示す平面図であ
る。
【図6】図4とは直交する方向で切断したときの光源2
3および反射板24を示す断面図である。
【図7】アニール処理の手順を示す工程図である。
【図8】アニール処理時の設定温度と、当該温度でアニ
ール処理を行ったEL発光層15のX線回折強度との関
係を示すグラフである。
【図9】アニール処理時の設定温度と、作成された薄膜
EL素子11の発光輝度との関係を示すグラフである。
【図10】昇温速度と発光輝度改善率との関係を示すグ
ラフである。
【図11】アニール処理に要する時間を示すグラフであ
る。
【図12】一定出力で光照射したときの光照射時間と、
熱電対28から測定された温度との関係を示すグラフで
ある。
【図13】本発明の他の実施例であるアニール装置41
の概略的構成を示す断面図である。
【図14】光照射手段49の光照射面を示す平面図であ
る。
【図15】図13とは直交する方向で切断したときの光
源43および反射板44を示す断面図である。
【図16】光照射手段49の移動速度を2mm/秒とし
て、熱電対48からの測定温度が設定温度となったとき
に移動を開始した際の、設定温度と発光輝度との関係を
示すグラフである。
【図17】他の薄膜EL素子61の構成を示す断面図で
ある。
【図18】さらに他の薄膜EL素子70の構成を示す断
面図である。
【図19】従来の薄膜EL素子の製造時に用いられるア
ニール装置1の概略的構成を示す断面図である。
【図20】前記アニール装置1を用いた従来のアニール
処理の手順を示す工程図である。
【符号の説明】
11,61,70 薄膜EL素子 11a,11b,11c アニール処理用基板 13 下部電極 15 EL発光層 17 上部電極 21,41 アニール装置 22,42 ステージ 23,43 光源 24,44 反射板 25,45 電極 26,46 電源 27,47 ハウジング 29,49 光照射手段 50 駆動手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05B 33/10 H05B 33/14

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも1つのEL発光層と、前記E
    L発光層に電界を印加するための電極とを含む薄膜EL
    素子の製造方法において、 母材と当該母材中に添加される発光中心とを含んで成る
    前記EL発光層を加熱して、前記母材の結晶性を向上す
    るとともに前記発光中心の母材への分布を均一にするア
    ニール処理を、前記電極を構成する電極材料の吸収波長
    帯域を含む光を照射することによって行うことを特徴と
    する薄膜EL素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記電極材料としてインジウム錫酸化物
    が選ばれ、 前記光として1.1μm〜1.5μmの波長帯域にピー
    ク波長を有する光が選ばれることを特徴とする請求項1
    記載の薄膜EL素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記アニール処理時の昇温速度は、20
    0℃/分以上600℃/分以下の範囲に選ばれることを
    特徴とする請求項1記載の薄膜EL素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記アニール処理時の昇温速度は、40
    0℃/分以上500℃/分以下の範囲に選ばれることを
    特徴とする請求項3記載の薄膜EL素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記EL発光層が所定の温度に到達した
    直後に光照射を停止することを特徴とする請求項1記載
    の薄膜EL素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 不活性ガス雰囲気中で光を照射すること
    を特徴とする請求項1記載の薄膜EL素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 少なくとも1つのEL発光層と、前記E
    L発光層に電界を印加するための電極とが形成された処
    理用基板を、所定の保持面に載置して保持する保持手段
    と、 前記電極を構成する電極材料の吸収波長帯域を含む光
    を、前記保持面に載置された処理用基板に向けて照射す
    る光照射手段とを含むことを特徴とする薄膜EL素子の
    製造装置。
  8. 【請求項8】 前記光照射手段による光の照射領域は、
    前記保持面に載置された処理用基板の表面の大きさにほ
    ぼ等しく、またはより大きく選ばれることを特徴とする
    請求項7記載の薄膜EL素子の製造装置。
  9. 【請求項9】 前記光照射手段による光の照射領域は、
    前記保持面に載置された処理用基板の表面の大きさより
    も小さく選ばれ、 前記保持手段および前記光照射手段のうち少なくともい
    ずれか一方を移動させることによって、処理用基板の全
    面に、前記光照射手段からの光を照射することを特徴と
    する請求項7記載の薄膜EL素子の製造装置。
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