JP2822889B2 - 情報記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

情報記録媒体およびその製造方法

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JP2822889B2
JP2822889B2 JP6170362A JP17036294A JP2822889B2 JP 2822889 B2 JP2822889 B2 JP 2822889B2 JP 6170362 A JP6170362 A JP 6170362A JP 17036294 A JP17036294 A JP 17036294A JP 2822889 B2 JP2822889 B2 JP 2822889B2
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尚 森川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高分子液晶化合物を含有
する記録層にトラッキング用光学パターンを形成した書
き換え可能な情報記録媒体およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】光メモリーは、大容量、かつ、ランダム
アクセス可能なものとして実用化されており、その方式
も様々で再生専用のデジタルオーディオディスク(C
D)やレーザービデオディスク(LD)、ユーザーが記
録可能な追記型光ディスク(WO)や光カード(OC)
等がある。近年は、さらに、書き換え可能な光記録媒体
の開発が活発に行われ、光磁気効果を用いたものや、相
変化を用いたものが実用化されている。高分子液晶化合
物も光記録媒体として均一配向状態中に無配向状態のビ
ットを形成する方式(特開昭62−12937号公
報)、無配向状態中に等方相を固定化する方式(特開昭
63−191673号公報)等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これら光記録媒体にお
いては、基板として、ガラスもしくはプラスチックを用
いた場合、大容量の記録を行うために基板に微細なトラ
ッキング用グルーブを形成する必要があり、金型を用い
たりエッチング等によりグルーブ形成を行っているが、
生産効率が低いという問題点がある。充分なトラッキン
グを行うためには、グルーブの高低差を大きくとった
り、グルーブを形成した基板と記録層の間に反射層を設
ける必要があるが、これらの方法はさらにコストを上昇
させ、また、コントラストを低下させる等の問題点があ
る。また、形成したグルーブは熱変形しやすく、記録・
再生・消去によってトラッキングが不安定になり、ノイ
ズレベルが上昇するという問題点がある。本発明は、従
来の技術における上記の問題を解決することを目的とし
てなされたものである。すなわち、本発明の目的は、安
定にトラッキングを行うことができ、記録、再生、消去
によってノイズレベルが上昇しない書き換え可能な情報
記録媒体を提供することにある。本発明の他の目的は、
透明なトラッキング用光学パターンが形成された書き換
え可能な情報記録媒体の製造方法を提供することにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、高分子液
晶化合物を含有する繰り返し記録・消去可能な記録層の
一部に消去不可能な像を形成し、この消去不可能な像を
トラックの検出に用いることにより、トラッキングのた
めの微細加工をする必要がなくなり安価に情報記録媒体
を作製することが可能なことを見出だし、本発明を完成
するに至った。本発明の情報記録媒体は、基材と、基材
上に設けられた高分子液晶化合物を含有する記録層とを
備えたものであって、その該記録層が、前記高分子液晶
化合物の透明化によって形成された消去不可能なトラッ
キング用の光学パターンを有することを特徴とする。ま
た、本発明の情報記録媒体の製造方法は、基材上に高分
子液晶化合物を含有する記録層を形成し、該記録層の一
部に像形成を行った後、液晶相−等方相転移温度よりも
低い温度で架橋することにより、前記高分子液晶化合物
の透明化による消去不可能な光学パターンを形成するこ
とを特徴とする。
【0005】以下、本発明を具体的に説明する。図1お
よび図2は、本発明の情報記録媒体の基体構成を示し、
図1は読み取りを光透過率の変化により行う場合の情報
記録媒体の断面図を表わす。図1中、1は透明なトラッ
キング用の光学パターン4が形成された高分子液晶化合
物を含有する記録層であり、基材2上に形成されてい
る。さらに、記録層上に保護層3が形成されている。ま
た、図2は、読み取りを光反射率の変化により行う場合
の情報記録媒体の断面図を表わす。図2中1は、透明な
トラッキング用の光学パターン4が形成された高分子液
晶化合物を含有する記録層であり、光反射層5を形成し
た基材2上に形成されている。さらに、記録層上に保護
層3が形成されている。
【0006】基材としては、ガラス、金属、セラミッ
ク、プラスチック等を用いることが可能であり、それら
の中で特に好ましくはプラスチックが用いられる。基材
に用いられるプラスチックとしては、ポリメタクリレー
ト、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネー
ト、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロ
ピレン、ポリスチレン等があげられる。特に、光学的均
質で複屈折性が小さく、熱変形しにくいものが望まし
く、好ましくはポリメタクリレート、ポリカーボネート
等が用いられる。また、基材として種々の電極付基板を
用いることも好ましい。
【0007】基材の上に設けられる記録層は、高分子液
晶化合物を含有する組成物(以下、高分子液晶組成物と
いう。)によって形成される。本発明における高分子液
晶化合物は、加熱後の急冷や徐冷の差によって、或いは
加熱後に電界や磁界を印加するか否かの差によって、光
透過率や光反射率が可逆的に変化し、しかもそれがガラ
ス転移温度以下で安定に保持されるという特性を有する
ものであって、書き換え型情報記録媒体の記録層として
有用である。記録層に用いられる高分子液晶化合物とし
ては、主鎖または側鎖にメソゲン(液晶性を示す分子)
が結合した主鎖型および側鎖型高分子液晶化合物等が知
られており、本発明では、そのいずれを用いてもよい
が、特に側鎖型高分子液晶化合物が好ましく使用され
る。また、本発明では主鎖または側鎖の1成分として反
応性基を含有する高分子液晶化合物が好ましく使用され
る。反応性基としてはビニル基、アクリレート基、メタ
クリレート基、エポキシ基等の複素環基、イソシアネー
ト基等の付加或いは重合化可能な基、水酸基、アミノ
基、酸アミド基、チオール基、カルボキシル基、スルホ
ン酸基、リン酸基、金属アルコラート基、マグネシウム
ハライド(グリニヤール)基等が好ましい。
【0008】次にこのような高分子液晶化合物の製造方
法について説明する。通常、側鎖型高分子液晶化合物
は、重合可能なメソゲン化合物を重合したり、重合可能
なメソゲン化合物と非メソゲン化合物とを共重合した
り、あるいは、水素化ポリシリコーン等の反応性ポリマ
ーに付加反応可能なメソゲン化合物を付加させて製造す
る。このような技術は、Makromol.Che
m.,p273,179(1978),Eur.Pol
ym.J.,p651,18(1982)、Mol.C
ryst.Liq.Cryst.,p167,169
(1989)等に開示されており、本発明の高分子液晶
化合物も同様な方法で製造することができる。上記した
重合可能なメソゲン化合物や付加反応可能なメソゲン化
合物としては、ビフェニル系、フェニルベンゾエート
系、シクロヘキシルベンゼン系、アゾキシベンゼン系、
アゾベンゼン系、アゾメチン系、フェニルピリミジン
系、ジフェニルアセチレン系、ビフェニルベンゾエート
系、シクロヘキシルビフェニル系、ターフェニル系等の
剛直な分子(メソゲン)に、所定の長さのアルキルスペ
ーサーを介して、アクリル酸エステル、メタクリル酸エ
ステル基またはビニル基が結合した化合物が代表的なも
のとしてあげられる。これらの代表的な構造例を下記に
示す。 CH2 =C(Ra )−COO−(CH2 l −O−A CH2 =CH−(CH2 l −O−A [式中、Ra は、水素またはメチル基を表し、lは1〜
30の中から選ばれる整数を表し、Aは下記構造のメソ
ゲンを表す。
【0009】
【化1】 (式中、XおよびYは,それぞれ単結合、−N=N−、
−N(→O)=N−、−CH=N−、−N=CH−、−
COO−、−O(C=O)−およびエチニレン基から選
択される基を表わし、R1 はアルコキシ基、ハロゲン原
子、シアノ基、カルボキシル基およびアルキル基から選
択される基を表わし、pは1〜5の中から選択される整
数を表し、pが2以上の場合、それぞれのR1 は異なる
ものであってもよい。)]
【0010】本発明における高分子液晶化合物は、上記
のメソゲン化合物に加えて前記した反応性基を持つ化合
物を共重合あるいは共付加させることにより製造するこ
とができるが、この際に使用する反応性基を持つ化合物
の具体例としては、(メタ)アクリル酸、ω−カルボキ
シ−ポリカプロラクトン−モノ(メタ)アクリレート、
スルホン酸ビニル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ
ート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−
(メタ)アクリロキシエチルアシッドフォスフェート、
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アク
リレート、2−(メタ)アクリロキシエチルサクシネー
ト、フタル酸モノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)
アクリロキシエチル(2−ヒドロキシエチル)フタレー
ト、4−(メタ)アクリロキシアルキルオキシ−ベンゾ
イックアシッド、グリセリル(メタ)アクリレート、ヒ
ドロキシスチレン、(メタ)アクリルアミド、N,N−
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−
ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジ
ル(メタ)アクリレート、2−プロペン−1−オール、
5−ヘキセン−1−オール等があげられる。また、これ
らの化合物を共重合あるいは共付加させた後に、他の反
応性基を導入して反応性基を変換しても構わない。例え
ば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合
し、導入された水酸基に(メタ)アクリル酸等を付加さ
せて高分子側鎖に重合可能な基を導入することができ
る。ここで例示したものは一例であって、特に限定する
ものではない。
【0011】上記した反応性基を持つ化合物の、高分子
液晶化合物中への共重合または共付加割合は、単量体単
位として0.1モル%〜70モル%の範囲が好ましい。
高分子液晶化合物の分子量は、重量平均で1000〜1
00万の範囲、特に好ましくは1万〜50万の範囲であ
る。また、本発明におけるの高分子液晶化合物の製造に
おいては、上記したメソゲン化合物と反応性基を持つ化
合物の2種類以外にも、種々の化合物を第3成分として
共重合または共付加することができる。例えば、(メ
タ)アクリル酸アルキルおよびその誘導体、スチレンお
よびその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、ビニルピロリドン、1−ヘキセ
ン、1−オクテン等があげられる。これらの化合物の使
用は、マルチドメイン構造や熱特性の制御に有益であ
る。なお、上記した各高分子液晶化合物は、複数種併用
しても構わない。
【0012】本発明において、記録層には、高分子液晶
化合物を加熱により架橋させるための触媒或いは多官能
反応性化合物を含有させるのが好ましい。触媒として
は、各種紫外線重合開始剤、熱重合開始剤等があげら
れ、多官能反応性化合物としては、多官能イソシアネー
ト化合物、多官能エポキシ化合物、多官能メラミン化合
物、多官能アルデヒド化合物、多官能アミン化合物、多
官能カルボキシル化合物等が好ましく使用される。触媒
や多官能反応性化合物の添加量は高分子液晶化合物に対
して0.01重量%〜20重量%の範囲が好ましい。
【0013】また、本発明の情報記録媒体においては、
照射光を熱に変換する手段として、記録層中に色素等の
光吸収剤を添加混合するのが好ましい。また、記録層中
に光吸収剤を添加する代わりに、記録層に隣接して光吸
収層を設けてもよい。光吸収層は記録層に対して光入射
側に挿入した方が効果が大きい。光吸収層の膜厚は分散
る色素の濃度にもよるが1〜10μmの範囲が好まし
い。また、記録層中に色素等の光吸収剤を添加混合する
場合、色素の濃度は0.1〜20重量%、好ましくは
0.5〜10重量%の範囲が適当である。濃度が0.1
重量%よりも低い場合には、照射したレーザービームを
熱に変化させる効率が悪く、また、濃度が20重量%よ
りも高い場合には、液晶相が消失し記録層としての機能
が失われる。
【0014】本発明に用いられる光吸収剤は、特に限定
されるものではなく、通常の各種レーザー吸収剤を使用
することができる。但し、使用するレーザーの波長領域
に高い感度を有する色素を使用する方がより効果的であ
る。以下にその具体例を示すが、これらに限定されるも
のではない。
【化2】
【0015】
【化3】 これら半導体レーザー用化合物は、近赤外域に吸収を持
ち、安定な光吸収色素として有用であり、かつ、高分子
液晶化合物に対して相溶性もしくは分散性がよい。本発
明の記録層には特性向上を目的として、上記以外の種々
の成分を加えても構わない。例えば、耐候性の向上を目
的としてヒンダードアミンやヒンダードフェノール等の
各種酸化防止剤を添加してもよい。添加量は高分子液晶
組成物中に0.01〜5重量%の範囲が好ましい。
【0016】本発明の情報記録媒体には、表面に保護層
を設けてもよい。保護層としては耐熱性の高いものが望
ましく、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、熱硬
化ポリマー、紫外線硬化ポリマーなどが使用可能であ
る。保護層は複数層積層されていてもよく、また、保護
層の厚さは好ましくは0.1〜20μmの範囲から選択
される。また、本発明の情報記録媒体には、基材と記録
層の間に反射層を設けてもよい。反射層としては、アル
ミニウム等の金属蒸着膜や誘導体ミラーが使用できる
が、使用するレーザー光に対して高い反射率を有するも
のが望ましい。また、レーザー照射を行う面に反射防止
膜等を形成するのも望ましい。
【0017】次に、本発明の情報記録媒体の作製方法に
ついて説明する。本発明の情報記録媒体は、少なくとも
高分子液晶化合物からなる光学異方性のあるマルチドメ
イン構造を有する記録層を形成し、その一部に透明な像
を形成した後、架橋して、記録層中に透明な消去不可能
な光学パターンを部分的に形成し、これをトラックの検
出に利用することを特徴としている。ここでいう“光学
異方性のあるマルチドメイン構造”とは、高分子液晶組
成物が形成する複屈折などの光学異方性をもつ複数のド
メインから構成される構造である。このようなドメイン
は、高分子液晶組成物内部の液晶分子の配向性の違いに
よって形成されている。つまり、一つのドメイン内部は
液晶分子がほぼ同一方向に配向した状態であり、配向の
結果、一つのドメインに光学的な異方性が生じ、他のド
メインとは光学的に区別することができる。“マルチド
メイン構造”は、このような光学的異方性を示すドメイ
ンの集合体であり、各ドメインごとの光学的異方性の方
向(液晶分子の配向方向)はランダムであることが好ま
しい。また、マルチドメイン構造におけるドメイン径の
大きさが可視光の波長程度の大きさである場合、可視光
を強く散乱させ、強く白濁する。具体的なドメイン径の
好ましい大きさは、ドメイン分布数の極大におけるドメ
イン径が3μm以下、好ましくは200nm〜1500
nmの範囲である。また、ドメイン径の分布における最
大ドメイン径と最少ドメイン径との差が5μm以下の、
ほぼ均一な大きさのドメインであることが好ましい。こ
のようなドメイン径の大きさは、高分子液晶化合物の組
成や組成物の組成を変化させることにより制御すること
が可能である。
【0018】本発明においては、まず、基材上に、上記
各成分より構成された高分子液晶組成物を溶液状態でス
ピンコーター等を用いて塗布して記録層を形成し、次い
で形成された光散乱性を示す記録層の一部に透明な像を
形成する。透明な像を形成するためには、熱、電界ある
いは磁界を単独にあるいは複合させて用いればよく、そ
れによって、側鎖液晶基の配向状態や秩序が制御されて
透明な像が形成される。例えば、高分子液晶化合物を主
成分とする光散乱性を示す組成物を、レーザー、あるい
はホットスタンパーや熱ローラー等を用いて、部分的に
液晶相−等方相転移転移点以上に加熱し(透明状態)、
急冷することによって、透明のままガラス状態で固定さ
れる。この像は高分子液晶組成物のガラス相転移点以下
では安定に保持される。
【0019】次いで、形成された透明な像を有する記録
層を架橋させる。架橋は、熱、光、電子線などを付与す
ることにより行われ、記録層に添加された触媒の作用に
より、或いは高分子液晶化合物の反応性基と多官能反応
性化合物との付加反応等により実施される。架橋を実施
する温度範囲は、該高分子液晶化合物の液晶相−等方相
転移温度より低い温度範囲、より好ましくはガラス相転
移点以下の温度範囲が採用される。液晶相−等方相転移
点以上に加熱すると架橋する前に透明な像が失われてし
まう。加熱をガラス相転移温度より低い温度範囲で行う
場合には、透明な像が安定に固定されたまま架橋を行う
ことが可能であり、より鮮明な光学パターンを形成する
ことが可能となるので好ましい。
【0020】本発明の情報記録媒体の作製について、よ
り具体的に説明すると、高分子液晶組成物を溶液状態で
スピンコーター等を用いて基材上に塗布し、所望の形態
に加工した後に、レーザー、あるいはホットスタンパー
や熱ローラー等を用いて液晶相−等方相転移点以上に加
熱し、その後急冷することによって透明な像を形成し、
次いで、ガラス相転移温度以下の温度範囲に加熱して高
分子液晶化合物を架橋させる。それにより記録層に透明
な光学パターンが形成される。架橋後においては、上記
のようにして形成された透明な光学パターンは、液晶相
−等方相転移点以上に加熱/冷却しても再び白濁状態に
は戻らず、この光学パターンは半永久的に保持される。
一方、白濁部分はレーザー光等を用いて液晶相−等方相
転移点以上に加熱した後、急冷することにより記録を、
また、加熱後徐冷することにより消去を、繰り返し実施
することが可能である。すなわち、同一媒体上に消去不
可能な透明なトラッキング用光学パターンと、記録/消
去が可能な白濁領域を併せ持った情報記録媒体が作製さ
れる。
【0021】次に、図3の(A)〜(E)は、高分子液
晶化合物を用いた記録層の書き替え可能領域の初期の分
子配向と記録時および記録消去後の分子配向状態の説明
図である。図3(A)に示す初期配向状態の高分子液晶
化合物は、記録時には書き込み光(図3(D))によ
り、一旦等方状態まで加熱された後、ガラス転移温度以
下に急冷され、この状態が固定されることによって、透
過率または反射率が高くなる(図3(B))。この記録
部分に、例えば書き込み光に強度変調を施した消去光
(図3(E))を照射し、記録層を徐冷して等方状態か
ら液晶状態に変化させると、初期配向と同じ状態が得ら
れる(図3(C))。また、選択的な消去には、余熱ヒ
ーターで記録層を高分子液晶化合物のガラス転移温度程
度に加熱し、選択的に光照射することによって光照射部
が徐冷条件になり、この場合、書き込み時よりも低パワ
ーの照射光で消去できる。また、一括消去等、大量・高
速消去時にはサーマルヘッド等により加熱する方法も好
適である。記録の読み出しは書き込み光・消去光よりも
低パワーの読み出し光を記録部に照射し、透過率または
反射率をモニターすることにより行うことができる。
【0022】次に、本発明の情報記録媒体をトラッキン
グする場合について説明する。トラッキング方法として
は、透過光を調べる方法と反射光を調べ得る方法がある
が、透過光を調べる場合を例にとって、図4(A)〜
(C)を用いて説明する。記録層1の一部に消去不可能
な光学パターン4(透明部)を情報記録媒体にレーザー
光6を照射し、透過した照射光強度を受光器7によって
調べる。もしも、図4(B)および(C)に示すよう
に、記録・消去可能領域(白濁部)の中心に光が照射さ
れていない場合、透明部と白濁部で透過率が異なるため
に、透過光強度は左右で違いが生じる。この違いをもと
に照射光の位置を左右に動かすことによってトラッキン
グを行うことができる。記録層の一部に消去不可能な像
を形成し、これをトラッキングに用いる本発明の情報記
録媒体においては、記録層の高分子液晶化合物が架橋さ
れることによって、記録・再生・消去を繰り返しても、
トラッキングが不安定になることがない。それによっ
て、ノイズレベル、ビットエラーレートも低く抑えるこ
とが可能である。なお、本発明の情報記録媒体の記録層
に記録を行う場合、照射光を熱に変換する手法が採用さ
れる場合、照射光は単色性・直進性に優れたレーザー光
が好ましく、特にコンパクト性や消費電力等の点で半導
体レーザーが好ましい。
【0023】図5に光反射率の変化を利用して読み出し
を行う場合の記録・再生・消去の構成図を示す。8は半
導体レーザー、9はフォトダイオード、10はレンズ、
11は偏光ビームスプリッター、12はターンステー
ジ、13は1/4波長板、14は情報記録媒体である。
半導体レーザー8からのパルス光を情報記録媒体14に
照射し、記録層を加熱した後、急冷することにより光散
乱を減少させる。記録の再生には、半導体レーザー8の
出力を低くして一旦情報記録媒体に照射し、戻ってきた
光をビームスプリッター11を通じてフォトダイオード
9で受け、光散乱強度の差を反射光量から検出すること
により行われる。また、半導体レーザー8からのレーザ
ー光のスポット径を大きくして、記録時より照射エネル
ギーを大きくし、情報記録媒体に照射することにより記
録層を加熱した後、徐冷し、再度光散乱を増大させるこ
とにより記録の消去が行われる。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的
に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。 実施例1
【化4】 メソゲンモノマーとして、4−アクリロキシヘキシルオ
キシ−4′−シアノビフェニルを1.9gおよび反応性
モノマーとして、2−ヒドロキシエチルアクリレート
0.1gをAIBNを開始剤としてテトラヒドロフラン
中で重合し、エチルアルコールを用いて3回再沈澱精製
して構造式(I)で示される高分子液晶化合物1.9g
(重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算):
40000、Tg(ガラス転移温度):40℃、Ti
(液晶相−等方相転移点):110℃)を得た。上記高
分子液晶化合物1.0gに対し、架橋剤として多官能イ
ソシアネート化合物である4,4′−ジフェニルメタン
ジイソシアネート0.05g、構造式(II)で示される
IR吸収色素0.01g、溶媒としてメチルエチルケト
ン(MEK)3.0gを加えた溶液をアルミニウムを蒸
着した厚さ1mmのディスク状ポリカーボネート基板上
にスピンコートにより製膜し、膜厚厚3μmの高分子液
晶層を形成した。さらに高分子液晶層上に紫外線硬化組
成物(商品名:アロニックスUV、東亞合成社製)を塗
布し、高圧水銀ランプを用いて硬化することによって、
膜厚約2μmの保護層を形成し、情報記録媒体を作製し
た。この情報記録媒体に、同心円状の凹凸パターンを形
成したホットスタンパー(図6参照)(溝の深さa:
0.5μm、溝の幅b:1.0μm、溝ランド部の幅
c:1.0μm)により印字を行い、同心円状の透明パ
ターンを形成した。この際の印字条件は、ホットスタン
パーの温度130℃で印字時間0.5秒であった。その
後、35℃のオーブン中で24時間反応させて架橋を行
った。架橋後、この情報記録媒体を120℃に加熱した
ところ、一様な透明状態となり、室温まで冷却すると、
架橋前に形成した透明パターンは透明なままに、他の部
分は白濁した。すなわち、上記の作製方法によって、消
去不可能なトラッキング用光学パターンが記録層中に形
成されていることが確認された。この情報記録媒体に、
保護層側から波長830nm、出力8mWの半導体レー
ザーを用いて記録層上に1μmのスポット径、ディスク
回転数1800rpmにて記録を行い、1mWの出力で
再生したところ、良好なトラッキングがかかり、再生C
/Nは1MHzで46dBであった。記録に用いた半導
体レーザーの出力を15mWに上げ、スポット径を1.
3μmに広げ記録部に照射することにより消去を行っ
た。この様な記録・消去を100回繰り返したところ、
C/Nは44dBと良好であり、書き込み部分の読取り
エラーはなかった。
【0025】比較例1
【化5】 実施例1で使用した構造式(I)で示される高分子液晶
化合物1.0gに対し、構造式(II)で示されるIR吸
収色素0.01g、溶媒としてメチルエチルケトン(M
EK)3.0gを加えた溶液をアルミニウムを蒸着した
厚さ1mmのディスク状ポリカーボネート基板上にスピ
ンコートにより製膜し、膜厚約3μmの高分子液晶層を
形成した。乾燥後、実施例1で使用したホットスタンパ
ーを100℃に加熱し、スタンパーを高分子液晶層に圧
接することにより、同心円状の溝を形成した。基板をス
タンパーから剥がした後、高分子液晶層上に実施例で用
いた紫外線硬化組成物を塗布し、高圧水銀ランプを用い
て硬化することにより、膜厚約2μmの保護層を形成
し、情報記録媒体を作製した。この情報記録媒体に実施
例1と同様に書き込み、読み取りを行ったところ、再生
C/Nは1MHzで40dBであった。また、実施例1
と同様に記録・消去を100回繰り返したところ、読み
取りのエラー率が10%となった。
【0026】比較例2 実施例1で使用した前記構造式(I)で示される高分子
液晶1.0gに対し架橋剤として多官能イソシアネート
化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン社製)
0.05g、前記構造式(II)で示されるIR吸収色素
0.01g、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)
3.0gを加えた溶液をアルミニウムを蒸着した厚さ1
mmのディスク状ポリカーボネート基板上にスピンコー
トにより製膜し、膜厚約3μmの高分子液晶層を形成し
た。乾燥後、実施例で使用したホットスタンパーを高分
子液晶層に圧接して100℃で4時間架橋を行った。基
板をスタンパーから剥がした後、高分子液晶層上に実施
例1で用いた紫外線硬化組成物を塗布し、高圧水銀ラン
プを用いて硬化することにより、膜厚約2μmの保護層
を形成し情報記録媒体を作製した。この情報記録媒体
に、実施例1と同様に書き込み、読み取りを行ったとこ
ろ、再生C/Nは1MHzで40dBであった。また、
実施例1と同様に記録・消去を100回繰り返したとこ
ろ、再生のC/Nは38dBとなった。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、高分子液晶化合物を含
有する記録層の一部に消去不可能な光学パターンを形成
し、これをトラッキングに用いることにより、トラッキ
ングのための微細加工をする必要がなくなり、安価に情
報記録媒体を作製することが可能なだけでなく、形成し
た光学パターンは熱変形がなく、記録・再生・消去によ
ってトラッキングが不安定になったり、ノイズレベルが
上昇する問題点が解決可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 読み取りを光透過率の変化により行う場合の
情報記録媒体の模式的断面図である。
【図2】 読み取りを光反射率の変化により行う場合の
情報記録媒体の模式的断面図である。
【図3】 (A)〜(E)は、高分子液晶を用いた記録
層の記録・消去可能領域の初期の分子配向と記録時およ
び記録消去後の分子配向状態の変化を示す説明図であ
る。
【図4】 トラッキング方法を説明するための説明図で
ある。
【図5】 光反射率の変化を利用して読み出しを行う場
合の記録・再生・消去の装置の概略構成図である。
【図6】 ホットスタンパーに用いる金型の断面図を示
す。
【符号の説明】
1…記録層、2…基材、3…保護層、4…光学パター
ン、5…光反射層、6…レーザー光、7…受光器、8…
半導体レーザー、9…フォトダイオード、10…レン
ズ、11…偏光ビームスプリッター、12…ターンステ
ージ、13…1/4波長板、14…情報記録媒体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 7/24 G02F 1/13 G02F 1/1333 G02F 1/137 G11B 7/26

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材と、基材上に設けられた高分子液晶
    化合物を含有する記録層とを備えた情報記録媒体におい
    て、該記録層が、前記高分子液晶化合物の透明化によっ
    て形成された消去不可能なトラッキング用の光学パター
    ンを有することを特徴とする情報記録媒体。
  2. 【請求項2】 該高分子液晶化合物が、メソゲン単量体
    単位および非メソゲン単量体単位を含む共重合体である
    ことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
  3. 【請求項3】 該高分子液晶化合物が、主鎖または側鎖
    の反応性基により架橋されていることを特徴とする請求
    項1記載の情報記録媒体。
  4. 【請求項4】 該記録層が、光吸収性色素を含有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
  5. 【請求項5】 該記録層上に保護層が設けられたことを
    特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
  6. 【請求項6】 基材上に高分子液晶化合物を含有する記
    録層を形成し、該記録層の一部に像形成を行った後、
    晶相−等方相転移温度よりも低い温度で架橋することに
    より、前記高分子液晶化合物の透明化による消去不可能
    な光学パターンを形成することを特徴とする情報記録媒
    体の製造方法。
  7. 【請求項7】 該記録層の一部に像形成を行った後、高
    分子液晶化合物のガラス相転移温度以下の温度で架橋す
    ることを特徴とする請求項6記載の情報記録媒体の製造
    方法。
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