JP2812913B2 - 無粒界型マンガン酸化物系結晶体及び低磁場感応性磁気抵抗素子 - Google Patents
無粒界型マンガン酸化物系結晶体及び低磁場感応性磁気抵抗素子Info
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Description
構造をもつ、新規な無粒界型マンガン酸化物系結晶体及
びその製造方法に関するものである。さらに詳しくいえ
ば、本発明は、低磁場における磁気伝導特性を飛躍的に
向上させることにより、低磁場においてメモリースイッ
チンングを行わせるのに好適なものに改善したペロブス
カイト型構造をもつ無粒界型マンガン酸化物系結晶体及
びその製造方法に関するものである。
見以来、遷移金属酸化物のスピンチャージ性が再び注目
されるようになり、その1つとして、巨大磁気抵抗現象
を示すペロブスカイト型構造のマンガン酸化物材料に対
する研究が行われるようになった。
スカイト型構造のマンガン酸化物系材料としては、La
AlO3基板上にエピタキシャル成長させたLa0.67C
a0.3 3MnOxの薄膜[「サイエンス(Scienc
e)」,第264巻,1994年4月15日発行,第4
13〜415ページ]や、La0.69Pb0.31MnO3、
(La,Ba)MnO3薄膜[「フィジカル・レビュー
・レターズ(Physical Review Let
ters)」,第71巻,1993年発行,第2331
ページ、「アプライド・フィジックス・レターズ(Ap
plied Physics Letters)」,第
63巻,1993年発行,第1990ページ]などが知
られている。しかし、これらの物質は大きな磁場のもと
でなければ、負の巨大磁気抵抗を示すことはできなかっ
た。
化物を主体とする結晶状セラミックスは知られている
が、これらはいずれも多数の粒界によって区画された多
数の結晶の集合体であり、単結晶体のものはこれまで得
られていない。
の巨大磁気抵抗を示し、磁気抵抗素子として利用可能
な、ペロブスカイト型構造をもつ、新規なマンガン酸化
物系材料を提供することを目的としてなされたものであ
る。
カイト型構造のマンガン酸化物系の新しい材料を開発す
るために、種々研究を重ねた結果、先にペロブスカイト
型構造を有する無粒界型マンガン酸化物系結晶体が、磁
気相転移温度付近で、10kOe以上の磁場を印加する
と、大きな磁気抵抗を示し、この際構造相転移を伴うこ
と及びそのヒステリシス特性より磁場による抵抗スイッ
チング素子として利用可能であることを見出したが、実
用に供するにはより低い磁場において巨大な磁気抵抗を
示す材料の開発が必要であった。
た結果、Nd、Sm、Sr及びMnを酸化物又は加熱に
より酸化物に変換しうる化合物の形のものを、一定の原
子比で混合して焼結し、フローティングゾーン法により
結晶成長させることにより、Nd、Smをその構造中に
所定の原子比で含むペロブスカイト型構造を有するマン
ガン酸化物の単結晶すなわち無粒界型結晶体が得られ、
この結晶体は4kOe以下の低磁場においても巨大磁気
抵抗を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明を
なすに至った。
表わされる組成のペロブスカイト型構造をもつ無粒界型
マンガン酸化物系結晶体及びNd、Sm,Sr及びMn
を酸化物又は加熱により酸化物に変換しうる化合物の形
で、Mnに対するNdとSmの合計の原子比が1/2、
Srの原子比が1/2になる割合で混合して焼結し、次
いでこの焼結体を融解状態からフローティングゾーン法
により結晶成長させることにより、前記一般式(I)の
無粒界型マンガン酸化物系結晶体を製造する方法を提供
するものである。
は0.25〜0.95、好ましくはxが0.70〜0.
95の範囲内であることが必要であり、これ以外の組成
であると、所望の磁気抵抗特性を得ることができない。
晶体は例えば次のようにして製造することができる。先
ず通常のセラミックスの製造方法に従い、Nd、Sm、
Sr及びMnの酸化物あるいはそれらの炭酸塩、酸性炭
酸塩のような加熱により容易に酸化物に変換しうる化合
物の粉末を、NdとSmとの原子比が0.25:0.7
5ないし0.05:0.95で、かつMnに対するNd
とSmの合計の原子比が1:0.5、Srの原子比が
1:0.5になる割合で混合する。混合は常法に従って
行うことができるが、例えばアルコールやケトンのよう
な揮発性有機溶媒を用いた湿式混合が有利である。次
に、この混合物を空気中1000〜1400℃の範囲の
温度で焼成した後、得られた焼結体を微細に粉砕し、再
び焼成及び粉砕を繰り返し行う。この繰り返し数が多い
ほど均質なものが得られ、よりよい磁化特性が得られ
る。そして、最後にこの粉砕物をプレス成形などの方法
により、所望に応じてバインダーを用いて、円柱状のよ
うなブロック状に加圧成形したのち、空気中で1100
〜1500℃で焼結したのち、得られた結晶体を酸素を
含む雰囲気中、フローティングゾーン法により融解状態
から結晶成長させる。この結晶成長は、5〜15mm/
hの供給速度で行うことが望ましい。また、この酸素を
含む雰囲気としては、酸素やアルゴンと酸素の混合ガス
や空気などが用いられる。
有する無粒界型単結晶が得られる。この材料が、ペロブ
スカイト型構造を有する無粒界型単結晶であること、及
びそれを構成する各原子比は、粉末X線回折、電子線マ
イクロアナリシス、ICP質量分析及び滴定分析を適宜
併用し、確認することができる。
酸化物系結晶体は、反強磁性状態から強磁性状態への磁
場誘起相転移すなわち絶縁体‐金属転移が結晶構造の変
化を伴って起きる。そして、その転移温度近傍において
わずかに温度変化が生じると電気抵抗及び磁化が急激に
変化する性質を有するとともに、4kOe以下の低い磁
場における特定の領域において3桁以上の電気抵抗変化
すなわち低磁場における巨大磁気抵抗効果を示す。この
磁気抵抗値(MR)は次の式により定義される。
(0)は磁場ゼロのときの抵抗値、R(H)は磁場Hの
ときの抵抗値を意味する。また、この結晶体は、x=
0.70〜0.95の組成のときに温度または磁場誘起
磁化の変化に依存して履歴特性すなわち記憶効果を有す
る。したがって、本発明の無粒界型マンガン酸化物系結
晶体は、磁気記録体、磁気センサーなどのスイッチング
型磁気抵抗素子として好適であり、さらに磁気、構造及
び温度メモリーとして使用することができる。
する。
を、Nd:Sm:Sr:Mnの原子比が0.03:0.
47:0.50:1.00になる割合で秤量し、これに
エタノールを加えて、めのう乳鉢で30分間かきまぜ
た。次にこの混合物を空気中、1050℃において24
時間加熱し、細かく粉砕したのち、再び同様の条件で焼
成し、細かく粉砕した。
の水圧プレスにより直径約5mm、長さ約80mmの円
柱状のロッドに成形し、空気中、1350℃において4
8時間焼成した。
ハロゲン白熱灯と半長円形状焦点鏡を備えたフローティ
ングゾーン炉を用いて結晶成長させた。この際原材料ロ
ッドと種ロッドは逆方向に相対速度30rpmで回転さ
せ、結晶は、100%酸素気流中、5〜8mm/hの速
度で成長させた。
断し、粉砕して粉末状にし、粉末X線回折による分析を
行なったところ不純物相は認められなかった。また、こ
の結晶は、a0=5.42Å、b0=7.65Å及びc0
=5.44Åをもつ斜方晶系(空間群Pnma)結晶で
あることが分った。図1に本発明結晶体のX線回折図を
示す。また、ICP質量分析により、この結晶の組成が
原料配合に基づく計算値と誤差0.2%の範囲でほぼ一
致していることが確認された。
下降させたときの磁化(上段)及び電気抵抗(下段)を
測定し、その結果を図2に示す(磁化については逆数で
表わした)。下段のグラフで、温度113Kのときに電
気抵抗が3桁以上の急激な変化を示している。この急激
な変化は、非金属−金属相転移が生じたことを示す。ま
た、その温度付近で、昇温時と降温時で曲線の経路が異
なることから、相転移温度で約5℃の温度ヒステリシス
を示すことが分った。次に、上段のグラフで同じく11
3K付近で磁化の逆数も急激に変化している。この変化
は弱い反強磁性相から強磁性相への一次転移の特徴であ
る。したがって、本発明結晶体は温度に依存して弱い反
強磁性相から強磁性相へ相転移(以下メタ磁性転移とい
う)し、その転移温度付近で温度ヒステリシスを示すこ
とが分る。また、この転移の前後のX線回折測定によ
り、この相転移が結晶構造の変化を伴っていることが分
った。
における温度と電気抵抗との関係を測定し図3に示し
た。この図から低磁場で電気抵抗値が3桁以上の急激な
変化を示し、その変化時の温度によって表わされる非金
属−金属転移温度が、磁場の印加を強くするに従って高
温に移動していくことが分かる。これは磁場の印加によ
って強磁性相すなわち低抵抗金属相が安定化されたため
と考えられる。したがって、磁場の強度を調整すること
により、より高温で大きな電気抵抗値の変化を得ること
も可能である。
段)及び電気抵抗値(下段)の磁場との関係を相転移上
の温度115Kから240Kの範囲について測定した。
その結果を図4に示す。この温度範囲において上段に示
す磁化からメタ磁性転移を起こしていること及び下段に
示す電気抵抗から4kOe以下の低磁場で3桁以上の変
化が生じていること、それに伴い中段の線膨張率も大き
く変化していることが分る。線膨張率の変化は、結晶体
の体積変化すなわち結晶格子の歪みを示すことから、相
転移に伴い、結晶構造の変化も生じていることが分っ
た。また、陰影を付して表したこの温度範囲では、磁場
ヒステリシスを示すため、メモリー素子への応用が可能
である。
0.50MnO3の組成をもつ単結晶は、温度及び磁場に誘
起されメタ磁性転移による非金属−金属相転移を起し、
それに伴って急激かつ著しい電気抵抗値の変化、及び特
異的なヒステリシスを示すことから、メモリー素子とし
て作用することが分る。またこの巨大磁気抵抗変化は4
kOe以下の低磁場で起きることから、実用的な素子と
して好適である。
す物質であるLa0.75Sr0.15MnO3結晶[「フィジ
カル・レビュー・ビー(Physical Revie
w B)」,第51巻,1995年発行,第14103
ページの数値を引用]及びCo/Cu金属多層膜[「フ
ィジカル・レビュー・レターズ(Physical R
eview Letters)」,第66巻,1991
年発行,第2152ページの数値を引用]と電気抵抗と
磁場との関係において比較した。その結果を図6に示
す。この図から本発明の結晶体は今までに開発された磁
気抵抗効果を示す物質に比べ、はるかに低磁場において
巨大磁気抵抗効果を示すことが分る。
を、Nd:Sm:Sr:Mnの原子比が0.19:0.
31:0.50:1.00になる割合で秤量し、実施例
1と同様にして結晶体を作成し、X線回折等の測定によ
り、この結晶の組成が原料配合に基づく計算値と誤差
0.2%の範囲でほぼ一致していることを確認した。
度範囲における電気抵抗(上段)及び磁化(下段)と磁
場との関係を図5に示す。上段のグラフから4kOe以
下の磁場で1桁以上の大きな磁気抵抗変化がみられた。
しかし、電気抵抗については、磁場ヒステリシスがほと
んどみられない。また、下段のグラフからもメタ磁性転
移が起きていることが分かる。したがって、この組成の
結晶体は、磁場ヒステリシスが好ましくないとされる材
料であって、磁気抵抗効果を利用するもの、例えば磁気
記録ヘッド素子などに好適に用いることができる。さら
に、実施例1と同じ強さの磁場を印加した場合には、よ
り高温で磁気抵抗効果を得ることができる。
体は、文献未載の新規物質であり、反強磁性状態から強
磁性状態への温度及び磁場誘起転移を生じ,高磁場でな
ければ得られなかった巨大磁気抵抗効果変化を4kOe
以下の低磁場で可能なものとし、それに伴い磁場ヒステ
リシスを示すので、メモリースイッチング用素子や磁気
記録ヘッド素子として好適である。
線回折図
逆数と電気抵抗の温度依存性を示すグラフ。
異なる磁場における温度と電気抵抗の関係を示すグラ
フ。
線膨張率、電気抵抗の磁場依存性を示すグラフ。
巨大磁気抵抗効果を示す物質を電気抵抗と磁場との関係
において比較したグラフ。
抗と磁化の磁場依存性の関係を示すグラフ。
Claims (3)
- 【請求項1】 一般式 (Nd1-xSmx)0.5Sr0.5MnO3 (式中のxは0.25〜0.95の範囲の数である)で
表わされる組成のペロブスカイト型構造をもつ無粒界型
マンガン酸化物系結晶体。 - 【請求項2】 Nd、Sm,Sr及びMnを酸化物又は
加熱により酸化物に変換しうる化合物の形で、Mnに対
するNdとSmの合計の原子比が1/2、Srの原子比
が1/2になる割合で混合して焼結し、次いでこの焼結
体を融解状態からフローティングゾーン法により結晶成
長させることを特徴とする、一般式 (Nd1-xSmx)0.5Sr0.5MnO3 (式中のxは0.25〜0.95の範囲の数である)で
表わされる組成のペロブスカイト型構造をもつ無粒界型
マンガン酸化物系結晶体の製造方法。 - 【請求項3】 一般式 (Nd1-xSmx)0.5Sr0.5MnO3 (式中のxは0.25〜0.95の範囲の数である)で
表わされる組成のペロブスカイト型構造をもつ無粒界型
マンガン酸化物系結晶体から成る低磁場感応性磁気抵抗
素子。
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-
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- 1996-03-13 JP JP8055903A patent/JP2812913B2/ja not_active Expired - Lifetime
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