JP2812708B2 - シアナミドの製法 - Google Patents

シアナミドの製法

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、医薬、農薬及び工業用薬品の中間体として
有用なシアナミドの新規な製法に関する。
従来技術: 石灰窒素からシアナミドを製造する方法は、これまで
に種々提案されている。例えば“Inorganic Syntheses
III"、第39〜43頁には、石灰窒素を水性媒体中に分散さ
せ、これに硫酸を添加する製法が開示されている。ま
た、“Chimie & industrie"58、第545〜547頁(1947)
には、石灰窒素を水性媒体中に分散させ、これに塩酸又
は硝酸を添加し、生成したシアナミドを水と混和しない
溶媒、例えば酢酸エチル、で抽出する方法が開示されて
いる。
また、“J.Chem.Soc."1958、第2903頁には、水−エー
テルの二相溶媒系の中に石灰窒素を分散させ、これに蓚
酸を添加して生成するシアナミドをエーテル相に溶解さ
せる、シアナミドの製法が開示されている。
上記に例示した従来の製法では、水の存在が不可欠で
あつた。
従来、工業的には水中にスラリー状に分散した石灰窒
素に炭酸ガスを反応させる方法が採用されている。
この方法では、石灰窒素は、次式(1)のように水と
反応し、 2CaCN2+2H2O→Ca(HNCN)+Ca(OH)……(1) 次いで、生成したCa(HNCN)又はCa(OH)と炭酸
ガスとが、夫々、次式(2)及び(3)のように反応す
ると考えられている。
Ca(OH)+CO2 →H2O+CaCO3 ……(2) Ca(HNCN)+CO2+H2O→2H2NCN+CaCO3 ……(3) これら反応式(1)〜(3)を総合すると、上記の製
法は結局次式(4)、 CaCN2+CO2+H2O→H2NCN+CaCO3 ……(4) に従つているものと考えることができる。
上記反応式より明らかなように、前記の水中に石灰窒
素を分散させてシアナミドを製造する方法では、一般に
反応がアルカリ性の水性媒体で行なわれるのでシアナミ
ドは二量化してジシアンジアミドを副成し易い。副成す
るジシアンジアミドをシアナミドから分離することは一
般に容易ではないので、上記の水性媒体を分散媒に用い
る製法で得られるシアナミドには、ジシアンジアナミド
の夾雑が避けられず、純度92%を越える高純度のシアナ
ミドを工業的に製造することは極めて困難であつた。
本発明の目的は、従来技術の有した上記の諸欠点を解
決し、高純度のシアナミドを石灰窒素より高収率で工業
的に製造し得る新規な方法を提供することにある。
本発明: 本発明によれば、石灰窒素を炭素原子数が1〜3の脂
肪族アルコールを含有してなる有機液体中に分散させ、
得られた分散液の中に炭酸ガスを吹き込むことを特徴と
する、石灰窒素よりシアナミドを製造する方法が提供さ
れる。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明の原料石灰窒素は、カルシウムカーバイドを窒
化炉で窒化することによつて工業的に生産されている。
石灰窒素は、カルシウムシアナミドの外に窒化時副成す
るグラフアイト状炭素及び生石灰等の不純物を含んでい
る。一般に市販の石灰窒素は窒素含有率が20〜27重量%
であり、シアナミド態窒素含有率が19〜26重量%であ
る。本発明の製法においては、石灰窒素を必要に応じて
粉砕し、タイラー標準篩の200メツシユ通過粒分が50重
量%以上になるようにして用いられる。
本発明によれば、石灰窒素を炭素原子数が1〜3、好
ましくは1〜2、最も好ましくは1、の脂肪族アルコー
ルを含有してなる有機液体中に分散させ、得られた分散
液中に炭酸ガスを吹き込むことにより、石灰窒素より高
純度のシアナミドが簡単なプロセスで高収率で製造され
る。
炭素原子数1〜3の脂肪族アルコールとしては、メタ
ノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロ
パノールの1価アルコール及びエチレングリコール、プ
ロピレングリコール類、グリセリンの多価アルコールを
挙げることができる。本願発明の製法においては、これ
等脂肪族アルコールの2種以上の混合物も用いることが
できる。
炭素原子数1〜3の脂肪族アルコールのなかでも、メ
タノール及びエチレングリコールが好ましく、メタノー
ルが殊に好ましい。
本願発明の製法に用いる分散媒である有機液体は、上
記の炭素原子数1〜3の脂肪族アルコールを含有してな
る。上記有機液体は、炭素原子数1〜3の脂肪族アルコ
ールから実質的になつていてもよいが、取得されるシア
ナミドの純度及び収率を損はない程度に、必要に応じ更
なる有機溶媒を含んでいてもよい。
上記の更なる有機溶媒としてはアセトニトリル、ジメ
チルホルムアミド、酢酸エチル、アセトン、テトラヒド
ロフラン等を例示することができる。
本発明においては、分散媒である有機液体中における
石灰窒素分散液の石灰窒素の濃度は、仕込時で、好まし
くは5〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%であ
る。
本発明によるシアナミドの製法においては、上記の石
灰窒素の分散液中に炭酸ガスを吹込むことにより、有機
液体中のシアナミド溶液としてシアナミドが生成する。
本発明で用いる炭酸ガスは必しも高純度である必要はな
く、窒素、酸素、空気等この反応系に対する不活性気体
で適宜希釈されていてもよい。しかし、炭酸ガスのガス
中の濃度が余り低過ぎては、脂肪族アルコールがガスに
同伴して損失する等の問題が生じるので、一般にガス中
の炭酸ガス濃度は20重量%以上、殊に40重量%以上が好
ましく、またガス中の水分量も20重量%以下、好ましく
は2重量%以下、殊に0.2重量%以下である。
炭酸ガス吹込みによる反応は、0.1〜10kg/m2の圧力
下、好ましくは大気圧下で、0〜40℃、好ましくは0〜
30℃の温度で行なわれる。40℃を超えて温度が高すぎて
は、シアナミドの純度が低下する傾向があるので好まし
くなく、一方0℃未満と低すぎても格別の利点が無い。
炭酸ガス吹込による反応終了後、泥状の反応分散液を
常法により濾過して、有機液体中のシアナミド溶液が容
易に取得される。
本発明の製法における反応系の水含有量(分散媒であ
る有機液体中の水の含有量)は、一般に20重量%以下、
好ましくは5重量%以下、より好ましくは3.5重量%以
下、さらに好ましくは2.5重量%以下、最も好ましくは
1重量%以下である。反応系の水の含有量が20重量%以
下と少なくなるに従い、反応終了後の反応分散液はゲル
化を起こすことがなく(ゲル化を起こすと濾過ができな
くなる)、且つ、シアナミドの二量化によるジシアンジ
アミドの副生が抑制される。
本明細書における反応系の水含有量は、炭酸ガス吹込
み反応の終了時点における反応系の水含有量をいう。反
応系の水含有量は以下の方法により測定された。先づ反
応系から採取した反応分散液を遠心分離濾過して、有機
液体不溶分を除去し、得られた濾液(有機液体溶液)を
ガスクロマトグラフイー分析[以下、GC分析(TCD法)
と略称することがある]することにより該濾液中の水含
有量を測定し、反応系の水含有量とした。
本発明の石灰窒素よりシアナミドを製造する新規な方
法においては、どのような化学反応が起きているか明ら
かではない。ただ、脂肪族アルコールとしてメタノール
を用いる場合、前記の泥状の反応分散液よりシアナミド
溶液を取得する際の過残渣であるメタノール不溶分に
水を加えて撹拌することにより、炭酸ガスの発生とメタ
ノール及び炭酸カルシユウムの生成が確認され、さら
に、実施例1に記載したように該不溶分を組織分析する
と、該不溶分中のCa1モル当たり約1.7モルの炭酸根を含
有しており、また、水添加によつて約1.7モルのメタノ
ールが発生することがわかる。これらの事実より、該メ
タノール不溶分は、石灰窒素中のグラフアイト及び式
[A] の化合物(フランス国特許第1,513,416号参照)を主な
成分として含有するものと考えられる。
以上の理由より、本願発明の実施例1においては、石
灰窒素中のカルシウムシアナミド、メタノール及び炭酸
ガスが反応して、シアナミドと上記式[A]の化合物が
生成するものと推定される。
本発明の製法では、シアナミドは有機液体中の溶液と
して取得される。このシアナミド溶液は、保存中にゲル
化を起こす場合もあるので、必要に応じ、該溶液に酸を
添加して、溶液を安定化することができる。安定化に用
いられる酸としては、リン酸、硫酸、硝酸、塩酸等の無
機酸、酢酸、蓚酸等の有機酸及びスルホン酸型陽イオン
交換樹脂等の陽イオン交換樹脂を例示することができ
る。なかでも、リン酸が好適に用いられる。
シアナミド溶液に添加される上記酸の添加量は、該溶
液中に微量に溶存するCa化合物のCa1当量あたり約1当
量が好ましい。
本発明により得られるシアナミド溶液は、必要に応じ
て濃縮、好ましくは減圧下濃縮、して有機液体を除去し
高純度の結晶シアナミドに容易にすることができる。
本発明の効果: 本発明の製法によれば、ジシアンジアミドの副成が極
めて有効に抑制されるので、例えば96%の、高純度のシ
アナミドの溶液又は結晶が高収率で工業的に簡略な方法
で得ることができる。
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例: 実施例1 500の冷却用ジヤケツト及び還流冷却管付ステンレ
ス反応槽に、メタノール375(297kg)(純度99.5重量
%、水含量0.5重量%)及び石灰窒素63kg[窒素含有量2
4.6重量%(カルシウムシアナミドとしての窒素含有量2
3.6重量%);粒度200メツシユ通過65重量%]を仕込
み、撹拌によりスラリー状に分散した。次いで撹拌下、
約15℃に保ちながら約8時間で62.1kgの炭酸ガス(純度
99.99重量%)を導入して反応させ、反応終了後、メタ
ノール不溶分を遠心分離濾過機にて分離した。得られた
液(メタノール溶液)中の水含有量はGC分析(TCD
法)により1.8重量%であつた。メタノール不溶分は、
反応に用いたと同様のメタノール63(50kg)で洗浄
し、洗浄液を濾液に合せ、合計290kgのシアナミドのメ
タノール溶液を得た。該メタノール溶液中のシアナミド
および副生ジシアンジアミドの含有量は、液体クロマト
グラフイー(以下、LCと略称することがある)分析によ
り、それぞれ、6.9重量%および0.02重量%であり、原
料石灰窒素中のカルシウムシアナミドに対するシアナミ
ドの生成収率は90%、ジシアンジアミドの生成率は0.3
%であつた。
該メタノール溶液には、85重量%リン酸3.3Kgを加え
て撹拌し、生じた不溶分を濾別した。かくして得られた
メタノール溶液は1ケ月後もゲル化することなく安定で
あつた。
なお、リン酸を加える前のメタノール溶液の一部を採
り密栓放置したところ、7日後に全体が寒天状にゲル化
した。
また、前記のメタノール不溶分の一部を減圧乾燥後、
その約1gを精秤して還流冷却管付フラスコに入れ、脱イ
オン水10gを加えて室温で約3時間撹拌した後、不溶分
を濾別し、得られた濾液をGC分析してメタノールの定量
を行なつたところ約8.5ミリモル/gであつた。一方、同
様の乾燥メタノール不溶分約1gを精秤してキルダール型
分解フラスコ中に入れ、1N塩酸50ccを加えて緩かに約10
0℃まで加熱し、発生する気体を飽和水酸化バリウム水
溶液中に導入して、沈澱する炭酸バリウムを定量するこ
とにより該不溶分中の炭酸根の量を求めた。該炭酸根の
量は約8.6ミリモル/gであつた。次に、キルダール型分
解フラスコ中の内容物を濾過して濾液を脱イオン水で希
釈して50ccとし、その中10ccを用いてBT試薬を指示薬と
してエチレンジアミン四酢酸を用いてカルシウムの定量
を行つた。カルシウム量は約5.0ミリモル/gであつた。
以上の定量結果より、メタノール不溶分からはカルシウ
ム1モルに対してメタノール及び炭酸根それぞれ約1.7
モルが検出された。
実施例2 撹拌装置及び還流冷却管付き20のガラス製反応槽に
メタノール10(7.93kg)(純度98.3重量%、水含量1.
7重量%)及び実施例1と同様の石灰窒素2kgを仕込み、
撹拌によりスラリー状に分散した。外部より氷浴で冷却
し、約20℃に保ちながら約8時間で実施例1で用いたと
同様の炭酸ガス1.98kgを導入して反応させた。反応終了
後、メタノール不溶分を遠心分離濾過機にて分離した。
実施例1と同様に測定したところ、濾液の水含量は3.3
重量%であつた。該不溶分はさらにメタノール2(1.
586kg純度99.5重量%)で洗浄し、洗浄液を濾液に合
せ、次いで85重量%リン酸129gを加え撹拌し、生じた不
溶分を濾別し、安定化したシアナミドのメタノール溶液
9.40kgを得た。該メタノール溶液中のシアナミド及び副
生ジシアンジアミドの含有量は、実施例1と同様LC分析
により、それぞれ6.8重量%及び0.02重量%であり、原
料石灰窒素中のカルシウムシアナミドに対する生成収率
は、それぞれ90%および0.3%であつた。
なお、リン酸添加前のメタノール溶液の一部をとり密
栓放置したところ、24時間後全体が寒天状にゲル化し
た。またリン酸添加を行つたメタノール溶液は、実施例
1と同様1ケ月後もゲル化することなく安定であつた。
リン酸添加したシアナミドのメタノール溶液を(大
型)エバポレーターを用い減圧下(20Torr)30℃以下の
温度で濃縮しさらに、乾固して、白色結晶0.637kgを得
た。
分析したところ、次のとおりであつた。
純度 99.2 重量% ジシアンジアミド 0.4 重量% 尿素 0.01重量% 水分 0.3 重量% 実施例3 実施例2において、反応温度を約10℃とし、使用する
メタノールの純度を96.3重量%(水含有量3.7重量%)
とする以外は同様にして反応を行つた。反応終了後メタ
ノール不溶分を実施例1と同様に濾別した。実施例1と
同様に測定したところ、濾液中の水含有量は4.3重量%
であつた。
以下、実施例2と同様に不溶分をメタノールで洗浄
し、洗浄液を濾液と合せ、この溶液に85重量%リン酸を
加え、撹拌し、生じた不溶分を濾別して、シアナミドの
メタノール溶液9.40kgを得た。該メタノール溶液中のシ
アナミド及び副生ジシアンジアミドの含有量は、実施例
1と同様LC分析により、それぞれ6.8重量%及び0.03重
量%であり、原料石灰窒素中のカルシウムシアナミドに
対する生成収率は、それぞれ90%および0.4%であつ
た。
なお、リン酸添加前のメタノール溶液の一部をとり密
栓放置したところ、4時間後全体が寒天状にゲル化し
た。またリン酸添加を行つたメタノール溶液は、実施例
1と同様1ケ月後もゲル化することなく安定であつた。
以下、実施例2と同じ装置、同一条件で濃縮乾固し、
白色のシアナミド結晶0.640kgを得た。
分析したところ、次のとおりであつた。
純度 98.6重量% ジシアンジアミド 0.8重量% 尿素 0.1重量% 水分 0.4重量% 比較例 実施例1と同様の反応槽に、水150(150kg)を仕込
み、撹拌下実施例1に用いたと同様の炭酸ガスを導入し
た。反応温度を15℃に保ちかつpHが7.5以上にならない
よう調整しながら、実施例に用いたと同様の石灰窒素63
kgを少しずつ添加した。7時間で石灰窒素の添加は終了
し、その後さらに1時間そのままの状態に保つた後、炭
酸ガスの導入を止め不溶分を遠心機により分離し、不溶
分は水約30で洗浄し濾液に合せた。収得したシアナミ
ド水溶液は164.3kgで、シアナミドの含有率は10.8重量
%、副生ジシアンジアミドの含有率は0.74重量%であ
り、原料石灰窒素中のカルシウムシアナミドする生成収
率はそれぞれ80%、5%であつた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01C 3/16

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】石灰窒素を炭素原子数が1〜3の脂肪族ア
    ルコールを含有してなる有機液体中に分散させ、得られ
    た分散液の中に炭酸ガスを吹き込むことを特徴とする、
    石灰窒素よりシアナミドを製造する方法。
  2. 【請求項2】炭素原子数が1〜3の脂肪族アルコールが
    メタノールである特許請求の範囲第1項記載の方法。
  3. 【請求項3】反応系の水含有量が5重量%以下である特
    許請求の範囲第1項又は第2項に記載の方法。
  4. 【請求項4】反応系の水含有量が3.5重量%以下である
    特許請求の範囲第3項記載の方法。
  5. 【請求項5】反応系の水含有量が2.5重量%以下である
    特許請求の範囲第4項記載の方法。
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