JP2808452B2 - 耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法 - Google Patents
耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、良好な延性および深絞り性を有し、耐ろう
接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法に関する。 〔従来の技術〕 例えば、自動車用冷延鋼板には、その用途に応じて延
性および深絞り性が要求されるとともに、部品成形後
に、ろう接が施される場合があり、耐ろう接割れ性が要
求されることがある。延性および深絞り性の要求に対し
ては深絞り性の向上に有効な〔111〕面方位の再結晶集
合組織を発達させ、深絞り性を具備させた種々の冷延鋼
板が既に提案されているが、ろう接割れについては、後
述するように、有効な防止策がない。 ろう接割れは、一種の液体金属脆化によるものであ
る。例えば日本金属学会会報8(1969)p235には、その
脆化現像について解説されており、液体金属の存在下
で、固体金属が引張応力を受けると、液体金属が粒界に
浸透して発生する脆化現像であるとしている。即ち、ろ
う接割れは、ろう接時に局所的に加熱されたろう接部周
辺が冷却時に引張応力を受け、そこに溶融したろうが作
用して、粒界割れを起こすことによって発生すると考え
られる。 また、ろう接割れの程度は、ろうの種類によって異な
り、黄銅ろうが最も著しく、銀ろうの場合は、多少軽減
される。黄銅ろうによるろう接割れに対しては、これを
防止する有効な手段がこれまで見出されておらず、黄銅
ろう接割れが発生する場合には、銀ろうによるろう接を
施し、割れの軽減がはかられるが、銀ろうを用いても、
ろう接割れは完全には防止できないのが現状である。 このように銀ろうを用いるとろう接割れが軽減され
る。理由は明確でないが液体金属と固体金属の組合せに
より脆化の程度が異なることによると考えられる。 〔発明が解決しようとする問題点〕 ろう接割れを防止するために黄銅ろうの代りに高価な
銀ろうを使用した場合には、製造コストが高くなり過ぎ
ることと、ろう接割れの発生率は黄銅ろうに比べて小さ
くなるが、ろう接割れが依然として残るという問題があ
る。 本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消し、
延性および深絞り性を具備し、かつ耐ろう接割れ性の優
れた冷延鋼板の製造法を提供することを目的としてい
る。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明者らは、耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の開
発に鋭意研究した結果、耐ろう接割れ性の向上にBの添
加が有効であることを見出した。 〔発明の構成〕 本発明は、 重量%で、 C:0.001〜0.01%, Si:0.1%以下, Mn:0.05〜0.50%, Sol.Al:0.01〜0.10%, P:0.03%以下, S:0.015%以下, N:0.007%以下, O:0.01%以下, Ti:下式(1)に従う〔有効Ti量〕が4×C%以上で0.3
0%以下, B:0.0004〜0.0015%, Nb:0.03〜0.10%, 含有し、残部;Feおよび不可避的不純物、 〔有効Ti量〕=全Ti量−〔N%(48/14)+S%(48/3
2)+O%×(48/16)×1/2〕…(1) からなる鋼のスラブを熱間圧延したあと、圧下率50%以
上で冷間圧延し、次いで、再結晶温度以上900℃以下の
温度で焼鈍することからなる耐ろう接割れ性に優れた冷
延鋼板の製造法を提供する。 さらに該鋼は0.06〜0.20%のCrを含有することができ
る。 すなわち、本発明は耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板
の製造法としてTi添加鋼にNbと必要に応じてCrを所定量
複合添加した鋼に0.0004〜0.0015%Bを添加した鋼を使
用するものであるが、その際CおよびTi量を所定の値以
下に低減することによって延性を高めるとともに、Bを
所定量複合添加することによってろう接割れを防止する
ことに基本的な特徴があり、これによって前記問題の解
決を図った耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法を
得たものである。本発明の優れた特性については後記実
施例において具体的に示すが、化学成分値の限定理由の
概要を説明すると次のとおりである。 Cは、その含有量が少ないほど、冷延鋼板の延性を高
めるうえで好ましく、また、0.01%を越える量より多く
なると、炭窒化物形成元素を多く必要とし、且つ炭窒化
物の析出量の増大によりプレス成形性を劣化させるよう
になる。他方、実用規模の製鋼炉において、C含有量を
0.001%未満または低減することは困難である。この理
由によりC含有量は0.001〜0.01%とする。 Mnは、鋼の熱間脆性の防止を目的として添加される
が、0.05%未満ではその目的が達成されず、また多すぎ
ると延性並びに深絞り性を低下させるので、Mn含有量を
0.05〜0.50%とする。 Siは、溶鋼の脱酸を目的として添加されるが、多量に
添加しすぎると延性を低下させるので、その含有量を0.
1%以下とする。 Alは、溶鋼の脱酸を目的として添加されるが、その量
が鋼中のSol.Al(酸可溶Al)で0.01%未満となるような
量ではその目的が達成出来ず、またSol.Alが0.10%を越
える量になるとその効果が飽和するとともに、非金属介
在物を増加させて表面疵の原因となるので、Sol.Al量と
して0.01〜0.10%とする。 Pは、余り多く含有されると、降伏強度および引張り
強さを上昇させ、また極低C鋼においては粒界の偏析を
起して二次加工割れの原因となるのでその含有量の上限
を0.03%とする。 Nは、少なければ少ないほどTi添加量が少なくてすむ
が、多くなり過ぎると〔有効Ti量〕を減少させ且つ最終
製品のプレス成形性を劣化させるので0.007%以下とす
る。 S,Oは、いずれも多くなり過ぎると〔有効Ti量〕を減
少させ、〔有効Ti量〕を確保するための全Ti量が増加す
る。また表面性状を劣化させることから、S,Oはそれぞ
れS≦0.015%、O≦0.010%とする。 Tiは、CおよびNを固定することによって、延性を高
めるとともに生成したTiCが深絞り性の向上に有効な〔1
11〕面方位の再結晶集合組織を生成させる作用を供す
る。このためには、前述の(1)式で示される〔有効Ti
量〕が4×C%以上必要である。しかし、0.30%を越え
るようになると、フェライト中に固溶するTi量が多くな
って降伏強度の上昇および延性の低下をもたらす。ま
た、製造原価を高めることにもなる。従って、Tiは〔有
効Ti量〕が4×C%以上で且つ0.30%以下とする。 Bは、本発明鋼中、銅ろう接割れを防止するための重
要な添加元素であるが、0.0004%未満では、その目的が
充分に達成されない。また、B添加量が0.0015%を越え
ると耐ろう接割れ性は向上するものの、延性および深絞
り性を劣化させる。よって、B量は0.0004〜0.0015%と
する。 なお、Bの微量添加がろう接割れを防止する理由につ
いては、現在明確でないが、鋼の粒界に偏析したBが、
ろう接時に溶融したろうによる粒界脆化作用を弱めるも
のと考えられる。 Nbは、0.03%以上含有させると、冷延鋼板のr値の面
内異方性を改善する効果があるが、過剰のNbは延性の劣
化を招く。またNbは後記の実施例に示すようにTi,Bとの
複合添加によって耐ろう接割れ性を改善する作用があ
る。よってNbは0.03〜10.10%の範囲で添加する。 CrはTiとまたはTiおよびNbと複合添加することによっ
て、深絞り性および張り出し性を向上する効果があり、
この目的達成のためには0.06%以上のCrが必要である
が、0.20%を越えるような量のCrを添加しても、この効
果が飽和し、製造原価を高めるだけである。それ故、0.
06〜0.20%の範囲で必要に応じ、Crを添加する。 このようにして本発明はTi添加鋼にNbと必要に応じて
Crを所定量複合添加した鋼において、Bを所定量添加す
ることによって延性および深絞り性を低下させることな
く、優れた耐ろう接割れ性を持った冷延鋼板とするもの
であるが、この冷延鋼板の製造にあたっては、次のよう
な条件で行なうのがよい。 先ず、製鋼炉で鋼を溶製し、造塊或いは連続鋳造前に
おいて、真空脱ガス処理を行うのが望ましい。これによ
って、鋼中のC,Oを前述のように低下させ且つ前述のよ
うな成分範囲に高い歩留りをもって調整することが有利
に実施できる。この真空脱ガス処理を行うに当っては、
脱酸処理のためAlを添加することもできる。真空脱ガス
処理後、造塊および分塊圧延によって、または連続鋳造
によってスラブを製造し、必要に応じてスラブ手入れを
行った後、熱間圧延を行う。 別法としては、連続鋳造後、熱鋳片のまま加熱炉に装
入して熱間圧延を行ってもよい。 熱間圧延の実施に際しては、深絞り性向上の観点か
ら、熱延仕上温度をAr3点以上にする。また、熱延巻取
温度は、600〜750℃の範囲とするのがよい。 熱延鋼板は、酸洗後、冷間圧延を施すが、この冷間圧
延は深絞り性に有利な〔111〕面方位の再結晶集合組織
を発達させる上で、50%以上の全冷間圧延率で行う。 次いで焼鈍を行うが、この焼鈍はバッチ式焼鈍でも連
続焼鈍のいずれでもよく、冷延鋼板の再結晶温度以上90
0℃以下の温度範囲で行うことによって、優れたプレス
成形性が得られる。このようにして本発明によると、延
性と深絞り性を維持するとともに、耐ろう接割れ性の優
れた冷延鋼板が経済的に提供される。 〔発明の具体的開示〕 実施例 180トン転炉および脱ガス処理設備によって、第1表
に示す化学成分値の鋼を溶製し、各溶鋼を連続鋳造によ
ってスラブとなし、各スラブから加熱温度1,200〜1,230
℃、熱延仕上温度900〜930℃、熱延巻温度700〜730℃の
熱延条件で板厚4.0mmの熱延コイルを得、酸洗のあと、7
0%の冷延率で板厚1.2mmまで冷間圧延した。各コイルに
焼鈍温度780℃、焼鈍時間2時間のバッチ式焼鈍を行っ
た。得られた冷延鋼板の機械的特性値と耐ろう接割れ性
の指標t1を第2表に示す。 耐ろう接割れ性試験では、第1図に示すように、鋼板
を1.2×25×135mmに加工して、長手方向中央部に、幅2m
m、深さ2mm、終端部半径1mmのUノッチを入れた試験片
とし、Uノッチ部分に市販の黄銅ろう(Cu:60.7%,Sn:
1.35%,Si:0.2%、Zn:残部)を置き、黄銅ろうの融点以
上である1030℃の試験温度に加熱保持した。試験片のチ
ャック間距離は40mmである。その後、変位速度0.05mm/
秒で負荷を加え、第2図に示すように、負荷開始から、
クラック発生と判断される最高荷重点までの時間t1を
測定し、この時間を耐ろう接割れ性の指標とした。第2
図には、ろうを置かない場合の荷重−時間曲線も同時に
示した。t1と実際の成形部品の耐ろう接割れ性との相
関を調査した結果、t1が3.0秒以上のものは、ろう接割
れが発生しなかったので、耐ろう接割れ性は、t1≧3.0
秒で合格と判定した。 深絞り性の評価としては、全伸び(T.El)が48%以上
で、かつ値が1.60以上であれば、良好と判断した。 第2表から明らかなように、Bを添加していないTi-C
r-Nb添加鋼の比較鋼Aと、Ti-Cr添加鋼の比較鋼Bは、
いずれも全伸び48.3%以上、値2.10以上と深絞り性が
良好であるが、負荷開始からクラック発生と判断される
最高荷重点までの時間t1が2.8秒以下と短く、耐ろう接
割れ性が劣る。 Ti添加鋼にBを添加した比較鋼Cではt1が4.0秒にま
で長くなり耐ろう接割れ性が向上しているが、なお十分
ではない。 これに対し、Ti添加鋼にBを添加したうえ、さらにNb
を複合添加した本発明鋼DおよびHではt1が5.8秒以上
となり、一層良好な耐ろう接割れ性が得られている。た
だしBを本発明で規定する上限値0.0015%を越えて含有
する比較鋼Eでは、t1は高い値を示すものの、r値お
よび伸び(T.El)が低く、加工性が十分ではない。 〔発明の効果〕 本発明にしたがい、Ti添加鋼にNbと必要に応じてCrを
所定量複合添加した鋼に、Bを0.0004〜0.0015%添加す
ることによって良好な延性と深絞り性を維持しつつ優れ
た耐ろう接割れ性を有する冷延鋼板を得る。
接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法に関する。 〔従来の技術〕 例えば、自動車用冷延鋼板には、その用途に応じて延
性および深絞り性が要求されるとともに、部品成形後
に、ろう接が施される場合があり、耐ろう接割れ性が要
求されることがある。延性および深絞り性の要求に対し
ては深絞り性の向上に有効な〔111〕面方位の再結晶集
合組織を発達させ、深絞り性を具備させた種々の冷延鋼
板が既に提案されているが、ろう接割れについては、後
述するように、有効な防止策がない。 ろう接割れは、一種の液体金属脆化によるものであ
る。例えば日本金属学会会報8(1969)p235には、その
脆化現像について解説されており、液体金属の存在下
で、固体金属が引張応力を受けると、液体金属が粒界に
浸透して発生する脆化現像であるとしている。即ち、ろ
う接割れは、ろう接時に局所的に加熱されたろう接部周
辺が冷却時に引張応力を受け、そこに溶融したろうが作
用して、粒界割れを起こすことによって発生すると考え
られる。 また、ろう接割れの程度は、ろうの種類によって異な
り、黄銅ろうが最も著しく、銀ろうの場合は、多少軽減
される。黄銅ろうによるろう接割れに対しては、これを
防止する有効な手段がこれまで見出されておらず、黄銅
ろう接割れが発生する場合には、銀ろうによるろう接を
施し、割れの軽減がはかられるが、銀ろうを用いても、
ろう接割れは完全には防止できないのが現状である。 このように銀ろうを用いるとろう接割れが軽減され
る。理由は明確でないが液体金属と固体金属の組合せに
より脆化の程度が異なることによると考えられる。 〔発明が解決しようとする問題点〕 ろう接割れを防止するために黄銅ろうの代りに高価な
銀ろうを使用した場合には、製造コストが高くなり過ぎ
ることと、ろう接割れの発生率は黄銅ろうに比べて小さ
くなるが、ろう接割れが依然として残るという問題があ
る。 本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消し、
延性および深絞り性を具備し、かつ耐ろう接割れ性の優
れた冷延鋼板の製造法を提供することを目的としてい
る。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明者らは、耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の開
発に鋭意研究した結果、耐ろう接割れ性の向上にBの添
加が有効であることを見出した。 〔発明の構成〕 本発明は、 重量%で、 C:0.001〜0.01%, Si:0.1%以下, Mn:0.05〜0.50%, Sol.Al:0.01〜0.10%, P:0.03%以下, S:0.015%以下, N:0.007%以下, O:0.01%以下, Ti:下式(1)に従う〔有効Ti量〕が4×C%以上で0.3
0%以下, B:0.0004〜0.0015%, Nb:0.03〜0.10%, 含有し、残部;Feおよび不可避的不純物、 〔有効Ti量〕=全Ti量−〔N%(48/14)+S%(48/3
2)+O%×(48/16)×1/2〕…(1) からなる鋼のスラブを熱間圧延したあと、圧下率50%以
上で冷間圧延し、次いで、再結晶温度以上900℃以下の
温度で焼鈍することからなる耐ろう接割れ性に優れた冷
延鋼板の製造法を提供する。 さらに該鋼は0.06〜0.20%のCrを含有することができ
る。 すなわち、本発明は耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板
の製造法としてTi添加鋼にNbと必要に応じてCrを所定量
複合添加した鋼に0.0004〜0.0015%Bを添加した鋼を使
用するものであるが、その際CおよびTi量を所定の値以
下に低減することによって延性を高めるとともに、Bを
所定量複合添加することによってろう接割れを防止する
ことに基本的な特徴があり、これによって前記問題の解
決を図った耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法を
得たものである。本発明の優れた特性については後記実
施例において具体的に示すが、化学成分値の限定理由の
概要を説明すると次のとおりである。 Cは、その含有量が少ないほど、冷延鋼板の延性を高
めるうえで好ましく、また、0.01%を越える量より多く
なると、炭窒化物形成元素を多く必要とし、且つ炭窒化
物の析出量の増大によりプレス成形性を劣化させるよう
になる。他方、実用規模の製鋼炉において、C含有量を
0.001%未満または低減することは困難である。この理
由によりC含有量は0.001〜0.01%とする。 Mnは、鋼の熱間脆性の防止を目的として添加される
が、0.05%未満ではその目的が達成されず、また多すぎ
ると延性並びに深絞り性を低下させるので、Mn含有量を
0.05〜0.50%とする。 Siは、溶鋼の脱酸を目的として添加されるが、多量に
添加しすぎると延性を低下させるので、その含有量を0.
1%以下とする。 Alは、溶鋼の脱酸を目的として添加されるが、その量
が鋼中のSol.Al(酸可溶Al)で0.01%未満となるような
量ではその目的が達成出来ず、またSol.Alが0.10%を越
える量になるとその効果が飽和するとともに、非金属介
在物を増加させて表面疵の原因となるので、Sol.Al量と
して0.01〜0.10%とする。 Pは、余り多く含有されると、降伏強度および引張り
強さを上昇させ、また極低C鋼においては粒界の偏析を
起して二次加工割れの原因となるのでその含有量の上限
を0.03%とする。 Nは、少なければ少ないほどTi添加量が少なくてすむ
が、多くなり過ぎると〔有効Ti量〕を減少させ且つ最終
製品のプレス成形性を劣化させるので0.007%以下とす
る。 S,Oは、いずれも多くなり過ぎると〔有効Ti量〕を減
少させ、〔有効Ti量〕を確保するための全Ti量が増加す
る。また表面性状を劣化させることから、S,Oはそれぞ
れS≦0.015%、O≦0.010%とする。 Tiは、CおよびNを固定することによって、延性を高
めるとともに生成したTiCが深絞り性の向上に有効な〔1
11〕面方位の再結晶集合組織を生成させる作用を供す
る。このためには、前述の(1)式で示される〔有効Ti
量〕が4×C%以上必要である。しかし、0.30%を越え
るようになると、フェライト中に固溶するTi量が多くな
って降伏強度の上昇および延性の低下をもたらす。ま
た、製造原価を高めることにもなる。従って、Tiは〔有
効Ti量〕が4×C%以上で且つ0.30%以下とする。 Bは、本発明鋼中、銅ろう接割れを防止するための重
要な添加元素であるが、0.0004%未満では、その目的が
充分に達成されない。また、B添加量が0.0015%を越え
ると耐ろう接割れ性は向上するものの、延性および深絞
り性を劣化させる。よって、B量は0.0004〜0.0015%と
する。 なお、Bの微量添加がろう接割れを防止する理由につ
いては、現在明確でないが、鋼の粒界に偏析したBが、
ろう接時に溶融したろうによる粒界脆化作用を弱めるも
のと考えられる。 Nbは、0.03%以上含有させると、冷延鋼板のr値の面
内異方性を改善する効果があるが、過剰のNbは延性の劣
化を招く。またNbは後記の実施例に示すようにTi,Bとの
複合添加によって耐ろう接割れ性を改善する作用があ
る。よってNbは0.03〜10.10%の範囲で添加する。 CrはTiとまたはTiおよびNbと複合添加することによっ
て、深絞り性および張り出し性を向上する効果があり、
この目的達成のためには0.06%以上のCrが必要である
が、0.20%を越えるような量のCrを添加しても、この効
果が飽和し、製造原価を高めるだけである。それ故、0.
06〜0.20%の範囲で必要に応じ、Crを添加する。 このようにして本発明はTi添加鋼にNbと必要に応じて
Crを所定量複合添加した鋼において、Bを所定量添加す
ることによって延性および深絞り性を低下させることな
く、優れた耐ろう接割れ性を持った冷延鋼板とするもの
であるが、この冷延鋼板の製造にあたっては、次のよう
な条件で行なうのがよい。 先ず、製鋼炉で鋼を溶製し、造塊或いは連続鋳造前に
おいて、真空脱ガス処理を行うのが望ましい。これによ
って、鋼中のC,Oを前述のように低下させ且つ前述のよ
うな成分範囲に高い歩留りをもって調整することが有利
に実施できる。この真空脱ガス処理を行うに当っては、
脱酸処理のためAlを添加することもできる。真空脱ガス
処理後、造塊および分塊圧延によって、または連続鋳造
によってスラブを製造し、必要に応じてスラブ手入れを
行った後、熱間圧延を行う。 別法としては、連続鋳造後、熱鋳片のまま加熱炉に装
入して熱間圧延を行ってもよい。 熱間圧延の実施に際しては、深絞り性向上の観点か
ら、熱延仕上温度をAr3点以上にする。また、熱延巻取
温度は、600〜750℃の範囲とするのがよい。 熱延鋼板は、酸洗後、冷間圧延を施すが、この冷間圧
延は深絞り性に有利な〔111〕面方位の再結晶集合組織
を発達させる上で、50%以上の全冷間圧延率で行う。 次いで焼鈍を行うが、この焼鈍はバッチ式焼鈍でも連
続焼鈍のいずれでもよく、冷延鋼板の再結晶温度以上90
0℃以下の温度範囲で行うことによって、優れたプレス
成形性が得られる。このようにして本発明によると、延
性と深絞り性を維持するとともに、耐ろう接割れ性の優
れた冷延鋼板が経済的に提供される。 〔発明の具体的開示〕 実施例 180トン転炉および脱ガス処理設備によって、第1表
に示す化学成分値の鋼を溶製し、各溶鋼を連続鋳造によ
ってスラブとなし、各スラブから加熱温度1,200〜1,230
℃、熱延仕上温度900〜930℃、熱延巻温度700〜730℃の
熱延条件で板厚4.0mmの熱延コイルを得、酸洗のあと、7
0%の冷延率で板厚1.2mmまで冷間圧延した。各コイルに
焼鈍温度780℃、焼鈍時間2時間のバッチ式焼鈍を行っ
た。得られた冷延鋼板の機械的特性値と耐ろう接割れ性
の指標t1を第2表に示す。 耐ろう接割れ性試験では、第1図に示すように、鋼板
を1.2×25×135mmに加工して、長手方向中央部に、幅2m
m、深さ2mm、終端部半径1mmのUノッチを入れた試験片
とし、Uノッチ部分に市販の黄銅ろう(Cu:60.7%,Sn:
1.35%,Si:0.2%、Zn:残部)を置き、黄銅ろうの融点以
上である1030℃の試験温度に加熱保持した。試験片のチ
ャック間距離は40mmである。その後、変位速度0.05mm/
秒で負荷を加え、第2図に示すように、負荷開始から、
クラック発生と判断される最高荷重点までの時間t1を
測定し、この時間を耐ろう接割れ性の指標とした。第2
図には、ろうを置かない場合の荷重−時間曲線も同時に
示した。t1と実際の成形部品の耐ろう接割れ性との相
関を調査した結果、t1が3.0秒以上のものは、ろう接割
れが発生しなかったので、耐ろう接割れ性は、t1≧3.0
秒で合格と判定した。 深絞り性の評価としては、全伸び(T.El)が48%以上
で、かつ値が1.60以上であれば、良好と判断した。 第2表から明らかなように、Bを添加していないTi-C
r-Nb添加鋼の比較鋼Aと、Ti-Cr添加鋼の比較鋼Bは、
いずれも全伸び48.3%以上、値2.10以上と深絞り性が
良好であるが、負荷開始からクラック発生と判断される
最高荷重点までの時間t1が2.8秒以下と短く、耐ろう接
割れ性が劣る。 Ti添加鋼にBを添加した比較鋼Cではt1が4.0秒にま
で長くなり耐ろう接割れ性が向上しているが、なお十分
ではない。 これに対し、Ti添加鋼にBを添加したうえ、さらにNb
を複合添加した本発明鋼DおよびHではt1が5.8秒以上
となり、一層良好な耐ろう接割れ性が得られている。た
だしBを本発明で規定する上限値0.0015%を越えて含有
する比較鋼Eでは、t1は高い値を示すものの、r値お
よび伸び(T.El)が低く、加工性が十分ではない。 〔発明の効果〕 本発明にしたがい、Ti添加鋼にNbと必要に応じてCrを
所定量複合添加した鋼に、Bを0.0004〜0.0015%添加す
ることによって良好な延性と深絞り性を維持しつつ優れ
た耐ろう接割れ性を有する冷延鋼板を得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、耐ろう接割れ性試験用の試験片の正面図であ
り、第2図は、耐ろう接割れ性の指標とした負荷開始か
らクラック発生と判断される最高荷重点までの時間t1
を測定するための荷重−時間曲線の1例を示す図であ
る。
り、第2図は、耐ろう接割れ性の指標とした負荷開始か
らクラック発生と判断される最高荷重点までの時間t1
を測定するための荷重−時間曲線の1例を示す図であ
る。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 藤田 徹
呉市昭和町11番1号 日新製鋼株式会社
呉研究所内
(72)発明者 高木 一宇
堺市石津西町5番地 日新製鋼株式会社
阪神製造所内
(72)発明者 臼杵 哲
堺市石津西町5番地 日新製鋼株式会社
阪神製造所内
(56)参考文献 特開 昭60−92453(JP,A)
特開 昭61−157660(JP,A)
特公 昭54−12883(JP,B2)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量%で, C:0.001〜0.01%, Si:0.1%以下, Mn:0.05〜0.50%, Sol.Al:0.01〜0.10%, P:0.03%以下, S:0.015%以下, N:0.007%以下, O:0.01%以下, Ti:下式(1)に従う〔有効Ti量〕が4×C%以上で0.3
0%以下, B:0.0004〜0.0015%, Nb:0.03〜0.10% を含有し,残部:Feおよび不可避的不純物,からなる鋼
のスラブを熱間圧延したあと,圧下率50%以上で冷間圧
延し,次いで,再結晶温度以上900℃以下の温度で焼鈍
することからなる耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製
造法。 〔有効Ti量〕=全Ti量−〔N%(48/14)+S%(48/3
2)+O%×(48/16)×1/2〕・・・・(1) 2.重量%で, C:0.001〜0.01%, Si:0.1%以下, Mn:0.05〜0.50%, Sol.Al:0.01〜0.10%, P:0.03%以下, S:0.015%以下, N:0.007%以下, O:0.01%以下, Ti:下式(1)に従う〔有効Ti量〕が4×C%以上で0.3
0%以下, B:0.0004〜0.0015%, Nb:0.03〜0.10%, Cr:0.06〜0.20% を含有し,残部:Feおよび不可避的不純物,からなる鋼
のスラブを熱間圧延したあと,圧下率50%以上で冷間圧
延し,次いで,再結晶温度以上900℃以下の温度で焼鈍
することからなる耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製
造法。 〔有効Ti量〕=全Ti量−〔N%(48/14)+S%(48/3
2)+O%×(48/16)×1/2〕・・・・(1)
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Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62076277A JP2808452B2 (ja) | 1987-03-31 | 1987-03-31 | 耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63243225A JPS63243225A (ja) | 1988-10-11 |
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JP62076277A Expired - Fee Related JP2808452B2 (ja) | 1987-03-31 | 1987-03-31 | 耐ろう接割れ性に優れた冷延鋼板の製造法 |
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-
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