JP2800005B2 - デオキシリボ核酸の製造法 - Google Patents

デオキシリボ核酸の製造法

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JP2800005B2 JP62289492A JP28949287A JP2800005B2 JP 2800005 B2 JP2800005 B2 JP 2800005B2 JP 62289492 A JP62289492 A JP 62289492A JP 28949287 A JP28949287 A JP 28949287A JP 2800005 B2 JP2800005 B2 JP 2800005B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、発酵法によるデオキシリボ核酸(以下、DN
Aという)の製造法に関するものであり、更に詳しくは
シュードモナス(Pseudomonas)属に属し、DNA生産能を
有する微生物を培養し、菌体内に多量に生成蓄積せしめ
たDNAを、分離採取するDNAの製造法に関する。 [従来の技術] 本発明で得られるDNAは、抗腫瘍剤、抗ウィルス剤な
どの医薬品の重要な合成原料として有用な物質である。 従来、このDNAを製造する方法としては、魚類白子を
原料として抽出精製する方法が一般的である。また、発
酵法によるDNAの製造法も知られており、例えば、アー
スロバクター(Arthrobacter)属、シュードモナス属、
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ミクロコッ
カス(Micrococcus)属、コリネバクテリウム(Coryneb
acterium)属、カンディダ(Candida)属またはアスペ
ルギルス(Aspergillus)属に属する微生物を、該微生
物の資化しうる炭素源含有培地を用いて好気的に培養し
て、培地中にDNAを生成させる方法(特公昭55−35106号
公報)、シュードモナス属に属する細菌をn−パラフィ
ンを炭素源とする培地で培養し、菌体外にDNAを蓄積さ
せる方法〔アグリカルチァル・バイオロジカル・ケミス
トリー(Agricultural Biological Chemistry)第36
巻、第133頁(1972年)および第38巻、第293頁(1974
年)〕、シュードモナス属に属する微生物を酢酸および
/または酢酸塩を主たる炭素源とする培地にキレート剤
を添加し、培養方法として培養初期は好気的条件下で培
養し、対数期に静置培養条件下に移す方法を採用するこ
とにより、DNAを菌体外に蓄積させる方法(特開昭55−4
8399号公報)、アシネトバクター(Acinetobacter)属
に属する微生物を培養して、培養物からDNAを採取する
方法(特開昭61−115497号公報)が知られている。 [発明が解決しようとする問題点] しかしながら、DNAの製造法として、魚類白子より抽
出精製する方法は、抽出操作のさいのDNAの損失、夾雑
物との分離・精製操作の煩雑さ、原料である魚類の白子
の入手が季節により制約される等の問題点を有する。ま
た、発酵法による製造法は、一般に得られるDNA溶液が
希薄であるため濃縮コストが大きくなるという問題点が
あり、且つ炭素源としてn−パラフィンを用いる方法で
は、n−パラフィンが不溶性のため、高回転の機械的撹
拌又は、界面活性剤の添加により油滴を分散させて培養
を行う必要が生じ、基質供給速度が制限され、高い生産
性が確保できないなどの問題点を有している。 [問題点を解決するための手段] 本発明者らは、かかる問題点を解決し、より効率の良
い発酵法によるDNAの製造方法を完全にさせるため検討
を重ねた結果、 従来のようにDNAを菌体外、即ち培地中に蓄積させる
のではなく、シュードモナス属に属し、DNAを生産能を
有する微生物を適切な条件で培養することにより菌体形
成と同時に菌体内にDNAを蓄積できることを見出し、本
発明を完成した。 すなわち本発明はシュードモナス属に属し、デオキシ
リボ核酸を生産する能力を有する微生物を、炭素源に酵
素糖化液、酸糖化液、廃糖蜜から選ばれた1種以上の天
然炭素源を炭素重量として2〜5%、窒素源に酵母エキ
ス、ペプトン、コーンスティーブリカー、大豆かすから
選ばれた1種以上の天然有機窒素源を窒素重量として0.
1%以上、無機質としてマグネシウムを0.004%以上含む
培地を用い、酸素充足条件下に培養して、菌体内に多量
のデオキシリボ核酸を生成蓄積せしめたのち、集菌した
菌体よりデオキシリボ核酸を採取することを特徴とする
デオキシリボ核酸の製造法を提供するものである。 本発明に於て、特に重要なのは菌体内にDNAを蓄積せ
しめる点であり、これを行うための培地及び培養条件で
ある。 すなわち、本発明にあっては、シュードモナス属に属
する微生物を、炭素源に酵素糖化液、酸糖化液、廃糖蜜
から選ばれた1種以上の天然炭素源を炭素重量として2
〜5%、窒素源に酵母エキス、ペプトン、コーンスティ
ーブリカー、大豆かすから選ばれた1種以上の天然有機
窒素源を窒素重量として0.1%以上、マグネシウムを0.0
04%以上含む培地を用い、酸素充足条件下に培養するこ
とにより、培養の初期(対数増殖期後期から定常初期ま
でをいう)において、菌体形成と同時に菌体内に多量の
DNAを生成蓄積せしめる点が特に重要である。 この菌体内のDNAは、培養液から集菌した菌体を熱ア
ルカリ等で処理することで、容易に高濃度溶液として得
られるもので回分培養のみならず連続培養も可能とする
ものである。 次に、本発明で用いる微生物について具体的に説明す
る。 (A) 生産菌 本発明で使用される菌は、シュードモナス属に属し、
菌体内にDNAを高濃度に蓄積するものであればよく、そ
の種(species)は問わない。具体的にはシュードモナ
ス・エルギノーサ(P.aeruginosa)KYU−1(微工研菌
寄第9701号)、シュードモナス・エルギノーサIFO334
5、シュードモナス・フルオレッセンス(P.fluorescen
s)IFO3081、シュードモナス・メラノゲナム(P.melano
genum)IFO12020、シュードモナス・オーレオファシエ
ンス(P.aureofaciens)IFO3521、シュードモナス・ポ
リカラー(P.polycolor)等が示される。特に、シュー
ドモナス・エルギノーサKYU−1は、菌体内に多量のDNA
を生成蓄積する。 シュードモナス・エルギノーサKYU−1は本発明者ら
によって、福岡市大字箱崎地内の空気中より分離された
もので、以下に示す菌学的性質を有する。 (a) 形態 細胞の形および大きさ:0.5〜0.6×1.5〜1.6μの短
桿菌 細胞の多形性:なし 運動性、鞭毛の着生状態:運動性あり、単極毛 胞子:なし グラム染色性:陰性 抗酸性:なし (b) 生育状態 肉汁寒天平板培養:生育良好、白色光沢あり、水溶
性蛍光色素(ピオシアニン)産生 肉汁寒天斜面培養:生育良好、白色光沢あり、 肉汁液体培養:表面発育なし、濁度A660=3〜5 肉汁ゼラチン穿刺培養:ゼラチン液化 リトマス・ミルク:アルカリ反応 (c) 生理学的性質 硝酸塩の完全:培養3時間後に試薬を添加すると桃
赤色を呈し、6時間後には赤褐色を呈するとともに赤褐
色の沈澱(亜硝酸塩)を生成。さらに20時間後にはガス
を発生し、呈色反応は認められない。 脱窒反応:あり インドールの生成:あり 硫化水素の生成:あり クエン酸の利用:クエン酸資化 無機窒素源の利用:亜硝酸資化、アンモニウム塩資
化 色素の生成:水溶性蛍光色素(ピオシアニン)産生 オキシダーゼ:陽性 カタラーゼ:陽性 生育の範囲:5℃における生育なし、42℃における生
育あり、至適温度37℃ 11 酸素に対する態度:好気性 12 O−Fテスト(Hugh Leifson法による):糖を酸化
的に分解する 13 糖類から酸およびガスの生成の有無:グルコースか
ら酸化的にグルコン酸、2−ケトグルコン酸を生成 14 Tween 80の加水分解:陽性 以上の菌学的性状から本菌株はシュードモナス・エル
ギノーサと同定された。なお、本菌株はシュードモナス
・エルギノーサKYU−1と命名し、工業技術院微生物工
業技術研究所に寄託した(微工研寄第9701号)。 (B) 培地 本発明で用いられる培地は、該微生物が良好に生育す
るとともに、菌体内にDNAを生成蓄積するために必要な
炭素源、窒素源、無機質およびその他の栄養素等を含む
ものであり、炭素源、窒素源ともに資化されたものであ
れば特に限定されない。具体的には、炭素源としては酵
素糖化液、酸糖化液、廃糖蜜から選ばれた1種以上の天
然炭素源が特に良好であり、炭素重量として2〜5%含
むことが望ましい。窒素源としては酵母エキス、ペプト
ン、コーンスティーブリカー、大豆かすから選ばれた1
種以上の天然有機窒素源が特に良好であり、窒素重量と
して0.1%以上含むことが望ましい。また無機質の主な
ものを元素としてあげるとリン、マグネシウム、マンガ
ン、鉄、カリウム、亜鉛、コバルト、ニッケル等が例示
されるが、特にマグネシウムは必須であり、0.004%以
上含むことが望ましい。 (C) 培養条件 DNAを効率よく生成するとともに、生成したDNAを菌体
内に蓄積するためには、通気撹拌を行う深部培養でなけ
ればならず、また、培養中は溶存酸素濃度がその臨界酸
素分圧以上を保つように、酸素充足条件となるような高
撹拌、高通気を行う。pHは7付近に制御し、温度を20〜
40℃に保つことにより培養の初期に菌体内でのDNAの生
成蓄積が進行する。 培養は回分培養でもよいが、連続培養がより適してお
り、容易に連続化することが可能である。当然生産性の
点でも連続培養の方がすぐれている。 (D) DNAの分離採取 DNAの分離採取は、まず遠心分離等の手段により培地
から菌対を単離し、この菌体を少量の水に懸濁する。次
にこの懸濁水のpHを約12に調整したのち、加熱して溶菌
させDNAの高濃度溶液を得る。この溶菌操作は通常は約9
0℃で1時間程度を要するが、これに限定されない。ま
た、このさいリゾチームや界面活性剤等を使用すること
も可能である。次いで、DNA高濃度溶液を濾過して固形
不純物を除いたのち、溶液に対して2倍容のエタノール
を加えることによりDNAを不溶化し、遠心分離等の手段
により粗DNAを単離する。このようにして得られた粗DNA
は常法により精製するか、そのままデオキシリボヌクレ
オキド類の原料として使用することもできる。 [実 施 例] 以下実施例で本発明を具体的に説明する。 実施例 1 シュードモナス・エルギノーサKYU−1を肉エキス1.0
%、ペプトン1.0%、食塩0.5%、寒天1.5%、pH7.0の組
成を有する斜面培地において、30℃で24時間培養後、酵
母エキス1.0%、ペプトン1.0、食塩0.5%、ブドウ糖0.5
%、pH7.0の組成を有する培地5mlを入れた試験管に植菌
して、30℃で15時間振とう培養し、シードとした。この
シード培養液をブドウ糖5.0%、尿素0.4%、コーンステ
ィープリカー粉末1.5%、H3PO40.3%、KCl0.05%、MgSO
4・7H2O0.04%、pH7.0の組成を有する培地50mlを入れた
坂口フラスコへ2.5ml植菌し、30℃にてpitch50mm、140s
trokes/minの往復振とう培養を行ったところ、48時間後
に乾燥菌体重量が16mg/mlに達し、この時点で、菌体内
に1.14mg/mlのDNAが生産されていた。この培養液50mlを
10,000rpmで5分間遠心分離して菌体を分離し、これを
0.3N NaOH水溶液5mlに懸濁し、90℃で1時間加熱して
溶菌した。この溶液をpH5.0に調整後、エタノール10ml
を加えてDNAを不溶化し、10,000rpmで5分間遠心分離し
て、粗DNA57mg(純度約70%)を単離した。収率は培地
に使用したブドウ糖に対し1.6%であった。 実施例 2 シュードモナス・エルギノーサKYU−1を用い、実施
例1と同様にしてシード培養液を調製し、下記の組成を
有する培地300ml張込みのミニジャーファーメンター
へ、15ml植菌した。 A培地 ブドウ糖 5.0 % 尿 素 0.4 % コーンスティープリカー粉末 1.5 % H3PO4 0.3 % KCl 0.05% MgSO4・7H2O 0.04% B培地 ブドウ糖 10.0 % 尿 素 0.8 % コーンスティープリカー粉末 3.0 % H3PO4 0.6 % KCl 0.1 % MgSO4・7H2O 0.04% 培養温度は30℃、pHはアンモニアガス吹込みで7.0に
制御、撹拌は1,500rpm、通気は常圧化1/2VVMで培養し
た。その結果DO2は、常時連続発酵の定常状態の間、A
培地、B培地共に臨界溶存酸素濃度以上に保たれ、酸素
供給が生育およびDNA生成を律速することはなかった。
最初に希釈率0.1hr-1でA培地を用いて連続培養を行っ
たところ、90時間後に定常状態に達したが、そのとき流
出液は、乾燥菌体重量15mg/ml、菌体内DNA1.05mg/mlで
あった。そこで希釈率を0.08hr-1、培地をB培地に変え
て、更に同様のpHおよび通気撹拌条件で培養を続けたと
ころ、培地を変えてから70時間後に定常状態に達し、流
出液の乾燥菌体重量28mg/ml、菌体内DNA1.96mg/mlとな
った。次に10時間分の連続培養抜出し液(300ml)を7,0
00rpmで10分間遠心分離して菌体を分離し、これを0.3N
NaOH水溶液30mlに懸濁し、90℃で1時間加熱して溶菌
した。この溶液をpH5.0に調製後、エタノール60mlを加
えてDNAを不溶化し、7,000rpmで10分間遠心分離して粗D
NA670mg(純度70%)を単離した。この連続培養のDNA生
産性を培養液量、単位時間当たりに換算すると0.156g/
・hrとなる。収率は培地にフィードしたブドウ糖に対
して1.6%であった。 [発明の効果] 本発明は、シュードモナス属に属し、DNA生産能を有
する微生物を培養することにより、菌体形成と菌体内DN
A生成蓄積を同時に進行せしめることにより従来の菌体
外へDNAを蓄積させる方法に於て定常期後期まで培養を
続ける必要があったのに対し、対数増殖期後期〜定常期
初期という短時間で培養を終了とすることが可能となっ
た。すなわち本発明の特長は菌体形成と菌体内DNA生成
が同時におこるgrowth associated型をとることによ
り、従来困難であった連続培養を可能にするものであ
り、工業的にきわめてすぐれた発酵法によるDNA製造法
を具現化したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12P 19/34

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.シュードモナス属に属し、デオキシリボ核酸を生産
    する能力を有する微生物を、炭素源に酵素糖化液、酸糖
    化液、廃糖蜜から選ばれた1種以上の天然炭素源を炭素
    重量として2〜5%、窒素源に酵母エキス、ペプトン、
    コーンスティーブリカー、大豆かすから選ばれた1種以
    上の天然有機窒素源を窒素重量として0.1%以上、無機
    質としてマグネシウムを0.004%以上含む培地を用い、
    酸素充足条件下に培養して、菌体内に多量のデオキシリ
    ボ核酸を生成蓄積せしめたのち、集菌した菌体よりデオ
    キシリボ核酸を採取することを特徴とするデオキシリボ
    核酸の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5933226A (ja) * 1982-08-19 1984-02-23 Mitsui Toatsu Chem Inc 抗腫瘍活性物質pd−01とその製法およびその製剤

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