JP2799590B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は磁気記録媒体に関する。

＜従来の技術＞ 磁気テープの接触転写法として熱転写法が知られてい
る（例えば昭和46年度電子通信学会全国大会S9−７、IE
EE TRANSACTION ON MAGNETICS,VOL.MAG−20.NO.1,JANUA
RY 1984 P19−P23等）。

熱転写法では、マスターテープとしてγ−Fe₂O₃テー
プ等を用い、これとCrO₂テープを高速度接触走行させな
がら、150℃程度に加熱し、熱転写により信号を転写す
る。

＜発明が解決しようとする課題＞ しかし、従来のCrO₂テープは、転写信号の周波数特性
が平坦ではなく、マスターテープの記録時に、エンファ
シスをほどこす必要がある。

また、CrO₂テープでは、CrO₂粒子の保磁力Hcが0.4〜
0.7kOeと低いため、通常の磁気ヘッドで消去できてしま
い、取り扱いにくいという不都合がある。

本発明の目的は、熱磁気転写や熱磁気記録に際して、
周波数特性が平坦で、一旦記録したあと消去しにくい磁
気記録媒体を提供することにある。

＜課題を解決するための手段＞ このような目的は、下記（１）〜（３）の本発明によ
って達成される。

（１）バインダ中に、下記式で示される組成を有する磁
性粉を含有する磁性層を有することを特徴とする熱磁気
転写用の磁気記録媒体。

式 MeO・ｎ［Fe_2-x-y-zGa_xCr_yAl_zO₃］ ｛上記式中、Meは、Ba、Sr、PbおよびCaのうちの１種以
上を表わす。

また、4.5≦ｎ≦６、ｘ≧０、ｙ≧０、ｚ≧０、 x/3＋y/4＋z/6≧1/6、 x/6＋y/10＋z/11≦1/6である。｝ （２）バインダ中に、下記式で示される組成を有する磁
性粉を含有する磁性層を有することを特徴とする熱磁気
記録用の磁気記録媒体。

式 MeO・ｎ［Fe_2-x-y-zGa_xCr_yAl_zO₃］ ｛上記式中、Meは、Ba、Sr、PbおよびCaのうちの１種以
上を表わす。

また、4.5≦ｎ≦６、ｘ≧０、ｙ≧０、ｚ≧０、 x/3＋y/4＋z/6≧1/6、 x/6＋y/10＋z/11≦1/6である。｝ （３）前記磁性粉は、３〜15kOeの保磁力と、５〜10emu
/gの飽和磁化と、120〜180℃のキュリー点とを有する上
記（１）または（２）に記録の磁気記録媒体。

＜作用＞ 本発明によれば、熱磁気転写や熱磁気記録に際しての
周波数特性はきわめて平坦となる。

また、用いる磁性粉のHcは３〜10kOeと高く、通常の
消去ヘッドでは消去できず、取り扱いの点でも便利であ
る。

＜具体的構成＞ 以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。

本発明に用いる磁性粉は、上記式で示される組成を有
する置換Ｍ型フェライトである。

上記式において、Meは、Ba、Sr、PbおよびCaのうちの
１種以上であり、これらの２種以上から構成されると
き、その量比は任意であるが、特にBa、SrおよびPbのう
ちの１種以上を必須成分として含むものが好ましい。

このＭ型フェライトを置換する元素は、Ga、Crおよび
Alのうちの１種以上である。

そして、それぞれの置換量ｘ、ｙ、ｚについては上記
の関係が存在する。

すなわち、ｘ、ｙおよびｚは、ｘ、ｙ、ｚ≧０にて、 x/3＋y/4＋z/6≧1/6かつ、 x/6＋y/10＋z/11≦1/6 である。

これは x/3＋y/4＋z/6＜1/6では、キュリー点Tcが高く、また x/6＋y/10＋z/11＞1/6では、飽和磁化σｓが低下し、
またTcが低すぎてしまい、実用的でないからである。

この場合、Ga、Cr、Alのうち、その総計の40at％以下
を、In、Sc、Ti、Zn、Sn、Cr、Ta、Sb、Bi、Ｖ、Ｙ、M
n、Co、Ni等の１種以上で置換してもよい。

また、ｎは、4.5〜６、特に５〜６であるが、これ以
外の値となるとσｓが低下したり、Fe₃O₄相が析出して
しまう。

このような組成を有する磁性粉は、六方晶を有する通
常、六角板状の粉体である。

この場合、板状であるときには、主面平均径は0.2〜
３μｍ程度、また平均厚は、0.1〜２μｍ程度である。

また、平均粒径0.1〜３μｍの球状ないし不定形状の
粉体であってもよい。

このような磁性粉は、焼結体を機械的に粉砕したり、
あるいはガラス結晶化法や、共沈法や、金属アルコキシ
ド法等によって製造される。

なお、このような粉体のHcは３〜15kOe程度、σｓは
５〜10emu/g程度、σｒは４〜8emu/g程度であり、Tcは1
20〜180℃程度である。

本発明の磁気記録媒体は、このような磁性粉とバイン
ダとを含有する磁性層を有する。

バインダ中に分散することにより、可とう性が向上
し、取り扱いが容易となる等の効果が実現する。

用いるバインダとしては、公知の各種熱可塑性樹脂、
熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応性樹脂等が使用
可能である。

バインダと本発明の磁性粉とは、重量比で9:1〜1:9、
特に3:1〜1:3程度の量比で含有されればよい。

なお、バインダおよび磁性粉は２種以上用いてもよ
く、また、他の磁性粉を併用してもよい。

この他、磁性層には、公知の分散剤、研磨剤、着色
剤、潤滑剤等が含有されていてもよい。

磁性層の厚さは0.5〜30μｍ程度でよい。

なお、磁性層は複数積層してもよい。

用いる基板としては、公知の各種樹脂、金属、ガラス
等が適用可能である。

なお、媒体の用途に応じ、各種下地層、表面層、中間
層、裏面層が形成されていてもよい。

このような磁気記録媒体を用いて磁気記録を行うには
以下のような方法がある。

まず、第１は、熱磁気記録である。

この際には、磁性層を磁性粉のキュリー点より、120
〜180℃程度に、例えばレーザー光により加熱して、通
常の記録を行えばよい。

また、その第２は熱磁気記録である。

この際には、マスク用の信号を担持する、γ−Fe₂O₃
等の磁性層と接触させた状態で、上記の温度に加熱して
信号を転写すればよい。

いずれも転写信号の周波数特性はきわめて平坦であ
る。

＜実施例＞ 以下、本発明の実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に
説明する。

実施例１ 原料を秤量して、1350℃にて焼結して、 BaO・６（Fe_7/6Ga_5/6O₃）を得たのち、これを粉砕し
て、平均粒径１μｍの磁性粉１を得た。

この磁性粉１はTc150℃、Hc5.1kOe、σs8.2emu/g、σ
_r7.9emu/gであった。

この磁性粉を用い、下記の組成を用意した。

磁性粉 120重量部 カーボンブラック ６重量部 レシチン ２重量部 硝化綿（Ｈ−1/2秒イソプロピルアルコール30％を塩
酢ビ共重合体UCC社製VAGH30％で置換した硝化綿70％の
チップ） 15重量部 メチルエチルケトン 50重量部 メチルイソブチルケトン 50重量部 これらの組成中、硝化綿チップ、レシチン、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトンをかくはん機で良
く溶解した後、これらを磁性粉およびカーボンブラック
と共にボールミル中に投入し、３時間混合し良く湿潤さ
せた。

次に、 ポリウレタン樹脂 15重量部 （ビイ・エフ・グッドリッチ社製エステン5701） メチルエチルケトン 200重量部 テトラヒドロフラン 100重量部 湿潤剤（ミリスチン酸ブチル） ３重量部 の組成物を良く混合溶解させた。そしてこれを先の組成
物がはいっているボールミル中に投入し、再び42時間混
合分散させた。

分散後、磁性塗料中のバインダーの水酸基を主体とし
た官能基と反応し架橋し得るイソシアネート化合物（バ
イエル社のデスモジュールＬ）を５重量部ボールミル中
に添加し、20分間混合をおこなった。

このようにして得られた磁性塗料は、20μｍ厚のポリ
エステルフィルム上に塗布して磁気テープとし、表面加
工を行なった後、80℃で48時間保持して磁性塗膜の熱硬
化反応を進めた。

さらにこれをスリッタにて切断した。

磁性層の膜厚は10μｍとした。

次に、市販のγ−Fe₂O₃オーディオテープ（TDK株式会
社製）をマスターテープとして、60Hz〜10kHzの信号を
記録した。

このマスターテープと上記のテープとを2.5m/sにて走
行させながら、180℃に加熱しながら熱磁気転写を行っ
た。

マスターテープの出力と、転写テープの出力との出力
比を下記表１に示す。この場合、マスターテープの記録
は、100Hz〜10kHzにおいて出力が平坦となるように行
い、各転写テープの100Hzの出力をOdBとして、各周波数
の出力比を算出した。

なお、比較として、C_rO₂テープの例を表１に併記す
る。

この場合、用いたC_rO₂磁性粉は平均粒径0.5μｍ、Hc4
000e、σs80emu/g、σs50emu/gである。

表１に示される結果から、本発明の効果があきらかで
ある。

実施例２ 実施例１において、磁性粉１を下記にかえて、同様に
磁気テープを作製した。

磁性粉２ BaO・６（Fe_4/6Al_8/6O₃） 平均粒径 1.8μｍ Hc 10.2kOe σｓ 7.2emu/g Tc 160℃ 磁性粉３ BaO・６（Fe_5/6Cr_7/6O₃） 平均粒径 2.3μｍ Hc 8.6kOe σｓ 5.2emu/g Tc 150℃ 磁性粉４ BaO・６（Fe_6/6Ga_3/6Cr_2/6Al_1/6O₃） 平均粒径 1.5μｍ Hc 5.4kOe σｓ 8.1emu/g Tc 130℃ 磁性粉５ BaO・６（Fe_1.0Ga_0.6Zn_0.1Co_0.2KO₃） 平均粒径 2.3μｍ Hc 3.2kOe σｓ 6.1emu/g Tc 160℃ 磁性粉６ BaO・６（Fe_0.9Ga_0.6Zn_0.1Ｖ_0.1Co_0.1O₃） 平均粒径 2.5μｍ Hc 3.3kOe σｓ 7.2emu/g Tc 150℃ 磁性粉７ PbO・６（Fe_0.9Ga_0.5Ti_0.2Yo_0.1Co_0.2O₃） 平均粒径 0.2μｍ Hc 3.8kOe σｓ 5.2emu/g Tc 150℃ 上記各磁性粉につき、実施例１と同様に熱磁気転写を
行ったところ、実施例１と同等の結果をえた。

実施例３ 原料を秤量して1450℃にて焼結して、 SrO・5.6（Fe_6.5/6Ga_3/6Cr_2.5/6O₃） を得たのち、これを粉砕して、平均粒径１μｍの磁性粉
８を得た。

この磁性粉８の特性は下記の通りであった。

平均粒径 １μｍ Hc 5kOe σｓ 5.5emu/g Tc 120℃ この磁性粉８につき、実施例１と同様に媒体を作製
し、熱磁気転写を行ったところ、実施例１と同等の結果
を得た。

実施例４ 実施例３と同様にして、下記の磁性粉９〜14を作製し
た。

磁性粉９ SrO・5.6（Fe_7/6Ga_3/6Cr_2/6O₃） 平均粒径 0.5μｍ Hc 8kOe σｓ 8.5emu/g Tc 160℃ 磁性粉10 SrO・5.6（Fe_7.5/6Cr_4.5/6O₃） 平均粒径 0.8μｍ Hc 10kOe σｓ 8.1emu/g Tc 180℃ 磁性粉11 SrO・5.4（Fe_4/6Cr_3/6Al_5/6O₃） 平均粒径 0.7μｍ Hc 10kOe σｓ 6.2emu/g Tc 150℃ 磁性粉12 SrO・5.0（Fe_4/6Al_8/6O₃） 平均粒径 1.0μｍ Hc 13kOe σｓ 5.7emu/g Tc 180℃ 磁性粉13 SrO・5.6（Fe_5.5/6Ga_1/6Cr_4/6Al_1.5/6O₃） 平均粒径 0.8μｍ Hc 12kOe σｓ 7.2emu/g Tc 150℃ 磁性粉14 CaO・5.6（Fe_8/6Ga_4/6O₃） 平均粒径 2.0μｍ Hc 8kOe σｓ 9.5emu/g Tc 175℃ これらの磁性粉９〜14につき、実施例１と同様に媒体
を作製し、熱磁気転写を行ったところ、実施例１と同等
の結果を得た。

実施例５ 実施例１〜４のテープにつき、120〜180℃にて磁気記
録を行ったところ、平坦な周波数特性をもつ出力を得る
ことができた。

＜効果＞ 本発明によれば、120〜180℃における熱磁気転写や熱
磁気記録において、周波数特性の良好な出力を得ること
ができる。

また、Hcが高く、一旦記録したのちに消去しにくい磁
性層がえられる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚田 岳夫 東京都中央区日本橋１丁目13番１号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 平２−66902（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−306602（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−236104（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−185003（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) G11B 5/706 H01F 1/11

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】バインダ中に、下記式で示される組成を有
   する磁性粉を含有する磁性層を有することを特徴とする
   熱磁気転写用の磁気記録媒体。 式 MeO・ｎ［Fe_2-x-y-zGa_xCr_yAl_zO₃］ ｛上記式中、Meは、Ba、Sr、PbおよびCaのうちの１種以
   上を表わす。 また、4.5≦ｎ≦６、ｘ≧０、ｙ≧０、ｚ≧０、 x/3＋y/4＋z/6≧1/6、 x/6＋y/10＋z/11≦1/6である。｝
2. 【請求項２】バインダ中に、下記式で示される組成を有
   する磁性粉を含有する磁性層を有することを特徴とする
   熱磁気記録用の磁気記録媒体。 式 MeO・ｎ［Fe_2-x-y-zGa_xCr_yAl_zO₃］ ｛上記式中、Meは、Ba、Sr、PbおよびCaのうちの１種以
   上を表わす。 また、4.5≦ｎ≦６、ｘ≧０、ｙ≧０、ｚ≧０、 x/3＋y/4＋z/6≧1/6、 x/6＋y/10＋z/11≦1/6である。｝
3. 【請求項３】前記磁性粉は、３〜15kOeの保磁力と、５
   〜10emu/gの飽和磁化と、120〜180℃のキュリー点とを
   有する請求項１または２に記載の磁気記録媒体。