JP2797982B2 - Mrヘッドとその製造方法 - Google Patents

Mrヘッドとその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気抵抗効果を利用す
るMRヘッドの構造及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】実用的なMRヘッドとして、磁気抵抗効
果膜の両側に非磁性絶縁体を介して軟磁性層を積層した
構造のシールド型MRヘッド、およびMR膜をABS面
から後退させ、外部磁界を軟磁性ヨークを介して磁気抵
抗効果膜に誘導する構造のヨーク型MRヘッドが知られ
ている。
【0003】また一方で、ペロブスカイトの中でLa−
Ca−Mn−OおよびLa−Ba−Mn−Oが室温近傍
で高いMR比を実現することがアプライド・フィジック
ス・レターズ(Appl.Phys.Lett.,6
3,1993,p.1990−1993(199
3))、サイエンス(Science 264,p.4
13−415(1994))、フィジカル・レビュー・
レターズ(Phys.Rev.Lett.71,p.2
331−2333,(1993))等において研究さ
れ、報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のMRヘッドは、
MR素子としてパーマロイを用いているがパーマロイは
MR比が2〜3%と小さいために、再生出力が十分大き
くとれなかった。大きな再生出力を得るためには、MR
比のより大きな材料、例えば前述のLa−Ca−Mn−
Oなどのペロブスカイト系MR材料を用いることが有効
であると考えられる。
【0005】ところがペロブスカイトは良好な結晶を作
らないとMR比、磁界感度などの良好な特性を得ること
が出来ず、そのためには成膜時の基板温度を上げるとい
うプロセスが不可欠であった。基板加熱は下ヨークごと
行わなければならないのでパーマロイやCoZrNbな
ど従来のヨーク材料では基板温度を上げた際に下ヨーク
も加熱され、透磁率が劣化するという問題があった。
【0006】本発明の目的は、MR比の大きなペロブス
カイト系MR材料を実用化する上で最適なMRヘッドの
構成及びその簡便なる製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の構成は、非磁性
絶縁層を介して上下にヨークを配置したヨーク型磁気抵
抗効果素子において、MR素子として500℃以上で成
膜した(A,B)MnOx型ペロブスカイトを、下ヨー
クとしてフェライト、FeN,FeTaN,FeTaN
Cu,またはセンダストの単層膜、混合物、又は多層膜
を用いることよりなる。また、本発明による製造方法は
図1の作製手順に示したように、溝入れが施された基板
に下ヨークとしてフェライト,FeN,FeTaN,F
eTaNCu,またはセンダストの単層膜、混合物、又
は多層膜を成膜し、その上に絶縁材料を流し込んだ後表
面平坦化を行う工程と、該絶縁材料上に下地層を成膜
し、この上に500℃以上に基板加熱しながらペロブス
カイト膜を成膜しパターン化する工程と、電極材料を成
膜してからパターン化し、その上に絶縁層を形成する工
程と、該絶縁層上に上ヨークを形成しパターン化する工
程と、該上ヨーク上にセラミックまたは金属からなる保
護膜を成膜する工程よりなることを特徴としている。
【0008】
【作用】(A,B)MnOx型ペロブスカイト(ただ
し,A=La,Ce,Pr,Nd,Pm,Eu,Gd,
Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,B=B
e,Mg,Ca,Sr,Baが好適である)を用いたヨ
ーク型MRヘッドでは、下ヨーク成膜後にペロブスカイ
ト材料の成膜が行われる。ところが、ペロブスカイトは
結晶性が良好でないと良好なMR特性を持たず、また良
好な特性を得るためには成膜時の基板が約500℃以上
でなければならないので、良好なMR特性ひいては良好
なヘッド再生出力を得るためには成膜中に500℃以上
の高温で基板加熱を行うことが必要である。基板加熱時
には当然下ヨークも同時に加熱されることになる。従っ
て、下ヨークには500℃以上の高温における熱処理に
より磁気特性の劣化しない材料を用いなければならな
い。本発明では、下ヨークとしてフェライト、FeN,
FeTaN,FeTaNCu,またはセンダストを用い
ることを提案しているが、これらの材料ではいずれも良
好な軟磁気特性を得るためには500℃以上の温度での
成膜後熱処理が必要とされる材料であり、ペロブスカイ
ト成膜時の基板加熱により特性が劣化するようなことは
ない。さらにペロブスカイト成膜時の基板温度を適当に
設定すれば、下ヨーク成膜後の特性改善のための熱処理
とペロブスカイト成膜時の基板加熱を同時に行うことが
できるため、工程を1つ省略することができる。これは
ヘッド製造コストの低減につながる。
【0009】本発明に使用する基板には、絶縁材を流し
込むための溝入れが施されたアルミナ、アルミナとTi
Cの混合物、あるいはフェライトなどを用いることがで
きる。下ヨーク形成後にこの溝中に流し込まれる絶縁材
料としては、少なくとも500℃以上の熱処理により影
響を受けず、しかもそれより高温で溶融し流し込めるよ
うな材料でなければならないため、高融点ガラスやSi
2 が適当である。
【0010】また、ガラスやSiO2 上にペロブスカイ
トの良好な結晶を成長させることはできないので、ペロ
ブスカイト成膜の前にペロブスカイトの結晶成長を促す
下地層を成膜する必要がある。これにはLaAlO3
SrTiO3 ,MgO等の単層膜、混合物、または積層
膜を適宜採用して用いることができる。
【0011】上ヨークとしてはFeN,FeTaN,F
eTaNCu,センダスト,NiFe,NiFeCo,
CoZr,CoZrNb,またはCoZrMoの単層
膜、混合物、または積層膜、あるいはこれらの材料とT
a、W、またはCuとの積層膜等を適宜選択することが
出来る。上ヨーク上の保護膜も、セラミックまたは金属
等を適宜選択して用いることが可能である。
【0012】
【実施例】ヘッド作製に先立ち下地層材料とペロブスカ
イト材料の単層での特性の熱処理温度変化を調べた。
【0013】図3はFeTaN,FeTaNCu,及び
センダスト単層膜の透磁率の熱処理温度依存性である。
熱処理時間は15分である。透磁率は熱処理温度の上昇
にともない増加し、FeTaNで600℃、FeTaN
Cuで650℃、センダストで550℃付近で飽和する
傾向を示した。
【0014】図4はLaCaMnO,LaSrMnO,
NdBaMnO,CeMgMnO,およびErCaMn
O単層膜の室温でのMR比と熱処理温度との関係であ
る。熱処理温度は15分である。MR比は熱処理温度の
上昇にともない増加し、LaCaMnOで850℃、L
aSrMnOおよびNdBaMnOで800℃、ErC
aMnOで550℃程度で飽和する傾向を示した。
【0015】そこで図3及び図4の結果をふまえて、図
1の作製手順に従って図2の構成によるヨーク型ヘッド
を作製した。
【0016】(実施例1)基板にAl2 3 ・TiC、
下ヨークにFeTaNCu、絶縁材にAl2 3、下地
層にSrTiO3 、ペロブスカイトにLaCaMnO電
極材料にTaとAuの積層膜、絶縁層にAl2 3 、上
ヨークにNiFeとTaとTaの積層膜、保護層にAl
2 3 を用いて図2の構成のヨーク型ヘッドを作製し
た。ペロブスカイト成膜時の基板加熱温度は850℃に
設定した。この際下ヨークも850℃で熱処理されるこ
とになる。
【0017】こうして作製したヨーク型ヘッドの記録再
生出力特性を測定した。予め垂直記録しておいた媒体に
対し本発明を適用したヘッドを用いて再生を行ったとこ
ろ、14mVという高い出力を得ることができた。この
際ヘッドは媒体に対し接触状態にあるコンタクト型とし
た。従来のヘッドにでは、磁気抵抗効果素子としてパー
マロイを用い、シールド型の浮上ヘッドとして長手記録
を行った場合で250μV程度であったので、それに比
べると56倍の高出力が得られたことになる。
【0018】(実施例2)基板にAl2 3 、下ヨーク
にFeTaN、絶縁材にAl2 3 、下地層にSrTi
3 、ペロブスカイトにLaSrMnO電極材料にTa
とAuの積層膜、絶縁層にAl2 3 、上ヨークにNi
FeとTaとTaの積層膜、保護層にAl2 3 を用い
て図2の構成のヨーク型ヘッドを作製した。ペロブスカ
イト成膜時の基板加熱温度は800℃に設定した。この
際下ヨークも800℃で熱処理されることになる。
【0019】こうして作製したヨーク型ヘッドの記録再
生出力特性を測定した。予め垂直記録しておいた媒体に
対し本発明を適用したヘッドを用いて再生を行ったとこ
ろ、12mVという高い出力を得ることができた。この
際ヘッドは媒体に対し接触状態にあるコンタクト型とし
た。従来のヘッドに比べて48倍の高出力が得られたこ
とになる。
【0020】(実施例3)基板にフェライト、下ヨーク
にFeTaNCu、絶縁材にSiO2 、下地層にLaA
lO3 、ペロブスカイトにNdBaMnO、電極材料に
TaとAuの積層膜、絶縁層にAl2 3 、上ヨークに
NiFeとTaとTiの積層膜、保護層にAl2 3
用いて図2の構成のヨーク型ヘッドを作製した。ペロブ
スカイト成膜時の基板加熱温度は800℃に設定した。
この際下ヨークも800℃で熱処理されることになる。
【0021】こうして作製したヨーク型ヘッドの記録再
生出力特性を測定した。予め垂直記録しておいた媒体に
対し本発明を適用したヘッドを用いて再生を行ったとこ
ろ、15mVという高い出力を得ることができた。この
際ヘッドは媒体に対し接触状態にあるコンタクト型とし
た。従来のヘッドに比べて60倍の高出力が得られたこ
とになる。
【0022】(実施例4)基板にフェライト、下ヨーク
にFeTaNCu、絶縁材に高融点ガラス、下地層にL
aAlO3 、ペロブスカイトにCeMgMnO、電極材
料にTaとAuの積層膜、絶縁層にAl2 3 、上ヨー
クにNiFeとTaとTiの積層膜、保護層にAl2
3 を用いて図2の構成のヨーク型ヘッドを作製した。ペ
ロブスカイト成膜時の基板加熱温度は750℃に設定し
た。この際下ヨークも750℃で熱処理されることにな
る。
【0023】こうして作製したヨーク型ヘッドの記録再
生出力特性を測定した。予め垂直記録しておいた媒体に
対し本発明を適用したヘッドを用いて再生を行ったとこ
ろ、13mVという高い出力を得ることができた。この
際ヘッドは媒体に対し接触状態にあるコンタクト型とし
た。従来のヘッドに比べて52倍の高出力が得られたこ
とになる。
【0024】(実施例5)基板にAl2 3 ・TiC、
下ヨークにセンダスト、絶縁材に高融点ガラス、下地層
にLaBeO3 、ペロブスカイトにErCaMnO、電
極材料にTaとAuの積層膜、絶縁層にAl2 3 、上
ヨークにNiFeとTaとTaの積層膜、保護層にAl
2 3 を用いて図2の構成のヨーク型ヘッドを作製し
た。ペロブスカイト成膜時の基板加熱温度は550℃に
設定した。この際下ヨークも550℃で熱処理されるこ
とになる。
【0025】こうして作製したヨーク型ヘッドの記録再
生出力特性を測定した。予め垂直記録しておいた媒体に
対し本発明を適用したヘッドを用いて再生を行ったとこ
ろ、5mVという出力を得ることができた。この際ヘッ
ドは媒体に対し接触状態にあるコンタクト型とした。こ
のタイプでは従来のヘッドに比べて20倍の出力と上記
4実施例に比べるとやや得られた出力レベルが小さかっ
たが、基板加熱温度が550℃と比較的低い場合でも比
較的良好な特性が得られた。
【0026】(実施例6)基板にAl2 3 ・TiC、
下ヨークにFeTaNCu、絶縁材にSiO2 、下地層
にLaAlO3 、ペロブスカイトにLaCaMnO、電
極材料にTaとAuの積層膜、絶縁層にAl2 3 、上
ヨークにNiFeとTaの積層膜、保護層にAl2 3
を用いて図2の構成のヨーク型ヘッドを作製した。ペロ
ブスカイト成膜時の基板加熱温度は850℃に設定し
た。この際に下ヨークも同時に850℃で熱処理される
ことになる。
【0027】こうして作製したヨーク型ヘッドの記録再
生出力特性を測定した。予め垂直記録しておいた媒体に
対し本発明を適用したヘッドを用いて再生を行ったとこ
ろ、3mVという非常に高い出力を得ることができた。
この際ヘッドは媒体に接触状態にあるコンタクト型とし
た。従来のヘッドでは、磁気抵抗効果素子としてパーマ
ロイを用い、シールド型の浮上ヘッドとして長手記録を
行った場合で250mV程度であったので、それに比べ
ると100倍以上の高出力が得られたことになる。
【0028】以上、下ヨークとして単層膜を用いた例に
ついて述べたが、多層膜や、混合物よりなる材料を用い
ても単層膜と大差ない結果が得られ、下ヨークとしては
どのような形態の膜でも使用できることが認められた。
【0029】
【発明の効果】本発明の適用により、従来のパーマロイ
系薄膜ヘッドに比べて、格段に高い出力を実現すること
ができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用によるヨーク型ヘッドの作製手順
である。
【図2】本発明の適用によるヨーク型ヘッドを示す概念
図である。
【図3】FeTaNCu、FeTaNCu、センダスト
単層膜の透磁率の熱処理温度依存性を示す図である。
【図4】種々のペロブスカイト単層膜のMR比の熱処理
温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 基板 2 下ヨーク 3 絶縁材 4 下地層 5 ペロブスカイト膜 6 絶縁層 7 上ヨーク 8 保護層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石原 邦彦 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気 株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−221365(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 5/39 G11B 5/127 G11B 5/31

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性絶縁層を介して上下にヨークを配置
    したヨーク型磁気抵抗効果素子において、MR素子が5
    00℃以上で成膜した(A,B)MnOx型ペロブスカ
    イト(ただし、AはLa,Ce,Pr,Nd,Pm,E
    u,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu
    のいずれかからなる元素、BはBe,Mg,Ca,S
    r,Baのいずれかからなる元素)よりなり、かつ下ヨ
    ークがフェライト,FeN,FeTaN,FeTaNC
    u,またはセンダストの単層膜、混合物、又は多層膜よ
    りなることを特徴とするMRヘッド。
  2. 【請求項2】非磁性絶縁層を介して上下にヨークを配置
    したヨーク型磁気抵抗効果素子において、下ヨークがフ
    ェライト,FeN,FeTaN,FeTaNCu,また
    はセンダストの単層膜、混合物、又は多層膜よりなり、
    前記非磁性絶縁層が高融点ガラス、またはSiO2より
    なり、MR素子が500℃以上で成膜した(A,B)M
    nOx型ペロブスカイト(ただし、AはLa,Ce,P
    r,Nd,Pm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,E
    r,Tm,Yb,Luのいずれかからなる元素、BはB
    e,Mg,Ca,Sr,Baのいずれかからなる元素)
    よりなり、かつ前記非磁性絶縁膜と前記MR素子との間
    にペロブスカイトの結晶成長を促す下地層を設けたこと
    を特徴とするMRヘッド。
  3. 【請求項3】前記ペロブスカイトの結晶成長を促す下地
    層が、LaAlO3,SrTiO3,MgOの少なくとも
    1種よりなる単層膜、混合物、積層膜であることを特徴
    とする請求項2記載のMRヘッド。
  4. 【請求項4】溝入れが施された基板に下ヨークとしてフ
    ェライト,FeN,FeTaN,FeTaNCu,また
    はセンダストの単層膜、混合物、又は多層膜を成膜し、
    その上に絶縁材料を流し込んだ後表面平坦化を行う工程
    と、該絶縁材料上に下地層を成膜し、この上に500℃
    以上に基板加熱しながらペロブスカイト膜を成膜しパタ
    ーン化する工程と、電極材料を成膜してからパターン化
    し、その上に絶縁層を形成する工程と、該絶縁層上に上
    ヨークを形成しパターン化する工程と、該上ヨーク上に
    セラミックまたは金属からなる保護膜を成膜する工程よ
    りなることを特徴とする請求項1または2または3記載
    のMRヘッドの製造方法。
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