JP2796645B2 - 細胞性フィブロネクチンの吸着除去方法 - Google Patents

細胞性フィブロネクチンの吸着除去方法

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JP2796645B2
JP2796645B2 JP50698292A JP50698292A JP2796645B2 JP 2796645 B2 JP2796645 B2 JP 2796645B2 JP 50698292 A JP50698292 A JP 50698292A JP 50698292 A JP50698292 A JP 50698292A JP 2796645 B2 JP2796645 B2 JP 2796645B2
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兼次 朝川
良一 楳本
和夫 日野
栄治 坂下
喬 駒井
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は細胞性フィブロネクチン(cFN)の吸着除去
方法、より詳しくは血漿フィブロネクチン(pFN)とcFN
とを含有するフイブロネクチン(FN)含有物の特定のFN
吸着体と接触させて、該吸着体にcFNを選択的に吸着さ
せて除去する、cFNの吸着除去方法 背景技術 フィブロネクチン(FN、fibronectin)は、1948年に
モリソンらにより血漿蛋白質の一つとして初めて報告さ
れ[Morrison,P.R.et al.,J.Am.Chem.Soc.,70,3103(19
48)]、種々の組織や体液中に広く分布する一群の多機
能蛋白質であり、細胞の接着因子として、細胞の移動、
分化、増殖、癌化といった多彩な生物現象に関与するこ
とが知られている[関口清俊、細胞工学、(6),485
−497(1985)]。
また従来より、肝臓で合成され血中に存在するFNは血
漿FN(pFN)と呼ばれ、培養細胞表面及び培養液中に存
在するFNは細胞性FN(cFN)の呼ばれている[Sekiguchi
et al.,J.Biol.Chem.,260(8)5105−5114(1985)]
が、之等FNは遺伝子初期転写産物の可変的スプライシン
グにより、分子多様性を生じることが明らかにされてい
る。かかる可変的スプライシングを受ける領域には、ED
A、EDB及びIII csと呼ばれる3領域があり、之等領域の
発現の組合せによって、多数の分子種が生じるものと考
えられており、之等の中でpFNは上記EDA及びEDB領域が
殆ど発現していない。一方、cFNは上記EDA領域の発現が
高いFNである。ピータースら(Peters J.H.et al.)
は、29アミノ酸ペプチドをキーホールリンペットヘモシ
アニン(KLH)に結合させて免疫原とし、EDA領域を持つ
cFNに特異的に反応する抗cFNポリクローナル抗体を作製
し、その抗体を用いて正常ヒト血中に微量のcFNが存在
すること、並びに欠管炎を伴う膠原病患者の血中にcFN
が著しく上昇することを報告している[Am.Rev.Respir.
Dis.,138,167−174(1988);J.Lab.Clin.Med.,113
(5),586−597(1989)]。上記ピータースらの報告
では、血管炎を伴う膠原病患者において、血中cFNが上
昇することの生理的意義は不明であるが、病勢の強さと
cFN濃度との間に相関関係が示唆されている。尚、後述
するcFNのモノクローナル抗体を用いた本発明者らの研
究によれば、正常人血漿中のcFN濃度は1〜2μg/mlで
あるが、種々の疾患患者では4〜8μg/ml、重症患者で
は10数μg/mlまで上昇することが判明した。一方、pFN
ではいずれの群においても270〜400μg/mlの正常範囲内
にあった。
従って、cFNが異常に上昇した膠原病患者の血液からc
FNを分離、除去することにより、病勢がどのように展開
するかということは非常に興味のある問題である。本発
明者らによる最近の研究によると、慢性関節性リウマチ
患者の血漿をグリオフィルトレーションすることによ
り、血漿からcFNが部分的に除去され、症状が改善され
ることが判明してきた。しかしながら、上記クリオフィ
ルトレーションは、有用な血漿蛋白質を大量に廃棄する
ものであり、cFNの選択的分離、除去はできないという
欠点がある。このように、患者血液から選択的にcFNを
分離、除去する方法や該分離、除去のためのcFNの選択
的吸着体は、現在尚、開発されてはいない。更には、膠
原病患者におけるcFNの生理的役割並びにpFN及びcFNの
機能や生理的意義を詳細に研究するには、純粋なpFN及
びcFNが必須となるが、pFNとcFNとは、構造上の違いは
あるとしても、分子全体から見ればその相違が僅かであ
るため、従来から使用されている分離精製法を用いて
も、之等の分離は不可能である[片山政彦、臨床検査、
34,1725(1990)]。即ち、例えば従来よりFNの精製に
はゼラチンアフィニティクロマトグラフィー[Hynes R.
O.Edit.,Fibronectins,p9−14,Springer−Verlag,199
0]が賞用されているが、この方法でもゼラチンに対す
るpFNとcFNとの親和性には差がないため、之等の分離は
できない。また、蛋白質の一般的な精製法であるゲル濾
過クロマトグラフィー等を利用しても、pFNとcFNとは分
子量差が小さすぎるために、やはり両者の分離は不可能
である。
本発明者らは以上の事情に鑑み、鋭意研究を進めた結
果、FNのEDA領域のアミノ酸配列部分を認識するモノク
ローナル抗体を開発し、この抗体を用いて高精度のcFN
の定量法を確立することに成功した。引き続きこの定量
法を用いて研究を進めた結果、ヘパリンに代表されるポ
リサッカライド硫酸が、cFNに対して特異的親和性を有
することを発見した。この知見に基づき更に研究を進め
たところ、ポリサッカライド硫酸を架橋した水不溶性の
架橋ポリサッカライド硫酸及びポリサッカライド硫酸を
リガンドとして適当な水不溶性担体に固定したポリサッ
カライド硫酸固定担体が、cFNを吸着すること、そのcFN
とpFNに対する吸着力に異差のあること、即ちcFNを選択
的に付着できる該cFNの選択的吸着剤として有用である
ことを見出した。また、之等の事実を基礎としてpFNとc
FNとの分離を可能とする新しい方法を研究開発した。本
発明は之等の新しい知見に基づいて完成されたものであ
る。
発明の開示 即ち本発明は、pFNとcFNとを含有するFN含有物を、架
橋ポリサッカライド硫酸及び/又はポリサッカライド硫
酸固定担体からなるFN吸着体と接触させて、該吸着体に
cFNを選択的に吸着させることを特徴とする、cFNの吸着
除去方法に係わる。
本発明において処理対象とするFNは、これがpFNとcFN
とを含有する限りいかなるものであってもよく、代表的
には血液、血漿、血清等や既にその存在が明らかにされ
ている各種臓器から常法に従い抽出されたものや線維芽
細胞等の培養液由来のものを例示でき、之等の内では血
中cFNが上昇することが知られている各種の疾患患者、
例えば慢性関節性リウマチ、全身性エリテマトーデス、
進行性全身性硬化症、多発性筋炎、巨細胞性動脈炎、リ
ウマチ性多発筋症、結節性多発動脈炎、慢性腎不全症等
の各種疾患患者の血液(血漿、血清)が好ましい。
本発明において利用するFN吸着体は、架橋ポリサッカ
ライド硫酸及び/又はポリサッカライド硫酸固定架橋ポ
リサッカライドからなり、また本発明のcFNの吸着除去
方法は、FN含有物を上記吸着体と接触させることにより
実施される。
本発明において利用するFN吸着体中、架橋ポリサッカ
ライド硫酸としては、デキストラン等のポリサッカライ
ドを架橋して得られる架橋ポリサッカライドの硫酸エス
テル化物及びその塩類、例えばナトリウム塩、カリウム
塩、アンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩等、特
に好ましくはナトリウム塩を使用でき、之等は水不溶性
であり水和状態でゲル状となっているものが好ましい。
上記において原料として用いられるポリサッカライドに
は、代表的にはセルロース、アガロース、デキストラ
ン、キチン、キトサン等が含まれる。上記セルロースと
しては、グルコースがβ−1,4結合した分子量約5万〜2
00万の多糖類、例えば結晶セルロースアビセル(旭化成
工業社製)やセルロファイン(チッソ社製)等を好適な
ものとして例示できる。上記アガロースとしては、寒天
の主成分である多糖類、即ち[D−ガラクトシル−(β
1→4)−3,6−アンヒドロ−L−ガラクトシル−(α
1→3)]の繰返し構造を有する多糖類、特に分子量が
約1万〜500万のものが好適であり、その具体例として
は例えばセファロース2B、セファロース4B、セファロー
ス6B等(いずれもファルマシア社製)を例示できる。上
記デキストランとしては、例えばシュークロースからロ
イコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mese
nteroides)等の微生物の作用によって生成するα1,6結
合を主体とするD−グルコース重合体であって、平均分
子量が約1000〜4000万のものを好ましいものとして例示
できる。またチキン及びキトサンとしては、酢酸、塩酸
等の希薄水溶液等の水系溶媒に可溶な部分脱アセチル化
キチン及び部分脱アセチル化キトサンが好ましい。之等
は市販品として容易に入手できる他、エビ、カニ等の節
足動物甲殻類から常法に従って分離精製して得られるキ
チンを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ
水溶液中で加熱して得られるものでもよい。
上記原料ポリサッカロイドの架橋反応は、公知の各種
架橋剤、例えばエピクロルヒドリンや2,3−ジブロモプ
ロパノール等を用いて常法に従い実施できる。また架橋
ポリサッカライド自体、一部市販されている。該市販品
の具体例としては、例えばファルマシア社製のセファデ
ックスG−10、セファデックスG−25、セファデックス
G−50、セファデックスG−100(いずれも架橋デキス
トラン)やセファロースCL−2B、セファロースCL−4B、
セファロースCL−6B(架橋アガロース)等、チッソ社製
のセルロファイン(架橋セルロース)等を例示できる。
上記架橋ポリサッカライドの硫酸エステル化反応は、
公知の各種硫酸エステル化剤、例えばクロルスルホン酸
や無水硫酸エステル等を用いて、通常の方法により実施
できる。また上記架橋ポリサッカライドの硫酸エステル
化物は市販されており、これを利用することもできる。
その具体例としては、例えば生化学工業社製硫酸化セル
ロファイン(架橋セルロース硫酸)、硫酸化セファデッ
クス(架橋デキストラン硫酸)、硫酸化セファロース
(架橋アガロース硫酸)、富士紡績社製のスルホン化キ
トパール(架橋キチン硫酸、架橋キトサン硫酸)等を例
示できる。之等の内では硫酸エステル密度の高いものが
好ましく、一般に該硫酸エステル密度が高い程、cFN吸
着量は多くなる。
また、本発明においては上記FN吸着体としてポリサッ
カライド硫酸固定担体をも利用できる。該ポリサッカラ
イド硫酸固定担体は、ポリサッカライド硫酸を適当な担
体に結合したものを指称する。
ここでポリサッカライド硫酸としては、例えばヘパリ
ン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、コンドロ
イチンポリ硫酸、セルロース硫酸、キチン硫酸、キトサ
ン硫酸、ペクチン硫酸、イヌリン硫酸、アガロース硫酸
等の各種を利用できる。その内好ましくは、ヘパリン、
デキストラン硫酸、セルロース硫酸等を例示できる。
上記ポリサッカライド硫酸固体用担体としては、アフ
ィニティクロマトグラフ法等の分野でよく知られている
担体であれば特に制限はなく、一般には被処理液例えば
血漿中のFNを効率よく吸着するためにFNが容易に多孔質
体内に侵入し得る程度の大きさの径の連続した細孔を有
する水不溶性多孔質物質であるのが有利である。これは
また目的とするFN以外の体液成分の吸着(いわゆる非特
異的吸着)の少ないものが好ましい。更にこれは、その
表面のポリサッカライド硫酸の固定化反応に利用できる
官能基が存在していることが望ましく、該官能基として
は、例えば水酸基、アミノ基、アルデヒド基(ホルミル
基を含む)、カルボキシル基、チオール基、シラノール
基、アミド基、エポキシ基、ハロゲン原子、スクシンイ
ミド基、酸無水物基等を例示でき、特にアミノ基、アル
デヒド基(ホルミル基を含む)等を有するものが好適で
ある。上記水不溶性多孔質物質の具体例としては、例え
ば記述の架橋セルロース、架橋デキストラン、架橋アガ
ロース、架橋キチン等の架橋ポリサッカライド、多孔質
シリカゲル等の無機多孔質体、ポリアクリルアミド、ポ
リメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、スチ
レン−ジビニルベンゼン共重合体等の合成高分子物質、
之等のブレンドの多孔質ポリマー−ハードゲル等を例示
できる。上記アミノ基、ホルミル基等の官能基を導入し
た水不溶性多孔質担体の具体例としては、例えばアミノ
セルロファイン(チッソ社製)、ホルミルセルロファイ
ン(同上社製)等の架橋セルロース誘導体を例示でき
る。
上記ポリサッカライド硫酸固定担体の製造のためのポ
リサッカライド硫酸の担体への結合(固定)は、用いる
担体の種類に応じて、例えば該担体が適当な官能基を有
する場合にはこれを利用して直接に、また官能基を有し
ない場合には適当な結合試薬を介して、いずれも通常の
方法、例えば酵素固定化に従来から適用されてきた方法
(千畑、土佐、松尾:実験と応用 アフィニティクロマ
トとアフィニティラベル、共立出版、1980年参照)等に
従い実施できる。
ポリサッカライド硫酸としてヘパリンを例にとり、上
記固定化方法につき詳述すれば、該方法は具体的には、
アミノ基を有する担体を利用する場合、この基にヘパリ
ンの還元末端アルデヒド基又はカルボキシル基を直接反
応させることにより実施できる。アルデヒド基やエポキ
シ基を有する担体の場合は、之等の基にヘパリンの持つ
第1級アミノ基を結合させればよい。ここでヘパリンの
持つアミノ基だけでは結合反応が不十分な虞がある場合
は、ヘパリンの−NHSO3 -基の一部を脱硫酸化して第1級
アミノ基に変換してから、上記結合反応に供することも
できる。また適当な官能基を有しない担体を利用する場
合は、予め担体に適当な官能基を有する結合試薬を反応
させた後、これをヘパリンと反応させることによって所
望のヘパリン固定担体を得ることができる。上記結合試
薬による担体への官能基の導入反応は、例えばCNBr法、
エポキシ活性化法、ホルミル法等に従うことができる。
上記CNBr法は、最も一般的な方法の一つであり、多糖類
担体にpH11〜12のアルカリ条件下でCNBrを作用させて活
性化するものであり、これにはアミノ基を有するヘパリ
ンがpH9程度の炭酸又はホウ酸緩衝液中で容易に結合で
きる。この方法ではω−アミノアルキルアミン[NH2(C
H2nNH2]等を結合させることによってスペーサーを導
入することもできる。エポキシ活性化法は、1,4−ブタ
ンジオールグリシジルエーテルやエピクロルヒドリン等
によって多糖類担体にスペーサーとエポキシ基とを導入
する方法であり、これには容易にヘパリンが結合でき
る。更にホルミル法は、担体をエピクロルヒドリン等で
エポキシ活性化した後、アンモニア水溶液を用いてエポ
キシ基の開環及びアミノ基の付与を行ない、次いでホル
ミル基の導入を行なうもので、これにはジメチルアミン
等の還元剤の存在下に容易にアミノ基を有するヘパリン
が結合できる。上記いずれの場合も担体に結合させるヘ
パリンの量は、任意であり特に限定されるものではない
が、これが多い程得られるヘパリン固定担体はその所望
のFN分離精製能力が向上するものであり、本発明に好ま
しい。尚、上記ヘパリン固定用の活性化された担体は、
一部市販されており、その例としてはアガロースにイミ
ドカーボネートを付与したCNBr−活性化セファロース4B
(ファルマシア社製)、アガロースにN−ハイドロキシ
ルサクシンイミドエステルを付与したアフィゲル10及び
15(バイオ・ラッド社製)や活性化CH−セファロース4B
(ファルマシア社製)、親水性ポリマーにエポキシ基を
付与したAF−エポキシトヨパール(トーソー社製)、ア
ガロースにエポキシ基を付与したエポキシ−活性化セフ
ァロース6B(ファルマシア社製)、セルロースにホルミ
ル基を付与したホルミルセルロファイン(チッソ社
製)、親水性ポリマーにホルミル基を付与したAF−ホル
ミルトヨパール(トーソー社製)等を例示できる。
上記ヘパリン以外のポリサッカライド硫酸の固定化
は、上記方法に準じることができる。またその他にも従
来公知のエピクロルヒドリン法、ビスエポキサイド等の
ポリオキシシラン化合物を用いる方法、ハロゲン化トリ
アジン法等を適宜利用できる。
かくして本発明に利用するcFN吸着体としてのポリサ
ッカライド硫酸固定担体を収得できる。
以下、本発明方法につき詳述すれば、本発明方法は、
架橋ポリサッカライド硫酸及び/又はポリサッカライド
硫酸固定担体からなる吸着体とFN含有物とを接触させる
ことにより実施される。その接触方法は単に両者を同一
系内に存在させるバッチ法や、架橋ポリサッカライド硫
酸及び/又はポリサッカライド硫酸固定担体を充填した
カラムにFN含有物を通過させるカラム法のいずれでもよ
いが、一般にはカラム法が操作の簡便性より好ましく採
用できる。該カラム法は、通常のアフィニティカラムク
ロマトグラフィーと同様にして実施できる。より詳しく
は、予め適当なカラムにゲル状形態の架橋ポリサッカラ
イド硫酸及び/又はポリサッカライド硫酸固定担体を充
填し、該カラムを例えば20mMリン酸緩衝液(pH7.0)等
の適当な緩衝液を用いて充分に洗浄して平衡化させ、次
に上記カラムにFN含有物を負荷する。上記ゲルの使用量
は、その種類や負荷するFN含有物の種類に応じて適宜決
定でき、特に限定されないが、一般にはFN含有物中のcF
N1mg当りおよび1〜200mlの範囲から選択されるのが適
当である。またFN含有物のカラムへの負荷速度は、カラ
ムの種類、大きさ等により適宜決定される、通常約10〜
300ml/hr・cm2の範囲から選ばれるのがよい。上記カラ
ムへのFN含有物の負荷後は、カラムを充分に洗浄し、常
法に従って緩衝液のイオン強度を高めてカラム内ゲルに
吸着されたFNを溶出、回収する。ここでイオン強度を高
める方法としてはNaCl等の塩類を添加するか、高濃度の
緩衝液を用いる方法を例示できる。また上記溶出方法
は、例えばカラム法の場合は濃度勾配法によることもで
きる。即ち例えばNaClを約0から2.0Mまで徐々に上昇さ
せて、連続的に溶出及び回収を行なうことができる。上
記濃度勾配法によれば、NaClが低濃度の領域でpFNが溶
出し、次いで高濃度の領域でcFNが溶出する。かくし
て、本発明方法によれば極めて高純度のpFNとcFNとを効
率よく回収することができる。
尚、ヘパリン固定担体を吸着体として利用した本発明
方法の場合、上記カラム操作は通常10〜40℃程度の範囲
で実施されるのが望ましく、これによってcFNの選択的
吸着がなされる。これが10℃を余りに下回る場合、上記
吸着体の本来の選択的吸着能が低下する傾向がある。
また上記カラム法において、予め適当なイオン強度を
調節しておくことによって、FN含有物の負荷時にpFNは
カラムを通過し、cFNのみをゲルに吸着させることも可
能であり、これによればFN含有物から直接cFNを除去さ
れたpFNを得ることができる。
かくして、本発明によればFN含有物から非常に簡単な
操作で効率良くcFNとpFNとを分離でき、またcFNを含ま
ない高純度のpFNを単離精製することができる。
殊に、本発明方法を血液製剤、血漿分画製剤等に応用
すれば、本発明によって之等製剤よりcFNを除去可能で
ある。この血液製剤等の精製は、基本的には上述した本
発明方法に従い実施できる。より詳しくは例えば血漿分
画製剤をヘパリン固定架橋セルロースゲルを用いて精製
する場合、その原料としての血漿を、ヘパリン固定架橋
セルロースゲル約1/20〜1/5容量、好ましくは約1/15〜1
/10容量と混合撹拌後、ゲルを遠心分離することによ
り、cFNを含まない血漿分画製剤原料が得られる。上記c
FNの除去はカラム法に従って行なうこともでき、また血
漿分画製剤の製造工程の途中の任意の時期に行なうこと
もできる。上記方法に利用したゲルは、例えばこれを2
〜5MのNaCl溶液や6M尿素溶液等の適当な洗浄液で洗浄す
ることにより容易に再生することができる。
本発明は、上述した通りFN含有物からcFNを吸着除去
する方法を提供するものであり、この方法はこれを体外
循環回路に応用すれば、循環する血液からcFNを除去す
ることが可能である。以下、この応用につき詳述する。
尚、以降の説明では血液から異常に上昇したcFNを除去
することを「血液の浄化」と称する。
上記体外循環回路は、FN吸着体と、血液もしくはこれ
から分離された血漿等とを接触させるための適当な装置
を備えることを前提として、他は任意でよい。該装置と
しては、例えば血漿成分吸着器としてのモジュールを例
示できる。該モジュールは、(1)被処理血液を導入す
るための流入口と処理血液を導出するための流出口とを
備えた、血液中の物質と反応しない材質、例えばポリカ
ーボネート製、ポリプロピレン製等の適当な容器、好ま
しくは径と長さとを適切な比率に設定した円筒状の容器
と、(2)該容器に充填されたFN吸着体ゲルと、(3)
該容器の両開口部に備えられた血液は通過するがゲルは
通過しない孔径の適当なフィルターとからなるのが好ま
しい。上記容器の容量は任意であるが、通常ゲル50〜50
0ml程度を充填できるものであればよい。このモジュー
ルは、例えばこれを既存の体外循環回路を有する二重濾
過血漿交換装置内の血漿分離器に相当する部分乃至血漿
成分分離器に相当する部分に組込むことにより、体外循
環血液浄化装置を構築できる。勿論、血液浄化装置とし
て血漿分離器に代えて上記モジュールを使用する場合
は、血漿成分分離器にかかる回路、装置は不要であり、
血漿成分分離器に代えてモジュールを使用する場合、補
充液にかかる回路、操作は不要である。
かくして本発明のcFN吸着除去方法によれば、血液中
のcFNのみを効果的に除去することが可能であり、これ
は例えば血管炎を伴う膠原病等の血中cFNの増加の認め
られる患者、例えば慢性関節性リウマチ、全身性エリテ
マトーデス、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、巨細胞
性動脈炎、リウマチ性多発筋症、結節性多発動脈炎、慢
性腎不全症等の各種疾患患者に適用することによって、
之等患者の症状の改善を図り得る画期的なものである。
発明を実施するための最良の形態 以下、本発明を更に詳しく説明するため参考例、実施
例及び応用例を挙げる。
参考例1は、本発明方法によりcFNとpFNとが分離され
たことを明らかにするためのcFNの定量に利用したcFNに
特異反応性を有するモノクローナル抗体(HHS−01抗
体)の製造例であり、参考例2は該抗体を利用したcFN
の定量法である。
また実施例1、実施例2及び実施例4〜9は、本発明
のcFNの吸着除去法に用いる架橋ポリサッカライド硫酸
及びポリサッカライド硫酸固定担体のそれぞれの作成例
であり、実施例3及び10〜12は本発明方法の実施例であ
り、最後に本発明方法を体外循環に応用した血液の浄化
方法を応用例として示す。
尚、各例における全FN、アルブミン及び総蛋白量の測
定は、下記方法により実施されたものである。
〈全FNの測定〉 抗FNモノクローナル抗体[OAL−pF117、シグマ社のpF
Nを免疫原として樹立したもの、臨床病理vol.35補冊、p
119(1987年);The 18th Congress of International A
ssociation of Medical Laboratory Tecnologists,Abst
racts,p225(1988)等参照]を、2μg/mlにダルベッコ
リン酸緩衝液(pH7.2、以下D′PBSと略称する)にて調
製し、これを96ウェルプラスチックプレートに100μl/
ウェルで注入し、4℃で一晩固相化後、D′PBS[0.05
%ツイーン20を含む、300μl/ウェル、1回]で洗浄し
た。次いで、各ウェルにD′PBS、0.05%チメロザール
及び0.5%牛血清(BSA)を300μlずつ入れ、4℃で一
晩ブロッキングさせた。ブロッキング後、D′PBS[0.0
5%ツイーン20を含む、300μl/ウェル、1回]で洗浄
し、各ウェルにD′PBS[0.05%チメロザール、10mM E
DTA、0.1%BSA及び0.1%CHAPS含有](B緩衝液)100μ
lを入れた。更に各ウェルにB緩衝液で200倍希釈した
サンプリング液と標準液として正常人血漿から精製し種
々の濃度に希釈したFNとをそれぞれ20μlずつ加え、室
温で2.5時間インキュベートした後、0.05%ツイーン20
を含むD′PBSで5回洗浄した。更に上記各ウェルにパ
ーオキシダーゼを過ヨウ素酸法にてカップリングした抗
FNモノクローナル抗体[OAL−pF115、シグマ社のpFNを
免疫原として樹立したもの、臨床病理vol.35補冊、p119
(1987年);The 18th Congress of International Asso
ciation of Medical Laboratory Tecnologists,Abstrac
ts,p225(1988)等参照](5000倍希釈液を100μl/ウェ
ル、緩衝液(B緩衝液からEDTAを抜いた組成のもの)10
0μl/ウェル]を加えた後、2.5時間インキュベートし、
0.05%ツイーン20を含むD′PBSで5回洗浄した。
次に、o−フェニレンジアミン溶液(OPD溶液)100μ
l/ウェルを加え、室温で10分間反応させた後、2N硫酸10
0μlを加えて反応を停止させ、492nmの吸光度を測定し
た。標準としたFNの濃度と吸光度とから検量線を作成
し、検量線とサンプリング液の吸光度からサンプル中の
FN濃度を求めた。
〈アルブミンの測定〉 日立705形自動分析装置(日立製作所製)を使用したB
CG法による[測定試薬:ALB試薬品番7022(国際試薬
製)、標準液:モニトロールI(DETE社製、コントロー
ル血清)]。
〈総蛋白量の測定〉 日立705形自動分析装置(日立製作所製)を使用した
ビュレット法による[測定試薬:TP試薬品番7677(国際
試薬製)、標準液:モニトロールI(DETE社製、コント
ロール血清)]。
参考例1 モノクローナル抗体(HHS−01)の製造 FNのEDA領域を含むEco R I−Sac I cDNA断片の調製 a) ヒト線維芽細胞cDNAライブラリーの増幅 ヒト線維芽細胞IMR−90のポリA+RNAより、ラムダファ
ージλgt11をベクターとして調製したcDNAライブラリー
(クローンテック社製)を用いて、プレート溶菌法によ
りファージの増幅を行なった。即ち、上記cDNAライブラ
リーのファージ懸濁液1μlを99μlのSM培地[1M Na
Cl、20mM MgSO4・7H2O、50mMトリス・HCl及び0.1%ゼ
ラチン]で希釈した後、LB培地[1%バクトトリプト
ン、0.5%バクト酵母エクストラクト及び0.5%食塩]で
一晩培養した大腸菌LE392の培養液100μlと混合し、37
℃で10分間インキュベートおして、ファージを大腸菌に
吸着させた。これに約50℃に保温したトップアガー溶液
[LB培地に溶解した0.7%バクトアガー]7.5mlを加え
て、直径15cmのペトリ皿上に作成したLB寒天培地[1.5
%バクトアガーを含むLB培地]上に重層した。トップア
ガーが固化した後、37℃で一晩培養してファージを増幅
させた。15mlのSM培地をトップアガー表面に加え、4℃
で1時間インキュベートした後、トップアガーと共にフ
ァージを回収し、18000rpm(日立冷却遠心機RPR20−2
ロータ使用)で10分間遠心することによりトップアガー
と大腸菌とを除去した。ファージを含む上清を終濃度が
それぞれ1M及び10%となるように、NaClとポリエチレン
グリコールとを加え、氷上で1時間放置した後、再び18
000rpmで10分間遠心して、ファージを沈殿として回収し
た。得られた沈殿を2mlの20mMトリス・HCl(pH7.5)及
び10mM MgSO4・7H2Oに溶解し、20μlのDNase I(10mg
/ml)を加えて、室温で30分間放置して遊離のDNAを分解
後、等量のクロロホルムを加えて5分間よく懸濁し、30
00rpm、10分間遠心して水層とクロロホルム層とを分離
させた。水層を回収し、ファージ粒子の被覆蛋白質を除
去するために等量のフェノールを加えて撹拌し、3000rp
m、10分間遠心して、ファージDNAを水層側に回収した。
再度、水層を等量のクロロホルムで抽出した後、水層に
0.2容量の3M酢酸ナトリウムと2容量のエタノールとを
加えて、−80℃で10分間放置し、15000rpm、10分間遠心
してファージDNAを沈殿として回収した。得られたDNA
は、TE緩衝液[10mMトリス・HCl(pH7.4)及び1mM EDT
A]に0.5μg/μlとなるように溶解して、−20℃で保存
した。ファージDNAの純度は1%アガロースゲルを用い
た電気泳動により確認した。
b) プライマーの合成 次の2つのオリゴデオキシヌクレオチドプライマーを
調製した。
上記プライマーの調製は、自動DNA合成装置(アプラ
イド・バイオシステムズ社製、380A型)を用いて、4種
の塩基のβ−シアノエチルホスホアミダイト誘導体より
固相法により合成した。合成されたオリゴデオキシヌク
レオチドの脱保護と固相担体からの遊離は、濃アンモニ
ア水中で55℃下に10時間加温することにより行なった。
このようにして調製した合成オリゴヌクレオチドは、HP
LCで精製し、最終的に約50μgの目的オリゴヌクレオチ
ドをそれぞれ上流プライマー及び下流プライマーとして
得た。得られた精製オリゴヌクレオチドはTE緩衝液に溶
解して、−20℃で保存した。
c) Eco R I−Sac I cDNA断片の増幅 a)で調製したDNA0.5μgを含むTE緩衝液1μlを、
20p molずつの上流プライマー及び下流プライマーを含
む1×PCR反応用緩衝液[20mMトリス・HCl、pH8.4、50m
M KCl、2.5mM MgCl2及び0.1mg/mlヌクレアーゼフリー
牛血清アルブミン]で希釈した後、5単位のTaqポリメ
ラーゼ(パーキンエルマー・シータス社製、1μl)を
加え、100μlのミネラルオイルを重層した後、95℃で
1.5分間、次に50℃で3分間、更に72℃で3分間加熱す
る操作を30回繰り返して、所望のEDA領域をコードするE
co R I−Sac I cDNA断片を増幅させた。上記反応液につ
いて、これを臭化エチジウムの存在下、φ×174DNAのHa
e III分解DNA断片を分子量マーカーとして1%アガロー
スゲルを用いた電気泳動を行なことにより、所望の1400
塩基対の大きさをもつEco R I−Sac I cDNA断片が増幅
されていることを確認した。
d) Eco R I−Sac I cDNA断片の精製 上記c)に従いアガロースゲル上で分離されたEco R
I−Sac I断片を、ドレッツェンらの方法[Dretzen,G.
M.,et al.,Anal.Biochem.,112,295−298(1981)]を用
いて、DEAEセルロース膜(SアンドS社製、NA45)上に
吸着させた後、吸着されたDNA断片を溶出緩衝液[50mM
トリス・HCl、pH8.0、1M NaCl及び10mM EDTA]を用い
て、DEAEセルロース膜より溶離させ、その後冷エタノー
ル沈殿により、所望のEco R I−Sac I断片(約100ng)
を回収した。
EDA領域を含むEco R I−Sac I cDNA断片のプロテイ
ンA発現ベクターpRIT2Tへの挿入 a) プラスミドベクターの製造 プロテインA遺伝子融合ベクターpRIT2T(ファルマシ
ア社製)2μgを、Eco R I−Sma I用反応緩衝液[33mM
トリスアセテート、pH7.9、10mM酢酸マグネシウム、66m
M酢酸カリウム、0.5mMジチオスレイトール及び0.01%牛
血清アルブミン]20μlに溶解し、Eco R IとSma Iとを
それぞれ10単位ずつ加えて、37℃で2時間インキュベー
トし、Eco R I−Sma I部位でプラスミドDNAを開裂させ
た。反応生成物をフェノール抽出した後、エタノール沈
殿により開裂したDNA(約1μg)を回収した。
b) PCR法で増幅したEco R I−Sac I cDNA断片のプラ
スミドベクターへの挿入 上記−d)で精製したEco R I−Sac I cDNA断片の1
00ngを、20μlのEco R I用反応緩衝液[50mMトリス・H
Cl、pH7.5、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトール及び1
00mM NaCl]に溶解し、5単位のEco R Iを添加して37
℃で3時間インキュベートし、増幅されたEco R I−Sac
I断片の5′末端側Eco R I部位を露出させた。反応終
了後、フェノール抽出した後、上記−a)により調製
したEco R I−Sma I部位で開裂されたpRIT2Tプラスミド
20ngを加え、冷エタノール沈殿により、DNAを回収し
た。かくして得られたDNAを24μlのライゲーション緩
衝液[66mMトリス・HCl、pH7.6、5mM MgCl2、5mMジチ
オスレイトール及び1mM ATP]に溶解し、これにT4DNA
リガーゼ(宝酒造社製)300単位を加えて16℃で16時間
インキュベートし、pRIT2TのEco R I−Sma I部位にFNの
EDA領域をコードするEco R I部位からSac I部位までのc
DNA断片を挿入した。
c) 形質転換体の作成 上記b)で得られた反応液1μlに分取し、これを大
腸菌E.coli HB101コンピテント細胞(宝酒造社製)100
μlと混和後、氷冷下で30分間、次いで42℃で90秒間イ
ンキュベートして、プラスミドDNAを大腸菌に導入し
た。
これにLB培地1mlを加えて、37℃で1時間振盪培養し
た後、その100μlを分取し、アンピシリン50μg/mlを
含むLB寒天培地上に撒き、37℃で14時間インキュベート
してプラスミドDNAにより形質転換した大腸菌のコロニ
ー約50個を得た。この中から12個を無作為に採取し、50
μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で培養した後、バイ
ルンボインとドリー(Birnboim and Doly)の変法[Mol
ecular Cloning,A Laboratory Mannual,T.Maniatis et
al.,edit.,368−369(1982)]により、各コロニーから
プラスミドDNAを回収した。上記DNAにつきEco R IとBam
H Iとを用いた二重消化を行ない、予想される約1400塩
基対の挿入配列を有するプラスミドクローン(pEDA1)
を選別した。
プロテインA−EDA融合蛋白質の発現とその単離 a) プラスミドpEDA1の大腸菌N4830への導入 上記で得られたpEDA1プラスミドDNAを、マンデルと
ヒガ(Mandel and Higa)のリン酸カルシウム法[J.Mo
l.Biol.,53,154(1970)]に従って、大腸菌N4830(フ
ァルマシア社より入手)に、以下の通り導入した。
即ち、LB培地100ml中で大腸菌N4830を37℃で振盪培養
し、菌体密度が約5×107/mlとなったところで培養を止
め、氷浴中に急冷した。4000×gで5分間、4℃で遠心
して集菌した後、沈渣を50mlの氷冷した50mM塩化カルシ
ウム−10mMトリス・HCl(pH8.0)に懸濁させ、氷浴中で
15分間静置した後、4000×gで5分間、4℃で遠心分離
した。得られた沈渣を7mlを氷冷した50mM塩化カルシウ
ム−10mMトリス・HCl(pH8.0)の溶液に再懸濁させ、氷
冷中に静置した。かくして調製した大腸菌の懸濁液0.2m
lにTE緩衝液に溶解させたpEDA1プラスミド溶液10μl
(プラスミドDNA10ngを含む)を加え、氷浴中で30分間
静置した後、42℃の温湯中にて2分間加温し、次に1ml
のLB培地を加えて、37℃で1時間インキュベートした。
かくして得られた大腸菌懸濁液100μlをアンピシリン
を含むLB寒天培地上に播布し、37℃で14時間インキュベ
ートして、形質転換した大腸菌コロニーを寒天培地上に
生じさせた。
b) プロテインA−EDA融合蛋白質の単離 上記a)で得られた形質転換体(プラスミドpEDA1で
形質転換した大腸菌N4830)を、500mlのLB培地で30℃で
14時間、振盪培養した後、予め54℃に加温した500mlのL
B培地を加え、更に42℃の湯浴中で90分間振盪培養し
て、プロテインA−EDA融合蛋白質の発現を誘導した。
その後、5000×gで15分間、4℃で遠心して菌体を回
収し、これを氷冷したトリス緩衝生理食塩水[50mMトリ
ス・HCl、pH7.6及び150mM NaCl]100mlに懸濁させ、氷
浴中にて超音波破砕(ブランソン社製、ソニファイアー
250を使用し、出力設定7にて3分間の処理を3回繰り
返す)することにより、菌体中の蛋白質を放出させた。
この破砕液約100mlを遠心分離(16000×g、20分、4
℃)して上清画分約95mlを回収し、300mlのトリス緩衝
生理食塩水を加えて希釈した後、約10mlのIgG−セファ
ロース6ファーストフロー(ファルマシア社製)を充填
したカラムに添着して、プロテインA−EDA融合蛋白質
をカラムに吸着させた。該カラムを100mlのトリス緩衝
生理食塩水、次に20mlの5mM酢酸アンモニウム溶液(pH
5.0)でそれぞれ洗浄した後、吸着した蛋白質を0.5M酢
酸溶液にて溶出させた。かくして得られたプロテインA
−EDA融合蛋白質をトリス緩衝生理食塩水に対して二昼
夜透析して、所望の抗原約1mgを得た。
ハイブリドーマの作製 上記で得られた精製プロテインA−EDA融合蛋白質
の0.05mgを、0.5mlのPBSで希釈した後、同量のフロイン
ド完全アジュバント(complete Freund′s adjuvant)
と混合乳化させ、これを0.2mlずつ、雄のBalb/c系マウ
ス(8週齢)に皮内投与した。その後、同様にして4
回、2週間おきに追加投与して免疫し、最終免疫の3日
後に脾臓を摘出した。
摘出脾臓より脾細胞を取り出し、該細胞中に存在する
赤血球を0.83%塩化アンモンニウム液で4℃下に1〜2
分間処理して融解除去した。上記で得られた細胞を感作
リンパ球細胞として集め、37℃に加温したRPMI−1640培
地で3回洗浄した。
次にマウス骨髄腫細胞[P3U1、Current topics in Mi
crobiology and Immunology,73,3(1981)等参照]を、
15%FCS(牛胎児血清)を含有するRPMI−1640培地に8
−アザグアニン100μMを加えた培地中で、継代培養
し、これをミエローマ細胞として用い洗浄した。
上記ミエローマ細胞と骨髄腫細胞を細胞数比10:1にな
るように50mlのチューブ内で混和し、得られた細胞混合
物を500×gで5分間遠心後、上清をパスツールピペッ
トで完全に除去した。之等の操作は37℃に保温した水槽
内にて行なった。
次に35%ポリエチレングリコール1500(和光純薬社
製、以下PEGと略称する)4mlを加えて、ゆっくりと1〜
2分間かき混ぜ、1分間放置し、次いで37℃に保温した
FCSを含まないRPMI−1640培地2mlをゆっくりと1分間位
かけて加え、1分間放置し、更に同液4mlを加えて2分
間放置し、更に同液4mlを加えて4分間放置した。次い
で、37℃に保温した15%FCS、0.05力価/lの硫酸ストレ
プトマイシン、60000U/lのペニシリンGカリウム、54mg
/lのゲンタマイシン及び1mlピルベートを含有する RPMI−1640(以下これを完全RPMI−1640培地という)8m
lを2〜3分間かけて加えた後、500×gで5分間遠心分
離した。上清を吸引除去し、37℃に保温した完全RPMI−
1640培地液に、脾細胞1×106個/mlとなるように懸濁さ
せた。次に、この懸濁液を96ウェルのプレート(コース
ター社製)に0.1mlずつ分注し、37℃、5%CO2、100%
湿度のインキュベータ内で24時間培養した。その後、各
ウェルに、ヒポキサンチン1×10-4M、アミノプテリン
4×10-7及びチミジン1.6×10-5Mを含む10%FCS添加完
全RPMI−1640培地(以下これをHAT培地という)の0.1ml
ずつを添加した。以後、上清を2日目及び3日目にそれ
ぞれ0.1mlずつ吸引し、新しいHAT培地0.1mlずつ加えて
液交換した。その後、上記液交換を2〜3日おきに行な
った。6日目に同様に上清を吸引し、ヒポキサンチン1
×10-4M及びチミジン1.6×10-5Mを含む完全RPMI−1640
培地(以下これをHT培地という)に代えた。以後、完全
RPMI−1640培地で増殖維持した。
上記操作による細胞融合後、10〜14日間でコロニーが
肉眼で観察されるようになった。細胞が96ウェルプレー
トの底面積の1/4を占めた時より、EDAを保持したヒト胎
盤由来FNを抗原とする酵素免疫法(ELISA法)にて、培
養上清を試験し、陽性となったウェルから直ちに限界希
釈法(Method in Enzymology,73,3(1981))により、
ハイブリドーマのクローニングを行なった。即ち、Balb
/c系マウス胸腺細胞1×108個を含むように調製した10
%FCS添加RPMI−1640培地の20mlを用いて、ハイブリド
ーマを3個/ウェル、1個/ウェル及び0.3個/ウェル
となるように96ウェルプレート0.2mlずつ播いてクロー
ニングを行ない、目的とするハイブリドーマを樹立し
た。
上記クローニングは、ヒト正常腺維芽細胞WI−38を腫
瘍ウィルスSV40で悪化させた細胞WI−38VA13の培養上清
から精製した細胞性FN及び胎盤由来FNとの反応性を指標
として、血漿FNとの反応性がないことを確認しながら、
上記クローニングを4回行ない、所望の反応特異性を有
する本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリド
ーマを得た。これを「HHS−01」と命名した。
上記で得られたクローンHHS−01を、完全RPM−1640培
地にて、5%CO2条件下で37℃にて96時間培養した。培
養液を3000rpmで10分間遠心分離して、目的のモノクロ
ーナル抗体を含む培養上清を得た。
かくして選定されたクローン(本発明抗体産生ハイブ
リドーマHHS−01)は、工業技術院微生物工業技術研究
所に「HHS−01」なる表示で寄託されており、その寄託
番号は「微工研菌寄第3297号(FERM BP−3297)」であ
る。
上記クローンHHS−01の1×106個を、予めプリスタン
(アルドリッチ社製)を接種しておいたBalb/c系マウス
に腹腔内投与した。10〜14日後、蓄積した腹水を採取
し、本発明抗体を含む腹水を得た。
該腹水中の抗体を、プロテインA−セファロースを使
用してアフィニティクロマトグラフィーにて精製して、
精製HHS−01抗体を得た。
この抗体のサブクラスは、オクタロニー法に従いモノ
クローナル抗体タイピングキット(バインディング社
製、コード番号RK008)を用いて測定した結果、IgG2a
あった。
参考例2 cFNの定量法 参考例1で得た精製HHS−01抗体を2μg/mlにD′PBS
(pH7.2)に調製し、これを96ウェルプラスチックプレ
ートに100μl/ウェルで注入し、4℃で一晩固相化後、
D′PBS[0.05%ツイーン20を含む、300μl/ウェル、1
回]で洗浄した。次いで、各ウェルにD′PBS、0.05%
チメロザール及び0.5%BSAを300μlずつ入れ、4℃で
一晩ブロッキングさせた。ブロッキング後、D′PBS
[0.05%ツイーン20を含む、300μl/ウェル、1回]で
洗浄し、各ウェルに0.1Mリン酸緩衝液[0.05%チメロザ
ール、10mM EDTA、20%正常山羊血清及び1%正常マウ
ス血清、pH6.0](A緩衝液)100μlを入れた。更に各
ウェルにサンプリング液と標準液としてヒト正常線維芽
細胞WI−38を腫瘍ウィルスで悪化させた細胞WI−38VA13
の培養上清から精製し、種々の濃度に希釈したcFNとを
それぞれ20μlずつ加え、室温で2.5時間インキュベー
トした後、0.05%ツイーン20を含むD′PBSで5回洗浄
した。更に上記各ウェルにパーオキシダーゼを過ヨウ素
酸法にてカップリングした抗FNモノクローナル抗体[OA
L−pF115](5000培希釈液を100μl/ウェル、緩衝液
(A緩衝液からEDTAを抜いた組成のもの)100μl/ウェ
ル)を加えた後、2.5時間インキュベートし、0.05%ツ
イーン20を含むD′PBSで5回洗浄した。
次に、OPD溶液100μl/ウェルを加え、室温で10分間反
応させた後、2N硫酸100μlを加えて反応を停止させ、4
92nmの吸光度を測定した。標準としたFNの濃度と吸光度
とから検量線を作成し、検量線とサンプリング液の吸光
度からサンプル中のFN濃度を求めた。
実施例1 ヘパリン固定担体の作成 ゲルAの作成 アミノ基を導入した架橋セルロースゲルであるアミノ
−セルロファイン(チッソ社製)を10倍量の蒸留水で洗
浄濾過し、同様の操作を3回繰り返して、ゲルを得、こ
れを以下の操作に用いた。
75mlの0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)+0.1M NaClにヘ
パリン2.0gを溶かし、上記ゲル50mlとNaCNBH30.2gとを
加え、60℃で2日間振盪した。ゲルを濾過し、蒸留水で
十分洗浄してヘパリン固定担体を得た。以下これを「ゲ
ルA」という。
上記反応の前後の上清液中のヘパリン濃度を、第11改
正日本薬局方 酸素フラスコ法を準用してイオウ濃度と
して測定し、その減少量をヘパリン結合量として求めた
結果、ゲルAのヘパリン結合量は9.6mg/mlゲルであっ
た。一方、上記方法を用いてヘパリン固定前後のゲル中
の硫黄濃度を測定して、その増加量をヘパリン結合量と
して求めた結果、ゲルAのヘパリン結合量は4.3mg/mlゲ
ルであった。
ゲルBの作成 上記においてヘパリンの使用量を1.0gとして、同様
にしてヘパリン固定担体を得た。これを「ゲルB」とい
う。得られたゲルBのヘパリン結合量は、上清液を対象
にして測定すれば4.3mg/mlゲルであり、ヘパリン固定前
後のゲルを対象に測定すれば2.6mg/mlゲルであった。
ゲルCの作成 ホルミル基を導入した架橋セルロースゲルであるホル
ミル−セルロファイン(チッソ社製)を10倍量の蒸留水
で洗浄濾過し、同様の操作を3回繰り返して、ゲルを
得、これを以下の操作に用いた。
75mlの0.2MNa−Kリン酸緩衝液(pH7.0)+0.1M NaC
lにヘパリン1.0gを溶かし、上記ゲル50mlを加えて室温
で30分間振盪した。これにNaCNBH3350mgを加えて8時間
振盪後、濾過した。次いで0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH7.
0)500mlで洗浄、濾過し、更に0.2Mトリス塩酸緩衝液
(pH7.0)100ml及び0.055Mクエン酸緩衝液(pH7.0)で
洗浄して、ヘパリン固定担体を得た。以下、これを「ゲ
ルC」という。
実施例2 架橋ポリサッカライド硫酸の作成 下記各ゲルを生理食塩水で洗浄濾過して、所望のゲル
を調製した。
架橋セルロース硫酸…硫酸化セルロファイン−c(チ
ッソ社製、粒径105〜210μm)(以下これを「ゲルD」
という) 架橋セルロース硫酸…硫酸化セルロファイン−m(チ
ッソ社製、粒径44〜105μm)(以下これを「ゲルE」
という)。
架橋キチン硫酸…スルホン化キトパール(富士紡績社
製)(以下これを「ゲルF」という)。
実施例3 FNの吸着試験 実施例1及び2で得た各ゲルを用いて、以下の通り血
漿中のFNの分離を行なった。即ち、まず市販新鮮凍結血
漿試料(以下「FFP」という)につき、予めそのcFN濃度
を測定し、平均値の10倍以上の高値を示す試料を選択し
てプールし、プールFFPとした。このプールFFP25mlずつ
を各ゲル1mlに加え、室温で緩やかに振盪し、経時的に
上清液をサンプリングして、その成分含量を測定した。
同時に、上記において、ゲルを加えずに同様の操作を
行なったプールFFPにつき、その各成分含量を経時的に
測定し、この値を基準(100%)とし、上記上清液の各
成分含量を、上記基準に対する比率(%)で求めた。
以上の結果、上清液のcFN濃度は15〜30分後に、ほぼ
平衡に達したが、その後も徐々に低下し、初期に濃度低
下が大きいゲル程、上記低下傾向は強かった。試験開始
(ゲル添加)3時間後の結果を第1表に示す。
上記第1表に基づき、各ゲルにおける各成分の吸着率
(100−上清液中の成分濃度)(%)を求めた所、試験
したゲルはいずれも、他の蛋白成分に比してcFNを選択
的に吸着する(cFN吸着の選択性が高い)ことが明らか
であり、このことにより之等各ゲルはcFNの吸着体とし
て有効であることが判る。
実施例4 ヘパリン固定架橋セルロースの作成 実施例1の及びと同様にして、ヘパリンの還元末
端基(アルデヒド基)を架橋セルロースに固定して、ヘ
パリン結合量3mg/mlゲル及び2mg/mlゲルの各ヘパリンを
固定架橋セルロースを得た。以下之等を「ゲルa」及び
「ゲルb」という。但し、上記ヘパリン結合量は、第11
改正日本薬局方酸素フラスコ法を準用してゲル中の硫黄
濃度として測定したものであり、以下の各例でも同様と
する。
実施例5 ヘパリン固定架橋セルロースの作成 実施例1のと同様にして、ヘパリンのアミノ基を架
橋セルロースに固定して、ヘパリン結合量約2mg/mlゲル
のヘパリン固定架橋セルロースを得た。以下これを「ゲ
ルc」という。
実施例6 ヘパリン固定架橋セルロースの作成 蒸留水80mlに0.12〜2gの範囲の所定量のヘパリンを溶
し、1M塩酸でpH4.5に調節した後、これにアミノ−セル
ロファインゲル50mlとN−エチル−N′−(3−ジメチ
ルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド
3gを加え、4℃で一夜撹拌して、ヘパリンのカルボキシ
ル基を架橋セルロースに固定したヘパリン結合量7mg/ml
ゲル及び3mg/mlゲルの各ヘパリン固定架橋セルロースを
得た。以下これを「ゲルg」及び「ゲルh」という。
実施例7 架橋セルロース硫酸の作成 実施例2の及びと同様にして、硫酸化セルロファ
イン−c(粒径105〜210μm、硫酸エステル密度10及び
20μM/mlゲル、それぞれ「ゲルd」及び「ゲルd′」と
いう)及び硫酸化セルロファイン−m(粒径44〜105μm
/mlゲル、「ゲルe」という)を得た。
実施例8 ヘパリン固定架橋アガロースの作成 CNBrで活性化した架橋アガロースであるCNBr活性化セ
ファロースB(ファルマシア社製)4gに、1mM塩酸50ml
を加えて30分間膨潤させゲル化させた。このゲルを1mM
塩酸200ml中で4回洗浄濾過し、更に緩衝液[0.5M NaC
lを含む0.1M NaHCO3溶液(pH8.3)]50mlで洗浄後、ヘ
パリン0.2gを同緩衝液10mlに溶した液を加え、4℃で一
夜撹拌した。液を濾過し、ゲルを0.1Mトリス・HCl緩衝
液(pH8.0)50mlで2回洗浄濾過し、0.1Mトリス・HCl緩
衝液(pH8.0)25ml中に加え4℃で2時間撹拌した。0.5
M NaClを含む0.1Mトリス・塩酸緩衝液(pH8.0)100ml
と0.5M NaClを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)100mlとで
上記ゲルを交互に各5回洗浄濾過して、ヘパリン固定架
橋アガロース(ヘパリン結合量約2mg/mlゲル)を得た。
以下これを「ゲルi」という。
実施例9 デキストラン硫酸固定架橋セルロースの作成 架橋セルロースであるセルロファインA−3(チッソ
社製)10mlに20%NaOH4g、ヘプタン12g及びツイーン20
の一滴を加え、40℃で2時間撹拌した後、エピクロルヒ
ドリン5gを加えて2時間撹拌した。静置後、上澄をす
て、ゲルを水洗濾過してエポキシ化セルロースゲルを得
た。このゲル2mlにデキストラン硫酸ナトリウム(極限
粘度0.027dl/g、平均重合度12、イオウ含量17.7重量
%)0.5gを水2mlに溶解させた液を加え、pHを12に調節
後、40℃で16時間撹拌した。ゲルを濾別し、2M NaCl、
0.5M NaCl及び水で順次洗浄して、デキストラン硫酸固
定架橋セルロースを得た。以下これを「ゲルj」とい
う。
実施例10 FNの吸着試験 実施例4〜9で得られた各ゲルを用いて、下記の通り
調製したクエン酸加血漿を用いて、実施例3と同様にし
てFNの吸着試験を行なった。但し、試験温度は30℃、吸
着時間は4時間とした。上記クエン酸加血漿は、ヒト正
常線維芽細胞WI−38を腫瘍ウイルスで悪化させた細胞WI
−38VA13の培養上清から得たcFNを、クエン酸加ヒト血
漿に加えて調製したものであり、そのcFN濃度は約8μg
/mlに調製されている。
比較例として、架橋セルロース及び架橋アガロースの
それぞれを用いて同様の試験を行なった。
上記試験の結果(実施例3と同様にして求めた上清液
中の各成分濃度)を、下記第2表に示す。
第2表に基づき、実施例3と同様にして各ゲルにおけ
る各成分の吸着率を求めたところ、架橋セルロース及び
架橋アガロースは血漿中のいかなる蛋白質も殆ど吸着し
ないが、本発明に利用するFN吸着体はアルブミンやその
他の蛋白質を殆ど吸着することなく、FN、とりわけcFN
を選択的に吸着することが判った。本発明に利用するFN
吸着体の内、ヘパリン固定架橋セルロースでは、ゲルa
とゲルb及びゲルgとゲルhとを比較して明らかなよう
に、ヘパリン結合量が多い程、cFNがより多く吸着する
ことが判る。その他のポリサッカライド硫酸固定担体
も、上記ヘパリン固定架橋セルロースと同様に、cFNの
選択的吸着体として有効であることが判る。また、架橋
セルロース硫酸では、ゲルd、ゲルd′及びゲルeのよ
うに、硫酸エステル密度が高い程、cFN吸着の選択性が
高いことが判る。
実施例11 FNの分離精製 実施例3において、cFNを吸着したゲルBを遠心分離
し、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.2)10mlで洗浄、濾過
した後、カラムに充填し、上記緩衝液を流速1ml/分で流
し、カラムを通過した液に284nmの紫外部吸収が認めら
れなくなるまで洗浄した。その後、0.154〜1MのNaCl溶
液で段階的に溶出を繰り返した。溶出液を2.5mlずつ分
画し、之等画分中の全FN及びcFN濃度を測定した。結果
を第1図(全FN濃度、ng/ml)及び第2図(cFN濃度、ng
/ml)に示す。
第1図及び第2図によると、全FNはいずれのNaCl濃度
でも溶出したが、cFNは0.154〜0.220MのNaCl溶液では全
く溶出せず、これより高濃度のNaCl溶液で溶出した。
以上の結果より、溶出液のNaCl濃度又はイオン濃度を
調節することにより、cFNを含まないpFNを回収でき、更
にはcFNを高濃度に含むFN溶液を回収可能であることが
判る。
実施例12 pFNの分離精製 実施例6で得たゲルgの1mlに、健常人の血漿を該ゲ
ルに対して10倍容量加え、30℃で4時間撹拌後、カラム
に詰め、血漿を通過させた。通過した血漿を一次回収液
とする。ゲルを20mMリン酸緩衝液(pH7.0)で284nmUV吸
収が消失するまで洗浄した後、0.15M NaClを含む20mM
リン酸緩衝液(pH7.0)をカラムに流してpFNを溶出させ
て二次回収液とした。
上記血漿及び得られた各回収液につき、cFN及び全FN
濃度を測定し、その差よりpFN量を求めた。結果を下記
第3表に示す。
上記第3表より、この方法によればcFNを含まないpFN
を収得できることが明らかである。
実施例13 cFNの分離精製 実施例6で得たゲルgの4mlに、cFN7.2μg/mlを含む
血漿を45倍容量加えて、30℃で4時間撹拌後、カラムに
詰め、血漿を通過させた。0.15M NaClを含む20mMリン
酸緩衝液(pH7.0)で284nmUV吸収が消失するまでゲルを
洗浄した後、1M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.
0)をカラムに流してcFNを溶出させた。上記溶出液を4
℃で0.15M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0)に対
して透析して一次回収液を得た。
上記一次回収液5容量に対して、ゲルgの1容量を加
え、30℃で4時間撹拌後、同様の操作を繰り返して、二
次回収液を得た。
上記血漿及び得られた各回収液につき、cFN及び全FN
濃度を測定した。結果を下記第4表に示す。
上記第4表より、この方法によればcFNを高度に濃縮
できることが明らかである。
実施例14 ヘパリン固定担体におけるcFN吸着の温度依
存性試験 実施例4及び6で得たゲルa及びゲルgの各1容量
に、cFN8μg/mlを含有する血漿を25容量を加えて、種々
の温度で4時間穏やかに撹拌後、上清液中のcFN及び全F
Nを実施例3と同様にして測定した。
得られた結果を同様にして下記第5表に示す。
上記第5表に基づき、実施例3と同様にしてゲルa及
びゲルgにおける各成分の吸着率を求めたところ、本発
明吸着体であるヘパリン固定担体(ゲルa及びゲルg)
とも、13〜30℃で最大のcFN吸着率を示し、その前後、
特に4℃では吸着率の低下が認められ、cFNに対する選
択性の低下がみられる傾向にあった。
応用例1 血液浄化方法 ヘパリン3単位/ml、CaCl210mM及びWI−38VA13細胞培
養液から精製したcFN8μg/mlを含有する血漿300mlを第
3図に示す血漿循環回路に充填した。
血漿成分吸着器としてカラム(16mm径×100mm長さ)
にゲルg20mlを充填したモジュール(7)を使用した。
第3図に示すモジュール(7)において、(1)は流
入口を、(2)は流出口を、(3)は吸着体(ゲル)
を、(4)及び(5)はフィルターを、(6)はカラム
をそれぞれ示す。
回路全体を30℃に保ち、3ml/分の速度で150分間循環
させ、経時的に血漿をサンプリングし、血漿中の蛋白質
濃度を測定した。循環開始直後の各蛋白質濃度を100%
として求めた各所定時間後の血漿蛋白の相対濃度を下記
第6表に示す。
上記第6表より、cFN以外の各血漿蛋白質は、最初の3
0分間のみ非特異吸着により減少するが、以後ほとんど
変化せず、全FNは80%、アルブミン及び総蛋白質では95
%以上の濃度を維持していた。これに対してcFNは30分
間で既に74%まで低下し、その後も低下し続けて最終的
に30%以下となることが判る。このことは本発明の方法
を応用したモジュール(血漿成分吸着器)が、血漿から
選択的にcFNを吸着除去可能であることを意味してい
る。
以上のことから、本発明を体外循環に応用することに
より、臨床的に血液中のcFNを選択的に除去できること
が判る。
図面の簡単な説明 第1図は本発明実施例11のFN分離精製法に従い、得ら
れた画分中の全FN濃度を測定した結果を示すグラフであ
る。
第2図は本発明実施例11のFN分離精製法に従い、得ら
れた画分中のcFN濃度を測定した結果を示すグラフであ
る。
第3図は本発明方法の応用例である血液浄化方法に用
いた体外循環装置の血漿成分分離器として利用したモジ
ュールの概略図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 駒井 喬 北海道札幌市豊平区平岸1条14丁目3― 1 (56)参考文献 The Journal of Bi ological Chemistr y,225〔13〕 (1980) P.6055− 6063 The Journal of Bi ological Chemistr y,258〔23〕 (1983) P.14359− 14365 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07K 14/78 C07K 1/22 CA(STN) WPI/L(QUESTEL)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】血漿フィブロネクチンと細胞性フィブロネ
    クチンとを含有するフィブロネクチン含有物を、架橋ポ
    リサッカライド硫酸及び/又はポリサッカライド硫酸固
    定担体からなるフィブロネクチン吸着体と接触させて、
    該吸着体に細胞性フィブロネクチンを選択的に吸着させ
    ることを特徴とする、細胞性フィブロネクチンの吸着除
    去方法。
  2. 【請求項2】血漿フィブロネクチンと細胞性フィブロネ
    クチンとを含有するフィブロネクチン含有物を、架橋ポ
    リサッカライド硫酸及び/又はポリサッカライド硫酸固
    定担体からなるフィブロネクチン吸着体と接触させて、
    該吸着体に細胞性フィブロネクチンを選択的に吸着さ
    せ、次いで吸着体を0.154〜0.220Mの濃度のNaCl溶液で
    洗浄して、血漿フィブロネクチンを溶出回収することを
    特徴とする、請求の範囲1に記載の細胞性フィブロネク
    チンの吸着除去方法。
  3. 【請求項3】フィブロネクチン含有物とフィブロネクチ
    ン吸着体との接触が、体外循環回路内で行なわれる、請
    求の範囲1に記載の細胞性フィブロネクチンの吸着除去
    方法。
  4. 【請求項4】フィブロネクチン吸着体が、架橋セルロー
    ス硫酸、架橋アガロース硫酸、架橋デキストラン硫酸、
    架橋キチン硫酸及び架橋キトサン硫酸から選択される架
    橋ポリサッカライド硫酸である請求の範囲1〜3のいず
    れかに記載の細胞性フィブロネクチンの吸着除去方法。
  5. 【請求項5】フィブロネクチン吸着体が、架橋セルロー
    ス硫酸及び架橋キチン硫酸から選択される架橋ポリサッ
    カライド硫酸である請求の範囲第1〜3のいずれかに記
    載の細胞性フィブロネクチンの吸着除去方法。
  6. 【請求項6】フィブロネクチン吸着体が、ヘパリン固定
    担体、デキストラン硫酸固定担体及びセルロース硫酸固
    定担体から選択されるポリサッカライド硫酸固定担体で
    ある請求の範囲第1〜3のいずれかに記載の細胞性フィ
    ブロネクチンの吸着除去方法。
  7. 【請求項7】フィブロネクチン吸着体が、ヘパリン固定
    架橋セルロース、ヘパリン固定架橋アガロース、ヘパリ
    ン固定架橋デキストラン、ヘパリン固定架橋キチン、ヘ
    パリン固定架橋キトサン、デキストラン硫酸固定架橋セ
    ルロース、デキストラン硫酸固定架橋アガロース、デキ
    ストラン硫酸固定架橋デキストラン、デキストラン硫酸
    固定架橋キチン、デキストラン硫酸固定架橋キトサン、
    セルロース硫酸固定架橋セルロース、セルロース硫酸固
    定架橋アガロース、セルロース硫酸固定架橋デキストラ
    ン、セルロース硫酸固定架橋キチン、セルロース硫酸固
    定架橋キトサン、ヘパリン固定架橋ポリビニルアルコー
    ル、セルロース硫酸固定架橋ポリビニルアルコールから
    選択されるポリサッカライド硫酸固定担体である請求の
    範囲第1〜3のいずれかに記載の細胞性フィブロネクチ
    ンの吸着除去方法。
  8. 【請求項8】フィブロネクチン吸着体が、ヘパリン固定
    架橋セルロース及びデキストラン硫酸固定架橋セルロー
    スから選択されるポリサッカライド硫酸固定担体である
    請求の範囲第1〜3のいずれかに記載の細胞性フィブロ
    ネクチンの吸着除去方法。
  9. 【請求項9】細胞性フィブロネクチンの吸着除去が、フ
    ィブロネクチン吸着体としてヘパリン固定担体を用い、
    10〜40℃の温度条件下に行なわれる請求の範囲1〜3の
    いずれかに記載のフィブロネクチン吸着除去方法。
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JP2010530288A (ja) * 2007-06-18 2010-09-09 エクステラ・メディカル・エルエルシー 血液の病態を回復させるための装置及び方法
CN116850977A (zh) * 2023-07-28 2023-10-10 广州康盛生物科技股份有限公司 一种定向偶联免疫吸附剂及其制备方法和应用

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