JP2796011B2 - ウイスカー強化超硬合金 - Google Patents

ウイスカー強化超硬合金

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性、靱性に優れ
た超硬合金に関し、特に高靱性に優れ、耐摩耗性材料及
び工具材料に適したウイスカー強化超硬合金に関する。
【0002】
【従来技術】従来、超硬合金は、基本的に炭化タングス
テン(以下WCという)とコバルト(以下Coという)
の粉末を混合し、これを粉末冶金法で製作している。
【0003】このような基本的な組成は耐摩耗性に劣る
ものの靱性に優れるため現在でも種々の用途に用いられ
ている。一方、この基本組成に炭化チタン(TiC),
窒化チタン(TiN),炭窒化チタン(TiCN)等の
チタン化合物を添加した超硬合金も現在用いられている
(例えば、特開昭60−165305号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、WC
とCoという基本的組成に炭化チタン(TiC),窒化
チタン(TiN),炭窒化チタン(TiCN)等のチタ
ン化合物を添加した超硬合金は、耐摩耗性に優れる反
面、靱性に劣るという問題があった。そして、この問題
は長年にわたり改善されていなかった。一方、現在のよ
うに超硬合金が広い範囲で使用されるようになると、例
えば、超硬ドリルやフライス加工用切削工具等の分野で
は従来の靱性に優れた基本的超硬合金が主として用いら
れているが、それでは充分でなく靱性と耐摩耗性がとも
に優れた超硬合金が求められているのが現状である。
【0005】
【問題点を解決するための手段】本発明者等は、上記の
問題点に対して検討を行った結果、WCとコバルト,ニ
ッケル等の鉄族金属よりなる基本的な超硬合金に対し
て、耐摩耗性と靱性を付与する材料として、炭化チタン
(TiC),窒化チタン(TiN),炭窒化チタン(T
iCN)等のチタン化合物ウイスカーを添加し、このチ
タン化合物ウイスカーを硬質相中に存在させることによ
り、高い靱性及び硬度を有する超硬合金が得られること
を知見し、本発明に至った。
【0006】即ち、本発明のウイスカー強化超硬合金
は、チタン化合物である炭化チタン(TiC),窒化チ
タン(TiN),炭窒化チタン(TiCN)のうち少な
くとも一種のウイスカー5〜40体積%と、コバルト,
ニッケル等の鉄族金属5〜40体積%と、残部が炭化タ
ングステン(WC)よりなるとともに、前記チタン化合
物ウイスカーが前記炭化タングステンを主体とする硬質
相中に存在することを特徴とする。ここで、チタン化合
物ウイスカーは、長さ100μm以下であり、かつ、ア
スペクト比2以上であることが望ましい。チタン化合物
ウイスカーは、TiC,TiN,TiCNの少なくとも
一種を主体とするものであれば良く、ウイスカー中に多
少のN2 等の不純物を含有していても良い。
【0007】本発明の特徴は、図1に示すように、硬質
相1中にチタン化合物の針状粒子(ウイスカー)2を存
在させること、即ち、チタン化合物ウイスカー2をWC
等を主体とする硬質相形成成分により被うことであり、
これにより、高硬度,高靱性に富み、高速切削時におい
ても優れた耐摩耗性,耐欠損性を有するウイスカー強化
超硬合金が得られる。尚、図1中、符号3は鉄族金属か
らなる結合相を示している。また、図1は、チタン化合
物ウイスカーを含有した硬質相とチタン化合物ウイスカ
ーを含有しない硬質相が混在した場合を示したが、チタ
ン化合物ウイスカーを含有した硬質相のみであっても良
い。
【0008】本発明のウイスカー強化超硬合金におい
て、炭化チタン(TiC),窒化チタン(TiN),炭
窒化チタン(TiCN)等のチタン化合物のウイスカー
を添加したのは、これらの添加により耐摩耗性と靱性を
向上する効果が大きいからである。このチタン化合物ウ
イスカーは5〜40体積%、特に10〜30体積%の割
合で分散含有させる。ここで、チタン化合物ウイスカー
の量を上記の範囲に限定したのは、その量が5体積%未
満では靱性が小さいため耐摩耗性改善の効果が少なく、
40体積%を越えるとボイドが多くなり、高密度の焼結
体が得られにくくなるからである。
【0009】この時、配合されるチタン化合物ウイスカ
ーはそれ自体、単結晶あるいは多結晶質からなるもの
で、その平均径が5μm 以下、特に0.5〜3.0μm
が好ましく、また長径/短径で表させるアスペクト比の
平均が2〜100、特に10〜50のものが用いられ
る。平均長さは100μm以下が望ましい。
【0010】平均径が5μm 以下では靱性改善の効果が
大きく、高い抗折強度を維持できるのに対し、平均径が
5μm より大きいと焼成時の粒成長をコントロールする
ことが難しくなり、強度,靱性とも低下し易い。一方、
アスペクト比の平均が2より小さいと靱性改善の効果が
少なく、100より大きいと原料の取扱が難しく、均一
に分散できないために密度が低下する傾向にある。ま
た、チタン化合物ウイスカーの平均長さが100μmよ
りも長い場合も、上記と同じく、原料の取扱が難しく、
均一に分散できないために密度が低下する傾向にある。
【0011】本発明のウイスカー強化超硬合金を製造す
るための方法としては、例えば、まず、WC粉末と、鉄
族金属粉末と、チタン化合物ウイスカーとを最終焼結体
が上述した割合に成るように秤量混合した後に、所望の
成形手段、例えば金型プレス,冷間静水圧プレス,押出
し成形等により任意の形状に成形後、焼成する。
【0012】焼成は、普通焼成法,ホットプレス法およ
び熱間静水圧焼成法等が適用される。焼成は1350乃
至1950℃の温度でAr,He等の不活性ガスもしく
はカーボン等の存在する還元性雰囲気およびそれらの加
圧もしくは減圧雰囲気で0.5乃至6.0時間行えばよ
く、特に高密度の焼結体を得るためには、普通焼成,ホ
ットプレス法によって相対密度96%以上の焼結体を作
成し、さらに500気圧以上の高圧力下で熱間静水圧焼
成すればよい。
【0013】なお、焼成においてはホットプレス法およ
び熱間静水圧焼成法など、外部から圧力を加える方法は
焼結コストが大きくなり製造上不利な場合が多い。外部
からの圧力を加えない場合には、とくに配合されるチタ
ン化合物ウイスカーの平均長さを25μm 以下、特に5
〜15μm が好ましく、また長径/短径で表させるアス
ペクト比の平均が2〜30、特に3〜20のものが用い
られる。平均長さが25μmを越えると焼結体に気孔な
ど欠陥が発生しやすくなる。一方、アスペクト比の平均
が2より小さいと靱性改善の効果が少なく、30より大
きいと原料の取扱が難しく、焼結体の密度が低下する傾
向にある。
【0014】
【作用】本発明のウイスカー強化超硬合金では、チタン
化合物ウイスカー周辺の硬質相粒子が長楕円形状とな
り、硬質相粒子と結合相金属の接触面積が増加するため
結合相と硬質相粒子の結合が強固になり焼結体の強度が
増加する。また、工具の摩耗は硬質相粒子の脱落によっ
て拡大することが多いが、硬質相粒子は長楕円形状であ
るため、組織中にくさび状に入り込んだ組織となり、硬
質相粒子が脱落しにくい。
【0015】以下、本発明を次の例で説明する。
【0016】
【実施例】原料粉末として平均結晶粒径2μm以下、純
度99.9%以上の炭化タングステン粉末並びに表1,
2の各種の粉末を所定量秤量後、アトリッションミルで
12時間混合粉砕した。この混合粉末に表に記述した平
均粒径及びアスペクト比のチタン化合物ウイスカーを表
1,2に示す量で添加し、これをステンレスポット中に
超硬ボールとともに密封し、回転ミルで混合を行った。
得られた原料を所定条件でプレス成形した。No.1〜1
8については、静水圧プレス(CIP)でさらに成形体
の密度を上げた。その後、各試料を真空度1×10-3to
rrで真空焼成し、さらにArガス中において、1400
℃,1500気圧で熱間静水圧焼成(HIP)した。
尚、No.19〜26については、プレス成形後、真空度
1×10-3torrで真空焼成した。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】そして、各焼結体に対してJISR160
1に従い3点曲げ抗折強度およびビッカース硬度を測定
した。また、試料を鏡面状態にポリッシングしてIF法
で破壊靱性を測定した。
【0020】この結果を表3,4に示した。
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】表3及び表4より、本発明の試料は、チタ
ン化合物ウイスカーを添加しなかった試料(試料No,
1)よりも、いづれも高い強度,靱性,硬度が得られ
た。
【0024】尚、試料No,7,10,13,14につい
ては焼結体中にボイドが多くて靱性,硬度を測定できな
かった。また、試料No,19については、試料が変形
し、強度を測定できなかった。
【0025】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のウイスカー
強化超硬合金では、チタン化合物ウイスカー周辺の硬質
相粒子が長楕円形状となり、硬質相粒子と結合相金属の
接触面積が増加するため結合相と硬質相粒子の結合が強
固になり焼結体の強度が増加する。また、工具の摩耗は
硬質相粒子の脱落によって拡大することが多いが、硬質
相中にウイスカーが存在すると、硬質相粒子は、組織中
にくさび状に入り込んだ組織となるため、硬質相粒子が
脱落しにくい。したがって、高い靱性,強度,硬度を有
する優れた性能のウイスカー強化超硬合金を得ることが
でき、工具として用いた場合に、適用可能な範囲を拡大
するとともに工具の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウイスカー強化超硬合金の組織を示す
説明図である。
【符号の説明】
1 硬質相 2 チタン化合物ウイスカー 3 結合相
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 29/02 C22C 29/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】チタン化合物である炭化チタン(Ti
    C),窒化チタン(TiN),炭窒化チタン(TiC
    N)のうち少なくとも一種のウイスカー5〜40体積%
    と、鉄族金属5〜40体積%と、残部が炭化タングステ
    ン(WC)よりなるとともに、前記チタン化合物ウイス
    カーが前記炭化タングステンを主体とする硬質相中に存
    在することを特徴とするウイスカー強化超硬合金。
  2. 【請求項2】チタン化合物ウイスカーは、平均長さ10
    0μm以下であり、かつ、アスペクト比2以上である請
    求項1記載のウイスカー強化超硬合金。
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