JP2789487B2 - スリットと回折格子による相対位置検出装置 - Google Patents

スリットと回折格子による相対位置検出装置

Info

Publication number
JP2789487B2
JP2789487B2 JP2045810A JP4581090A JP2789487B2 JP 2789487 B2 JP2789487 B2 JP 2789487B2 JP 2045810 A JP2045810 A JP 2045810A JP 4581090 A JP4581090 A JP 4581090A JP 2789487 B2 JP2789487 B2 JP 2789487B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diffraction grating
slit
light
wafer
mask
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2045810A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH03249503A (ja
Inventor
勤 宮武
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Heavy Industries Ltd filed Critical Sumitomo Heavy Industries Ltd
Priority to JP2045810A priority Critical patent/JP2789487B2/ja
Publication of JPH03249503A publication Critical patent/JPH03249503A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2789487B2 publication Critical patent/JP2789487B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Length Measuring Devices By Optical Means (AREA)
  • Exposure And Positioning Against Photoresist Photosensitive Materials (AREA)
  • Exposure Of Semiconductors, Excluding Electron Or Ion Beam Exposure (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、X線露光装置において数10μm離れたX
線マスクとウエハーの相対位置を0.01μmのオーダーで
測定することができる相対位置検出装置に関する。
[従来の技術] 回折格子を利用した相対位置検出装置は、これまで種
々提案されている。これらを検出装置別に二重回折格子
法,倍ピッチ二重回折格子法,市松格子を用いた二重回
折格子法および三つの回折格子を用いた光ヘテロダイン
測定法に分類し、各例について以下簡単に説明する。
二重回折法 この方法は、MITにより提案された方法で、その文献
を次に示す。
J.Vac.Sci.Technol.15(3),May/June 1978 PP.984
−986「Alighment of X−ray lithograhy mask using a
new interferometric technique.」(文献1) この原理は、第51図に示すように1次元のマスク回折
格子31とウエハー回折格子32とからなる位置合わせマー
ク上に、波長λのレーザ光33を照射して生じる回折光を
利用して、マスクとウエハーの位置ずれを検出する方法
である。
位置ずれは、+1次回折光と−1次回折光の強度差Δ
Iを用いており、鳥居らの論理解析を基に下式(1)で
表わされる。
Δ∝b2(sin6πZ+sin10πZ)sin2πX +4b6sin8πZ sin4πX ……(1) ただし、X=検出方向 Z=マスクとウエハー間のギャップ この方法の長所として、マークの形状が単純で、0.01
μmオーダーの分解能が得られる。また、短所として
は、上記(1)式からも明らかなように、検出方向のX
のパラメータの他に、マスクとウエハー間のギャップを
示すパラメータZが関与しており、マスクとウエハー間
のギャップの影響を受けることである。このギャップ変
動のパラメータが関与する原因としては、マスク回折格
子1での破線で示す反射回折光34が検出光35と干渉する
ためである。その結果、マスクとウエハー間とのギャッ
プZの変化に対して周期λ/2で変化する項が加わり、1
次回折光の強度I+1,I-1はZの変化に対して極めて敏感
になり、0.01μmの位置検出を安定に行なうためには、
±0.02μm以下の高精度ギャップサーボが必要不可欠と
なる。
倍ピッチ二重回折格子法 この方法は、日本電信電話(株)により提案された方
法であり、その文献の1部を次に示す。
a.精密工学会誌55 1989年1月号PP.129〜134「回折格
子による高精度位置合せ法(第2報)」(文献2) b.精密工学会誌55 1989年6月号PP.87〜92「回折格子
による高精度位置合わせ法(第3報)」(文献3) これは、第52図に示すように、ウエハー側回折格子36
をマスク側回折格子37の2倍とし、破線で示すマスク上
面の反射光38との干渉を避けたもので、この二重回折格
子マーク36,37に波長λのレーザー光39を照射して得ら
れる±1次光回折光の強度差ΔIを利用して位置合せを
行なうものである。
強度差ΔIは、下式(2)で表わされる。
ΔI=I+1−I-1∝{2b3(0.53−b2)・ sin8πZ−b5(sin16πZ+sin24πZ)}・ sin4πX ……(2) この長所として、マーク形状が単純で0.01μmオーダ
ーの分解能があり、等ピッチ2重回折格子法に比べてギ
ャップ変動による位置ずれ検出信号への影響を従来の1/
50以下に低減させたことにある。
また、短所としては、上記(2)式から明らかなよう
に、(1)式に比べギャップ変動(パラメータZの)が
含まれており、検出信号ΔIにはマスクとウエハーの位
置ずれとギャップの情報が同時に含まれるので、ギャッ
プが設計値から±1μm以上ずれると必要な検出信号が
得られなくなる。
また、プロセスおよびレジストを含む薄膜堆積により
±1次回折光の対称性が崩れると、検出精度が低下する
ことになる。
市松格子を用いた二重回折法 これは、(株)東芝より提案された方法であり、その
文献の1部を次に示す。
a.精密工学会誌54 1988年10月号PP.123〜1284「二重
回折格子による間隙変化に鈍感なマスクとウエハの位置
合わせ法」(文献4) B.精密工学会誌55 1989年7月号PP.77〜82「市松格子
を用いた二重回折格子法位置合わせ(第1報)」(文献
5) この原理は、第53図に示すようにマスク上に1次元格
子40を、ウエハー上に市松模様の2次元格子41を設け、
位置合せには1次の回折光I(0,1)を検出光に用いる
ことにより、マスクとウエハーの間隙にほぼ無関係に位
置合わせが可能となる。このとき、位置合わせに使用す
る信号I(0,1)は下式(3)で表わされる。
I(0,1)∝16b2 cos2 2πX ……(3) これの長所としては、マーク形状が単純で0.01μmオ
ーダーの分解能が得られ、ギャップ変動による位置ずれ
検出信号への影響を殆んど受けないことである。また、
短所としては、レジストを含む薄膜の多層化による多重
干渉の影響およびプロセスによる回折格子形状変化の影
響を受けやすく、対の回折格子の形状を十分に管理する
必要がある。
例えば、ウエハー上の2つのマークにレジスト塗布む
らが生じ、2つのマークの反射率が同一でなくなると、
対の回折光強度にアンバランスが生じて誤差の要因とな
る。信号I(0.1)を正弦曲率と仮定して、一方の回折
光強度の極大値が他方に比べて1%大きいとすると、位
置合わせの点は0.015μmずれることになる。
3つの回折格子を用いた光ヘテロダイン測定法 この方法は、電子総合研究所より提案された方法であ
り、その文献の1部を次に示す。
a.昭和61年度 応用物理学会秋季大会予稿集28a−ZF
−11 P.317 「光ヘテロダイン測定によるX線リソグラフィ用高精度
位置ずれ検出」(文献6) b.1988年 春季応用物理関係連合講演予稿集 31p−
K−1 P.575 「光ヘテロダイン測定によるX線リソグラフィ用高精度
位置ずれ検出(III)」(文献7) この原理は、第54図に示す用にマスク42とウエハー43
上に3つの回折格子G1,G2,G2′を設け、この系に光U1
垂直に入射させる。この光U1は周波数が僅かに異なる2
つの相直交する直線偏光(周波数f1,f2)である。光U1
は図の経路を通ってU(±1,+1)およびU(±1,+
2)となり、アナライザ44により周波数(f1−f2)のビ
ート信号Is1,Is2を構成する。これを検出器45で検出す
る。これらのビートの位相差Δφは次式(4)に示す
ように位置ずれに依存して変化する。
Δφ=2tan-1[(α−β)sin2δ/ {1+αβ+(α+β)cos2δ}] …(4) これの長所としては、マーク形状が単純で、ギャップ
変動を受けることなく、しかも0.01μmオーダーの分解
能が得られる。また、短所としては、検出精度がマスク
とウエハー間の平行度に依存することである。プロセス
による回折格子の形状変化の影響を受け、特にピッチ変
化の影響を受けやすい。マークが大きく、微弱な2次回
折光の使用からS/N比を考慮すると小型化がむずかし
い。検出範囲が狭く。また、ギャップ設定値から検出範
囲が限定されてしまうことになる。
[発明が解決しようとする課題] このように、回折格子を利用した位置検出装置には、
それぞれ長所,短所が存在する。X線露光装置において
は、さらに厳しい精度が要求される。X線露光装置の位
置検出装置に要求される項目を以下に示す。これらの項
目はこれまで先行している位置検出装置がそれぞれ抱え
ている問題点でもある。そして、この発明はこれらの項
目を全て解決することを目的としている。
(1)マスクとウエハー間のギャップ変動に相対位置検
出精度が影響されないこと。
露光装置では、露光中にマスクとウエハーは適当なギ
ャップを有して相対しているが、この設定値はセンサー
の精度で左右される。光ステッパーを例にとると、ギャ
ップ精度は±0.5μm前後だといえる。また、このセン
サーとは独立な要因として、ウエハーおよびマスクの平
坦度がある。これは、現状のレベルから言うと、各々±
1μm前後である。したがって、これらギャップ変動に
影響を与えるパラメータをできるだけ小さくすると共
に、検出装置もギャップ変動に左右されない、あるいは
許容値の大きいものが要求される。
以下に、ギャップ変動が検出精度に影響を与える例を
簡単に説明する。
a.J.Vac.Sci.Technol.15(3),May/June(1978) Hen
ry I.Smith,D.C Lamda 「Alighment of X−ray lithog
rahy masks using a new interterometric tech.」 (前記文献1) この方法では、マスク回折格子で反射回折した光がマ
スクとウエハー回折格子で透過した位置の情報をもった
光に重畳するため、検出信号強度は位置の情報とギャッ
プの情報を同時に含んだものとなり、ギャツプの大きさ
に強く依存して変化するため、使用できるギャップ範囲
が極めて小さくなり、実用性に乏しい。具体的には、±
0.02μmの安定した位置制御を行うためには、±0.02μ
m以下の高精度ギャップサーボが必要不可欠であり、実
用化は殆ど不可能に近い。
b.精密工学会誌55 1989年1月号 PP.129〜134「回折格
子における高精度位置合せ法(第2報)」(前記文献
2) この方法は、ウエハー上の回折格子のピッチをマスク
回折格子のピッチに対して2倍に設定することにより、
検出信号に含まれているギャップ検出信号の割合を1/50
に低減したものであるが、それでも同時に含まれている
ことにはかわりなく、間隙が設計値に対して±1〜2μ
m以上ずれると、必要な検出信号が得られない。
(2)プロセスによる回折格子形状変化の影響を受けな
いこと。
ウエハー回折格子は、第55図に示すようにSiを段差状
にエッチングして形成される。したがって、エッチング
等のプロセス条件が変動することにより格子ピッチ
(P)に対する段差部の幅の比で定義される段差幅比
(r)−段差(H)等の回折格子形状にばらつきを生じ
ることになる。
また、格子形成時のみでなく、半導体製造のための薄
膜形式によって、その形状は大きく変化する。
例えば、プロセスによる回折格子形状変化の様子を第
56図に示す。(A)はウエハー上に露出した回折格子マ
スクであり、ドライエッチングにより形成された回折格
子の溝部は逆台形状である。(B)はこの上にSiO2膜を
1100Å,ポリシリコン3700Å(Non−flow)を堆積した
もので、(C)はSiO21100Åの膜上にりんけい酸ガラス
(PSG)膜を3100Å厚に堆積したもので、格子の溝上部
コーナがわずかに丸みを帯びた状態である。(D)は平
坦化のためPSGを熱処理しPSG3100Å(Flow)/SiO21100
Åとしたもので、丸みはさらに増大した状態で、(E)
はさらにその上に5000Å厚のAl膜を堆積したもので、コ
ーナの丸みが一層増大するとともに、薄膜は側面にも同
じ厚さだけ堆積し、溝幅は小さくなり、段差幅比は一層
減少した状態を示すようになる。
したがって、検出精度は、このような回折格子のプロ
セスによる形状変化の影響を受けにくいことが要求され
る。
次に、形状変化の影響を受ける方法について示す。
a.精密工学会誌55 1989年6月号 P.87〜P.92「回折格
子における高精度位置合せ法(第3報)」(前記文献
3) 段差(H)については、下式(5)の深さに段差を形
成すれば、最強信号が得られることが明らかになった。
H=λ(2k+1)/4n′ ……(5) ただし、kは整数,n′はレジストの屈折率,λは入射
光の波長である。また、段差幅比(r)については、0.
5に近い程信号強度は大きくなり、理論値に一致する。
つまり、段差(H),段差幅比(r)共に検出信号に
影響は大きく、良好な結果を得るためには、上記条件が
必要不可欠な要素であることがわかる。
b.昭和63年応用物理学会春季大会論文予稿集31p−K−
1,P.575 「光ヘテロダイン測定におけるX線リソグラフィ用高精
度位置ずれ検出(III)」(文献7) ここでは、マスク回折格子のピッチに対するウエハー
回折格子のピッチ依存性が位置検出精度に与える影響を
明らかにしている。
この検出装置においては、ウエハー回折格子のピッチ
(P)が変化すると強度が低下し、ピーク位置がずれる
ようになり、4%ずれた場合には位置合せが不可能にな
ることが明らかになっている。
c.昭和62年度応用物理学会秋季大会論文予稿集 18a−
F−8,P.427 「ホログラフィ法によるステッパ用ナノメータ位置検出
法(IV)」(文献8) ここでは、回折格子形状変化により、マークが非対称
性の断面形状になるために、光強度に位相遅れが生じ、
検出信号に誤差を含むことが指摘されている。
d.IEEE TRANSACTION ON ELECTRON DEVICES Vol.ED−26,
No.4,APRIL 1979,P.723〜P.728「Authomatic Alignment
System for Optical Projection Printing」(文献
9) この例でも、格子断面形状が非対称化することで、下
記(6)式に従って計測誤差が生じることを指摘してい
る。
(3)マスク製作精度の影響を受けないこと。
X線マスク上の回折格子もウエハーと同じく格子ピッ
チ(P)に対する透過部の幅の比で定義される開口比
(r)が製作精度に依存して変化する。したがって、で
きる限り格子ピッチ(P),開口比(r)の変動に影響
を受けないことが要求される。
第57図は、マスク46の構成を示す側断面図である。マ
スク46は一般に約2μmの厚さの透明部であるSiNの平
板にTaからなる不透明部0.5〜1μm厚で形成されてい
る。
以下に、マスク製作精度の影響を受ける例を示す。
a.精密工学会誌55 1989年6月号 P.87〜P.92「回折格
子における高精度位置合せ法(第3報)」(前記文献
3) ここでは、安定した位置検出信号を得るために必要な
不可欠なギャップ検出信号において、高いギャップ検出
精度を得るために開口比0.3〜0.4のマーク形成が要求さ
れてる。
この開口比を外れると、ギャップ検出精度が低下し、
安定した位置検出ができなくなる。
b.昭和63年応用物理学会春季大会講演論文集 31P−K
−1 「光ヘテロダイン測定におけるX線リソグラフィ用高精
度位置ずれ検出(III)」 (前記文献7) ここでは、マスク回折格子とウエハー回折格子のピッ
チ誤差が大きくなるにつれて強度が低下し、ピーク位置
がずれるようになり、4%ずれた場合には位置合せが不
可能になることを指摘している。このことから、10数枚
のマスクを使用してデバイスを作ることを考えると、こ
れら10数枚のマスク格子のピッチは少なくとも4%未満
の精度で一致していないと位置検出ができないことにな
る。
(4)レジスト膜を含む薄膜の多層化による多重干渉の
影響を受けないこと。
ウエハー格子は、デバイス形成のため各種プロセスを
経ることによって屈折率や膜厚の異なる薄膜が多層に堆
積するので、検出信号がそれらの影響を受けることにな
る。
以下に薄膜による多重干渉の影響を受ける例を示す。
a.精密工学会誌55 1989年6月号 P.87〜P.92「回折格
子による高精度位置合わせ法(第3報)」(前記文献
3) ここでは、レジストのような透明薄膜を回折格子上に
堆積することによる信号波形への影響は小さいが、多層
膜の堆積は膜厚によって干渉を生じさせるので、信号強
度が大きく減衰することを明らかにしている。
また、信号強度は、基本的に堆積膜の膜厚が干渉膜厚
で決定されることも並べている。
b.昭和62年 応用物理学会秋季大会予稿集18a−F−9
P.427 「マーク上のレジストによるアライメント精度の影響」
(文献10) ここでは、回折格子をデバイス上に配置する時、周辺
パターンの影響等によりマーク上のレジスト膜厚が不均
一になり、レジスト膜中の定在波効果が検出精度に影響
を与えることを指摘している。
c,昭和62年 応用物理学会予稿集 18a−F−10 P.427 「透明樹脂コーティングによるアライメント精度の向
上」(文献11) ここでは、アライメントマーク部のフォトレジストの
非対称コーティングによる検出精度低下を問題として取
り上げ、この対策としてフォトレジスト透明樹脂をコー
ティングし、マーク部の平坦化を試み、効果を確認して
いる。
d.昭和63年度精密工学会春季大会学術講演会論文集 H
−39,PP.603〜604 「縮小投影露光装置用合せマーク検出の研究 第1報
4波長レーザ照明によるレジスト塗布むらの影響低減」
(文献12) ここでは、レジスト塗布むらが単波長照明のため、干
渉を生じさせることにより検出精度が低下することを問
題点として取り上げ、この対策として4波長照明化する
ことにより、レジスト膜中での多重干渉反射光が零にな
る領域を拡大する方法を採り、レジスト塗布むらによる
検出誤差を大幅に低減している。
f.昭和63年度 精密工学会秋季大会論文集 E27,PP.165
〜166 「縮小投影露光装置用合せマークの高精度検出報 第2
報 斜方照明・検出によるダイレクトオフアキシス法」
(文献13) ここでも、レジスト厚さ変動が検出精度に与える影響
を4波長レーザ照明することにより、回折光強度変化を
25%に低減したことが示されている。ここで、25%と
は、下式(7)で表わされる相対強度(IM/IO)のレジ
スト厚さによる変化率を表わす。
ただし、tは空気からのレジストへの透過係数,は
空気へのレジストの透過係数,μは回折効率係数,rはレ
ジストから空気への反射係数,r′はレジストからウエハ
ーへの反射係数である。
(5)X線マスクとウエハー間の多重反射干渉の影響を
受けないこと。
位置検出信号に影響を与える大きな要因として、マス
ク下面とウエハー上面との間での多重反射干渉がある。
これは第58図に示すように、X線マスク48下面で反射し
た光がウエハー49上面で再度反射を繰り返す現象であ
る。
このように多重反射した光が本来の位置信号に重畳し
干渉することにより、誤差が発生する。ちなみに、光ス
テッパーでもレティクルとウエハー間の縮小投影レンズ
を通しても、同じ多重反射が発生し問題となるため、こ
の対策としてはレティクル下面に反射防止膜をコートす
るようにしている。
次に、この多重反射が検出精度に影響している例を示
す。
a.精密工学会誌55 1989年6月号 P.87〜P.92「回折格
子による高精度位置合わせ法(第3報)」(前記文献
3) この倍ピッチ2重回折格子法では、高反射率のアルミ
ニウム膜の場合、マスク下面とウエハー上面との間で多
重反射を生じるため、検出信号は細かい凹凸をもつ形状
となり、位置ずれ検出精度が低下している。
この対策としては、レジスト膜を非干渉膜厚に塗布す
ることにより、反射防止膜の役割を果たさせることによ
り多重反射の影響を低減させ、信号波形を滑らかにし、
位置合せに適した信号としている。
b.J.Vac.Sci.Technol.19(4),Nov./Dec.1981 P.1224
〜P.1228 「Application of zone plates to alignment in micro
lithography」(文献14) 円形フレネルゾーンプレート法では、X線マスク上に
形成した円形ゾーンプレートのスポットが2つの光束A,
Bからできることから、多重反射の影響を受ける。つま
り、光束Aはウエハーで1回反射した光であり、この光
束の位相が光束Bと180゜ずれている場合、打ち消し合
ってスポット強度が殆ど零になってしまう。即ち、第59
図に示すように、破線で示す光束AをX線マスク50を通
過してウエハー51上で反射させ、マスク50上に設けられ
た円形ゾーンプレート51を透過させて集束スポット52を
形成する。ところが実線で示す光束Bもマスク50上の円
形ゾーンプレート51で反射して集束スポット52に集光
し、これらの光束は位相が180゜ずれていると互いに打
ち消し合ってしまうことになる。
(6)アライメントマークが充分小さいこと。
通常アライメントマークは、X線露光領域と領域の中
間にあるスクライブラインか、あるいは露光領域中のい
ずれかに設けられる。
X線マスクの製作精度が低く等倍露光であること、露
光中の熱膨張によるX線パターンの歪等の影響が大きい
こと等から、現状ではX線露光領域中に配置されること
が多く、この場合はデバイス回路が占める面積に使えな
い領域を作ることになるため、できるだけ小さいことが
望まれる。絶対許容寸法は決まっていないが、光ステッ
パーを例にとると、ほぼアライメントマークの大きさは
最大で縦・横100μmである。
このことから、X線露光装置においても、縦・横100
μmの大きさが1つの目標とされる。
一方、スクライブラインを設ける場合は、スクライブ
ラインの幅が300μm〜1.5mmの範囲をもっているため、
大きなマークの使用が可能となる。
以下に、大きなアライメントマークを必要とする例を
示す。
a.昭和63年精密工学会春季大会論文集 F−82,PP.949〜950 「差動型LFZP法によるX線露光装置における位置ずれ検
出」(文献15) ウエハー上には長さ500μm×幅2μmの1次元回折
格子が2つ必要とされる。また、マスク上にも長さ500
μm×幅47μmのリニアフレネルゾーンプレートが2つ
必要とされており、ウエハー,マスク共にアライメント
マークのために、廣い領域を必要とする。
b.日経マイクロデバイス 1986年4月号 P.115〜P.127 「4MDRAMの量産用を狙ったX線ステッパ」(文献16) ウエハー上には長さ500μm×幅1.5μmの1次元回折
格子を、マスク上には長さ500μm×幅42μmのリニア
フレネルゾーンプレートが必要とされており、マスク,
ウエハー共にアライメントマークのために広い領域を必
要とする。
c.J.Vac.Sci.Tech.B6(1),No.1 Jan/Feb.1988 PP.409
〜412 「Alighment system for Synchrotoron radiation X−r
ay lithgraphy」(文献17) ウエハー上には、長さ400μm×幅30μmの回折格子
が30μmの間隔をおいて2つ必要とされ、マスク上には
長さ400μm×幅30μmの回折格子が必要とされてい
る。
また、マスク上の格子の両側には、ウエハー表面から
の反射を防止するために長さ400μm×幅約100μm(明
記されておらず)の回折格子が2つ用意されている。
つまり、ウエハー,マスク共にアライメントマークの
ために広い領域を必要としている。
(7)装置構成が簡単であること。
X線アライナーの全体構成の中での大きさ的なバラン
スから、あるいはコスト面および信頼性から、検出装置
はできるだけ小型でその構成が簡単なことが望ましい。
装置構成が比較的複雑と思われる例を以下に示す。
a.昭和61年応用物理学会秋季大会予稿集 280−ZF−10 P.317 「回折格子を用いた光ヘテロダイン干渉式位置検出法の
検討」(文献18) この装置では、光ヘテロダイン測定法を可能にするた
めの工学部品が多数必要となる。また、系を構成する為
に要する空間が比較的大きくなっている。
b.応用物理 第56巻 第11号 PP.1190〜1194 「三つの回折格子を用いた光ヘテロダイン測定による高
精度位置合わせ技術」(文献19) この装置では、1軸を測定する為に、回折格子の対角
に4つの高感度受光装置が必要となり(内2つはマスク
とウエハーの平行度調整用)、系を構成する空間が比較
的に大きくなる。
c.昭和63年 精密工学会秋季大会学術講演会論文集 E
−26 P.163 「ホログラフィアライメントへのヘテロダイン干渉の応
用」(文献20) この装置でも、入射系,検出系とも多種多数の工学部
品が必要となっており、安定性,信頼性に不安があり、
また、系が大きな空間を必要とする為、他の装置との取
り合にとって大きな制約条件となる。
d.精密工学会誌55 1989年7月号PP.77 「市松格子を用いた2重回折格子法位置合わせ(第1
報)」(文献21) この装置でも多数の工学部品を必要とする上、さらに
入射系にはペアになった2つの回折格子を交互に照射す
る為に、同期検波の信号処理を目的とした音響工学偏光
素子(AOD)を用いて、入射光を振動させている。した
がって、入射系も駆動部分を含む装置となり、これらの
特性が検出値に影響を与える。
また、検出系,入射系とも比較的大きな空間を必要と
する為、他の装置に対して制約条件を与えることにな
る。
(8)検出速度が速いこと。
検出装置で検出した値は、マスクとウエハーの相対位
置を表わし、最終的(露光時)にはこの値を零あるいは
許容値内(通常は露光線幅の1/4)に入れる必要がある
為、通常この検出値はマスクあるいはウエハーを動かす
為のフィードバック量として各々ステージに取り込まれ
る。サーボ系におけるこのフィードバック信号の応答性
はサーボ系全体の応答性を決める1つの要素であること
から、このフィードバック信号はできる限り速い方がよ
い。
現状の縦型X/Yステージ用の剛性から試算すると、最
低20Hz前後は必要だと思われる。
検出速度については、明記している文献が少なく各社
の実態を知ることは難しいが、次に示す文献のものは明
らかに遅いと思われる。
a.1989年 精密工学会春季大会学術講演会論文集 I−
13 PP.283〜284 「プラズマ線源方式X線露光システムの開発」 (総合報告)(文献22) この検出装置の場合、約0.4秒毎に検出値をウエハー
ステージ(ピエゾ素子駆動形6軸微動機構)にフィード
バックしている。
(9)検出範囲が広いこと。
検出装置が検出できる範囲は、検出装置の構成および
スループット(一定時間に処理できるウエハーの枚
数),信頼性の面からできる限り広い方が望ましい。
まず、構成の上では、もし0.01μmの精度で検出でき
る装置が100μm以上の検出範囲を持っているとすれ
ば、光ステッパーで云うコースアライメント装置(マス
クとウエハーの粗い相対位置を検出する装置)が不必要
となり、構成が簡単となり、コスト面でも有利となる。
次に、スループットでは、アルゴリズムの上からコー
スアライメント装置に関する処理時間が大幅に削減され
るため向上する。
最後に、信頼性の面では、コースアライメント精度が
ファインアライメントが可能な領域を十分カバーしてい
ない場合、コースアライメントからファインアライメン
トに移った時に、ファインアライメントが不可能あるい
は大幅な誤差を含んだ形で遂行されてしまい、最終的に
到達される精度をクリアーできる確率は低下することに
なり、信頼性は低下することになる。
次に、この検出範囲が極端に狭い例を示す。
a.昭和61年 応用物理学会秋季大会予稿集 28a−ZF−11 P.317 「光ヘテロダイン測定によるX線リソグラフィ用高精度
位置ずれ検出」(文献23) この装置では、2光束の干渉をある一定のギャップ
(40μm前後)で行なわせるために回折格子のピッチを
十分小さくする必要がある。このギャップが62μmの場
合、ピッチは0.72μmとなり、これから検出範囲は最大
でも±0.18μmである。この範囲は、ギャップが小さく
なるのに比例して小さくなる。
例えば、コースアライメントで±0.18μmを越える測
定誤差が生じた場合は、次のピッチの所で検出が行なわ
れるため、±0.36μmいずれかのオフセット誤差を含ん
だ形で計測が終了してしまう。
したがって、このシステムではコースアライメントの
信頼性を十分高くするか、あるいはギャップをより広く
設定することが必要となるが、X線露光の特性からギャ
ップを広くするには限界があり(約60μm位までで、そ
れ以上ではフレネル回折の影響が出てしまう)、結局、
コースアライメント装置の信頼性が重要となる。
(10)マスク,ウエハーの平行度に依存しないこと。
マスクとウエハー間のギャップを設定するための装置
は、ギャップ専用に設けたセンサーあるいは位置検出装
置が専用される。この場合、ギャップと共にマスクとウ
エハー間の平行度も同時に決定される。
この平行度は、ギャップ検出精度に依存するため、ギ
ャップ検出精度が零でない限り平行度に対する許容精度
は必要となる。
この許容精度は、量産性(スループット)の点から大
きい値が望まれる。また、ギャップ検出精度とは独立に
この平行度に影響を与える要因として、マスクとウエハ
ーの平坦度がある。したがって、この平坦度に対しても
影響されないことが必要である。X線マスクの平坦度に
ついて、次の文献によれば、1μm前後だと言える。
a.精密工学誌 1987年1月号 PP.14〜18「X線マスク
の製造と評価」(文献24) 以下に、マスクとウエハーの平行度が直接位置検出精
度に影響を与える例を示す。
b.昭和61年 応用物理学会秋季大会予稿集 28a−ZF−10 P.317(前記文献18) c.応用物理学会誌 1987年第56巻第11号 「三つの回折格子を用いた光ヘテロダイン測定による高
精度位置合せ技術」(前記文献19) 前者の場合、マスクとウエハーの平行度は各々独立の
パラメータとして位置検出精度に影響を及ぼす。後者の
場合は、マスクを基準とした時のウエハー平行度に依存
しており、平行度がθだけ傾いた場合に生じる位置検
出誤差(ε)は次式(8)で表わされる。
ε=θ・S・d1/2λ ……(8) ただし、Sは2つのマスク回折格子のセパレーショ
ン,d1はマスク回折格子のピッチ,λは入射波長であ
る。いずれの場合も、マスクとウエハー間の平行度をX
およびY方向について保ち、かつ、マスクとウエハーの
平坦度についても、さらに影響を受けにくいように工夫
する必要がある。
(11)マーク形状が単純であること。
X線マスクに電子線描画装置(現状では)でマークが
作られること、また、ウエハー上でさまざまさプロセス
が形成され、レジストを含む薄膜が堆積されることか
ら、アライメントマークはできるだけ単純であることが
要求される。なぜなら、マークが複雑になればなるほど
X線マスク上およびウエハー上での形成が困難なものと
なり、その結果、電子描画装置およびプロセスにかかる
負担が大きくなり、非実用的なアライメント手法となり
かねないからである。(つまり、それらの負担を満足す
るようにすると、肝心のデバイスが作れない状況に落ち
入る可能性が極めて高くなるからである。) さまざまなアライメント手法の中で最も困難とされて
いるマーク形状が要求される例を以下に示す。
a.Optical Engineering March/April 1983 Vol.22,No.2
PP.203〜207 「Application of zone plates alignment in X−ray l
ithography」(文献25) この方法の場合、アライメントマークに円形フレネル
ゾーンプレートを用いており、電子線描画がむずかし
く、(原理的に電子線描画装置は連続した曲線が描けな
い。)また、プロセス変化に基づくパターンの変化が起
きやすく、マークとして適当とは言えない。
(12)X線露光光と干渉せずに露光中もマーク検出が可
能のこと。
これには二つの方法がある。1つはX線露光領域に近
接した場合にマークを設けて検出する方法であり、関連
する文献を次に示す。
a.昭和61年度 精密工学会秋季大会学術講演会論文集
380 PP.703〜704 「二重回折格子により高精度位置合わせ法(第8報)」
(文献26) b.特願昭62−260559号(文献27) これらいずれの方法もX線露光領域に近接した場所に
反射ミラーあるいはプリズムを設け信号検出している。
もう1つの方法は、X線露光光と干渉しない斜めの方
向から入射検出を行なう方法である。
以下にその例を示す。
c.昭和63年度 精密工学会秋季大会学術講演会論文集
E−26 PP.163〜164 「ホログラフィアライメントへのヘテロダイン干渉の応
用」(前記文献20) d.精密工学会誌55 1989年9月号PP.139〜145 「斜方結像工学系を用いたX線露光装置用アライメント
パターン検出法」(文献29) e.特願昭63−202857号(文献30) f.昭和61年 応用物理学会秋季大会予稿集 28a−ZF−1
1 「光ヘテロダイン測定によるX線リソグラフィ用高精度
位置ずれ検出」(前記文献23) これらいずれもX線露光光軸に対して10度〜45度の角
度で照明光を入射させ、マークからの反射光を検出し、
アライメント装置が露光領域に干渉しない構成となって
いる。
[課題を解決するための手段] この発明は、微小距離だけ離間した第1,第2の物体の
離間方向に垂直な方向の位置を検出する位置検出装置に
おいて、第1の物体にはスリットを、第2の物体には回
折格子を設け、スリットを通した斜方からの入射光で回
折格子を照射し、該回折格子により生じるフレネル回折
像を検出するため、第1の物体に対して第2の物体はフ
レネル領域にあり、上記スリットと上記回折格子を対向
させない配置とし、上記回折格子からの回折光を上記ス
リットを通過した後に斜方検出するようにして、第1の
物体と第2の物体の相対位置を検出するスリットと回折
格子による相対位置検出装置である。また、微小距離だ
け離間した第1,第2の物体の離間方向に垂直な方向の位
置を検出する位置検出装置において、第1の物体にはス
リットを、第2の物体には回折格子を設け、スリットを
通した斜方からの入射光で回折格子を照射し、該回折格
子により生じるフレネル回折像を検出するため、第1の
物体に対して第2の物体はフレネル領域にあり、第1,第
2の物体面における法線に対して、入射角度θで可干
渉光の複数波長の光を入射させるようにしたことを特徴
とするスリットと回折格子による相対位置検出方法であ
る。
[実 施 例] まず、この発明の原理の概要を説明する。第1図
(A),(B)は、基本原理を説明するための上面図お
よび側面図である。ウエハー1上には1次元回折格子2
がアライメントマークとして形成されて、格子ピッチを
D+E,配列方向の長さC,格子の幅Cとなるように形成さ
れている。このウエハー1上にはギャップAで対向する
位置に幅G,長さFのスリット4を有するマスク3が配設
されている。
ウエハー1上の1次元回折格子2とマスク3上のスリ
ット4は、入射光5の法線Nに対して角度θに応じ
て、適当な量だけスリット4の長手方向(1次元回折格
子2の配列方向)にずらせて配置することにより、ウエ
ハー1上の1次元回折格子2に入射させる入射光5はマ
スク3上のスリット4と全く干渉せずにウエハー1上の
1次元回折格子に入射させるようにする。
ここで、入射する光5は、He−Ne,Arなどの波長λの
コヒーレント光とする。また、ウエハー1上の1次元回
折格子2は、プロセスにより形成された段差形状をもっ
た反射型の回折格子である。そして、マスク3上のスリ
ット4は、例えば透過部がSiNで、不透明部がTaの場合
を示している。これは透明部をSiNの代りにSiCを、不透
明部のTaの代りにAuを使用しても、可視光に対して十分
コントラストを有している。
マスク3上のスリット4と干渉せずに透過した波長λ
の入射光5は、直接ウエハー1上の1次元回折格子2に
入射して反射回折され、零次の反射光6は法線Nに対し
てθで反射し、1次回折光6aは法線Nに対してθ
θの角度で反射することになる。マスク3とウエハー
1の相対位置を検出するには、この例の場合、−1次の
反射回折光を使用する。この主な利用は、マスク3とウ
エハー1間のギャップ変動の影響を受けないためであ
る。
ウエハー1上の回折格子2で反射回折された−1次の
回折光6aは、マスク3の法線Nに対して(θ+θ
の角度でマスク3に設けられた長方形の開口部を形成し
たスリット4を透過する。このスリット4と透過する−
1次回折光6aの光量はマスク3とウエハー1の相対位置
により変化する。
ここで、スリット4を透過する光量は、マスク3とウ
エハー1の移動方向、つまりウエハー1上の1次元回折
格子2の幅B(即ち、回折格子2の配列方向と直交する
方向)およびスリット4の幅G方向(スリット長手方向
と直交する方向)に応じて変化する。
単純に1次元回折格子2の幅B、−1次回折光6aの幅
もBと同じにすれば、1次元回折格子2の配列方向の中
心線とスリットの長手方向の中心線が一致したとき、ス
リット4を通過する−1次回折光6aの光強度は最も強く
なり、逆にスリット4を全く−1次回折光6aが通過しな
い場合には光強度が零になる。
ここで、スリット4を通過する−1次回折光の光路中
に受光センサーを置いて光量変化を検出すれば、マスク
3とウエハー1の相対位置が正確に測定することが可能
となる。
以上の検出方法においては、回折方法と位置検出方向
とが直交し、入射角度および回折角度は、検出精度とは
無関係に設定することが可能となる。このことから、入
射光を大きく傾ける斜入射が可能となるため、マスクス
リット4とは全く干渉することなくウエハー1上の回折
格子2に到達した光は、この回折格子2で反射回折さ
れ、マスクスリット4を1回だけ通過する経過となるた
め、マスク3とウエハー1間の多重反射干渉の影響は全
く受けることがない。また、斜入射,斜方検出が可能の
ため、X線露光光とは全く干渉することなく、露光中に
おいても検出が可能となる。さらに、マスク3とウエハ
ー1間のギャップ変動については、ギャップ変動により
位置検出回折光と干渉するマスク3上面での零次反射光
が斜入射により位置検出回折光とθの角度差で完全に
分離されるため、全くその影響を受けることがない。ま
た、マスク3とウエハー1の平行度についても、さほど
敏感でなく現状のギャップセンサーで十分に対応できる
範囲と考えてよい。
以上が、この発明の基本原理の概要であるが、その主
な特徴は次の3点である。
I.回折方向に対して、直角方向の位置検出を行う。
II.1次元回折格子からの回折光がスリットを通過する光
量の変化を利用した位置検出方法である。
III.1次元回折格子とスリットを対向させない配置と
し、斜方入射により生じた回折光がスリットを通過した
後の光量を斜方検出することにより、マスクとウエハー
間の多重反射干渉を無くし、かつギャップにより変動す
る零次光(ギャップ検出信号)と位置により変動するN
次回折光(位置検出信号)を空間的に完全に分離した検
出方法である。
次に、上記3つの特徴の各項目についてさらに詳細に
説明する。
I.回折方向に対して、直角方向の位置検出を行う。
従来の二重回折格子法においては、回折格子における
回折方向の光を位置検出信号として使用していた。この
例としては、回折光の強度を利用している第52図の倍ピ
ッチ二重回折法や、第54図に示すヘテロダイン干渉を応
用した方法が挙げられる。
一方、この発明と同じく、回折方向に対して直角な方
向の位置を検出している例としては、以下に示すよう
に、回折格子とパターン検出を組み合わせたハイブリッ
ド計測を採用している。現在の光ステッパー,エキシマ
レーザーステッパーおよびX線ステッパーが挙げられ
る。
これらの文献として、 a 昭和63年度 精密工学会秋季大会論文集 E27,PP.1
65〜166 「縮小投影露光装置用合せマークの高精度検出法 第2
報 斜方照明・検出によるダイレクトオフアクシス法」
(文献31) b 電子材料 1988年3月号 PP.30〜36 「i線縮小投影露光装置LD−5010i」(文献32) c NEC RESERCH & DEVELOPMENT No.82,PP.42〜47,Jul
y 1986(文献33) 「X−Ray Lithography for Submicron Device Fabrica
tion」 d 特開昭63−153821号公報(文献34) などがある。
これらは、いずれも第2図に示すように、アライメン
トマーク8に1次元回折格子を用いており、この回折格
子から生じる1次回折光を位置合せマークとして対物レ
ンズでパターン検出することによってマスクとウエハー
の位置検出を行っている。
次に、位置検出信号として用いる検出方向における回
折像の強度分布を近似的に計算により求める。計算によ
り求めようとする回折像の強度分布の方向を第3図に示
す。
この図において、求める回折像の強度分布は、フレネ
ル領域における回折像のものである。
これは、この発明の原理を示す第1図(A),(B)
からもわかるように、マスクスリット4により遮られる
回折像は、回折格子2から比較的に近い有限距離にある
回折像で、その距離は第1図(B)中ではAμmで表わ
されており、適当な値が取り得るA値は、マスクとウエ
ハーの場合凡そ15μm<A<50μmであることから、フ
レネル領域における回折像を求めればよいことがわか
る。第3図で示される回折像を近似的に求めるため、第
4図に示すスリット9によるフレネル回折像の強度分布
を求めてみる。
スリットの幅を2ζとする。図において、観察面Q
におけるスリット9からのx方向の振幅成分をUxとする
と、x方向における回折像の強度分布Ixは次式によって
求められる。
Ix=|Ux| ……(9) |Ux|を求めるために、コルニュ(Cornu)の螺旋を用
いた図式解法を適用すると、強度分布Ixはコルニュの螺
旋上にある2点p1,p2を結ぶ線分の長さ▲▼で
表わされる。
このコルニュの螺旋図を用いて、幅2ξのスリット
9を考えると、 とおき、任意のxに対してPを求め、このpに相当する
螺旋上の点Pを中心に、それぞれΔp1とΔp2だけ離れた
点p1およびp2をとると、p1p2がxにおける|Ux|に相当す
る。
次に、上記(14),(15)式からスリット幅2ξ
強度分布|Ux|の関係を考える。
(ア)スリットの面2ξが大きくなった場合、 となる。この(16)式が成り立つ場合では、第5図
(A)に示すような強度分布|Ux|となる。回折像の中央
を中心に、スリット9の両側が対称で、それぞれ独立の
ナイフエッジのように働く。
(イ)スリット幅2ξが小さくなった場合、 上記(17)式が成立する近傍になると、pに対する▲
▼の変化がΔp2−Δp1の大きさに敏感となり、
第5図(B)に示すようにスリット幅によって回折像の
形状は変化する。
(ウ)スリット幅2ξが十分小さくなった場合、 上記(18)式が成立する場合では、▲▼の長
さが曲線の長さΔp2−Δp1にほぼ等しくなり、pの変化
に対しても回折像の変化がゆるやかになり、第5図
(C)に示すようにフラウンホーファー回折像に近ず
く。
ここで、上記(16),(17),(18)式のいずれがこ
の発明における回折像の強度分布|Ux|に該当するのかを
第1図(A),(B)を参照して適当と思われる数値を
代入して検討する。
入射光として、波長λ=0.633μmのHe−Neレーザー
光を使用したとして、マスク3とウエハー1のギャップ
Aを40μm(Zm=40μm),ウエハー1上の回折格子2
の幅Bを4μm(2ξ=4μm)とすると、 上記(19)式から、位置検出に用いる回折像の強度分
布Ix(=|Ux|)は、上記(17)式に相当することが明ら
かになった。つまり、第5図(B)に示すように、スリ
ットの幅によって回折像上端部が変化するものの、スリ
ット幅2ξがほとんど一定とみなすことができるこの
発明の場合は、適当なスリットの幅2ξを選択するこ
とで、ほぼ矩形の強度分布Ixと見なすことができる。
変化するスリット幅2ξ、つまり第1図(A),
(B)における回折格子2の幅Bを前記の文献3を参考
して上記(19)式より求め、Δp2−Δp1≒1であること
を次に示す。
ウエハー1上における回折格子2は、通常プロセスに
よる形状変化を受け、第6図に示すようにウエハー回折
格子2の格子ピッチPに対する段差部の幅の比で定義さ
れる段差幅比rが変化し、その値は凡そr=0.3〜0.7で
ある。
このことは、もともとr=0.5で最初に形成された段
差幅が約30%前後狭くなったり広くなったりすることを
示している。このことを第1図(A),(B)に示すも
のに適用すると、回折格子2の幅Bがプロセスにより±
30%前後することになる。
したがって、上記(19)式におけるスリット幅2ξ
は 2.8μm≦2ξ≦5.2μm …(20) の範囲で変化することから、Δp2−Δp1は 0.7868≦Δp2−Δp1≦1.4612 ……(21) のごく僅かな範囲でしか変化しない。
したがって、回折像の形状も殆ど一定の矩形とみなせ
ることがわかる。また、後で述べる多色光化により(2
1)で示される変化は平均化され、より変化の少ない矩
形の分布を採すことになる。
次に、上記スリットモデルで計算してきた結果を実測
値と比べる。第1図(A),(B)に示す回折格子2と
同じ方向の回折像の強度分布をアライメント信号として
いる例を前述したが、その中でi線ステッパとエキシマ
ステッパの例を第7図(A)〜(D)に示す。(B),
(D)はそれぞれ(A),(C)の検出波形である。
第7図から、第1図(A),(B)における回折格子
2の幅B方向における回折像の強度分布が矩形であり、
いずれもスリットモデルでよく近似できていることが明
確になった。
次に、この発明の第2の特徴について説明する。即
ち、 II.1次元回折格子からの回折光がスリットを透過する光
量の変化を利用した位置検出方法である。
この発明の原理を示す第1図(A),(B)におい
て、ウエハー回折格子2から反射回折された−1次回折
光6aは、マスクスリット4によりマスク3とウエハー1
の相対位置に応じた光量が遮られ、残りの光量が通過し
てくる。このことは、第8図に示す2つのスリットa,b
を並べて設置し、スリットa,bの位置関係に応じて通過
してくる光量の変化をモデルとして考えることができ
る。即ち、第8図において、スリットaを通過して出て
くる光束が第1図(A),(B)におけるウエハー回折
格子2から反射回折される光束に対応しており、入射光
の幅Bの光束がスリットbによりその1部が遮断されて
通過してくる光束の光量が、スリットaとスリットbの
相対位置により変化することになる。
したがって、2つのスリットa,bを通過してくる光束
の光量を光電子増倍管などで測定すれば、2つのスリッ
トa,bの相対位置を求めることができる。
ここで、計測する光束の光量をP0(ワット)は、毎秒
N個の光粒子のもつエネルギーで表わされ、次式(22)
式の関係となる。
N=P0/hν=P0λ/hc …(22) ただし、 h;ブランクの定数(6.63×10-3Js) ν;光子の振動数(s-1) c;光速(m・s-1) 例えば、波長λ=633.8nm,出力1mWのHe−Neレーザで
照射される光電子増倍管の光電面には、毎秒約3.2×10
15個の光子が入射し、光電変換され、電圧(V)として
出力される。
第8図において、スリットaに対してスリットbが左
に移動した場合に、透過光の光量は第9図に示すように
変化する。ただし、スリット幅については、ここではB
=Gとしている。この図において、縦軸は光量I(m
V),横軸はスリットbの移動量Xm(μm)を表わす。
このとき、例えば入射光量が一定であり、光電子像倍管
の感度を1mVとすると、スリットbの位置検出分解能
(δ)は、次式(23)で近似される。
ただし、上記(23)式は、第9図の曲線を直線で近似
した場合を想定しており、実際は第9図においてx1,x3
の点付近の傾きは直線性がよく上記(23)式で表わされ
るよりもさらに急勾配となっていることから、実際の感
度はx1,x3付近を利用すれば上記(23)式で表わされる
分解能よりも高くなる。逆に、x1,x3から離れた付近で
は直線性が低下し勾配は緩やかとなり、分解能は上記
(23)式よりも低くなる。
以上の説明から、第1図(A),(B)で示されるこ
の発明の検出原理が第8図で表わされる2つのスリット
a,bを通過する光量と2つのスリットa,bの相対位置の関
係を示すモデルで表わされることがわかった。
次に、この発明の1番目の特徴と2番目の特徴を組み
合せることにより導き出される3番目の特徴について説
明する。即ち、 III.1次元回折格子とスリットを対向させない配置と
し、斜方入射により生じた回折光がスリットを通過した
後の光量を斜方検出することによりマスクとウエハー間
の多重干渉を無くし、かつギャップにより変動する零次
光(ギャップ検出信号)と位置により変動するN次回折
光(位置検出信号)を空間的に完全に分離した方法であ
る。
ウエハー1上の1次元回折格子2の回折方向とは直角
な方向の位置検出を行うことにより、位置検出信号とな
る回折像の強度分布には全く無関係に入射角度を大きく
傾けることが可能となった。また、位置検出信号となる
回折像の強度分布は矩形となり、この光束をマスク3に
設けたスリット4を通過させ通過した光量を検出するこ
とにより、マスク3とウエハー1の相対位置を測定する
ことができることが、前述したIおよびIIから分かっ
た。
これらの特徴から、マスクスリット4とウエハー回折
格子2を第1図(A),(B)に示すように配置する
と、ウエハー回折格子2に入射する波長λの光束は、マ
スク3面の法線Nに対して角度θで入射することにな
る。このとき、入射光束5は角度θで大きく傾いてい
るため、マスクスリット4の干渉を全く受けずにウエハ
ー回折格子2に到達する。そして、ウエハー回折格子2
に到達した光束は反射回折されて、入射角度θに対し
てさらにθの回折角度が加わる。したがって、(θ
+θ)の角度で−1次回折光6aが進み、マスクスリッ
ト4を通過することになる。ここで、−1次回折光6aの
回折角度θは次式(24)で表わされる。
ただし、D+Eはウエハー回折格子2のピッチであ
る。
また、ウエハー回折格子で反射回折した−1次回折光
6aがマスク3の裏面で反射しないためには、角度(θ
+θ)が次式(25)を満たす必要がある。
(θ+θ)<45゜ ……(25) マスクスリット4を通過した−1次回折光6aの光量
は、マスク3とウエハー1の相対位置により変化するの
で、この光量を光電子増倍管などで検出すればマスク3
とウエハー1の相対位置が計測できる。
このように、マスクスリット4とウエハー回折格子2
を対向させず、マスクスリット4の干渉を全く受けずに
光束をウエハー回折格子2に入射させることで、入射か
らスリット4を通過した光量の検出までの経路が1本だ
けに整理されることから、これまで従来の二重回折法で
問題となっていたマスク3とウエハー1間の多重反射干
渉の影響を受けることが全くなく、問題とならなくな
る。
また、第1図(A),(B)において、位置検出信号
となる−1次回折光6aの他に、ウエハー1上から零次の
正反射光がマスクスリット4を通過してくる。第10図に
示すように、ウエハー1上からの零次の正反射光束a
は、マスク3上面での正反射光束bと干渉する。従っ
て、マスク3とウエハー1間のギャップ変動により第11
図に示すような光束aと光束bの位相差が生じ、入射光
の波長λを周期としたサイン波状の変化を示すことにな
る。従って、この光束aと光束bの干渉した光束(a+
b)は、ギャップ検出信号と見なすことができる。
従来の二重回折格子法では、このギャップ検出信号と
位置検出信号(第10図に示す光束c)は完全に分離する
ことができなかった。
ところで、第10図に示すように、この発明によれば、
ギャップ検出信号は角度θで、一方、位置検出信号は
角度(θ+θ)となり、2つの信号が空間的に完全
に分離され、互に干渉して影響を及ぼすことが全くな
い。
以上説明したマスクとウエハー間の多重反射干渉の影
響とマスクとウエハー間のギャップ変動の影響(ギャッ
プ検出信号と位置検出信号の完全な分離)の二点は、こ
れまでの二重回折格子法において実用化に向かなかった
大きな問題点であったことから、この発明の3番目の特
徴の意義が極めて大きいといえる。
以上は、この発明の原理を3つの項目について詳細に
説明したが、次に、これらの原理を実験により確認して
いるので、その結果を示す。
先ず、特徴に関する実験結果を示す。これは、1次元
回折格子のフレネル領域における−1次回折光の強度分
布とギャップ変動の影響を明らかにすることを目的とす
る。
実験装置を第12図に示す。He−Neレーザー11からの光
束12(波長λ=633nm)を経路調整のためのミラー13で
反射させ、ウエハー1上の回折格子2に入射角30゜で入
射させる。この回折格子2はウエハー1上にはピッチ8
μmで段差幅比≒0.5にレジストにより形成されてい
る。その大きさは第13図に示すように縦200μm,横296μ
mである。このウエハー回折格子2の上には40μmのギ
ャップを隔ててX線マエク3が対向している。ただし、
このマスク3上にはパターンが描かれていないSiNから
なる光透過部をウエハー回折格子2上にもっている。こ
れは、ギャップ変動の影響を光透過部を通過してきた回
折光を観察するためである。
検出は、フレネル領域における−1次回折光14を観察
するため、N.A=0.1,倍率5×の対物レンズ15と倍率6.7
×リレーレンズ16により33.5倍に拡大した増を2次元カ
メラ17で撮影しモニター18にて行うものである。また、
信号波形を観察するためにオシロスコープ19を用意し
た。対物レンズ15とマスク3およびウエハー1は約20mm
離した位置にあり、その焦点の合った位置から±200μ
m範囲で−1次回折像をモニター18,オシロスコープ19
で観察した。
検出角度は回折格子のピッチ=8μmおよび入射波長
λ=633nmより9.1゜であることから、マスク3面の法線
Nに対して39,1゜を設定している。
第14図(A),(B),(C)にモニター18上に写し
出された1次元回折格子による−1次の回折像の様子を
示す。(A)は検出位置が+200μm,(B)は0μm,
(C)は−200μmの場合である。
これから、ウエハー1面からフレネル領域と見なせる
約400μmの範囲における−1次の回折像は一定である
ことが分かった。
モニター18で回折像を観察している間、X線マスク3
のギャップを適当に変更したが、回折像の変化は全く見
られなかった。これからこの回折像はマスク3上面とウ
エハー1上面で正反射されてギャップ変動の影響により
周期λで干渉する零次の正反射光と完全に分離されてい
ることが証明された。
第15図は、ウエハー回折格子2における−1次回折像
の強度分布をオシロスコープ19で写したものである。前
述の計算および実施例と同様に矩形になっていることが
わかる。
以上のことから、ウエハー1上に設けた1次元回折格
子2において、位置検出に用いる−1次回折像のフレネ
ル領域における強度分布は矩形であり、400μmの領域
ではほぼ一定である。また、この回折光は、ギャップ変
動により干渉する零次の反射光と完全に分離されるた
め、ギャップ変動の影響は全く受けない。
次に、特徴II,IIIに関して検出精度を確認したので、
その結果を示す。これは、前記特徴Iで示した回折像の
強度分布とマスクスリットを組み合せて、斜入射により
位置検出を行い、検出分解能を確認することを目的とす
る。
第16図にその実験装置を示す。マスクスリット4の大
きさは第17図に示すように縦36μm×横50μm,ウエハー
回折格子2の大きさは縦200μm×横296μm(ピッチ8
μm)のものを使用した。検出方向は第16図に示す方向
とし、マスクスリット4を通過してくる光量を対物レン
ズ15で検出し、テレビカメラ17で結像させた。
位置検出は、第17図に矢印で示す検出方向に移動した
距離により変化するスリット通過光の光量をビデオ信号
上でオシロスコープ19で電圧を測定し、前記(23)式に
よりその分解能を求めた。レーザ11はHe−Neの波長633n
mの光12を30゜の角度で入射させ、検出は39.1゜の角度
で行なった。X線マスク3aとウエハー1は40μmのギャ
ップで相対している。
次に、結果を説明する。第18図(A),(B)はモニ
ター18の画面の様子を示し、オシロスコープ19の波形の
第20図(A),(B)に示す。即ち、第18図(A)は第
19図(A)に示すように、スリット4を−1次回折光が
通過していない状態、第18図(B)は第19図(B)に示
すように、4.5μmのウエハー回折格子2の移動により
スリット4を通過してきた1次回折光のパターンであ
る。これらの状態のときのオシロスコープの信号波形を
第20図(A),(B)にそれぞれ示す。ピーク値Q,Q′
の電圧はそれぞれ148mV,995mVである。また、参考のた
めに、第18図(B)に示すモニター画面の全体の様子を
第21図に示す。第20図(A),(B)から、マスクスリ
ット4に対してウエハー回折格子2が4.5μm移動した
場合に、マスクスリット4の光量は995mV−148mV=847m
V変化することを測定した。
ここで、レーザ11の出力が一定であり、ビデオ信号に
よる分解能を1mVとすると、第20図(A),(B)にお
ける検出分解能δは、前記(23)式から次式(26)とな
る。
上記(26)式から、0.0108μmと極めて高い位置検出
分解能が得られた。
また、検出中にギャップを適当に変化させたが、前述
の実験と同じくスリット4を通過してくる−1次回折光
の光量は全く変化しなかった。
以上を纒めると、この発明の基本原理は、第1図
(A),(B)に示すように、マスク3とウエハー1間
の多重反射干渉およびギャップ変動の影響を全く受ける
ことなく、0.0108μm/mVの高精度の検出分解能が得られ
たことが証明された。
次に、単スリットの代りに、多重スリットを用いてS/
N比を高め、構成をより単純にした実施例を説明する。
第1図(A),(B)に示すように、単スリットと一
次元回折格子を組み合わせた場合に、位置検出に用いる
−1次回折光の光量は微弱である。従って、この光量を
直接光電子像倍管などで受光したとしても、十分な光量
が得られず、低いS/N比のため検出分解能が低下してし
まう可能性がある。
この微弱な光量で0.01μm以下の分解能を得るために
は、第16図に示した実験装置のように対物レンズ15を使
ってこの検出光をもれなく集光する必要がある。しか
し、この検出装置の構成は、簡単なレンズ系が必要とな
るため、X線マスク上面から20〜40mm付近にある程度の
スペースを必要とすることになってしまう。また、レン
ズ系の特性も僅かではあるが検出精度に影響を与えてし
まう。
従って、できれば第16図で使用したレンズ系は除くこ
とが望ましい。そのためには、十分な光量の−1次回折
光が得られることが必要であり、この方法としては、単
スリットの数を増して多重スリット化する方法が考えら
れる。
以下、この多重スリット化した場合の構成を第22図
(A),(B)に上面図および側面図として示す。スリ
ット間隔はHとなり、4組の1次元回折格子21,22,23,2
4が並列にウエハー1上に設けられる。そして、この多
重化に対応してマスク3a上のマスクスリットも41,42,
43,44と4組並列して2次元化される。
このウエハー2次元回折格子は、いわゆる回折格子と
は異なり、X方向とY方向で異なるピッチH,(D+E)
をもつ回折格子、即ち特殊な回折格子といえる。
次に、第22図(A),(B)において、ウエハー回折
格子21,22,23,24から反射回路される−1次回折光のフ
レネル領域における強度分布を実験により確認する。実
験に用いるウエハー回折格子を第23図に示す。ピッチ48
μm,縦200μm,横296μmの回折格子がスリット間隔300
μmで形成されたものである。
この2次元回折格子2bに、第24図に示すようにHe−Ne
レーザ11から波長633nmのレーザ光12をミラー13を介し
て入射角30゜で入射させる。そして、2次元回折格子2b
により反射回折された−次回折光のフルネル領域におけ
る強度分布をN.A.=0.1の対物レンズ15,リレーレンズ16
を介してTVカメラ17で検出し、モニター18およびオシロ
スコープ19で確認する。このときの−1次回折光の反射
角は39.1゜である。
第25図にモニター18の様子を示す。3つ並んだ回折格
子から−1次回折像はほぼ同じであることが分かる。
第26図にビデオ信号のオシロスコープ図を示す。この
図からも同じ矩形をした強度分布をもつ−1次回折光が
フレネル領域にできていることが分かる。
以上の実験結果から、第22図(A),(B)に示すス
リット間隔Hのマスク多重スリットと間隔Hをもつウエ
ハー2次元回折格子に入射した場合も、前記第1図
(A),(B)に示した基本構成と同じ位置検出原理が
成立することを確認することができた。
次に、第8図に習って、多重スリットの場合のモデル
を第27図に示す。第1図(A),(B)に示す基本原理
で得られる位置検出光(−1次回折光)に比べ、この場
合スリットの数だけ掛けた光量が得られることが分か
る。このことは、第16図に示したように、第1図
(A),(B)に示す基本原理の場合は、単一スリット
であったため得られる位置検出光(−1次回折光)が微
弱であり、対物レンズで集光する必要があった。この例
では多重スリットにしているので、対物レンズは不必要
になる。
従って、第22図(A),(B)に示す多重スリットに
おける検出系の構成としては、第28図に示すように、受
光センサー20だけであり、極めて単純な構成となる。即
ち、検出系はレーザ光源11と受光センサー20の二つだけ
で構成される。
また、レーザ光源そのものを置く必要はなく、光ファ
イバを設置して、そこから入射されるレーザ光を用いて
も良い。受光センサーとしては一般的な光電子像倍管な
どで良い。
このような構成から、レーザ光源および受光センサー
は、X線マスクから遠く離れた位置に置くことができる
ため、マスクステージなどと周辺装置との寸法的な取り
合いが緩和されるため、それだけ装置全体の設計が極め
て楽になる。
次に、第28図に示される検出装置において、受光セン
サー20で受光する−1次回折像の強度分布を考察してお
く。
第28図において、マスク多重スリット4aから受光セン
サー20までは遠く離れているために、多重スリット4aを
通過してくる−1次回折光の強度分布はフランホーファ
領域における回折像と見なすことができる。したがっ
て、その強度分布I(x)は幅GのスリットがHの間隔
でM本並列する場合と仮定できるため、次の式で表わさ
れる。ただし、xは位置検出方向の位置を表わす。
上記(27)式で表わされる強度分布は、凡そ第29図に
示すようになる。上記(27)式は定数項I0を別にして、
第1項は1本のスリットのフランホーファー回折像を示
し、第2項はM個のスリットによる干渉縞に相当してい
る。
従って、多重スリットからの回折像の強度分布は第29
図からもわかるように、2重スリットと同じ位置に大き
い極大値を生じる。また、それら大きい極大値の間にス
リット数Mに応じて(M−2)個の小さい極大値が生じ
る。受光センサーでは、このような強度分布をもつフラ
ンホーファー回折像を受光することになる。
次に、第1図(A),(B)に示す基本原理,第22図
(A),(B)に示す多重スリット化したものおよび第
28図に示す位置検出方式の評価を説明する。
評価項目は、前記発明が解決しようとする課題の項に
おいて列挙した12の項目とし、以下各項毎に評価を行
う。
(1)マスク,ウエハー間のギャップ変動に相対位置検
出精度が影響されない。
第10図において既に説明したとおり、ギャップ変動に
より変化するギャップ検出信号は位置検出信号と角度θ
で完全に分離されている。ここで、ギャップ検出信号
は、マスク上面で正反射する零次光とウエハー上面で反
射する零次光の干渉波であり、その干渉強度は入射波波
長λの周期でサイン波状の変化をする。
一方、位置検出信号は、ウエハー回折格子で反射回折
した−1次光がマスクスリットを通過した光であり、回
折角度θだけギャップ検出信号とずれている。従っ
て、第28図における検出系の構成図において、この位置
検出信号を受光するセンサー20をギャップ検出信号から
離れた場所に設置するだけでマスクとウエハー間のギャ
ップ変動に全く影響されずに位置検出信号だけを検出す
ることが可能となる。
(2)プロセスによる回折格子形状変化の影響を受けな
い。
プロセスによる回折格子の形状変化は、次の3つの変
化がある。即ち、(ア)段差(H),(イ)段差幅比
(r),(ウ)格子ピッチ(P)である。
これらを第1図(A),(B)に示す基本原理および
第22図(A),(B)に示す多重スリット化したものに
ついて考える。
(ア)段差(H)について、 単色光λによる回折効率は、反射回折格子の場合必ず
段差(H)の影響を受け、κを整数,n′をレジストの屈
折率とするとき H=λ(2κ+1)/4n′ ……(28) の深さのとき、反射回折効率は最大になる。第1図
(A),(B)に示す基本原理のものでも単色光入射で
あるため上記(28)式は考慮しなければならない。
(イ)段差幅比(r) 段差幅比(r)については、従来の2重回折格子法に
おいては、格子の配列方向の位置検出を行っていたため
に段差幅比(r)の影響を受け、これが0.5のとき三角
波状の最強信号が得られており、それ以上あるいは以下
でも検出信号が変化し、位置合せには不適当な信号とな
っていた。
一方、第1図(A),(B)に示すこの発明の基本原
理のものでは、従来の回折方向と位置検出方向が90゜異
なるため上述したような問題は起らない。
しかしながら、次のような問題が新たに発生する。
第8図に示すスリットモデルにおいては、2つのスリ
ットa,bはそれぞれ第1図(A),(B)におけるウエ
ハー回折格子の幅Gに相当する。ここで段差幅比(r)
が変化するということは、2つのスリットa,bにおける
一方のスリット幅が変化することに相当する。
次に、この点について考察してみる。第8図における
スリットモデルにおいて、一方のスリットがΔdだけ増
減した場合のスリットモデルを第30図に示す。即ち、ス
リットa,bのスリット幅をCとして、第30図(A)はス
リットbのスリット幅がΔd(=C/6)だけ広い場合、
第30図(B)はスリットa,bのスリット幅が等しい場
合、第30図(C)はスリットbのスリット幅がΔdだけ
狭い場合である。このような状態における光量変化をグ
ラフ化して示すと、第31図に示すようになる。縦軸はス
リットを透過した光量、横軸はスリットに対する回折格
子の相対移動量を示す。即ち、一点鎖線で示すケース
(1)は、第30図(A)に示す状態、実線で示すケース
(2)は第30図(B)に示す状態、破線で示すケース
(3)は第30図(C)の状態のものである。なお、透過
光の変化はモデル化しているため三角波状となっている
が、実際はサイン波に近い形状となる。位置合せ位置を
2点あるh/2の位置合せ点A,B,Cの中心を求める方法も考
えられるが、スリット精度が計測値に含まれるため、あ
まり良い方法とは言えない。
(ウ)格子ピッチ(P) 第1図(A),(B)において、ウエハー回折格子の
ピッチが変化すると回折角度θが変化する。この変化
はマスクスリット通過光の検出角度を変化させるため、
第28図において、受光センサー20の検出位置を変更しな
ければならない。しかしながら、この例では受光センサ
ーの位置を変更することは容易であり、問題とはならな
い。
また、検出精度にも全く影響を与えない。
(3)マスク製作精度の影響を受けない。
第22図(A),(B)に示すマスク多重スリット方式
は極めて単純なパターンであり、その製作上の困難さは
全くない。
しかしながら、(ア)格子ピッチ(P)(第22図にお
ける間隔Hに相当),(イ)開口比(r)の影響を考え
ると、上記(イ)の開口比(r)の変化は、ウエハー回
折格子のプロセスによる段差幅比(r)と同じ問題が生
じる。
一方、格子ピッチ(P)は、各スリットにおける通過
光の変化が第30図にスリットモデルで示す位置合せ誤差
(Δd)の原因となるが、その量(Δd)はウエハー回
折格子の場合に比べて極めて小さく(ウエハープロセス
に比べX線マスクの製作プロセスは格段に安定してい
る。)かつ、多重スリットであるため、その誤差量は統
計的に丸められ、さらに小さくなると予想されるため、
段差幅比(r)に比べるとずっと影響が小さい。
基本的には、この誤差量は実験的に明らかにされる量
であるが、上記の理由からここでは問題としない。開口
比(r)の変化については、第30図,第31図で示した位
置合せ誤差(Δd)の原因となる。
(4)レジスト膜を含む薄膜の多層化による多重干渉の
影響を受けない。
第1図(A),(B)において、回折格子2上にレジ
スト膜が塗布されると、このレジスト膜の塗布むらによ
り検出方向の±1次回折光の強度分布が変化する。
この変化の様子を第32図に示す。(A)はレジスト膜
が均一に塗布された状態でこのときの−1次回折光強度
は(B)に示し、(C),(E)はそれぞれ塗布むらが
ある状態、(D),(F)は−1次回折光強度をそれぞ
れ対応して示している。
このことは、第31図に示す位置合せ信号が変化する原
因となり、位置合せ誤差が生じる。
(5)X線マスクとウエハー間の多重反射干渉を受けな
い。
従来の二重回折格子法においては、照射光を斜方入射
にすると、このマスクとウエハー間の多重反射干渉の影
響で位置検出誤差の原因となっていた。
しかしながら、この発明においては、斜入射を前提と
した位置検出方式であるため、斜入射による多重干渉の
影響を全く受けない。
この理由は、前述したように斜入射により生じた回折
光を利用することで位置検出信号とギャップ検出信号を
角度を異ならせて完全に分離していることと、位置検出
光はウエハー回折格子で1度だけ反射回折した光に限定
されることによって、従来大きな問題であった多重干渉
を完全に解決することができた。
(6)アライメントマークが十分小さい。
第22図(A),(B)に示す多重スリット方式におい
て、Bを3μm,Hを9μm,D+E(ピッチ)を6μm,Cを4
8μm,スリット数を10とすると、マークの大きさは48μ
m×84μmとなる。この大きさは、現在の光ステッパー
の中では比較的大きい方に属する。しかしながら、X線
アライナーにおいては小さい方に属し、光ステッパーの
マークの大きさ100μm×100μmよりは小さいことか
ら、マークとしては許容される程度の大きさであると言
える。
(7)装置の構成が簡易であること。
第28図に示される装置構成から、検出系は極めて単純
である。基本的にはレーザ光源,マーク,受光センサー
の3つがあれば位置検出が可能である。このことは、パ
ターン計測で必要となる拡大光学系のレンズ系,ホログ
ラフィ法における光学部品,干渉方式における干渉計あ
るいは二重回折格子法(市松格子)における入射系のこ
った機構と比べると、いかにシンプルな構成であるかが
わかる。おそらく、これ以上シンプルな位置検出方式は
他に類例を見ない。
(8)検出速度が速い。
第28図に示される構成から、検出速度は受光センサー
の応答速度に依存する。受光センサーに光電子倍増管を
用いると、光電子倍増管単体での応答速度は1.0〜5.0ns
ecであり、極めて速い。実際は、光電子倍増管の出力が
入力され、増幅されるオペアンプの特性から決まり、一
般的にその応答性は数kHzから数100kHzである。この応
答性はマスクステージおよびウエハーステージに対して
必要十分な速度である。
(9)検出範囲が広い。
第30図のスリットモデルから、本方式における検出範
囲はスリット幅Cとすると2Cである。ここで、スリット
の幅を3μm(第1図におけるウエハー回折格子の幅B,
マスクスリットの幅Gに相当)とすると、検出範囲は6
μmとなる。
従って、この方式によるファインアライメントの前に
行なうコースアライメントにおいて、この6μmの範囲
に入れる必要がある。この6μmの範囲にコースアライ
メントすることは容易なことであり、例えば分解能の低
いN.A.0.1の低倍率の金属顕微鏡の対物レンズで十分検
出することが可能な精度であり、実用上問題なく使用で
きる範囲である。
(10)マスクとウエハーの平行度に依存しない。
この方式において、マスクとウエハーの平行度が変化
することは、第8図のスリットモデルにおいて、スリッ
トaに入射する光束が傾くことに相当する。この状態を
第33図に示す。即ち、入射光束は垂直に入射していた状
態からθだけ傾いたスリットに入射されている。このθ
の傾きにより誤差eが生じる。2つのスリットa,bの間
隔をδとすると、誤差eは e=δtanθ …(29) で表わされる。この式(29)で表わされる誤差eは、第
1図(B)においてウエハー回折格子2が傾くことであ
る。この状態を第34図に示す。第34図において、ウエハ
ーの傾きθによる反射角度は2倍される(2θ)ため上
記(29)式は、(30)式で表わされる。
e=δtan2θ …(30) 次に、ウエハー1とマスク3の平行度における許容値
を求め、実用上問題ないのかを検討すると、第34図にお
いてδ=40μm,e=0.01μmとすると、上記(29)式よ
ここで、マスク3とウエハー1のギャップを30mm離れ
た2つのギャップセンサーで検出したとすると、上記
(31)式からギャップセンサーに要求される精度ξは ξ=30mm×tan0.007゜ =0.003mm …(32) となり、センサーの精度は3.75μm以内でよいことがわ
かる。このギャップセンサーの精度3.5μmは、現状に
おいても全く問題のない精度である。
ちなみに、現在使用されている光ステッパーにおい
て、ギャップセンサーの精度は約0.5μmである。
以上の検討結果から、この方式がマスクとウエハーの
平行度に依存しないことがわかる。
(11)マークの形状が単純である。
第22図から、マスクマークとウエハーマークとも極め
て単純な形状、すなわち矩形であり、その製作に関して
は全く問題はない。
(12)X線露光光と干渉せずに露光中もマークの検出が
可能である。
この発明の方式は、斜方検出を前提として考案された
ものであり、第28図からもわかるように露光領域内に設
けたマスクとウエハー上のマークを露光中も検出できる
構成となっている。また、斜方検出を構成する部品もレ
ーザ入射用光ファイバーと受光センサーの2つを、受光
領域から遠く離して設置することができるため、周辺機
器との干渉問題も全くない。
以上、この発明の実施例を各項目別に評価した結果を
説明したが、第(2)項,第(4)項が問題となること
が明らかになった。
そこで、次にこの問題点を解決するための2つの手段
として、(ア)位相差検出,(イ)複波長照明について
説明する。
(ア)位相差検出 この目的は、第2項で述べたプロセスによる回折格子
形状変化の影響を受けないためである。
第1図(A),(B)に示すこの発明の原理によれ
ば、0.01μmの分解能は得られたが、ウエハー回折格子
の段差幅比(r)が変化すると、第31図に示すとおり位
置合せ点A,B,C(h/2)におけるマスクとウエハーの相対
位置が変化してしまう。このことは、常にプロセスにお
ける回折格子の形状変化を厳密に管理しないといけない
ことを意味するが、現状においてそのようなプロセス管
理はデバイスを製作する側からはとても許容できる条件
ではない。
そこで、プロセスによる格子幅Bが変化したとして
も、位置合せ点が全く変動しない方法を提案する。それ
は、位相差を利用して2つの回折光強度の差が零、つま
り両信号が等しくなる点を横切る点、即ち、差信号が零
となる位置で位置合せを行う方法である。この方法であ
ると、格子幅Bがいくら変化しても位置合せ点は全く変
動しない。
また、格子の相対変位に対して回折光の強度変化が最
大となる位置で位置決めを行うため、位置決め感度が最
大となる。
この位相差を利用する方法は、既に一般に応用されて
いる手法であり、X線露光装置におけるアライメント装
置としても次の文献において示されている。
[前記文献4,文献15および「M&E」1988年9月号「い
ま注目される精密位置決め用センサ」(文献35)参照] この位相差法を第1図(A),(B)に示すこの発明
の基本原理に応用した場合を第35図(A),(B)に示
す。ウエハー回折格子1の検出方向に対の回折格子2a,2
bをピッチHの間隔で配置する。これに対してマスクス
リット4a,4bも対で設けるが、このスリット4a,4bのピッ
チIをマスクスリットの幅Gに対して1/4だけ狭くして
I=H−2J(ただし、J=G/4)とすると、ウエハー1
上の対の回折格子2a,2bは互いにG/4だけ位相がずれてい
るので、一方の回折格子からマスクスリットを通過した
光が極大となるとき、他方の回折格子からマスクスリッ
トを通過した光が極小となり、マスクスリットとウエハ
ー回折格子の相対位置が図に示す関係になったとき、対
の回折光の強度差が零となる点はプロセスにより回折格
子の幅Bが変化しても全く変動しない。
このように構成された場合の位相差信号を第36図に示
す。横軸はマスクスリット4a,4bとウエハー回折格子2a,
2bの相対位置xを、縦軸は回折格子の強度差を示す。対
の回折格子2a,2bからの信号は、J(G/4)だけ位相差が
あるため、2つの回折光強度a,bをもつ信号が得られ
る。
ここで、信号a,bは、マスクスリット4a,4bの幅Gに対
して1/4の位相差を各々もっているため、各信号ピーク
は2J(J=G/4)だけ離れている。
ここで、2つの信号a,bの位相差、つまり差分信号
(a−b)を取ると、第37図に示すようにS字状曲線の
信号が得られる。このS字状曲線において、位置合せ点
は、前述したとおり差信号が零となる位置、即ち、ゼロ
クロス点0になる。
このゼロクロス点0は、対の回折光の強度変化が最大
となる点で、位置決め感度が最大となる点である。ま
た、このゼロクロス点0は、プロセスによってウエハー
回折格子の幅Bが変化しても、全く変化しない。このこ
とを第38図に示す。ただし、この図は、第31図の曲線と
同じく、位置信号を三角波にモデル化して示している。
図において、±Δdの変化は、ウエハー回折格子2a,2b
の幅Bがプロセスにより±Δdだけ変化したことに相当
する。第39図(A)に示す2つの信号a,bを見ると、ウ
エハー回折格子2a,2bの幅Bの変化±Δdにより、位置
合せ点(h/2)がずれている。
ところで、2つの信号a,bの位相差つまり差分(a−
b)を取ると、第38図(B)に示すようにS字状曲線の
信号が得られることになる。ここで、このS字状曲線に
おいて注目される点は、2つの信号a,bの±dの変化に
は全く影響を受けず、ただ1点のゼロクロス点0を持つ
ことである。また、このゼロクロス点0付近では、曲線
のもつ勾配が最も大きくなり、感度も最大となる。
以上の説明から、2つの信号の位相差をとることで、
プロセスによるウエハー回折格子の形状変化には全く影
響を受けなくできることが明らかになった。
ここで、再び第35図(A),(B)に戻り、この2つ
の位相差をもった回折光の検出方法について検討する。
即ち、2つの信号は回折格子2a,2bのピッチが同じであ
るため、同じ方向に2つの回折光が進み、互いに干渉し
て、1つの光束となってしまう。そこで、2つの信号の
差分を取るためには、この干渉により1つの光束となっ
てしまった2つの回折光を分離する必要がある。
その方法としては、入射するレーザ光をモータ駆動さ
せたスキャニングミラーに当て、2つの回折格子2a,2b
に交互に当てるようにして、マスクスリット4a,4bを通
過してくる回折光を上記スキャナー駆動信号に同期さ
せ、受光センサーで検出分離する方法が考えられるが、
装置が複雑で大型化し、モータなどの駆動部をもつため
好ましくない。(前掲文献4参照) そこで、対の回折格子2a,2bからの回折光を空間的に
分離するため、対の回折格子2a,2bのそれぞれのピッチ
を変えておく。これにより、対の回折格子2a,2bからの
回折光は回折角度が異なるため、回折光を空間的に完全
に分離することができ、2個の独立した受光センサーを
配置するだけで検出することが可能になる。
第39図(A),(B)にこの装置を示す。即ち、2つ
の回折格子2a,2bはピッチが異なるため、回折角度は
θ1の異なる角度で反射回折し、マスクスリット4
a,4bを通過する。従って、この2つの回折光が空間的に
分離される位置にそれぞれ受光センサーを配置すれば、
受光センサー信号の差分を取ることで、2つの回折光の
差分が容易に得られることになる。
第40図(A)に2つの受光センサーの出力を示す。ま
た、第40図(B)に2つの受光センサー出力の差分信号
を示す。
この方法によって、駆動部を全く持たずに位相差検出
が可能となる。この手法は次の文献でも採用されてい
る。(前掲文献15参照) 一方、第39図に示す位相差検出装置においては、入射
光の強度変動に対しても、その強度変化は、対の回折光
で同時に起るため、その強度変化は第38図(A),
(B)に示すスリットモデルと同じになる。
従って、これはプロセスによる形状変化と同様な理由
によりゼロクロス点0の位置は全く変動しないため、検
出精度には影響を与えることはない。次に、第39図に示
す装置で得られる回折光の強度を上げS/N比を高くする
ためにウエハー回折格子およびマスクスリット数を増や
した場合の上面図を第41図に示す。即ち、ウエハー回折
格子21,22,・・・,26およびマスクスリット41,42,・・
・,46をそれぞれ6列に増やした場合を示す。位相差を
つけるために、マスクスリット41,42,・・・,46のピッ
チを中央だけI(I=H−2J)に狭くしてある。残りの
ピッチはウエハー回折格子も含め全てHである。これに
よりウエハー回折格子は3つのピッチ(D+E),(K
+L),Hをもつ2次元回折格子となり、一方、多重スリ
ットは2つのピッチH,Jをもつ多重スリットとなる。こ
れから、2つの格子ピッチによる位相差検出において、
多重スリット化により位置検出に十分な強度が得られ、
S/N比の高い回折光強度が得られることが可能となる。
この多重スリットと回折格子の組み合せ方式により位
相検出が可能となり、プロセスによる回折格子の形状変
化の影響を全く受けないことがわかった。
しかしながら、この方法においては、対の回折格子か
らの反射回折率が一定である必要がある。この反射率が
変化する原因は、主にレジスト塗布むらである。ウエハ
ー上の対の格子にレジスト塗布むらが生じ、2つの回折
格子からの反射率が同一でなくなると、対の回折光強度
にアンバランスが生じて誤差の原因となってしまう。こ
れは前述した4番目の問題点である前記(2)のレジス
ト膜を含む薄膜の多層化による多重干渉の影響に含まれ
る内容となる。そこで、この問題を解決する方法を示
す。
(イ)複波長照明 回折光を利用した位置検出法においては、入射光源に
コヒーレントな光,即ちレーザ甲を使用しているためレ
ジスト膜などによる多重干渉の影響は必ず受けることに
なる。この影響を低減させるためには、 レジスト膜などの膜厚を均一するためにプロスセス
側で工夫を行う。
複波長照明により多重干渉反射強度を零に近ずけ
る。
の2つの対策が挙げられる。
上記,の対策の実例は前述しているが、本質的に
はの対策が理想的である。
ところで、これまでの説明中で引用してきたいわゆる
二重回折格子法において、複波長化を実現した例はこれ
までのところ見当らない。この理由は、原理的に複波長
化が不可能のためである。
一方、この発明の方式では、原理的にも複波長化が極
めて容易に適用することが可能である。
次に、その具体的に適用した例を説明する。
第42図に示す側面図において、波長λ1(λ
λ)の2つの照明光は、入射角度θ2で回折格子
2に照射される。そして、波長λの光は回折角度θ4,
波長λの光は回折角度θで回折される。このとき、
波長λ1の入射角度差をθ(θ−θ)とし、
ウエハー回折格子2のピッチをdとすると、各角度は sinθ=λ1/d …(33) sinθ=λ2/d …(34) θ=θ4 …(35) に表わされる。波長λの光をX線マスク3の法線Nに
対して角度θで、また、波長λの光を角度θでウ
エハー回折格子2(ピッチd)に入射させたとき、入射
角度差θ(=θ−θ)は、ウエハー回折格子2に
おける2つの波長λ1に対する反射回折角度(θ4,
θ)の差に等しくなるように設定されている。
従って、入射角度差θは、上記(33),(34)式よ
り次のように表わされる。
θ=sin-1(λ1/d)−sin-1(λ2/d) …(36) この入射角度差θにより2つの波長λ1の光を
ウエハー回折格子2に入射すると、ウエハー回折格子2
で反射回折した2つの波長の光による−1次回折光は同
じ角度θで進む。同じ角度θで反射回折した光は、
マスクスリット4を通過し、位置検出信号としてこの回
折光の進行方向に設置された受光センサーにより同時に
検出され、複波長照明による検出が可能となる。
以上の説明から分かるように、複波長照明は波長の異
なる光を上記(36)式で表わされる入射角度差で入射さ
せるだけで、この発明の方式に適用することが可能とな
り、その適用は極めて容易である。
また、入射させる波長の数は、2波長に限らず3波長
でも4波長でもまたそれ以上であっても何ら問題はな
い。そして、その場合の適用方法は、上記(36)式と同
じく入射角度差を設定するだけでよい。
次に、選択する波長に関して説明する。複波長化につ
いては、先行例がいくつかあり(前記文献12,13参
照)、ここではその文献を参考にして4波長照明による レジスト厚さ変動の影響を低減 パターン段差変動の影響を低減 について説明する。
まず、レジスト内部での多重干渉反射強度Irは次のよ
うに表わされる。
ただし、層厚h,屈折率n0,n1,n2は第43図に示す基板,
レジスト層,空気の屈折率である。
ここで、n0=4.75(Si),n1=1.64(レジスト),n2
1(空気)の値を代入し、分母を1と近似すると Ir≒0.291+0.232cosε …(38) となり、位相を近似的にεとしてよいことが分かる。
上記式(38)で、Irをcosεとして4つの波長λ1,
λ23の光で照明したときの多重干渉反射強度を
求めると であり、上記式(39),(40),(41),(42)におい
て基準波長をλ0102として両者の波長差Δλとす
ると λ=λ01+Δλ/2=λ+Δλ0/2+Δλ/2 …(43) λ=λ01−Δλ/2=λ+Δλ0/2−Δλ/2 …(44) λ=λ02+Δλ/2=λ−Δλ0/2+Δλ/2 …(45) λ=λ02−Δλ/2=λ−Δλ0/2+Δλ/2 …(46) となる。上記(43)〜(46)式を(39)〜(42)式に代
入すると、(λ1)および(λ3)による多重
干渉反射強度I1,I2は次のようになる。
上記(47),(48)式において、第2項のビート成分
が零になるΔλ=31.7nmと、第1項の位相差Δε=2π
とから、振幅が霊に近くなるΔλ=63nmを代入すると I1=cos12.310πh×cos0.392πh …(49) I2=cos13.878πh×cos0.392πh …(50) となり、レジスト厚さ1.2μm,基準入射光=0.5μmにお
いて、多重干渉反射光強度(I1+I2)が最も弱くなる条
件である。この(49),(50)式の条件を完全に満す波
長の光を射出するレーザはないが、次のものが比較的に
近い波長の光を射出する。
この4つのレーザからの光を用いた結果を次に示す。
レジスト厚さ変動の影響を低減 第44図に回折格子による1次回折光、第45図に多重干
渉光の場合を示す。第45図において、入射光強度I0,多
重干渉反射光強度IM,空気からレジストへの透過係数t,
レジストから空気への透過係数,回折効率係数μ,レ
ジストから空気への反射係数r,レジストからウエハーへ
の反射係数をr′とすると となる。上記(51),(52)式において、d=1〜4μ
mにおいて、レジスト膜厚変動の影響が25%に低減して
おり、第46図(A),(B)に単波長の光と4つの波長
の光による結果を示す。
また、4波長の光による照明は、パターン段差の変動
の影響の低減にも有効であり、第44図を参照して説明す
る。第44図において、入射角i,パターン段差h,パターン
長a,パターンピッチP,レジスト屈折率nr,照明光波長λ
として、a/P=0.5とすると、1次回折光強度IK となる。この式(53),(54)において、4波長の光に
よる照明によりパターン段差h=0.5〜2.5μmにおいて
パターン段差変動の影響が30%に低減されていること
を、単波長光照明と比較して第47(A),(B)図に示
す。
以上の説明から、この発明の方式において、第42図に
示す複波長照明化により、この方式において残されてい
た問題点である(4)レジスト膜を含む薄膜の多層化に
よる多重干渉の影響が解決されるため、レジスト厚さ
変動の影響を低減され、かつ、パターン段差変動の影
響も低減され、優れた位置検出装置となる。
次に、(A)2つのピッチをもつ多重スリットと3つ
のピッチをもって2次元回折格子を対向させずに配置し
て用いる(B)回折格子の回折光を利用する(C)斜入
射,斜方検出である(D)複波長照明である(E)位相
検出であるの5つの特徴を全てもつ実施例を説明する。
第48図は、2次元回折格子2をもつウエハー1と多重
スリット4をもつX線マスク3を波長λ123
の光を射出する4つのレーザ111,112,113,114と2の受
光センサー201,202を用いた検出系を示す。X線マスク
3には第41図に示す多重スリット41,42,43,44,45,46
もち、ウエハー1には、2次元回折格子21,22,23,24,
25,26が設けられている。また、位相差検出において、
位相差をもつ2つの回折光を空間的に分離するために上
記回折格子21〜26において、検出方向と直角方向の2つ
のピッチが用いられ、かつ、位相差を生じさせるために
多重スリットに中央だけ異なるもう1つのピッチが設定
されている。この多重スリット4と2次元回折格子2は
対向させずに配置し、入射光を斜方向より入射し、ウエ
ハー2次元回折格子2に直接入射させる。
ここで、入射する光の波長はλ123の複波
長の光であり、角波長の光の入射角度は第42図に示した
ようにウエハー回折格子2による反射回折角度を同じに
するために前記(36)式に従う角度だけ違った角度に設
定される。また、入射光は設定を簡単にするために、光
ファイバー入射方式が適当である。
ウエハー回折格子2で反射回折した−1次回折光は、
2つの格子ピッチにより2つの方向に進む。この2つの
方向に反射回折された光は、各々複波長の混合波である
が、多重スリットを通過することにより、位相が180゜
ずれた位置情報をもっている。この180゜の位相差をも
った−1次回折光を、光路上に設けた2つの独立した受
光センサー201,202で検出し、光電変換して電気信号
(a,b)に変換する。この2つの電気信号(a,b)は、18
0゜の位相差をもつため、作動アンプ21に入力して差分
を取ることにより、信号(a,b)の位相差信号(a−
b)が簡単に得られる。この位相差信号(a−b)は、
第40図(B)に示すS字状曲線となり、X線マスク3と
ウエハー1の位置合せの焦点は、上記S字状曲線におけ
るゼロクロス点0となる。
次に、この実例を第49図に示す。ウエハー1上に設け
る特殊回折格子2の寸法は ピッチ(D+E)=6μm ピッチ(K+L)=5μm ピッチH=10μm 格子幅B=4μm 多重スリット4は上記回折格子2の寸法に従い スリット幅G=4μm(=格子幅B) ピッチH=10μm(検出方向のピッチと同じ) 位相差J=G/4=1μm 位相差ピッチI=H−2J=8μm とする。
次に、レジスト膜厚を約1.2μmと仮定して4つの波
長を選択する。
そして、入射角および反射回度を決定する。まず、格
子ピッチ(D+E)=6μmに対する反射回折角度φ
=35と設定して、4つの波長の光の入射角度を求める。
上記(55)より λの入射角θ=28.89゜ 上記(56)式より λの入射角θ=29.19゜ 上記(57)式より λの入射角θ10=29.49゜ 上記(58)式より λの入射角θ11=29.82゜ 上記入射角度θ〜θ11より格子ピッチ(K+L)=
5μmにおける反射回折角度φを求める。ただし、こ
の反射回折格子φは、厳密には、ある一定の値でな
く、入射角度により異なるため、入射角度別にφを求
める。
入射角θ=24.17゜に対する反射回折角度φ 入射角θ=24.47゜に対する反射回折角度φ 入射角θ10=24.75゜に対する反射回折角度φ″は 入射角θ11=25.07゜に対する反射回折角度φ 上記(59)式より反射回折角度 φ=36.28゜ 上記(60)式より反射回折角度 φ′=36.21゜ 上記(61)式より反射回折角度 φ″=36.15゜ 上記(62)式より反射回折角度 φ=36.08゜ となる。従って、これらの平均値をとって反射回折角度
φとすると、 φ=36.18゜(±0.10゜) となる。
次に、多重スリットの長さおよび特殊回折格子の長さ
Cの決定を行なう。X線マスク3とウエハー1間のギャ
ップAをA=40μmと設定すると、上記のように決定し
た入射角度および反射回折角度から、入射角度は角度の
最も小さいθ=28.89゜,反射回折角度の小さいφ
=35゜より、多重スリット4と干渉しないで直接2次元
回折格子2に入射する条件を第50図に示すようになる。
ギャップAに対してθの入射角度で入射し、反射回
折角度φで反射することから、両光束がX線マスク3
上で交鎖しないようにするためには、ウエハー回折格子
2の長さCを(P+Q)とすればよい。従って、 となる。余裕をSとして、上記(63)式から引くと回折
格子長さCは となり、A=40μm,φ=35゜,θ=28.89゜,S−5
μmを代入し となる。
また、多重スリット4長さFについては 多重スリット長F≒C …(65) であるので、多重スリット長F=45.1μmとなり、格子
ピッチが各々6μm,5μmであること、および小数点を
切り捨てて回折格子長さC,スリット長さFは となる。
次に、多重スリット数の決定について説明する。多重
スリット数nは、受光センサーの感度,入射波長の強
度,ウエハー回折格子2の反射回折効率等により決定さ
れるが、基本的には実験により受光センサーからの出力
が0.01μm以下の検出感度をもつS/N比の高い信号とな
るスリット数を選択する。
ただし、他の方式やこの発明の方式が±2次回折光以
下の微弱な回折光は使用せず、光強度の高い−1次回折
を使用していることから、スリット数が約10位あれば0.
01μm以下の検出精度が得られることが予想される。
このとき、多重スリットおよび2次元回折格子の検出
方向の長さは、共に約10μm×(10−1)=90μmであ
る。
次に、入射位置Nおよび受光センサーのMについて説
明する。入射位置Nについては基本的には何ら制約条件
はない。しかしながら、実装を考えると、光ファイバー
端部で設置スペースが必要となることから、λ〜λ
までの光ファイバー端部である程度の間隔があることが
望ましい。入射角度は一番近接したところで0.3゜であ
ることから、位置Nにおける2つの光ファイバー間距離
を5mmとすると となる。上記(63)式より入射位置N=5/tan0.3=954m
mとなる。
また、受光センサーの位置Mについては、位相差をも
った2つの回折光を空間的に完全に分離した状態で検出
する必要がある。位置Mにおける2つの回折光の距離を
10mmとすると、2つの回折光のなす角度は1.18゜(=3
6.18゜−35゜)であることから となる、上記(67)式から検出位置Mは、M=10/tan1.
18゜=485mmとなる。
従って、第50図の場合、入射光ファイバは、X線マス
ク3から約1m離れた位置に配置し、受光センサーはX線
マスク3から約500cm以上離れた位置に配置すればよい
ことがわかる。以上の説明から、第49図に示す構成にお
いて実際の位置検出が可能となる。
なお、前記実施例においては、位置検出信号を−1次
回折光を使用するものを代表して説明したが、これは±
N次の回折光を利用できることは勿論である。
[発明の効果] 以上説明したとおり、この発明のスリットと回折格子
により相対位置検出装置は、例えばSOR(シンクロトロ
ン放射光)の強力なX線源を露光光源とするX線露光装
置において、約40μm離れて配置されたX線マスクとウ
エハーの相対位置を検出するもので、第1の物体にはス
リットを第2の物体には回折格子を設けただけの簡単な
構成ながら、 (1)マスクとウエハー間のギャップ変動に相対位置検
出精度が影響されない。
(2)プロセスにより回折格子形状変化の影響を受けな
い。
(3)マスク製作精度の影響を受けない。
(4)レジスト膜を含む薄膜の多層化による多重干渉の
影響を受けない。
(5)X線マスクとウエハー間の多重反射干渉の影響を
受けない。
(6)アライメントマークが充分小さい。
(7)装置構成が簡単である。
(8)検出速度が速い。
(9)検出範囲が広い。
(10)マスク,ウエハーの平行度に依存しない。
(11)マーク形状が単純である。
(12)X線露光光と干渉せず、露光中もマーク検出が可
能である。
の全てを満足した優れた検出装置である。
【図面の簡単な説明】
第1図(A),(B)は、この発明の原理を説明するた
めの上面図および側面図、 第2図は、1次元回折格子による位置検出を説明するめ
の線図、 第3図は、回折像の強度分布の方向を説明するための線
図、 第4図は、スリットによるフレネル回折像の強度分布を
説明するための斜視図、 第5図(A),(B),(C)は、フレネル回折像の強
度分布を示すグラフ、 第6図は、ウエハー上の回折格子の一部分を示す側断面
図、 第7図(A),(C)は、i線ステッパー,エキシマレ
ーザステッパの位置検出方法を説明するための線図で、
第7図(B),(D)はその検出波形図、 第8図は、スリットモデルを説明するための側断面図、 第9図、第8図に示すスリットモデルの光量分布図、 第10図は、マスクとウエハーからの反射光の干渉を説明
するための線図、 第11図は、干渉光の光量分布図、 第12図は、ギャップ検出信号と位置検出信号が分離され
ていることを検出するための実験装置を示す光路図、 第13図は、第12図に使用された回折格子の平面図、 第14図(A),(B),(C)は、モニター上に写し出
された回折像の様子を示す線図、 第15図は、オシロスコープの出力波形図、 第16図は、検出精度を確認するための装置を示す光路
図、 第17図は、マスクスリットとウエハー回折格子を示す上
面図、 第18図(A),(B)は、モニター上に写し出された回
折像の様子を示す線図、 第19図(A),(B)は、スリットと回折格子の位置関
係を示す上面図、 第20図(A),(B)は、オシロスコープの出力波形
図、 第21図は、モニター画面を示す正面図、 第22図(A),(B)は、本発明実施例を示す多重スリ
ットと2次元回折格子による相対位置検出装置の構成を
示す上面図および側面図、 第23図は、強度分布を確認するために実験装置に使用し
たウエハーグリッドの構成を示す上面図、 第24図は、実験装置の構成を示す側面図、 第25図は、モニターの様子を示す正面図、 第26図は、ビデオ信号の出力波形図、 第27図は、スリットモデルを説明するための側断面図、 第28図は、検出系の構成を示す側面図、 第29図は、−1次回折光の強度分布図、 第30図(A),(B),(C)は、スリットモデルと位
置変化を示す側面図、 第31図は、スリットモデルの透過光量変化を示すグラ
フ、 第32図(A),(C),(E)は、ウエハー回折格子上
のレジスト膜の塗布むらの様子を示し、第32図(B),
(D),(F)は第32図(A),(C),(E)の1次
回折光強度分布を示すグラフ、 第33図,第34図は、平行度が変化したときのスリットモ
デルの説明するための線図、 第35図(A),(B)は、本発明の実施例の変形例の位
置検出装置の構成を示す上面図および側面図、 第36図は、位相差信号の波形図、 第37図は、第36図の差分信号の波形図、 第38図(A),(B)は、位相差を利用したスリットモ
デルの透過光量変化を示すグラフ、 第39図(A),(B)は、本発明の実施例の位相差を利
用した位置検出装置の構成を示す上面図および側面図、 第40図(A),(B)は、検出出力の波形図およびその
差分信号の波形図、 第41図は、第39図の装置をさらに多重化した場合の例を
示す位置検出装置の上面図、 第42図は、複波長照明を適用した状態の位置検出装置の
側面図、 第43図は、多重干渉反射を説明するための側面図、 第44図,第45図は、回折格子による1次回折光および多
重干渉光を示す側面図、 第46図(A),(B)は、単波長光と複波長光照明にお
けるレジスト膜の影響を示すグラフ、 第47図(A),(B)は、単波長光と複波長光照明にお
けるパターン段差の影響を示すグラフ、 第48図は、位相検出および複波長光照明を適用した位置
検出装置の構成を示す側面図、 第49図は、位相差検出装置の実例の構成を示す上面図、 第50図は、多重スリットと回折格子の寸法関係を示す側
面図、 第51図は、従来の二重回折法を説明するためのマスク回
折格子とウエハー回折格子を示す斜視図、 第52図は、従来の倍ピッチ二重回折格子法を説明するた
めの側面図、 第53図は、従来の市松格子を用いた二重回折法を説明す
るための斜視図、 第54図は、従来の3つの回折格子を用いた光ヘテロダイ
ン測定法を説明するための側面図、 第55図は、回折格子の定義を説明するための回折格子一
部分の側面図、 第56図(A)〜(E)は、プロセスにより回折格子の形
状変化を示す線図、 第57図は、マスクの構成を示す側面図、 第58図は、マスクとウエハー間の多重反射干渉を説明す
るための側面図、 第59図は、円形フレネルゾーンプレート法における多重
反射干渉を説明するための側面図である。 1……ウエハー 2……1次元回折格子 3……マスク 4……スリット 5……入射光 6……零次反射光 6a……回折光

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】微小距離だけ離間した第1,第2の物体の離
    間方向に垂直な方向の位置を検出する位置検出装置にお
    いて、 第1の物体にはスリットを、第2の物体には回折格子を
    設け、スリットを通した斜方からの入射光で回折格子を
    照射し、該回折格子により生じるフレネル回折像を検出
    するため、第1の物体に対して第2の物体はフレネル領
    域にあり、上記スリットと上記回折格子を対向させない
    配置とし、上記回折格子からの回折光を上記スリットを
    通過した後に斜方検出するようにして、第1の物体と第
    2の物体の相対位置を検出するスリットと回折格子によ
    る相対位置検出装置。
  2. 【請求項2】第1の物体に設けるスリットは、二つのピ
    ッチHおよびIをもって検出方向に並設されていること
    を特徴とする請求項1記載のスリットと回折格子による
    相対位置検出装置。
  3. 【請求項3】第1の物体に設けるスリットは、第2の物
    体に設けられる2次元回折格子の位置検出方向のピッチ
    Hと同じピッチHで並列され、二つの格子ピッチが並ん
    でいる境目のピッチをスリット幅Gの1/2だけ短くある
    いは長く形成したことを特徴とする請求項1記載のスリ
    ットと回折格子による相対位置検出装置。
  4. 【請求項4】第2の物体に設ける回折格子は、検出方向
    と直交する方向に二つのピッチ(K+L)および(D+
    E)をもった1次元回折格子が検出方向に等ピッチHで
    並列して構成されることを特徴とする請求項1記載のス
    リットと回折格子による相対位置検出装置。
  5. 【請求項5】第2の物体に設ける回折格子は、検出方向
    と直交する方向に二つのピッチ(K+L)および(D+
    E)をもち、第1の物体に設けるスリットはその長さ方
    向に、第2の物体に対して位置をずらして配置されてい
    ることを特徴とする請求項1記載のスリットと回折格子
    による相対位置検出装置。
  6. 【請求項6】微小距離だけ離間した第1,第2の物体の離
    間方向に垂直な方向の位置を検出する位置検出装置にお
    いて、 第1の物体にはスリットを、第2の物体には回折格子を
    設け、スリットを通した斜方からの入射光で回折格子を
    照射し、該回折格子により生じるフレネル回折像を検出
    するため、第1の物体に対して第2の物体はフレネル領
    域にあり、 第1,第2の物体面における法線に対して、入射角度θ
    で可干渉光の複数波長の光を入射させるようにしたこと
    を特徴とするスリットと回折格子による相対位置検出方
    法。
  7. 【請求項7】複数波長の光の入射角度θは、第2の物
    体に設けられる回折格子の二つのピッチ(D+E),
    (K+L)において、反射回折角度が波長によらずほぼ
    同一になるように設定されていることを特徴とする請求
    項6記載のスリットと回折格子による相対位置検出方
    法。
  8. 【請求項8】第2の物体に設けられた回折格子により反
    射回折した複数の波長の異なる光によるN次回折光のみ
    が第1の物体の多重スリットを通過し、二つの方向に空
    間的に分離して検出されるようにした請求項1から請求
    項7記載のスリットと回折格子による相対位置検出装
    置。
JP2045810A 1990-02-28 1990-02-28 スリットと回折格子による相対位置検出装置 Expired - Fee Related JP2789487B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2045810A JP2789487B2 (ja) 1990-02-28 1990-02-28 スリットと回折格子による相対位置検出装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2045810A JP2789487B2 (ja) 1990-02-28 1990-02-28 スリットと回折格子による相対位置検出装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH03249503A JPH03249503A (ja) 1991-11-07
JP2789487B2 true JP2789487B2 (ja) 1998-08-20

Family

ID=12729612

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2045810A Expired - Fee Related JP2789487B2 (ja) 1990-02-28 1990-02-28 スリットと回折格子による相対位置検出装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2789487B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI607291B (zh) * 2013-04-17 2017-12-01 Orc Manufacturing Co Ltd Exposure device

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5831526A (ja) * 1981-08-19 1983-02-24 Nippon Kogaku Kk <Nikon> 焼付装置のアライメント装置
JPH02138801A (ja) * 1988-11-18 1990-05-28 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 位置合わせ方法および位置合わせ装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH03249503A (ja) 1991-11-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA1093297A (en) Plate aligning
JP4153304B2 (ja) オーバーレイの測定方法
US7880872B2 (en) Interferometric analysis method for the manufacture of nano-scale devices
JP4222926B2 (ja) デバイス検査
US5559601A (en) Mask and wafer diffraction grating alignment system wherein the diffracted light beams return substantially along an incident angle
JP4150256B2 (ja) 基準位置合わせマークに対する基板の位置合わせを測定する方法
US7046361B1 (en) Positioning two elements using an alignment target with a designed offset
JPS61501656A (ja) 重ねられた異なる格子を正確に位置合せさせるとともに間隙を測定する装置
US6649923B2 (en) Positional deviation detecting method and device manufacturing method using the same
US5200800A (en) Position detecting method and apparatus
US20060126058A1 (en) Interferometric analysis for the manufacture of nano-scale devices
KR100303109B1 (ko) 반도체장치의제조방법
EP0652487A1 (en) Rotational deviation detecting method and system using a periodic pattern
JP5111225B2 (ja) 計測装置、計測方法、露光装置及びデバイス製造方法
US4771180A (en) Exposure apparatus including an optical system for aligning a reticle and a wafer
US5160848A (en) Device for detecting the relative position between opposed first and second objects
US5291023A (en) Position detecting system utilizing a weight coefficient to determine a gravity center of light
US6605392B2 (en) X-ray mask structure, and X-ray exposure method and apparatus using the same
JP2789487B2 (ja) スリットと回折格子による相対位置検出装置
Nelson et al. Design and test of a through‐the‐mask alignment sensor for a vertical stage x‐ray aligner
JPH0590125A (ja) 位置合わせ装置
EP0329433A2 (en) Position detecting method and apparatus
JPH0269604A (ja) 位置合わせ方法
JPS60214531A (ja) 位置合わせ方法
JPS618606A (ja) 位置検知方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees