JP2784240B2 - アルミナを母体とする抗菌性組成物 - Google Patents

アルミナを母体とする抗菌性組成物

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【発明の詳細な説明】 従来技術 従来は無機系の抗菌剤としてアルミノ珪酸のアルカリ
金属やアルカリ土類金属塩を殺菌性金属で置換したもの
が知られていたが、本発明にかかわるようなアルミナを
母体とした抗菌性組成物は知られていなかった。また本
発明の組成物を用いる水性系の殺菌や本発明の抗菌性組
成物を用いるポリマー組成物も知られていなかった。
従来技術の問題点 従来知られていたアルミノ珪酸塩を母体とする抗菌性
組成物においては、それの全体、すなわち母体の内部に
も表面にも均一に殺菌性金属がイオン結合により存在し
ていた、抗菌組成物の抗菌〜殺菌作用は母体より解離し
た殺菌性金属イオンにもとづくものと考えられる。公知
のアルミノ珪酸塩の細孔径は必しも大きくないので解離
した殺菌金属イオンの拡散に時間を要して菌類との接触
が不充分となり、充分な抗菌〜殺菌効果を挙げられない
場合もあった。従って上記の抗菌剤の抗菌能をより高め
るためには、多量の殺菌金属を使用せねばならない。し
かし、多量の殺菌金属を含有する抗菌性組成物をポリマ
ーに添加した場合、ポリマー自身へ変色や着色を生じる
という問題があった。また上述の公知の抗菌性組成物の
成形体を用いて水性系の殺菌を行なう場合は、耐水性が
弱く、微粉化してしまう好ましくない問題があった。
発明が解決しようとする課題 本発明は上述の問題点を解決し、安定で、殺菌金属の
使用量が少なく、かつ強い抗菌力を有する新規な抗菌性
組成物およびそれの製造法の提供を目的とする。さら
に、かゝる抗菌性組成物を含む新規な抗菌性ポリマー組
成物の提供および抗菌性組成物を使用する水性系の抗菌
〜殺菌法をも併せて提供することを目的とする。
課題を解決するための手段 本発明者らはアルミナの表面(細孔やマクロ孔の表
面)に殺菌作用を有する金属イオンを含むアルミノ珪酸
塩の皮膜を設けることにより、上述の問題が解決できる
ことを見い出し、本発明を完成したものである。さらに
上記の抗菌性組成物を用いてそれが微粉化せずに水性系
の優れた抗菌〜殺菌が行へること、またこれをポリマー
に分散させることにより、優れた抗菌性ポリマー組成物
が得られることも本発明者らにより見い出された。
以下、本発明について詳述する。
アルミナ(Al2O3)はバイヤー法により、ボーキサイ
トを原料として水酸化アルミニウムを製造し、これを焼
成することにより製造される。アルミナの活性化法を変
えることにより、結晶形の異なるα−Al2O3,γ−Al2O3
やη−Al2O3らが存在することが知られている。これら
アルミナの中で、α−Al2O3は比較的活性が小さいが、
しかし安価であり、粉砕性、焼結性に優れているので各
種の耐火物、磁器、アルミナセメント、研摩材等に使用
されている。一方、γ−、η−形の活性アルミナは活性
が大であり、例えばγ−Al2O3は吸着力や活性度が大き
いために乾燥、吸着および触媒分野で広い用途が見い出
されている。市販されている活性アルミナの主成分であ
るAl2O3の含量は、製造業者により多少異なるが、主と
して95〜100%の範囲のものが多く、これに含まれる不
純物としてはFe2O3、SiO2、Na2O等が挙げられる。前記
不純物中のNa2Oは、通常0.5%以下である。市販の活性
アルミナとしては真比重約3.3(見掛比重約1.5)、細孔
容積0.3〜1.2cm3/g、平均細孔径20〜150Å、比表面積10
〜400m2/g(BET法による。以下本明細書において特に記
載のない場合は同様である。)の物性値を有するものが
多い。市販の中にはマクロ孔径が数千Å、例えば2000Å
のものもある。また市販の活性アルミナの形状としては
粉末,球状品,破砕品,顆粒品等が見られる。国内の活
性アルミナの製造〜販売業者としては、例えば水沢化学
工業株式会社(商品名Neobead−SA.D.P.MHB.C.GB).住
友化学工業株式会社(商品名:球状品−KHT.X5.KHA.KH
O.NKHD−HD.NKHD.NKHO.NKH1.NKH3;顆粒品−KGD.KGO;粉
末品−KCG.ガンマーA(γ−Al2O3);球状品−KH青)
等が挙げられる。
本発明で使用されるアルミナとしては好ましい物性値
を有する活性アルミナが望ましく、それの形状は任意で
あって、粉末状,粒子状または成型した形状何れでもよ
い。しかしながら後述の方法でアルミナの化学処理を実
施する場合を考慮すれば、細かい形状の活性アルミナが
反応速度の見地よりより好ましい。さらに、それの内部
は細孔やマクロ孔が無数に発達しており、これらの孔が
大きくて、さらに細孔容積や比表面積がより大きな多孔
質の活性アルミナが好適である。例えば本発明で使用す
るアルミナ素材としては細孔容積は大きなものが好まし
く、例えばそれの0.4〜1.2cm3/gの範囲は望ましい。さ
らにそれの細孔径はできるだけ大きいものが好ましく、
少くとも20A以上であることが望ましく、50A以上のもの
はより好ましい。さらにアルミナの比表面積について云
えば、少くとも80m2/gのものが好ましく、さらに100m2/
g以上のものはより好適である。
抗菌作用を有する金属イオンとしては、実質的に抗菌
性,殺菌性を有する金属イオンであればよく、その種類
は特に限定されるものではない。代表的なものとして、
銀,銅,亜鉛,水銀,錫,鉛,ビスマス,カドミウムお
よびクロムが挙げられ、これらの金属を単独または複合
させて使用することができる。
本発明において、アルミノ珪酸塩とは下記の一般式で
表現されるものをいう。
こゝにXおよびYは、それぞれ金属酸化物および二酸化
珪素の係数,Mはイオン交換可能な金属,nはMの原子価ま
たZは水の分子数を表わしている。上記のMは通常Li,N
a,Kのような1価金属であり、またはNH4 +でもよい。さ
らに、これを、例えばMg,Ca,Sr,Ba,Mn,Ni,CoまたはFeの
ような2価金属により部分置換または完全置換してもよ
い。またMは前述したような1〜2価金属に加えてさら
に多価金属が少量存在していても差支えない。本発明に
おいて、アルミナ母体の表面(細孔およびマクロ孔表
面)に形成させるアルミノ珪酸塩よりなる皮膜は結晶質
(ゼオライト)でも非晶質でもよく、また両者が併存し
ていてもよい。アルミノ珪酸塩よりなる皮膜の厚さおよ
び組成は、アルミナ原料物質の物性やそれの使用量、ア
ルカリ濃度、シリカ含有化合物の種類やそれらの添加
量、反応温度および反応時間等により調節することが可
能である。結晶質,非晶質または両者が共存するいづれ
のアルミノ珪酸塩の場合でも、これに好ましい量の殺菌
性金属の単独または複合させたものを保持させるために
は、アルミノ珪酸塩のイオン交換容量が大きいことが望
ましい、かゝる点を考慮すればSiO2/Al2O3モル比は、
1.3〜30の範囲が好ましい。代表的にはSiO2/Al2O3モル
比が1.4〜2.4のA型ゼオライト、上記比が2〜3のX型
ゼオライト、3〜6のY型ゼオライトやSiO2/Al2O3
ル比が1.4〜25の非晶質アルミノ珪酸塩または前述の結
晶質および非晶質のアルミノ珪酸塩混合物が使用され
る。
次に本発明にかゝる抗菌性組成物の調製法について説
明する。本発明にかゝる抗菌性組成物は、多孔質のアル
ミナ、好ましくは活性アルミナをアルカリ溶液とシリカ
含有液とで化学処理を行なう工程を経て得られる。アル
カリ溶液としては、例えばNaOH,KOH,LiOHのようなアル
カリ金属の水酸化物,Ca(OH)2のようなアルカリ土類金
属の水酸化物やNaOH−Na2CO3のような混合系のアルカリ
溶液が使用され、アルミナを含む水溶液相をアルカリ
性、好ましくは強アルカリ性に保持する処理が行われ
る。一方後者のシリカ含有液としては、例えばメタ珪酸
ナトリウム(Na2SiO3,Na2SiO3・9H2O),水ガラス(例
えばJIS−1〜3号品),コロイダルシリカ,シリカゲ
ル,シリカゾル,シリカハイドロゾルのようなシリカ含
有液が使用される。なほ前述したアルカリ溶液とシリカ
含有液によるアルミナの化学処理は、常温または加温下
で、バッチ法またはカーラム法により実施される。かゝ
る化学処理によりアルミナの表面即ち細孔やマクロ孔表
面に存在するAl2O3は反応して、イオン交換可能な金属
を含有するアルミノ珪酸塩の皮膜が、前記の孔の活性表
面に形成される。前述の化学処理を終了したアルミナは
バッチ法またはカーラム法で水洗されて固相に存在する
過剰のアルカリや未反応物質は除去される。次いで殺菌
性金属イオンを皮膜にイオン結合により保持させるため
のイオン交換操作が行われる。この場合、殺菌作用を有
する金属イオン、好ましくは銀,銅,亜鉛,水銀,錫,
鉛,ビスマス,カドミウムおよびクロムからなる群より
選ばれた金属イオンの単独または2種以上を含む塩類の
中性〜微酸性溶液を用いて処理される。前記液として
は、例えば、AgNO3,Cu(NO3)2,AgNO3−Zn(NO3)2のよう
な硝酸塩,ZnSO4,SnSO4,CuSO4−SnSO4のような硫酸
塩,AgClO4,Cu(ClO4)2,Zn(ClO4)2,Cd(ClO4)2のよう
な過塩素酸塩,ZnCl2,ZnCl2−CdCl2のような塩化物,Ag
−酢酸塩,Zn−酢酸塩,Cu−酒石酸塩,Cd−クエン酸塩の
ような有機酸塩の液が使用される。かゝる殺菌性を有す
る塩類溶液を用いて、殺菌金属の単独または複数以上を
アルミノ珪酸皮膜中のイオン交換可能な金属Mと、常温
または加熱下で、イオン交換させて、所定量の殺菌金属
をイオン結合により皮膜中に安定保持せしめる工程を実
施して本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物は調
製される。前述のイオン交換に際して使用される殺菌性
金属を含有する塩類溶液中には、他の無抗菌性の金属イ
オンが共存していても差支えない。皮膜中のイオン交換
可能な金属Mと殺菌性金属の置換率は殺菌金属を含有す
る塩類溶液の濃度や組成、イオン交換時の反応条件等に
より調節できる。アルミノ珪酸塩皮膜の調製条件および
殺菌性金属イオンのイオン交換条件を調節することによ
り殺菌金属の総量を、例えば0.002〜0.5ミリモル/100m2
(但し無水の抗菌性組成物の表面積100m2基準)に保持
することが可能である。イオン交換時の液性を前述のよ
うに調節することにより、アルミナの細孔やマクロ孔の
活性表面に形成された抗菌〜殺菌性のアルミノ珪酸皮膜
中の銀,銅,亜鉛等の殺菌性金属イオンの加水分解に起
因する生成物、例えば酸化物,塩基性塩等のような生成
物の発生により形成された抗菌皮膜が汚染されて不純と
なり、その結果抗菌性組成物の本来の抗菌〜殺菌能が低
下する傾向を防止することが可能である。上述の殺菌性
金属イオン含有液を用いる水溶液のイオン交換の代り
に、アルコール類,エステル類等の有機溶媒を用いて、
または溶媒〜水の混合溶媒系を用いてイオン交換を実施
してもよい。例えば加水分解を受けやすい殺菌性の金属
イオンSn2+を皮膜中のイオン交換可能な金属Mとのイオ
ン交換により置換する際に、メチルアルコール,エチル
アルコール等のアルコール系溶媒やアルコール−水系混
合溶媒を使用すればSnO,SnO2,塩基性錫化合物等の皮膜
への析出を防止することができるので、従って皮膜の殺
菌能を低下させる現象を防止することが可能である。次
に上記の化学処理を経たアルミナは液中に殺菌金属イ
オンが認められなくなるまで、水洗された後、100°〜1
10℃で乾燥されて本発明のアルミナを母体とした抗菌性
組成物が最終的に調製される。本組成物の用途により、
含水率をさらに低減する必要がある場合は減圧乾燥を実
施するか、または加熱温度をさらに高めることにより水
分を希望値までに除去すればよい。得られる抗菌性組成
物中の殺菌金属の総量は、細菌や真菌に対して好ましい
抗菌〜殺菌力を発揮したり、また防藻効果を挙げるため
にも、少くとも0.002ミリモル/100m2以上であることが
好ましく、より好ましくは0.005ミリモル/100m2以上
(無水の抗菌性組成物の表面積100m2基準)であり、通
常0.002〜0.5ミリモル/100m2の範囲であればよい。2種
以上の殺菌性金属を使用した場合は、その合計量が上記
の範囲にあることが好ましい。
なほ本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物の細
孔容積は少くとも0.4cm3/gであり、かつ少くとも80m2/g
の比表面積を有するように調製することが、菌類に対す
る殺菌速度を促進したり、また好ましい防藻効果を挙げ
るためにも必要である。
本発明はさらに上記抗菌性組成物とポリマーから主と
してなる抗菌性ポリマー組成物をも提供するものであ
り、以下これについて説明する。
本発明にかゝる抗菌性ポリマー組成物に使用されるポ
リマーとしては非ハロゲン化有機ポリマーおよびハロゲ
ン化有機ポリマーの両方が使用可能である。非ハロゲン
化有機ポリマーとは合成あるいは半合成の非ハロゲン化
有機ポリマーであって特に限定されるものではない。例
えばポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポ
リアミド,ポリエステル,ポリビニールアルコール,ポ
リカーボネート,ポリアセタール,ABS樹脂,アクリル樹
脂,フッ素樹脂,ポリウレタンエラストマー,ポリエス
テルエラストマー等の熱可塑性合成高分子,フエノール
樹脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエステル
樹脂,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂等の熱硬化性合成ポ
リマー,レーヨン,キュプラ,アセテート,トリアセテ
ート等の再生又は半合成ポリマー等が挙げられる。強力
な抗菌〜殺菌効果を必要とする場合には、例えばポリマ
ー組成物の表面積の大きい成型体例えば発泡体,ネッ
ト,繊維等の成型体に加工することが好ましい。かゝる
見地から好ましいのは有機ポリマーまたは繊維形成性の
ポリマーであって、例えばナイロン6,ナイロン66,ポリ
ビニールアルコール,ポリエチレンテレフタレート,ポ
リブチレンテレフタレート,ポリアクリロニトリル,ポ
リエチレン,ポリプロピレンおよびこれらの共重合体等
の合成ポリマー,レーヨン,キュプラ,アセテート,ト
リアセテート等の再生または半合成ポリマーが例示され
る。一方本発明で使用されるハロゲン化有機ポリマーも
特に限定されるものではないが、例えばポリ塩化ビニ
ル,ポリ塩化ビニリデン等が示される。
アルミナを母体とした抗菌性組成物のポリマーへの添
加混合の時期および方法は本発明においては特に限定さ
れるものではない。例えば原料モノマーに混合後に重合
する方法、反応中間体に混合後に重合する方法、重合終
了時のポリマーに混合する方法、ポリマーペレットと混
合または予め本抗菌性組成物を含有するポリマーバッチ
を試作しておき、後にこれを成形する方法、成形用ドー
プ例えば紡糸原液へ混合する方法等がある。本明細書に
おいては、これを総称して単に「ポリマーと混合または
添加混合する」と云う。使用するポリマーの物性、工程
上の特徴等を考慮して適節の方法を採用すればよいが、
一般の場合は、成形直前に混合する方法が望ましい。し
かしながらアルミナを母体とした抗菌性組成物の分散を
より好ましくするためにモノマーに混合する場合もあ
る。また本組成物をポリマーに添加する前に、予め乾燥
または熱処理を、既述のように実施すれば好適である。
本組成物の所要量をポリマーに添加混合する場合は対象
とするポリマーの特性に応じて雰囲気(空気等の酸化性
雰囲気またはN2,CO2等の不活性ガス雰囲気)、混合時
の温度や時間等を好ましい条件に保持すればよい。
アルミナを母体とした抗菌性組成物の割合は、ポリマ
ー組成物全量に対して0.005〜20重量%の範囲が好まし
い。前記の下限値より少ない範囲では、一般細菌や真菌
に対する抗菌〜殺菌力が不充分な場合が多く、また上限
値以上では既に抗菌〜殺菌力は飽和してほしい添加量を
増大させても抗菌〜殺菌効果は不変となる。さらに本組
成物の添加量があまりに多いとポリマー組成物の物性を
悪化するという問題が生じる場合もある。
次に本発明にかかる抗菌性ポリマー組成物に好適に用
いられる抗菌性組成物の粒子径等について述べる。その
粒子径については何ら制限を加えるものではないが、用
途によっては当然好ましい範囲がある。例えば10〜100
メッシュの大きさを有する抗菌性組成物の粒子はポリマ
ーの混合に使用可能であるが、さらにポリマーへより均
質な分散をさせるためには、さらに粒子径の細かい、例
えば200〜300メッシュの粒子またはより微細な数ミクロ
ン数十ミクロンの粒子を使用すればよい。抗菌性組成物
の粒径の調節は出発原料のアルミナの粒子径を予め選択
するか、または調製されたアルミナを母体とする抗菌性
組成物の微細化を、使用目的に応じて、粉砕機を選択し
て、実施すればよい。本発明の抗菌性ポリマー組成物が
厚みのある成形体の形状である場合、例えば各種の容
器,パイプ,粒状体あるいは太デニールの繊維等へ適用
する場合はアルミナを母体とする抗菌性組成物の粒子径
は例えば数十ミクロンあるいは数百ミクロン以上でもよ
く、一方細デニールの繊維やフイルムに成形する場合は
粒子径がより小さい方が望ましく、例えば衣料繊維の場
合は、6ミクロン以下に粒子径を保つことがより好まし
い。
本発明の抗菌性ポリマー組成物は、以下のような通常
用いられる他の成分を含有していても差支えない。例え
ば重合触媒、安定剤、耐候(光)剤、配合剤、抗酸化
剤、活性剤、つやけし剤、発泡剤、難燃剤、改質材、増
白剤、顔料(着色剤)、無機および有機フイラーおよび
各種の可塑剤、滑材等を必要により添加しても差支えな
い。シリカゲル,アルミナゲル,ゼオライトのような無
機系の吸湿剤やデンプン−アクリル酸塩のクラフト重合
体,カルボキメチルセルローズ架橋体のような吸水性樹
脂が抗菌性ポリマー組成物に含まれていても差支えな
い。また本ポリマー組成物中に液体や有機溶剤を含有さ
れていてもよい。また本発明の抗菌性ポリマー組成物を
成形体として利用する場合、それの形状や大きさは特に
限定されるものではない。成形体に対する抗菌力や殺菌
力の付与はポリマー全体に、また必要に応じてポリマー
に対して部分的に行ってもよい。本発明の抗菌性ポリマ
ー組成物が成形体にあるとき、それの抗菌力や殺菌力は
主として成形体の表面付近の抗菌性組成物の粒子に左右
されると考えられるので、例えば成形体を多層構造とし
てそれの外層を主として抗菌〜殺菌化することも考えら
れる。繊維の場合は、公知のコンジュゲート紡糸技術を
利用して芯−さや断面糸のさや成分に本発明の抗菌性ポ
リマー組成物を使用することも可能である。
さらに本発明はアルミナの表面に銀および亜鉛からな
る群より選ばれた少くとも1種の殺菌金属イオンを含む
アルミノ珪酸塩の皮膜を有することを特徴とする水性系
の抗菌性組成物を提供するものである。
本発明の水性系の抗菌性組成物は、公知の水性系用殺
菌剤の改良を目的として提案されたものであり、本発明
にかかる水性系の抗菌性組成物は、前述した抗菌性ゼオ
ライトに見られるような成型を特に必要とせず、それの
形状も使用目的に応じて、素材のアルミナの形状を選択
することにより、種々の大きさの粒状、球状其の他の形
状物に容易に調製することが可能である利点がある。ま
た本発明の水性系の抗菌性組成物は、機械的強度や耐水
性が、公知の抗菌性ゼオライトや非晶質の抗菌性アルミ
ノ珪酸塩の成型体より遥かに大であり、前者は水中で微
粉化が劣化されてくゝ長期の水中使用に耐えられる特性
を有している。さらに本組成物の細菌や真菌に対する抗
菌〜殺菌力は優れており、公知の抗菌性ゼオライトに比
較してより短時間に菌類を減少ないし死滅させる(後述
の実施例参照)。殺菌金属として銀のみを含有する水性
系の抗菌性組成物においては、それの総量は細菌や真菌
に対して好ましい抗菌〜殺菌力を発揮したり、また防藻
効果を挙げるために、無水の抗菌性組成物の表面積100m
2当り、少くとも0.002ミリモル、より好ましくは0.003
ミリモル以上存在することが望ましい。また殺菌金属と
して銀および亜鉛を複合させてなる水性系の抗菌性組成
物の場合は、無水の抗菌性組成物の表面積100m2当り、
銀の総量は少くとも0.0002ミリモル存在し、また亜鉛の
それは少くとも0.02ミリモル存在することが好ましい。
さらに亜鉛のみを含有する本発明の水性系の抗菌性組成
物にあっては、その中の亜鉛総量は、無水の抗菌性組成
物の表面積100m2当り、少くとも0.08ミリモル存在する
ことが好ましい。本発明の水性系の抗菌性組成物を用い
て水中で抗菌〜殺菌効果を長期間に亘って発揮させるた
めには、水質に応じて、前述の殺菌金属の含有量の下限
値以上に殺菌金属量を調整した本組成物の所要量を使用
すればよい。通常の水性系の抗菌〜殺菌に際しては、本
発明の抗菌性組成物中の殺菌金属の総量が、無水の抗菌
性組成物の表面積100m2当り、0.002〜0.5ミリモルの範
囲に存在する組成物を水質に応じて必要量添加して使用
すればよい。
また本発明の水性系用の抗菌性組成物の細孔容積は、
少くとも、0.4cm3/gであり、かつ比表面積は少くとも80
m2/gであることが、本組成物を用いて殺菌速度をより大
にして殺菌効果を好ましい状態で発揮する上で望まれ
る。
作用 本発明にかゝる抗菌性組成物および抗菌性ポリマー組
成物は以下のように作用する。
抗菌性組成物の母体として使用されるアルミナは多孔
質であり、それの有する細孔やマクロ孔の表面は極めて
活性であるという特徴を有する。そのために、アルミノ
珪酸塩皮膜の形成や殺菌性金属イオンを皮膜にイオン交
換により安定保持させるに際して、反応条件を好ましい
状態に保つことにより、前記の反応に関与する化学種や
金属イオンの孔内拡散が迅速に行われて化学反応がアル
ミナの表面で円滑かつ速やかに進行する。
本願のアルミナを母体とした抗菌性組成物の有する細
孔やマクロ孔の大きさは、公知のアルミノ珪酸塩系の抗
菌剤のそれらに比較してより大きいので、本組成物の解
離にもとづく殺菌性の金属イオンは孔内を拡散して容易
に菌類と接触しやすい状態になる。一方公知のアルミノ
珪酸塩を母体とする抗菌性組成物、例えば抗菌性ゼオラ
イトにおいては、それの細孔径が小さいので解離した殺
菌性の金属イオンの拡散に時間がかゝり、場合により菌
との接触が不可能になる場合もあった。従って多孔質の
抗菌性アルミノ珪酸塩粒子を用いて見かけの比表面積を
増大させても、実質的に殺菌性金属と菌類が接触しうる
面積はさして増大せず、菌の種類によっては、それの抗
菌性能も期待されるほど増大しなかった。つまり、殺菌
性の金属が母体の表面に存在していても、菌と接触でき
ないデッドスペース(dead space)が存在していたので
ある。
本発明にかゝる抗菌性組成物ではこのようなことはな
く母体の表面に存在する総ての殺菌性金属が菌類との接
触が可能であるので、極めて有効に作用する。
さらに本発明では、母体たる多孔質のアルミナを殺菌
性金属で置換されたアルミノ珪酸塩で被覆しているの
で、内部に存在し菌類との接触することのない、いわば
無駄な殺菌性金属の量は大巾に減少した。
以上の要因のために殺菌性金属の有効利用率、すなわ
ち使用した殺菌性金属に対する表面に存在する殺菌性金
属の割合が著しく向上して少ない使用量で優れた抗菌〜
殺菌能を得ることができる。
本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物をポリマ
ーに添加混合して抗菌性ポリマー組成物を調製した場
合、殺菌性金属の使用量や無抗菌性金属の含有量は少な
くてすむために、ポリマーの着色や変色を起す要因は著
しく軽減され、優れた物性を有する抗菌性ポリマー組成
物を得ることが可能になった。
本発明にかかる抗菌性組成物はさらに以下のような特
徴を有する。
1)本発明の抗菌性組成物は完全に無機成分より構成さ
れており、これに含有される殺菌性金属はイオン結合に
より、アルミナ母体に安定に保持されている。かゝる組
成物をポリマーに添加・混合して使用する際には、ポリ
マーよりの殺菌金属の溶出や剥離は殆んど見られない。
従って本抗菌性ポリマー組成物の殺菌効果は、有機系の
抗菌剤を含むポリマーに比較してより長期に亘って持続
される利点がある。勿論ポリマー中の本抗菌性組成物の
蒸発損失は皆無である。
2)本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物の毒性
は殆んど見られず、生体に対する安全性も高く、かつこ
れの取り扱いも容易である。
3)本発明で使用される抗菌性組成物は種々のポリマー
に対して添加・混合が容易な上に、均質な分散が行える
利点がある。
4)抗菌性組成物の構造は安定であり、耐熱・耐候
(光)性も非常に優れている。かゝる組成物を用いて抗
菌ポリマー組成物を調製時に、前者の存在がポリマー自
身の物性を劣化させたり、また耐熱・耐候性に悪影響を
与えることはない。
5)本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物の抗菌
スペクトルは広汎であり、多くの細菌や真菌類に対して
好ましい抗菌〜殺菌力を発揮する。さらに防藻剤として
の効果も期待される。
6)公知の抗菌性ゼオライトの調製に際しては、それの
物性を悪化させないように、出発原料のゼオライト中の
遊離アルカリ対策が重要である。一方本願のアルミナを
母体とした抗菌性組成物の場合はアルカリ対策は特に問
題なく、最終的にアルカリフリーの抗菌性組成物が得ら
れる利点がある。
7)本発明で使用される抗菌性組成物はアルミナを母体
としているので、ポリマーに添加・混合して使用される
際に抗菌〜殺菌効果のみならず、アルミナ本来の特性
(例えば活性アルミナによる乾燥や吸着)も併せて発揮
される利点がある。
8)本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物は、ワ
ックス,塗料,顔料,紙,ゴム等の抗菌〜殺菌化目的に
使用可能である。さらに各種のコーテイング剤,接着剤
等の抗菌〜殺菌化、目地材、壁材、タイル等の建築材料
の抗菌化や水性系の殺菌目的で本剤の利用が期待され
る。
9)本発明によれば、本発明の抗菌性組成物を用いてポ
リマーの部分的または全体の抗菌〜殺菌化が可能であ
る。またかゝる抗菌性ポリマー組成物を用いて、これが
接触する雰囲気(気相,液相)の抗菌〜殺菌にも効果を
発揮する。
10)本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物および
これを添加・混合して得られる抗菌性ポリマー組成物は
抗菌は勿論のこと脱臭,除湿,鮮度保持等を必要とする
分野へも利用できる。
11)本発明を利用して、各種の非ハロゲン化ポリマーに
抗菌〜殺菌性の付与が可能である。本発明にかかる組成
物を用いて光ファイバー用の被覆材の抗菌化も可能であ
る。
12)本発明の水性系用の抗菌性組成物の耐水性,耐摩耗
性は極めて大であり、水中使用に際して本組成物の破損
や劣化は殆んど見られず、また微粉化現象も殆んど起こ
らない。
13)本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物を殺菌
目的で水中で使用する際には、組成物中の殺菌金属の利
用効率は極めて大である(公知の抗菌性ゼオライトに比
較して、本組成物の利用効率は高い)。
14)本発明のアルミナを母体とした水性系の抗菌性組成
物は一般細菌や真菌に対して効果を発揮するばかりでな
く、防藻剤としての効果も期待される。
次に実施例にもとづいて本発明をさらに詳細に説明す
るが、これは例示にすぎず、本発明の範囲はこれにより
何ら影響を受けるものではない。
実施例−1 本例はアルミナを母体とし、殺菌性金属として銀を含
む本発明の抗菌性組成物の調製に関するものである。住
友化学工業(株)の活性アルミナ破砕品NKHD−C〔比表
面積340m2/g,細孔容積0.65m3/g,粒子径10〜32メッシ
ュ;主な成分(Al2O3=99.7%,Na2O=0.27%,SiO2
0.3%〕約1.3Kgに対して脱塩水2.5lが添加され、得られ
た混合液は550〜600rpmで約30分間攪拌された。上記混
合液に対して攪拌下に1NNaOH溶液が徐々に滴下されて、
水溶液相はpH11以上の強アルカリ性に保持された。前記
のスラリー混合液に対してメタ珪酸ナトリウム(Na2SiO
3・9H2O)溶液(約0.3M/l Na2SiO3)約2.5lが加えられ
た後、得られた混合スラリー液は加温されて65°±2℃
に保持され、約10時間に亘り550〜600rpmで攪拌され
た。反応終了後、過され、次いで固相は水洗されて過
剰のアルカリや未反応の珪酸ナトリウム等は除去され
た。この場合水洗時の液のpHは8付近に保たれた。上
記水洗済みの固相に対して、脱塩水約1が添加され、
さらに約0.6MAgNO3含有水溶液が添加され、得られた混
合液のpHは3.9に調整された後、20°〜24℃の液温で、
約4時間に亘り550〜600rpmで連続攪拌され、イオン交
換が行われた。イオン交換終了後、固相は過され、次
いで水洗されて固相に存在する過剰の銀イオンは除去さ
れた。水洗品は100°〜110℃で乾燥されて、本発明のア
ルミナを母体として、殺菌金属として銀を含有する抗菌
性組成物が調製された。
実施例−1で調製された本発明の抗菌性組成物の比表
面積は262m2/g(BETのN2ガス吸着法による測定値)であ
り、また細孔容積は0.61cm3/gであり、さらに銀の定量
値は4.2%(無水基準)であった。本実施例で得られた
抗菌性組成物(無水基準)の表面積100m2当りの銀量は
0.15ミリモルであった。
実施例−2 本例はアルミナを母体とし、殺菌性金属として銀およ
び銅を複合させた本発明の抗菌性組成物の調製例に関す
るものである。住友化学工業(株)の活性アルミナ顆粒
品KGD〔比表面積270m2/g,細孔容積0.67cm3/g,粒子径14
〜42メッシュ;主な成分(Al2O3=99.7%,Na2O=0.26
%,SiO2=0.03%〕約1.4Kgに対して脱塩水2.5lが添加
された。上記の混合液は550〜600rpmで約1時間攪拌さ
れた後、1NNaOH溶液が徐々に加えられて水溶液相はpH1
0.5以上の強アルカリ性に保持された。次に前記のスラ
リー混合液に対して水ガラス(珪酸ナトリウムJIS−3
号品:Na2O=9.5%,SiO2=29%,比重=1.4)約170gを
2lの水に溶解させて液中の不純の固形分を過した液が
添加された後、スラリー混合液は55°±2℃に保持され
て約11時間に亘り550〜600rpmで攪拌された。反応終了
後過されて、得られた固相は温水洗浄されて過剰のア
ルカリや未反応の珪酸ナトリウムが除去された。この場
合、水洗終了時のpHは8〜9に保持された。前記の水洗
済み固相に対して、約1の水が添加され、次いでAgNO
3−Cu(NO3)2混合液〔AgNO3およびCu(NO3)2として、それ
ぞれ0.59Mおよび0.21Mを含有する水溶液;pH=3.7〕が添
加された。得られ混合液のpHは3.8に調整された後、混
合液は加温されて55°±2℃に保持され、約15時間に亘
り550〜600rpmにて連続攪拌された。上記のイオン交換
を終了後、過が行われ、次いで固相は温水洗浄されて
固相に存在する過剰の銀および銅イオンは除去された。
引続き水洗品は100°〜110℃で乾燥されて、本発明のア
ルミナを母体とし、殺菌性金属として銀および銅を含有
する抗菌性組成物が調製された。
本例で試作された抗菌性組成物の比表面積および細孔
容積はそれぞれ203m2/g(BET法のN2吸着による測定値)
および0.63cm3/gであった。また本組成物中の銀および
銅の定量値はそれぞれ、3.04%および0.77%(何れも無
水基準)であった。本実施例で得られた抗菌性組成物
(無水基準)の表面積100m2当りの銀および銅含量はそ
れぞれ0.14ミリモルおよび0.06ミリモルであった。
実施例−3 本例はアルミナを母体とし、殺菌性金属として銅を含
有する本発明の抗菌性組成物の調製例に関するものであ
る。住友化学工業(株)の活性アルミナ球状品NKHD〔比
表面積340m2/g,細孔容積0.65cm3/g,粒子径2〜4mm;主な
成分(Al2O3=99.7%,Na2O=0.27%,SiO2=0.03
%)〕約0.9Kgに対して脱塩水1.9lが添加され、混合液
は550〜600rpmで30分間攪拌された。上記の混合液に対
して1NNaOHが徐々に滴下され、水溶液相はpH10.5以上の
強アルカリ性に保持された。これに対して、メタ珪酸ナ
トリウム(Na2SiO3;9H2O)溶液(約0.34Mole/l)2.6l
が加えられた後、得られた混合液は加温されて75°±2
℃に保持され、約8時間に亘り550〜600rpmで攪拌され
た。上記の処理を終了後、固相は内径50mmのジャケット
付イオン交換塔に充填された。ジャケットの内部には温
水を循環させることにより交換塔の温度は60°±2℃に
保持された。次いでイオン交換塔の底部より温水が注入
されて逆洗が行われ床の均一充填が行われた。引続き、
温水(約63℃)がイオン交換塔の上部より、流速5〜6m
l/minで注入され、床の洗浄が行われて過剰のアルカリ
や未反応の珪酸ナトリウム等が除去された。この場合の
温水洗浄はカーラム底部よりの流出液のpHが8付近に達
するまで実施された。引続き充填床は硝酸第2銅溶液
(60°±2℃)の過剰を用いて、流速3〜4ml/minで処
理してイオン交換が行われた(アルミナの細孔内に形成
されたアルミノ珪酸塩皮膜の有する全イオン交換容量の
約2.5倍に相当するCu(NO3)2溶液(pH=4.1)使用)。上
記のイオン交換終了後、引続き床は温水(60°±2℃)
を用いて、流速5〜6ml/minで処理されて過剰の銅イオ
ンが除去された。次いで内容物はカーラムより取り出さ
れて100°〜110℃で乾燥されて本発明のアルミナを母体
とし、殺菌性金属として銅を含有する抗菌性組成物が調
製された。
本例で調製された抗菌性組成物の比表面積は242m2/g
(BETのN2ガス吸着法による測定値)であり、また細孔
容積は0.61cm3/gであった。さらに本組成物(無水基
準)中の銅定量値は4.92%であった。本例で得られた抗
菌性組成物(無水基準)の表面積100m2当りの銅量は0.3
2ミリモルであった。
次に本発明のアルミナを母体とした抗菌性組成物の抗
菌力試験法について述べる。
阻止帯の形成試験 下記の方法により阻止帯の形成試験が実施された。
被検物質(実施例−1および2で試作された抗菌性組
成物の乾燥品)を100mg/mlの濃度になるように懸濁し、
これをディスクにしみこませた。
培地は細菌についてMueller Hinton培地、真菌につい
てはサブロー寒天培地を使用した。
被検菌は生理食塩水に108個/mlになるよう浮遊させ、
培地に0.1mlコンラージ棒で分散させた。
被検ディスクをその上にはりつけた 判定−細菌類は37℃にて18時間経過後に阻止帯の形成
の有無を観察し、一方真菌類については、30℃で1週間
経過後に阻止帯の形成の有無を観察した。
試験結果を表−4に示した。実施例−1(殺菌性金属
として銀含有)および実施例−2(殺菌性金属として銀
および銅含有)で試作された本発明の抗菌性組成物はEs
cherichia coli,Staphy−lococcus aureusやPseudomona
s aeruginosaの細菌に対して、またAspergillus flavus
のような真菌に対して抗菌力が認められ、何れの場合も
阻止帯の形成が認められた。表−4に記載されたアルミ
ナは実施例−2の抗菌性組成物の調製に際して出発原料
として用いられたアルミナであるが、これは無抗菌性で
あり、表示したように阻止帯の形成は認められなかっ
た。
死滅率の測定 Aspergillus flavusの胞子懸濁液(105個/ml)1mlを
被検物質(実施例−1,2および3で得られた抗菌性組成
物の乾燥品の微粉末)懸濁液(500mg/ml)9mlの中へ注
入混釈し、得られた懸濁液を30℃で24時間作用させた。
その0.1mlをサブロー寒天培地に分散させ、30℃にて48
時間保持してから生存個数を測定して死滅率を求めた。
なほ上記の被検物質の懸濁液の調製に先行して、実施例
1〜3で得られた抗菌性組成物はさらに微細化されて微
粉末とされた。
死滅率の測定結果を表−5に記載したが、実施例−1
および2の抗菌性組成物使用時は、Aspergillus flavus
に対して死滅率は100%であり優れた殺菌力を示してい
る。一方実施例−3の抗菌性組成物使用時の上記の真菌
に対する死滅率は98%であり効果を発揮している。
実施例4〜8および比較例における抗菌力の試験法 実施例4〜8および比較例に記載された被検体につい
ては下記の方法により抗菌力試験が実施されて性能評価
がなされた。被検体が成型されてフイルム状またはシー
ト状にある場合はそれの抗菌力試験は噴霧法(スプレー
法)により一方被検体が繊維状(モノフィラメント)に
ある場合はシエークフラスコ法(繊維製品衛生加工協議
会の抗菌力の試験法)により抗菌力が試験された。
(a)細菌の菌液の調製−普通寒天培地で37℃にて18時
間培養した試験体をリン酸緩衝液 に浮遊させて108cells/mlの懸濁液を作成し、適時これ
を希釈して試験に供した。
(b)真菌の菌液の調製−ポテトデキストロース寒天斜
面培地で、25℃にて7日間培養した試験菌の分生子を滅
菌0.05%ポリソルベート80を含む生理食塩水に浮遊させ
て107cells/ml懸濁液を調製し、適時これを希釈して試
験に供した。
(c)噴霧法による抗菌力試験−アルコール綿で洗浄し
た試験片(形状、50×50mm;厚み約1.5mm但しフイルムの
場合の25μm)の表面に菌液を一定量噴霧した後、35℃
の温度で所定時間保存した。測定に際しては試験片上の
菌を洗い出し、この洗い出した液について菌数測定が実
施された。
(d)シエークフラスコ法による抗菌力試験−試験片
(モノフィラメント)1gをリン酸緩衝液70ml入った200m
l容量の三角フラスコに入れ、これに試験菌懸濁液を104
cells/mlになるように加えた後、この三角フラスコを25
°±5℃で振とうし、経時的に生菌数を測定した。
(e)使用菌株−Staphylococcus aureus IFO−12732;E
scherichia coli IFO−12734;Aspergillus niger IFO−
31125 (f)培地(菌数測定用の培地) 細菌:Mueller Hinton 2(BBL) 真菌:Sabouraud Dextrose Agar(BBL) 実施例−4 本実施例は殺菌金属として銀を保持した抗菌性組成物
を含有するポリ塩化ビニリデン(PVDC)成型体の試作例
とそれの抗菌力評価に関するものである。前述の実施例
−1で試作された本発明の抗菌性組成物の乾燥品〔Ag=
0.15ミリモル/100m2(無水の抗菌性組成物100m2
準);比表面積262m2/g(BETのN2吸着法による測定
値);細孔容積0.61cm3/g〕は粉砕機を用いて平均粒子
径(以下Davと略記する)9μmに微細化された後、約2
00℃にて減圧加熱されて、含水率は1.5%以下に保持さ
れた。上記の微細粉末はPVDCに添加されて、前者の含有
量が2.0%および3.0%になるように保持されてから混合
された。次いで混合物は約185℃に昇温された後、同温
度でさらに混合され均質化された。引続き混合物は約20
Kg/m2Gで加圧成型されて約100×100mm(厚さ約1.5mm)
の形状に成型された。成型体は切断されて約50×50mm
(厚さ約1.5mm)の小試験片(PVDC−1d2)に調製され
た。なほ比較目的で、抗菌性組成物を含有しないPVDC成
型体(約100×100mm;厚さ1.5mm)が前記に準じて試作さ
れ、これはさらに切断されて小試験片(PVDC−BL:約50
×50mm;厚さ1.5mm)とされ試験に供された。
本例で試作された試験片を用いて噴霧法による抗菌力
試験が実施され、表−6記載の結果が得られた。抗菌性
組成物として2.0%および3.0%含有するPVDCポリマー 組成物は、PVDC−1およびPVDC−2検体に見られるよ
うに、Escherichia coliに対して優れた殺菌力を示して
おり、両検体使用時は6時間の経過時点で、菌数は0で
あり、完全に死滅している。一方、空試験用のPVDC−BL
は、表記のように、抗菌力を全く示していない。次に真
菌のAspergillus nigerを用いた試験において、PVDC−
2検体は6時間の経過時点で、検体1枚当りの菌数は4.
1×10個に減少しており、これは死滅率として99.99%以
上に相当しており、さらに12時間の経過では100%死滅
している。一方空試験用の検体PVDC−BLは全く抗菌力が
見られない。上述の抗菌力試験よりも、本発明の抗菌性
ポリマー組成物は優れた抗菌〜殺菌力を有することは明
かである。
実施例−5 本実施例は殺菌金属として銀を保持した抗菌性組成物
を含有するポリ塩化ビニル(PVC)成型体の試作例とそ
れの抗菌力評価に関するものである。前述の実施例−1
で試作された本発明の抗菌性組成物の乾燥品〔Ag=0.15
ミリモル/100m2(無水の抗菌性組成物100m2基準);比
表面積262m2/g(BETのN2吸着法による測定値);細孔容
積0.61cm3/g〕は粉砂機を用いてDav=9μmに微細化さ
れた後、約200℃にて減圧加熱されて含水率は1.5%以下
に保持された。上記の微細粉末はPVCに添加され、最終
的にPVCシートが調製された。即ちPVC〔チッソ株式会
社:ニポリットSL(汎用グレード;重合度1000)〕100
部に対して可塑剤DOP40部が加えられ、さらに安定剤,
ゲル化促進剤が少量加えられた後、前述の抗菌性組成物
の微粉末が混合物中で2.4%および3.3%になるように添
加された。次いで該混合物は約150℃に加熱され、同温
度に保持して、ミキシングロールを用いて錬り込み(Kn
eading)が行われ混合物は均質化された。引続き混合物
は成型されて約1.5mmのシート状にされた。
上記のPVC成型体は切断され、抗菌試験用のPVC−1d2
試験片(約50×50mm;厚さ1.5mm)に調製された。これを
使用して噴霧法による抗菌力の評価試験が実施された。
なほ比較目的で抗菌性組成物を含有しない空試験用のPV
Cシートが、前述した抗菌性PVCシートの試作に準じて調
製され、これは切断されてPVC−BL小試験片(約50×50m
m;厚さ1.5mm)とされ、試験に供された。
抗菌力に関する試験結果を表−7に示した。本発明の
銀を含有する抗菌性組成物を2.4%(PVC−1)および3.
3%(PVC−2)含有する検体使用時は、Staphylococcus
aureusは5時間の経過で完全に死滅していることが認
められた。一方、空試験用のPVC−BL検体は、上記の菌
に対して全く抗菌力を示さない。以上の抗菌力試験より
も、本発明の抗菌性組成物を含有してなるPVCポリマー
組成物は顕著な殺菌力を示すことは明かである。
実施例−6 本実施例は殺菌金属として銀および銅を複合させてな
る抗菌性組成物を含有するPp(ポリプロピレン)フィル
ムの試作例に関するものである。
実施例−2で得られた殺菌金属として銀および銅を含
有してなる抗菌性組成物の乾燥品〔Ag=0.14ミリモル/1
00m2,Cu=0.06ミリモル/100m2(無水の抗菌性組成物100
m2基準);比表面積203m2/g(BETのN2吸着法による測定
値);細孔容積0.63cm3/g〕は粉砕機を用いてDav=8μ
mに微細化された後、約200℃で減圧加熱されて含水率
は1.5%以下に調整された。前記の処理を経た抗菌性組
成物の微粉末はPP〔チッソ(株)A4141〕と混合され、
混合物中の前者の含有量2.0%および3.0%になるように
保持された。次いで混合物はシリンダー温度を約210
℃、ダイス出口のそれを約220℃に保持し、またスクリ
ューの回転数を25rpmに保って、インフレーション成型
法により、厚さ25μmのフィルムに成型された。このPP
フイルムは切断されて小試験片(PP−1&PP−2:約50×
50mm;厚さ25μm)とされこれを用いて抗菌力試験が行
われた。なほ比較目的で抗菌性組成物を含有しない空試
験用のPPフイルム(厚さ25μm)が、前記に準じて試作
された。これは切断されて小試験片PP−BL(約50×50m
m;厚さ25μm)とされ、これを用いて抗菌力の評価試験
が行われた。
抗菌力の試験結果を表−8に示したが抗菌性組成物を
2.0%(PP−1)および3.0%(PP−2)含有するフイル
ム検体使用時は、10時間の経過時点でStaphylococcus a
ureusの菌数は0であり、これらの検体は優れた殺菌力
を示すことが認められた。一方、空試験用のPP−BLフイ
ルム検体は、前記の細菌に対して、全く抗菌力を示さな
い。以上の抗菌力試験の結果よりも、本発明の抗菌性組
成物を含有してなるPPポリマー組成物(フイルム)は顕
著な殺菌力を示すことは明かである。
実施例−7 本実施例は殺菌金属として銀および銅を複合させてな
る抗菌性組成物を含有するHDPE(高密度ポリエチレン)
モノフィラメント(繊維状)の試作例に関するものであ
る。HDPEとしてはシヨウレックスF5012M(MI.1.2)を用
い、また抗菌性組成物としては実施例−2で得られた殺
菌金属として銀および銅を含む抗菌性組成物の乾燥品
〔Ag=0.14ミリモル/100m2,Cu=0.06ミリモル/100m
2(無水の抗菌性組成物100m2基準);表面積203m2/g(B
ETのN2吸着法による測定値);細孔容積0.63cm3/g〕は
粉砕機を用いてDav=8μmに微細化された後、約200℃
で減圧加熱されて含水率は1.5%以下に調整された。前
記の処理を経た抗菌性組成物の微粉末はHDPEに添加され
て、得られた混合物中の前者の含有量は2.5%および3.4
%(無水基準)になるように調整された。該混合物は押
出成型(成型条件:温度約220℃,圧力約100Kg/cm2G,
滞留時間10〜12分,スクリュー20rpm,L/D25(押出機
のスクリューの長さ(L)と直径(D)の比)されて抗
菌性を有するポリマー組成物(HDPEモノフィラメント)
が試作された。上記のモノフィラメントは延伸されて約
400デニールのモノフィラメント(HDPE−1&HDPE−
2)とされた。
得られたモノフィラメント(HDPE−1&HDPE−2)の
物性は満足すべきものであり、充分の強度を有するもの
が得られた。前記のモノフィラメント1gを使用して、前
述のシエークフラスコ法により抗菌力測定が行われた。
抗菌力の試験結果を表−9に示したが、抗菌性組成物
を2.5%(HDPE−1)および3.4%(HDPE−2)含有する
モノフィラメント検体使用時は、細菌Escherichia coli
は10時間の経過時点で何れの検体の場合もそれの菌数は
0であり、これらの検体は優れた殺菌力を有することが
認められた。一方空試験用のHDPE−BL(抗菌性組成物無
添加)モノフィラメント検体は、前記の細菌に対して、
抗菌力を全く示さなかった。次に抗菌性組成物3.4%を
含有するHDPE−2モノフィラメント検体使用時は、10時
間の経過時点でAspergillus nigerの菌数は1.1×10個/m
lであり、これは死滅率として99.9%に相当する。さら
に24時間の経過では真菌は完全に死滅している。一方空
試験用のHDPE−BLモノフィラメントは、前記の菌に対し
て抗菌力を全く示さない。上述の抗菌力試験よりも本発
明の抗菌性組成物を含有するHDPEモノフィラメントは優
れた殺菌力を保有していることは明かである。
実施例−8 本実施例は殺菌金属として銀を保持させた抗菌性組成
物を含有するPS(ポリスチレン)の成型体の試作例とそ
れの抗菌力試験に関するものである。
前述の実施例−1で得られた殺菌金属として銀を含む
抗菌性組成物の乾燥品〔Ag=0.15ミリモル/100m2(無水
の抗菌性組成物100m2基準);表面積262m2/g(BETのN2
吸着法による測定値);細孔容積0.61cm3/g〕は粉砕機
を用いてDau=9μmに微細化された後、約200℃で減圧
加熱されて、含水率は1.5%に保持された。上記の微細
な抗菌性組成物はPSに添加されて厚さ約1.5mmのPS成型
体にされた。即ち、前記の処理をした抗菌性組成物の微
粉体はPS(デンカスチロールGD−1−301)に添加さ
れ、得られた混合物中の前者の含有量は0.90%になるよ
うに保持された。次いで前記の混合物は約170℃に昇温
され、同温度で、ニーダー(kneader)を用いて熔融混
合された後、熔融物は押出成型機を用いて成型され厚さ
約1.5mmの成型体にされた。成型体は切断されて抗菌試
験用の小試験片PS−1(約50×50mm;厚さ約1.5mm)とさ
れた。なほ比較目的で前述の成型法に準じて、抗菌性組
成物無添加の空試験用の小試験片PS−BL(約50×50mm;
厚さ約1.5mm)が試作された。
噴霧法による抗菌力の試験結果を第10表に示した。本
発明の抗菌性組成物を含有するPSポリマーは一般細菌Es
cherichia coliに対して好ましい効果を発揮している。
比較例 本例は比較例に関するものであり、これは本発明の抗
菌性組成物と公知の抗菌性ゼオライトの抗菌効果の差異
を明確にするため実施されたものである。本例に於ては
抗菌性ゼオライト〔NaAgZ:Ag=3.95%(無水基準);Zは
A型ゼオライトの母体〕の微粉体とPS(実施例−8と同
一品)を用いてNaAgZとして1.0%含有する厚さ1.5mmのP
S成型体が、実施例−8と全く同様な方法で試作され
た。次いで成型体は切断されて抗菌力テスト用の小試験
片PS−2(比較目的:約50×50mm;厚さ約1.5mm)とさ
れ、これを用いて実施例−8と同一条件抗菌力試験が行
われた。試験結果を表−10に記載した(比較例PS−
2)。
表−10より明かに、抗菌性組成物0.9%を含むPS−1
検体(実施例−8)はEscherichia coliに対して優れた
抗菌効果を発揮しており、菌数は6時間経過で8.6×10
個/検体に減少しており、これは死滅率として99.9%以
上に相当する。さらに12時間の経過では前記の細菌は完
全に死滅している。一方抗菌剤を含まぬPS−BL空試験用
の検体は、前記の細菌については抗菌力は全く見られな
い。次に抗菌性ゼオライト1.0%を含むPS−2検体(比
較例)はEscherichia coliに対して、表記のような抗菌
力を発揮している。しかしながら、PS−1およびPS−2
両検体の菌数の経時変化を比較すれば、前者の方が後者
の検体よりもEscherichia coliに対する死滅速度はより
大であり、前者は後者に比較してより優れた抗菌力を発
揮していることは明かである。
抗菌性組成物0.9%を含有するPS−1検体(実施例−
8)中のAg含有量は0.038%であり、一方抗菌性ゼオラ
イト1.0%を含有するPS−2検体(比較例)中のAg含有
量は0.0395%である。前者より後者の検体の方が、銀含
有量は若干高いのにかゝわらず、前者の方が後者よりも
抗菌効果はより優れている。かゝる抗菌効果の差異は、
ポリマーに添加された抗菌剤、即ち抗菌性組成物と抗菌
性ゼオライトの構造の根本的差異にもとづくものと思考
される(前述の作用の項参照)。実施例−8で試作され
た抗菌性組成物を含むPS検体中の銀含有量は、既述した
ように、0.038%である。しかし、本実施例に使用され
た抗菌性組成物中の銀は活性アルミナの母体に均一に分
布されているのではなく、それの無数の細孔(抗菌性ゼ
オライトの細孔の大きさより遥かに大きい)やマクロ孔
表面にイオン結合されて分布しており、実質的に銀は0.
15ミリモル/100m2に達している。一方比較例で使用され
たNaAgZ(細孔4A)はPS中に銀として0.0395%含有され
ている。この銀は、本発明の抗菌性組成物中の抗菌金属
の分布とことなりゼオライト母体に均一に分布してい
る。従って本発明の抗菌性組成物と抗菌性ゼオライトの
抗菌金属の分布状態は全く異なる。殺菌の見地より見れ
ば前者の方が後者より遥かに有利である。比較例では、
既述のように、PSポリマー中の銀は0.0395%であり、一
方実施例−8の検体中の銀は0.038%である。両者中の
銀の差異は僅少である。しかし、実施例−8で使用され
た抗菌性組成物中の銀は、前述したように、活性アルミ
ナの表面(細孔やマクロ孔)にのみ分布しているので、
殺菌に関与する銀はNaAgZ中の銀より多く、従って実質
的な殺菌金属の利用率は本発明の組成物の方が比較例の
NaAgZより遥かに高い。また既述した理由にもとづいて
解離している殺菌金属イオンの拡散は、活性アルミナを
母体とした抗菌性組成物の細孔内の方が、抗菌性ゼオラ
イトの細孔内より迅速に行われて菌と接触しやすい。従
って実質的な殺菌効率は前者の本発明の抗菌性組成物の
方が後者の抗菌性ゼオライトより高くなるはづである。
表−10記載の結果は上記の事実を明かに裏付けしてい
る。
実施例−9 本実施例はアルミナを母体とし、殺菌作用を有する金
属として銀および亜鉛を複合してなる水性系の抗菌性組
成物の調製例に関するものである。
住友化学工業(株)の活性アルミナ破砕品NKHD−C
〔比表面積340m2/g,細孔容積0.65cm3/g,粒子径10〜32メ
ッシュ;主な成分(Al2O3=99.7%,Na2O=0.27%,SiO
2=0.3%〕約1.4Kgに対して脱塩水約2.5lが添加され、
得られた混合液は550〜600rpmで約30分間攪拌された。
上記の混合液に対して、攪拌下に、1NNaOH溶液が徐々に
滴下されて、水溶液相はpH11以上の強アルカリ性に保持
された。前記のスラリー混合液に対して水ガラス(珪酸
ナトリウムJIS−3号品:Na2O=9.5%;SiO2=29%;比
重=1.4)約180gを2lの水に溶解させて、液中に懸濁し
ている不純の固形分を過した液が添加された後、スラ
リー液は加温されて60°±2℃に保持されて、約12時間
に亘り550〜600rpmで攪拌された。反応終了後、過さ
れて、得られた固相は温水洗浄され過剰のアルカリや未
反応物質は除去された。この場合、水洗終了時の液の
pHは8〜9に保持された。前記の水洗済み固相に対して
約1の水が添加され、次いでAgNO3−Zn(NO3)2混合液
〔AgNO3およびZn(NO3)2としてそれぞれ0.61Mおよび0.25
Mを含有する水溶液;pH=4.0〕が添加された。得られた
混合液のpHは4.2に調整された後、混合液は加温されて4
0°±2℃に保持され、約3時間に亘り550〜600rpmに連
続攪拌された。上記のイオン交換終了後、過が行は
れ、次いで得られた固相は温水洗浄されて固相に存在す
る過剰の銀および亜鉛イオンは除去された。引続き水洗
品は100°〜110℃で乾燥されて、本発明のアルミナを母
体とし、殺菌性金属として銀および亜鉛を含有する水性
系の抗菌性組成物が調製された。
本実施例で試作された水性系の抗菌性組成物の比表面
積および細孔容積はそれぞれ254m2/g(BET法によるN2
着による測定値)および0.59cm3/gであった。また調製
された本組成物中の銀および亜鉛の定量値はそれぞれ4.
37%および1.21%(何れも無水基準)であった。本実施
例で得られた抗菌性組成物(無水基準)の表面積100m2
当りの銀および亜鉛含有量はそれぞれ、0.16ミリモルお
よび0.073ミリモルであった。
次に実施例−9で調製された水性系の抗菌性組成物の
抗菌〜殺菌力を試験するために下水道水を水で希釈して
下記のモデル廃水が調製された。
モデル廃水−1:COD=51mg/l; 大腸菌数 2.9×105個/ml モデル廃水−2:COD=84mg/l; 大腸菌数 3.4×105個/ml COD=化学的酸素要求書 実施例−9で調製された水性系の抗菌性組成物の乾燥品
8gをモデル廃水(1)に入れた。またモデル廃水−2
(1)に対しては実施例−9で調製された水性系の抗
菌性組成物14gが投入された。前記のモデル廃水は500rp
mで100時間に亘り攪拌された。次いで常法により大腸菌
の死滅率の測定が行われた。
上記の2種のモデル廃水を使用した抗菌力試験に於て
は、大腸菌の死滅率は、何れの場合も、100%であり、
本発明の水性系の抗菌性組成物は優れた抗菌力を発揮す
ることが認められる。
本発明の水性系用の抗菌性組成物の耐水性と抗菌力の
保持能を確認するために実施例−9で調製された抗菌性
組成物を使用して下記の通水試験が実施された。
実施例−9の水性系用の抗菌性組成物約25g(乾燥品;
10〜32メッシュ)を内径22mmのガラス製カーラム(小イ
オン交換塔)に入れた後、これに水を注入して逆洗を行
って、水性系の抗菌性組成物の均一充填が行われ、抗菌
性組成物床が調製された。これに水道水(Ca2+=15ppm;
Mg2+=7.1ppm;Cl=29ppm;pH=6.6)を25±1.5ml/minの
流速で通水して本組成物の耐水性と抗菌力の保持能に関
する試験が行われた。通水試験に際しては、カーラムの
底部より、流出液量が一定量(表−12参照)に達した時
に、試験水が採取され原子吸光法により銀濃度が定量さ
れた。
表12に示したように、流出液中の銀は4〜6ppbの範囲
にあって、極めて微量であり、好ましい結果が得られ
た。また流出液中の亜鉛も銀に準じて、定量されたが、
その量は30ppb以下であった。なほ本通水試験を通じ
て、水性系用の抗菌性組成物の破損,摩耗,劣化は認め
られず、耐水性も優れていることが判明した。
前述の400lにわたる通水試験を終了後、使用済みの水
性系の抗菌性組成物はカーラムより取り出され、それの
抗菌〜殺菌力の保持能を確認するために、真菌Aspergil
lus nigerを用いて死滅率の測定が常法により行われ
た。即ちAspergillus nigerの胞子懸濁液(〜104個/m
l)の1mlを被検物質(使用済みの抗菌性組成物)の懸濁
液(300mg/ml)9mlの中へ注入混釈し、得られた懸濁液
は24時間、30℃に保持された。これの0.1mlをサブロー
寒天培地に分散させて、30℃にて48時間保存された後
に、生存個数が測定され、これより死滅率が算出され
た。上記の抗菌力試験より、Aspergillus nigerの死滅
率は依然として100%であることが確認された。
上述の試験よりも、本発明の水性系の抗菌性組成物は
水中において優れた抗菌効果を発揮するのみならず耐水
性も充分に保持されていることは明かである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01N 59/16 A01N 59/18 A01N 59/20 A01N 25/08 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミナの表面に殺菌作用を有する金属イ
    オンを含むアルミノ珪酸塩の皮膜を有することを特徴と
    する抗菌性組成物。
  2. 【請求項2】少なくとも0.4cm3/gの細孔容積と、少なく
    とも80m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項
    1に記載の抗菌性組成物。
  3. 【請求項3】殺菌作用を有する金属イオンの総量が無水
    の抗菌剤組成物の表面積100m2当たり、少なくとも0.002
    ミリモル存在することを特徴とする請求項1または2に
    記載の抗菌性組成物。
  4. 【請求項4】殺菌作用を有する金属イオンが銀,銅,亜
    鉛,水銀,錫,鉛,ビスマス,カドミウムおよびクロム
    からなる群より選ばれた金属イオンであることを特徴と
    する請求項1ないし3のいづれかに記載の抗菌性組成
    物。
  5. 【請求項5】請求項1ないし4のいづれかに記載の抗菌
    性組成物とポリマーから主としてなる抗菌性ポリマー組
    成物。
  6. 【請求項6】抗菌性組成物を、ポリマー全体に対し0.00
    5〜20重量%含むことを特徴とする請求項5に記載の抗
    菌性ポリマー組成物。
  7. 【請求項7】アルミナをアルカリ溶液とシリカ含有液と
    で化学処理してイオン交換可能な金属を含むアルミノ珪
    酸塩の皮膜を細孔やマクロ孔の活性表面に実質的に形成
    せしめる工程および該皮膜を殺菌作用を有する1種また
    は2種以上の金属イオンを含む塩類溶液で処理して殺菌
    性の金属イオンをアルミノ珪酸塩の皮膜中にイオン交換
    により担持せしめる工程を含むアルミナを母体とした抗
    菌性組成物の製造方法。
  8. 【請求項8】アルミナの表面に、銀および亜鉛からなる
    群より選ばれた少くとも1種の殺菌性金属イオンを含む
    アルミノ珪酸塩の皮膜を有することを特徴とする水性系
    用の抗菌性組成物。
  9. 【請求項9】銀の総量が、無水の抗菌性組成物の表面積
    100m2当り、少くとも0.002ミリモル存在することを特徴
    とする請求項8に記載の水性系用の抗菌性組成物。
  10. 【請求項10】銀および亜鉛の総量が、無水の抗菌性組
    成物の表面積100m2当り、それぞれ少くとも0.0002ミリ
    モルと少くとも0.02ミリモル存在することを特徴とする
    請求項8に記載の水性系用の抗菌性組成物。
  11. 【請求項11】亜鉛の総量が、無水の抗菌性組成物の表
    面積100m2当り、少くとも0.08ミリモル存在することを
    特徴とする請求項8に記載の水性系用の抗菌性組成物。
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