JP2784128B2 - 析出硬化型熱間工具鋼 - Google Patents
析出硬化型熱間工具鋼Info
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- JP2784128B2 JP2784128B2 JP5044655A JP4465593A JP2784128B2 JP 2784128 B2 JP2784128 B2 JP 2784128B2 JP 5044655 A JP5044655 A JP 5044655A JP 4465593 A JP4465593 A JP 4465593A JP 2784128 B2 JP2784128 B2 JP 2784128B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱間鍛造金型等に使用
される特に高靱性の析出硬化タイプの熱間工具鋼に関す
る。
される特に高靱性の析出硬化タイプの熱間工具鋼に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、熱間工具鋼は、施される熱処理条
件で大別すると、SKD61等の焼入焼戻しタイプと3
Ni−3Mo鋼に代表される析出硬化タイプがある。こ
の二つのタイプの焼入焼戻鋼と析出硬化鋼の焼戻し硬さ
曲線の比較を図1に示す。図1から、両者とも二次硬化
挙動を示す鋼種であること、また析出硬化鋼の方が二次
硬化硬さ及び400℃焼戻し硬さが低いことなどが判
る。
件で大別すると、SKD61等の焼入焼戻しタイプと3
Ni−3Mo鋼に代表される析出硬化タイプがある。こ
の二つのタイプの焼入焼戻鋼と析出硬化鋼の焼戻し硬さ
曲線の比較を図1に示す。図1から、両者とも二次硬化
挙動を示す鋼種であること、また析出硬化鋼の方が二次
硬化硬さ及び400℃焼戻し硬さが低いことなどが判
る。
【0003】ところで、上記の熱間工具鋼の焼入焼戻し
タイプは、金型に機械加工された後所定の条件で焼入焼
戻しされ使用される。この時の焼戻し温度は靱性と高温
強度を考慮して約600℃程度の高温焼戻しが多くの場
合採用される。一方、上記の熱間工具鋼の析出硬化タイ
プは、約400℃程度で低温焼戻しされメーカーからプ
リハードン状態で納入され、型彫加工後、熱処理せずに
使用される。
タイプは、金型に機械加工された後所定の条件で焼入焼
戻しされ使用される。この時の焼戻し温度は靱性と高温
強度を考慮して約600℃程度の高温焼戻しが多くの場
合採用される。一方、上記の熱間工具鋼の析出硬化タイ
プは、約400℃程度で低温焼戻しされメーカーからプ
リハードン状態で納入され、型彫加工後、熱処理せずに
使用される。
【0004】この析出硬化タイプを開発経緯で見ると、
0.2%C−3%Ni−3%Mo系のA鋼と、0.3%
C−3%Cr−3%Mo系のB鋼と、0.2%C−0.
8%Ni−3%Cr−2%Mo−V−Co系のC鋼の鋼
種があり、A鋼は高靱性であるが高温強度に難点があ
り、逆にB鋼は高温強度に優れるが靱性が低く、この両
者を改善して開発されたのがC鋼で靱性と高温強度が適
度に優れた鋼種とされている。
0.2%C−3%Ni−3%Mo系のA鋼と、0.3%
C−3%Cr−3%Mo系のB鋼と、0.2%C−0.
8%Ni−3%Cr−2%Mo−V−Co系のC鋼の鋼
種があり、A鋼は高靱性であるが高温強度に難点があ
り、逆にB鋼は高温強度に優れるが靱性が低く、この両
者を改善して開発されたのがC鋼で靱性と高温強度が適
度に優れた鋼種とされている。
【0005】そして、低C−低〜中Cr−Mo(W)−
低Vをベースとし、これにNi、Coを添加した、耐ク
ラック進展性、高温耐摩耗性、耐肌あれ性を有し、割れ
を生じない耐摩耗寿命の析出硬化形熱間工具鋼として、
特公昭60−12420号公報の発明が提案されてい
る。
低Vをベースとし、これにNi、Coを添加した、耐ク
ラック進展性、高温耐摩耗性、耐肌あれ性を有し、割れ
を生じない耐摩耗寿命の析出硬化形熱間工具鋼として、
特公昭60−12420号公報の発明が提案されてい
る。
【0006】これらの析出硬化型鋼の大きな特徴として
次の二つが挙げられる。その一つは、ユーザーでの熱処
理が不要でありコストの低減と納期の短縮が計れると共
に熱処理に拘るトラブルが解消でき品質が保証されるこ
とである。その二つは、メーカーでの焼戻し温度が切削
可能な硬さになるように二次硬化域手前の400℃程度
の温度で行われており、熱間鍛造金型として使用中の金
型表面温度は約600〜700℃と推定され、従って、
使用中に強度の必要な型彫面のみが熱影響により析出硬
化し強度が上昇し機能が強化されることである。
次の二つが挙げられる。その一つは、ユーザーでの熱処
理が不要でありコストの低減と納期の短縮が計れると共
に熱処理に拘るトラブルが解消でき品質が保証されるこ
とである。その二つは、メーカーでの焼戻し温度が切削
可能な硬さになるように二次硬化域手前の400℃程度
の温度で行われており、熱間鍛造金型として使用中の金
型表面温度は約600〜700℃と推定され、従って、
使用中に強度の必要な型彫面のみが熱影響により析出硬
化し強度が上昇し機能が強化されることである。
【0007】しかしながら、実際の型寿命としては、析
出硬化系の方が焼入焼戻系に比べ特に長寿命ということ
もなく、両者は用途により使い分けられているのが現状
である。その主な原因として析出硬化系のものは焼入焼
戻系のものに比して金型内部の靱性が若干低く、使用中
に大割れの危険性があることによる。
出硬化系の方が焼入焼戻系に比べ特に長寿命ということ
もなく、両者は用途により使い分けられているのが現状
である。その主な原因として析出硬化系のものは焼入焼
戻系のものに比して金型内部の靱性が若干低く、使用中
に大割れの危険性があることによる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】既存の析出硬化型熱間
工具鋼の納入硬さ(ユーザー側の型加工性に関係する)
と高温強度を維持し、且つ靱性(特に金型内部の靱性)
を焼入焼戻鋼のレベルに向上させて型使用中の大割れの
危険を防止することである。さらに、高温軟化抵抗性を
向上させてヘタリを改善することである。
工具鋼の納入硬さ(ユーザー側の型加工性に関係する)
と高温強度を維持し、且つ靱性(特に金型内部の靱性)
を焼入焼戻鋼のレベルに向上させて型使用中の大割れの
危険を防止することである。さらに、高温軟化抵抗性を
向上させてヘタリを改善することである。
【0009】これを具体的な開発目標で示すと、400
℃焼戻し硬さ:HRC40〜44(型彫り加工可能なこ
と)、600℃焼戻し硬さ:HRC46以上(高温強度
が高いこと)、シャルピー衝撃値(400℃焼戻し状
態):50J/cm2 以上(型内部の靱性が高いこと)
とすることである。
℃焼戻し硬さ:HRC40〜44(型彫り加工可能なこ
と)、600℃焼戻し硬さ:HRC46以上(高温強度
が高いこと)、シャルピー衝撃値(400℃焼戻し状
態):50J/cm2 以上(型内部の靱性が高いこと)
とすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するため、析出硬化形熱間工具鋼において、特にN
bを添加して結晶粒を著しく微細化して靱性を向上させ
ると共に、含有成分のNi及びCrを低Ni化および低
Cr化して、高温軟化抵抗の向上を図ってヘタリを改善
する。さらに、特に耐軟化抵抗性を必要とする用途に対
しては、Coを添加する。
解決するため、析出硬化形熱間工具鋼において、特にN
bを添加して結晶粒を著しく微細化して靱性を向上させ
ると共に、含有成分のNi及びCrを低Ni化および低
Cr化して、高温軟化抵抗の向上を図ってヘタリを改善
する。さらに、特に耐軟化抵抗性を必要とする用途に対
しては、Coを添加する。
【0011】このため、本発明の析出硬化型熱間工具鋼
は、重量%で、(1)C:0.10〜0.25%未満、
Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Ni:0.
3〜1.0%、Cr:1.0〜3.0%、V:0.3〜
0.6%、Nb:0.02〜0.10%、Mo又はWの
いずれか1種又は2種をMo当量(1/2W+Mo)
で:1.0〜3.0%とし、残部Feおよび通常の不可
避不純物とからなること、および、(2)上記の鋼に、
さらに、Co:0.2〜1.0%を添加したことを特徴
とする。
は、重量%で、(1)C:0.10〜0.25%未満、
Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Ni:0.
3〜1.0%、Cr:1.0〜3.0%、V:0.3〜
0.6%、Nb:0.02〜0.10%、Mo又はWの
いずれか1種又は2種をMo当量(1/2W+Mo)
で:1.0〜3.0%とし、残部Feおよび通常の不可
避不純物とからなること、および、(2)上記の鋼に、
さらに、Co:0.2〜1.0%を添加したことを特徴
とする。
【0012】
【作用】本発明の析出硬化型熱間工具鋼は、特にNbを
添加したことにより、結晶粒が著しく微細化され靱性が
向上されていると共に、含有成分のNiおよびCrが低
Ni化、低Cr化されたことにより、高温軟化抵抗が向
上され、ヘタリが改善されている。さらに、上記に加え
てCoを添加したことにより特に耐軟化抵抗性が向上さ
れている。
添加したことにより、結晶粒が著しく微細化され靱性が
向上されていると共に、含有成分のNiおよびCrが低
Ni化、低Cr化されたことにより、高温軟化抵抗が向
上され、ヘタリが改善されている。さらに、上記に加え
てCoを添加したことにより特に耐軟化抵抗性が向上さ
れている。
【0013】ここで金型内部の靱性(1030℃Q→4
00℃T、JIS3号試験片)をシャルピー衝撃値で示
すと、0.8%Ni−3%Crの従来鋼は、43.8J
/cm2 (HRC44.7)(試験温度室温)、77.4
J/cm2 (HRC44.8)(試験温度100℃)であ
るのに対し、2%CrのNb鋼の本発明鋼は、80.7
J/cm2 (HRC43.0)(試験温度室温)、12
7.6J/cm2 (HRC42.9)(試験温度100
℃)であり、本発明鋼は従来鋼に比し靱性が著しく向上
されている。
00℃T、JIS3号試験片)をシャルピー衝撃値で示
すと、0.8%Ni−3%Crの従来鋼は、43.8J
/cm2 (HRC44.7)(試験温度室温)、77.4
J/cm2 (HRC44.8)(試験温度100℃)であ
るのに対し、2%CrのNb鋼の本発明鋼は、80.7
J/cm2 (HRC43.0)(試験温度室温)、12
7.6J/cm2 (HRC42.9)(試験温度100
℃)であり、本発明鋼は従来鋼に比し靱性が著しく向上
されている。
【0014】さらに、図2に析出硬化型熱間工具鋼の焼
入焼戻硬さ特性を示す。焼戻し温度400℃の硬さは、
下向き矢印に示すように2%CrのNb含有の本発明鋼
は従来鋼に比して十分低下されているにも拘わらず、6
00℃の硬さは上向き矢印に示すように従来鋼に比して
十分高められている。
入焼戻硬さ特性を示す。焼戻し温度400℃の硬さは、
下向き矢印に示すように2%CrのNb含有の本発明鋼
は従来鋼に比して十分低下されているにも拘わらず、6
00℃の硬さは上向き矢印に示すように従来鋼に比して
十分高められている。
【0015】また、図3に析出硬化型熱間工具鋼の高温
軟化抵抗性を示す。2%CrのNb含有の本発明鋼は再
加熱温度600℃に100時間保持しても硬さはHRC
で35以上あり従来鋼に比し高温軟化抵抗性に極めて優
れている。
軟化抵抗性を示す。2%CrのNb含有の本発明鋼は再
加熱温度600℃に100時間保持しても硬さはHRC
で35以上あり従来鋼に比し高温軟化抵抗性に極めて優
れている。
【0016】以下に、本発明鋼の各化学成分の作用およ
びその添加限定理由を示す。Cは、焼入焼戻しにより十
分なマトリックス硬さを与えると共に、Cr、Mo、
V、Nbなどと結合して炭化物を形成し、高温強度、耐
摩耗性を与える元素である。しかしながら、0.25%
以上に多すぎると、焼入後の硬さが高くなり、析出硬化
型鋼の特徴のプリハードン納入硬さを切削良好なHRC
44以下に抑えることが不可能となるため、その上限を
0.25%未満とした。一方、0.10%未満では、十
分な硬さが得られないので、その下限を0.10%とし
た。
びその添加限定理由を示す。Cは、焼入焼戻しにより十
分なマトリックス硬さを与えると共に、Cr、Mo、
V、Nbなどと結合して炭化物を形成し、高温強度、耐
摩耗性を与える元素である。しかしながら、0.25%
以上に多すぎると、焼入後の硬さが高くなり、析出硬化
型鋼の特徴のプリハードン納入硬さを切削良好なHRC
44以下に抑えることが不可能となるため、その上限を
0.25%未満とした。一方、0.10%未満では、十
分な硬さが得られないので、その下限を0.10%とし
た。
【0017】Siは、主に脱酸材として添加されると共
に、耐酸化性、焼入性に有効な元素である。1.0%を
超えて添加すると熱伝導性の低下と靱性の低下を招くの
で、上限を1.0%とした。
に、耐酸化性、焼入性に有効な元素である。1.0%を
超えて添加すると熱伝導性の低下と靱性の低下を招くの
で、上限を1.0%とした。
【0018】Mnは、Siと同様に脱酸材として添加し
鋼の清浄度を高めると共に焼入性を高める元素である。
しかしながら1.0%を超えて添加とすると、靱性を低
下させるので、その上限を1.0%とした。
鋼の清浄度を高めると共に焼入性を高める元素である。
しかしながら1.0%を超えて添加とすると、靱性を低
下させるので、その上限を1.0%とした。
【0019】Niは、焼入性を高めるのに、本発明にお
いて非常に有効な元素であり、その効果を得るために、
少なくとも0.3%必要である。しかし、1.0%を超
えて添加すると、A1 変態点を低下させ高温軟化抵抗性
即ち耐熱性を劣化させると共に被削性も劣化させるの
で、上限を1.0%とした。
いて非常に有効な元素であり、その効果を得るために、
少なくとも0.3%必要である。しかし、1.0%を超
えて添加すると、A1 変態点を低下させ高温軟化抵抗性
即ち耐熱性を劣化させると共に被削性も劣化させるの
で、上限を1.0%とした。
【0020】Crは、Cと結合して硬質炭化物を形成し
耐摩耗性を向上させると共に焼入性を高める元素であ
る。そのためには、1.0%以上が必要である。しかし
ながら、3.0%を超えて多量に添加すると焼入硬さが
高くなり、プリハードン状態での被削性を劣化させると
共に、Cr炭化物の凝集粗大化を招き、高温軟化抵抗性
を劣化させるため、その上限を3.0%とした。
耐摩耗性を向上させると共に焼入性を高める元素であ
る。そのためには、1.0%以上が必要である。しかし
ながら、3.0%を超えて多量に添加すると焼入硬さが
高くなり、プリハードン状態での被削性を劣化させると
共に、Cr炭化物の凝集粗大化を招き、高温軟化抵抗性
を劣化させるため、その上限を3.0%とした。
【0021】MoおよびWは、共に微細な炭化物を形成
し、耐摩耗性や耐軟化抵抗性改善する元素である。ただ
し、その効果はMoの方がWよりも2倍強く、同じ効果
を得るのに、WはMoの2倍必要である。両元素は、あ
まり多く添加すると靱性や耐ヒートチェック性を低下さ
せるので、上限をMo当量(1/2W+Mo)で、3.
0%とした。また、少なすぎると上記添加効果は得られ
ないので、下限をMo当量1.0%とした。
し、耐摩耗性や耐軟化抵抗性改善する元素である。ただ
し、その効果はMoの方がWよりも2倍強く、同じ効果
を得るのに、WはMoの2倍必要である。両元素は、あ
まり多く添加すると靱性や耐ヒートチェック性を低下さ
せるので、上限をMo当量(1/2W+Mo)で、3.
0%とした。また、少なすぎると上記添加効果は得られ
ないので、下限をMo当量1.0%とした。
【0022】Vは、固溶しにくい炭化物を形成し、耐摩
耗性および耐軟化抵抗性を高める元素であるが、縞状ミ
クロ偏析を助長する元素でもあり、本発明において靱性
の観点から過剰の添加は好ましくなく、上限を0.6%
とした。一方、0.3%未満では耐摩耗性向上が得られ
ないので、下限を0.3%とした。
耗性および耐軟化抵抗性を高める元素であるが、縞状ミ
クロ偏析を助長する元素でもあり、本発明において靱性
の観点から過剰の添加は好ましくなく、上限を0.6%
とした。一方、0.3%未満では耐摩耗性向上が得られ
ないので、下限を0.3%とした。
【0023】Nbは、Vと同様に固溶しにくい炭化物を
形成し、耐摩耗性および耐軟化抵抗性を改善する元素で
ある。さらに、焼入加熱時のオーステナイト結晶粒の粗
大化を抑制し、靱性を著しく向上させる本発明における
重要な元素である。この効果は、Vより顕著であり、少
量の添加でより大きな効果が得られる。従って本発明で
は、Nbを積極的に添加し、その量を0.02〜0.1
0%とした。即ち、Nbは0.02未満では、結晶粒微
細化効果が充分でなく、また0.10%を超えて添加す
ると炭化物が大きくなり、靱性を低下させる。
形成し、耐摩耗性および耐軟化抵抗性を改善する元素で
ある。さらに、焼入加熱時のオーステナイト結晶粒の粗
大化を抑制し、靱性を著しく向上させる本発明における
重要な元素である。この効果は、Vより顕著であり、少
量の添加でより大きな効果が得られる。従って本発明で
は、Nbを積極的に添加し、その量を0.02〜0.1
0%とした。即ち、Nbは0.02未満では、結晶粒微
細化効果が充分でなく、また0.10%を超えて添加す
ると炭化物が大きくなり、靱性を低下させる。
【0024】Coは、高温での炭化物凝集粗大化を抑制
し、特に耐軟化抵抗性に有効な元素である。本発明にお
いて、特に耐軟化抵抗性を必要とする用途に対してはC
oを添加するが、これらの効果を得るためには少なくと
も0.2%必要であり、1.0%を超えると靱性を低下
させるので上限を1.0%とした。
し、特に耐軟化抵抗性に有効な元素である。本発明にお
いて、特に耐軟化抵抗性を必要とする用途に対してはC
oを添加するが、これらの効果を得るためには少なくと
も0.2%必要であり、1.0%を超えると靱性を低下
させるので上限を1.0%とした。
【0025】
【実施例】本発明鋼の供試材No.A〜Hおよび比較鋼
の供試材No.I〜Jの各鋼100kgを真空誘導溶解炉
にて出鋼した。出鋼した10ヒートの鋼の化学成分を表
1に示す。表1に示す供試材No.A〜Jの各鋼から平
均径190mmの鋼塊を作製し、これを鍛伸して角40mm
とし、各試験片を作製した。熱処理方法として1000
℃に30分保持後、1000℃から500℃まで30分
掛けて炉冷して焼入れした後、焼戻しを400℃×6
0分して空冷、及び、600℃×60分して空冷の2
種類を実施した。
の供試材No.I〜Jの各鋼100kgを真空誘導溶解炉
にて出鋼した。出鋼した10ヒートの鋼の化学成分を表
1に示す。表1に示す供試材No.A〜Jの各鋼から平
均径190mmの鋼塊を作製し、これを鍛伸して角40mm
とし、各試験片を作製した。熱処理方法として1000
℃に30分保持後、1000℃から500℃まで30分
掛けて炉冷して焼入れした後、焼戻しを400℃×6
0分して空冷、及び、600℃×60分して空冷の2
種類を実施した。
【0026】
【表1】
【0027】各試験片の大きさを角40mm×長さ40mm
として、上記熱処理後、焼入焼戻し硬さを及びの2
種類の焼戻し材の中心部をロックウエルCスケールで測
定した。一方、熱処理試験片の大きさを角40mm×長さ
60mmのものを上記熱処理後、400℃焼戻し材につい
て、中心部からシャルピー試験片加工し、JIS3号試
験片角10mm×長さ55mmをUノッチ加工し、常温にて
シャルピー衝撃値を測定した。さらに、試験片の大きさ
を角40mm×長さ40mmとして、上記熱処理後、400
℃焼戻し材について、電気炉中に600℃×100時間
保持後、空冷して、試験片中心部の硬さを測定し、これ
を初期硬さとの差で評価して、軟化抵抗性試験を実施し
た。上記の各試験の結果を表2に示す。表2から比較鋼
Iはシャルピー衝撃値が極めて悪く、また比較鋼Jは高
温軟化抵抗性の値が−12とマイナスの値が大きく極め
て悪い。これに比し、本発明鋼はいずれもシャルピー衝
撃値および高温軟化抵抗性ともに優れていることが判
る。
として、上記熱処理後、焼入焼戻し硬さを及びの2
種類の焼戻し材の中心部をロックウエルCスケールで測
定した。一方、熱処理試験片の大きさを角40mm×長さ
60mmのものを上記熱処理後、400℃焼戻し材につい
て、中心部からシャルピー試験片加工し、JIS3号試
験片角10mm×長さ55mmをUノッチ加工し、常温にて
シャルピー衝撃値を測定した。さらに、試験片の大きさ
を角40mm×長さ40mmとして、上記熱処理後、400
℃焼戻し材について、電気炉中に600℃×100時間
保持後、空冷して、試験片中心部の硬さを測定し、これ
を初期硬さとの差で評価して、軟化抵抗性試験を実施し
た。上記の各試験の結果を表2に示す。表2から比較鋼
Iはシャルピー衝撃値が極めて悪く、また比較鋼Jは高
温軟化抵抗性の値が−12とマイナスの値が大きく極め
て悪い。これに比し、本発明鋼はいずれもシャルピー衝
撃値および高温軟化抵抗性ともに優れていることが判
る。
【0028】
【表2】
【0029】次に、靱性に及ぼすNb添加量の影響をシ
ャルピー衝撃値に基づき調査した結果を図2に示す。実
験に用いた供試鋼の化学成分は、0.18%C−0.5
%Si−0.4%Mn−0.6%Ni−1.8%Cr−
2.0%Mo−0.4%V−0.4%Co−(0〜0.
16%)Nbに残部Feおよび不可避不純物である。試
験片作成方法及び試験方法は上記の実施例と同一であ
る。
ャルピー衝撃値に基づき調査した結果を図2に示す。実
験に用いた供試鋼の化学成分は、0.18%C−0.5
%Si−0.4%Mn−0.6%Ni−1.8%Cr−
2.0%Mo−0.4%V−0.4%Co−(0〜0.
16%)Nbに残部Feおよび不可避不純物である。試
験片作成方法及び試験方法は上記の実施例と同一であ
る。
【0030】図4から判るように、Nb添加量が増加す
るに連れてシャルピー衝撃値は直線的に増大し、Nbが
0.02%でシャルピー衝撃値は約70J/cm2 とな
り、そこから徐々にその増大量は緩やかになり、シャル
ピー衝撃値は約85J/cm2 に達する。Nbが0.10
%を超えるとシャルピー衝撃値は約78J/cm2 から急
激に減少し始める。従って、靱性の面からNbの添加量
は0.02〜0.10%とすることが必要である。
るに連れてシャルピー衝撃値は直線的に増大し、Nbが
0.02%でシャルピー衝撃値は約70J/cm2 とな
り、そこから徐々にその増大量は緩やかになり、シャル
ピー衝撃値は約85J/cm2 に達する。Nbが0.10
%を超えるとシャルピー衝撃値は約78J/cm2 から急
激に減少し始める。従って、靱性の面からNbの添加量
は0.02〜0.10%とすることが必要である。
【0031】表1における本発名鋼Hと比較鋼Iのミク
ロ組織写真を図5の(a)と(b)に示す。一般に、本
発明の用途のような熱間金型は、耐摩耗性を付加させる
目的で窒化処理される場合が多く、図5は、焼入焼戻し
後イオン窒化処理を施した状態のものである。この熱処
理条件およびイオン窒化処理条件を以下に示す。
ロ組織写真を図5の(a)と(b)に示す。一般に、本
発明の用途のような熱間金型は、耐摩耗性を付加させる
目的で窒化処理される場合が多く、図5は、焼入焼戻し
後イオン窒化処理を施した状態のものである。この熱処
理条件およびイオン窒化処理条件を以下に示す。
【0032】 焼入れ :1000℃×30分保持→炉冷 焼戻し : 400℃×60分保持→空冷 イオン窒化: 530℃×8時間
【0033】図5の(a)のNbを0.06%添加した
本発明鋼Hは、図5の(b)のNbを含まない比較鋼I
に比べ、明らかに結晶粒が微細化されていることが判
る。
本発明鋼Hは、図5の(b)のNbを含まない比較鋼I
に比べ、明らかに結晶粒が微細化されていることが判
る。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明鋼は、析出
硬化型熱間工具鋼において、特にNbを含有することに
より著しく結晶粒が微細化され靱性が向上しており、含
有成分のNiおよびCrを低Ni化、低Cr化したこと
により高温軟化抵抗が向上し、長時間高温に保持しても
軟化することがなく、へたりが改善されている。また、
これに加えてCoを添加したことにより特に耐軟化抵抗
性が向上しているので、熱間で使用する金型用の熱間工
具鋼として従来のものに比して極めて優れたものとなっ
ている。
硬化型熱間工具鋼において、特にNbを含有することに
より著しく結晶粒が微細化され靱性が向上しており、含
有成分のNiおよびCrを低Ni化、低Cr化したこと
により高温軟化抵抗が向上し、長時間高温に保持しても
軟化することがなく、へたりが改善されている。また、
これに加えてCoを添加したことにより特に耐軟化抵抗
性が向上しているので、熱間で使用する金型用の熱間工
具鋼として従来のものに比して極めて優れたものとなっ
ている。
【図1】析出硬化系鋼と焼入焼戻鋼の焼戻硬さ曲線の比
較を示す図である。
較を示す図である。
【図2】析出硬化型熱間工具鋼の本発明鋼と従来鋼の焼
入焼戻硬さ特性を比較説明する図である。
入焼戻硬さ特性を比較説明する図である。
【図3】析出硬化型熱間工具鋼の本発明鋼と従来鋼の高
温軟化抵抗性を比較説明する図である。
温軟化抵抗性を比較説明する図である。
【図4】靱性に及ぼすNb添加量の影響を示すグラフの
図である。
図である。
【図5】表1における本発名鋼Hのミクロ組織写真を
(a)に、比較鋼Iのミクロ組織写真を(b)に示す図
である。
(a)に、比較鋼Iのミクロ組織写真を(b)に示す図
である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.10〜0.25%未
満、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Ni:
0.3〜1.0%、Cr:1.0〜3.0%、V:0.
3〜0.6%、Nb:0.02〜0.10%、Mo又は
Wのいずれか1種又は2種をMo当量(1/2W+M
o)で:1.0〜3.0%、残部Feおよび通常の不可
避不純物からなる析出硬化型熱間工具鋼。 - 【請求項2】 重量%で、C:0.10〜0.25%未
満、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Ni:
0.3〜1.0%、Cr:1.0〜3.0%、V:0.
3〜0.6%、Nb:0.02〜0.10%、Mo又は
Wのいずれか1種又は2種をMo当量(1/2W+M
o)で:1.0〜3.0%、Co:0.2〜1.0%、
残部Feおよび通常の不可避不純物からなる析出硬化型
熱間工具鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5044655A JP2784128B2 (ja) | 1993-02-08 | 1993-02-08 | 析出硬化型熱間工具鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5044655A JP2784128B2 (ja) | 1993-02-08 | 1993-02-08 | 析出硬化型熱間工具鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06235046A JPH06235046A (ja) | 1994-08-23 |
JP2784128B2 true JP2784128B2 (ja) | 1998-08-06 |
Family
ID=12697466
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5044655A Expired - Fee Related JP2784128B2 (ja) | 1993-02-08 | 1993-02-08 | 析出硬化型熱間工具鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2784128B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
PL2535430T3 (pl) * | 2011-06-15 | 2019-06-28 | Buderus Edelstahl Gmbh | Stal narzędziowa dla wysokosprawnych narzędzi do formowania na gorąco oraz sposób ich wytwarzania |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH03134135A (ja) * | 1989-10-18 | 1991-06-07 | Hitachi Metals Ltd | 熱間加工用工具鋼 |
-
1993
- 1993-02-08 JP JP5044655A patent/JP2784128B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06235046A (ja) | 1994-08-23 |
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