JP2780889B2 - El素子およびその製造方法 - Google Patents

El素子およびその製造方法

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JP2780889B2 JP4094544A JP9454492A JP2780889B2 JP 2780889 B2 JP2780889 B2 JP 2780889B2 JP 4094544 A JP4094544 A JP 4094544A JP 9454492 A JP9454492 A JP 9454492A JP 2780889 B2 JP2780889 B2 JP 2780889B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、EL(エレクトロルミ
ネッセンス)素子の製造方法に関し、特に液晶表示装置
(LCD)のバックライト等に用いるのに適したEL素
子およびそのの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の電子装置は、軽量、薄型、低電圧
低消費電力(電池駆動)の要求が強く、表示装置として
はLCD(液晶表示装置)の利用が増加している。とこ
ろで、LCD自体は光を発生しないので、視認性を改良
するためEL素子(ランプ)等のバックライトを採用す
るようになってきた。
【0003】このような光源としては、薄く、軽量に、
低価格でという要求が強い。EL素子は、たとえば蛍光
灯や白熱電球に比べて薄くすることができ、消費電力の
低い面発光光源である。
【0004】図5に従来の技術によるEL素子の例を概
略的に示す。アルミニウム箔で形成された背面電極21
の上に、樹脂絶縁層22が形成されている。この樹脂絶
縁層22は、高誘電率有機樹脂(以下バインダとよぶ)
を溶剤に溶き、チタン酸バリウム粉末を分散し、インク
状にして背面電極21の上に印刷等の方法で塗布し、乾
燥することによって形成できる。
【0005】この樹脂絶縁層22の上に、EL発光層2
3および透明電極24が形成されている。EL発光層2
3は、上述同様のバインダに蛍光体粉末を分散し、イン
ク状にして塗布した後、乾燥することによって形成でき
る。
【0006】また、透明電極24は、同様のバインダに
ITO(インジウム錫酸化物)粉末を分散し、インク状
にして塗布、乾燥することによって得られる。背面電極
21および透明電極24からリード線25を導出し、本
体部分は防湿性の高いフィルムでパッケージし、EL素
子が形成される。
【0007】チタン酸バリウムは、大きな誘電率を有す
る。したがって、電極間にチタン酸バリウムの層を形成
しても、チタン酸バリウムの層によって降下する電圧は
小さい。このため、EL発光層に十分な電圧を印加する
ことができ、高い輝度を得やすい。
【0008】しかしながら、アルミニウム層表面にチタ
ン酸バリウム層を形成するためには塗布工程等を行う必
要があり、樹脂絶縁層の厚みの減少には限界がある。ま
た、塗布工程で起こる塗布ムラにより、いわゆる「はじ
き」を生じ、発光ムラが発生する。
【0009】また、アルミニウム箔表面をアルマイト皮
膜で覆い、このアルマイト皮膜で上述のチタン酸バリウ
ム層を置き換える技術が提案されている。特開昭64−
10597号公報は、アルミニウム箔を陽極酸化し、片
面にアルマイト処理して電気的絶縁層を形成したアルミ
ニウム箔を背面電極とした電界発光(EL)灯を開示す
る。
【0010】特開平1−209693号公報は、アルミ
ニウム箔表面にアルマイト層と白色コート層を形成した
分散型エレクトロルミネッセンスパネル用アルミニウム
積層体を開示する。
【0011】特開平1−225097号公報は、アルミ
ニウム箔表面を陽極酸化し、多孔質酸化皮膜を形成した
分散型EL素子を開示する。これらの技術は、背面電極
であるアルミニウム箔をアルマイト加工して表面にアル
マイト皮膜を形成し、このアルマイト皮膜を電気的絶縁
層として用いるものである。
【0012】アルミニウム箔表面のアルマイト皮膜は、
チタン酸バリウムの電気的絶縁層と比べて安価に製作で
き、同等の発光効率と輝度を有するEL素子を得ること
ができる。また、アルマイト皮膜を備えたアルミニウム
箔は密着性に優れる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかし、アルミサッシ
やアルミホイール等の表面処理にも古くから用いられる
アルマイト加工は、「アルミニウムハンドブック」軽金
属協会 昭和38年発行、第820−821頁等にも記
載されているように、硫酸等の酸性水溶液中で陽極酸化
して6μm〜数百μmの多孔質皮膜(デュプレクス型陽
極酸化皮膜)を形成する方法である。デュプレクス型陽
極酸化皮膜は、表面側に多孔質層、内側にバリヤー層を
有するが、バリヤー層の厚みは薄い。
【0014】このため、アルマイト層は、絶縁耐圧が低
く、電界強度の増加とともに漏れ電流が大きくなる。し
たがって、EL素子としての耐圧が低く、発光効率が上
げられないと実用上問題があった。
【0015】また、本発明者らは、中性電解液中での陽
極酸化により形成した陽極酸化皮膜(以下単にバリヤー
型皮膜という)を電気的絶縁層として使用することによ
り、樹脂あるいはアルマイト皮膜により電気的絶縁層を
形成した従来のEL素子よりも電気的特性の改良された
EL素子を製造し得ることを見出し、このEL素子およ
びその製造方法については既に特許出願を行っている
(特願平2−416782号)。このEL素子は、電気
的特性に優れるが、なお、その性能の向上、発光ムラの
改善が望まれている。
【0016】本発明の目的は、電気的特性に優れ、かつ
発光ムラが少ないEL素子を提供することである。ま
た、本発明の他の目的は、電気的特性に優れ、かつ発光
ムラが少ないEL素子を得ることができる、EL素子の
製造方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は次の事項を骨子
とするEL素子を提案する。すなわち、アルミニウム箔
と、このアルミニウム箔の表面に形成されたデュプレク
ス型陽極酸化皮膜を含む電気的絶縁層と、この電気的絶
縁層の上に直接形成されたEL発光層と、このEL発光
層上に形成された透明電極とを有するEL素子であっ
て、前記デュプレクス型陽極酸化皮膜は、酸性陽極酸化
後主としてバリヤー層を表面側に成長させることにより
ポア深さを浅く、バリヤー層を厚くした皮膜であり、こ
の皮膜のバリヤー層の厚みが0.1〜0.5μm、ポア
径が0.05μm以上、ポア深さが0.1〜0.5μm
であるEL素子を提供する。
【0018】また、このようなEL素子を提供するため
の製造方法として、アルミニウム箔を酸性電解液中で陽
極酸化することにより、前記アルミニウム箔の表面にデ
ュプレクス型陽極酸化皮膜(以下、第1のデュプレクス
型陽極酸化皮膜という)を形成する工程と、前記第1の
デュプレクス型陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム
箔をさらに中性電解液中で陽極酸化することにより、主
として前記第1のデュプレクス型酸化皮膜を構成するバ
リヤー層を表面側に成長させて、ポア深さが浅く、バリ
ヤー層の厚いデュプレクス型陽極酸化皮膜(以下、第2
のデュプレクス型陽極酸化皮膜という)を形成する工程
と、前記第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜上に直接E
L発光層、透明電極層を形成する工程とを含むEL素子
の製造方法を提供する。
【0019】
【作用】本発明の方法において形成される第2のデュプ
レクス型陽極酸化皮膜は、酸性陽極酸化により形成した
第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜のバリヤー層を主と
して表面側に成長させたものである。したがって、この
第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜を構成するバリヤー
層の厚みは厚く、かつ、このバリヤー層は緻密な層であ
る。このため、第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜は、
電気的絶縁特性の優れた電気的絶縁層となり得る。
【0020】また、第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜
を構成する多孔質層のポア深さは、第1のデュプレクス
型陽極酸化皮膜のポア深さよりは浅いが、第2のデュプ
レクス型陽極酸化皮膜には依然としてポアが残ってい
る。したがって、バリヤー型皮膜のみ(ポアなし)で形
成された陽極酸化皮膜と比べて、第2のデュプレクス型
陽極酸化皮膜の表層は起伏に富む。このため、EL発光
層形成時のバインダの濡れ性等が改善されて、はじきを
防止することができる。EL発光層形成時のはじきを防
止することにより、EL素子の発光ムラを減少させるこ
とができる。
【0021】このように、本発明の方法では電気的絶縁
特性に優れた電気的絶縁層を形成することができるとと
もに、得られるEL素子の発光ムラを減少させることが
できることから、輝度や発光効率等の電気的特性の少な
くとも1つが改良されたEL素子で、かつ発光ムラの少
ないEL素子を製造することができる。
【0022】要するに、本発明のEL素子の製造方法で
は、デュプレクス型陽極酸化皮膜(酸性陽極酸化処理)
とバリヤー型陽極酸化皮膜(中性陽極酸化処理)との双
方の利点を併せ持つEL素子を製造することができる。
【0023】特に、第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜
を構成する多孔質層のポア径を0.05μm以上、ポア
深さを0.1〜0.5μmにすることにより、EL発光
層の形成時にバインダーをポア内に十分に入り込ませる
ことができる。バインダーがポア内に十分に入り込むと
ポア内の空間が減少して、EL発光層と第2のデュプレ
クス型陽極酸化皮膜との密着性が改善される。この密着
性の改善により、発光ムラが改善されるとともに、輝度
が向上する。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。ま
ず、粘着剤を塗布した有機フィルムにより片面をマスキ
ングした純度99.99%のアルミニウム箔を陽極と
し、カーボン板を陰極とし、純水1リットル中に炭酸ナ
トリウム150gと燐酸ナトリウム50gとを溶かした
液を電解液として用いて、電流密度12A/dm2 、電
解液温度90℃の条件で2分間電解研磨を行って、片面
が電解研磨されたアルミニウム箔を得た。
【0025】次いで、電解研磨したアルミニウム箔を陽
極とし、純度99.99%のアルミニウム板を陰極と
し、4%燐酸水溶液を酸性電解液として用いて、電流密
度0.8A/dm2 、電解液温度約25℃の条件で5分
間定電流電解して、酸性陽極酸化を行った。
【0026】この酸性陽極酸化により、図1に示すよう
に、アルミニウム箔1の電解研磨された面上には、孔径
0.1μm程度のポア2を有する多孔質層3(厚み約
0.55μm程度)とバリヤー層4(厚み約0.05μ
m程度)とを含む第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜5
(厚み約0.6μm程度)が形成された。
【0027】次に、第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜
を形成した後のアルミニウム箔を陽極とし、純度99.
99%のアルミニウム板を陰極とし、0.05mol/
リットルのアジピン酸アンモニウム溶液を中性電解液と
して用いて、電流密度0.8A/dm2 、電解液温度約
60℃の条件で電圧が250Vに到達するまで定電流電
解し、その後、電流値が1/10になるまで定電圧電解
して、中性陽極酸化を行った。
【0028】この中性陽極酸化により、図2に示すよう
に、孔径0.1μm程度でポア深さ約0.3μm程度と
前記ポア2に比べてポア深さの浅いポア2aを有する多
孔質層3aと、前記バリヤー層4が主として表面側に成
長し、厚みの増したバリヤー層6とを含む第2のデュプ
レクス型陽極酸化皮膜7が形成された。なお、バリヤー
層6は前記バリヤー層4と比べて約0.3μm程度まで
厚くなっており、第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜7
全体の厚みは約0.7μm程度となっていることから、
アルミニウム素地と酸化皮膜との界面にもバリヤー層が
成長したものと考えられる。なお、図2において図1と
共通する部分については、図1と同じ符号を付してその
説明を省略する。
【0029】バリヤー層の成長は、以下のような反応に
よるものと考えられる。酸性水溶液中で陽極酸化した
後、さらに中性陽極酸化することにより、図3に示すよ
うに、陽極酸化皮膜5の下地であるアルミニウム箔1側
からAl3+イオンのイオン伝導が起こり、電解液側から
はO2-イオンのイオン伝導が起こると考えられる。そし
て、Al3+イオンとO2-イオンとがぶつかったところで
Al23を形成する。この時、新たな陽極酸化皮膜を
形成すると共に、第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜5
の膜質が緻密なものに改善される。なお、図3において
図1と共通する部分については、図1と同じ符号を付し
てある。
【0030】なお、電解液からはO2-イオンの他の陰イ
オンも膜中に侵入し得るので、厳密には、酸性陽極酸化
で形成した酸化皮膜とその後に中性陽極酸化で形成した
酸化皮膜とは膜質が異なる。例えば、酸性電解液として
燐酸系のものを使用すれば、皮膜中に燐が混入する。
【0031】この結果、第1のデュプレクス型陽極酸化
皮膜5を構成していたバリヤー層4が主として酸化皮膜
表面側に成長し、バリヤー層の厚みが増した皮膜が形成
される。この状態を図2に示す。なお、図2中の2点鎖
線は、アルミニウム箔を酸性水溶液中で陽極酸化したと
きのアルミニウムと酸化皮膜との境界を示す。図2から
判るように、アルミニウム素地と酸化皮膜との界面でも
酸化皮膜が成長する。
【0032】このようにして第2のデュプレクス型陽極
酸化皮膜7を形成した後、蛍光体粉末を分散させたシア
ノエチル−4,4,6−トリグルカン(シアノエチルプ
ルラン)等のバインダにDMF(ジメチルホルムアミ
ド)を加えてインク状にしたEL発光剤を、第2のデュ
プレクス型陽極酸化皮膜7上に直接塗布し、乾燥して、
EL発光層を形成した。
【0033】さらに、ITOを蒸着し、かつリード線を
付けた透明電極フィルムを熱圧着により貼付した。この
後、アルミニウム箔の片面に付けておいたフィルムを外
し、フィルムを外した側のアルミニウム箔表面からリー
ド線を導出して、図4に示すような構造のEL素子を得
た。
【0034】同図に示すEL素子10は、背面電極とし
てのアルミニウム箔1と、このアルミニウム箔1の一表
面に形成された第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜7
(電気的絶縁層)と、この第2のデュプレクス型陽極酸
化皮膜7上に形成されたEL発光層11と、このEL発
光層11上に形成された透明電極フィルム12とを備え
ている。そして、透明電極フィルム12からはリード線
13aが、またアルミニウム箔1からはリード線13b
が導出されている。
【0035】このようにして製造したEL素子(サンプ
ル1)の性能を、印加電圧100V(交流400Hz)
の条件で測定した。結果を表1に示す。
【0036】比較例1 まず、サンプル1の場合と同様にしてアルミニウム箔の
一表面に電解研磨を施した。
【0037】次に、高誘電率有機樹脂を溶剤に溶き、こ
れにチタン酸バリウム粉末を分散させてインク状にした
ものを、アルミニウム箔の電解研磨された面上に印刷法
により塗布し、乾燥させて、厚み約40μmの電気的絶
縁層(樹脂絶縁層)を形成した。
【0038】この後、樹脂絶縁層上に、サンプル1の場
合と同様にしてEL発光層および透明電極を形成し、さ
らにリード線を導出して、EL素子(サンプル2)を得
た。比較のため、このEL素子の性能をサンプル1の場
合と同様にして測定した。結果を表1に併せて示す。
【0039】比較例2 サンプル1の場合と同様にしてアルミニウム箔の一表面
に電解研磨を施した後、電解研磨後のアルミニウム箔を
陽極とし、純度99.99%のアルミニウム板を陰極と
し、0.05mol/リットルのアジピン酸アンモニウ
ム溶液を中性電解液として用いて、電流密度0.8A/
dm2 、電解液温度約60℃の条件で電圧が250Vに
到達するまで定電流電解した後、電流値が1/10にな
るまで定電圧電解して、中性陽極酸化を行った。この中
性陽極酸化により、アルミニウム箔の電解研磨された面
上に、サンプル1と同程度の厚みを有するバリヤー型陽
極酸化皮膜を形成した。
【0040】この後、バリヤー型陽極酸化皮膜上に、サ
ンプル1の場合と同様にしてEL発光層および透明電極
を形成し、さらにリード線を導出して、EL素子(サン
プル3)を得た。
【0041】比較のため、このEL素子の性能をサンプ
ル1の場合と同様にして測定した。結果を表1に併せて
示す。
【0042】
【表1】
【0043】表1から明らかなように、サンプル1は、
サンプル2およびサンプル3よりも輝度と発光効率が向
上しており、かつ、消費電力は低減していた。また、過
電圧がかかった場合でも電気的絶縁層が破壊されないこ
とが確認でき、さらに、発光ムラが少ないことが確認で
きた。
【0044】またサンプル1は、サンプル3に比べて静
電容量が高く、かつ等価直列抵抗(ESR)が小さいこ
とが確認できた。これらのことから、サンプル1で電気
的絶縁層として用いている第2のデュプレクス型陽極酸
化皮膜は、中性陽極酸化によるバリヤー型陽極酸化皮膜
とは膜質の性状が異なり、かつコンデンサーと考えたと
きの特性に優れているものと考えられる。
【0045】以上の結果から、酸性陽極酸化後に中性陽
極酸化を行うと、中性陽極酸化のみで得られるバリヤー
型陽極酸化皮膜より更に緻密な陽極酸化皮膜を得ること
ができるものと考えられる。
【0046】上述の実施例によれば、電気的絶縁層の形
成に塗布工程を用いることなく、かつ同等以上の特性を
有するEL素子を製造することが可能である。本発明の
EL素子の製造方法は上述の方法に限定されるものでは
なく、種々の変形例および応用例を含む。
【0047】例えば、第2のデュプレクス型陽極酸化皮
膜中の成長したバリヤー層(図2中の符号6)の厚み
は、上述の実施例では約0.3μm程度であったが、
0.1〜0.5μm程度の範囲内で適宜変更可能であ
る。0.5μmを超えると第2のデュプレクス型陽極酸
化皮膜中での電圧降下が大きくなり、得られるEL素子
の輝度が低下しやすい。一方、0.1μm未満では得ら
れるEL素子の耐電圧性が低下しやすい。
【0048】また、第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜
中の多孔質層については、ポア深さは0.1〜0.5μ
m程度が好ましい。ポアの深さが浅すぎると、EL発光
層との密着性が悪くなって、得られるEL素子の輝度が
低下する他、発光ムラも大きくなる。一方、深すぎる
と、ポア内にバインダーが充填されずに隙間が生じるた
め、得られるEL素子の輝度が低下する。
【0049】ポア径は0.05μm以上であればよい
が、0.05〜0.5μm程度が好ましい。0.05μ
m未満では、孔径が小さ過ぎて実質的に効果がない。前
述したバリヤー層の厚みと上述したポア深さとの関係か
ら、第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜の厚み(図2中
の符号7)は、0.2〜1.0μmの範囲内が好まし
い。
【0050】このような第2のデュプレクス型陽極酸化
皮膜を得るために先ず行う酸性陽極酸化の電解液として
は、硫酸、クロム酸、蓚酸、燐酸等の無機、または有機
酸の酸性水溶液を用いることができる。いずれの酸性電
解液を用いた場合でも、アルミニウム箔の表面に、多孔
質層とバリヤー層とを含む第1のデュプレクス型陽極酸
化皮膜を形成することができる。
【0051】酸性陽極酸化時の電流密度は0.1〜3A
/dm2 の範囲内が好ましい。電解浴温度は、常温〜4
0℃が好ましい。ただし、これらの条件は制限的なもの
ではない。
【0052】酸性電解液の種類や、電流密度、定電圧移
行後の降下電流値、電解浴温度等の条件を適宜選択する
ことにより、第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜を構成
する多孔質層のポア径やポア深さ、第1のデュプレクス
型陽極酸化皮膜を構成するバリヤー層の膜厚等を制御す
ることができる。
【0053】第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜を得た
後に、この陽極酸化皮膜中のバリヤー層を成長させるた
めに行う中性陽極酸化の電解液としては、ホウ酸アンモ
ニウム系水溶液、燐酸アンモニウム系水溶液、アジピン
酸アンモニウム系水溶液等、pH5〜8の無機、または
有機酸またはそれらの塩の中性水溶液を用いることがで
きる。いずれの電解液を用いた場合でも、第1のデュプ
レクス型陽極酸化皮膜中のバリヤー層を成長させて、多
孔質層と成長したバリヤー層とを含む第2のデュプレク
ス型陽極酸化皮膜を形成することができる。
【0054】中性陽極酸化時の電流密度は0.1〜5A
/dm2 の範囲内が、また定電圧移行後の降下電流値は
0.01〜5A/dm2 の範囲内がそれぞれ好ましい。
電解浴温度は、常温〜90℃が好ましい。ただし、これ
らの条件は制限的なものではない。
【0055】本発明の方法では、上述のようにして形成
した第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜上に直接、EL
発光層を形成することができる。EL発光層の形成方法
は特に限定されるものではなく、たとえば、シアノエチ
ル−4,4,6−トリグルカンやシアノエチルポリビニ
ールアルコール等の高誘電率を有するバインダに蛍光体
粉末を分散し、DMF(ジメチルホルムアミド)等の溶
剤で溶いてインク状としたものを塗布し、乾燥するとい
った当分野で公知の方法を適用することができる。
【0056】また、EL発光層上に透明電極を形成する
際の方法も特に限定されるものではなく、ポリエステル
フィルム表面にITOを蒸着した透明電極フィルムを熱
圧着する方法の他にも、たとえば、ITO粉末をシアノ
エチル−4,4,6−トリグルカン等のバインダと共に
DMF等の溶剤で溶いてインク状としたものをEL発光
層上に塗布し、乾燥するといった方法等の当分野で公知
の方法を適用することができる。
【0057】このようにして透明電極まで形成した構造
に対しては、一般に、電圧を印加する機構を設ける。電
圧を印加する機構は、例えば、背面電極であるアルミニ
ウム箔と透明電極からそれぞれリード線を導出して図4
に示したような構造にすることにより設けることができ
るが、この構造に限定されるものではない。さらに、E
L素子本体を防湿フィルムのパッケージに収容する等の
方法により封止することが好ましい。
【0058】上述のようにして製造されたEL素子で
は、成長したバリヤー層を含む第2のデュプレクス型陽
極酸化皮膜が電気的絶縁層として機能するので、耐電圧
性を改良すると同時に、輝度や発光効率等の電気的特性
を改良することができる。さらに、多孔質層の存在によ
り、EL発光層形成時のバインダの濡れ性等が改善さ
れ、得られるEL素子の発光ムラも少なくできる。
【0059】なお、前述した実施例では酸性陽極酸化を
行うのに先立ってアルミニウム箔の表面を電解研磨した
が、表面研磨は行っても行わなくてもよい。表面研磨の
方法としては、電解研磨法の他に化学研磨法、機械研磨
法等の方法を適用することができる。
【0060】以上、本発明の変型例および応用例につい
て説明したが、その他、アルミニウム箔に代えてアルミ
ニウム板や表面にアルミニウム層を有する部材等、種々
の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自
明であろう。
【0061】なお本発明の方法は、たとえばLCD装置
のバックライト用光源の他、種々の用途のEL素子の製
造に適用することができる。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
発光ムラの低減されたEL素子を提供することが可能で
ある。
【0063】さらに、耐電圧性が高く、電気的特性に優
れたEL素子を簡単な工程で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜の断面スケ
ッチである。
【図2】第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜の断面スケ
ッチである。
【図3】第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜を構成する
バリヤー型陽極酸化皮膜が中性陽極酸化により表面側に
成長する原理を説明するための断面図である。
【図4】実施例で得られたEL素子の概略的断面図であ
る。
【図5】従来技術によるEL素子の概略的断面図であ
る。
【符号の説明】
1 アルミニウム箔(背面電極) 2,2a ポア 3,3a 多孔質陽極酸化皮膜 4 バリヤー型陽極酸化皮膜(酸性陽極酸化によるも
の) 5 第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜 6 成長したバリヤー型陽極酸化皮膜 7 第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜(電気的絶縁
層) 10 EL素子 11 EL発光層 12 透明電極フィルム 13a,13b リード線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 恒 茨城県つくば市東光台5−9−6 日本 重化学工業株式会社筑波研究所内 (72)発明者 外村 毅 茨城県つくば市東光台5−9−6 日本 重化学工業株式会社筑波研究所内 (72)発明者 藤井 雄幸 茨城県つくば市東光台5−9−6 日本 重化学工業株式会社筑波研究所内 (72)発明者 近藤 健一 東京都世田谷区千歳台2−33−1 (72)発明者 齋田 隆浩 神奈川県横浜市緑区藤が丘1−22−15 シンセリティ藤が丘201 (72)発明者 田谷 周一 神奈川県横浜市緑区荏田南2−17−8 志村マンション405号 (72)発明者 山川 禎康 山形県長井市幸町1番1号 マルコン電 子株式会社内 (72)発明者 大沢 俊一 山形県長井市幸町1番1号 マルコン電 子株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−205989(JP,A) 特開 平4−48580(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05B 33/26 H05B 33/10

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム箔と、このアルミニウム箔
    の表面に形成されたデュプレクス型陽極酸化皮膜を含む
    電気的絶縁層と、この電気的絶縁層の上に直接形成され
    たEL発光層と、このEL発光層上に形成された透明電
    極とを有するEL素子であって、 前記デュプレクス型陽極酸化皮膜は、酸性陽極酸化後主
    としてバリヤー層を表面側に成長させることによりポア
    深さを浅く、バリヤー層を厚くした皮膜であり、この皮
    膜のバリヤー層の厚みが0.1〜0.5μm、ポア径が
    0.05μm以上、ポア深さが0.1〜0.5μmであ
    るEL素子。
  2. 【請求項2】 アルミニウム箔を酸性電解液中で陽極酸
    化することにより、前記アルミニウム箔の表面に第1の
    デュプレクス型陽極酸化皮膜を形成する工程と、 前記第1のデュプレクス型陽極酸化皮膜が形成されたア
    ルミニウム箔をさらに中性電解液中で陽極酸化すること
    により、主として前記第1のデュプレクス型酸化皮膜を
    構成するバリヤー層を表面側に成長させて、ポア深さが
    浅く、バリヤー層の厚い第2のデュプレクス型陽極酸化
    皮膜を形成する工程と、 前記第2のデュプレクス型陽極酸化皮膜上に直接EL発
    光層、透明電極層を形成する工程とを含むEL素子の製
    造方法。
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