JP2778877B2 - 単相変圧器の組立法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は単相変圧器の組立法に係
り、特に並置される２台の単位変圧器と高圧ブッシング
ポケットとを接続する単相変圧器の組立法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、電力需要の増大に伴ない、効率良
く送電を行うため送電電圧を高める傾向にあり、現在１
０００ｋＶ級のＵＨＶ送電が計画されている。変圧器に
関しても従来の最大規模の５００ｋＶ級変圧器に比べ、
電圧，容量共に２倍程度となるため、飛躍的な進歩を必
要としている。また、このＵＨＶ級変圧器を据付ける変
電所の立地条件も山岳地が多く、このため種々の輸送制
約が生じることになるので、現在の５００ｋＶ送電用変
電所以上に多くの輸送制約を受けることが予想される。

【０００３】したがって、従来の５００ｋＶ変圧器のよ
うに単相変圧器３台で三相構成することが不可能とな
り、単相変圧器をさらに２台の単位変圧器で構成する必
要がある。

【０００４】このような単位変圧器から構成された単相
変圧器を図６について説明する。単相変圧器を構成する
各単位変圧器１Ａ，１Ｂはタンク７Ａ，７Ｂ内に配置さ
れた鉄心６およびこの鉄心６の主脚に巻回された巻線２
より成る。各単位変圧器１Ａ，１Ｂを並列接続する高圧
リード３は、各単位変圧器１Ａ，１Ｂが互いに対向する
タンク面間に配置された高圧線路端の高圧ブッシングポ
ケット５内のブッシング４に接続される。ここで、ＵＨ
Ｖ変圧器の場合、高圧リード３の電位は約１０００ｋＶ
となる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ＵＨＶ変圧器の高圧リ
ードは従来の最高電圧である５００ｋＶリードに比べ２
倍の電圧となることから、ほぼ巻線高さの中央部よりタ
ンク対向面を貫通して最短距離で高圧線路端の高圧ブッ
シング４に接続する構成が採用されている。一方、高圧
ブッシングポケット５は輸送制約上から各単位変圧器１
Ａ，１Ｂのタンク７Ａ，７Ｂより分解して現地で再組立
する必要がある。

【０００６】したがって、現地での高圧ブッシングポケ
ット５とタンク７Ａ，７Ｂとの組立および高圧リード３
の接続と絶縁作業をどれだけ省略出来るか、また現地組
立作業において高圧ブッシングポケット５や各単位変圧
器１Ａ，１Ｂに使用された多量の絶縁物の吸湿と異物混
入防止が、ＵＨＶ変圧器の信頼性を確保する上で最も重
要な課題となる。

【０００７】本発明は、上記した従来技術の課題を解消
するためになされたもので、その目的は、ＵＨＶ変圧器
において１０００ｋＶ高圧ブッシングポケットと２台の
単位変圧器との組立を容易にすることと、高圧リードの
接続，絶縁作業等の現地組立を最小にしかつ再組立作業
中の防湿，防塵対策を実施することにより現地での変圧
器組立の信頼性向上を図ることが可能な単相変圧器の組
立法を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の請求項１は、並列結線する単位変圧器２台
を各々収納する変圧器タンクの長辺面が互いに対向する
よう配置し、この２台の単位変圧器間を並列接続する高
圧リードと接続される高圧ブッシングの一側端を内部に
収納する高圧ブッシングポケットを前記変圧器タンク長
辺間に配置する単相変圧器の組立法において、 （１）前記高圧ブッシングポケット内に取り付けられ前
記単位変圧器間を接続する前記高圧リードの前記高圧ブ
ッシングポケットより突出する両端部を気密性フィルム
でシールするとともに、このシールされた前記両端部を
各々対向する前記単位変圧器の巻線と接続するため、こ
れら前記変圧器タンクに設けられた接続開口部内を気密
性フィルムでシールしておく第１の手順と、 （２）一方の前記変圧器タンクの接続開口部内に前記高
圧リードの一側端部を接続した後、他方の前記変圧器タ
ンクを移動支持装置により支持移動させながら、前記高
圧リードの他側端部を接続させる第２の手順と、 （３）第２の手順の後、 前記気密性フィルムを取除き、
前記高圧リードと前記巻線を接続絶縁する第３の手順か
ら成ることを特徴とする。

【０００９】

【作用】本発明の単相変圧器の組立法によれば、高圧リ
ードは巻線との接続を切離す以外は正規組立状態で輸送
するため、現地再組立はブッシングポケットと各単位変
圧器タンクとの組立および高圧リードと巻線との接続の
みに限定できる。また、現地組立作業中、高圧ブッシン
グポケットから突出する高圧リード，絶縁バーリヤと単
位変圧器タンクの開口部とは気密性フィルムでシールす
るため作業中の中身の吸湿と外部からの異物混入を確実
に防止できる。さらに、一方の単位変圧器タンクと高圧
ブッシングポケットを組立てた後、他方の単位変圧器タ
ンクを移動装置とジャッキとにより基礎面より一定寸法
持上げた状態で移動することが可能なため現地組立てを
容易に行うことができる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の実施例を図を参照して説明す
る。図１は並列接続する２台の単位変圧器と１０００ｋ
Ｖ高圧ブッシングとの接続を示す側面図である。同図に
示すように、単相変圧器を構成する各単位変圧器１Ａ，
１Ｂはタンク７Ａ，７Ｂ内に配置された鉄心６およびこ
の鉄心６の主脚に巻回された巻線２より構成されてい
る。

【００１１】各単位変圧器１Ａ，１Ｂが互いに対向する
タンク面間には高圧線路端側の高圧ブッシングポケット
５が配置されており、各単位変圧器１Ａ，１Ｂを並列接
続する高圧リード３は、高圧ブッシングポケット５内の
ブッシング４に接続される。また、各単位変圧器１Ａ，
１Ｂの巻線２と高圧ブッシング４との接続は高圧線路端
が配置される巻線高さや中央部付近でタンク接続ダクト
８を貫通して高圧リード３で接続される。また高圧リー
ド３は多重の絶縁バーリヤ３ａで絶縁されており、この
高圧リード３の両端はそれぞれ各単位変圧器１Ａ，１Ｂ
の巻線口出し２ａに接近させることにより接続部の絶縁
を容易にする。

【００１２】輸送時の高圧リード３は、図２に示すよう
に巻線口出し２ａと切離す以外は多重の絶縁バーリヤ３
ａを正規に組立てたまま輸送する。高圧リード３の高圧
ブッシングポケット５より突出する部分は気密性フィル
ム１０をポケット端部に取付け気密シールした上で輸送
カバー１１を取付け保護した後、輸送する。

【００１３】現地における単位変圧器１Ａ，１Ｂと１０
００ｋＶ高圧ブッシングポケット５との組立途上を図３
に示している。すなわち、高圧ブッシングポケット５と
接続する単位変圧器１Ａの接続ダクト８開口部は高圧リ
ード３がタンク７Ａの内側に突出する部分を収納できる
袋状のフィルム１０であらかじめ工場出荷前にシールし
ておき、現地での高圧ブッシングポケット５と単位変圧
器タンク７Ａ，７Ｂとの組立作業後撤去する。

【００１４】次に、高圧ブッシングポケット５と単位変
圧器タンク７Ａ，７Ｂとの組立法を図４と図５を参照し
て説明する。すなわち、一方の変圧器タンク７Ｂを基礎
面１６の正規位置にセットした後、高圧ブッシングポケ
ット５をレッカ車で吊り上げ組立てる。次に他方の変圧
器タンク７Ａを正規位置近傍にセットした後前後方向の
移動位置１３と左右方向のスライド装置１４とジャッキ
１５とにより変圧器タンク７Ａを支持する。

【００１５】変圧器タンク７Ａは基礎面上より移動可能
なレベルＳに持上げ、前後，左右，上下に調整すること
により、既に一方を組立てた高圧ブッシングポケット５
と接続する。この時変圧器１Ｂと高圧ブッシングポケッ
ト５は、ジャッキ１５により変圧器１Ａと同一レベルＳ
に持上げておき、変圧器１Ａと組立後同時に基礎面１６
に降ろし固定する。

【００１６】次に、本実施例の作用について説明する。
２台の単位変圧器１Ａ，１Ｂ間に配置した１０００ｋＶ
高圧ブッシング４と巻線２との接続は巻線口出し２ａ近
傍で、かつ高圧リード３を巻線２面まで延長して行うた
め接続部が同電位の巻線面でシールドされ、絶縁構成と
現地組立作業とが大巾に簡略化される。

【００１７】高圧ブッシング４と高圧リード３はその周
囲に多重の絶縁バーリヤ３ａを組立て高圧ブッシングポ
ケット５に収納したままで図２に示すように両端部を気
密性のフィルム１０でシールした上で輸送カバー１１を
取付け輸送するので、現地での多重の絶縁バーリヤ３ａ
の組立作業や中身露出が無く、吸湿と異物混入が防止さ
れリード絶縁に関する工場組立品質をそのまま確保する
ことが可能となる。

【００１８】単位変圧器１Ａ，１Ｂと高圧ブッシングポ
ケット５との現地組立作業は、図３に示すように高圧ブ
ッシングポケット５端部と変圧器タンクの接続ダクト８
部分に取付けられたフィルム１０により内部の絶縁物の
吸湿と異物混入が防がれ絶縁品質が確保される。

【００１９】一方、単位変圧器１Ａ，１Ｂの輸送重量は
２００トン程度となるが、高圧ブッシング４と接続する
ための移動や芯出しは基礎面１６上にセットした前後，
左右，上下方向への移動調整が可能な移動装置１３とス
ライド装置１４とジャッキ１５とを組合せて行うため、
高圧ブッシングポケット５端から高圧リード３が突出し
た状態でも精度高くかつ容易に行うことが出来る。

【００２０】上述したように、現地における単位変圧器
１Ａ，１Ｂと高圧ブッシングポケット５との組立法を採
用することにより高圧リード３の接続作業を巻線口出し
２ａ部のみに限定しかつ前述の防湿，防塵対策を行うこ
とにより最も重要なＵＨＶ変圧器の高圧リードの絶縁信
頼性を確保することが可能となる。

【００２１】また、変圧器タンク７Ａ，７Ｂと高圧ブッ
シングポケット５との組立精度を高め作業を容易にする
ため接続ブッシング部等に芯出しガイドを取付ける。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の変圧器の
組立法によれば、ＵＨＶ変圧器の１０００ｋＶ高圧課電
部分で唯一分解輸送し、現地で再組立するので、分解部
分の最小化と完全な防湿・防塵対策あるいは現地組立工
期の短縮が図れる。したがって、ＵＨＶ変圧器の現地組
立品質の信頼性を確保することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の構成図。

【図２】図１の高圧ブッシングとリードとの輸送方法を
示す図。

【図３】高圧ブッシングポケットと単位変圧器との組立
途上における中身の防湿，防塵対策を示す図。

【図４】図３の組立途中を示す図。

【図５】図３の組立最終段を示す図。

【図６】従来の２台の単位変圧器と線路端ブッシングと
からなる単相変圧器の構成図。

【符号の説明】

１Ａ，１Ｂ…単位変圧器、２，２ａ…高圧巻線，口出
し、３，３ａ…高圧リード，絶縁バーリヤ、４…高圧ブ
ッシング、５…高圧ブッシングポケット、６…鉄心、７
Ａ，７Ｂ…変圧器タンク、８…接続ダクト、１０…気密
性フィルム、１１…輸送カバー、１２…クリーンルー
ム、１３…移動装置、１４…スライド装置、１５…ジャ
ッキ、１６…基礎。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 並列結線する単位変圧器２台を各々収納
   する変圧器タンクの長辺面が互いに対向するよう配置
   し、この２台の単位変圧器間を並列接続する高圧リード
   と接続される高圧ブッシングの一側端を内部に収納する
   高圧ブッシングポケットを前記変圧器タンク長辺間に配
   置する単相変圧器の組立法において、 （１）前記高圧ブッシングポケット内に取り付けられ前
   記単位変圧器間を接続する前記高圧リードの前記高圧ブ
   ッシングポケットより突出する両端部を気密性フィルム
   でシールするとともに、このシールされた前記両端部を
   各々対向する前記単位変圧器の巻線と接続するため、こ
   れら前記変圧器タンクに設けられた接続開口部内を気密
   性フィルムでシールしておく第１の手順と、 （２）一方の前記変圧器タンクの接続開口部内に前記高
   圧リードの一側端部を接続した後、他方の前記変圧器タ
   ンクを移動支持装置により支持移動させながら、前記高
   圧リードの他側端部を接続させる第２の手順と、 （３）第２の手順の後、 前記気密性フィルムを取除き、
   前記高圧リードと前記巻線を接続絶縁する第３の手順か
   ら成ることを特徴とする単相変圧器の組立法。
2. 【請求項２】 請求項１記載の単相変圧器の組立法にお
   いて、一方の単位変圧器と高圧ブッシングポケットを組
   立てた後、他方の単位変圧器を基礎上に配置した移動装
   置とジャッキで支持しながら移動することにより高圧ブ
   ッシングポケットの他方の接続口と接続することを特徴
   とする単相変圧器の組立法。