JP2777720B2 - オートテンショナ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、いわゆるサーペンタインベルトと称するも
ののような比較的長いベルトのために用いられるオート
テンショナであって、ベルトの張力変動やベルトの伸縮
に応じてベルトのテンションを調節し、ベルトのテンシ
ョンを一定に保てるよう大きな揺動ストロークを得るよ
うに構成したオートテンショナに関する。

〈従来の技術〉 一般的に、サーペンタインベルトは、自動車などにお
いてオルターネータ，クーラーポンプおよびパワーステ
アリング装置のポンプなどの複数の補器間に巻き掛けら
れて用いられており、通常、このベルトのテンション調
節のためのオートテンショナは、ベルトの全長が長いた
めにベルトの張力変動やベルトの伸縮変動が大きくなる
傾向にあることから、その揺動範囲を大きく設定したも
のが採用されている。

ところで、この種のオートテンショナにおいては、ベ
ルトに転接させるプーリを支持した揺動アームがベルト
の振動によって簡単に揺動しないように、揺動アームに
対して揺動抵抗を与えるようにしており、一つの例とし
て摩擦板を用いた抵抗付与手段を備えたものがある。

この抵抗付与手段としては、揺動アームの揺動中心と
なる枢着部分から離した位置に設けるものや前記枢着部
分に内蔵したものなど、種々考えられている。ところ
が、前者のものの場合、全体の占有面積が大きくて取付
形態が制約されるといった不都合があり、コンパクト化
の点で優れた後者のタイプが望ましい。

この後者のタイプのオートテンショナとして例えば公
表特許公報昭和62-500041号に示されるものがある。こ
のオートテンショナの構造の概略を第４図に模式的に示
して説明する。

図において１で示す揺動アームの一端は固定部位２に
立設されたボルト３に、このボルト３を中心として揺動
可能に支持されており、揺動アーム１の他端には転がり
軸受４を介してプーリ５が回動自在に支持されている。
このプーリ５はテンショナを調節すべきベルト（図示省
略）に転接させられる。

また、揺動アーム１の一端側には前記ボルト３にて固
定されたボス６が設けられ、このボス６の内部の揺動ア
ーム１の左右位置において、一方には揺動アーム１を一
揺動方向に付勢するねじりコイルバネ７が、他方には二
枚の環状の摩擦板8a,8b,環状の皿ばね９および押付プレ
ート10が介装されている。この摩擦板8a,8bおよび皿ば
ね９は、揺動アーム１の揺動中心となるボルト３に外嵌
されている。

このオートテンショナでは、ベルトが緩むにつれて揺
動アーム１がねじりコイルバネ７のねじり力により一揺
動方向に付勢され、揺動アーム１の自由端に支持してい
るプーリ５がベルトに押し付けられ、ベルトのテンショ
ンを一定に保つようになっている。そして、皿ばね9,押
付プレート10および二枚の摩擦板8a,8bにより揺動アー
ム１と固定部位２との間に適当な摩擦抵抗を生じさせる
ことで、ベルトの振動により揺動アーム１が過敏に揺動
するのを防ぐようにして、ベルトの振動を抑制するよう
にしていた。

〈発明が解決しようとする課題〉 ところで、上記構成の従来例の場合には、次のような
不都合がある。

即ち、摩擦板8a,8bを皿ばね９により固定部位２に圧
接させるのに用いる押付プレート10が揺動アーム１の揺
動中心と同心に設けられていて、押付プレート10と摩擦
板8aとが周方向で相対回動可能になっているため、この
押付プレート10が揺動アーム１とともに同心状に回動し
て本来すべりを生じないはずの押付プレート10と摩擦板
8aとの間ですべりが生じ、揺動アーム１に対して正確な
揺動抵抗を付与できず、ベルトの振動を抑制するという
オートテンショナの機能が十分に発揮できなくなってい
た。

本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、揺
動アームに対して十分な揺動抵抗を付与できるように
し、ベルトの振動抑制が十分機能的に行われるオートテ
ンショナの構成を提供することを目的としている。

〈課題を解決するための手段〉 本発明は、このような目的を達成するために、次のよ
うな構成をとる。

即ち、本発明にかかるオートテンショナは、 固定部位に立設されたピンと、このピンまわりに回動
可能に枢着されたボスと、 このボスに一端が一体形成もしくは一体に連結された
揺動アームと、 この揺動アームの他端に回動自在に支持され、ベルト
に転接させられるプーリと、 前記揺動アームを一揺動方向に付勢し前記プーリをベ
ルトに対して圧接させる付勢部材と、 前記ピン近傍に設けられて前記揺動アームに揺動抵抗
を付与する摩擦抵抗付与手段と、 を備え、かつ、 前記摩擦抵抗手段が、 前記ボスにピンと平行に設けられ、ピン固定側に向け
て開放する柱状空間を形成する穴と、 この穴の開口側に進退自在に収容され、固定の部材に
対して接触させられる摩擦部材と、 前記穴の奥側に収容されて前記摩擦部材を外方へ突き
出し付勢する付勢部材とを備えてなることに特徴を有す
る。

〈作用〉 本発明の構成による作用は次のとおりである。

揺動アームの揺動に抵抗を与えてベルトの振動を減衰
させる摩擦式抵抗付与手段を、揺動アームの一端が枢着
されるピンの近傍に設けたから、コンパクト化が図れ
る。

また、摩擦式抵抗付与手段を揺動アームの揺動中心か
らずらして配置させ、かつ摩擦式抵抗付与手段の摩擦部
材と付勢部材とをボスの穴の内壁でもって揺動アームの
揺動方向に相対移動不能に拘束させたから、付勢部材と
摩擦部材との間ですべりが発生しなくなる。したがっ
て、摩擦部材を固定部材側に効果的に押しつけることが
可能となり、ここの摩擦抵抗により揺動アームに対して
十分な揺動抵抗が付与される。

〈実施例〉 以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明す
る。

第１図ないし第３図に本発明の一実施例を示してお
り、第１図は第２図のＩ−Ｉ線矢視断面図、第２図はオ
ートテンショナの全体平面図、第３図は揺動アーム単体
の斜視図である。

図において、20は揺動アームで、この揺動アーム20の
一端にはボス21が一体形成されており、揺動アーム20の
他端にはプーリ30が転がり軸受31を介して回動自在に支
持されている。なお、揺動アーム20とボス21とは一体形
成の他に、ボルト締結，圧入嵌合などにより一体に連結
して形成してもよい。この揺動アーム20は、そのボス21
が固定部位41に螺着されたボルト42（請求項に記載のピ
ンに相当）に中間部材50を介して枢着されており、この
ボルト42を中心として揺動アーム20が揺動可能になって
いる。

中間部材50は、基板51と、基板51の一側に同心状に一
体形成された内筒部52および外筒部53とを備えている。
この内筒部52に前記ボルト42が貫通され、内筒部52と外
筒部53との間にボス21が臨入されており、このボス21が
環状のブッシュ43,ワッシャ44およびスナップリング45
を介して内筒部52に取り付けられている。

そして、中間部材50の外筒部53と、ボス21との間に形
成される環状空間には、ねじりコイルバネ60が収容され
ており、ねじりコイルバネ60の一端は中間部材50の基板
51に、他端は揺動アーム20のボス21近傍にそれぞれ係止
されている。つまり、このねじりコイルバネ60のねじり
力により揺動アーム20が一揺動方向に付勢され、揺動ア
ーム20に支持させてあるプーリ30をベルト40（第２図参
照）に押し付けるようになっている。

さらに、揺動アーム20のボス21の肉厚部分において、
円周の対角位置二箇所には、ボルト42に平行でかつボル
ト42の固定側に向けて開放する穴22が設けられており、
この二つの穴22それぞれの奥側に圧縮コイルバネ23が収
容されているとともに、穴22それぞれの開口側に円柱状
の摩擦部材24が軸方向進退自在に収容されている。この
摩擦部材24は、圧縮コイルバネ23の伸長力によって、常
時、中間部材50の基板51表面に押し付けられている。こ
の穴22、圧縮コイルバネ23および摩擦部材24が摩擦式抵
抗付与手段を構成する。この実施例では摩擦式抵抗付与
手段をボス21の肉厚内部の二箇所に設けているが、その
数は一つであっても、二つ以上であってもよく、さらに
ボス21の外周所定位置に付設するものも本考案に含まれ
る。

さらに、ボス21の一方穴22近傍には長孔25が設けられ
ており、この長孔25には中間部材50の基板51の所定位置
に設けられる固定ピン（図示省略）が嵌入させられて、
揺動アーム20の揺動範囲を規制するようになっている。

次に上述した構成のオートテンショナの動作を説明す
る。

即ち、ねじりコイルバネ60により、常時、ボルト42を
揺動中心として第２図において時計方向に揺動アーム20
が付勢されており、この揺動アーム20の自由端に支持し
てあるプーリ30がベルト40に押し付けられる。

そして、ボス21の穴22に収容した圧縮コイルバネ23の
伸長力により摩擦部材24が常時において固定である中間
部材50の基板51に対して圧接させているから、摩擦部材
24と基板51との間で生ずる摩擦抵抗により前記揺動アー
ム20に対して十分な揺動抵抗が付与される。したがっ
て、ベルト40の振動に対し、ベルト40からの反力をプー
リ30を介して揺動アーム20が受けても、揺動アーム20は
ベルト反力が摩擦抵抗力を上回るまではふらつくことが
なく、これによりベルト40の振動を抑制することができ
る。

ところで、中間部材50の基板51と摩擦部材24との間の
摩擦抵抗は、摩擦部材24の素材，中間部材50の基板51の
素材，圧縮コイルバネ23のばね力を適宜に選択すること
によって任意に設定することができる。

〈発明の効果〉 以上説明したように、本発明によれば、揺動アームの
揺動中心からずらした位置に設けた穴の内壁によって付
勢部材と摩擦部材とを揺動アームの揺動方向に相対変位
不能に拘束させたから、揺動アームの揺動時において付
勢部材と摩擦部材との間ですべりが発生するのを防止で
きる。したがって、固定の部材と揺動アームとの間に正
確な摩擦抵抗を与えることができるから、この摩擦抵抗
の調節が容易となり、ベルトの伸縮や張力変動により生
ずるベルトの振れを抑制し、かつベルトのゆるみに対し
ても速やかに追従しうるというオートテンショナの特性
を十分に発揮せしめることができる。

また、摩擦式抵抗付与手段をピン近傍に設けたからコ
ンパクト化を図ることができ、さらに摩擦式抵抗手段を
穴と、そこに収容するだけの摩擦部材および付勢部材と
の簡素な構成としてかつそれらの組立作業を容易にさせ
たから、低コスト化に貢献できる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は本発明の一実施例にかかり、第１
図は第２図のＩ−Ｉ線断面矢視図、第２図はオートテン
ショナ全体の平面図、第３図は揺動アーム単体の斜視図
である。 また、第４図は従来例のオートテンショナの概略構成を
模式的に示した縦断面図である。 20……揺動アーム、21……ボス、22……穴、24……摩擦
部材、23……圧縮コイルばね（付勢部材）、30……プー
リ、40……ベルト、41……固定部位、42……ボルト（ピ
ン）、60……ねじりコイルバネ（付勢部材）。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定部位に立設されたピンと、このピンま
   わりに回動可能に枢着されたボスと、 このボスに一端が一体形成もしくは一体に連結された揺
   動アームと、 この揺動アームの他端に回動自在に支持され、ベルトに
   転接させられるプーリと、 前記揺動アームを一揺動方向に付勢し前記プーリをベル
   トに対して圧接させる付勢部材と、 前記ピン近傍に設けられて前記揺動アームに揺動抵抗を
   付与する摩擦式抵抗付与手段とを備え、かつ、 前記摩擦式抵抗付与手段が、 前記ボスにピンと平行に設けられ、ピン固定側に向けて
   開放する柱状空間を形成する穴と、 この穴の開口側に進退自在に収容され、固定の部材に対
   して接触させられる摩擦部材と、 前記穴の奥側に収容されて前記摩擦部材を外方へ突き出
   し付勢する付勢部材とを備えてなることを特徴とするオ
   ートテンショナ。