JP2770559B2 - 無整流子直流電動機 - Google Patents

無整流子直流電動機

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は無整流子直流電動機に関し、さらに詳しくは
永久磁石回転子の回転位置を検出するためのホール素子
の如き回転子位置検出素子を不要とした無整流子直流電
動機に関するものである。
従来の技術 無整流子直流電動機はブラシ付の直流電動機に比べ機
械的接点を持たないため長寿命であると同時に電気的雑
音も少なく、近年、高信頼性が要求される産業用機器や
映像・音響機器に広く応用されている。
従来、この種の無整流子直流電動機はそのほとんどが
固定子巻線の通電相切換えのために、ブラシに相当する
回転子位置検出素子(例えばホール素子)を使用してい
る。しかしながら回転子位置検出素子自体決して安価な
ものではなく、さらに素子の取付け位置調整の煩雑さ、
配線数の増加により無整流子直流電動機はブラシ付直流
電動機に比べて大幅にコストが上昇する欠点がある。
また電動機内部に回転子位置検出素子を取り付けなけ
ればならないため構造上の制約が起こることがしばしば
ある。近年、機器の小型化に伴い使用される電動機も小
型かつ薄型化されホール素子等の位置検出素子を取り付
ける場所的余裕がなくなってきている。
そこでホール素子の如き回転子位置検出素子の全くな
い無整流子直流電動機が従来よりいくつか提案されてい
る。
その1つは、例えば特開昭55−160980号公報に示され
るような固定子巻線の電流を一方向だけに供給する、い
わゆる半波駆動方式の無整流子直流電動機がある。これ
は、起動時に自起動回路で特定の固定子巻線相のみを付
勢して回転子の位置決めを予め行い、次に3相の固定子
巻線のうち休止中の2つの固定子巻線に誘起される逆起
動力を検出して演算処理することによって次の通電相を
決定し固定子巻線に電流を一方向だけに順次供給するも
のである。
さらには、例えば特開昭62−260586号公報に示される
ような固定子巻線に電流を両方向に供給する、いわゆる
全波駆動方式の無整流子直流電動機がある。
これは、電動機の起動時には起動パルス発生回路の出
力する起動パルスで固定子巻線に流れる電流を強制的に
順次切り換えて駆動し、回転子の回転が上昇して固定子
巻線に逆起電力が誘起されたときに逆起電力のゼロクロ
ス点を検出し、その出力信号をモノマルチで一定時間だ
け遅延させることによって通電のタイミングを決定する
ものである。
以下、従来例の駆動波形について第2図および第3図
を参照しながら説明する。
第2図は無整流子直流電動機を構成する固定子巻線電
力供給手段の一例を示す回路構成図、第3図は従来例に
おけるその各部信号波形図である。
第2図において、27は永久磁石回転子、11,12,13は固
定子巻線、21,22,23,24,25,26は駆動用トランジスタで
これらのトランジスタをオン・オフすることにより固定
子巻線11,12,13に電流を供給する。そのうち、21,22,23
はPNPトランジスタ、24,25,26はNPNトランジスタで構成
されている。20は電源である。一般に無整流子直流電動
機の駆動は、回転子27の回転位置に応じて得られる6相
のパルス信号を駆動用トランジスタ21,26,22,24,23,25
の各ベースに印加して行われる。その6相のパルス信号
波形を第3図d,e,f,g,h,iに示す。ただし、各トランジ
スタのベースに加えられる信号の方向はPNPトランジス
タ21,22,23には電流が流出する方向に、NPNトランジス
タ24,25,26には電流が流入する方向に加えられる。ま
ず、トランジスタ21,25が導通して固定子巻線11,12に電
流が流れる。次にトランジスタ21,26が導通して固定子
巻線11,13に電流が流れる。このような相切換え動作を
順次行い、永久磁石回転子27を回転させる。そのときの
固定子巻線11,12,13には第3図j,k,l,に示す電流が両方
向に通電される。また回転子27が回転している状態では
固定子巻線11,12,13の各端子には第3図a,b,cに示す電
圧(逆起電力)が誘起される。同図d〜iで示される6
相のパルス信号は回転子27の位置信号に相当し、逆起電
力a,b,cの波形とは第3図に示すような位相関係にあ
り、電気角で30度だけ位相が異なることに注意すべきで
ある。そこで例えば特開昭62−260586号公報に示される
ような先行技術では固定子巻線に誘起された逆起電力の
ゼロクロス点を検出し、その出力信号をモノマルチを用
いることによって一定時間(30度分)だけ遅延させて通
電のタイミングを決定している。また、6相の位置信号
d〜iは矩形波状であるため、固定子巻線に流れる電流
波形は通電幅がほぼ120度(電気角)の矩形波状とな
り、固定子巻線に流れる電流は急峻にオン・オフされる
ことになる。
発明が解決しようとする課題 回転子位置検出素子のない無整流子直流電動機は基本
的には固定子巻線に誘起される逆起電力を利用して固定
子巻線の相切換えに必要な位置信号を作成している。し
たがって、起動時においては各固定子巻線に逆起電力が
発生していないので、固定子巻線の初期通電相が定まら
ない。そこでこれら先行技術に示される無整流子直流電
動機にあっては、起動用に特別な起動回路を設けてい
る。上述した特開昭55−160980号公報では、特定の固定
子巻線のみを付勢して予め回転子の初期位置を決定して
いる。ところが初期位置を決定するために、固定子巻線
の1相のみを付勢しても回転子の位置は振動的となりな
かなか静止せず、その結果起動時間が長くなる。
また上述した特開昭62−260586号公報では、起動回路
の出力する出力パルスにより固定子巻線を強制的に順次
切換えている。しかし、固定子巻線を強制的に順次切換
えても回転子の回転は同じく振動的となる。したがっ
て、検出回路で逆起電力のゼロクロス点をうまく検出で
きても、固定子巻線を強制的に順次切換えて駆動する起
動モードから逆起電力のゼロクロス点を検出して行う正
規の位置検出モードにはうまく切換えることが困難であ
る。すなわち、起動モードから正規の位置検出モードへ
の切換えのタイミングが難しく、結果として電動機の起
動時間が長くなる。
一般に、これらの回転子位置検出素子のない無整流子
直流電動機は起動時においては回転子が静止しているた
め、各固定子巻線には逆起電力を発生していない。その
ため初期の通電相が定まらず、位置検出素子付の電動機
に比べると起動性が著しく劣るという課題がある。
さらに上述した特開昭55−160980号公報に示される無
整流子直流電動機にあっては、固定子巻線の一方向だけ
に電流を供給する半波駆動方式であるため、その駆動回
路を簡単に構成できる反面、固定子巻線に流れる電流を
両方向に流れるように構成した全波駆動方式の電動機に
比べると、固定子巻線の利用率が低くて効率が悪く、発
生トルクも小さいという課題がある。
また上述した特開昭62−260586号公報に示される無整
流子直流電動機にあっては、固定子巻線に誘起される逆
起電力のゼロクロス点で発生されたパルスをモノマルチ
で一定時間だけ遅延させることにより通電相を決定する
方式であり、その遅延時間が電動機の回転数と無関係に
一定であるため、回転数を変える必要がある用途には向
かず適用性に乏しいという課題がある。
また両者先行技術に示される無整流子直流電動機にあ
っては、固定子巻線に流れる駆動電流は通電幅がほぼ12
0度(電気角)の矩形波状となる。そのため切換えに伴
うパイク状電圧を低減するために、実際には比較的大き
なコンデンサを含むフィルタ回路が固定子巻線の通電端
子に必要となる。また、固定子巻線に流れる電流が急峻
にオン・オフされるため、回転時に振動、騒音を発生し
やすいという欠点を有し、しかも電動機を高速回転で使
用するほどその傾向が著しいという課題がある。
本発明は、回転子位置検出素子の不要な無整流子直流
電動機でありながら特別な起動回路を設けることなく、
良好な起動特性の得られる無整流子直流電動機を提供す
ることを目的としている。
さらに本発明は、回転子位置検出素子の不要な、しか
も固定子巻線に流れる電流を両方向に流れるように構成
した全波駆動方式の無整流子直流電動機を提供すること
を目的としている。
さらに本発明は、電動機の回転数を任意に変えること
が可能な無整流子直流電動機を提供することを目的とし
ている。
さらに本発明は、先行技術に示された無整流子直流電
動機に必要とされるような大きなコンデンサを含むフィ
ルタ回路が不要で、高速回転時にも振動、騒音の極めて
少ない無整流子直流電動機を提供することを目的として
いる。
課題を解決するための手段 本発明は上記目的に達成するために、複数相の固定子
巻線のそれぞれに発生する逆起電力のゼロクロス点を検
出して順次パルス整形してパルス信号列を得る逆起電力
検出手段と、その信号列の周期を計数してその周期が所
定の範囲内にあるときはパルス信号列をそのまま出力
し、起動時など周期が所定の範囲を越えたときには疑似
パルスを発生する周期検出手段と、周期検出手段の出力
パルスに応動して複数相の信号を発生する論理パルス発
生手段と、周期検出手段の出力パルスが入力されパルス
に応じて傾斜波形を発生する傾斜波形発生手段と、論理
パルス発生手段のパルス信号と傾斜波形発生手段の傾斜
波形より回転子の回転位置信号を合成する位置信号合成
手段と、その回転位置信号に応じて固定子巻線を付勢す
る固定子巻線電力供給手段とを含んで構成される。
作用 本発明は上記した構成により、固定子巻線に誘起され
る逆起電力のゼロクロス点をパルス整形してパルス信号
列に変換し、そのパルス信号列をもとに台形波状の回転
子位置信号を作成しているので、電動機の回転数を変化
させても次に通電すべき固定子巻線の通電位相が変化す
ることはない。したがって、回転数を変える必要がある
用途にも容易に応用することが可能となり、従来例の回
転子位置検出素子不要の無整流子直流電動機に見られる
ような回転数を変化させた場合に駆動が不安定になると
いうことはない。
さらに加えて、本発明は起動時においては周期検出手
段の出力する疑似パルスにより固定子巻線を強制的に順
次切換えている。また本発明は、逆起電力検出手段で逆
起電力のゼロクロス点を検出したとき、固定子巻線を強
制的に順次切換えて駆動する起動モードから逆起電力の
ゼロクロス点を検出して行う正規の位置検出モードに速
やかに移行することができるので、従来の位置検出素子
付の電動機と比べても遜色のない起動特性が得られる。
さらに加えて、固定子巻線に誘起される逆起電力のゼ
ロクロス点のみを検出しているので、駆動電流による電
圧の影響を受けることもなく固定子巻線に流れる電流を
両方向に流せる全波駆動方式の電動機の構成をとること
ができる。したがって、半波駆動方式の電動機に比べて
高効率、高トルクの無整流子直流電動機が提供できる。
さらに加えて、固定子巻線各相に通電される電流の相
切換えは傾斜波形発生手段の発生する傾斜波形により極
めて滑らかに行われるため、従来例に見られるような、
相切換えに伴うスパイク状電圧を低減するための比較的
大きなコンデンサを含むフィルタ回路を固定子巻線の通
電端子に接続する必要がない。
また、固定子巻線を流れる電流が、従来例の如く急峻
にオン・オフされることがなく相切換えが滑らかに行わ
れるため、振動および騒音の非常に少ない電動機の駆動
が可能となる。
実施例 以下、本発明の一実施例について、図面を参照しなが
ら説明する。
第1図は本発明の一実施例における無整流子直流電動
機の構成を示すブロック図である。第1図において、1
は逆起電力検出手段で、3相の固定子巻線11,12,13に誘
起される逆起電力a,b,cが入力される。逆起電力検出手
段1は3相の逆起電力a,b,cのゼロクロス点を検出して
パルスnに変換する。このパルスnは3相の逆起電力a,
b,cのゼロクロス点を示す。逆起電力検出手段1の出力
するパルスnは周期検出手段6に入力される。周期検出
手段6は逆起電力検出手段1の出力するパルスnの周期
を計数して、周期が所定の範囲内にあるときはパルスn
をそのまま出力し、周期が所定の範囲を越えたときには
パルスnの代わりに疑似パルスを発生して周期検出手段
6の出力パルスとしてzを出力する。出力パルスzは、
論理パルス発生手段2と傾斜波形発生手段3に入力され
る。論理パルス発生手段2は入力された出力パルスzを
分周して固定子巻線11,12,13に誘起される逆起電力と同
じ周波数の6相のパルスを出力する。傾斜波形発生手段
3は入力された出力パルスzに応じて傾斜波形stを発生
する。
論理パルス発生手段2で発生された6相のパルス信号
は位置信号合成手段4に入力され、傾斜波形発生手段3
の発生する傾斜波形stと6相のパルス信号をもとに、回
転子27の回転位置信号に変換される。この回転位置信号
は固定子巻線電力供給手段5に入力される。固定子巻線
電力供給手段5は回転位置信号に応じて各固定子巻線1
1,12,13に順次駆動電流を両方向に供給する。
以上のように構成された一実施例をもとにして本発明
の無整流子直流電動機の動作につてい詳しく説明する。
第4図は本発明の無整流子直流電動機を構成する固定
子巻線電力供給手段5の一実施例の各部信号波形図であ
る。
第4図において、a,b,cはそれぞれ固定子巻線11,12,1
3に誘起される逆電力波形である。同図d〜iは位置信
号発生手段4で合成される6相の信号で、回転子27の回
転位置に応じて得られる6相の回転位置信号に相当す
る。これは従来例の第3図d〜iに示す矩形波状の信号
波形とは異なり台形波状の信号波形である。なお、この
台形波状の信号波形を得る方法については、第14図及び
第15図にて説明する位置信号発生手段のところで詳細に
説明する。
第4図d〜iの6相の回転位置信号はそれぞれ第2図
に示す駆動用トランジスタ21,26,22,24,23,25の各ベー
スに入力される。ただし、各トランジスタのベースに加
えられる信号の方向はPNPトランジスタ21,22,23には電
流が流出する方向に、NPNトランジスタ24,25,26には電
流が流入する方向に加えられる。各々のトランジスタは
加えられたベース電流をそれぞれ増幅して各ベース電流
に比例した電流が各コレクタに流れる。その結果、固定
子巻線11,12,13には第4図j,k,lに示す電流が両方向に
通電される。このような相切換え動作を順次行い、永久
磁石回転子27を回転させる。
このような信号処理を行う本発明の一実施例の各部の
動作についてさらに図面を用いて説明する。
第5図は第1図に示す本発明に係る逆起電力検出手段
1の一実施例の回路構成図である。
第5図において、14,15,16は抵抗で片方は固定子巻線
11,12,13の各端子に接続され、他方はそれぞれ共通接続
されている。31,32,33は比較回路で、その入力端子
(+)には固定子巻線11,12,13の各端子が接続され、入
力端子(−)には抵抗14,15,16の共通接続点が接続され
ている。34,35,36はアンド回路でそれぞれ比較器31,32
と比較器32,33および比較器33,31の各出力が接続されて
いる。30は3入力のオア回路で、アンド回路34,35,36の
各出力が入力されてオア出力mを出力する。39はイクス
クルーシブオア回路で、片方の入力にはオア回路30の出
力mが入力され、他方の入力にはオア回路30の出力信号
mを抵抗37とコンデンサ38で定まる時定数だけ遅延した
信号が入力される。イクスクルーシブオア回路39の出力
は逆起電力検出手段1の出力端子となって、パルスnを
出力する。
第5図の逆起電力検出手段1の動作について第6図を
用いて説明する。
第5図の抵抗14,15,16はそれぞれ固定子巻線11,12,13
と接続されているので、抵抗14,15,16の共通接続点には
固定子巻線11,12,13の中性点oと同一の電位が得られ
る。したがって、電動機としては特別に固定子巻線の中
性点から信号線を引き出しておく必要がない。固定子巻
線11,12,13に誘起される逆起電力は第6図a,b,cに示さ
れるような信号波形であり、これらは第5図の比較器3
1,32,33の入力端子(+)に入力され、入力端子(−)
には抵抗14,15,16の共通接続点に得られる固定子巻線の
中性点電位が入力されている。したがって、比較器31,3
2,33の各出力端子には第6図u,v,wに示すような逆起電
力a,b,cを波形整形したパルスが得られる。パルス波形
u,v,wのパルスエッジは逆起電力a,b,cのゼロクロス点と
それぞれ一致する。その結果、オア回路30の出力端子か
らは第6図mに示す波形が得られ、3相の逆起電力a,b,
cのゼロクロス点とパルスの立ち上がり、立ち下がりエ
ッジの位相が一致したパルスmが出力される。第6図n
はオア回路30の出力パルスmを両エッジ微分した波形で
ある。すなわち、イクスクルーシブオア回路39からは3
相の各起電力a,b,cのゼロクロス点ごとにパルスが出力
され、逆起電力a,b,cの1周期につき6回(電気角で60
度ごと)のパルスnが出力される。
次に本発明の一実施例における周期検出手段6の動作
について詳しく説明する。
第7図は本発明に係る周期検出手段6の一実施例の回
路構成図、第8図(A)は電動機の起動時における各部
信号波形図、第8図(B)は電動機の定常回転時におけ
る各部信号波図である。
第7図において、41は6ビットのカウンタ、40はクロ
ックパルス発生回路である。カウンタ41は、その計数値
が所定の値を越えたときにキャリーフラグtを出力す
る。クロックパルス発生回路40はクロックパルスckを発
生しており、クロックパルスckはカウンタ41に入力され
ている。47は2入力のオア回路で逆起電力検出手段1の
出力するパルスnとカウンタ41の出力するキャリーフラ
グtとが入力され、周期検出手段6の出力としてパルス
zを出力する。42はリセットパルス発生回路でオア回路
47の出力するパルスzが入力され、カウンタ41にその計
数値をリセットするリセットパルスrを出力する。な
お、キャリーフラグtが周期検出手段6の発生する疑似
パルスである。
第7図に示す周期検出手段6の動作について、まず電
動機の起動時における動作を第8図(A)を用いて説明
する。
nは逆起電力検出手段1の出力するパルスで、起動時
においては3相の固定子巻線11,12,13には逆起電力が誘
起されていないのでパルスnは出力されない。カウンタ
41はリセットパルス発生回路42がリセットパルスrを出
力するまでクロックパルスckをカウントする。したがっ
て、カウンタ41の計数値は単調に増加し所定値を越えた
ときにキャリーフラグtを出力する。tはオア回路47を
介してパルスzを出力すると同時に、リセットパルス発
生回路42に入力される。するとリセットパルス発生回路
42は第8図(A)のrに示すリセットパルスをカウンタ
41に出力する。その結果、カウンタ41の計数値は瞬時に
リセットされる。したがって、カウンタ41の計数値をア
ナログ的に示すと第8図(A)のpのような鋸歯状の波
形が得られる。なお、パルスzとリセットパルスrの位
相関係は第8図(A)に示すとおりであり、リセットパ
ルスrをパルスzより遅延させてあるのはカウンタ41か
ら出力されるパルスtが十分なパルス幅を確保できるよ
うにするためである。また、図ではパルスt,z,rのパル
ス幅を便宜上大きく記してあるが、パルス周期に比べて
十分に狭いものとする。このように起動時においては、
固定子巻線11,12,13には逆起電力が誘起されないので、
逆起電力検出手段1からパルスnは出力されず、カウン
タ41のキャリーフラグtが疑似パルスとして周期検出手
段6のオア回路47を介してパルスzとして出力される。
次に第7図に示す周期検出手段6の動作について、電
動機の定常回転時における動作を第8図(B)を用いて
説明する。
永久磁石回転子27の回転に伴い、逆起電力検出手段1
からは3相の固定子巻線11,12,13に誘起される逆起電力
a,b,cのゼロクロス点を検出してパルスnが出力され
る。するとパルスnはオア回路47を介してパルスzを出
力すると同時にリセットパルス発生手段42に入力され
る。リセットパルス発生手段42は第8図(B)のrに示
すリセットパルスをカウンタ41に出力し、カウンタ41の
計数値は瞬時にリセットされる。したがって、カウンタ
41の計数値をアナログ的に示すと第8図(B)のpのよ
うな鋸歯状の波形が得られる。なお、この場合にはカウ
ンタ41が所定値に達するまでに逆起電力検出手段1の出
力パルスnが出力されるため計数値はリセットされパル
スtは出力されない。以上の説明で明らかなように、電
動機の起動時には逆起電力検出手段1からはパルスnが
出力されないが、その代わりに疑似パルスをオア回路47
を介し、パルスzとして一定間隔で出力される。一方、
電動機が定常回転しているときには逆起電力検出手段1
の出力パルスnがパルスzとして出力される。
次に本発明の一実施例における傾斜波形発生手段3の
動作について詳しく説明する。
第9図は第1図に示す本発明に係る傾斜波形発生手段
3の一実施例の回路構成図、第10図はその各部信号波形
図である。なお第9図において、48は第7図の周期検出
手段6であり、リセットパルス発生回路42の出力するパ
ルスrとカウンタ41の中間ビットと最上位ビットの出力
を傾斜波形発生手段3で使用する。第9図において、4
3,44はそれぞれ第1,第2のラッチで、第1のラッチ43の
セット端子Sにはカウンタ41の中間ビットの出力が入力
され、第2のラッチ44のセット端子Sにはカウンタ41の
最上位ビットの出力が接続されている。リセットパルス
発生回路42の出力するリセットパルスrは第1,第2のラ
ッチ43,44のリセット端子Rに入力され、ラッチの内容
をリセットする。45,46はそれぞれ第1,第2のD型フリ
ップフロップで、入力端子Dには第1,第2のラッチ43,4
4の出力端子Qが接続され、クロック端子Cには周期検
出手段6の出力パルスzが入力されている。50は周期検
出手段6のパルスzに応じて鋸歯状波を発生するための
充放電用コンデンサ、51,52,53はそれぞれ充放電用コン
デンサ50に充電電流を供給するための第1,第2,第3の定
電流源回路で、充電電流の大きさはそれぞれI1,I2,I3で
ある。そのうち第1,第2の定電流源回路はスイッチ56,5
7を介して充放電用コンデンサ50に接続されている。ス
イッチ56,57は第1,第2のD型フリップフロップ45,46の
出力端子Qの各出力に応じて、出力が“H"のときはスイ
ッチオフ、出力が“L"のときはスイッチオンされる。す
なわち、スイッチ56,57のオン・オフの状態に応じて充
放電用コンデンサ50に供給される充電電流が異なるよう
に構成されている。54は充放電用コンデンサ50に蓄えら
れた電荷を放電させるためのリセット用スイッチ、55は
入力がコンデンサ50に接続されたバッファアンプであ
る。バッファアンプ55の出力端子が傾斜波形発生手段3
の出力端子となる。
第9図において、充放電用コンデンサ50、3つの定電
流源回路51,52,53、スイッチ56,57、リセット用スイッ
チ54およびバッファアンプ55が傾斜波形発生手段3の波
形発生部90を構成している。
第9図に示す傾斜波形発生手段3の動作について、ま
ず、永久磁石回転子27が高速回転しているときについて
第10図(A)を用いて説明する。
rはリセットパルス発生回路42の出力するリセットパ
ルスを示す。なおパルスzとリセットパルスrの位相は
第10図(A)に示したとおりであり、リセットパルスr
をパルスzより遅延させているのはカウンタ41のビット
値を第1,第2のラッチ回路43,44に確実に転送させるた
めである。また図ではパルスz,rのパルス幅を便宜上大
きく記してあるが、パルス周期に比べて十分に狭いもの
とする。
カウンタ41はリセットパルス発生回路42がリセットパ
ルスrを出力するまでクロックパルスckをカウントす
る。リセットパルスrは周期検出手段6が出力するパル
スz(これは逆起電力検出手段1の出力するパルスnに
等しい)と同じ周期であるからカウンタ41の計数値は逆
起電力検出手段1の出力するパルスnの周期を計数した
ことになる。その様子を第10図(A)のpに計数値をア
ナログ的に示してある。
永久磁石回転子27が高速回転しているときには、カウ
ンタ41の計数値は十分小さく、第1,第2のラッチ43,44
の各セット端子Sに入力されるカウンタ41のビットは常
に“L"の状態であり、第1,第2のラッチ43,44の出力端
子Qの各出力はどちらも“L"状態にある。したがって、
第1,第2のD型フリップフロップ45,46の各入力端子D
には第1,第2のラッチ43,44の出力端子Qの各出力“L"
が入力され、クロック端子Cには逆起電力検出手段1の
出力するパルスnが入力されているので、第1,第2のD
型フリップフロップ45,46の各出力端子Qの各出力も
“L"状態のままである。したがって、スイッチ56および
スイッチ57は両者ともオン状態にあり充放電用コンデン
サ50には第1,第2,第3の定電流源回路の出力する充電電
流の和(I1+I2+I3)が供給される。その結果、充放電
用コンデンサ50は一定の傾斜で充電が開始される。とこ
ろが、パルスnが入力されたときにはリセット用スイッ
チ54が一瞬オンされるので、充放電用コンデンサ50に蓄
えられた電荷は瞬時に放電される。その様子を第10図
(A)のstに示す。以上のようにして傾斜波形発生手段
3からはパルスnと同位相の鋸歯状の傾斜波形stが出力
される。
次に永久磁石回転子27が中速回転しているときの傾斜
波形発生手段3の動作について、第10図(B)を用いて
説明する。
永久磁石回転子27が中速回転しているときには、逆起
電力発生手段1が出力するパルスnの周期は高速回転時
よりも長くなり、カウンタ41の計数値は高速時の計数値
よりも大きくなって、第1のラッチ43のセット端子Sに
入力されるビットが“L"状態と“H"状態を繰り返し、第
2のラッチ44のセット端子Sに入力されるビットは常に
“L"状態にあるとする。その様子を第10図(B)のq1,q
2に示す。したがって、第1,第2のD型フリッププロッ
プ45,46の各入力端子Dには、第1,第2のラッチ43,44の
出力端子Qの各出力“H"および“L"が入力され、クロッ
ク端子Cには逆起電力検出手段1の出力するパルスnが
入力されているので、第1,第2のD型フリップフロップ
45,46の各出力端子Qの各出力は第10図(B)のs1,s2に
示すようにそれぞれ“H"および“L"状態となる。したが
って、スイッチ56はオフ状態、スイッチ57はオン状態に
あり、充放電用コンデンサ50には第2,第3の定電流源回
路の出力する充電電流だけが供給され、その大きさは
(I2+I3)となる。充電電流は高速回転時に比べて小さ
くなったので、充放電用コンデンサ50には高速回転時よ
り緩やかな一定の傾斜で充電が開始される。その様子を
第10図(B)のstに示す。なお、第10図(B)stで点線
で示した波形は中速回転時において高速回転時と同じ充
電電流(I1+I2+I3)を充放電用コンデンサ50に供給し
たときの傾斜波形を示したものである。第10図(B)の
stに実線で示したように回転速度に応じて充電電流の大
きさを変えれば傾斜波形のピーク値を高速回転時と同じ
大きさにすることができる。以上の説明から明らかなよ
うに中速回転時においても傾斜波形発生手段3からはパ
ルスnと同位相でピーク値が高速回転時と同じ傾斜波形
stが出力される。
同様に永久磁石回転子27が低速回転しているときの傾
斜波形発生手段3の動作について、第10図(C)を用い
て説明する。
永久磁石回転子27が低速回転しているときには、逆起
電力発生手段1が出力するパルスnの周期は高速および
中速回転時よりも長くなり、カウンタ41の計数値は中速
時の計数値よりもさらに大きくなって、カウンタ41の第
1のラッチ43のセット端子Sに入力されるビット、第2
のラッチ44のセット端子Sに入力されるビットとともに
“H"状態になり、第1,第2のラッチ43,44の出力端子Q
の出力はどちらも“L"状態と“H"状態とを繰り返す。そ
の様子を第10図(C)のq1,q2に示す。したがって、第
1,第2のD型フリップフロップ45,46の各入力端子Dに
は第1,第2のラッチ43,44の出力端子Qの各出力“H"が
入力され、クロック端子Cには逆起電力検出手段1の出
力するパルスnが入力されているので、第1,第2のD型
フリップフロップ45,46の出力端子Qの各出力は第10図
(C)のs1,s2に示すようにそれぞれ“H"状態となる。
したがって、スイッチ56およびスイッチ57はオフ状態
にあり、充放電用コンデンサ50には第3の定電流源回路
53の出力する充電電流I3だけが供給される。充電電流は
高速および中速回転時に比べてさらに小さくなっている
ので、充放電用コンデンサ50には中速回転時よりさらに
緩やかな一定の傾斜で充電が開始される。その様子を第
10図(C)のstに示す。第10図(C)のstで点線で示し
た波形は、低速回転時においても高速回転時と同じ充電
電流(I1+I2+I3)を充放電用コンデンサ50に供給した
ときの傾斜波形を示したものである。第10図(C)のst
に実線で示したように、永久磁石回転子27の回転速度に
応じて充電電流を大きさを変えれば傾斜波形のピーク値
を高速時と同じ大きさにすることができる。以上の説明
から明らかなように傾斜波形発生手段3からは低速回転
時においても、パルスnと同位相でピーク値が高速回転
時と同じ傾斜波形stが出力される。
第11図は第1図に示す本発明に係る傾斜波形発生手段
3の他の実施例の要部回路構成図である。
なお第11図は、第9図の波形発生部90をディジタル回
路に置き換えたもので、第11図には波形発生部90の構成
のみを示してある。
第11図において、81は分周回路で入力されたクロック
ckを1/2分周、1/4分周してクロック1/2ckおよびクロッ
ク1/4ckを出力する。82は入力された3種類のクロックc
k,1/2ck,1/4ckから1つのクロックを選択して出力する
データセレクタで、入力s1,s2により切り換えられる。8
3はカウンタでクロック入力としてデータセレクタ82の
出力が入力されている。また、カウンタ83には逆起電力
検出手段1の出力するパルスnが入力され、カウンタ83
の計数値をリセットする。84はD/A(ディジタル/アナ
ログ)変換器で、カウンタ83のディジタル値をアナログ
値に変換する。D/A変換器84の出力が傾斜波形発生手段
3の出力端子となり、stが出力される。
第11図に示す傾斜信号発生手段3の動作について、第
9図の場合と同様に永久磁石回転子27が高速、中速、低
速回転しているときについて説明する。
カウンタ83にはクロックが入力され計数値は時間とと
もに単調に増加するので、カウンタ83の内容をアナログ
量に変換するD/A変換器84の出力は第9図の実施例と同
様に一定の傾斜で増加する。ところが、パルスnがカウ
ンタ83に入力されたときには、カウンタ83の内容は瞬時
にリセットされるので、D/A変換器84の出力からは鋸歯
状の傾斜波形stが得られる。高速回転のときは第9図の
実施例と同様にD型フリップフロップ45,46の各出力s1,
s2は両方とも“L"状態である。s1,s2が両方とも“L"状
態のときはデータセレクタ82はクロックckを選択する。
中速回転のときはs1が“H"状態、s2が“L"状態であり、
データセレクタ82はクロック1/2ckを選択する。低速回
転のときはs1,s2ともに“H"状態であり、データセレク
タ82はクロック1/4ckを選択するように構成されてい
る。すなわち、回転数が高速、中速、低速と変化するに
つれてカウンタ83のクロックの周波数はck,1/2ck,1/4ck
と小さくなるので、回転数が下がってパルスnの周期が
長くなってもカウンタ83の計数値は回転数とは無関係に
ほぼ等しくできる。したがって、カウンタ83の内容をD/
A変換器でアナログ値に変換した出力stのピーク値は第
9図の実施例と同様に等しくすることが可能で、傾斜波
形発生手段3からはパルスzと同位相で回転数とは無関
係にピーク値がほぼ等しい傾斜波形stが出力される。
第12図は第1図に示す本発明の一実施例における論理
パルス発生手段2の回路構成図で、その各部信号波形図
を第13図に示す。
第12図において、80は6相のリングカウンタで、周期
検出手段6の出力するパルスzが入力され、6つの出力
端子には第13図に示すp1,p2,p3,p4,p5,p6の6相パルス
信号を出力する。これらパルス信号のパルス幅は電気角
で60度である。これらの6相パルス信号p1〜p6は第1図
の位置信号合成手段4にそれぞれ出力される。
次に本発明の一実施例における位置信号合成手段4の
動作について詳しく説明する。
第14図は第1図に示す本発明の一実施例における位置
信号合成手段4の回路構成図で、第15図はその各部信号
波形図である。
第14図において、60は位置信号合成手段4の入力端子
で、傾斜波形発生手段3の出力stが入力される。61は反
転アンプで、傾斜波形発生手段3の出力stが入力されて
stを反転した信号sdが出力される。63はバッファアンプ
で入力には基準電圧源62が接続されて信号sfを出力す
る。傾斜波形発生手段3の出力st、バッファアンプ63の
出力sf、反転アンプ61の出力sdの各出力は信号合成手段
71,72,73,74,75,76に接続されている。なお、信号合成
手段71,72,73,74,75,76はそれぞれ同一の構成であるの
で、信号合成手段71の構成だけを示してある。信号合成
手段71において64,65,66はスイッチで、片方はそれぞれ
入力端子60、バッファアンプ63および反転アンプ61に接
続され、スイッチ64,65,66の他方は共通接続されて抵抗
67と電流変換回路68に接続されている。電流変換回路68
の出力が信号合成手段71の出力dになる。いる。スイッ
チ64,65,66は論理パルス発生手段2の出力する6相パル
ス信号p1,p2,p3,p4,p5,p6のうち3つのパルス信号(p1,
p2,p3)の出力に応じてオン・オフされる。そして信号
合成手段71の出力端子からは信号dが出力される。同様
に信号合成手段72,73,74,75,76にはそれぞれ3つのパル
ス信号(p2,p3,p4)、(p3,p4,p5)、(p4,P5,p6)、
(p5,p6,p1)、(p6,p1,p2)の出力に応じて3つのスイ
ッチ(図示せず)がオン・オフされ、出力端子からは信
号e,f,g,h,iが出力される。
次に第14図の位置信号合成手段4の動作について第15
図の各部信号波形図を用いて説明する。
第15図において、zは周期検出手段6の出力、p1〜p6
は論理パルス発生手段2の出力、stは傾斜波形発生手段
3の出力を示す。傾斜波形発生手段3の出力stは反転ア
ンプ61に入力されているので、反転アンプ61の出力から
は第15図sdに示すようなstを反転した信号が得られる。
第15図sfはバッファアンプ63の出力を示す波形で、大き
さは傾斜波形stのピーク値に等しく設定されている。信
号合成手段71を構成するスイッチ64,65,66は論理パルス
発生手段2の出力するパルス信号p1,p2,p3に応じて、信
号“H"でスイッチオン、信号“L"でスイッチオフするの
で、入力端子60、バッファアンプ63、および反転アンプ
61の出力は信号合成手段71にて合成される。なお、p1,p
2,p3がすべて“L"の区間ではスイッチ64,65,66がすべて
オフされ、抵抗67の電位はアース電位に等しくなる。こ
のようにして抵抗67に得られた合成電圧値は、電流変換
回路68により電流値(電流吸い込み)に変換され、第15
図dに示す位置信号波形が得られる。
以下、同様にして信号合成手段72,73,74,75,76の各出
力端子からは、パルス信号(p2,p3,p4)、(p3,p4,p
5)、(p4,p5,p6)、(p5,p6,p1),(p6,p1,p2)に応
じて位置信号e,f,g,h,iが出力される。第15図d〜iの
信号は永久磁石回転子27の回転子位置信号となり、第1
図の固定子巻線電力供給手段5に入力される。
以上の説明で明らかなように、本発明の無整流子電動
機では逆起電力検出手段1は固定子巻線11,12,13に誘起
される逆起電力a,b,cのゼロクロス点を検出して変換パ
ルスnに変換する。次に周期検出手段6はパルスnの周
期を計数して周期が所定の範囲内にあるときはパルスn
をそのまま出力し、起動時にはパルスnの代わりに疑似
パルスを出力パルスzとして論理パルス発生手段2と傾
斜波形発生手段3に出力する。論理パルス発生手段2は
このパルスzを受けて6相のパルス信号p1〜p6を作成す
る。また、傾斜波形発生手段3はパルスzを受けてパル
スzと同位相の鋸歯状の傾斜波形stを形成する。傾斜波
形stと6相パルス信号p1〜p6は位置信号合成手段4に入
力され、第15図d〜iに示すような台形波状の回転子位
置信号に変化される。そして最後に電力供給手段5はこ
の回転子位置信号d〜iに応じて固定子巻線11,12,13に
第4図j,k,lに示すような駆動電流を順次両方向に供給
し、その結果、永久磁石回転子27は回転される。
したがって、本発明の無整流子直流電動機はホール素
子の如き回転子位置検出素子を設けずに、固定子巻線に
流れる電流を両方向に流せる全波駆動方式の電動機を構
成することができる。
なお、本発明に係る逆起電力検出手段1では第5図に
示すように、固定子巻線の中性点電位oを検出するため
に共通接続した3本の抵抗を使用して行っているが、直
接電動機の固定子巻線の中性点から信号線を引き出して
使用しても可能であることは言うまでもない。また、本
発明の実施例では固定子巻線がY結線された3相の電動
機に限ったが、相数は3相に限らず何相であってもよい
し、固定子巻線がΔ結線された電動機に適用することも
可能である。
なお、本発明に係る傾斜波形発生手段3の実施例で
は、周期検出手段6で逆起電力検出手段1の出力するパ
ルスnの周期を計数してその周期に応じて傾斜波形の時
間的な傾斜角度を3段階に切換えるように構成したが3
段階に限らずもっと増やしてもよいし、連続的に変化す
るように構成しても可能であることは言うまでもない。
発明の効果 本発明は、以上説明したように構成されているので、
以下に記載されるような効果を奏する。
本発明の無整流子直流電動機は、逆起電力検出手段で
固定子巻線に誘起される逆起電力のゼロクロス点のみを
検出しているので、ホール素子の如き回転子位置検出素
子が不要でありながら、固定子巻線に流れる電流を両方
向に供給する全波駆動方式の電動機が容易に構成でき
る。したがって、固定子巻線の一方向だけに電流を供給
する半波駆動方式に比べて固定子巻線の利用率が高く、
高効率で、高発生トルクの電動機を提供することができ
る。さらに、従来の無整流子直流電動機のような回転子
位置検出素子が不要のため、素子の取付け位置調整の煩
雑さや配線数が削除され、大幅にコストが低減される。
さらに、電動機内部に回転子位置検出素子を取り付ける
必要がないため、電動機は構造上の制約を受けず超小型
化、超薄型化が可能となる。
また、本発明の無整流子直流電動機は起動時において
は、周期検出手段の出力する疑似バルスにより固定子巻
線の通電相を強制的に順次切換えて駆動し、固定子巻線
に誘起される逆起電力のゼロクロス点を検出した後は、
正規の位置検出モードに速やかに移行することができる
ので、特別な起動回路を設けることなく、従来の位置検
出素子付の電動機と比べても遜色のない良好な起動特性
が得られる。
さらに、本発明の無整流子直流電動機は各固定子巻線
に誘起される逆起電力のゼロクロス点間の時間を常に計
数し、その計数値をもとに傾斜波形の時間的な傾斜角度
を変化させるように構成しているので、電動機の回転数
を変化させた場合にも回転子位置信号が常に台形波状で
あるため、相切換えも滑らかに行われ常に安定した駆動
が得られるという優れた効果も併せて備えている。した
がって、電動機の回転数を任意に変える必要がある用途
にも適用することが可能となる。
さらに、本発明の無整流子直流電動機は各固定子巻線
に通電される電流の相切換えは極めて滑らかに行われる
ので、固定子巻線に流れる電流が急峻にオン・オフされ
ることもなく、切換えに伴うスパイク状電圧を低減する
ために比較的大きなコンデンサを含むフィルタ回路を固
定子巻線の通電端子に接続することが不要で、高速回転
時にも振動、騒音の極めて少ない無整流子直流電動機を
提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の無整流子直流電動機の一実施例の構成
を示すブロック図、第2図は本発明の一実施例における
電動機と固定子巻線電力供給手段の一実施例を示す回路
構成図、第3図は従来例における固定子巻線電力供給手
段の各部信号波形図、第4図は本発明に係る固定子巻線
電力供給手段の各部信号波形図、第5図は本発明に係る
逆起電力検出手段の一実施例を示す回路構成図、第6図
は第5図の各部信号波形図、第7図は本発明を構成する
周期検出手段の一実施例を示す回路構成図、第8図
(A)は起動時における第7図の各部信号波形図、第8
図(B)は定常回転時における第7図の各部信号波形
図、第9図は本発明に係る傾斜波形発生手段の一実施例
を示す回路構成図、第10図(A)は高速回転時における
第9図の各部信号波形図、第10図(B)は中速回転時に
おける第9図の各部信号波形図、第10図(C)は低速回
転時における第9図の各部信号波形図、第11図は本発明
を構成する傾斜波形発生手段の他の一実施例を示す要部
回路構成図、第12図は本発明を構成する論理パルス発生
手段の一実施例を示す回路構成図、第13図は第12図の各
部信号波形図、第14図は本発明を構成する位置信号合成
手段の一実施例を示す回路構成図、第15図は第14図の動
作を説明する各部信号波形図である。 1……逆起電力検出手段、2……論理パルス発生手段、
3……傾斜波形発生手段、4……位置信号合成手段、5
……固定子巻線電力供給手段、6……周期検出手段、1
1,12,13……固定子巻線。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数相の固定子巻線と、前記固定子巻線に
    発生する逆起電力に応動したパルス信号列を得る逆起電
    力検出手段と、前記パルス信号列が入力されその周期が
    所定の範囲内にあるときは前記パルス信号列を出力し前
    記周期が所定の範囲を越えたときは疑似パルス列を出力
    する周期検出手段と、前記周期検出手段の出力パルスに
    応動した複数相のパルス信号を発生する論理パルス発生
    手段と、前記周期検出手段の出力パルスに応じて傾斜波
    形を発生する傾斜波形発生手段と、前記論理パルス発生
    手段のパルス信号と前記傾斜波形発生手段の傾斜波形よ
    り回転子の回転位置信号を合成する位置信号合成手段
    と、前記回転位置信号に応じて前記固定子巻線を付勢す
    る固定子巻線電力供給手段とを含んで構成されたことを
    特徴とする無整流子直流電動機。
  2. 【請求項2】傾斜波形発生手段は、周期検出手段の出力
    するパルス信号列の周期に応じて時間的な傾斜角度を変
    化させるように構成されたことを特徴とする請求項
    (1)記載の無整流子直流電動機。
  3. 【請求項3】傾斜波形発生手段は、クロックをカウント
    するカウント手段と、前記カウント手段の内容をアナロ
    グ量に変換するディジタル/アナログ変換器より構成さ
    れたことを特徴とする請求項(1)記載の無整流子電動
    機。
  4. 【請求項4】傾斜波形発生手段は、周期検出手段の出力
    するパルスの周期を計数し、計数した周期に応じてカウ
    ント手段に入力されるクロック数を変化させるように構
    成されたことを特徴とする請求項(3)記載の無整流子
    直流電動機。
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