JP2763593B2 - 可変圧縮比ピストン - Google Patents

可変圧縮比ピストン

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JP2763593B2
JP2763593B2 JP1144071A JP14407189A JP2763593B2 JP 2763593 B2 JP2763593 B2 JP 2763593B2 JP 1144071 A JP1144071 A JP 1144071A JP 14407189 A JP14407189 A JP 14407189A JP 2763593 B2 JP2763593 B2 JP 2763593B2
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九五 浜井
辰之 松屋
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) この発明は、内燃機関の可変圧縮比ピストンに係わ
り、詳しくは、内燃機関の負荷条件に応じてコンプレッ
ションハイトを可変化したピストンに関する。
(従来の技術) 内燃機関の部分負荷時には絞弁によって吸気量が制限
される等のために熱効率の低下を招き、この熱効率を高
めようとして圧縮比を大きくとると、今度は高負荷時に
ノッキングを起こすという危険性がある。そこで負荷領
域の全般にわたって高い熱効率を得るべく負荷条件に応
じて圧縮比を変化できるようにしたものが可変圧縮比ピ
ストンである。
可変圧縮比ピストンとしては、従来例えば西独国特許
公報第3346969号に掲示されているようなコンプレッシ
ョンハイト可変式のものがあり、これを第14図を参照し
て以下に説明する。尚、以下の説明では、ピストンの装
着姿勢の如何にかかわらず、ピストントップ側を上、同
ボトム側を下と称する。
ピストン101は、コネクティングロッド(図示省略)
の小端部にピストンピン103を介して連結したインナピ
ストン105と、このインナピストン105の上部に上下への
摺動可能に外嵌したアウタピストン115とを備え、アウ
タピストン115の裾部内面にはストップリング121が螺着
されている。そして同図の右側(高圧縮比状態で左側よ
り90℃ずらした断面図)に示すように、ストップリング
121をインナピストン105における冠壁107の周縁部下面
に当接させることによってアウタピストン115の上動限
が規制され、この状態で上記冠壁107とアウタピストン1
15の冠壁117との間にシール108にて仕切られる円盤状の
上部油室123が形成される。また同図の左側(低圧縮比
状態の断面図)、に示したように上記冠壁117の下面に
形成した突条117aをインナピストン105の上記冠壁107に
当接させることによりアウタピストン115の下動限が規
制され、この状態でストップリング121の上方にシール1
04にて仕切られる環状の下部油室125が形成される。
一方、インナピストン105の冠壁107には、上部油室12
3へ圧力作動油を送給するための逆止機能をもつ給油弁1
29と、この油室123から排油をするための感圧式排油弁1
31とが装着されている。更にこの冠壁107には、上部油
室123と下部油室125とをそれぞれ連絡するオリフィス13
5および下部油室125側への流通のみを許容する一方向弁
137とが装着されて、これらにより流量制御手段を構成
してある。
作用を述べると、いま前記コネクティングロッドを経
てピストンピン103内へ作動油が圧送されてくると、こ
れがインナピストン105のピストンピン嵌装部109に形成
した給油路111から給油弁129を介して上部油室123内に
送給される。このとき感圧式排油弁131が閉止してお
り、また下部油室125の受圧面積が上部油室123のそれよ
りも小さいので、アウタピストン115が前記上動限まで
押上げられて(同図右側)この位置が給油弁129の逆止
作用によって保持される。この状態でピストン101が圧
縮行程に移行し、燃焼室内の混合気が例えば高圧縮比の
条件下で圧縮されつつこの行程の終期が近づくと、混合
気が点火されてその燃焼圧力が急激に上昇する。この圧
力は、アウタピストン115を介して上部油室123内の作動
油に印加される。このとき、燃焼圧力あるいはこれに対
応する作動油圧が所定値を越えて立上ろうとすると、感
圧式の排油弁131が開いて上部油室123をピストン101外
へ適度に開放する。これにより、アウタピストン115が
排油弁131から作動油を排出させつつ下方へ急速に推進
され、同時にオリフィス135と一方向弁137との双方から
連絡路113を介して下部油室125内へ作動油を急速に送り
込む。すなわち、燃焼圧力が所定値を越えると、これに
即応してアウタピストン115が下動するので、圧縮比が
低下して前記ノッキングの発生が回避される。そして、
アウタピストン115の下動途中ないしは下動限で、燃焼
圧力(作動油圧)が所定値まで低下すると排油弁131が
閉じ、この膨張行程の進行に伴って燃焼ガス圧が更に低
下すると、給油弁129からの作動油送給が再開始され
る。これにより、アウタピストン115が上方へ推進さ
れ、これと同時に下部油室125から今度はオリフィス135
のみを介して作動油が上部油室123に押し出される。す
なわち、このときの上動運動はオリフィス135の絞り作
用によって緩慢なものとなる。これは高負荷運転中ピス
トン101に低圧縮比用の形態をなるべく保持させること
によって、アウタピストン115にサイクル毎の大きな上
下動をさせなくてもすむようにするためである。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、このような従来例にあっては、上部油
室123が円盤状に構成される為に容積が大きく、従って
円環状に構成される下部油室125と容積差が大きい構造
となっているため、上部油室123の圧油を排出すること
で移行する低圧縮比の状態への切換わりに時間を要する
と共に、下部油室125の圧油とコネクティングロッド、
およびピストン103を介して供給される圧油を上部油室1
23へ供給することで移行する高圧縮比の状態への切換わ
りに時間を要する、即ち応答性が悪いという問題があ
り、また、コネクティングロッドの小端部にピストンピ
ン103を介して設けたインナピストン105と、この上部に
上下への摺動可能に外嵌されるアウタピストン115と
が、その上下摺動方向と直角な面における周方向の相対
的回転を規制せず、つまりアウタピストン115の回り止
めがない構造となっているため、燃焼室形状との適合性
などにおいての設計上の自由度が低いという問題点があ
った。
そこで、この発明は圧縮比状態の切換わり時間を要し
ない、即ち、応答性が良好であり、又、設計上の自由度
が高いものである可変圧縮比ピストンを提供することを
目的としている。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) コネクティングロッドに連結されたインナピストン
と、このインナピストンに所定範囲の相対的上下動が可
能に嵌合されたアウタピストンとを有して、前記の上動
および下動に伴ないインナおよびアウタピストン間にそ
れぞれ上部油室および下部油室が形成されるように構成
され、更に上部油室および下部油室を連絡するととも
に、上部油室側への作動油の流通は制限するように構成
した流量制御手段を備えた可変圧縮比ピストンにおい
て、前記アウタピストンのインナピストン頂面に対向す
る内面に凸部あるいは凹部を設ける一方、この凸部ある
いは凹部に嵌合する凹部あるいは凸部をインナピストン
に設けて前記上部油室を環状に形成し、前記凸部および
凹部は、インナピストンとアウタピストンとの上下相対
移動方向に相互に摺動可能であるとともに、アウタピス
トンとインナピストンとの周方向の相対的回転を規制す
るものである。
また、上記相互に嵌合する凸部の外周嵌合面および凹
部の内周嵌合面は、ピストン中心から偏心した円形であ
る構成としてある さらに、上記相互に嵌合する凸部の外周嵌合面および
凹部の内周嵌合面は、相互に対向する位置に形成された
一対の平面部と、この一対の平面部の両端相互をつなぐ
一対の半円形の曲面部とからなる長円形で構成してもよ
い。
(作用) 上部油室を環状に形成したため、従来の円盤状のもの
に比較して内周部分が欠如する結果、容積が小さくな
り、従って、上部油室の圧油の排出時間が短かくなり、
低圧縮比の状態への切換えが早くなる。同様に、高圧縮
比の状態への切換えも早くなる。又、内周においてイン
ナ及びアウタの両ピストンの回り止めがされているた
め、アウタピストンが周方向に回転せず、バルブとかク
ランクシャフトなどとの干渉に配慮する事なく設計でき
る。上記回り止めは、インナピストンの頂面に設けた凹
部あるいは凸部と、これに対向するアウタピストンの内
面に設けた凸部あるいは凹部とで構成されているので、
インナおよびアウタの各ピストンにおける、上部油室の
環状外周面を、製造を困難にする特別な形状とする必要
がない。また、上記凸部および凹部は、ピストンの軸方
向に向けて形成されているので、ピストン製造時に使用
する鋳型形状が簡素化されたものとなる。
上記凸部の外周嵌合面および凹部の内周嵌合面を円形
とすることで、凸部および凹部の加工が極めて容易とな
る。
また、上記凸部の外周嵌合面および凹部の内周嵌合面
を、平面部と半円形の曲面部との組み合わせとすること
で、凸部および凹部の加工が容易となる。
(実施例) 以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第1〜3図は、この発明の一実施例を示す図である。
第1図は高圧縮比の状態、第2図は低圧縮比の状態を示
してある。
まず構成を説明すると、チェックバルブ5と油通路3
を有するコネクティングロッド1に中空部15aの両端を
部材15dで封止され、圧油の入口15bと出口15cを有する
ピストンピン15がはめこまれている。このピストンピン
15にインナピストン13が嵌挿部19ではめこまれ、封止板
23で抜け止めされている。このインナピストン13に所定
範囲の相対的上下動が可能に外径面35aを有するアウタ
ピストン35が外周面35bで外嵌し、内周面35cで内嵌して
いる。この内周面35cは、インナピストン13の頂面に対
向するアウタピストン35の内面に、上記頂面に向けて突
出して設けられた凸部としてのボス7の外周嵌合面であ
り、ボス7に嵌合する凹部としての嵌合孔8がインナピ
ストン13の冠壁31に形成されている。上記嵌合孔8の内
周嵌合面8aおよび内周面35c(ボス7の外周嵌合面)
は、第1図のIII−III断面図である第3図に示すよう
に、円形であり、かつピストン中心Oに対して偏心eを
もって設けられている。したがって、上記ボス7及び嵌
合孔8は、インナピストン13とアウタピストン35との上
下相対移動方向と同方向に相互に摺動可能であるととも
に、アウタピストン35とインナピストン13との周方向の
相対的回転を規制するものである。
このようにして、アウタピストン35にはボス7が形成
されて、それだけ重量増となるが、これは、円形の肉抜
き部9を設けることにより、その増加量を少なくでき
る。上記の上動および下動に伴ないインナピストン13お
よびアウタピストン35間にそれぞれ外周面35bと内周面3
5cで仕切られた円環状の上部油室45と下部油室47が形成
される。又インナピストン13には上部油室45と下部油等
室47を逆止弁61を介して結ぶ連絡路59aとオリフィス62
を有する連絡路59bが設けられると共に、上部油室45の
圧油を外部へ排出するための排油弁55およびピストンピ
ン15の中空部15aと油路53を介して圧油を供給する給油
弁51が設けられている。
上部油室45の内周面35cと外周面35bには夫々金属又は
合成樹脂製のシールリング22,25が、設けられ、又、下
部油室の内周面21と外周面47aには夫々シールリング29,
27が設けられ圧油を封止している。
アウタピストン35の下端内側にストップリング41が螺
着され、その上面とインナピストン13の下方の段付部下
面21aとにより下部油室47の上下面が形成される。
又、上部油室45の上下面はアウタピストン35の冠壁37
とインナピストン13の冠壁31とにより段付の環状に形成
されるが、この上下面は低圧縮比の状態(第2図)では
ほぼ合致するように、つまり、全面に下動時のストッパ
となるように形成するものである。
尚、図中、11は可変圧縮比ピストンの全体を又、57は
インナピストン13の下端を示す。この下端57は第1図の
高圧縮比の状態ではアウタピストン35の下面とほぼ一致
するように形成してある。
次に前記実施例の作用を説明する。
図示せざる内燃機関を始動すると、潤滑油はそのポン
プによりオイルギャラリを経由してコネクティングロッ
ド1の油通路3よりピストンピン15の入口15bを経て両
端を部材15dで封止された中空部15aに圧油として送入さ
れる。該圧油は出口15cよりインナピストン13の油路53
に設けられた給油弁51を通り不可逆的に上部油室45へ導
入されるが、ここで下部油室47より面積の大きな上部油
室45に圧油が停留し、第1図に示す高圧縮比の形態とな
る。内燃機関が高負荷運転になりアウタピストン35の上
面にかかるガス圧増加により上部油室45の内圧が所定値
をこえると排油弁55のバックアップスプリングの調整荷
重と該スプリングを含むバルブ体に機関回転数の二乗で
作用する慣性力の和に抗して、圧油は排油弁55を押し開
き作動油の外部排出を始めると同時にアウタピストン35
の下降に伴ない下部油室47を形成しつつ、上部油室45の
作動油(圧油)をオリフィス62を介して連絡路59bより
下部油室47へ流入させ第2図に示す低圧縮比の形態とす
る。
尚、内燃機関の負荷に変化がない場合、上向き慣性力
が作用すると下部油室47より連絡路59bに設けられたオ
リフィス62を介し上部油室45に作動油が流入し、下部油
室47の容積がゼロになることで下部油室47を構成するス
トップリング41がインナピストン13の段付部下面21aと
衝突するようになるが、その際オリフィス62の径を適当
に選定することで前記衝突を防止し、これによりアウタ
ピストンの暴れを規制する。
次に内燃機関が低負荷状態に移行するか又は回転数が
上昇し、排油弁55のスプリング調整荷重とこれに加わる
慣性力の値が上部油室45内圧の排油弁作用面積に加わる
力を上回ると排油弁55は閉じられる。このような慣性力
の作用する行程で、オリフィス62を介して下部油室47よ
り上部油室45へ作動油が流入し又、油路53に設けられた
給油弁51により不可逆的に上部油室45へ圧油が流入する
事により、上部油室45は拡張し第1図に示す高圧縮比の
形態に復帰する。以上の一連の動きの中で特に高圧縮比
の状態から低圧縮比の状態への速かな切り替わりがノッ
キングを回避する上で重要となる。従って高圧縮比から
低圧縮比の応答性を高める為には、制約されたスペース
の中で排油弁55の通過流量を大きくすること、上部油室
45よりの逆止弁61の通過流量を大きくすると共に、上部
油室45の容積を下部油室47の容積に近づける方向で小さ
くすることが必要である。更に燃焼室形状の設計により
熱効率を向上させていく観点からもピストン冠面形状を
も考慮した設計を行うな事が必要であり、例えば吸排気
弁との干渉をさけたリセスをアウタピストン35の冠面
(上面)に設けた場合に於いても、又ピストン姿勢制御
およびクランクシャフトとアウタピストン35の干渉を避
ける為にもアウタピストンの周方向の回転を規制するこ
とが必要である。
かかる場合において、前記実施例では、上部油室45が
円環状に形成されているので、外径及び上下ストローク
量を同じとすれば従来の円盤状のものに比し容積が少く
なっており、前述の必要性を充足しうるものである。つ
まり、高圧縮比の状態(第1図)から低圧縮比の状態
(第2図)への切り替わりが上部油室45の容積低減化に
より達成され、ノッキングを回避できるものである。又
その逆の低圧縮比の状態から高圧縮比の状態への切り替
わりも従来より早くなり燃費対策となしうるものであ
る。
又、該上部油室45の外周面35bはピストン外径面35aと
同心であるのに対し、内周面35cは偏心量eをもってイ
ンナピストン13に内嵌される為にインナピストン13に対
するアウタピストン35の周方向の動きを完全に拘束する
ことになる。これにより、ピストン上面のバブルリセス
の設定やクランクシャフトとの干渉防止部の設定がで
き、設計の自由度が得られるものである。上記インナピ
ストン13に対するアウタピストン35の周方向の回転規制
は、環状の上部油室45における外周側のインナピストン
13とアウタピストン35との嵌合面に、凹凸部を設けるな
ど特別な形状とする必要がなく、しかも回転規制のため
のボス7および嵌合孔8は、上下方向に向けて形成され
ている上、内周面35c(ボス7の外周嵌合面)および嵌
合孔8の内周嵌合面8aは、円形であるので、ピストンを
製造するための鋳型の複雑化が回避されて製造が極めて
容易なものとなる。
又、大径のシールリング25の取付溝はピストン中心と
同心の円であるため、加工が楽であり、シール性を良好
になしうる。更に、小径のシールリング22は偏心して設
けられるが、これも円である為加工が楽であり、シール
性を良好となしうる。
第4図は該上部油室45の内周面35cを、相互に対向す
る位置に形成された一対の平面部lと、この平面部lの
両端相互をつなぐ一対の半円形の曲面部rとで構成して
長円形にしインナピストン13に内嵌している構造であ
る。尚上部油室内周形状は楕円形でも多角形にしても良
い。但し、この場合、大径のシールリング25用の溝加工
は前実施例と同様容易であるが、小径のシールリング22
用の溝加工は内周面35Cの形状に沿うような加工にせざ
るを得ないものである。
次に改良シールリングを用いた実施例について、第5
図〜第13図を参照して説明する。
以下の例では、可変圧縮比ピストン11としては従来の
構造のものに改良シールリングを適用したものについて
説明してあるが、その他の構造、即ち、前実施例の構造
のものにその改良シールリングを適用してもよいことは
勿論である。
第5図はこの実施例に係わる可変圧縮比ピストン11の
高圧縮比用の形態を、また第6図は同ピストンの低圧縮
比用の形態をそれぞれ示したものである。上記可変圧縮
比ピストン11のインナピストン13は、これに嵌装した中
空のピストンピン15を介してコネクティングロッド1の
小端部に連結してあり、符号17,19はピストンピン15の
上記嵌装部を示す。このインナピストン13のスカート下
端には段部21aを介して小径部21を形成してある。
一方、ピストンピン15の中空部15aの両側はインナピ
ストン13に係着した抜け止め兼用の封止板23によって封
止してある。また、コネクティングロッド1には上記小
端部からクランクピン側の大端部にわたる油路3を形成
してある。そして、内燃機関の潤滑油ポンプからメイン
ギャラリに吐出された潤滑油が、クランクシャフトを経
て油路3に圧送されて、これが油路3に介装したチェッ
クバルブ5を通った後、ピストンピン15の通油孔15bを
経て中空部15a内へ圧力作動油として送入される。
ピストン11のアウタピストン35は、そのスカート部が
インナピストン13の前記小径部21よりも下方へ延びて、
このインナピストン13のスカート部に上下への摺動が可
能に外嵌されている。これによってアウタピストン35の
首振りが制止されて上下動が円滑に行われる。このアウ
タピストン35のスカート下部にストップリング41を螺着
し、ストップリング41の内周面を上記小径部21に摺動可
能に嵌合してある。そして上記各摺動部をインナピスト
ン13に嵌装したオイルシールリング25a,27a,29aおよび
シールリングシート25b,27b,29b等によって封止してあ
る。
以上の構成において、アウタピストン35を上動させる
とストップリング41が段部21aに当接して上動限が規制
されるとともに、アウタピストン35とインナピストン13
との各冠壁37と31との間に所定高の上部油室45(第5
図)が形成されるように各部の寸法関係を定める。した
がって、アウタピストン35を下動させると冠壁37が同31
に当接して下動限が規制され、この下動によって小径部
21の周囲に環状の下部油室47(第6図)が形成される。
インナピストン13の頂部には作動油給排手段を構成す
るための給油弁51と排油弁55とを装着してある。これら
給油弁51および排油弁55は、球形弁体とそのバックアッ
プスプリングとを用いて構成した通常の逆止弁であるか
ら基本構造の説明は省略する。
給油弁51は一方側のピストンピン嵌装部19の上方に配
置してあって、ピストンピン15の中空部15aに送入され
た前記圧力作動油が、このピストンピン15の通油孔15c
から嵌装部19に形成した給油路53を経て給油弁51へ至
り、この給油弁51を不可逆的に流過して上部油室45へ導
入される。また排油弁55は他方側のピストンピン嵌装部
17の上方に配置してある。この排油弁55では、前述した
ように燃焼圧力が所定値を越えて立上り、これに伴って
上部油室45へ導入された作動油の圧力が所定値を越えた
とき、球形弁体55aのバックアップスプリング55bが縮ん
で開弁されるように、バックアップスプリング55bのセ
ット荷重を設定してある。このように排油弁55が開弁す
ると、上部油室45の作動油が、ピストンピン嵌装部17に
形成した排油路55cを経てインナピストン13の下方へ排
出される。
更に、ピストンピン嵌装部17には上部油室45と下部油
室47とを連絡する一連の連絡路59を形成してその上部に
オリフィス孔83を有する板状弁体81を配した制御弁61を
配装してあり、これらにより流量制御手段を構成してい
る(第7図参照)。
尚図面では、制御弁61と連絡路59、および、排油弁55
と排油路55cを適宜上同一断面上に表わしてあるが、こ
れらはピストンピン15の両側など、適宜の部位に配設す
るものである。
制御弁61は第7図および第8図に拡大して示したよう
に、インナピストン13の冠壁31の上面に開口する弁室63
と、この弁室63の上記開口側にねじ込み固定したシール
部材65と、弁室63の底部に嵌装した弁受け部材71と、こ
れらの部材65および71の間に配置した弁体81とを備え
る。そして、シール部材65にはその中央部を上下に貫通
する弁孔67と、この弁孔67の下縁を取り囲む弁座69とを
形成してある。また弁受け部材71は、弁座69に対向する
受け座73と、この受け座73の中央に開設した透孔75と、
第9図に示したように受け座73の周りから突出して下方
へ折曲した複数、例えば4個の脚77とを有し、これらの
脚77によって受け座73の周囲から連絡路59へ通じる広い
流路79を形成してある。そして弁体81は円盤状を呈して
弁座69と受け座73との間に上下動可能に遊挿され、この
弁体81の中央部には上下に貫通するオリフィス83を形成
してある。
実施例は以上のように構成されている。したがって、
内燃機関を始動すると作動油が上部油室45へ導入されて
ここに閉じ込められるので、ピストン11は第5図の高圧
縮比用の形態となって低負荷領域での運転に備えられ
る。
ここで、高負荷運転域に移行して上部油室45の内圧が
所定値を越えて上昇すると排油弁55のバックアップスプ
リング55bが縮んで排油弁55が開く。これにより、アウ
タピストン35が排油弁55を介して排油路55cへ作動油を
排出させつつ急速に下動し、同時に下部油室47を形成し
つつ制御弁61から連絡路59を経てこの下部油室47へ作動
油を送り込む。この際制御弁61の弁体81は、第7図に示
したように、作動油の流れに押されて受け座73上に着座
するので、弁孔67から送り込まれる作動油は、オリフィ
ス83と透孔75とを流過するほか、弁室63から広い流路79
を通って連絡路59へ流入するので、下部油室47にもこの
作動油が急速に導入される。これにより、ピストン11は
燃焼圧力の過度な立ち上りに即応して第6図に示した低
圧縮比用の形態となる。このようにして、燃焼圧力の立
上りが制止されつつ上部油室45の内圧が所定値まで低下
すると、排油弁55が閉じられ、次いでこの内圧が作動油
圧まで低下すると、給油弁51を介して作動油の送給が再
開始され、アウタピストン35の上動がまた始める。そし
てこの過程で、アウタピストン35は排油弁55の閉止後も
その慣性により漸時下動を継続するので、下部油室47の
容積の拡張が続けられてここへ充分な作動油が貯留され
る。この場合実施例は前述したようにアウタピストン35
の首振りが制止されていてインナピストン13とこじれ合
うことがないので、上記の継続下動動作が円滑に行われ
る。これによって、アウタピストン35を例えば下動限で
容易かつ再現性よく下降させることができるので、一層
充分な作動油を貯留させることができる。
上述のようにアウタピストン35の上動が再開始される
と、下部油室47の容積が減少しつつここに貯留された作
動油が連絡路59から制御弁61を介して上部油室45側へ押
し戻される。このとき制御弁61の弁体81が押し上げられ
て、第8図に示したように弁座69に当接するので、作動
油はオリフィス83を介してのみ流通するようになる。こ
れによりアウタピストン35に制動力が作用して上動運動
が緩慢化し、更に下部油室47にはこの制動のための作動
油が充分に貯留されていることと相まって、ピストン11
には低圧縮比用近似の形態をよく保持させることができ
る。
以上述べて来た作動を各制御弁系で長期間に渡り精度
良く行なう為にシールリングの機能が重要になる。次に
シールリングの作用にいて説明する。第10図は樹脂製シ
ールリング25aがシールリングシート25b無しの状態で単
独に所定の運転時間を経てシールリング溝内でシールを
している状態を示すものであるが、シールリング25aは
はみ出し部25a−1が作動油圧Pの作用により発生し始
めている様子が分る。このはみ出し部25a−1は基本的
に時間経過と共に進行し、やがてシール能力を消失せし
める。
第11図は改良実施例であり通常の合成樹脂製シールリ
ング25aと金属又は高硬度樹脂製のシールリングシート2
5bとを用いたものである。この図で作動油圧Pがシール
リング25aと摺動方向と直角に相対移動可能でかつ低圧
側に配したシールリングシート25bに作用し、シールリ
ングシート25bが該摺動部に当接することですきまを埋
設し、シールリング25aのはみ出し部位発生を抑制して
いる状態を示す。
尚、シールリングシートの断面は第12図に示す様な受
圧面積を大きくしたL字形断面形状でも良く、又、合い
口部はストレートカットではなく第13図に示す様に鈍角
Aを持つようにバイアスカット(斜めカット)を施して
も良い。
[発明の効果] 以上に説明してきたように、この発明によればその構
成をコネクティングロッドに連結されたインナピストン
と、このインナピストンに所定範囲の相対的上下動が可
能に嵌合されたアウタピストンとを有して、前記の上動
および下動に伴ないインナおよびアウタピストン間にそ
れぞれ上部油室および下部油室が形成されるように構成
され、更に上部油室および下部油室を連絡するととも
に、上部油室側への作動油の流通は制限するように構成
した流量制御手段を備えた可変圧縮比ピストンにおい
て、前記上部油室を環状に形成したため、圧縮比切換わ
り応答性を高めることができ、また、前記インナピスト
ンとアウタピストンとを前記環状内周面において凸部と
凹部とで周方向の相対回転が規制されるように嵌合する
構成としたため、インナーピストンに対するアウタピス
トンの周方向の回転移動を完全に規制でき設計の自由度
を高めることができるという効果が得られる。上記周方
向の相対回転規制は、インナピストンの頂面に設けた凹
部あるいは凸部と、これに対向するアウタピストンの内
面に設けた凸部あるいは凹部とで構成したので、インナ
およびアウタの各ピストンにおける、上部油室の環状外
周面を、製造を困難にする特別な形状とする必要がない
上、上記凸部および凹部は、ピストンの軸方向に向けて
形成されているので、ピストン製造時に使用する鋳型形
状が簡素化されたものとなり、製造が容易なものとな
る。
また、凸部の外周嵌合面および凹部の内周嵌合面を円
形とすることで、凸部および凹部の加工を極めて容易な
ものとすることができる。
また、凸部の外周嵌合面および凹部の内周嵌合面を、
平面部と半円形の曲面部との組み合わせで構成すること
で、凸部および凹部の加工が容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図はこの発明の一実施例に係わるピス
トンの断面図であって、第1図は高圧縮比用の形態を、
また第2図は低圧縮比用の形態をそれぞれ示した図、第
3図は第1図のIII−III断面図、第4図は他の実施例の
第3図と同様の断面図、第5図〜第13図は改良シールリ
ングの使用説明図で、第5図は高圧縮比用の形態を第6
図は低圧縮比用の形態を示した図、第7図および第8図
は上記一実施例における制御弁の拡大断面図であって第
7図はアウタピストンの下動時における動作態様を、ま
た第8図は同上動時における動作態様をそれぞれ示した
図、第9図は第7図および第8図の要部拡大斜視図、第
10図は、樹脂製シールリング単独で用いた場合のシール
リング溝部の断面図、第11図は改良案によるシールリン
グとシールリングシートを組み合わせたシールリング構
成としたシールリング溝部の断面図、第12図は他の実施
例によるシールリングシートの断面図、第13図は他の実
施例によるシールリングシートの合い口形状を示す図、
第14図は従来例に係わるピストンの断面図である。 1……コネクティングロッド、7……ボス(凸部) 8……嵌合孔(凹部)、8a……内周嵌合面 11……可変圧縮比ピストン、13……インナピストン 35……アウタピストン、35c……内周面(凸部の外周嵌
合面) 45……上部油室、47……下部油室 59a,59b……連絡路、61……逆止弁(流量制御手段) 62……オリフィス(流量制御手段)、e……偏心量 l……平面部、r……曲面部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松屋 辰之 神奈川県厚木市恩名1370番地 厚木自動 車部品株式会社内 (72)発明者 高島 安雄 神奈川県厚木市恩名1370番地 厚木自動 車部品株式会社内 (56)参考文献 特開 昭64−80737(JP,A) 特公 昭47−25401(JP,B1)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コネクティングロッドに連結されたインナ
    ピストンと、このインナピストンに所定範囲の相対的上
    下動が可能に嵌合されたアウタピストンとを有して、前
    記の上動および下動に伴いインナおよびアウタピストン
    間にそれぞれ上部油室および下部油室が形成されるよう
    に構成され、更に上部油室および下部油室を連絡すると
    ともに、上部油室側への作動油の流通は制限するように
    構成した流量制御手段を備えた可変圧縮比ピストンにお
    いて、前記アウタピストンのインナピストン頂面に対向
    する内面に凸部あるいは凹部を設ける一方、この凸部あ
    るいは凹部に嵌合する凹部あるいは凸部をインナピスト
    ンに設けて前記上部油室を環状に形成し、前記凸部およ
    び凹部は、インナピストンとアウタピストンとの上下相
    対移動方向に相互に摺動可能であるとともに、アウタピ
    ストンとインナピストンとの周方向の相対的回転を規制
    するものであることを特徴とする可変圧縮比ピストン。
  2. 【請求項2】相互に嵌合する凸部の外周嵌合面および凹
    部の内周嵌合面は、ピストン中心から偏心した円形であ
    ることを特徴とする特許請求の範囲1記載の可変圧縮比
    ピストン。
  3. 【請求項3】相互に嵌合する凸部の外周嵌合面および凹
    部の内周嵌合面は、相互に対向する位置に形成された一
    対の平面部と、この一対の平面部の両端相互をつなぐ一
    対の半円形の曲面部とで構成された長円形であることを
    特徴とする特許請求の範囲1記載の可変圧縮比ピスト
    ン。
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