JP2761650B2 - 冷凍パン生地及びその製造方法 - Google Patents

冷凍パン生地及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は焼成後のパン製品の表面に適度の焼け艶が得
られる冷凍パン生地及びその製造方法に関する。
〔従来の技術〕
前記冷凍パン生地は、通常、未発酵のパン生地を冷凍
したものであるが、近時は、発酵済みのパン生地を冷凍
することも試みられている。
これらの冷凍パン生地は、解凍後、必要に応じて焙炉
を行った後に焼成するだけでパン製品が得られるので、
一般家庭で手軽に新鮮なパン製品を得られるメリットが
あり、商業的にも利用されている。
ところで前記冷凍パン生地を解凍後に焼成したパン製
品の表面には、適度の焼色の艶があることが外観上好ま
しい。そこで従来は、解凍後のパン生地に全卵等の通常
の艶出し剤を塗布して焼成後のパンの表面に艶を出すよ
うにしている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、前記従来方法では、パン生地の解凍後に全卵
等を塗布しなければならないので、一般家庭で行うには
全卵等の準備、塗布作業等が面倒であり、手軽にパンを
得られるという冷凍パン生地の長所を著しく損うことと
なっていた。
そこで、予め冷凍パン生地に艶出し剤が塗布されてい
て、解凍後はそのまま焼成すれば表面に艶ができること
が望ましいが、例えば、前記全卵等の通常の艶出し剤を
塗布した冷凍パン生地では、焼成後のパンの表面に艶は
できるが、焼成時のパンの膨張によってまだらの艶にな
り見た目が悪くなる。
従って、現状では良好な艶出し剤がなく、前記した便
利な冷凍パン生地は存在しないのが実情である。
本発明は、前記に鑑み、解凍後に焼成するだけで表面
に良好な焼け艶ができる冷凍パン生地及びその製造方法
を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者は、前記課題を解決するため種々考究した結
果、冷凍前のパン生地にλ−カラギーナン水溶液を塗布
した後、これを冷凍して得た冷凍パン生地、又は、一旦
冷凍したパン生地の表面にλ−カラギーナン水溶液を塗
布した後、再度冷凍して得た冷凍パン生地は、解凍後に
焼成すると、焼成後のパンの表面に良好な艶が形成され
ることを知見し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、前記知見に基づいてなされたもので
あり、本発明に係る冷凍パン生地は、表面にλ−カラギ
ーナン水溶液が塗布されてなることを特徴としている。
また、本発明に係る冷凍パン生地の製造方法は、未発
酵のパン生地の表面にλ−カラギーナン水溶液を塗布し
た後、未発酵のまま、又は、発酵させた後に冷凍するこ
とを特徴とし、また、発酵済みのパン生地の表面にλ−
カラギーナン水溶液を塗布した後、冷凍することを特徴
とし、更には、発酵済み、又は、未発酵のパン生地を一
旦冷凍した後、冷凍したパン生地の表面にλ−カラギー
ナン水溶液を塗布した後、再度冷凍することを特徴とし
ている。
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明す
るが、その前に、本発明で艶出し剤として用いるλ−カ
ラギーナンについて説明する。
カラギーナンは、別名カラギーン、アイリッシュモス
とも呼ばれる植物系ゲル化剤の一つで、例えば牛乳をた
っぷりと使ったデザート菓子類や冷凍用デザート菓子類
に広く利用されているものであり、また、優れた粘性や
保水性を生かしてソース類の増粘剤やアイスクリームの
安定剤として利用されている。
このカラギーナンは、ガラクトースとその誘導体が数
多く並んだ細長い鎖状の構造を有しており、前記誘導体
の比率によって、カッパ(κ)、イオタ(ι)、ラムダ
(λ)の形態のものがあるが、本発明に用いる艶出し剤
としては、λ−カラギーナンが適当である。
次に、λ−カラギーナンを塗布した本発明に係る冷凍
パン生地は、第1図及び第2図に例示したように種々の
方法で製造することができる。
即ち、第1図は冷凍前のパン生地にλ−カラギーナン
を塗布して製造するもので、原料を混捏し、分割・丸目
して成型した後の未発酵の状態のとき(A)にλ−カラ
ギーナンを塗布してこのまま、又は、この後に焙炉を行
った後冷凍して冷凍パン生地とする。あるいは、前記未
発酵のパン生地に焙炉を行って発酵済みとした状態のと
き、(B)にλ−カラギーナンを塗布してから冷凍して
冷凍パン生地とする。
また、第2図は、原料を混捏し、分割・丸目して成型
した後、未発酵のまま、又は、この後更に焙炉を行った
後、一旦冷凍して冷凍パン生地とした状態のとき(C)
にλ−カラギーナンを塗布し、次いで再度冷凍して冷凍
パン生地とする方法である。
前記の如く、本発明に係る冷凍パン生地は、種々の方
法で製造できる。また、λ−カラギーナンの塗布は、水
溶液として行うが、このλ−カラギーナン水溶液の濃度
は、冷凍パン生地の状態、貯蔵期間に応じて適宜定める
のが望ましく、冷凍貯蔵する期間が長い程高濃度にする
のが好ましいが、通常は、0.15重量%以上とし、望まし
くは、0.2〜2.0重量%、さらに好ましくは0.2〜1.5重量
%とする。
前記水溶液のλ−カラギーナンの濃度が0.15重量%未
満だと、焼成後に殆ど艶が出ないことが種々の実験の結
果判明しており、また、濃度は高いほどムラのない艶が
得られるが、2.0重量%を超えると、水溶液の粘性が強
くなりすぎて取扱いが不便になり実用的ではない。
また、塗布方法としては、λ−カラギーナン水溶液に
パン生地を浸漬する浸漬法、パン生地の表面にλ−カラ
ギーナン水溶液を噴霧する噴霧法、刷毛等を用いてパン
生地の表面にλ−カラギーナン水溶液を塗り付ける刷毛
塗り法等により実施することができるが、これはパン生
地の状態に応じて適宜定めることができる。
以下、実施例により冷凍パン生地の製造方法を更に詳
しく説明する。
実験例1 冷凍前の未発酵のパン生地(第1図Aの状態)にλ−
カラギーナン水溶液を塗布してそのまま冷凍した。
通常のバターロールの原料配合で、ノータイム法によ
りロールパンを製造した後、分割・整形して35gの重量
のロールパンを数個作成した。これを1重量%のλ−カ
ラギーナン水溶液に数秒間浸漬した後、網上に数分放置
して余分の水溶液を除去した。余分の水溶液を除去した
後の個々のロールパンに付着したλ−カラギーナン水溶
液の量を実測したところ0.5〜1.0gであった。
次いで、このロールパンをマイナス40℃の雰囲気で30
分間放置して凍結させ、冷凍パン生地を製造した。次
に、この冷凍パン生地を1週間及び9週間マイナス20℃
で凍結貯蔵した後、室温で30分間解凍を行い、次いで38
℃,湿度80%で、40〜60分間焙炉を行った後、オーブン
により210℃で8〜12分間焼成した。
焼成後のパンの表面には、どちらの冷凍貯蔵期間の場
合でもムラやまだらな部分がなく、表面全体に亙って良
好な焼け艶が形成されていた。この艶の程度は、冷凍パ
ン生地を解凍後に全卵を塗布する従来法によるものとほ
ぼ同様であった。
上記のように本実験例では浸漬法によりパン生地にλ
−カラギーナン水溶液を塗布したが、噴霧法,刷毛塗り
法でも実施できる。しかし、焙炉を行う前のパン生地の
場合は、体積が小さく、かつ、比較的硬度があるので簡
便な浸漬法により大量処理することができ、生産性を高
めることができる。
なお、本例のように未発酵のパン生地にλ−カラギー
ナン水溶液を塗布する場合は、その後に焙炉を行ってパ
ン生地が膨張しても、これに応じて十分に伸びるように
なるべく高濃度の水溶液を用いることが好ましい。
実験例2 冷凍前の未発酵のパン生地(第1図Aの状態)にλ−
カラギーナン水溶液を塗布した後、焙炉を行ってから冷
凍した。
実験例1のバターロールの原料配合に、更に活性グル
テン粉末、生地改良剤等を添加して前記同様にロールパ
ンを作成し、1重量%のλ−カラギーナン水溶液に数秒
浸漬した後、網上に数分放置して余分の水溶液を除去し
た。
次いで、これを5〜15℃,高湿度,二酸化炭素富化ガ
ス雰囲気中で2〜18時間焙炉を行い、次いで冷凍して発
酵済みの冷凍パン生地を製造した。
これを実験例1と同様の温度,期間で凍結貯蔵した
後、室温で30分間解凍し、次いでオーブンにより210℃
で8〜12分間焼成した。その結果、実験例1と同様に、
パン生地の表面全体に良好な焼け艶を形成することがで
きた。
特に、焙炉前に塗布を行ったにも係わらず、λ−カラ
ギーナンは、焙炉時の生地の膨張に応じて伸び、その結
果焼成後のパンの表面全体に均一に艶が広がっていた。
実験例3 実験例2において、パン生地に塗布するλ−カラギー
ナン水溶液の濃度を0.10〜2.0重量%の範囲で種々変更
し、焼成後の艶の状態を観察した。但し、冷凍貯蔵期間
は3日間及び9週間とした。その結果を次表に示す。
表から明らかなように、λ−カラギーナン水溶液の濃
度は、冷凍パン生地の冷凍貯蔵期間が長いとき程濃い目
にしておくことが望ましい。例えば、9週間程度の貯蔵
の場合では、0.2重量%以上、1.5重量%以下とするのが
良く、特に0.3〜1.25重量%とするのが好ましい。
0.2重量%未満だと焼成後のパン生地の表面に十分な
艶が得られず、また、1.5重量%を超えると、艶は出る
が細かいひび割れ状の艶となり外観が悪化すると共に、
λ−カラギーナン水溶液の粘性が強くなり、パン生地へ
の付着作業、その後の余分な水溶液の除去作業等に手間
がかかり、かつ、水溶液自体の取扱いも不便であった。
実験例4 焙炉を行った発酵済みのパン生地(第1図Bの状態)
にλ−カラギーナン水溶液を塗布した。
実験例2と同様にロールパンの生地作成から整形まで
を行った後、5〜10℃、高湿度、二酸化炭素富化ガス雰
囲気中で2〜18時間焙炉を行った。次いで、焙炉後のパ
ン生地の表面に0.35重量%のλ−カラギーナン水溶液を
噴霧法により噴霧して均一に塗布した後、冷凍して冷凍
パン生地を製造した。
上記のようにして製造した冷凍パン生地を室温で30分
間解凍した後、オーブンにより210℃で8〜12分間焼成
した。その結果、実験例1と同様に、パンの表面全体に
良好な焼け艶を形成することができた。
なお、焙炉を行った後のパン生地は、生地が膨らんで
柔らかくなっているので、生地に損傷を与えないよう
に、前記の如く噴霧法あるいは刷毛塗り法によりλ−カ
ラギーナンの塗布を行うのが好ましく、この場合、パン
生地は焙炉に伴う膨脹を終えているので、その後は焼成
時の膨脹だけであり、従ってλ−カラギーナン水溶液の
濃度は薄くしても良く、薄くすることによって噴霧、刷
毛塗りが容易となり作業性が向上する。
実験例5 焙炉を行った発酵済みのパン生地を一旦冷凍した後
(第2図Cの状態)、この冷凍パン生地の表面にλ−カ
ラギーナン水溶液を塗布した。
実験例4と同様にロールパンの生地作成から焙炉まで
を行った後、冷凍して冷凍パン生地を製造した。この冷
凍パン生地を約4℃の冷蔵庫に移した後、0.7重量%の
λ−カラギーナン水溶液を刷毛により塗布し、次いでこ
れを再び冷凍し、実験例1と同様の温度、期間で凍結貯
蔵した。
この冷凍パン生地を室温で解凍し、次いでオーブンに
より210℃で8〜12分間焼成した。その結果、実験例1
と同様に、パン生地の表面全体に良好な焼け艶を形成す
ることができた。この様に、一旦冷凍したパン生地の表
面にλ−カラギーナン水溶液を塗布しても同様な結果を
得ることができる。
なお、一旦冷凍したパン生地は、その表面が硬く、刷
毛等によって塗布できるが、表面が凍結しているため水
分が付着し易く、水分が付着すると塗布し難くなるの
で、上記冷蔵庫のような比較的に低温の環境下で手早く
塗布することが望ましい。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明に係る冷凍パン生地は、
表面にλ−カラギーナン水溶液が塗布されているので、
解凍後のパン生地に何等の艶出し剤を塗布することな
く、そのまま焼成することにより表面に良好な焼け艶の
あるパン製品を得ることができる。
従って、解凍後のパン生地に全卵等を塗布する必要の
ある従来の冷凍パン生地に比べ簡便であり、一般家庭で
製パンする場合、冷凍パン生地の取扱いの便利さを保持
したまま高品質のパンを製造でき極めて実施効果が大き
い。
また、本発明に係る冷凍パン生地の製造方法によれ
ば、前記良好な冷凍パン生地を効率よく製造することが
できる。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は、それぞれ本発明方法の実施例を示
す工程図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面にλ−カラギーナン水溶液が塗布され
    てなることを特徴とする冷凍パン生地。
  2. 【請求項2】未発酵のパン生地の表面にλ−カラギーナ
    ン水溶液を塗布した後、未発酵のまま、又は、発酵させ
    た後に冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方
    法。
  3. 【請求項3】発酵済みのパン生地の表面にλ−カラギー
    ナン水溶液を塗布した後、冷凍することを特徴とする冷
    凍パン生地の製造方法。
  4. 【請求項4】発酵済み、又は、未発酵のパン生地を一旦
    冷凍した後、冷凍したパン生地の表面にλ−カラギーナ
    ン水溶液を塗布した後、再度冷凍することを特徴とする
    冷凍パン生地の製造方法。
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