JP2759470B2 - 錫酸ゾル及びその製造方法 - Google Patents

錫酸ゾル及びその製造方法

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    • C01G19/00Compounds of tin
    • C01G19/02Oxides

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は水性の錫酸ゾル、特に液晶表示素子、太陽電
池等に用いられる透明導電膜を形成し、又、導電性が高
くて透明な酸化物セラミツクスの製造原料に適した水性
の錫酸ゾル及びその製造方法に関する。
(従来の技術) 近年のオプトエレクトロニクス分野の発展に伴ない、
透明導電性材料の需要が伸びつつあり、特に酸化錫系の
材料は電気伝導性、光透過性、物理的、化学的安定性に
優れることから注目されている。実用的には基板上に薄
膜を形成させ、各種表示素子、太陽電池、イメージ管な
どの透明電極として、又、省エネルギーの目的で赤外域
での反射特性を利用し、建築用窓や車両の窓にも使用さ
れている。
その様な薄膜の形成法としては、従来から(1)真空
蒸着法、(2)スパツタリング法、(3)CVD法、
(4)塗布法等が知られている。
しかし、上記(1)、(2)、(3)の方法は装置が
複雑で、膜形成速度も遅く、作業性に劣り、又、大面積
の膜形成にも適さない。
これに対し、(4)の方法は簡単な操作で膜を形成で
き、膜厚の自由度も大きく、特に大面積の基板、管など
に適応できるという利点をもつ上、成膜コストも安価で
ある。その様な塗布法に用いられる材料としては先ず、
オクチル酸錫等の有機酸塩、アルコキシド或いは有機錯
体などからなる有機系のものが挙げられるが、原料が高
価な上、安定性に問題があり、更には使用時の操作も複
雑で防爆等の環境面での対応も必要とすることから、水
系のものが要望されている。
しかしながら、水系では従来からSnCl4等の無機塩の
溶液が知られているものの、熱分解時に塩化水素等の有
毒ガスの発生、或いは形成された膜中に残存する塩素が
導電性を損なうなど問題が多い。又、その様な欠点を克
服したものとして、例えば特開昭62−223019号に結晶質
酸化スズ・アンチモンゾル、特開昭62−230617号に酸化
錫粒子及び/又は異種元素をドープした酸化錫粒子が、
コロイド粒子として水又は有機溶媒に分散したゾルが提
案されているが、前者は形成した膜の基板に対する密着
性が弱いという問題点があり、後者においてはその製造
方法が煩雑である上に、ゾルの粒径が比較的大きく、か
つ0.1μm以上の粗粒子も多いので、薄膜の平滑性に欠
け、満足できるものではない。
(発明が解決しようとする課題) 本発明の目的は、上記した問題点を解決し、薄膜用材
料として利用する場合、多くの利点を持つ塗布法にて膜
物性に優れる透明導電膜を形成し得る水性の錫酸ゾル及
びその製造方法を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明は一般式 X−A−COOH (1) (XはH、OH又はCOOH、Aは−(CH2)n−、−CH=CH
−、−CH(OH)CH2−、−CH(OH)CH(OH)−又は−CH2
C(OH)(COOH)CH2−、nは0又は1〜3の整数を示
す。)で表わされる有機酸の1種以上を含有することを
特徴とする水性の錫酸ゾル及びその製造方法に係る。
本発明の水性の錫酸ゾルは、錫酸と有機酸を接触させ
ることにより得られるものであり、従来の問題点として
述べた、腐蝕性、刺激性、及び可燃性の成分を含まない
ことを特徴とする。本発明の錫酸ゾルは更にアンチモン
化合物を含有することもでき、Sb/Sn原子比が0.01〜0.3
の割合でアンチモンを含有することが好ましい。又、有
機酸の含有量はSn1原子に対して0.15〜2モルとするの
が好ましい。
第2錫の水溶性有機酸塩としては酢酸塩が知られるの
みで、本発明のゾルが含有するシユウ酸等の一般式
(1)の水溶性有機酸の塩は文献等にも見当たらない。
しかしながら、本発明者らは、錫酸に上述した有機酸を
加えることにより安定な錫酸ゾルが形成されることを見
い出した。
本発明のゾルは、貯蔵しても外観及び粘度が変化せ
ず、又基板上に成膜した場合、密着性、透明性及び導電
性に優れた薄膜を得ることができる。
本発明の水性の錫酸ゾルは錫酸に有機酸の1種又は2
種以上を接触させることにより製造される。
ここで使用する錫酸は公知の製造方法、例えば錫酸ソ
ーダに塩酸等の鉱酸を加える。塩化第2錫に炭酸アンモ
ニウム、あるいはアンモニアを加える、金属錫を硝酸に
加える等により得られるものである。これらの方法によ
り得られた錫酸は洗浄により不純分を取り除いた後に用
いるのが好ましい。
錫酸と接触される有機酸は上記一般式(1)の化合物
で、具体的には例えばシユウ酸、クエン酸、酒石酸、乳
酸、マレイン酸、マロン酸、グリコール酸、リンゴ酸等
の水溶性有機酸であり、これらの1種又は2種以上を使
用することができる。有機酸の量はSn1原子に対し、0.1
5〜2モルが好ましく、0.2〜0.7モルが特に好ましい。
0.15モル未満では沈殿を生じるので好ましくない。又2
モルを越えると、これを用いて成膜した場合、膜の密着
性、透明性、更に導電性等が低下するので好ましくな
い。
本発明の錫酸ゾルの濃度は、種々の範囲で自由に設定
できるが、SnO2として15%以下とすることが好ましい。
15%を越えるとゾルの粘度が上昇し、安定性に問題が生
じる。又接触温度は室温でよく、特に加熱、冷却等の操
作を行う必要はない。
又、錫酸ゾルを用いて基板に薄膜を形成させ、導電膜
として用いる場合、酸化錫のみでは導電性が不充分なた
め、通常、アンチモンを含有させた酸化錫が用いられ
る。アンチモンを含有させるには、錫酸、有機酸及びア
ンチモン化合物の3者を接触させるのが良い。アンチモ
ン化合物としては例えばアンチモンの酸化物、水酸化
物、有機酸塩等を用いることができる。アンチモン化合
物は錫酸と有機酸の接触後に加えても良く、接触前に錫
酸又は有機酸のいずれかに添加しておいても良い。具体
的には例えば塩化アンチモン、吐酒石のようなアンチモ
ン塩の水溶液から沈殿させた酸化アンチモン(水和物を
含む)と錫酸とを混合し、有機酸を接触させる方法、
又、錫塩の水溶液にアンチモン塩を添加し、酸化アンチ
モン(水和物を含む)と錫酸を共沈させる方法、更に
は、錫酸と有機酸の接触時或いは接触後に酸化アンチモ
ン粉末を添加する方法等が挙げられる。
アンチモンの添加量はSb/Sn原子比で0.01〜0.3の範囲
が好ましい。0.01未満では添加効果が表われず、0.3を
越えて添加してもその効果は殆ど変わらないし、ゾルの
安定性に問題を生じる。
以上の様にして得られた本発明のアンチモンを含有す
る錫酸ゾルは、アンチモンがゾル中に均密に混合されて
いるため、基板にコートして焼成する場合、400〜500℃
のような低温度で酸化錫に酸化アンチモンがドープさ
れ、優れた導電性を示す膜を得ることができる。
本発明による錫酸ゾルを薄膜形成材料として用いる場
合は、塗布法により基板上に被覆され、必要に応じて乾
燥及び焼成され実用に供される。ここで塗布法として
は、通常行なわれている浸漬法、スピン法、スクリーン
印刷法、オフセツト印刷法などが適用できる。又、乾燥
温度は室温〜200℃程度、焼成温度は400〜900℃程度が
好ましく、この焼成過程で有機酸は炭酸ガスと水に分
解、揮発し、緻密な酸化錫膜が形成される。
(実 施 例) 以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明は
これらに限定されるものではない。
実施例1 錫酸ソーダ250.0gを1.5の水に溶解し、これに3N−H
Clを加え、pHが3.0となるように調整してゲル状の沈殿
物を生成させた。該ゲルを充分に洗浄し、不純物を除い
た後、これに総重量が1175gとなるように水を加えてリ
パルプし、シユウ酸をSnO2に対しモル比で0.3添加し、
室温で1時間攪拌して放置した。2日後に、ほぼ透明な
ゾルが得られた。このゾルを分析したところ、SnO2濃度
12.0%、粘度は1.35cpであり、3ケ月放置後も外観及び
粘度に変化は見られず安定であつた。
該ゾルを用い、SnO2濃度を9%に調整し、引き上げ速
度10.0cm/分でガラス基板に浸漬法によりコートした
後、110℃で30分乾燥、500℃で30分焼成した。得られた
膜の厚みは1050Åであり、400〜800nmの波長の光に対し
て90%以上の透過率を示し、又表面抵抗は86.5kΩ/□
であつた。
実施例2 実施例1と同様の方法で調整した錫酸ゾルに三酸化ア
ンチモン粉末13.7gを加えると溶解し、ほぼ透明で黄褐
色を呈するゾルが得られた。該ゾルを分析したところ、
SnO2濃度12.0%、Sb/Sn原子比0.1で、粘度は3.10cpであ
り、3ケ月放置後も外観及び粘度に変化は見られず安定
であつた。
該ゾルを用い、SnO2濃度を9%に調整し、ガラス基板
に浸漬法によりコートした後、110℃で30分乾燥、500℃
で30分焼成した。得られた膜の厚みは1500Åであり、40
0〜800nmの波長の光に対して90%以上の透過率を示し、
又、表面抵抗も650Ω/□と小さく、透明導電膜として
優れたものであつた。
実施例3 錫酸ソーダ250.0gと吐酒石25.1gとを1.5の水に溶解
し、これに3N−HClを加え、pHが3.0となるように調整し
てゲル状の沈殿物を生成させた。該ゲルを充分に洗浄
し、不純物を除いた後、これに総重量が1175gとなるよ
うに水を加えてリパルプし、シユウ酸をSnO2に対しモル
比で0.2添加し、室温で1時間攪拌して放置した。2日
後に、ほぼ透明で黄褐色を呈するゾルが得られた。この
ゾルを分析したところ、SnO2濃度12.0%、Sb/Sn原子比
0.08で、粘度は1.50cpであり、3ケ月放置後も外観及び
粘度に変化は見られず安定であつた。
該ゾルを用い、SnO2濃度を9%に調整し、ガラス基板
に浸漬法によりコートした後、110℃で30分乾燥、500℃
で30分焼成した。得られた膜の厚みは1100Åであり、40
0〜800nmの波長の光に対して90%以上の透過率を示し、
又表面抵抗も700Ω/□と小さく、透明導電膜として優
れたものであつた。
実施例4 塩化第2錫207.5gと三塩化アンチモン9.1gとを1.5
の水に溶解し、これに13%アンモニア水を加えてpHが8.
0となるように調整してゲル状の沈殿物を生成させた。
該ゲルを充分に洗浄し、不純物を除いた後、これに総重
量が1000gとなるように水を加えてリパルプし、乳酸をS
nO2に対しモル比で2.0添加し、室温で1時間攪拌して放
置した。10日後に、ほぼ透明で黄褐色を呈するゾルが得
られた。このゾルを分析したところ、SnO2濃度12.0%、
Sb/Sn原子比0.05で、粘度は2.52cpであり、3ケ月放置
後も外観及び粘度に変化は見られず安定であつた。
該ゾルを用い、SnO2濃度を9%に調整し、ガラス基板
に浸漬法によりコートした後、110℃で30分乾燥、500℃
で30分焼成した。得られた膜の厚みは1350Åであり、40
0〜800nmの波長の光に対して90%以上の透過率を示し、
又、表面抵抗も940Ω/□と小さく、透明導電膜として
優れたものであった。
実施例5 実施例3と同様の方法で調整したアンチモンを含む錫
酸ゲルのスラリーにシユウ酸及び酒石酸をそれぞれSnO2
に対しモル比で0.2ずつ添加し、室温で1時間攪拌して
放置した。2日後に実施例1で示したゾルと同様なゾル
が得られ、これを用いてガラス基板上に形成された薄膜
の物性も同様に優れたものであつた。
実施例6 実施例5において酒石酸をクエン酸、マレイン酸、マ
ロン酸、グリコール酸、或いはリンゴ酸に置き換えて添
加したところ、それぞれ2日後に実施例3で示したゾル
と同様のゾルが得られ、これらを用いてガラス基板上に
形成された薄膜の物性も同様に優れたものであつた。
(発明の効果) 本発明の錫酸ゾルは、上記した様に、錫酸を水溶性有
機酸に接触させるという非常に簡単な方法により得られ
る水性ゾルである。それ故に、作業環境面にも問題を与
えることのない材料であり、特に薄膜形成用として使用
する場合は、物性の優れた透明導電膜を形成することが
できる。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 X−A−COOH (1) (XはH、OH又はCOOH、Aは−(CH2)n−、−CH=CH
    −、 −CH(OH)CH2−、−CH(OH)CH(OH)−又は −CH2C(OH)(COOH)CH2−、nは0又は1〜3の整数
    を示す。)で表わされる有機酸の1種以上を含有するこ
    とを特徴とする水性の錫酸ゾル。
  2. 【請求項2】Sb/Sn原子比0.01〜0.3の割合でアンチモン
    を含有する請求項1記載の錫酸ゾル。
  3. 【請求項3】Sn1原子に対して有機酸を0.15〜2モル含
    有する請求項1又は2記載の錫酸ゾル。
  4. 【請求項4】錫酸と一般式(1)で表わされる有機酸の
    1種以上を接触させることを特徴とする有機酸を含有す
    る水性の錫酸ゾルの製造方法。
  5. 【請求項5】錫酸と一般式(1)の有機酸の接触に加え
    て更にアンチモン化合物を接触させる請求項4記載の製
    造方法。
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