JP2757203B2 - クロムの巨大粒又は単結晶の製造法 - Google Patents

クロムの巨大粒又は単結晶の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はクロムの巨大粒または単結晶の製造法に関す
るものである。
[従来の技術] クロムは優れた耐蝕性、耐熱性を備えているにもかか
わらず、その用途は主に合金の添加材として用いられて
いるにすぎず、クロム単体ではスパッタリング用のター
ゲット材以外の用途にはほとんど実用化されていないの
が現状である。
その主な原因は、クロムの粒界の脆弱さに起因するク
ロム自体の脆性にあり、従ってこのものの塑性加工は非
常に困難なためであった。
そのため実用的なクロムの成型体を得るためには、放
電加工やワイヤーカット等の歩留まりの悪い加工法に頼
らざるを得ず、複雑な形状のクロムの成型体を得ること
は実質的に不可能であった。
クロム等の金属の粒界脆性を根本的に解決するために
は、粒界の存在しない単結晶とすることで解決される。
金属、例えばモリブデンの単結晶化の方法として二次
再結晶法が提案されている(特開昭59−141498号公報参
照)。この方法は、単結晶化の必須要件としていわゆる
ピンニングエレメントを単結晶成分に添加することが必
要で、その添加剤(CaO、MgO)の量的制御が厳密に要求
される。
現在、クロムの単結晶はフローティングゾーン法で得
るのが一般的であるが、この方法は時間当りの生産量が
限られること、製品の形状が比較的小さい径の棒状に限
定されること、還元雰囲気が必要で装置が極めて複雑化
すること等の問題点があり、この方法で大形または複雑
形状のクロム単結晶を得ることは極めて困難であった。
自由形状のクロムの大形単結晶を容易に得ることがで
きるならば、従来の加工方法を用いた際のように加工の
際の歩留まりの問題もなく、比較的複雑形状の成形体が
必要な電子部材への応用も考えられ、クロムの用途の著
しい拡大が期待できることになる。
[問題を解決するための手段] 本発明者らは、クロムの単結晶の製造法につき鋭意検
討の結果、二次再結晶法によるクロムの単結晶化に際
し、クロム成分中に不可避的に存在する不純物、例え
ば、Fe、Al、Ni、Si等の挙動に注目し検討を重ねた結
果、このような不純物がクロムの結晶化に良好な影響を
及ぼすことに着目し、クロムをまず焼結し、その焼結体
を熱処理、即ち二次再結晶させることによってクロムの
単結晶化が可能であるとの知見を得て本発明を完成する
に至った。即ち、本発明は、焼結により歪を施したクロ
ム成形体を熱処理することを特徴とするクロムの巨大粒
または単結晶及びその製造法に関するものである。本発
明者等は、更に検討を重ねた結果、クロムを焼結後更に
この焼結体を塑性加工しその成形体を用いることによ
り、後の熱処理をより温和な条件で行なうことが可能な
ことを見出した。本発明で言う巨大粒とは、比較的大き
な単結晶が集合したものと実質的に変らない。
クロムの製錬は、還元法、電解法等の方法で実施され
ているが、これらの方法において原料として使用するク
ロム鉱石にはクロム以外にFe、Al、Si、Ni、Cu等の成分
が存在し、工業的にもっとも高純度のクロムを得る方法
とされている電解法で得られたクロム中にも、得られた
ままの状態では、例えば、Fe;20〜1000ppm、Al;1〜20pp
m、Si;30〜600ppm(SiO2として)等の不純物が含まれて
いる。前記したように本発明者等の検討結果から、これ
らの不純物即ち、クロム中に不可避的に存在する不純物
が二次再結晶法によるクロム単結晶化に好影響を及ぼす
ことが考えられること、及び、得られる製品の純度の面
からから本発明では電解法で得られたクロムを用いるこ
とが好ましい。本発明で原料として用いるクロムは前記
したようなクロムであるが、これを通常の粉末状とし焼
結を施す。ここで用いる焼結法は一般的に行なわれてい
る焼成法、熱間静水圧プレス法(HIP)等の方法が用い
られるが、何れにしても焼結体が、歪みを受ける状態と
なる方法である。この際の焼結温度は、通常1200℃以上
でクロムの融点以下であり、また焼結時間は特に限定さ
れないが10分以上であり、圧力は1000atm以上であるこ
とが好ましい。焼結体の形状は、焼結の際の型容器を適
宜選択して用いることにより、比較的複雑な形状の焼結
体(成形体)とすることが可能である。
本発明では、前記したように焼結により得た成形体を
更に塑性加工することにより、後の熱処理を温和な条件
で行なうことができる。
この際の塑性加工は特に制限されるものでないが、通
常行なわれている圧延、鍛造、押出し加工等で良く、例
えば、圧延の場合は、約700℃以下で、30〜90%の圧延
率で行なうことで良い。
上記した方法で得たクロムの成形体は熱処理(二次再
結晶)に供するが、この熱処理は、クロムの焼結の後の
塑性加工の有無、クロムへの添加物の種類によっても異
なるが、1400℃からクロムの融点(1860℃)未満の温度
で、30分以上、還元雰囲気で行なう。上記温度より低い
熱処理温度ではクロムの単結晶化が不十分である。
熱処理により得られたクロムは、単結晶であり、この
ことはX線背面ラウエ法により確認することができる。
[発明の効果] 本発明により任意形状のクロムの巨大粒または単結晶
を能率よく製造することができ、複雑形状の成形体が製
造可能である。又、クロム焼結体を塑性加工することに
より比較的温和な条件で二次再結晶が可能である。
[実施例] 以下、実施例に基づき説明するが本発明を何等限定す
るものではない。
実施例1 電解法により得られた高純度クロムを熱間静水圧法に
て焼結した。ここで用いたクロムの成分分析結果は次の
とうりである。
Cr;99.98wt%、Si;40ppm、Fe;50ppm 焼結条件は、1200〜1300℃で1時間、圧力1200〜2000
atmである。該焼結体を200mm×50mm×50mmの大きさに切
り出し水素雰囲気において1600℃、3時間の熱処理を行
いクロムの単結晶を得た。尚この単結晶はX線背面ラウ
エ法で単結晶であることを確認した。又、焼結の際の温
度、圧力が結晶粒成長におよぼす影響を表−1に示す。
尚、比較のため1000℃で焼結したものの結晶状態を同表
に示す。
実施例2 実施例1と同様の手順で得た焼結体を同例と同様の大
きさに切り出し水素雰囲気において1200〜1600℃、3時
間の熱処理を行なった。熱処理温度と結晶粒成長の関係
を表−2に示す。
表1 焼結温度、圧力が結晶粒成長におよぼす影響 温度 圧力 結晶状態 1000℃ 1800atm 細径 1200℃ 1800atm 巨大粒 1300℃ 1800atm 単結晶 1300℃ 1200atm 一部巨大粒 1300℃ 1600atm 単結晶 1300℃ 2000atm 単結晶 表2 熱処理条件と結晶状態 熱処理温度 結晶状態 1200℃ 細粒 1300℃ 細粒 1400℃ 細粒 1500℃ 一部巨大粒 1600℃ 単結晶 実施例3 実施例1と同様にして得た焼結体を、500℃で60%の
温間圧延をしたものを200mm×50mm×50mmの大きさに切
り出し水素雰囲気において1600℃、3時間の熱処理を行
いクロムの単結晶を得た。尚この単結晶はX線背面ラウ
エ法で単結晶であることを確認した。又、焼結の際の温
度、圧力が結晶粒成長におよぼす影響を表−3に示す。
尚、比較のため、1000℃で焼結したものをそのまま熱
処理を行なったが再結晶状態は細粒であった。
実施例4 実施例3と同様の手順で得た圧延体を同例と同様の大
きさに切り出し水素雰囲気において1200〜1600℃、3時
間の熱処理を行なった。熱処理温度と結晶粒成長の関係
を表−4に示す。
表3 焼結温度、圧力が結晶粒成長におよぼす影響 温度 圧力 結晶状態 1000℃ 1800atm 細径 1200℃ 1800atm 巨大粒 1300℃ 1800atm 単結晶 1300℃ 1200atm 一部巨大粒 1300℃ 1600atm 単結晶 1300℃ 2000atm 単結晶 表4 熱処理条件と結晶状態 熱処理温度 結晶状態 1200℃ 細粒 1300℃ 細粒 1400℃ 一部巨大粒 1500℃ 単結晶 1600℃ 単結晶

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】焼結により歪を施したクロム成形体を熱処
    理することを特徴とするクロムの巨大粒または単結晶の
    製造法。
  2. 【請求項2】焼結し次いで塑性加工により成形したクロ
    ム成形体を熱処理する特許請求の範囲第1項記載の製造
    法。
  3. 【請求項3】加圧法にて焼結し成形した成形体を熱処理
    する特許請求の範囲1又は2項記載の製造法。
JP10464389A 1988-05-18 1989-04-26 クロムの巨大粒又は単結晶の製造法 Expired - Fee Related JP2757203B2 (ja)

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JP63-119303 1988-05-18
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JP2794846B2 (ja) * 1989-09-28 1998-09-10 東ソー株式会社 クロムの巨大粒又は単結晶及びその製造法

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