JP2755716B2 - 複列玉軸受外輪素形材の鍛造方法 - Google Patents

複列玉軸受外輪素形材の鍛造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、複列玉軸受における外輪素形材の鍛造方
法に関するものである。
〔従来の技術〕
第10図に示すように、複列玉軸受の外輪1は、内径面
に2本の軌道溝2、2が設けられ、その軌道溝2間が厚
肉とされている。
上記のような外輪1は、鍛造によって成形することは
不可能であるため、通常、旋削加工により製造される。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、従来は、第11図に示すリング状素材3を外
輪素形材としており、上記リング状素材3の厚みは、外
輪中央部の厚みより厚肉とされている。このため、外輪
の旋削時における軌道溝部の削り代はきわめて大きく、
材料歩留りが悪いという問題がある。
また、リング状素材3は外径面も旋削する必要がある
ため、旋削工数が多く、コストを高める要因になってい
る。
そこで、この発明は、材料歩留りの向上と旋削工数の
削減を図ることができる外輪素形材の鍛造方法を提供す
ることを技術的課題としている。
〔課題を解決するための手段〕
上記の課題を解決するため、この発明においては、成
形ダイスの内側に先端部が挿入された下ポンチの先端の
テーパ面上に外径が成形ダイスの内径より小径のリング
状素材をローディングしたのち、そのリング状素材上に
設けられた上ポンチを下降し、各ポンチの先端部に設け
たテーパ面をリング状素材の内側に圧入させる非拘束前
後方押出しによりリング状素材を軸方向および外径方向
に伸ばし、下ポンチと成形ダイス間に挿入した筒状のエ
ジェクターの上端面と上ポンチの外周中途に設けられた
段にリング状素材の両端が当接する状態からさらに下降
する上ポンチの移動によりリング状素材の内径面中央部
を内方に据込ませて環状突出部を成形する構成を採用し
たのである。
〔作用〕
上記のような鍛造法を採用することにより、リング状
素材の外径面は成形ダイスの内面によって成形されると
共に、内径面中央部に環状突出部を形成することができ
るため、外輪に近い形状の素材形を得ることができる。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例を第1図乃至第9図に基づい
て説明する。
第1図は鍛造加工用リング状素材10を示し、第2図
は、そのリング状素材10から成形される外輪素形材11を
示す。
ここで、外輪素形材11の内径面中央部には、環状の突
出部12が設けられ、その突出部12の両端にテーパ面13が
連成されている。またテーパ面13の端に円筒面14が連成
されている。
この外輪素形材11の外径D1は、第10図に示す外輪1の
外径D0と同径とされ、また、円筒面14における内径d
1は、外輪1の内径d0より小径とされている。第10図に
示す外輪1は、上記外輪素形材11の両端面および内径面
の旋削によって形成される。
第2図の鎖線(イ)は、旋削後の完成品(外輪)を示
す。
第3図は、リング状素材10から外輪素形材11を成形す
る成形装置を示す。この成形装置は、成形ダイス20と、
その成形ダイス20の内側に先端部が挿入された下ポンチ
21と、その下ポンチ21の外輪に嵌合されて成形ダイス20
内に先端部が臨む筒状のエジェクタ22と、上記下ポンチ
21に対して昇降自在に設けられた上ポンチ23とから成
る。
成形ダイス20は、外輪素形材11の外径面を成形するた
め、その内径d3は、外輪素形材11の外径D1と同径とされ
ている。
前記上ポンチ23は、外周面の中途に段24を有し、その
段24から下側に外輪素形材11の内径面を成形する成形軸
部25が設けられている。この成形軸部25と下ポンチ21の
外径は同径となり、外輪素形材11の円筒面14の内径d1
等しくなっている。
上記成形軸部25および下ポンチ21の外径面における先
端部にはテーパ面26が設けられ、そのテーパ面26の小径
端に連続して面取り27が施されている。
テーパ面26の小径端における外径は、リング状素材10
の内径と略同径とされている。このテーパ面26のポンチ
軸芯に対する傾斜角θは、リング状素材10の成形時に、
その素材10が外径方向にスムーズに流れるよう30°以下
とされている。
上記の構成から成る成形装置を用いて外輪素形材11を
成形するには、リング状素材10を成形ダイス20の内側に
挿入して下ポンチ21で支持し、それより上ポンチ23を下
降させる。
第3図乃至第8図は上記外輪素形材11の成形工程を段
階的に示す。第3図は下ポンチ21のテーパ面26上にリン
グ状素材10をローディングした状態を示し、上記リング
状素材10は、下ポンチ21のテーパ面26における小径端で
支持されている。そのテーパ面26での支持によってリン
グ状素材10は成形ダイス20の軸芯上に保持され、上記成
形ダイス20の内径面との間に所要の間隙が設けられる。
リング状素材10のローディング後、上ポンチ23は下降
される。第4図は、上ポンチ23のテーパ面26の小径端が
リング状素材10の内径面上端に当接した状態を示す。
この状態から上ポンチ23がさらに下降すると、第5図
に示すように、下ポンチ21の先端部および上ポンチ23の
成形軸部25がリング状素材10の内側に圧入する。このた
め、リング状素材10の上下端部は、各ポンチ21、23のテ
ーパ面26で軸方向および半径方向に延ばされて板厚が減
少し、非拘束前後方押出しによって内径面および外径面
が両端から順次成形される。
上ポンチ23が所定量下降すると、第6図に示すよう
に、リング状素材10の両端が、エジェクタ22の上端面お
よび上ポンチ23の段24に当接する。
それより、上ポンチ23がさらに下降すると、リング状
素材10はエジェクタ22と段24によって軸方向に押される
ため、リング状素材10の内径面中央部が据込まれ、第7
図に示すように、リング状素材10の内径面中央部が内方
に盛り上がる。
上ポンチ23が下限位置まで下降すると、第8図に示す
ように据込みが完了し、リング状素材10の内径面中央部
に環状の突出部12が形成される。その成形完了後、上ポ
ンチ23は上昇し、同時にエジェクタ22が上昇し、そのエ
ジェクタ22によって成形ダイス20の上方に成形品が取り
出される。
上記のような外輪素形材11の成形に際して、第2図に
示す外輪素形材11の外径D1および内径d1に対して、第1
図に示すリング状素材10の外径D2および内径d2は下記の
関係をもたせる。
1)成形ダイス20にリング状素材10を挿入するため、 D2=D1−(0.02〜0.6)mmとする。
2)リング状素材10の内径d2が外輪素形材11の内径d1
広げたとき、リング状素材10の外径D2が外輪素形材11の
外径D1に広がるように、 D1 2−d1 2≦D2 2−d2 2 リング状素材10の断面積 を外輪素形材11の断面 に減少させることになるが、この減少率が大きいと、リ
ング状素材10の中央部が一方的につぶれ、半径方向にの
びなくなるため、この減少率を0.35以内とする。
とする。
いま、条件2)より大きな内径のリング状素材10を用
いると、第7図において内径面中央部が据込まれると
き、成形ダイス20の内径とリング状素材10とのすきまが
径方向全体に残留しているため、このすきまが最終成形
段階ではひけ傷となって残る。これを第9図に示し、30
はそのひけ傷を示す。
また、条件3)よりも小さな内径のリング状素材10を
用いると、外径方向へ材料が流動しなくなり、厚みが不
足する外輪素形材が形成される。
したがって、リング状素材10は、上記条件を満足させ
る適切な寸法のものを用いるようにする。最適寸法のリ
ング状素材10を用いると、鍛造初期は非拘束前後方押出
しによって軸方向に延び、エジェクタ22の上端面および
上ポンチ23の段24に当接すると内径面中央部が据込まれ
て欠陥のない旋削取り代の少ない外輪素形材11を得るこ
とができる。
〔発明の効果〕
以上のように、この発明によれば、リング状素材を用
いて鍛造初期に非拘束前後方押出しによって軸方向に延
ばし、ついで内径面中央部を内方に据込ませて環状突出
部を形成するようにしたので、外輪に近い形状の外輪素
形材を成形することができ、外径無旋削及び内径旋削取
代削減を行ない、材料歩留りの向上及び旋削工数の削減
を計ることができる。また、リング状素材を据込む前の
段階でリング状素材を非拘束前後方押出しを行なってリ
ング状素材を軸方向および外径方向に伸ばすようにした
ので、リング状素材の座屈限界が向上し、据込み時にお
いてリング状素材に座屈が生じるという不都合がなく、
外径面に引け傷のない良好の成形品を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の方法に用いられるリング状素材の
断面図、第2図は上記方法によって成形された外輪素形
材の断面図、第3図は同上方法に用いる成形装置の断面
図、第4図乃至第8図は外輪素形材の成形状態を段落的
に示す断面図、第9図は成形不良品を示す断面図、第10
図は複列玉軸受の外輪の断面図、第11図は従来の外輪素
形材を示す断面図である。 10…リング状素材、12…環状突出部、20…成形ダイス、
21…下ポンチ、22…エジェクタ、23…上ポンチ、24…
段、26…テーパ面。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21K 1/00 - 31/00 B21J 1/00 - 13/14 B21J 17/00 - 19/04

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】成形ダイスの内側に先端部が挿入された下
    ポンチの先端のテーパ面上に外径が成形ダイスの内径よ
    り小径のリング状素材をローディングしたのち、そのリ
    ング状素材上に設けられた上ポンチを下降し、各ポンチ
    の先端部に設けられたテーパ面をリング状素材の内側に
    圧入させる非拘束前後方押出しによりリング状素材を軸
    方向および外径方向に伸ばし、下ポンチと成形ダイス間
    に挿入した筒状のエジェクターの上端面と上ポンチの外
    周中途に設けられた段にリング状素材の両端が当接する
    状態からさらに下降する上ポンチの移動によりリング状
    素材の内径面中央部を内方に据込ませて環状突出部を成
    形する複列玉軸受外輪素形材の鍛造方法。
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