JP2753741B2 - 電子回路基板の製造方法 - Google Patents

電子回路基板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,高集積化,放熱性等に優れた電子回路基板
に関する。
〔従来技術〕
近年,電子回路基板としては種々のものが知られ,か
つ実用化されており,例えばガラス・エポキシ複合体,
アルミナ質焼結体およびムライト質焼結体等を材料とす
る電子回路基板が提案され使用されている。そして,高
集積化を促進する1つの方法として,シリコン集積回路
などを直接基板に搭載する実装方法が検討されている。
しかしながら,ガラス・エポキシ複合体はシリコン集
積回路と熱膨張率が大きく異なるため,該基板に直接搭
載することのできるシリコン集積回路は極めて小さいも
のに限られている。そればかりでなく,ガラス・エポキ
シ複合体のみからなる基板は,回路形成工程において寸
法が変化し易いため,特に微細で精密な回路が要求され
る基板には適用が困難である。
また,アルミナ質焼結体やムライト質焼結体は硬度が
高く機械加工性に劣る。そのため,例えばスルーホール
等を設けるような機械加工が必要な場合には,生成形体
の段階で加工した後焼成する方法が行われている。しか
し,焼成時の収縮を均一に生じさせることは困難であ
り,特に高い寸法精度を要求されるものや寸法の大きな
ものを製造することは困難であった。
そこで,これらの問題に対処するため,特開昭61−28
7190号あるいは特開昭64−82689号には,多孔質セラミ
ック焼結体の気孔内に樹脂を含浸した基板が提案されて
いる。
この基板は,セラミックの気孔率を種々変化させるこ
とで,実装する部品,例えばシリコン集積回路等の熱膨
張に合わせ,低膨張で寸法安定性に優れている。また,
機械加工が容易で大型化及び軽量化に対応できる。
〔解決しようとする課題〕
しかしながら,上記の樹脂含浸多孔質セラミック焼結
体に導体層(電子回路)を形成した電子回路基板は,使
用上の信頼性に乏しい。
即ち,上記樹脂含浸基板は,その表面部分にも含浸樹
脂が存在するため,導体層はこの樹脂の上に形成され
る。そのため,導体層において発生した熱が放散され難
い。特に多層電子回路基板においては,放熱性が悪い。
また,樹脂の上に導体層が形成されているため,基板と
導体層の密着性も悪い。
本発明は,かかる従来の問題点に鑑み,上記の樹脂含
浸多孔質セラミック焼結体基板の長所を生かし,導体層
における発生熱を効率良く外部へ放出することができ
る,信頼性の高い電子回路基板の製造方法を提供しよう
とするものである。
〔課題の解決手段〕
本発明は,樹脂を充填した多孔質セラミック焼結体か
らなる基板に対して,上記樹脂を優先的に溶解或いは分
解する流体を接触させて,該基板の表面の上記樹脂を除
去し,基板表面に露出した凹凸表面上に導体層を形成す
ることを特徴とする電子回路基板の製造方法にある。
本発明において最も注目すべきことは,樹脂含浸多孔
質セラミック焼結体基板において,まず導体層を形成す
る部分の樹脂を前記流体により除去し,これにより露出
した樹脂除去部の凹凸表面上に導体層を形成することに
ある。
上記樹脂多孔質セラミック焼結体の材質としては,コ
ージェライト,アルミナ,窒化アルミニウム,ムライ
ト,チタン酸マグネシウム,チタン酸アルミニウム,二
酸化ケイ素,酸化鉛,酸化亜鉛,酸化ベリリウム,酸化
錫,酸化バリウム,酸化マグネシウム,酸化カルシウム
のいずれか少なくとも1種を主成分とするセラミックス
などがある。この中,コージェライトは,熱膨張率がシ
リコン集積回路のそれに近く,好ましい材料である。
また,上記焼結体中に含浸させる樹脂としては,エポ
キシ樹脂,ビスマレイミド・トリアジン樹脂,ポリエス
テル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,シ
リコン樹脂,エポキシシリコン樹脂,アクリル酸樹脂,
メタクリル酸樹脂,アニリン酸樹脂,フェノール樹脂,
ウレタン系樹脂,フラン系樹脂などがある。また,これ
らの樹脂に,アルミナ,シリカ,酸化チタンなどの微細
粒子を分散したものも用いることができる。
また,これら樹脂を多孔質焼結体の気孔内に含浸させ
る方法としては,樹脂を加熱溶融しておき,この中に多
孔質焼結体を浸漬する方法がある。また,樹脂を溶媒に
溶かして含浸させる方法,モノマー状態の樹脂を含浸さ
せた後ポリマー化する方法などがある。
前記樹脂を優先的に溶解あるいは分解する流体として
は,クロム酸,クロム酸塩,過マンガン酸,オゾン,濃
硫酸,濃硝酸,リン酸,王水,フッ酸,ホウフッ酸,ジ
メチルホルムアミド,溶融KCl,溶融KOH,溶融NaOHなどが
使用できる。
また,上記流体による樹脂の除去方法としては,常温
又は加温された上記流体中に上記樹脂含浸焼結体を浸漬
する方法,加熱蒸気にさらす方法がある。また,上記浸
漬時に超音波を加える方法がある。更に,樹脂含浸焼結
体の表面を火炎にさらして樹脂の一部を分解した後,上
記流体に浸漬する方法もある。
上記除去により,多孔質セラミック焼結体基板の表面
には樹脂が取り去られた樹脂除去部が形成される。そし
て,この樹脂除去部において露出したセラミック粒子間
の凹凸表面上に,導体層を形成する。導体層の形成方法
としては,無電解メッキによる方法,蒸着,スパッタリ
ングによる方法が有効である。これらの方法によれば,
前記セラミック粒子に直接導体層が接触し,放熱性を高
めることができる。
次に,上記樹脂除去部の深さは,1〜20μmが好まし
い。この理由は,1μmよりも少ないと,導体層が多孔質
セラミック焼結体の粒子の間にアンカー効果を持って密
着することが難しいからである。一方,20μmよりも多
いと,アンカー効果を持った気孔は多くできるが,導体
層を最深部まで形成し難くなり,セラミック粒子と密着
しがたくなるからである。なかでも,2〜10μmがより好
適な条件である。
また,本発明においては,前記多孔質部の平均気孔径
は5μm以下であることが好ましい。その理由は,5μm
よりも大きいと導体層の接着面の凹凸が激しくなるの
で,微細な導体回路が得難くなるからである。
また,上記のごとく基板表面の樹脂を除去に当たって
は,前記樹脂除去部以外の表面に,前記流体に対して溶
解或いは分解し難い樹脂マスクを設け,残部を前記流体
により除去する。これにより,樹脂除去部には,多孔質
セラミック焼結体のセラミック粒子の表面が露出し,上
記樹脂マスク形成部分は当初のまま含浸樹脂が残ってい
る。上記樹脂除去部は,主として導体層を設ける部分で
ある。
上記のごとく,部分的に被覆する樹脂マスク用の樹脂
としては,エポキシ樹脂,ビスマレイミド・トリアジン
樹脂,ポリエステル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミド
イミド樹脂,シリコン樹脂,エポキシシリコン樹脂,ア
クリル酸樹脂,メタクリル酸樹脂,アニリン酸樹脂,フ
ェノール樹脂,ウレタン樹脂,フラン系樹脂,フッ素樹
脂,フッ素−オレフィン共重合樹脂から選ばれる何れか
少なくとも1種を使用することができる。
しかし,前記充填樹脂に対して溶解或いは分解し難い
樹脂マスクの組合わせで使用することが好ましい。例え
ば,エポキシ樹脂,ビスマレイミド・トリアジン樹脂,
フェノール樹脂に対しては,樹脂マスクとしてポリイミ
ド樹脂,フッ素樹脂,フッ素−オレフィン共重合樹脂を
使用することができる。
また,電子回路基板を多層化するために,一層又は積
層化した多層電子回路基板の表裏に樹脂或いは樹脂と無
機材料との複合材からなる絶縁層を介して導体層を形成
することもできる。これらの絶縁層は前記表面に形成さ
れた気孔に,再度充填され,信頼性の高い回路を形成す
る。
本発明の電子回路基板においては,多孔質セラミック
焼結体の表面の気孔及び凹凸に,導電性回路等の膜状素
子がくさび状に入り込んで直接密着している。一方,そ
の他の基板内部の気孔内には,樹脂が充填されている。
上述のように多孔質セラミックと導体層とが直接密着
していることで,導体層は温度,湿度などの環境変化に
対して極めて安定になる。ここに導体層とは,導電性回
路,抵抗体,コンデンサーなど,基板上に形成する電子
部品をいう。
なお,このようにできた基板の表裏の導通は,多孔質
セラミック焼結体に樹脂を充填した後にスルーホールを
形成し,無電解銅メッキ等で容易に導通することができ
る。
〔作用及び効果〕
本発明の電子回路基板は,多孔質セラミック焼結体の
表面に,直接導体層を形成しているため,導体層が上記
焼結体表面の粒子の間にくさび状に強固に結合してい
る。そのため,導体層で発生した熱は,直接,直ちにセ
ラミック粒子に伝わる。また,このセラミック粒子は,
多孔質セラミック焼結体中において互いに焼結し合って
いるので,上記の熱は各粒子の間,つまり多孔質セラミ
ック焼結体中を効率良く伝わり,電子回路基盤の外部に
放出される。
また,上記のごとく,導体層はセラミック粒子の間に
くい込んでいるので,膜状素子が剥離することはない。
また,膜状素子が形成されていない部分は,気孔内に樹
脂が充填されているので,耐高湿度性,耐高温度性にも
優れている。。
また,樹脂が充填されていることで基板の強度を増加
させ,割れにくくすると同時に機械加工を容易にし,カ
ケ,チッピング等の加工欠陥を防ぐことができる。ま
た,気体の透過を防ぎ使用環境からの影響を低減するこ
とに効果的である。
したがって,本発明によれば,導体層の発生熱を効率
良く外部へ放出でき,また耐高湿度性,耐高温度性に優
れた,信頼性の高い電子回路基板を提供することができ
る。
〔実施例〕
第1実施例 本発明にかかる電子回路基板の製造方法につき第1A図
及び第1B図を用いて説明する。
本例方法を実施するに当たっては,まず第1A図に示す
ごとく,気孔11に樹脂2を充填した多孔質セラミック焼
結体からなる基板1を用いる。
該基板1は,セラミック粒子10を焼結した多孔質セラ
ミック焼結体と,該多孔質セラミック焼結体の気孔11内
に含浸,充填させた樹脂2とから成っている。また,基
板1の表面にも樹脂2が被覆されている。
次に,上記樹脂2を優先的に溶解または分解する流体
を,上記基板1の表面に接触させる。これにより,基板
1表面の樹脂2が除去される。そして,該樹脂2が除去
された部分には,セラミック粒子10の間に気孔11が再び
現れる。そして,基板1の表面には,セラミック粒子10
による凹凸表面が露出する(第1B図)。
そこで,第1B図に示すごとく,基板1の表面に,スパ
ッタリング等により,導体層30を形成する。
第2実施例 本例は,第2A図〜第2C図に示すごとく,基板1の一部
表面の樹脂2を除去して,その部分に導体層を形成する
ものである。
即ち,まず第2A図に示すごとく,セラミック粒子10と
その間に形成された気孔11とからなる多孔質セラミック
焼結体を準備する。そして,該多孔質セラミック焼結体
に樹脂を含浸させて,樹脂含浸基板を作成する。このも
のは,前記第1A図と同じである。
次に,この樹脂含浸基板1において導体層を形成する
部分となる樹脂除去部35を除いて,樹脂マスク4を被覆
する(第2B図)。そして,該基板1に含浸樹脂2を除去
するための流体を接触させて,樹脂除去部35における樹
脂2を除去する。これにより,第2B図に示すごとく,樹
脂除去部35の表面にセラミック粒子1の凹凸表面12が露
出する。
そこで,第2C図に示すごとく,上記樹脂除去部35の表
面に導体層30を形成する。
しかして,上記第1及び第2実施例のいずれにおいて
も,第1B図,第2C図に示すごとく,導体層30の下部は,
基板1のセラミック粒子10による凹凸表面12の間にくさ
び状に食い込んでいる。そのため,導体層30は基板1に
強固に密着している。
また,そのため,導体層30が発生する熱は,直ちにセ
ラミック粒子10に伝達され,互いに焼結し合っているセ
ラミック粒子10を伝って外部に効率良く放出される。ま
た,基板の内部は樹脂2が充填されているので,耐高湿
度性,耐高温性に優れ,また機械加工性にも優れてい
る。
第3実施例 平均粒径が1.8μmのコージェライト粉末100重量部に
対してポリビニールアルコール2重量部,ポリエチレン
グリコール1重量部,ステアリン酸0.5重量部及び水100
重量部を配合し,ボールミル中で3時間混合した後,噴
霧乾燥した。
この乾燥物を適量採取し,金属製押し型を用いて1.0t
/cm2の圧力で成形し,大きさが220mm×250mm×1.2mm,密
度1.5g/cm3(60vol%)のセラミックス生成形体を得
た。
この生成形体を大気中,1400℃で1時間焼成して多孔
質コージェライト焼結体とした。
得られた多孔質セラミック焼結体は,厚み0.25mm,密
度が1.8g/cm3,気孔率が30vol(容量)%,平均気孔径が
3.2μmであった。
次にこの多孔質セラミック焼結体に対して,二液性の
エポキシ樹脂を含浸し,硬化して樹脂含浸基板をえた。
この含浸に当たっては,未硬化で液状の樹脂を真空下に
上記焼結体に含浸させ,更に加圧して充分に含浸させ,
その後加熱硬化する方法を用いた。
この基板を濃硫酸の中で1分,20分,200分それぞれ浸
漬し,表面のエポキシ樹脂を分解した。その結果,樹脂
除去部の深さは,それぞれ0.3μm,5.5μm,38μmであっ
た。
この基板の表面に,無電解銅メッキを36μmの厚みに
形成した。そのメッキに要した時間はそれぞれ,10時間,
15時間,22時間であった。
銅メッキのピール強度を測定した結果,それぞれ1.3,
1.8及び2.5kg/cmで,その密着強度は高いものであっ
た。
一方,それぞれの基板の熱伝導率を測定したところ,
1.1,1.2及び0.9W/m・℃であった。また,表面のエポキ
シ樹脂を最も多く除去したものにおいては,表面より18
μmの深さまで導体層の下部が浸入しており,それより
も内方と樹脂充填部分との間は気孔を有する多孔質状態
であった。
なお,比較のため,表面のエポキシ樹脂を除去するこ
となく,前記と同様に無電解銅メッキを形成した。この
ものの基板の熱伝導率は,0.6W/m・℃で低かった。
【図面の簡単な説明】
第1A図及び第1B図は第1実施例における電子回路基板の
製造方法の工程図,第2A図〜第2C図は第2実施例におけ
る電子回路基板の製造方法の工程図である。 1……多孔質セラミック焼結体の基板, 10……セラミック粒子, 11……気孔, 12……凹凸表面, 2……樹脂, 3……電子回路基板, 30……導体層, 35……樹脂除去部,

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】樹脂を充填した多孔質セラミック焼結体か
    らなる基板に対して,上記樹脂を優先的に溶解或いは分
    解する流体を接触させて,該基板の表面の上記樹脂を除
    去し,基板表面に露出した凹凸表面上に導体層を形成す
    ることを特徴とする電子回路基板の製造方法。
  2. 【請求項2】第1請求項において,樹脂除去部の深さ
    は,1μmないし20μmであることを特徴とする電子回路
    基板の製造方法。
  3. 【請求項3】第1又は第2請求項において,樹脂除去部
    の平均気孔径は5μm以下であることを特徴とする電子
    回路基板の製造方法。
  4. 【請求項4】第1ないし第3請求項において,基板表面
    の樹脂を除去するに当たり,樹脂除去部以外の表面に前
    記流体に対して溶解あるいは分解しがたい樹脂マスクを
    設け,残部の樹脂を前記流体により除去することを特徴
    とする電子回路基板の製造方法。
  5. 【請求項5】第1ないし第4請求項において,得られた
    電子回路基板の表面に,更に樹脂あるいは樹脂と無機材
    料との複合材からなる絶縁層を介して,導体層を形成し
    てなることを特徴とする電子回路基板の製造方法。
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