JP2736544B2 - ワイヤ電極の残量検出装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は，工作物とワイヤ電極との極間に発生する
放電エネルギーによって該工作物を放電加工するワイヤ
放電加工機におけるワイヤ電極の残量検出装置に関す
る。

〔従来の技術〕

一般に，ワイヤ放電加工機については，ワイヤ電極が
垂直方向即ち上下方向に走行している部分を使用して工
作物を加工しているのが現状である。ワイヤ電極は，ワ
イヤ自動供給装置におけるテンションローラ，ブレーキ
ローラ等の各種ローラに案内され且つ適宜なテンション
を加えられてワイヤガイドを有するワイヤヘッドに供給
されている。

一方，工作物を取り付けているワークテーブルは,NC
装置からの指令で工作物の加工状況に従ってＸ方向及び
Ｙ方向に移動し，両者の移動が合成されて，ワイヤヘッ
ドに供給されたワイヤ電極との間で加工が進行し，加工
中はワイヤ電極及びワークテーブルはサーボ移動を繰り
返し，両者の相対的運動によって工作物は所定の加工形
状に放電加工されている。

従来，ワイヤ放電加工機におけるワイヤ自動供給装置
では，ソースボビンに巻き上げられているワイヤ電極の
残量の検出としては，作業者が目視によって確認して計
測するか，又はワイヤ電極が巻き付けられた新しいソー
スボビンをソースボビン取付手段に装填し，該ソースボ
ビンの使用時間を計測して繰り出したワイヤ電極を推定
し，該ソースボビンに巻き上げられた所定のワイヤ電極
長さから該繰り出し長さを差し引いてワイヤ電極の残量
を推定していた。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら，ワイヤ放電加工機のワイヤ自動供給装
置について，従来のように，ソースボビンに残っている
ワイヤ電極の残量を計測する場合には，正確に予測する
ことが困難であり，そのため，常に作業者がワイヤ電極
の消費状態を監視するため，度々ソースボビンにおける
ワイヤ電極の消費状態を目視しなければならず，或いは
監視を怠って放電加工の途中でワイヤ電極が無くなって
しまい，加工が中断したまま放置されて長時間経過し，
加工時間の無駄が発生していた。

また，ワイヤ放電加工機にワイヤ自動供給装置を組み
込んでいるにもかかわらず，ワイヤ電極の途切れによっ
てワイヤ放電加工機の放電加工を自動化し難いという問
題があった。

この発明の目的は，上記の課題を解決するものであ
り，ワイヤ放電加工機において，ソースボビンに残って
いるワイヤ電極が引き続き何時間の放電加工が可能であ
るかを検出するため，ワイヤ電極の残量に対応する加工
有効時間がワイヤ電極の残量のみでなく，ワイヤ電極の
走行速度にも起因することに着眼し，ワイヤ自動供給装
置を組み込んだワイヤ放電加工機におけるソースボビン
の回転数，ワイヤ電極走行系に設けた基準ローラの回転
数とワイヤ電極の走行速度とを検出して該各検出信号に
対応してソースボビンに巻き上げたワイヤ電極の線径，
ワイヤ電極巻き量，ワイヤ電極長さ等の情報を基に前記
ソースボビンのワイヤ電極残量を検出し，ワイヤ電極の
走行速度を検出してワイヤ電極残量とワイヤ電極速度と
からワイヤ電極の残量に対応する有効加工時間を演算し
てワイヤ放電加工の有効加工時間を演算し，放電加工途
中でのワイヤ電極切れを防止して加工時間のロスを低減
し，加工能率を向上させるワイヤ電極の残量検出装置を
提供することである。

〔課題を解決するための手段〕

この発明は，上記の目的を達成するため，次のように
構成されている。即ち，この発明は，工作物とワイヤ電
極との極間に発生する放電エネルギーによって前記工作
物を放電加工するワイヤ放電加工機において，前記ワイ
ヤ電極が巻き上げられたソースボビン，前記ソースボビ
ンの回転数を検出するソースボビン回転センサー，ワイ
ヤ走行系に設けられた前記ワイヤ電極の走行速度を検出
するための基準ローラ，前記基準ローラの回転数を検出
する基準ローラ回転センサー，前記基準ローラ回転セン
サーの検出信号に応じて前記ワイヤ電極の送り出し長さ
を演算し，前記ソースボビンの回転数と前記ワイヤ電極
の送り出し長さに基づいて送り出された前記ワイヤ電極
の前記ソースボビンへの巻き径を演算し，前記ワイヤ電
極の前記巻き径から前記ワイヤ電極の前記ソースボビン
における残量を演算し，前記ワイヤ電極の残量と前記基
準ローラで検出された前記ワイヤ電極の走行速度から前
記ワイヤ電極の残量に対応する有効加工時間を演算する
演算器，及び前記演算器の演算結果を表示する表示器，
から成ることを特徴とするワイヤ電極の残量検出装置に
関する。

〔作用〕

この発明によるワイヤ電極の残量検出装置は，上記の
ように構成されており，次のように作用する。このワイ
ヤ電極の残量検出装置は，ワイヤ電極を巻き上げたソー
スボビンの回転数とワイヤ走行系に設けた基準ローラの
回転数との検出信号に応答して前記ワイヤ電極の残量及
び前記ワイヤ電極の走行速度を演算して前記ソースボビ
ンにおける前記ワイヤ電極の残量に対応する有効加工時
間を演算するように構成したので，加工有効時間の検出
に起因する前記ワイヤ電極の残量及び前記ワイヤ電極の
走行速度を直ちに且つ正確に検出でき，前記ソースボビ
ンに残っている前記ワイヤ電極で引き続き放電加工を行
うことができる有効加工時間を確実に且つ正確に検出す
ることができる。

〔実施例〕

以下，図面を参照して，この発明によるワイヤ電極の
残量検出装置の実施例を詳述する。第１図はこの発明に
よるワイヤ電極の残量検出装置の一実施例を示す説明図
である。

ワイヤ放電加工機におけるワイヤ自動供給装置のワイ
ヤ走行系において，ワイヤ電極２には所定のテンション
が付与されて走行し，放電加工部位において工作物とワ
イヤ電極２との間で放電を発生させて放電エネルギーに
よって工作物は放電加工される。

ワイヤ放電加工機では，放電加工される工作物はワー
クテーブル上に適宜なクランプ手段で固定状態に設置さ
れている。ワイヤ自動供給装置のＺ軸となるヘッドに
は，上ワイヤヘッドと下ワイヤヘッドが取り付けられ，
これらのヘッドの内部には，ワイヤ電極２に電流を供給
する給電子，ワイヤ電極２をガイドするワイヤガイド，
工作物に加工液を吹き付ける噴流ノズル等が組み込まれ
ている。

ワイヤ放電加工機では，ワークテーブルに対して工作
物が設置され，一般に，ワークテーブルは水平方向即ち
Ｘ方向とＹ方向に移動できるように構成されている。即
ち，工作物を取り付けているワークテーブルは,NC装置
からの指令で工作物の加工状況に従ってＸ方向及びＹ方
向に移動し，上ワイヤヘッドに供給されたワイヤ電極２
との間で加工が進行するように構成されている。更に，
ワイヤ放電加工機において，上下のワイヤヘッドに取り
付けた加工液噴流ノズルである上ノズル及び下ノズルを
有している。

このワイヤ放電加工機には，ワイヤ電極２を放電加工
部位へ供給するためワイヤ自動供給装置が設けられ，ワ
イヤ電極２のワイヤ走行系を構成している。このワイヤ
自動供給装置のワイヤ走行系には，特に，ワイヤ電極２
を収容して該ワイヤ電極２を繰り出すためのソースボビ
ン1,及びワイヤ電極２の走行速度を検出するための基準
ローラ３を配置されている。

また，図示していないが，ワイヤ電極２を放電加工部
位へガイドするワイヤ走行系には，方向変換する方向変
換ローラ，ワイヤ電極２に所定のテンションを付与する
テンションローラ，ブレーキローラ，ワイヤ電極２をワ
イヤ放電加工部位から引き出すピンチローラ，押さえロ
ーラ等の各種ローラが組み込まれている。

ソースボビン１は，ワイヤ電極２の繰り出しのため回
転支持されており，ワイヤ電極２に対して若干のブレー
キ力を付与することができるように構成されている。ソ
ースボビン１には，一般に，種々のワイヤ電極２を巻き
上げたものを逐次交換してソースボビン取付装置に装填
できるものであり，ソースボビン１をワイヤ放電加工機
に装填する場合には，工作物の加工形状に応じて最適の
ワイヤ電極２が巻き上げられているソースボビン１を選
定してワイヤ自動供給装置に組み込むものである。ま
た，工作物が別の工作物に変更された場合には，変更し
た工作物に最適のワイヤ電極２を選定して，ワイヤ電極
２を巻き上げたソースボビン１に取り換えるものであ
る。

第１図から分かるように，ソースボビン１に取り付け
た回転センサー４が検出したソースボビン１の回転数の
電気信号は，コントローラ10に入力される。コントロー
ラ10において，入力された電気信号は増幅器で増幅さ
れ，増幅された電気信号は比較器６に入力される。

ところで，ソースボビン１に巻き上げられたワイヤ電
極２について，ソースボビン１毎にワイヤ電極２の線
径，ソースボビン１の巻き径や巻き幅サイズに伴うワイ
ヤ電極２の長さ，初期状態のワイヤ長さ等の情報は，予
め分かっており，ソースボビン１とワイヤ電極２につい
ての各種情報はコントローラ10のデータ入力装置９に入
力されている。

また，放電加工の進行に伴ってワイヤ電極２が回転軸
16を中心に回転するソースボビン１からの繰り出しによ
ってソースボビン１におけるワイヤ電極２の巻き径が逐
次に減少して変化する。従って，ソースボビン１から繰
り出されるワイヤ電極２の長さは，ワイヤ電極２の巻き
径によって変動し，ワイヤ電極２の繰り出し長さは，ソ
ースボビン１の回転数に対して時間の経過と共に短くな
る。

また，ワイヤ走行系に配置された基準ローラ３に取り
付けた回転センサー５で検出された基準ローラ３の回転
数の電気信号は，コントローラ10に入力される。コント
ローラ10において，入力された電気信号は増幅器で増幅
され，増幅された電気信号は比較器６に入力される。

基準ローラ３はワイヤ電極２が接触して走行する接触
面即ち外周面までの半径は予め分かっているので，基準
ローラ３の単位時間の回転数が検出できれば，基準ロー
ラ３の外周面の周速が演算され，従って，ワイヤ電極２
の走行速度が検出できる。ここで，基準ローラ３の回転
数と基準ローラ３の走行速度からソースボビン１から繰
り出されたワイヤ電極２の長さが演算される。ソースボ
ビン１から繰り出されたワイヤ電極２の長さが分かれ
ば，使用しているワイヤ電極２の線径はコントローラ10
に入力されているので，ソースボビン１の回転数を検出
することによってソースボビン１のワイヤ電極２の巻き
径が計算できる。従って，ワイヤ電極２を巻き上げてい
るソースボビン１の使用時の巻き径が分かれば，ソース
ボビン１のワイヤ電極２の残量がコントローラ10の演算
器７で演算できる。

上記のように，ソースボビン１の回転数及び基準ロー
ラ３の回転数が検出されれば，データ入力装置９に予め
入力されているソースボビン１の軸径，幅サイズ等の情
報，及びワイヤ電極２の線径，巻き径，巻き数等の情報
から，ソースボビン１におけるワイヤ電極２の残量がコ
ントローラ10の演算器７で演算される。一般的なことで
あるが，ソースボビン１については，所定の線径のワイ
ヤ電極２を巻き上げたソースボビン１の巻き径に対応し
て，ソースボビン１に巻き上げられたワイヤ電極２の残
量が分かっている。

この場合，ワイヤ電極２の線径，巻き径，巻き幅等の
情報とソースボビン１の回転数等の情報との関数によっ
て，基準ローラ３の回転数に対応するワイヤ電極２の繰
り出し長さが検出され，ワイヤ電極２の繰り出し長さが
検出できると，ソースボビン１の回転数が検出されてい
るので，ソースボビン１に巻かれているワイヤ電極２の
残量が演算できる。

また，ソースボビン１に巻き上げられているワイヤ電
極２の巻き径が検出されれば，ソースボビン１のワイヤ
電極２の残量に対応する放電加工の有効加工時間が計算
される。このようにして演算された結果は，表示器８に
よって表示される。従って，作業者は残りの有効加工時
間を表示器８を検知することによって直ちに且つ正確に
確認することができる。

また，表示器８に加えて，ワイヤ電極２の所定の残量
以下にまで減少した時，該センサーの検出信号に応答し
て警報手段を併用することもでき，作業者が該警報手段
によってワイヤ電極２の残量を直ちに且つ確実に確認す
る構造に構成することもできる。また，補助ソースボビ
ンを準備しておき，主ソースボビンのワイヤ電極の有効
加工長さを消費した場合に，該有効加工長さ消費検出信
号によって主ソースボビンから補助ソースボビンに自動
的に変更できるように構成することもできる。更に，ワ
イヤ電極２の材質，強度等の情報に応じて，ワイヤ電極
２に掛けるテンションの大きさを調節できることは勿論
である。

〔発明の効果〕

この発明によるワイヤ電極の残量検出装置は，上記の
ように構成されており，次のような効果を有する。即
ち，このワイヤ電極の残量検出装置は，ワイヤ電極を巻
き上げたソースボビンの回転数を検出するソースボビン
回転センサーと，ワイヤ走行系に設けた基準ローラの回
転数を検出する基準ローラ回転センサーと，前記各セン
サーの検出信号に応答して前記ワイヤ電極の走行速度及
び前記ワイヤ電極の残量を演算して前記ソースボビンに
おける前記ワイヤ電極の残量に対応する有効加工時間を
演算する演算器と，前記演算器の演算結果を表示する表
示器とから構成したので，ソースボビンに巻かれている
ワイヤ電極の残量及びワイヤ電極の走行速度を演算で
き，演算された上記の電気信号によって以後のワイヤ放
電加工ができる前記ワイヤ電極の加工有効時間を演算す
ることができ，該演算結果を表示器に表示することがで
きる。

従って，作業者はワイヤ電極の加工有効時間を直ちに
且つ正確に確認し，以後のワイヤ電極を巻き上げたソー
スボビンの取り替え時期を予測することができ，加工途
中でのワイヤ電極切れ等による加工時間のロスの時間を
最小限に留めることができる。それ故，作業者はワイヤ
放電加工機を常に監視する必要もなく，ワイヤ電極切れ
による放電加工時間のロス時間を最小限に留めることが
でき，加工能率を大幅に向上できる。

また，このワイヤ電極の残量検出装置は，上記のよう
な構成であるから，ワイヤ電極の所定の残量以下にまで
減少した時，該検出信号に応答して警報手段を併用する
ことも容易に構成でき，作業者が該警報手段によってワ
イヤ電極の残量を直ちに且つ確実に確認することがで
き，ワイヤ電極切れによる放電加工の中断時間を最小限
に減少し，有効に加工効率を向上できる。また，補助ソ
ースボビンを準備している場合には，ワイヤ電極の加工
有効量以下になれば，該検出信号によって自動的にワイ
ヤ電極の繰り出しソースボビンを変更することができ，
ワイヤ放電加工の自動化をスムースに達成することがで
きる。しかも構造そのものが簡単で且つ制御が簡単であ
り，故障がなくコストを低減できる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明によるワイヤ電極の残量検出装置の一
実施例を示す概略説明図である。 １……ソースボビン,2……ワイヤ電極,3……基準ロー
ラ,4……ソースボビン回転センサー,5……基準ローラ回
転センサー,6……比較器,7……演算器,8……表示器,9…
…データ入力装置,10……コントローラ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】工作物とワイヤ電極との極間に発生する放
   電エネルギーによって前記工作物を放電加工するワイヤ
   放電加工機において，前記ワイヤ電極が巻き上げられた
   ソースボビン，前記ソースボビンの回転数を検出するソ
   ースボビン回転センサー，ワイヤ走行系に設けられた前
   記ワイヤ電極の走行速度を検出するための基準ローラ，
   前記基準ローラの回転数を検出する基準ローラ回転セン
   サー，前記基準ローラ回転センサーの検出信号に応じて
   前記ワイヤ電極の送り出し長さを演算し，前記ソースボ
   ビンの回転数と前記ワイヤ電極の送り出し長さに基づい
   て送り出された前記ワイヤ電極の前記ソースボビンへの
   巻き径を演算し，前記ワイヤ電極の前記巻き径から前記
   ワイヤ電極の前記ソースボビンにおける残量を演算し，
   前記ワイヤ電極の残量と前記基準ローラで検出された前
   記ワイヤ電極の走行速度から前記ワイヤ電極の残量に対
   応する有効加工時間を演算する演算器，及び前記演算器
   の演算結果を表示する表示器，から成ることを特徴とす
   るワイヤ電極の残量検出装置。