JP2733505B2 - シールド掘削機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、トンネルを構築するシールド工法に用いる
シールド掘削機に係わり、特に、大断面かつ任意断面の
トンネルを形成する際に用いられるシールド掘削機に関
するものである。

「従来の技術」 近年、都市部の地盤等に鉄道用トンネル等の大断面ト
ンネルを構築する目的で、繭型に形成したスキンプレー
トの前面に２台のカッタ設けたシールド掘削機を用いて
トンネルを形成するマルチフェイスシールド工法（特開
昭62−1988号公報参照）、あるいはダブルオーチューブ
工法と呼ばれる新規なシールド工法（特開昭61−47958
号公法参照）が提案、実施されている。

ところが、上記各大断面シールド工法に適用されるシ
ールド掘削機は、いずれも繭型断面のスキンプレートの
前面に２台のカッタを並列配置した基本構造とされてい
るため、これらのシールド掘削機では、馬蹄形、矩形と
いった断面構造のトンネル構造物を構築できない点や、
方向制御や修正等のマシン制御が難しいといった欠点が
あった。

そこで、本出願人は、上記課題を解決すべく、制御が
容易であり、大断面かつ任意断面のトンネルを掘進し得
るシールド掘削機を先に出願した（特願平１−34448
号）。

この出願にかかるシールド掘削機は、第６図および第
７図に示すように、回転軸１により支持された大口径カ
ッタ２が掘削する円形の切羽を、泥水圧室３内に圧送し
た泥水圧により安定させ、また、小口径カッタ４が掘削
する異形の切羽を、泥水圧および泥土圧により安定させ
ながら、各カッタ２、４により切羽を掘削する一方、泥
土圧室５内の土砂を内側スキンプレート６の周壁におい
て設けられた孔７により泥水圧室３内に移送させて泥土
圧室５内の土砂と共に外部に排出していくものである。
従って、従来泥土圧シールド工法に要したスクリューコ
ンベアは不要となり、円形部と異形部との組み合わせに
よって、非円形かつ大断面のトンネルを容易に構築する
ことができる。

「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、このシールド掘削機においては、第６
図に示すように、泥土圧室５から泥水圧室３への土砂の
取込口として、円筒状の内側スキンプレート６の周壁に
単に孔７を形成しただけの構成であるから、土砂を孔７
内に確実に取り込む上で問題があり、従って土砂の取込
効率を改善する余地が残されていた。

本発明は、上記事情に鑑みてなされたあもので、泥土
圧室から泥水圧室への土砂の取込効率を向上したシール
ド掘削機の提供を目的とするものである。

「課題を解決するための手段」 本発明においては、筒状の内側スキンプレートの横断
面の形状を非円形としたシールド掘削機により上記課題
を解決するようにした。ここで、非円形とは円形以外の
形をいい、例えば楕円形、卵形などの形をいう。

「作用」 本発明のシールド掘削機によれば、トンネル掘進中
に、泥土圧室の開口部に配設した小口径カッタなどによ
り掘削されて泥土圧室内へ送り込まれた土砂は、内側ス
キンプレートの横断面の形状が非円形であることから、
カッタヘッドの回転に伴って回転する内側スキンプレー
トにより泥土圧室内で撹拌され流動性の土砂となる。ま
た、周壁に形成された孔に容易に取り込まれ、内側スキ
ンプレート内部の泥土圧室内に移送される。

「実施例」 以下、第１図ないし第４図を用いて本発明のシールド
掘削機の一実施例について説明する。

このシールド掘削機は、第１図および第２図に示すよ
うに外殻を形成する筒状の外側スキンプレート８の前部
に設けられた大口径カッタ２および小口径カッタ４によ
り地山を掘削しつつ、外側スキンプレート８内部で、一
次履工用のセグメント９（コンクリートセグメント等）
を組み立てながら地中を掘削する基本構成となってい
る。

外側スキンプレート８は、横断面が略矩形状に形成さ
れたもので、その前部には、先端開口部を覆って隔壁部
10が設けられている。この隔壁部10は、外側スキンプレ
ート８の内周面を沿って設けられた固定刃11と隔壁12と
からなるもので、この隔壁部10の前面には大口径カッタ
２が配設されている。

また、外側スキンプレート８の後部にはシールド掘削
機自身を推進させるためのシールドジャッキ13が、外側
スキンプレート８の周方向に沿って複数配設されるとと
もに、セグメント９を組み立てるためのエレクタ装置14
が設けられている。シールドジャッキ13は、その前端が
固定刃11の後端面に支持され、エレクタ装置14によって
組み立てられたセグメント９の最前端に反力を取ること
により、シールド掘削機自身を前方に推進させるように
構成されている。

大口径カッタ２は、外側スキンプレート８内の略中央
に配設され、内殻を形成する筒形状の内側スキンプレー
ト６と、内側スキンプレート６の前方端面に接合され、
切羽に対面する円板状のカッタヘッド15と、内側スキン
プレート６の後側端部に接合された円筒状の支持ドラム
16とからなるものである。

カッタヘッド15には、第１図に示すように、土砂を取
り込む前面スリット17が、平行に対向して複数個（この
実施例においては４個）形成されており、各前面スリッ
ト17‥には、多数のカッタビット18‥が固定されてい
る。

また、カッタヘッド15の周部には、径方向に突出し、
地山を掘削する複数（この実施例においては二つ）の伸
縮カッタ19が当間隔に設けられている。この伸縮カッタ
19の突出量は、その先端が外側スキンプレート８の外周
面と一致する位置を最大として、またカッタヘッド15の
回転時に、その先端が外側スキンプレート８に沿うよう
に、図示略の制御部により無段階に制御されている。

内側スキンプレート６は、その横断面の形状が、第３
図に示すような楕円形状をなす筒状のもので、その長径
が。上記カッタヘッド15の直径と略同等に形成されてい
る。また、第２図に示すように内側スキンプレート６の
内部は、泥水が圧送される泥水圧室３として、また、内
側スキンプレート６と外側スキンプレート８との間に形
成される異形のスペースは泥土圧室５として構成されて
いる。泥水圧室３の前方の開口部はカッタヘッド15によ
り閉塞されており、後方の開口部は隔壁12により閉塞さ
れている。この隔壁12の泥土圧室３側の面の上部には、
送水管20の端部が開口しており、さらにその下部には、
排泥管21の端部が開口している。

内側スキンプレート６の周壁には、泥水圧室３と泥土
圧室５とを連通し、泥水圧室５内の土砂を泥水圧室３内
に取り込むための孔７（以下、側面スリットとする。）
がその周方向に沿って間隔をおいて複数設けられてい
る。これらの側面スリット７‥は図示略の開閉装置によ
りその開度が調整できるようになっている。また、この
側方スリット７周囲には、図示略のカッタビットが取り
付けられており、側方スリット７の土砂の取り込みを容
易にしている。

内側スキンプレート６横断面の形状は、楕円形状に限
られるものでなく、例えば第５図に示すような直径を境
として一方側が真円をなし、他方の側が楕円をなす形状
のもの、その他卵型など非円形状のものであればよい。
ただし、この内側スキンプレート６が回転する際に、回
転抵抗が高すぎる形状のものは好ましくない。

支持ドラム16は、第２図に示すように固定刃11と隔壁
12との間に形成された円形のドラム支持孔23に挿通さ
れ、さらにこのドラム支持孔23に回転自在に支持されて
おり、その後側端部はギア24を介して駆動モータ25に接
続している。駆動モータ25は、支持ドラム16の外周に沿
って複数個設けられており、各駆動モータ25‥は駆動モ
ータ25と同数設けられた駆動モータ支持部26に取り付け
られている。この駆動モータ支持部26は、隔壁12の外周
部から後方に延設されたものである。支持ドラム16は、
これら駆動モータ25‥により軸回りに回転するようにな
っている。

上記大口径カッタ２は、駆動モータ25の動力が、ギア
24、支持ドラム16、内側スキンプレート６を介してカッ
タヘッド15に伝達されてカッタヘッド15が回転すること
により地山を円形に掘削するようになっている。このよ
うに、この実施例のカッタヘッド15は、ドラム支持方式
により支持されるものである。

また、第５図に示すように泥土圧室５の開口部、すな
わち矩形の外側スキンプレート８の四隅には、小口径カ
ッタ４がそれぞれ設けられている。これらの小口径カッ
タ４‥は、略円錐形の小口径カッタヘッド27（以下、ヘ
ッドとする。）と、このヘッド27の軸心から固定刃11を
貫通して後方に延び、図示略の軸受に回転自在に支持さ
れたカッタ軸28と、このカッタ軸28を小口径カッタ用ギ
ア29を介して軸回りに回転させる小口径カッタ用駆動モ
ータ30とからなるものである。ヘッド27は、切羽を掘削
すると同時に泥土圧室５内の土砂を撹拌して流動性を与
え、この土砂が泥土圧室５から内側スキンプレート６の
各側面スリット７を通過して泥水圧室３内に取り込まれ
易くするものである。

この小口径カッタ４によれば、小口径カッタ用駆動モ
ータ30の動力がカッタ軸28を介してヘッド27に伝達し、
ヘッド27が回転することにより地山を掘削する。これら
小口径カッタ４‥においては、第１図に示すように外側
スキンプレート８内における大口径カッタ２の掘削範囲
を除く、泥水圧室５の前面である異形部が掘削範囲とな
っている。なお、上記円錐形のヘッド27は、面板型又は
スポーク型のものを用いても良い。

このような構成からなるシールド掘削機を用いて地山
を掘削するには、まず、送水管20から泥水圧室３内に泥
水を供給して泥水圧室３内を泥水加圧し、大口径カッタ
２のカッタヘッド15前面の切羽を安定させる。

次いで、エレクタ装置14によりトンネル周壁に組み付
けたセグメント９‥の最前端に反力を取ることにより、
シールドジャッキ13を伸長してシールド掘削機自身を前
方に推進させ、予め作動させておいた大口径カッタ２お
よび小口径カッタ４により前面の切羽を掘削し、また固
定刃11によりトンネル周部を掘削する。この掘削による
土砂は、泥水圧室３および泥土圧室５内に取り込まれ
る。

この際、小口径カッタ４および固定刃11などによって
掘削され、泥土圧室５に送りこまれた土砂は、カッタヘ
ッド15の回転に伴って楕円形の内側スキンプレート６が
回転することにより、泥水と土砂とが撹拌されつつ側面
スリット７を通って泥水圧室３内に移送される。

このようにして１セグメント分掘進したら、シールド
掘削機を停止すると同時に、シールド掘削機内部でセグ
メント９の最前端に新たなセグメント９を組み付ける。
一方、泥水圧室７内に取り込まれた土砂を含む泥水は、
排泥管21によってトンネル後方に排出する。この土砂
は、最終的に地上に運搬されて、土砂と泥水とに分離さ
れ、泥水は再び送水管から泥水圧室内に供給される。

また、シールド掘削機が停止し、大口径カッタ２の回
転が停止しているときは、内側スキンプレート６の側面
スリット７が形成されていない部分を上方に位置するよ
うにするか、もしくは、図示略の開閉装置により上方に
位置した側面スリット７を閉じるなどの方法により、天
端地山の崩壊を防止する。

この実施例において、カッタヘッド15はドラム支持方
式で支持されているため、カッタヘッド15が回転軸によ
り支持される中間支持方式で支持されたもの（例えば第
６図に示すようなシールド掘削機）と比較して、カッタ
ヘッド15を支持する強度が高く、従って口径が大きいシ
ールド掘削機などに対応することができる。

「発明の効果」 以上説明したように、本発明のシールド掘削機によれ
ば、外殻を形成する外側スキンプレートの内部に配した
筒状の内側スキンプレートの横断面の形状を非円形と
し、カッタヘッドの回転に伴ってこの内側スキンプレー
トを回転させることにより、泥土圧室内の土砂と泥水と
の撹拌を十分に行うことができ、土砂に流動性を与える
ことができる。これにより、周壁に形成された孔（側面
スリット）からの土砂の取込が容易になる。また、この
周壁に形成された孔には、内側スキンプレートの回転時
に土砂を泥水圧室側に押し入れる力が働くため、土砂の
取り込みが多量に行える。

従って、本発明のシールド掘削機は、泥水圧室内への
土砂の取り込み効率を向上させることができ、土砂の排
出が速やかに行えるという効果を奏するものである。

また、大口径カッタのカッタヘッドをドラム支持方式
で支持した場合は、カッタヘッドの支持強度が向上する
ため、シールド掘削機の大口径化に対応することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第４図は、本発明のシールド掘削機の一実
施例を示す図であって、第１図はその概略正面図、第２
図は第１図のII−II線矢視断面図、第３図は上記一実施
例の内側スキンプレートを示す断面図、第４図は上記一
実施例の小口径カッタを示す断面図、第５図は本発明に
係わる内側スキンプレートの他の例を示す断面図、第６
図および第７図は従来のシールド掘削機を示す図であっ
て、第６図はその断面図、第７図は内側スキンプレート
およびカッタヘッドの概略斜視図である。 ３……泥水圧室、４……小口径カッタ、 ５……泥土圧室、 ６……内側スキンプレート、 ７……側面スリット、 ８……外側スリットプレート、 10……隔壁部、15……カッタヘッド。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】非円形の外殻を形成する筒状の外側スキン
   プレートの前部に隔壁を設け、かつこの隔壁前方であっ
   て前記外側スキンプレートの内部に内殻を形成する筒状
   の内側スキンプレートを設けることにより、この内側ス
   キンプレート内を泥水が圧送される筒形の泥水圧室とし
   て、また、上記内側スキンプレートと上記外側スキンプ
   レートとの間に形成される異形のスペースを泥土圧室と
   して構成し、 上記泥水圧室の開口部に、地山を円形に掘削するカッタ
   ヘッドを上記内側スキンプレートと一体に形成するとと
   もに上記内側スキンプレートの周壁に孔を設け、また上
   記泥土圧室の開口部に、複数の小口径カッタを配設した
   シールド掘削機であり、 上記内側スキンプレートの横断面の形状を非円形とした
   ことを特徴とするシールド掘削機。
2. 【請求項２】上記カッタヘッドをドラム支持方式で支持
   したことを特徴とする請求項１記載のシールド掘削機。