JP4079754B2 - 部分硬質地盤用シールド掘進機の掘進方法 - Google Patents
部分硬質地盤用シールド掘進機の掘進方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、部分硬質地盤用シールド掘進機の掘進方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シールド掘進機として、掘進機本体の前部に切羽に対向させて回転駆動されるカッタを設け、そのカッタに複数のビット(ティースビット、ローラビット等)を取り付け、掘進機本体の内部で組み立てた既設セグメントに掘進機本体の内部に設けた推進ジャッキを押し付けて前進させるものが知られている。
【0003】
かかる回転カッタ式のシールド掘進機よって、硬質地盤部と通常地盤部とが長手方向に配置された地山をそれらの境界に沿って掘進すると、硬質地盤部と通常地盤部とが混在する切羽(掘削断面)をカッタのビットが周回して切削することになるため、次のような問題が生じる。
【0004】
なお、関連する先行技術として特許文献1及び2に記載されたものが知られている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2849605号公報
【特許文献2】
特開平9−317397号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
硬質地盤部が切羽の一部であるため、カッタの回転に伴ってビットが硬質地盤部からそれ以外の領域(硬質地盤部よりも軟らかい地盤部)に回動すると、急激に切羽での抗力が下がってその分だけ推進ジャッキ(一定油圧制御)が伸長し、掘進機が僅かに前進する。次いで、カッタが更に回転してビットが再び硬質地盤部に回動すると、急激に切羽での抗力が上がってその分だけ推進ジャッキが収縮し、掘進機が僅かに後退する。すなわち、カッタの回転に伴って掘進機が前後に息するように微小振動する。
【0007】
また、カッタの回転に伴ってビットが硬質地盤部からそれ以外の領域に回動して、上述のように掘進機が僅かに前進した後、ビットが再び硬質地盤部に回動して戻るとき、切羽(硬質地盤部)に対するビットの切り込み深さが深くなって、カッタトルクが急増する。そして、急増したカッタトルクの反力によって、掘進機がローリングする。
【0008】
また、通常、方向制御のために複数の推進ジャッキの内の一部を既設セグメントに押し付けて掘進しているため、ビットの周回に伴う切羽での抗力の増減の影響が推進ジャッキが当接されたセグメントに集中的に作用し、セグメントが変形して掘進機が傾く。また、ビットの周回に伴ってセグメントの圧縮・解放が息するように繰り返され、セグメントが疲労する。
【0009】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、切羽の一部に硬質地盤が存在しても、安定した掘進を実現できる部分硬質地盤用シールド掘進機の掘進方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、筒状に組み立てられたセグメントの外周を所定の厚さで囲繞する裏込材地盤部と該裏込材地盤部の外側の通常地盤部とからなる地山を、それら裏込材地盤部と通常地盤部との境界に沿って部分硬質地盤用シールド掘進機が掘進する方法であって、上記部分硬質地盤用シールド掘進機は、掘進機本体の前部に設けられ、掘進方向に沿った軸廻りに回転駆動される回転カッタと、上記掘進機本体の内部に設けられ、その掘進機本体内でリング状に組み立てられたセグメントに当接して上記掘進機本体を前進させる複数の推進ジャッキと、上記回転カッタの切羽側の面の外周側に、上記裏込材地盤部と対向する部分に位置させて、上記回転カッタの周方向に間隔を隔てて複数設けられた部分硬質地盤用のビットとを備え、かかる部分硬質地盤用シールド掘進機が、裏込材地盤部と通常地盤部との境界に沿って掘進する際に、上記回転カッタの回転中、複数の部分硬質地盤用のビットのうちの少なくとも1個が切羽の上記裏込材地盤部に常に接して上記推進ジャッキによって押し付けられ、各硬質地盤用のビットが、上記回転カッタの回転に伴って、切羽の上記裏込材地盤部に順次次々と接し、上記推進ジャッキの前進力が、常に1個以上の硬質地盤用のビットを介して切羽の上記裏込材地盤部に伝達されるようにしたものである。
【0017】
この発明によれば、切羽の一部に存する裏込材地盤部(硬質地盤部)に対し、各硬質地盤部用ビットがカッタの回転に伴って順次次々と接し、掘進機の前進力が常に1個以上の硬質地盤部用ビットを介して裏込材地盤部に支持される。よって、掘進機が、カッタの回転に応じて、前後に息するように振動したり、ローリングしたり、傾いたりすることが防止され、安定した掘進を実現できる。また、セグメントの圧縮・解放も防止される。
【0018】
請求項2に係る発明は、上記推進ジャッキの全数を、上記回転カッタの回転中、上記掘進機本体内の既設のセグメントに当接させて伸長させるようにしたものである。
【0019】
この発明によれば、掘進機の掘進反力が全ての既設セグメントで支持されるので、特定のセグメントに力が集中することはなく、セグメントの変形が抑えられ、掘進機の傾きを抑制できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を添付図面に基いて説明する。
【0025】
図1に本実施形態に係る掘進方法に用いられる部分硬質地盤用シールド掘進機の側断面図を示し、図2に上記掘進機の正面図を示し、図3に上記掘進機の背面図を示す。
【0026】
図示するように、本実施形態に係る掘進方法に用いられる部分硬質地盤用シールド掘進機1は、掘進機本体2の前部に、切羽3に対向させて回転駆動されるカッタ4を備えており、図5に示すように硬質地盤部5と通常地盤部6とが長手方向に配置された地山7をそれらの境界に沿って掘進し、硬質地盤部5と通常地盤部6とが混在する切羽3を切削するものである。
【0027】
図1に示すように、上記掘削機本体2は、円筒状のシールドフレーム8と、その内部を切羽側と坑内側とに仕切る隔壁9とを有する。シールドフレーム8は、図例では、円筒状の前胴10と後胴11とを球面継手12を介して接続し、それら前胴10と後胴11とを中折れジャッキ13で屈曲させる所謂中折れタイプのものを示したが、通常の中折れしないタイプであってもよい。
【0028】
上記カッタ4は、隔壁9に回転自在に取り付けられており、図示しないモータ及びギヤ機構等を介して回転駆動される。図2に示すように、カッタ4は、切羽3に対向する円板状のカッタ面板14を有する。カッタ面板14には、掘削土砂を通過させる土砂取込口15が開口されている。なお、カッタ4は、図例のような面板タイプではなく、スポークタイプであってもよい。
【0029】
図1に示す隔壁9には、掘削土砂を坑内に移送する図示しない排土装置(送泥管・排泥管、又はスクリューコンベヤ等)が取り付けられている。よって、回転するカッタ4によって切削された切羽3の土砂は、土砂取込口15から一旦その後方のカッタ室16に取り込まれ、切羽3の土圧水圧を保ちつつ排土装置によって坑内に移送される。
【0030】
カッタ面板14の切羽側の面には、複数の通常地盤部用ビット17(ティースビット)と、複数の硬質地盤部用ビット18(ローラビット、シェルビット又は先行ビット等)とが、取り付けられている。これらのビット17、18が、実質的に切羽3を切削する。
【0031】
図2に示すように、硬質地盤部用ビット18は、カッタ面板14がその回転に伴って硬質地盤部5とラップする領域(カッタ面板14の外周部)に配置され、カッタ4の回転中に少なくとも1個以上が切羽3の硬質地盤部5に対向するように分散されている。すなわち、硬質地盤部用ビット18は、カッタ4の回転中に少なくとも1個以上が切羽3の硬質地盤部5に掘進機本体2の前進力を支持するように、カッタ面板14の外周部に分散して取り付けられている。
【0032】
換言すると、図1、図2及び図5に示すように、カッタ面板14の切羽側の面を、カッタ回転中心を中心とする同心円Zで区切って、通常地盤部6のみを掘削する領域X(内周側領域)と通常地盤部6及び硬質地盤部5を掘削する領域Y(外周側領域)とに仮想的に分け(図2(b)、図5参照)、通常地盤部6及び硬質地盤部5を掘削する領域Yに、複数の硬質地盤用のビット18をカッタ面板14の回転中に少なくとも1個が硬質地盤部5に常に接するように分散配置している。図2(a)における符合X、Yは、各領域の半径方向の長さを示す。
【0033】
通常地盤部6及び硬質地盤部5を掘削する領域Yには、硬質地盤部用ビット18としてのローラビット18のみならず、それより僅かに低く成形されたティースビット18xも取り付けられている。各ローラビット18で切羽3の硬質地盤部5を含む部分に同心円状の切り込みを複数形成しつつ、各ティースビット18xで切羽3の各切り込みの間の部分を切削するためである。
【0034】
そして、このローラビット18が、カッタ4の回転中に少なくとも1個以上が切羽3の硬質地盤部5に対向するように分散配置されるわけである。ローラビット18は、ティースビット18xよりも僅かに切羽3側に突出されており、硬質地盤部5に対して実質的に掘進機本体2の前進力を支持するからである。
【0035】
他方、通常地盤部6のみを掘削する領域Xには、通常地盤部用ビット17(ティースビット17)が、複数取り付けられている。すなわち、通常地盤部用ビット17は、カッタ4の回転中に常に図5に示す通常地盤部6に対向する位置に、カッタ面板14の内周側領域に分散して取り付けられている。
【0036】
なお、領域Xに硬質地盤部5用のビット(図示せず)を設け、領域Yに通常地盤部6用の通常のビット(図示せず)を設けてもよい。現実の施工では、同心円Zを厳密に設定し難いため、領域Xにて硬質地盤部5を掘削し、領域Yで通常地盤部6のみを掘削する場合があり得るからである。
【0037】
詳しくは、領域X内の外周側に硬質地盤部5用のビット(図示せず)を設け、領域Y内の内周側に通常地盤部6用の通常のビットを設け、同心円Zに沿って周方向に所定幅の硬質地盤部5及び通常地盤部6の双方に対応できる領域を設定することが好ましい。
【0038】
掘進機本体2の後部である後胴11は、所定の厚さに成形された円筒状のテール部19の一部を構成する。テール部19は、円筒状に形成された後胴11と、その内部に放射状に設けられた補強リブ20と、前記補強リブ20の内方先端に取り付けられた円筒状の内筒21と、内筒21と後胴11との後端部を覆う円環板状の蓋22とを有する。
【0039】
内筒21と後胴11との間の厚さすなわち上述の所定の厚さとは、図4及び図5に示す裏込材地盤部すなわち硬質地盤部5の厚さであり、その硬質地盤部5を別の掘進機1が後方からラップして掘進するときのラップ代となる厚さである。このラップ代は、別の掘進機1が後方からラップして掘進する際に、掘進精度上の問題から既設セグメント23に接触しない厚さに設定されている。
【0040】
内筒21の内側には、セグメント23をリング状に組み立てるエレクタ(図示せず)が設けられている。また、内筒21の後部内周面には、既設のセグメント23との間をシールするテールシール24が設けられている。エレクタは、テールシール24で止水された既設セグメント23の前方の空間にて、新たなセグメント23を組み立てる。
【0041】
内筒21と後胴11との間には、既設セグメント23の外周面25と掘孔30の内周面26との間すなわちテールボイド27に、裏込材(モルタル等)を注入するための注入管28が設けられている。注入管28は、図3にも示すように、周方向に所定間隔を隔てて複数(図例では4本)設けられており、それぞれ蓋22に吐出口28aを有する。
【0042】
シールドフレーム8の内部には、図1に示すように、既設セグメント23に当接して掘進反力を支持する推進ジャッキ29が複数設けられている。これら推進ジャッキ29は、図3に示すように、周方向に所定間隔を隔てて複数(図例では10本)設けられており、掘進時に全数が既設セグメント23に当接する。
【0043】
すなわち、各推進ジャッキ29の油圧回路は、全数押し式(全数追従式)の回路となっている。なお、全数押しとはいっても、各ジャッキ29の押し力を異ならせることで、掘進機1の方向制御を行う。つまり、油圧回路には、公知の圧力制御方式やジャッキパターン制御方式等が用いられている。
【0044】
次に本シールド掘進機を用いたトンネル築造方法(掘進方法)を述べる。
【0045】
予め、図1〜図3に示すシールド掘進機1と同種の掘進機(硬質地盤部用ビット18を有さないタイプ)を通常の地山に掘進させて、図4に示すように、筒状に組み立てられたセグメント23の外周をテールボイド27の厚さで囲繞する固化後の裏込材からなる裏込材地盤部5(以下硬質地盤部5という)と、その外側の通常の地盤からなる通常地盤部6とから構成される地山7を形成しておく。
【0046】
その後、図5及び図2に示すように、図1〜図3に示すシールド掘進機1を、地山7の硬質地盤部5と通常地盤部6との境界に沿って掘進させ、硬質地盤部5と通常地盤部6とが混在する切羽3を切削する。
【0047】
このとき、カッタ4には、複数の硬質地盤部用ビット18(ローラビット18)が、カッタ4の回転中に少なくとも1個以上が切羽3の硬質地盤部5に対向するように、領域Yに分散して取り付けられているので、切羽3の一部に存する硬質地盤部5に対し、各硬質地盤部用ビット18がカッタ4の回転に伴って順次次々と接し、掘進機1の前進力(推進ジャッキ29の推力)が常に1個以上の硬質地盤部用ビット18aを介して硬質地盤部5に支持される。よって、掘進機1が、カッタ4の回転に応じて、前後に息するように振動したり、ローリングしたり、傾いたりすることが防止され、安定した掘進を実現できる。また、セグメント23の圧縮・解放も防止される。
【0048】
また、掘進機本体2の内部に設けられた推進ジャッキ29は、掘進時に全数が既設セグメント23に当接するものなので、掘進機1の掘進反力が全ての推進ジャッキ29を介して全ての既設セグメント23で支持される。よって、前段で述べた作用効果とも相俟って、特定のセグメント23に力が集中することはなく、セグメント23の変形が抑えられ、掘進機1の傾きを抑制できる。
【0049】
また、掘進機本体2の後部に、所定の厚さに成形された円筒状のテール部19を設け、テール部19に、その内方にて組み立てられた既設セグメント外周面25と掘孔30の内周面26との間(テールボイド27)に裏込材を注入する注入管28を設けたので、掘進機1の後方に、裏込材が固化した裏込材地盤部5(硬質地盤部5)が形成される。すなわち、先に形成される裏込材地盤部5と後から形成される裏込材地盤部5とが繋がった状態で長手方向に配置される。
【0050】
そして、図1〜図3に示すシールド掘進機1を、硬質地盤部5と通常地盤部6との境界に沿って掘進させ、再び図5に示すようにして硬質地盤部5と通常地盤部6とが混在する切羽3を切削する。これを繰り返すことで、硬質地盤部5、5同士がラップしたトンネルが形成される。そして、硬質地盤部5、5同士をリング状に繋げるように複数のトンネルを形成し、その内方の土砂を取り除くことで、硬質地盤部5をトンネル壁とする大断面トンネルを得ることができる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る部分硬質地盤用シールド掘進機の掘進方法によれば、切羽の一部に硬質地盤が存在しても、安定した掘進を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る掘進方法に用いられる部分硬質地盤用シールド掘進機の側断面図である。
【図2】 図2(a)は上記掘進機の正面図、図2(b)は領域X、Yを示す正面図である。
【図3】 上記掘進機の背面図である。
【図4】 上記掘進機により構築される地山の側断面図である。
【図5】 上記掘進機の掘進状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 部分硬質地盤用シールド掘進機
2 掘進機本体
3 切羽
4 カッタ
5 硬質地盤部(裏込材地盤部)
6 通常地盤部
7 地山
17 通常地盤部用ビット(ティースビット)
18 硬質地盤部用ビット(ローラビット)
19 テール部
23 既設セグメント
25 既設セグメントの外周面
26 掘孔の内周面
27 テールボイド
28 注入管
29 推進ジャッキ
30 掘孔
X 通常地盤部のみを掘削する領域
Y 通常地盤部及び硬質地盤部を掘削する領域
Claims (2)
- 筒状に組み立てられたセグメントの外周を所定の厚さで囲繞する裏込材地盤部と該裏込材地盤部の外側の通常地盤部とからなる地山を、それら裏込材地盤部と通常地盤部との境界に沿って部分硬質地盤用シールド掘進機が掘進する方法であって、
上記部分硬質地盤用シールド掘進機は、掘進機本体の前部に設けられ、掘進方向に沿った軸廻りに回転駆動される回転カッタと、上記掘進機本体の内部に設けられ、その掘進機本体内でリング状に組み立てられたセグメントに当接して上記掘進機本体を前進させる複数の推進ジャッキと、上記回転カッタの切羽側の面の外周側に、上記裏込材地盤部と対向する部分に位置させて、上記回転カッタの周方向に間隔を隔てて複数設けられた部分硬質地盤用のビットとを備え、
かかる部分硬質地盤用シールド掘進機が、裏込材地盤部と通常地盤部との境界に沿って掘進する際に、上記回転カッタの回転中、複数の部分硬質地盤用のビットのうちの少なくとも1個が切羽の上記裏込材地盤部に常に接して上記推進ジャッキによって押し付けられ、
各硬質地盤用のビットが、上記回転カッタの回転に伴って、切羽の上記裏込材地盤部に順次次々と接し、上記推進ジャッキの前進力が、常に1個以上の硬質地盤用のビットを介して切羽の上記裏込材地盤部に伝達されることを特徴とする部分硬質地盤用シールド掘進機の掘進方法。 - 上記推進ジャッキの全数を、上記回転カッタの回転中、上記掘進機本体内の既設のセグメントに当接させて伸長させるようにした請求項1に記載の部分硬質地盤用シールド掘進機の掘進方法。
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