JP2727088B2 - エレクトロクロミック電極およびその製造方法 - Google Patents

エレクトロクロミック電極およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は各種の調光用素子、表示用素子に用いること
ができる、無機基板電極から有機導電性高分子膜が剥離
することがないエレクトロクロミック電極およびその製
造方法に関するものである。
(従来技術およびその問題点) 外部からの電圧印加によってその素子中に電気化学的
反応が誘起され、その色や吸収率が可逆的に変化するエ
レクトロクロミック素子(以下、ECDと略称する)は、
固体発光素子(LED)や液晶素子(LCD)にない多くの特
徴を備えている。そのため、エレクトロニクス産業を始
めとする各種産業分野において、調光用素子や表示用素
子として実用化が進められている。上記ECDは、エレク
トロクロミック電極(以下EC電極と略称する)、電解
質、および対極とから構成される。前記EC電極を構成す
る材料には大別として無機材料と有機材料とがあり、前
者は各種遷移金属酸化物が知られている。また、後者は
ビオロゲン系化合物、スチリル酸系化合物などが知られ
ているが、最近、電解重合して得られる導電性高分子も
開発研究されている。導電性高分子は薄膜化が容易であ
ること、応答性に優れていること等の特長があり注目さ
れている。
前記導電性高分子からなる有機系EC電極の基本構成
は、ITO(約5重量%のSnO2を含有するIn2O3)ガラス、
SnO2ガラスなどの透明電極や、白金板等の金属電極上に
導電性高分子膜を積層したものである。上記導電性高分
子膜の積層法としては、電解重合法や、ディップ法、ス
ピンコート法などが知られているが、いずれの方法を用
いても基板電極として無機物質を用いること、積層後導
電性高分子膜が基板電極より剥離してしまう不具合が見
られた。これは、基板電極の無機材料と導電性高分子膜
である有機材料との間の結合力が弱いためであり、その
結合力が弱い理由は次のように説明される。
導電性高分子の積層過程において、一般に導電性高分
子同士は強い結合力を持っている。これは、高分子の直
鎖部分は共有結合によってつながれており、また、直鎖
部分同士は他の部分と絡まり合うためである。しかし、
無機基板電極と導電性高分子との間には共有結合は形成
されず、おそらく、無機界面の酸化物や水酸化物と高分
子との水素結合が形成されているものと考えられる。水
素結合は共有結合に比べ弱く、高分子の基板電極への密
着性は十分なものではない。
これらの理由により、EC電極を製造する際の歩留まり
が低下する問題点が見られた。また、EC電極として駆動
時に電解液が基板−導電性高分子界面の水素結合に介在
し、導電性高分子が基板電極から剥離するため、着消色
ムラや作動不能の状態を引き起こすことがあった。これ
により、EC電極の駆動寿命が低下する問題点も見られ
た。
(第1発明の説明) 本第1発明(特許請求の範囲第(1)項に記載の発
明)は、上記従来技術の問題点に鑑み、無機基板電極と
有機導電性高分子との密着性を高め、エレクトロクロミ
ック電極の製造の際の歩留まり、あるいは駆動寿命に優
れたエレクトロクロミック電極を提供しようとするもの
である。
すなわち、電極基板と導電性高分子から構成されるエ
レクトロクロミック電極において、該電極基板と導電性
高分子とを共有結合を介して結合したことを特徴とする
エレクトロクロミック電極に関するものである。
本発明に係るエレクトロクロミック電極を構成する基
板電極はITO等の無機材料からなり、導電性高分子は有
機材料である。したがって、両物質を例えば電解重合法
によって結合しても、単に無機表面の酸化物や水酸化物
と高分子とが水素結合で結合されているにすぎないた
め、高分子の基板電極への密着性は十分ではない。本発
明に係るエレクトロクロミック電極は、無機の電極基板
と有機の導電性高分子とを共有結合を介して結合してな
るところに特徴がある。共有結合は水素結合よりも著し
く大きな結合強度を有する。そのため、基板電極と導電
性高分子膜との密着性が強固なものとなり、従来問題で
あった無機基板電極と有機導電性高分子との剥離が完全
に防止される。その結果、エレクトロクロミック電極を
製造する際の歩留まりが向上すると共に、エレクトロク
ロミック電極の作動寿命を向上させる効果が生まれる。
また、本発明に係るエレクトロクロミック電極は、使用
中に剥離することがないため、各種産業機器の表示装
置、自動車用及び建材用の調光ガラス、および自動車用
防眩ミラーとして広く用いられる。
(第2発明の説明) 本第2発明(特許請求の範囲第(2)項に記載の発
明)は、電極基板をシランカップリング剤溶液で処理す
る工程と、該電極基板の上に導電性高分子膜を形成する
工程とからなることを特徴とするエレクトロクロミック
電極の製造方法に関するものである。
シランカップリング処理に用いるシランカップリング
剤には、γ−クロルプロピル・トリメトキシシラン、ビ
ニル・トリメトキシシラン、β−(3.4−エポキシシク
ロヘキシル)・トリメトキシシラン、γ−グリシドキシ
プロピル・トリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピ
ル・トリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−
γ−アミノプロピル・トリメトキシシラン、γ−アミノ
プロピル・トリメトキシシラン等があり、これらの1種
または2種以上で用いる。シランカップリング剤は、通
常水またはアルコールに溶かして用いる。該シランカッ
プリング剤の濃度は1〜30体積(vol)%の範囲が望ま
しい。濃度が1vol%以下では、シランカップリング剤の
膜が薄く、充分な密着力を得にくい。しかし、30vol%
以上にしても密着力の向上は望めず、逆にシランカップ
リング処理後の洗浄に時間がかかるようになる。
シランカップリング剤溶液による処理は、基板電極を
アセトン等の溶剤で脱脂した後、該電極を上記シランカ
ップリング剤を溶かした溶液中に浸漬して行う。浸漬は
1〜15分間行う。1分未満ではシランカップリング剤溶
液による処理を行っても密着性の良い導電性高分子膜を
電極表面に形成できない。ただし、15分を越えて浸漬し
ても密着性の向上は期待できない。
基板電極としてはITO(約5重量%のSnO2を含有するI
n2O3膜、SnO2膜で被覆したガラス、あるいは透明プラス
チックフィルム等の導電性材料あるいはステンレススチ
ール、白金、ニッケル等の金属が用いられる。
基板電極表面に形成する導電性高分子としては、ポリ
アニリン、ポリピロール、ポリチオフェンからなる群よ
り選択した1または2以上を用いる。導電性高分子膜の
厚さは500Å〜2μmの範囲内が望ましい。該膜厚が500
Åより薄い場合は、エレクトロクロミック素子として使
用した場合に着消色の色変化が小さく、2μmより厚い
場合は、消色が困難となる。良好なエレクトロクロミッ
ク特性は膜厚が1000Å〜1μmのときに得られる。導電
性高分子膜は電解重合法により、基板電極上に形成す
る。電解重合電析液としては、導電性高分子としてポリ
アニリンを形成する場合はアニリンモノマーと水溶性ポ
リアニオン塩とを溶解させた酸性水溶液を用いる。ポリ
ピロールの場合はピロールモンマーと過塩素酸リチウム
を、またポリチオフェンの場合はチオフェンモノマーと
過塩素酸リチウムを、それぞれアセトニリルに溶解させ
た溶液を用いる。上記電解重合電析液中に一対の基板電
極を浸漬し、該電極間に直流電圧を印加し、正極の基板
電極上に膜を形成するものである。電解重合を行う際の
電流密度は10μA/cm2〜1m/Acm2の範囲内が望ましい。10
μA/cm2より小さいと膜形成速度が遅く、1mA/cm2より大
きいと形成された膜が微粉化してその性能が劣化するお
それがある。また、導電性高分子膜はディップ法やスピ
ンコート法によって形成することができる。
本第2発明に係る方法によって、無機基板電極と有機
導電性高分子膜とを共有結合によって結合させた導電性
高分子膜が剥離しない結合強度に優れたエレクトロクロ
ミック電極を製造できる。
(実施例) 実施例1 ITO電極基板上にポリアニリンを形成させたときのシ
ランカップリング処理による密着性向上効果をテープ剥
離試験により調べた。
シランカップリング処理液として、10%容量比のシラ
ンカップリング剤を含んだメタノール溶液を調製した。
シランカップリング剤としては、γ−クロルプロピル・
トリメトキシシラン、ビニル・トリメトキシシラン、β
−(3.4−エポキシシクロヘキシル)・トリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピル・トリメトキシシラ
ン、γ−メルカプトプロピル・トリメトキシシラン、N
−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル・トリメ
トキシシラン、γ−アミノプロピル・トリメトキシシラ
ンを用いた。
該シランカップリング処理液にアセトンで脱脂洗浄し
たITO電極(縦5cm、横2cm)を10分間浸漬した。次に、
該電極を処理液から取り出した後、メタノールで十分洗
浄し、10℃で10分間乾燥した。
この電極上に以下の条件にてポリアニリン膜を電解重
合させた。電解重合用電析液として、アニリンモノマ
ー、過塩素酸、及びポリビニル硫酸カリウムを混合した
水溶液を調製した。それぞれの濃度は、アニリンモノマ
ーが0.1mol/l、過塩素酸が0.2mol/1、ポリビニル硫酸カ
リウムが0.01mol/lとした。次いで、上記の方法により
シランカップリング処理を行ったITO電極を陽極に、ま
たカーボン板を陰極にして両電極を上記電析液に浸漬し
て室温で電極単位面積当たり50μA/cm2の電流密度で30
分間通電する電解重合法により、陽極のITO電極上に600
0Å、緑〜紺色のポリアニリン層を形成した。
得られた電極を蒸留水で洗浄し、室温で1時間真空乾
燥を行った。
このようにして作製したポリアニリンEC電流表面にセ
ロハンテープを貼り付け、強く剥がした時のITO基板か
らのポリアニリン膜の剥離具合を調べた。その結果を第
1表に示した。
第1表に示されるようにシランカップリング処理を行
わないITO電極上に形成されたポリアニリン膜は、テー
プテストにおいて剥離した。一方、本発明によるシラン
カップリング処理を施したITO電極上に形成されたポリ
アニリン膜ではいずれも剥離は見られず、密着性の著し
い向上が認められた。
実施例2 本実施例では、SnO2電極基板上にポリアニリンを形成
させた時のシランカップリング処理による密着性向上効
果をテープ剥離試験により調べた。結果を第2表に示し
た。電極としてSnO2電極を用いた以外は実施例1と同じ
シランカップリング処理条件、ポリアニリン膜形成条
件、及びテープ剥離試験条件にて行った。
ITO基板電極の時に見られた効果と同様、シランカッ
プリング処理を行うことにより、密着性が著しく改善さ
れた。
実施例3 本実施例では、実施例1の条件にてシランカッ プリング処理、及びポリアニリン膜形成を行った電極を
プロピレンカーボネイト溶液に1時間浸漬した後、不織
紙(キムワイプ、十条キンバリー製)でポリアニリン膜
表面を拭き取った時の剥離具合を調べた。結果を第3表
に示した。
実施例4 本実施例では、さらに過酷な条件での剥離強度を調べ
るため、実施例1の条件にてシランカップリング処理、
及びポリアニリン膜形成を行っ電極を0.01mol/lの水酸
化カリウムの80℃熱水中に浸漬した時の剥離具合を調べ
た。結果を第4表に示した。
アルカリ処理により、ポリアニリン膜とITO基板との
水素結合は簡単に切られると考えられる。したがって、
両者が共有結合されている割合が強いほど、剥離は起こ
りにくいと考えられるが、第4表に示されるように、γ
−メルカプトプロピル・トリメトキシシランが最も優れ
た密着性を示した。また、その他のシランカップリング
処理を施した電極においても密着性の向上は見られた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 仰 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 伊藤 敏安 愛知県西春日井郡春日村大字落合字長畑 1番地 豊田合成株式会社内 審査官 田部 元史 (56)参考文献 特開 昭59−22033(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電極基板と導電性高分子とから構成される
    エレクトロクロミック電極において、該電極基板と該導
    電性高分子とをシランカップリング剤溶液で処理するこ
    とにより生成する共有結合を介して結合したことを特徴
    とするエレクトロクロミック電極。
  2. 【請求項2】電極基板をシランカップリング剤溶液で処
    理する工程と、該電極基板の上に導電性高分子膜を形成
    する工程とからなることを特徴とするエレクトロクロミ
    ック電極の製造方法。
  3. 【請求項3】導電性高分子は、ポリアニリン、ポリピロ
    ール、ポリチオフェンからなる群のうちの1種または2
    種以上である特許請求の範囲(1)項記載のエレクトロ
    クロミック電極。
  4. 【請求項4】導電性高分子膜は、ポリアニリン、ポリピ
    ロール、ポリチオフェンからなる群のうちの1種または
    2種以上である特許請求の範囲第(2)項記載のエレク
    トロクロミック電極の製造方法。
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