JP2726947B2 - 防制振ゴム組成物 - Google Patents

防制振ゴム組成物

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は防制振ゴム組成物に係り、詳しくは海綿状の
鉄粉を天然ゴム及びイソプレンゴムのいずれか1種また
は2種のゴムとポリ塩化ビニルとをブレンドしたポリマ
ーに充填した配合物からなり、低周波領域で損失係数が
大きく低周波領域から高周波領域までの周波数依存性が
小さく、高周波における動的弾性率が小さく、且つ静動
比の小さい特性をもつ防制振効果の優れたゴム組成物に
関する。
(従来技術) 一般に防制振ゴムの性能を示す振動伝達率については
自由度系モデルを用いた振動伝達率Tと加振力の振動数
ωの間に所定の関係式があることは良く知られており、
この関係式から加振力の振動数ωが小さい領域では、 T≒1/tanδ ・・・・(1) また、加振数が大きい領域では、 T≒Kd/(mω−Kd) ・・・・(2) (尚、ここにおいてKdは動的弾性率、tanδは損失係
数、mは支持体の重量を示す)で示される。
即ち、防制振の優れた材料はtanδが大きく、動的弾
性率が小さいことがわかる。
ところで、一般に車両等に使用される防制振ゴムは10
〜20(Hz)の低周波領域ではシェイク現象等を押える防
制振を有し、他方75Hz以上の高周波領域では室内のこも
り音等を押える防音性を必要とするため、低周波領域で
はtanδが大きく、高周波領域では静動比(動的バネ定
数/静的バネ定数)の小さいことが理想的な状態と言わ
れている。
このため、従来では防音性に優れる天然ゴム、ポリブ
タジエンゴムと防振性に優れるスチレン−ブタジエン共
重合体等のブレンド物が使用されていた。とりわけ、シ
ス1,4結合含量が80%以上で1,4結合の平均連鎖長が110
〜450であり、かつ重量平均分子量と数平均分子量との
比が8以上であるポリブタジエンを天然ゴムあるいは合
成イソプレンを主成分とするジエン系ゴムにブレンドし
たものが知られている。
(発明が解決しようとする課題) しかし、従来の防制振ゴム組成物もやはり防振及び防
音性のバランスに欠けた点もあり、更に自動車工業等の
発展に伴って防制振ゴム組成物に要求される振動吸収特
性の目標値も年々厳しくなっており、より一層優れた防
制振ゴム組成物の開発が望まれていた。
本発明者等は低周波での損失係数が大きくて、低周波
数域から高周波数域までの周波数依存性が少なく、且つ
高周波での動的弾性率が小さく、静動比の小さい防制振
ゴム組成物の開発を目的とした結果、粒度が小さく且つ
比表面積の大きい海綿状の鉄粉を配合ゴムに充填するこ
とによって優れた防制振性能を有するゴム組成物が得ら
れることを見出した。
(課題を解決するための手段) 上記目的を達成するため、本発明の防制振ゴム組成物
においては、天然ゴム及びイソプレンゴムのいずれか1
種または2種のゴムとポリ塩化ビニルとをブレンドした
ポリマー100重量部に、海綿状の鉄粉を60〜380重量部、
SiO2成分にAl2O3成分もしくはMgO成分とが混和された2
成分系の充填剤80〜160重量部を充填した防制振ゴム組
成物にある。
また、本発明は上記2成分系の代わりにSiO2成分にAl
2O3成分とMgO成分とが混和された3成分系の充填剤を、
ポリマー100重量部に対して80〜160重量部を充填した場
合も含む。
即ち、本発明の防制振ゴム組成物によれば、低周波領
域で損失係数(tanδ)が大きくなり、且つ周波数依存
性も小さく、しかも高周波領域では動的弾性率が小さく
て静動比の小さい特性を有し、極めて優れた防制振効果
がある。
本発明で使用するポリマーは、天然ゴム及びイソプレ
ンゴムのいずれか1種または2種のゴムとポリ塩化ビニ
ルとをブレンドしたものであり、そのブレンド比は特に
限定されない。
そして、上記ポリマーに充填される海綿状の鉄粉は、
200メッシュより小さい粒度が全体の60%以上を占め、
比表面積が1000cm2/g以上であり、このために外部から
の振動エネルギーを吸収しやすく熱に変えて放散させる
能力に優れ、配合物の比重も大きくすることができる。
また、この海綿状の鉄粉は凹凸表面をもっているために
ポリマーとの界面で機械的にしつかりと接合し、外部か
らの振動を受けても容易に剥離しない。従って、得られ
たゴム組成物は引張り強さ、伸び等において優れてい
る。そして、その添加量はゴム100重量部に対して60〜3
80重量部、好ましくは80〜320重量部である。もし、60
重量部未満であると防制振効果が少なく、他方380重量
部を越えるとゴム配合物が硬くなって、高周波での動的
弾性率が大きくなり過ぎて防制振効果が劣ることによ
り、目的とする防制振特性を有するゴム配合物とならな
い。
上記海綿状の鉄粉は、鉄鉱石を約1100℃以下の温度で
固体状態のまま還元剤を用いてスポンジ状の鉄を作製す
る時に発生する鉄粉であり、例えば矢作製鉄株式会社製
の200メッシュより小さい粒度が全体の60%以上であ
り、比表面積が1000cm2/g以上である還元鉄粉が選択さ
れる。
更に、上記ポリマーに混入される充填剤として、SiO2
成分にAl2O3および/またはMgO成分を混合してなる2成
分または3成分系充填剤があり、例えば2成分充填剤は
デキシ・クレー(SiO2 44%−Al2O3 39%)、タルク
(SiO2 64%−MgO 32%)、カタルポ(SiO2 88.9%
−Al2O3 65%)、ネオスパー(SiO2 57.7%−Al2O3
28.9%)、マイカ(SiO2 46%−Al2O3 38%)等があ
り、3成分系充填剤はシリカライト(SiO2 40.8%−Al
2O3 24.4%−MgO 23.4%)等がある。この充填剤はポ
リマー100重量部に対して80〜160重量部充填される。80
重量部未満の場合、損失係数が小さくなり、防制振特性
が悪くなり、160重量部を越えると静動比が大きくなっ
て防制振特性が好ましくない。
また、他の充填剤としてカーボンブラックがあり、こ
れは平均粒径が50〜100mmであるファーネスブラック
系、アセチレンブラック系、サーマルブラック系、チャ
ンネルブラック系等から選択される。更には通常のゴム
に使用される軟化剤、老化防止剤、加硫助剤、加硫促進
剤等を配合し、加硫、成形して防制振材として使用され
るが、この場合各成分を混合する方法としては特に制限
なく、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール等
を用いて、適宜公知の手段、方法によって混練され、シ
ート化することができる。
(実施例) 本発明を具体的な実施例により更に詳細に説明する。
動的弾性率E′及び損失係数tanδの測定値は東洋精機
(株)製レオログラフ−ソリッドを用い測定温度25±2
℃、周波数1及び100Hzにおいて0.05〜0.08%の正弦的
伸張圧縮歪を試料に与えて測定したものである。
(実施例1) 第1表に示す配合に基づき、ゴム配合物をバンバリー
ミキサーで混練後、ロールを用いてシートに形成し、15
0℃で20分間加硫し、厚さ2mm×幅8mm×長20mmの各種試
料を作製した。
NR/RVC=40/60をベースポリマーとして海綿状の鉄粉
を40〜400重量部充填した実施例1−1〜1−5の防制
振特性は比較例1−1に比べて、1Hz時のtanδの周波数
依存性も小さい。また、実施例は比較例1−2に比べて
静動比の小さいのが特長である。これらの結果より、海
綿状の鉄粉を配合ゴム100重量部に対して80〜320重量部
の割合で充填すると防制振材として好ましい材料である
ことが判る。
(実施例2) 第2表に示すようにNR/PVC=40/60をベースポリマー
として海綿状の鉄粉を120重量部充填し、充填材(タル
ク)を80〜160重量部の割合で混入した材料の防制振特
性を評価し、その結果を第2表に示した。充填剤(タル
ク)を混入しない配合を実施例2−6、鉄粉を混入した
配合を比較例2−1に併記している。試料調整方法は実
施例1と同様である。実施例2−1〜2−5は実施例2
−6に比べてtanδが大きく、そしてtanδの周波数依存
性が小さいため防振効果の優れた材料になっている。
また、充填剤(タルク)を混入することによって静的
な弾性率も大きく制振効果の優れた材料になっているこ
とが判る。特に比較例2−1の通常の鉄粉を混入したゴ
ム組成物は、実施例2−2に比べて引張り強さ、伸度と
も小さく耐疲労性に劣り、tanδが大きいものの動的弾
性率が大きく時に高周波側での防制振特性に劣ることが
判る。
このように海綿状の鉄粉を充填した系にSiO2成分を含
む2成分系または3成分系の充填剤を混入したゴム配合
物は優れた防制振材料になっている。そして、本発明の
海綿状の鉄粉を充填したゴム組成物は通常の鉄粉を用い
たものに比べて防制振効果において優れており、防制振
効果において海綿状の鉄粉が大きく寄与していることが
明らかになった。
(効果) 以上のように本発明の防制振ゴム組成物は、特に複雑
な凹凸表面をもち、そして大きい比表面積を有する海綿
状の鉄粉が特定量充填されているために、これにより低
周波領域でのtanδが大きく、しかも高周波領域での動
的弾性率が小さく、静動比の小さい優れた防制振効果を
有している。
また、海綿状の鉄粉にSiO2成分にAl2O3成分もしくはM
gO成分とを混和した2成分系の充填剤、もしくはSiO2
分にAl2O3成分とMgO成分とを混和した3成分の充填剤と
を混入したゴム組成物も、優れた防制振効果を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 三谷 祥子 (56)参考文献 特開 昭63−182698(JP,A) 特開 昭54−11153(JP,A) 「新版・プラスチック配合剤−基礎と 応用−」昭和59年1月30日初版発行,大 成社 P.112

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】天然ゴム及びイソプレンゴムのいずれか1
    種または2種のゴムとポリ塩化ビニルとをブレンドした
    ポリマー100重量部に、海綿状の鉄粉を60〜380重量部、
    SiO2成分にAl2O3成分もしくはMgO成分とが混和された2
    成分系の充填剤80〜160重量部を充填してなることを特
    徴とする防制振ゴム組成物。
  2. 【請求項2】天然ゴム及びイソプレンゴムのいずれか1
    種または2種のゴムとポリ塩化ビニルとをブレンドした
    ポリマー100重量部に、海綿状の鉄粉を60〜380重量部、
    SiO2成分にAl2O3成分とMgO成分とが混和された3成分系
    の充填剤80〜160重量部を充填されている請求項1記載
    の防制振ゴム組成物。
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