JP2722570B2 - ショ糖の回収方法 - Google Patents

ショ糖の回収方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はショ糖の回収方法に関するものである。詳し
くは、本発明はジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と
略す。)を溶媒として使用してショ糖脂肪酸エステを製
造し、次いで反応生成液中に含まれる未反応ショ糖を回
収する方法に関するものである。
〔従来の技術〕
ショ糖脂肪酸エステル(以下「SE」と略す。)は、優
れた界面活性能、良好な生分解性及び高い安全性を兼備
しているため、従来、食品、化粧品、医薬品、台所用洗
剤、飼料、樹脂等に添加剤として、また化学工業におい
ては例えば重合反応、酸化反応等の反応液の助剤として
など幅広く用いられており、きわめて有用な化合物であ
る。
従来からDMSOあるいはジメチルホルムアミド(以下DM
Fと略す。)を反応溶媒として使用し、ショ糖と脂肪酸
アルキルエステルとを反応させてSEを製造する方法が知
られている。
これ等の方法においては、脂肪酸エステルに対し、シ
ョ糖を過剰量添加してDMSO又はDMF及びアルカリ触媒の
存在下で反応をおこなうため、反応後、過剰に加えられ
たショ糖と場合によっては脂肪酸エステルを回収する必
要が生ずる。
ショ糖の回収方法に関しては、液−液抽出法と固−液
抽出法に分類される。
液−液抽出法ではSEを溶解する溶媒とシュ糖を溶解す
る溶媒を選定して処理し、SEの抽出溶媒としてイソブチ
ルアルコール等のアルコール類が使用され、ショ糖の抽
出溶媒として水が用いられている。この様な液一液抽出
法ではSEの一部が水層にそしてショ糖の一部が有機層に
それぞれ移行するため、SEの収量が低下したり、また水
層からショ糖を回収するため、回収液から多量の水分を
除去しなければならない欠点を有する。
一方、固−液抽出法は、反応生成液に、SEは溶解する
がシヨ糖を溶解しないような析出溶媒を添加し、シヨ糖
を析出させ、析出したショ糖を回収する方法である。
この場合に、反応溶媒としてDMFを使用し、析出溶媒
にベンゼン糖の芳香族系炭化水素を使用する発明(特公
昭49−6293号公報)が知られている。
また、特開昭63−27497号公報、及びUSP3,251,829号
公報には、反応溶媒としてDMSOを使用し、析出溶媒とし
てメチルエチルケトン(以下MEKと略す)を使用する発
明が記載されている。
また、USP3,141,012号公報には、反応溶媒としてDMF
を使用し、析出溶媒としてメチルイソブチルケトン(以
下MIBKと略す。)を使用する方法が示唆されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記の反応溶媒としてDMSOを使用し、
析出溶媒としてMEKを使用する方法では、MEKの引火点が
−1℃と低く、また、室温付近でも蒸気圧が高く、固−
液抽出操作は、ほとんど常に密閉型容器中で実施しなけ
ればならない。
また、場合によってはSEを有機層に移行させるために
加温することがおこなわれるが、MEKの蒸気圧が高いた
め、抽出を実施するための装置、操作は制限をうける。
さらに、また、MEKではエステル化度の高いSEに対して
溶解度が不十分であり、反応により生成したSEとメチル
エチルケトンに溶解したSEとの間でエステル分布に違い
を生ずることになる等の問題点があった。
一方、反応溶媒としてDMFを使用し、析出溶媒としてM
IBKを使用する方法では、析出したショ糖を含む固形物
の過性が悪く、分離を円滑におこなうことができない
という問題点があった。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明はジメチルスルホキシドを溶媒とし
て、ショ糖と脂肪酸アルキルエステルとを反応させて、
ショ糖脂肪酸エステルを生成させ、得られたショ糖脂肪
酸エステル生成液を減圧下に処理して、ジメチルスルホ
キシドの含有量を10〜50重量%となる迄留去し、次いで
得られた留去後の溶液に残存するジメチルスルホキシド
の2〜12倍重量のメチルイソブチルケトンを添加し、0
〜110℃の温度下に析出するショ糖を回収することを特
徴とするショ糖の回収方法を要旨とするものである。
本発明におけるSE製造反応前の成分比は、DMSOが約50
〜80重量%、ショ糖と脂肪酸エステルは、この2つの合
計で20〜50重量%であり、反応後もDMSO含量はほとんど
同じである。
反応生成液に直接MIBKを添加し、ショ糖を析出させて
もよいが、その場合多量のMIBKを要し、また、ショ糖の
回収率が若干低下することが判明した。本発明は反応生
成液中のDMSOを減圧蒸留により留去して特定の範囲、具
体的には反応生成液を減圧蒸留してDMSO含量を約10〜50
重量%、好ましくは約20〜40重量%に調整する。
この様に調整された液に対して、残存するDMSOの2〜
12重量倍、好ましくは4〜10重量倍量のMIBKを加えて、
0〜110℃のもとで混合する。MIBKの引火点は18℃であ
り、この温度より低温で開放型の容器でショ糖の回収操
作を実施できる。通常は有機層へのSEの溶解量を増大さ
せるため加温した方がよく、その際には密閉型の容器を
使用する。MIBKは、約110℃でも760mmHg以下で操作で
き、場合によってはその温度付近まで加温し、MIBK使用
量を低減化することも可能である。
MIBKを添加、混合後析出したショ糖を、過、遠心分
離等して、有機層と分離回収する。
回収された固形物の大部分はショ糖であるが、少量の
DMSOおよびSEさらに微量のMIBKを含むが、そのまま、あ
るいは乾燥してMIBKを除去したのち再使用してもよい。
液−液抽出法とは異なり、本発明では水を使用しないた
め、エネルギー的に不利な水分の除去操作を行う必要は
ない。
以上の操作によってショ糖を回収すると、生成液中に
存在する未反応のショ糖を95%以上回収することができ
る。
本発明によればSEの脂肪酸基の種類による制限はな
く、いかなる種類のSEの製造後の生成液に適用すること
ができ、またMIBKに溶解しているSEのエステル分布は処
理前の状態とほとんど変化しない。
〔実施例〕
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1 撹拌機、温度計、冷却管、減圧装置と接続した5フ
ラスコに、DMSO 2500g、ショ糖 686g、ステアリン酸
メチル300gを仕込み、20mmHgで90℃まで昇温し、約1時
間保持したところ原料中に含まれる水分を除去、次いで
これに炭酸カリウム7.5gを添加し、90℃において、20mm
Hgの減圧下に、3時間保持した。その後系内を常圧にも
どし、約50℃まで冷却し、乳酸の50重量%水溶液の10g
を添加して中和をおこなった。生成液の一部を抜き出し
分析したところステアリン酸メチルは検出されず、DMSO
濃度は約72重量%、ショ糖19.3重量%、SE8.7重量%で
あった。またSEのエステル分布はモノエステル/ジエス
テル/トリエステル=45/33/22(重量比)であった。な
おこれらの分析は液体クロマトグラフィーおよびガスク
ロマトグラフィーによりおこなった。
上記の様にして製造された生成液約250gを1フラス
コに入れ、90℃、10mmHg以下で処理してDMSOの一部を除
去し、100gとした。濃縮物の組成はDMSO31.1重量%、シ
ョ糖47.5重量%、SE21.4重量%であった。
この濃縮物に室温(25℃)のもとでMIBK248.8gを添加
し(MIBK/DMSOの重量比=8)、1時間撹拌後静置し、
過したところ、固形物60g、液288gを得た。固形
物、液中のショ糖の含有量は各々46.9g、0.6gであ
り、固形物としてのショ糖の回収率は98.7%であった。
なお固形物中に6.4gのSEが検出されたが、液中のSEお
よび反応直後のSEとエステル分布はほとんど同一であっ
た。
実施例2 実施例1と同様の操作を50℃のもとでおこなったとこ
ろ、固形物55g、液293gを得た。固形物、液中への
ショ糖の含有量は各々46.7g、0.8gであり、固形物とし
てのショ糖の回収率は98.3%であった。
また、固形物中に2.0gのSEが検出されたが、SEエステ
ル分布は変化がみられなかった。
実施例3 実施例1と同様にして得た濃縮物100gにMIBK 124.4g
(MIBK/DMSO重量比4)を添加し、実施例1と同様の操
作を50℃のもとでおこなったところ、固形物58g、液1
66gを得た。固形物、液中へのショ糖の含有量は各々4
6.8g、0.7gであり、固形物としてのショ糖の回収率は9
8.5%であった。また固形物中に3.2gのSEが検出された
が、SEエステル分布には変化がみられなかった。
実施例4 実施例1に記したものと同様の装置にDMSO2500g、シ
ヨ糖220g、ステアリン酸メチル766gを仕込み20mmHgのも
とで90℃まで昇温し、約1時間保持して原料中に含まれ
る水分を除去した。次に炭酸カリウム7.5gを添加し、90
℃、20mmHgのもとで8時間反応をおこなった。反応後系
内を常圧にもどし、約50℃まで冷却して乳酸5gを水5gに
溶解した液を添加して中和をおこなった。
生成液の一部を抜き出して分析したところ、ステアリ
ン酸メチルは検出されず、DMSO濃度は73.4重量%であ
り、ショ糖1.3重量%、SE25.3重量%であった。またSE
のエステル分布は、モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ/
ヘキサ/ヘプタ/オクタ=0.7/1.0/1.3/24.6/36.6/14.9
/18.0/2.9(重量比)であった。
上記の様にして製造された生成液約250gを1フラス
コに入れ、90℃、10mmHg以下で処理してDMSOの一部を除
去し、100gとした。濃縮物の組成はDMSO33.4重量%、シ
ョ糖3.3重量%、SE63.3重量%であった。この濃縮物に
室温(25℃)のもとでMIBK250gを添加し(MIBK/DMSO重
量比7.5)、1時間撹拌後静置し、過したところ、固
形物10g、液340gを得た。固形物、液中のショ糖の
含有量は各々3.2g、0.1gであり、固形物としてのショ糖
の回収率は97.0%であった。なお固形物中に5.2gのSEが
検出されたが液中のSEおよび反応直後のSEとエステル
分布はほとんど同一であった。
比較例1 実施例4と同様にして得た、濃縮されたSEを含む濃縮
物に室温(25℃)のもとでメチルエチルケトン250gを添
加し(MEK/DMSO重量比7.5)、1時間撹拌後静置し、
過したところ固形物17.5g、液332.5gを得た。固形物
及び液中のショ糖の含有量は各々2.9g及び0.4gであ
り、固形物としてのショ糖の回収率は87.9%であった。
なお、液中のSEのエステル分布は、モノ/ジ/トリ
/テトラ/ペンタ/ヘキサ/ヘプタ/オクタ=1.5/2.2/
2.6/34.5/32.5/13.2/9.5/4.0(重量比)であり、、反応
直後とは異なっていた。
比較例2 実施例1に記したものと同様の装置にジメチルホルム
アミド(DMF)2500g、ショ糖686g、ステアリン酸メチル
300gを仕込み、95mmHgのもとで90℃まで昇温し、約1時
間保持して原料中に含まれる水分を除去した。次に炭酸
カリウム7.5gを添加し、90℃、95mmHgのもとで3時間反
応をおこなった。反応後系内を常圧にもどし、約50℃ま
で冷却して乳酸の50重量%水溶液の10gを添加して中和
をおこなった。
生成液の一部を抜き出し分析したところステアリン酸
メチルは検出されず、DMF濃度は約72.4重量%であり、
ショ糖13.1重量%、SE14.5重量%であった。また、SEの
エステル分布は、モノエステル/ジエステル/トリエス
テル=52/30/18(重量比)であった。
上記の様にして製造された生成液約250gを1フラス
コに入れ、90℃、90mmHg以下で処理してDMFの一部を除
去し、100gとした。濃縮物の組成はDMF31.0重量%、シ
ョ糖32.7重量%、SE36.3重量%であった。この濃縮物に
室温(25℃)のもとでMIBK248gを添加し(MIBK/DMF重量
比8)、1時間撹拌後静置し、過したところ、固形物
62.1g、液285.9gを得た。なお、固形物は粘ちようで
あり、過に長時間を要した。固形物及び液中のショ
糖の含有量は各々30.8g及び1.9gであり、固形物として
のショ糖の回収率は94.2%であった。
なお、固形物中に10.3gのSEが検出されたが、液中
のSEおよび反応直後のSEではエステル分布はほとんど同
一であった。
〔発明の効果〕
本発明によれば、生成液中に存在する未反応のショ糖
を高率で回収することができる。
また、本発明によれば、抽出を実施するための装置、
操作に制限はなく、さらに、エステル化度の高いSEの製
造後の生成液に適用することもでき、またMIBKに溶解し
ているSEのエステル分布は処理前の状態とほとんど変化
しない。
また、析出したショ糖を含む固形物の過性も良い。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ジメチルスルホキシドを溶媒として、ショ
    糖と脂肪酸アルキルエステルとを反応させて、ショ糖脂
    肪酸エステルを生成させ、得られたショ糖脂肪酸エステ
    ル生成液を減圧下に処理して、ジメチルスルホキシドの
    含有量を10〜50重量%となる迄留去し、次いで得られた
    留去後の溶液に残存するジメチルスルホキシドの2〜12
    倍重量のメチルイソブチルケトンを添加し、0〜110℃
    の温度下に析出するショ糖を回収することを特徴とする
    ショ糖の回収方法。
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