JP2721571B2 - 溶接機のワイヤ送給性試験装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、消耗性電極としてワイヤを使用するアーク
溶接機において、ワイヤ送給が正常に行われるか否かを
調べるためのワイヤ送給性試験装置に関する。

〔従来の技術〕 従来のワイヤ送給性試験方法としては、一定時間イン
チング送給を行って溶接トーチのチップから押し出され
たワイヤの長さを測定し、そのばらつきを見て送給性の
良否を判定する方法があった。しかし、押し出されたワ
イヤの測長方法が自動化できないため、試験に手間がか
かることから溶接ロボット等の自動溶接機では採用され
ていなかった。また、送給不良の原因が溶接トーチ、ワ
イヤ送給装置、ワイヤ送給制御装置のどこにあるかを簡
易に判定できる試験方法がなかった。

〔発明が解決しようとする課題〕

ワイヤ送給性の良否は溶接結果に直接影響を及ぼすこ
とから、溶接不良を未然に防止するため、自動溶接機に
も適用できる簡易なワイヤ送給性試験装置が待望されて
いる。

本発明の目的は、この課題を解決することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明のワイヤ送給性試験装置は、溶接トーチの先端
部を受け止めるトーチ位置決め治具と、このトーチ位置
決め治具により溶接トーチを位置決めした状態で該溶接
トーチのチップから押し出された溶接ワイヤの先端が突
き当たるようにトーチ位置決め治具に対し所定の関係位
置に設定された受圧板を有し、チップ出口でのワイヤ送
給力を電気信号に変換して測定する力測定器とで構成さ
れている。

〔作用〕

消耗性電極としてワイヤを使用する溶接トーチの基本
的な機能は、第５図に示すように、ワイヤ送給装置（図
示せず）より送り込まれたワイヤ６をライナ３またはこ
れに類するワイヤガイドによりアーク発生位置に導き、
先端のチップ４で給電する（給電経路は図示せず）こと
にある。このような溶接トーチにおいて、トーチ入口で
のワイヤ送給力をＦとすると、送給力Ｆの一部はライナ
３とチップ４での摩擦熱およびワイヤなどの機械的歪を
生起するエネルギとして消費されるため、チップ４の出
口でのワイヤ送給力ｆはＦより小さくなる。したがって
Ｆおよびワイヤ径を一定としても、ワイヤ送給経路であ
るライナ３およびチップ４の内径、材質のほか表面状態
等の機械的条件によりｆは変化する。さらに、ワイヤ送
給装置の送給ローラのすべり、ワイヤ送給装置からトー
チ入口までのワイヤ送給経路でのエネルギ損失などによ
りトーチ入口でのワイヤ送給力ｆが変化すれば、それに
伴ってチップ出口でのワイヤ送給力ｆも変化する。そし
て、ｆが余り小さくなると、ワイヤの出方が円滑でなく
なるばかりか、給電時のスパークによりワイヤがチップ
に溶着するなどの不具合が発生する。また、測定時に、
ワイヤはチップ出口と受圧板の間でたわむ可能性がある
ので、その間の距離はできるだけ小さく、かつ一定とす
ることが望ましい。このため、本発明のワイヤ送給性試
験装置では、測定時に溶接トーチの先端部を受け止める
トーチ位置決め治具を設け、このトーチ位置決め治具に
対して所定の関係位置に力測定器の受圧板を設置し、イ
ンチング送給によりチップから押し出されたワイヤの先
端を受圧板に突き当て、チップ出口のワイヤ送給力ｆを
電気信号に変換して測定することにより、チップ出口と
受圧板との間でのワイヤのたわみを防止するとともに、
その測定結果からワイヤの送給性の良否を判定するよう
にした。

〔実施例〕

以下、本発明の実施例を第１図〜第４図により説明す
る。

自動溶接機に使用される溶接トーチの一例を第４図に
示す。第４図において、１は溶接トーチで、第５図のラ
イナ３と給電用応対を内蔵したトーチ本体２の先端にチ
ップ４とノズル５が装着されており、チッパ４からワイ
ヤ６が押し出され、ノズル５からはシールドガスが放出
される。この溶接トーチはロボットアーム等のトーチ支
持部７にクランパ８で固定し、トーチ入口をワイヤ送給
装置（図示せず）に接続して使用される。

第１図、第２図は本発明のワイヤ送給性試験装置を用
いて試験中の状態を示す。第１図、第２図において、９
はトーチ位置決め治具で、これには溶接トーチ１のノズ
ル５の先端部内径より小さく、チップ４の先端部外径よ
り大きな径の貫通穴9aが設けられている。力測定器10の
受圧板11は、貫通穴9aの後端に対面するように一端をト
ーチ位置決め治具９に固定されている。機械−電気変換
素子として受圧板11に装着された歪ゲージ12は測定回路
13のブリッジ14に接続され、ブリッジ14の出力端は増幅
器15を介して出力変換器16に接続されている。トーチ位
置決め治具９と受圧板11は１セットとして溶接トーチの
移動範囲内の特定位置に設置される。

試験方法としては、第１図に示すように、溶接トーチ
１のノズル５の先端をトーチ位置決め治具９の前面に当
て、チップ４の先端が貫通穴9aに入り込むようにトーチ
を位置決めする（溶接ロボット等に使用されるトーチ
は、ノズル内面へのスパッタの付着を少なくするためと
狭い所の溶接をするためにノズル先端よりチップ先端を
１〜2mm突出させてあるものが多い）。この位置決めに
よってチップ４と受圧板11間の距離ｌをできるだけ小さ
く、かつ一定とすることができる。

この状態で、ワイヤ６をインチング供給し、チップ４
から押し出されたワイヤ６の先端を受圧板11に突き当て
ると、チップ出口でのワイヤ送給力により受圧板11に生
じたたわみが歪ゲージ12で検出され、ブリッジ14の出力
が変化する。そして、この出力変化が増幅器15で増幅さ
れ出力変換器16に送られる。出力変換器16は、送られて
きた電気信号をチップ出口でのワイヤ送給力に変換して
記録または表示する。

ここで、トーチ入口でのワイヤ送給力として第３図に
示す力Ｆを加えたときのチップ出口でのワイヤ送給力ｆ
は第３図に示すａまたはｂの出力として測定される。す
なわち、ワイヤ送給経路でのエネルギ損失が小さい場合
には第３図のａのように出力が大きく、出力の立上りも
早いが、ワイヤ送給経路でのエネルギ損失が大きいい場
合には第３図のｂのように出力が小さく、かつ出力の立
上りが遅いので、この出力a,bの測定結果から送給性の
良否を判定することができる。

送給性の良否は、立上り後の出力の大きさで判断して
もよいし、測定時間ｔを一定（例えば0.1秒）としてそ
の間の出力の立上り勾配で判断してもよい。また、送給
ローラのスリップによるワイヤの変形や座屈を防ぐた
め、送給速度を遅くしても第３図に示す傾向は変わらな
い。

溶接ロボット等の自動溶接機では、溶接の１工程ごと
にこの送給性試験を行うことで、ワイヤ送給系の不具合
による溶接不良の発生を未然に防止できる。また、溶接
トーチに同じものを用い、ワイヤ送給装置、ワイヤ送給
制御装置を順次変更して試験を行うことにより、各部の
良否を判定することができる。

力測定器の機械−電気変換素子としては、歪ゲージ以
外の歪または変位量を検出する素子（圧電素子、差動ト
ランス等）を用いることもできる。また、ノズル５の外
径を基準にして、溶接トーチ１を貫通穴9aに対して位置
決めするようにしてもよいことは言うまでもない。

〔発明の効果〕

本発明によれば、チップ出口でのワイヤ送給力の測定
結果から容易にワイヤ送給性の良否を判定できるため、
溶接ロボット等の自動溶接機において、ライナ、チップ
等の消耗または他のワイヤ送給系の不具合を素早く認識
して溶接不良の発生を未然に防止することができるとと
もに、消耗部品の交換時期をアークを発生させなくても
知ることができるので、保守が容易になる。

また、溶接トーチ、ワイヤ送給装置、ワイヤ送給制御
装置等のワイヤ送給系の構成部品個々について良否を判
定できるので、その判定結果を基により送給性の良い溶
接装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明によるワイヤ送給性試験装置の試験状態
を一部断面で示した構成図、第２図は第１図のＡ矢視
図、第３図はトーチ入口でのワイヤ送給力Ｆとチップ出
口でのワイヤ送給力ｆの関係を示す波形図、第４図は自
動溶接機に使用される溶接トーチの一例を示す切断側面
図、第５図は第４図に示す溶接トーチの基本的機能の説
明図である。 １……溶接トーチ、４……チップ、６……ワイヤ、９…
…トーチ位置決め治具、10……力測定器、11……受圧
板、12……歪ゲージ、13……測定回路、16……出力変換
器。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】溶接トーチの先端部を受け止めるトーチ位
   置決め治具と、このトーチ位置決め治具により溶接トー
   チを位置決めした状態で該溶接トーチのチップから押し
   出された溶接ワイヤの先端が突き当たるようにトーチ位
   置決め治具に対し所定の関係位置に設置された受圧板を
   有し、チップ出口でのワイヤ送給力を電気信号に変換し
   て測定する力測定機とを設けたことを特徴とする溶接機
   のワイヤ送給性試験装置。