JP2717511B2 - 苦味含有物質の被覆組成物 - Google Patents
苦味含有物質の被覆組成物Info
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Description
成物に関する。特に本発明は、食品もしくはその材料、
あるいは薬物等などで苦味を有するものものを苦味低減
化剤で被覆してなる苦味含有物質の被覆組成物に関す
る。
くあるが、特に医薬品においては、その殆どが苦味物質
を有しており、経口摂取に際して苦痛を伴うものであ
る。従って、苦味の低減は製剤上の大きな課題となって
いる。現在行われている製剤における苦味低減化法とし
ては、例えば、甘味剤及び香料剤を添加する方法(特開
平2−56416号公報:アスパルテームを用いる方
法)、マイクロカプセル化、胃溶性コーティング剤によ
る粉末コーティング剤を用いる方法、薬物を化学修飾す
る方法、包接化合物を添加する方法(特開平3−236
316号公報)など様々な方法が挙げられる。しかし、
いずれの方法でも完全、苦味を充分に抑制することがむ
ずかしく、また限られた薬物にしか用いることができな
いなどの欠点を有している。さらに上記の方法の他に、
苦味を有する薬物に、油脂成分を添加する方法、特にレ
シチン(ホスファチジルコリン)またはケファリンの単
独又は混合物を添加する方法(特公昭55−8966号
公報)やレシチン(ホスファチジルコリン)を添加する
方法(特開昭62−265234号公報)も提案されて
いる。しかしながら、本発明者の検討によると、上記の
ような方法でも依然として充分な苦味低減化には至って
いない。特に、幼児及び高齢者においては、薬剤の服用
に際して固形製剤での服用が困難な場合が多く、そのよ
うな場合には、シロップ剤等の液状形態での服用が利用
される。しかし、シロップ剤などの液状にある薬物の苦
味を除去する有効な方法がないのが現状である。
るアミノ酸、ペプチドの有する苦味や、果汁中に存在す
る苦味、添加フレーバーに由来する苦味などの様々な苦
味物質が含まれることが多く、これらの苦味物質の存在
は、一般に食品の品質を低下させる。食品中における苦
味を除去する方法としては、例えば、吸着体を用いる方
法(特開昭55−108254号公報)、包接化合物を
用いる方法(特開昭61−40260号公報)、及び甘
味剤を添加する方法(特開昭60−9774号公報)な
どが知られている。しかしながら、これらの方法では苦
味を充分に抑えられなかったり、食品の味の質を変化さ
せてしまうなどの問題点は多い。
を有する食品、あるいは薬物の苦味が低減された新規な
苦味含有物質の被覆組成物を提供することである。
質は疎水基を有し、該疎水基の作用によって、舌の味細
胞の味受容膜上に存在する脂質−脂質間及び脂質−蛋白
質間へ吸着する傾向があり、その物質を摂取した人は、
この吸着作用を介して苦味を感じる。そして、強い苦味
を呈する物質ほど脂質との親和性が強いことも、リン脂
質で構成されるリポソームを用いた研究において確かめ
られている。すなわち、蛍光色素を取り込ませたリポソ
ームへ、苦味を有する物質を添加すると、苦味を有する
物質がリポソーム膜に吸着し、これによって蛍光色素の
放出が起る。そして、蛍光色素の放出は、強い苦味を呈
する物質ほど大きいことが確認されている。すなわち、
苦味物質がリン脂質膜に吸着し易いということを示して
いる。また、リン脂質の種類によっては、味細胞の苦味
受容膜へ直接吸着することにより苦味受容阻害を引き起
こすことも確かめられている。
する特性を利用し、味覚器にて行われる苦味受容機構並
びに、苦味物質と脂質との相互作用に着目して、鋭意研
究を行った。そして、その結果、酸性リン脂質及びリゾ
酸性リン脂質脂質が苦味低減に非常に有効であることを
見い出した。このような酸性リン脂質あるいはそのリゾ
体が独立して強い苦味低減化作用を有することは従来全
く知られていない。
を被覆する酸性リン脂質もしくはそのリゾ体を有効成分
とする苦味低減化剤よりなる苦味含有物質の被覆組成物
にある。
い。 (1)酸性リン脂質及びそのリゾ体が、ホスファチジル
セリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトー
ル、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、及
びこれらのリゾ体からなる群より選ばれるもの。 (2)酸性リン脂質もしくはそのリゾ体が脂質混合物中
に存在し、その脂質混合物中の中性脂質の存在量が、2
5重量%以下(特に20重量%以下)である。
脂質混合物中に存在し、脂質混合物中の酸性リン脂質も
しくはそのリゾ体の含有量が60重量%以上(特に70
重量%以上)である。 (4)酸性リン脂質もしくはそのリゾ体がホスファチジ
ン酸もしくはリゾホスファチジン酸であり、ホスファチ
ジン酸及び/又はリゾホスファチジン酸が脂質混合物中
に5重量%以上(更に好ましくは20重量%以上、特に
好ましくは50重量%以上)存在している。 (5)酸性リン脂質もしくはそのリゾ体が脂質混合物中
に存在し、かつその脂質混合物中の中性リン脂質の存在
量が該リン脂質の存在量の2倍以下(更に好ましくは1
/2以下、特に1/5以下、最も好ましくは1/50以
下)である。
化剤の被覆量がその有効成分として該食品の全量に対し
て0.1〜20重量%(更に好ましくは0.5〜15重
量%、特に好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは
1〜5重量%)である。
減化剤の被覆量がその有効成分として該医薬品の全量に
対して0.05〜50重量%(更に好ましくは0.1〜
30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%、最も
好ましくは1〜10重量%)である。
物について説明する。まず、本発明の苦味含有物質の被
覆組成物(以下単に、本発明の被覆組成物と称する場合
がある)に用いられる苦味低減化剤について説明する。
本発明に用いる苦味低減化剤は、酸性リン脂質もしくは
そのリゾ体を有効成分とするものである。酸性リン脂質
とは、生理的食塩水(pH7.0)の条件下にて、総電
荷が負に帯電するものを言う。酸性リン脂質としては、
例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホ
スファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロー
ル、及びカルジオリピンを挙げることができる。またそ
のリゾ体(リゾ酸性リン脂質)としては、例えば、リゾ
ホスファチジルセリン、リゾホスファチジン酸、リゾホ
スファチジルイノシトール、及びリゾホスファチジルグ
リセロールを挙げることができる。
質あるいはそのリゾ体は、大豆、卵黄、小麦胚芽を初め
として、各種の動物臓器及び各種植物組織から抽出、分
離することにより得ることができる。利用できる抽出方
法としては、極性の違いを利用した有機溶媒による抽出
を挙げることができる。また分離方法としては、シリカ
ゲルカラムへ吸着させ、次いで有機溶媒により溶出させ
る方法を挙げることができる。酸性リン脂質またはその
リゾ体を得るためには、抽出、分離、精製により分離さ
れたリン脂質類縁体を、化学修飾及び/又は酵素処理に
より改質する方法を利用することもできる。その具体的
な方法としては、油糧種子(特開平2−312552号
公報)、キャベツ、米ぬか等の植物由来のホスホリパー
ゼD、あるいは微生物(特開平2−312551号公
報)が産出するホスホリパーゼDを用い、中性リン脂質
であるホスファチジルコリンを加水分解し、ホスファチ
ジン酸を得る方法や、ホスホリパーゼDを用いてリン酸
基のエステル交換を行い、ホスファチジルコリンをホス
ファチジルグリセロール(特開平3−22991号公
報)あるいはホスファチジルセリン等へと変換する方法
が挙げられる。
合成した酸性リン脂質またはそのリゾ体を用いることも
できる。具体的な合成法としては、ジグリセリドのリン
酸エステル化、モノグリセリドのリン酸エステル化、グ
リセロリン酸の脂肪酸エステル化、モノグリセリドのリ
ン酸エステル化、グリセロリン酸の脂肪酸エステル化を
挙げることができる。上記のような化学合成法により得
られる酸性リン脂質およびそのリゾ体の例としては、モ
ノアシルグリセロモノホスフェート、モノアシルグリセ
ロジホスフェート、ジアシルグリセロモノフォスフェー
ト、ビスホスファチジン酸、ビスホスファチジルモノホ
スファチジン酸、ビスホスファチジルリゾホスファチジ
ン酸等を挙げることができる。また、水素添加酸性リン
脂質、水素添加リゾ酸性リン脂質も用いることができ
る。
性リン脂質あるいはそのリゾ体は、上述のように天然物
から、あるいは化学合成によって得られる。従って、酸
性リン脂質あるいはそのリゾ体は脂質混合物として得ら
れ、脂質混合物として使用されることが多い。その場合
において、より高い苦味低減化効果を得るためには、酸
性リン脂質またはそのリゾ体の含有量が多いことが好ま
しく、具体的には、脂質混合物中に20重量%以上含ま
れていることが好ましく、40重量%以上含まれててい
ることが更に好ましい。特には60重量%以上、そして
70重量%以上含まれていることが好ましい。
でも、特にホスファチジン酸及びリゾホスファチジン酸
が強い苦味低減化作用を有することが確認されており、
従って本発明の苦味低減化剤では、ホスファチジン酸ま
たはリゾホスファチジン酸を用いることが好ましく、特
にホスファチジン酸を用いることが好ましい。ホスファ
チジン酸またはリゾホスファチジン酸は、脂質混合物中
に5重量%以上存在していることが好ましく、更に好ま
しくは20重量%以上、特に好ましくは50重量%以上
である。
るいはそのリゾ体の他に、他の脂質成分が含まれてく
る。酸性リン脂質およびそのリゾ体以外の脂質成分とし
ては、例えば、中性リン脂質(例、ホスファチジルコリ
ン、ホスファチジルエタノールアミン、およびこれらの
リゾ体)、中性脂質(例、トリグリセリド、ジグリセリ
ド、モノグリセリド)、脂肪酸、ステロール脂質、そし
て糖脂質等を挙げることができる。
脂質や中性リン脂質の存在量を低減させることによって
苦味低減化効果を更に高められることが判明した。従っ
て、本発明の苦味低減化剤として脂質混合物を用いる場
合には、その脂質混合物中の中性脂質の存在量は30重
量%以下であることが好ましく、更に好ましくは25重
量%以下、特に20重量%以下である。また、脂質混合
物中の中性リン脂質の存在量は、50重量%以下である
ことが好ましく、更に好ましくは30重量%以下、特に
10重量%以下である。また、脂質混合物中の中性リン
脂質と酸性リン脂質またはそのリゾ体との比率は、2倍
(中性リン脂質/酸性リン脂質及びそのリゾ体)以下で
あることが好ましく、更に好ましくは1/2以下、特に
1/5以下、最も好ましくは1/50以下である。な
お、脂質混合物中の酸性リン脂質及びそのリゾ体の存在
量を高め、かつ中性脂質の存在量を低減させるために
は、これらの成分を含む脂質混合物を酵素分解したり、
溶剤分画する処理をした後、アセトン処理、膜分離など
の処理を行なう方法が利用できる。
は、その用いる条件に応じて公知の調製法に従い、粉末
状、粒状、トローチ状等の固形状、あるいはペースト状
や、シロップ状等の液状とすることができる。なお、本
発明で被覆のために用いる苦味低減化剤には、酸化を防
止し、安定化させるために抗酸化剤を添加しておくこと
が好ましい。好ましい抗酸化剤としては、例えば、トコ
フェロール、ポリフェノール類を挙げることができる。
は、食品あるいは医薬品であることが好ましい。すなわ
ち、本発明では、苦味を有する物質が、苦味を有する食
品(食品材料、飲料を含む)、あるいは苦味を有する薬
物であることが好ましい。
は、その表面に苦味低減化剤を被覆できるように固形状
(粉末、顆粒などを含む)があれば特に制限はない。こ
のような食品としては、例えば、漬物類、湯葉等の大豆
食品、魚肉、すり身及び魚卵等の水産加工食品、ナッツ
類、納豆等の発酵商品、肉類及び食肉加工品、チーズ等
の乳製品類、チョコレートなどの菓子類、フレーバー入
りキャンディー類、煙草、固形の健康食品等を挙げるこ
とができる。また上記以外に、果汁、野菜汁等の液状を
粉末等の固形状に加工したものなどの被覆も可能であ
る。
の食品の表面全体に被覆されていることが好ましいが、
必ずしも全面が被覆されている必要はない。特に食品に
おいては、その形状が画一的なものばかりでないため、
その表面の少なくとも一部が苦味低減化剤で被覆されて
いれば、本発明の効果が得られる。食品、医薬品等への
苦味低減化剤の被覆状態は、例えば、その表面に付着、
吸着している状態でも良い。苦味を有する食品への被覆
は、通常は、苦味低減化剤を含む分散液をスプレーなど
で食品に吹きつける方法、例えばパン・コーティング法
が利用される。また、対象とする食品あるいは医薬品に
よっては該分散液中に食品を浸漬する方法などを利用す
ることもできる。なお、被覆後、場合によっては乾燥処
理を行っても良い。
には、上記苦味低減化剤の被覆量はその有効成分(酸性
リン脂質もしくはそのリゾ体)として、該食品の全量に
対して0.05〜30重量%であることが好ましく、よ
り好ましくは、0.1〜20重量%、更に好ましくは
0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%、
最も好ましくは1〜5重量%である。被覆に際しては、
食品に併用できる水溶性高分子(例、カルボキシメチル
セルロース、ゼラチンなど)などのバインダあるいは他
の添加剤を併用することもできる。
としては特に限定はなく、従来から医薬品として用いら
れている苦味を呈する薬物を被覆対象とすることができ
る。特に、塩基性薬物(例えば、ストリキネーネ、キニ
ーネ、パパベリン、ベルベリン、プロメタジン、ブルシ
ン、プロプラノロール、クロルプロマジンなど)の酸付
加塩の被覆に有効である。塩基性薬物酸付加塩の具体例
としては、塩基性薬物の塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸
塩、クエン酸塩、炭酸塩等の鉱酸塩、及び/又は有機酸
塩に用いることができる。
ば、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、錠剤、トロー
チ剤、及びドライシロップ等の固形製剤を挙げることが
できる。本発明においては、顆粒剤、丸剤、散剤、ある
いは錠剤であることが好ましい。
知の方法が利用できる。従って、製剤化に際しては、従
来から使用されている添加剤を一種及び/又は二種以上
組み合わせて使用できる。上記添加剤としては、例え
ば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、コー
ティング剤、矯味剤、マスク化剤、香料、及び抗酸化剤
を挙げることができる。また、製剤工程で用いる造粒機
としては、プラネタリーミキサー、攪拌造粒機、高速混
合造粒機、押し出し造粒機、流動層造粒機、遠心転動流
動造粒機、ローラーコンパクター等が挙げられる。
方法は、従来から製剤の被覆において利用されている方
法が用いられる。例えば、流動層コーティング法、パン
・コーティング法などを挙げることができる。なお、苦
味を有する薬物の細粒の表面を苦味低減化剤で被覆した
後、得られた造粒物を用いて更に通常の製剤化法に従い
顆粒剤等を調製することもできる。被覆に際しては、医
薬品に用いることのできる水溶性高分子(例、カルボキ
シメチルセルロース、ゼラチンなど)などのバインダあ
るいは他の添加剤を併用することもできる。
合に、上記苦味低減化剤の被覆量はその有効成分(酸性
リン脂質もしくはそのリゾ体)として、医薬品の全量に
対して0.01〜60重量%であることが好ましく、よ
り好ましくは0.05〜50重量%、更に好ましくは
0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量
%、最も好ましくは1〜10重量%ある。
有効成分である酸性リン脂質もしくはそのリゾ体が、苦
味を呈する薬効成分である主剤1部に対して0.01部
〜1000部(更に好ましくは、0.1部〜100部)
(重量比)の含有量となるように添加されていることが
好ましい。なお、苦味を有する薬効成分が二種以上の場
合には、その総重量を1部とする。
を更に具体的に説明する。なお、以下において、「部」
は「重量部」を、「%」は「重量%」をそれぞれ示す。
む苦味低減化剤試料の調製)攪拌装置を備えた500m
L容量の4口フラスコに、市販脱脂レシチン(商品名:
SLPW−SP、ツルーレシチン工業(株)製)20g
をとり、0.1Mトリス・塩酸緩衝液(pH6〜8)1
25mLを加え、これに更にヘキサン/酢酸エチル(2
/1、V/V)340mL加え、攪拌した。得られた混
合物に更に塩化カルシウム水溶液(1M濃度)150m
Lを加え、次いで微生物起源のホスホリパーゼD(Stre
ptomyces Chromofuscus 由来、旭化成工業(株)製)を
15ユニット含む水溶液150mLを加えたのち、混合
物の温度を30℃に保ちながら14時間攪拌を続けた。
反応後、反応生成物を静置して溶剤層を分離した。溶剤
層は減圧下にて溶剤を留去した。残渣として得られた脂
質混合物成分の分析は、薄層シリカゲルプレート(Kies
elgel:メルク社製)を用いて行った。検出は、硫酸発色
を利用した。結果を表1に示す。
体で100部)の被覆顆粒剤を転動造粒法により製造し
た。 組成I 塩酸キニーネ(主薬成分) 1 部 コーンスターチ 35 部 ラクトース 54.5部 HPC 3.5部 (ヒドロキシプロピルセルロース) 組成II 試料(苦味低減化剤) 1部 HPC 5部 (ヒドロキシプロピルセルロース)
ピードミキサーを用い、核粒子造粒を行った。得られた
造粒物を乾燥し、分級した後、粒子表面を上記配合II
の水溶液を流動層スプレーによりコーティングした。こ
のようにして組成Iの粒子の表面に苦味低減化剤により
被覆された顆粒剤を得た。また対照として、上記組成I
I中で苦味低減化剤試料を加えない組成(HPCを6部
にした配合)の顆粒剤、及び比較例として、上記組成I
I中で苦味低減化剤試料に代えてレシチン(ホスファチ
ジルコリン)を用いた組成の顆粒剤を同様な方法でそれ
ぞれ調製した。苦味の強度は、正常な味覚を有する健常
人男女10〜15名を選んで被検者とし、得られた各顆
粒剤0.5gを口に含み、30秒後の苦味の強度を官能
評価する方法により評価した。その評価は下記の等価濃
度試験法を利用した。その、結果を表2に示す。
予め苦味の強さが等間隔になるように基準液を作成して
おき、この基準液と上記で作成した液剤とを被験者の官
能評価により比較し、相当する苦味の強度をその平均値
で表す方法である。ここでは、基準液として、代表的な
苦味物質である硫酸キニーネにて苦味の強さを10段階
に調整したものを用いた。なお、味覚などの感覚強度
は、濃度の対数に比例するため、濃度間隔は一定ではな
いが、感じる苦味の強さは等間隔である。基準液を以下
に示す。 ──────────────────────────────────── 硫酸キニーネ 硫酸キニーネ 苦味強度 濃度(g/100mL ) 苦味強度 濃度(g/100mL ) ──────────────────────────────────── 1 0.00022 6 0.0037 2 0.00048 7 0.0058 3 0.0009 8 0.0094 4 0.0015 9 0.015 5 0.0023 10 0.0245 ────────────────────────────────────
で被覆することによって苦味を顕著に低減できることが
わかる。
組成Iと組成II(被覆剤)を下記のように変えた(組
成は全体で100部)以外は、実施例1と同様にして被
覆顆粒剤を調製した。 組成I 塩酸キニーネ(主薬成分) 10 部 コーンスターチ 27 部 ラクトース 44.5部 HPC 3.5部 (ヒドロキシプロピルセルロース) 組成II 試料(苦味低減化剤) 10部 HPC 5部 (ヒドロキシプロピルセルロース) また対照として、上記組成II中の苦味低減化剤試料を
加えない組成(HPCを15部にした組成)の被覆顆粒
剤、及び比較例として、上記組成II中の苦味低減化剤
試料に代えてレシチン(ホスファチジルコリン)を用い
た組成の被覆顆粒剤を同様な方法でそれぞれ調製した。
得られた各被覆顆粒剤の苦味の強度を実施例1と同様な
方法を利用して評価した。その結果を表3に示す。
苦味低減化剤で被覆することによって、苦味を顕著に低
減できることがわかる。
塩酸キニーネを下記の苦味を有する薬物に代えて同様な
方法で本発明の苦味低減化剤試料で被覆された顆粒剤を
調製し、同様に苦味の強度を評価した。その結果、すべ
ての顆粒剤について同様に苦味が低減されることが確認
された。 使用した薬物:プロメタジン、クロルプロマジン、パパ
ベリン、プロプラノロール、ベルベリン
解毒湯エキス末を選び、これを20%配合した漢方エキ
ス顆粒を乾式造粒法にして調製した。別に、前記苦味低
減化剤試料5部及びHPC5部を含む水溶液を調製し、
これを上記の顆粒の表面に被覆した。その結果得られた
顆粒は殆ど苦味を感じないことが確認された。
位:部)の錠剤を下記の製造法により製造した。 (錠剤の調製法)組成Iで直接粉末圧縮法により製剤化
(250mg/錠)した。その後、得られた錠剤の表面
に、組成IIの被覆液をパン・コーティング法によりコ
ーティングした。このようにして本発明の苦味低減化剤
試料が表面に被覆された本発明に従う錠剤C及びD、そ
してこれらに対応する比較用の顆粒剤C−1、D−1を
それぞれ得た。得られた各錠剤1錠を口に含み、30秒
間舌上で転動させながら溶解し、そのときの苦味の強度
を実施例1と同様な方法で評価した。結果を表4に示
す。
剤)をそれぞれ10%分散して調製したものを使用し
た。
味低減化剤で被覆することにより、苦味を顕著に低減で
きることがわかる。
塩酸キニーネを下記の苦味を有する薬物に代えて上記と
同様な方法で本発明の苦味低減化剤試料で被覆された錠
剤を調製し、同様に苦味の強度を評価した。その結果、
すべての被覆錠剤について苦味が低減することが確認さ
れた。 使用した薬物:プロメタジン、クロルプロマジン、パパ
ベリン、プロプラノロール、ベルベリン
キニーネ粉末を用い、塩酸キニーネ1部に、前記の試料
(苦味低減化剤)1部及びHPC(ヒドロキシプロピル
セルロース)1部からなるコーティング液を流動層スプ
レーにより被覆し、造粒した。得られた本発明の苦味低
減化剤試料で表面被覆された塩酸キニーネ細粒を用い、
下記の組成(部)で散剤、顆粒剤、及び錠剤をそれぞれ
調製した。散剤は、V型混合機を用いて調製し、顆粒剤
は、流動層造粒法を利用して調製し、そして錠剤は、直
接粉末圧縮法を利用して調製した。
剤は、すべて殆ど苦味が感じられないことが確認され
た。
発明の苦味低減化剤試料5%水分散液に30分間浸漬
し、「数の子」の表面に試料を吸着させた。得られた
「数の子」を食べたところ、その特有な苦味は適度に低
減されており、美味であった。
る「ワラビ」を常法によりアク抜きした後、本発明の苦
味低減化剤試料10%水分散液に30分間浸漬して「ワ
ラビ」の表面に試料を吸着させた。得られた「ワラビ」
を食べたところ、その特有な苦味は適度に抑制されてい
て「ワラビ」の本来の風味が引き立ち、美味であった。
苦味抑制作用に優れた酸性リン脂質もしくはそのリゾ体
で被覆されているために、レシチンなどの従来の苦味抑
制剤を用いた場合に比べて苦味がより効果的に低減でき
る。従って、強い苦味物質である薬物においても苦味を
抑制することができ、非常に服用し易い医薬品が提供で
きる。また食品においては、苦味が除かれるため、他の
うま味が引き立ち、従って、より美味な食品として利用
することができる。
Claims (7)
- 【請求項1】 苦味を有する物質、そしてそれを被覆す
る酸性リン脂質もしくはそのリゾ体を有効成分とする苦
味低減化剤よりなる苦味含有物質の被覆組成物。 - 【請求項2】 酸性リン脂質もしくはそのリゾ体が脂質
混合物中に存在し、かつ該脂質混合物中の中性脂質の存
在量が30重量%以下である請求項1に記載の苦味含有
物質の被覆組成物。 - 【請求項3】 リン脂質もしくはそのリゾ体が脂質混合
物中に存在し、かつ該脂質混合物中のリン脂質もしくは
そのリゾ体の含有量が20重量%以上である請求項1に
記載の苦味含有物質の被覆組成物。 - 【請求項4】 苦味低減化剤が酸性リン脂質とそのリゾ
体の両方を含む請求項1に記載の苦味含有物質の被覆組
成物。 - 【請求項5】 リン脂質もしくはそのリゾ体が脂質混合
物中に存在し、かつ該脂質混合物中の中性リン脂質の存
在量がリン脂質もしくはそのリゾ体の含有量の2倍以下
である請求項1に記載の苦味含有物質の被覆組成物。 - 【請求項6】 リン脂質とそのリゾ体とがホスファチジ
ン酸とリゾホスファチジン酸とである請求項1乃至5の
いずれかの項に記載の苦味含有物質の被覆組成物。 - 【請求項7】 苦味含有物質が食品もしくは医薬品であ
る請求項1乃至6のいずれかの項に記載の苦味含有物質
の被覆組成物。
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