JP2717247B2 - 嵩高加工糸およびその製造方法 - Google Patents
嵩高加工糸およびその製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、PTFE系繊維からなる嵩高加工糸およびその
製造方法に関するものである。 [従来の技術] ポリテトラフロロエチレン系樹脂は産業用素材の離型
材、易滑材などの用途で、しかも高価であるために、耐
久性、耐熱性などが要求される高価な商品に主として適
用されていた。 しかし、かかるPTFE系繊維から嵩高加工糸を製造する
考えはなく、かかる嵩高加工糸の出現が待たれていた。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明は、ポリテトラフロロエチレン系繊維の製造方
法を見直し、さらに検討した結果、製造工程の一部を改
善することにより、簡単に加工糸が得られる事実を究明
し本発明に到達したものである。 本発明によれば、表面面積の高い糸条を容易に提供で
きる。したがって、従来過機能に制限のあった過材
料の性能を大幅に改善することができ、さらには、かか
る嵩高加工糸を併用することにより、易滑性、耐摩擦帯
電性の向上したシートを提供することができたものであ
る。 本発明は、かかる嵩高加工糸を簡単にかつ安定に製造
する方法をも提供するものである。 [問題点を解決するための手段] 本発明は、かかる問題点を解決するために次のような
手段を採用する。すなわち、本発明の嵩高加工糸は、実
質的にポリテトラフロロエチレン系繊維束で構成された
糸条であって、該繊維束が部分的に融着されており、非
融着部は開繊し、かつ、絡合されていることを特徴とす
るものであり、また、かかる嵩高加工糸の製造方法は、
90モル%以上がテトラフロロエチレンであるポリテトラ
フロロエチレン系ポリマのディスパージョンとビスコー
スとの混合液を凝固浴中に吐出して凝固した後、この凝
固繊維束状物を焼成、延伸して得た融着繊維束を、複数
束集合させて、部分的に開繊し、かつ、絡合し、開繊、
絡合しない部分を融着部分として残したことを特徴とす
るものである。 本発明においてポリテトラフロロエチレン系(以下PT
FE系という)とは、テトラフロロエチレンのホモポリマ
ーまたは全体の90モル%以上、好ましくは95モル%以上
がテトラフロロエチレンであるコポリマーを意味する。
かかるテトラフロロエチレンに共重合可能な単量体とし
ては、トリフロロエチレン、トリフロロクロロエチレ
ン、テトラフロロプロピレン、ヘキサフロロプロピレン
などのフッ化ビニル化合物やさらにプロピレン、エチレ
ン、イソブチレン、スチレン、アクリロニトリルなどの
ビニル化合物があげられるが、これらに限定する必要は
ない。 かかるモノマーの中でも、フッ化ビニル系化合物、そ
れも、弗素含有量の多い化合物であることが繊維特性の
上から好ましい。 本発明においてPTFE系繊維とは湿式紡糸により製造さ
れる焼結体繊維である。 平均繊度が10d以下、好ましくは3.5d以下、さらに好
ましくは2.5d以下の繊維であり、すなわち、細ければ細
い程、それだけ嵩高加工性は高く、特に2.0d以下、さら
に1.0d以下であるのが好ましい。 本発明のPTFE系繊維において、好ましい繊維は、小角
X線散乱法により2θ=1゜の小角X線散乱強度を測定
した時の値が100cps以下、好ましくは80cps以下、特に
好ましくは50cps以下と小さい上に、広角X線回析法
(カウンター法)による(110)面の結晶サイズが80Å
以上、好ましくは95Å以上、特に好ましくは100Å以上
の厚さを有するもので、強力や寸法安定性に優れている
特徴を有する。 かかるPTFE系繊維は強度1.0g/d以上、好ましくは1.5g
/d以上、伸度30%以下、好ましくは20%以下、乾熱収縮
率(230℃×30′)20%以下、好ましくは15%以下とい
うバランス特性を有するものが好ましい。 なお、小角X線散乱強度は小角X線散乱法(小角X線
回析法)により測定される。 また、(110)面の結晶サイズは広角X線回析法(カ
ウンター法)により測定される。 本発明は、実質的にポリテトラフロロエチレン系繊維
束で構成された糸条であって、該繊維が部分的に融着し
ているものである。すなわち、実質的とは略100%のPTF
E系繊維であることを意味し、部分的に融着していると
いう意味は開繊が不完全であることを意味するものであ
る。この不完全な開繊が本発明において重要な要件であ
り、これによって、嵩高加工性を大幅に改善することが
できたものである。 かかる嵩高加工糸は、糸の状態またはシート状物とし
た後、アルカリ金属処理や低温プラズマ処理などを施し
て、接着改善処理を施すこともできる。 かかる嵩高加工糸は次のようにして製造される。 すなわち、紡糸原液としてビスコースとPTFEディスパ
ージョンとの混合液を用い、これを凝固浴中に吐出し、
凝固した後、水洗精練する。精練後アルカリ水に浸漬し
て絞った後、得られたテープ状繊維束を乾燥するか、そ
のまま焼成工程に導き、300〜450℃で焼成すると共に、
少なくとも5〜10倍延伸する。次いでこの焼成繊維は30
0〜340℃の高温雰囲気中で酸化熟成する方法でテープ状
焼結体繊維束を製造する。 本発明の製法上の特徴としては、紡糸原液から洗浄、
アルカリ処理などの各工程で使用する水や薬剤は全て純
度の高い、不純物(異物)の少ない系が採用されている
ことがあげられる。かかる系を採用することによって、
初めて単糸切れや毛羽立ちを制御し、さらに結晶のよく
成長したボイドの少ない繊維を提供し得たものである。
さらに、工程中で生成される粒子はできるだけ制御し、
大きな異物は排除するように配慮すべきである。 すなわち、かかる製糸工程で使用される水は、いずれ
の工程においても、イオン交換水または蒸溜水が用いら
れる。 上記PTFEディスパージョンは、イオン交換水にPTFEを
20〜75%、好ましくは60%前後配合分散させたものであ
る。分散剤としては、非イオン界面活性剤またはアニオ
ン界面活性剤が使用されるが、特に非イオン界面活性剤
が選択される。配合量はPTFE量に対して3〜10%であ
る。かかる分散剤としては、たとえばポリオキシアルキ
レングリコール系非イオン界面活性剤、アルキルアリル
ポリエーテルアルコール(“トライトンX−100")など
がある。 ディスパージョンの大きさは0.005〜1μ程度である
が、小さい方が紡糸性や繊維特性がよく、好ましくは平
均粒子径を0.6μ以下に調整する。 ビスコースは、セルロース3〜15%、好ましくは5〜
10%、苛性ソーダ2〜12%、好ましくは6〜9%、二硫
化炭素27〜32%、好ましくは28〜30%であり、その重合
度は200〜600、好ましくは300〜400の組成物が選択され
る。 かかるPTFEディスパージョンとビスコースとを混合し
て紡糸原液とするが、この際、紡糸原液の混合ポリマー
中のPTFEは60〜98%、好ましくは70〜96%、特に好まし
くは87〜93%の範囲の組成に調整されるが、PTFE濃度が
高い方が繊維特性もよくなる。すなわち、紡糸原液中の
セルロース濃度は5〜20%、好ましくは10〜15%程度で
ある。 この原液の粘度は20℃で30〜190pois程度であるが、
好ましくは50〜140poisに調整する。混合原液のディス
パージョン分散性を安定化させるために、さらに非イオ
ン界面活性剤やグリセリン、ヘキサメタリン酸塩などの
分散剤を添加することができる。この分散剤の添加量は
PTFEの量に対して3〜10%程度である。 かかる原液に、粒径が100μ以下、好ましくは50μ以
下の二硫化モリブデンを0.5〜30%、好ましくは3〜20
%混合すると、分繊性ならびに強力剛性、耐摩耗性が向
上する。 かかる原液は脱泡されるが、この時に水分が蒸発し、
PTFE粒子が凝集する問題がある。この凝集粒子は通常20
0μ以上にもなるので、本発明ではかかる凝集粒子を形
成させないか成長させないように制御することが重要で
あり、本発明では特に10℃以下の低温真空混合方式が水
分の蒸発が少ないことから好ましく採用される。真空度
は約10Torr程度である。さらに脱泡後原液を過するこ
とも好ましい。 かかる紡糸原液は次に無機鉱酸または/および無機鉱
酸塩で構成される凝固浴水溶液中に紡出される。かかる
無機鉱酸としては、硫酸が好ましいが、硝酸、塩酸、リ
ン酸なども適用され得る。無機鉱酸の含有量は0.1〜50
%、好ましくは0.5〜35%、さらには0.5〜15%である。 また必要により併用する無機鉱酸塩としては、硫酸ア
ンモン、硫酸亜鉛、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩があげ
られるが、好ましくは硫酸ナトリウムが選択される。か
かる無機鉱酸塩は30%以下程度添加配合される。 かかる凝固浴中に前記紡糸原液が押し出されて、マル
チフィラメントとして紡出、凝固する。この時の紡出速
度はたとえば約20〜50m/分以下でゆっくり紡糸する。 この凝固繊維はそのまま40〜90℃、好ましくは80℃近
辺の温水下で十分に精練される。この精練温度は空洞の
発生にも関連があるので、制御を的確にすることであ
る。しかし異形断面糸を製造する場合にはこの精練浴温
度を60℃以下の低温に維持するのが形態維持性の上から
好ましい。この精練工程で金属塩を十分に脱落させてお
くことが、繊維特性の上から好ましく、よい影響を及ぼ
す。 精練された繊維は、次いでアルカリ洗浄してから絞
る。 かかるアルカリ処理浴としては、アルカリ金属または
アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩から選
ばれた化合物の水溶液を用いる。該化合物の濃度は繊維
重量に対して0.001〜2%程度(0.0005〜0.05mol/l)で
ある。かかる金属は焼成をスムーズに進行させる作用を
有するので、繊維に(0.003〜0.32%程度)付着させて
おく。 アルカリ処理後の繊維束は焼成段階でテープ状に融着
される。本発明はその状態で最終の交絡段階まで、酸
化、延伸などの処理が施される点に特徴を有する。 すなわち、アルカリ処理後の繊維束は300〜450℃、好
ましくは320〜400℃で焼成されてテープ状に融着する。
この場合、焼成と延伸を別々にしてもよい、同時に延伸
してもよい。延伸は少なくとも5〜10倍に延伸する。こ
の時の焼成はセルロース炭化物が3.0重量%以下になる
まで炭化する条件を選択するのが好ましい。得られるテ
ープ状繊維束はセルロース炭化物を含有しているため
に、褐色ないしは黒色を呈している。 かくして得られるテープ状繊維束は、さらに300℃以
上、好ましくは310〜340℃で、少なくとも50時間、好ま
しくは60時間以上空気酸化するとともに熟成することに
よつ白色化される。 得られたテープ状焼結体繊維束、すなわち融着繊維
を、開繊、交絡処理する。ここで開繊、交絡とは、開繊
するとともに交絡させることであり、最終的な糸条の形
として、交絡されていることが、表面面積が高く、過機
能の大幅に改善された糸条を提供する上で重要である。
かかる交絡処理としては、たとえば空気噴射交絡処理、
ギヤー擦過交絡処理などがあげられる。 たとえば、空気噴射交絡処理の場合は、該テープ状焼
結体繊維束を1本または2本以上エァーノズル内に導い
て圧空を吹き付けて開繊し、ループを形成する方法であ
る。押し込み交絡処理の場合は、連続的に該テープ状焼
結体繊維束を1本または2本以上二つのギヤーの間に導
入して擦過することにより、開繊する方法である。 本発明においては、空気噴射交絡処理の方が交絡性の
高い加工糸を提供する。 次に、実施例で本発明をさらに詳しく説明する。 [実施例] 実施例1 分散剤としてアルキルアリルポリエーテルアルコール
を用いてイオン交換水に分散されたPTFE系樹脂を60%含
有するディスパージョンを114部と、ビスコース(セル
ロース8.9%と苛性ソーダ5.4%、二硫化炭素29%/セル
ロース量、残りイオン交換水)100部とを8℃の真空ミ
キサーに装填し、真空度10Torrで21時間混合・脱泡し
て、紡糸原液を作った。 この紡糸原液を、0.12mmφのホールを240個有する口
金に43g/分で導き、23m/分の速度で23℃に制御された凝
固浴中に吐出させた。凝固浴は硫酸7%、硫酸ソーダ20
%をイオン交換水に溶解してなる水溶液を用いた。 この凝固繊維は80℃のイオン交換水槽に導かれ、約29
m/分の速度でゆっくりと十分に洗浄され、マングルで絞
られた後、苛性ソーダ濃度が0.05mol/lであるイオン交
換水溶液に浸漬し、苛性ソーダを繊維重量に対して0.32
%含有せしめた。 このアルカリ含有繊維を次に380℃に加熱されたロー
ルに接触させて焼成して、テープ状の焼結体繊維束を作
成した。 この焼成テープを、次に350℃の加熱ロールに接触さ
せながら7倍に延伸した。 このテープを、弛緩状態で320℃に加熱された空気雰
囲気中に72時間放置した。 かくして得られたテープは白色であり、該テープを構
成する融着繊維の単繊維繊度3.5d、強度1.3g/d、伸度1
6.1%、乾熱収縮率(230℃X30分)12.3%というバラン
スのとれた特性を有していた。 この繊維の小角X線散乱法による2θ=1゜の小角X
線散乱強度は38cpsであり、広角X線回析法による(11
0)面の結晶サイズは107Åであった。 このテープを2本エァーノズルに供給し、4Kg/cm2の
圧空で交絡させた。 得られた嵩高加工糸をカートリッジフィルターに適用
し、下記条件で循環過して、その性能を評価した。結
果は第1図に示した。 なお、比較として、ポリエステル系繊維を用いて実施
例1と同一条件で嵩加工糸としたものをカートリッジフ
ィルターに適用した。 [循環過条件] ダスト:酸化アルミニウム粉末(#1000、#400、#280
を各2gを水60lに混合したもの) 流 量:5l/min [発明の効果] 本発明は、表面面積が高く、かつ絡合性にすぐれた嵩
高加工糸を提供するものである。 本発明の嵩高加工糸からなる過材料はその過機能
を大幅に改善することができ、さらには、かかる嵩高加
工糸を併用したシート状物は、抗ピル性、易滑性、防汚
性、耐摩擦帯電性の4拍子揃った性能を達成する。 さらに、本発明の加工糸は、各種用途に適用可能であ
り、しかもその製品設計の自由度も極めて高い特徴を有
する。
製造方法に関するものである。 [従来の技術] ポリテトラフロロエチレン系樹脂は産業用素材の離型
材、易滑材などの用途で、しかも高価であるために、耐
久性、耐熱性などが要求される高価な商品に主として適
用されていた。 しかし、かかるPTFE系繊維から嵩高加工糸を製造する
考えはなく、かかる嵩高加工糸の出現が待たれていた。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明は、ポリテトラフロロエチレン系繊維の製造方
法を見直し、さらに検討した結果、製造工程の一部を改
善することにより、簡単に加工糸が得られる事実を究明
し本発明に到達したものである。 本発明によれば、表面面積の高い糸条を容易に提供で
きる。したがって、従来過機能に制限のあった過材
料の性能を大幅に改善することができ、さらには、かか
る嵩高加工糸を併用することにより、易滑性、耐摩擦帯
電性の向上したシートを提供することができたものであ
る。 本発明は、かかる嵩高加工糸を簡単にかつ安定に製造
する方法をも提供するものである。 [問題点を解決するための手段] 本発明は、かかる問題点を解決するために次のような
手段を採用する。すなわち、本発明の嵩高加工糸は、実
質的にポリテトラフロロエチレン系繊維束で構成された
糸条であって、該繊維束が部分的に融着されており、非
融着部は開繊し、かつ、絡合されていることを特徴とす
るものであり、また、かかる嵩高加工糸の製造方法は、
90モル%以上がテトラフロロエチレンであるポリテトラ
フロロエチレン系ポリマのディスパージョンとビスコー
スとの混合液を凝固浴中に吐出して凝固した後、この凝
固繊維束状物を焼成、延伸して得た融着繊維束を、複数
束集合させて、部分的に開繊し、かつ、絡合し、開繊、
絡合しない部分を融着部分として残したことを特徴とす
るものである。 本発明においてポリテトラフロロエチレン系(以下PT
FE系という)とは、テトラフロロエチレンのホモポリマ
ーまたは全体の90モル%以上、好ましくは95モル%以上
がテトラフロロエチレンであるコポリマーを意味する。
かかるテトラフロロエチレンに共重合可能な単量体とし
ては、トリフロロエチレン、トリフロロクロロエチレ
ン、テトラフロロプロピレン、ヘキサフロロプロピレン
などのフッ化ビニル化合物やさらにプロピレン、エチレ
ン、イソブチレン、スチレン、アクリロニトリルなどの
ビニル化合物があげられるが、これらに限定する必要は
ない。 かかるモノマーの中でも、フッ化ビニル系化合物、そ
れも、弗素含有量の多い化合物であることが繊維特性の
上から好ましい。 本発明においてPTFE系繊維とは湿式紡糸により製造さ
れる焼結体繊維である。 平均繊度が10d以下、好ましくは3.5d以下、さらに好
ましくは2.5d以下の繊維であり、すなわち、細ければ細
い程、それだけ嵩高加工性は高く、特に2.0d以下、さら
に1.0d以下であるのが好ましい。 本発明のPTFE系繊維において、好ましい繊維は、小角
X線散乱法により2θ=1゜の小角X線散乱強度を測定
した時の値が100cps以下、好ましくは80cps以下、特に
好ましくは50cps以下と小さい上に、広角X線回析法
(カウンター法)による(110)面の結晶サイズが80Å
以上、好ましくは95Å以上、特に好ましくは100Å以上
の厚さを有するもので、強力や寸法安定性に優れている
特徴を有する。 かかるPTFE系繊維は強度1.0g/d以上、好ましくは1.5g
/d以上、伸度30%以下、好ましくは20%以下、乾熱収縮
率(230℃×30′)20%以下、好ましくは15%以下とい
うバランス特性を有するものが好ましい。 なお、小角X線散乱強度は小角X線散乱法(小角X線
回析法)により測定される。 また、(110)面の結晶サイズは広角X線回析法(カ
ウンター法)により測定される。 本発明は、実質的にポリテトラフロロエチレン系繊維
束で構成された糸条であって、該繊維が部分的に融着し
ているものである。すなわち、実質的とは略100%のPTF
E系繊維であることを意味し、部分的に融着していると
いう意味は開繊が不完全であることを意味するものであ
る。この不完全な開繊が本発明において重要な要件であ
り、これによって、嵩高加工性を大幅に改善することが
できたものである。 かかる嵩高加工糸は、糸の状態またはシート状物とし
た後、アルカリ金属処理や低温プラズマ処理などを施し
て、接着改善処理を施すこともできる。 かかる嵩高加工糸は次のようにして製造される。 すなわち、紡糸原液としてビスコースとPTFEディスパ
ージョンとの混合液を用い、これを凝固浴中に吐出し、
凝固した後、水洗精練する。精練後アルカリ水に浸漬し
て絞った後、得られたテープ状繊維束を乾燥するか、そ
のまま焼成工程に導き、300〜450℃で焼成すると共に、
少なくとも5〜10倍延伸する。次いでこの焼成繊維は30
0〜340℃の高温雰囲気中で酸化熟成する方法でテープ状
焼結体繊維束を製造する。 本発明の製法上の特徴としては、紡糸原液から洗浄、
アルカリ処理などの各工程で使用する水や薬剤は全て純
度の高い、不純物(異物)の少ない系が採用されている
ことがあげられる。かかる系を採用することによって、
初めて単糸切れや毛羽立ちを制御し、さらに結晶のよく
成長したボイドの少ない繊維を提供し得たものである。
さらに、工程中で生成される粒子はできるだけ制御し、
大きな異物は排除するように配慮すべきである。 すなわち、かかる製糸工程で使用される水は、いずれ
の工程においても、イオン交換水または蒸溜水が用いら
れる。 上記PTFEディスパージョンは、イオン交換水にPTFEを
20〜75%、好ましくは60%前後配合分散させたものであ
る。分散剤としては、非イオン界面活性剤またはアニオ
ン界面活性剤が使用されるが、特に非イオン界面活性剤
が選択される。配合量はPTFE量に対して3〜10%であ
る。かかる分散剤としては、たとえばポリオキシアルキ
レングリコール系非イオン界面活性剤、アルキルアリル
ポリエーテルアルコール(“トライトンX−100")など
がある。 ディスパージョンの大きさは0.005〜1μ程度である
が、小さい方が紡糸性や繊維特性がよく、好ましくは平
均粒子径を0.6μ以下に調整する。 ビスコースは、セルロース3〜15%、好ましくは5〜
10%、苛性ソーダ2〜12%、好ましくは6〜9%、二硫
化炭素27〜32%、好ましくは28〜30%であり、その重合
度は200〜600、好ましくは300〜400の組成物が選択され
る。 かかるPTFEディスパージョンとビスコースとを混合し
て紡糸原液とするが、この際、紡糸原液の混合ポリマー
中のPTFEは60〜98%、好ましくは70〜96%、特に好まし
くは87〜93%の範囲の組成に調整されるが、PTFE濃度が
高い方が繊維特性もよくなる。すなわち、紡糸原液中の
セルロース濃度は5〜20%、好ましくは10〜15%程度で
ある。 この原液の粘度は20℃で30〜190pois程度であるが、
好ましくは50〜140poisに調整する。混合原液のディス
パージョン分散性を安定化させるために、さらに非イオ
ン界面活性剤やグリセリン、ヘキサメタリン酸塩などの
分散剤を添加することができる。この分散剤の添加量は
PTFEの量に対して3〜10%程度である。 かかる原液に、粒径が100μ以下、好ましくは50μ以
下の二硫化モリブデンを0.5〜30%、好ましくは3〜20
%混合すると、分繊性ならびに強力剛性、耐摩耗性が向
上する。 かかる原液は脱泡されるが、この時に水分が蒸発し、
PTFE粒子が凝集する問題がある。この凝集粒子は通常20
0μ以上にもなるので、本発明ではかかる凝集粒子を形
成させないか成長させないように制御することが重要で
あり、本発明では特に10℃以下の低温真空混合方式が水
分の蒸発が少ないことから好ましく採用される。真空度
は約10Torr程度である。さらに脱泡後原液を過するこ
とも好ましい。 かかる紡糸原液は次に無機鉱酸または/および無機鉱
酸塩で構成される凝固浴水溶液中に紡出される。かかる
無機鉱酸としては、硫酸が好ましいが、硝酸、塩酸、リ
ン酸なども適用され得る。無機鉱酸の含有量は0.1〜50
%、好ましくは0.5〜35%、さらには0.5〜15%である。 また必要により併用する無機鉱酸塩としては、硫酸ア
ンモン、硫酸亜鉛、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩があげ
られるが、好ましくは硫酸ナトリウムが選択される。か
かる無機鉱酸塩は30%以下程度添加配合される。 かかる凝固浴中に前記紡糸原液が押し出されて、マル
チフィラメントとして紡出、凝固する。この時の紡出速
度はたとえば約20〜50m/分以下でゆっくり紡糸する。 この凝固繊維はそのまま40〜90℃、好ましくは80℃近
辺の温水下で十分に精練される。この精練温度は空洞の
発生にも関連があるので、制御を的確にすることであ
る。しかし異形断面糸を製造する場合にはこの精練浴温
度を60℃以下の低温に維持するのが形態維持性の上から
好ましい。この精練工程で金属塩を十分に脱落させてお
くことが、繊維特性の上から好ましく、よい影響を及ぼ
す。 精練された繊維は、次いでアルカリ洗浄してから絞
る。 かかるアルカリ処理浴としては、アルカリ金属または
アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩から選
ばれた化合物の水溶液を用いる。該化合物の濃度は繊維
重量に対して0.001〜2%程度(0.0005〜0.05mol/l)で
ある。かかる金属は焼成をスムーズに進行させる作用を
有するので、繊維に(0.003〜0.32%程度)付着させて
おく。 アルカリ処理後の繊維束は焼成段階でテープ状に融着
される。本発明はその状態で最終の交絡段階まで、酸
化、延伸などの処理が施される点に特徴を有する。 すなわち、アルカリ処理後の繊維束は300〜450℃、好
ましくは320〜400℃で焼成されてテープ状に融着する。
この場合、焼成と延伸を別々にしてもよい、同時に延伸
してもよい。延伸は少なくとも5〜10倍に延伸する。こ
の時の焼成はセルロース炭化物が3.0重量%以下になる
まで炭化する条件を選択するのが好ましい。得られるテ
ープ状繊維束はセルロース炭化物を含有しているため
に、褐色ないしは黒色を呈している。 かくして得られるテープ状繊維束は、さらに300℃以
上、好ましくは310〜340℃で、少なくとも50時間、好ま
しくは60時間以上空気酸化するとともに熟成することに
よつ白色化される。 得られたテープ状焼結体繊維束、すなわち融着繊維
を、開繊、交絡処理する。ここで開繊、交絡とは、開繊
するとともに交絡させることであり、最終的な糸条の形
として、交絡されていることが、表面面積が高く、過機
能の大幅に改善された糸条を提供する上で重要である。
かかる交絡処理としては、たとえば空気噴射交絡処理、
ギヤー擦過交絡処理などがあげられる。 たとえば、空気噴射交絡処理の場合は、該テープ状焼
結体繊維束を1本または2本以上エァーノズル内に導い
て圧空を吹き付けて開繊し、ループを形成する方法であ
る。押し込み交絡処理の場合は、連続的に該テープ状焼
結体繊維束を1本または2本以上二つのギヤーの間に導
入して擦過することにより、開繊する方法である。 本発明においては、空気噴射交絡処理の方が交絡性の
高い加工糸を提供する。 次に、実施例で本発明をさらに詳しく説明する。 [実施例] 実施例1 分散剤としてアルキルアリルポリエーテルアルコール
を用いてイオン交換水に分散されたPTFE系樹脂を60%含
有するディスパージョンを114部と、ビスコース(セル
ロース8.9%と苛性ソーダ5.4%、二硫化炭素29%/セル
ロース量、残りイオン交換水)100部とを8℃の真空ミ
キサーに装填し、真空度10Torrで21時間混合・脱泡し
て、紡糸原液を作った。 この紡糸原液を、0.12mmφのホールを240個有する口
金に43g/分で導き、23m/分の速度で23℃に制御された凝
固浴中に吐出させた。凝固浴は硫酸7%、硫酸ソーダ20
%をイオン交換水に溶解してなる水溶液を用いた。 この凝固繊維は80℃のイオン交換水槽に導かれ、約29
m/分の速度でゆっくりと十分に洗浄され、マングルで絞
られた後、苛性ソーダ濃度が0.05mol/lであるイオン交
換水溶液に浸漬し、苛性ソーダを繊維重量に対して0.32
%含有せしめた。 このアルカリ含有繊維を次に380℃に加熱されたロー
ルに接触させて焼成して、テープ状の焼結体繊維束を作
成した。 この焼成テープを、次に350℃の加熱ロールに接触さ
せながら7倍に延伸した。 このテープを、弛緩状態で320℃に加熱された空気雰
囲気中に72時間放置した。 かくして得られたテープは白色であり、該テープを構
成する融着繊維の単繊維繊度3.5d、強度1.3g/d、伸度1
6.1%、乾熱収縮率(230℃X30分)12.3%というバラン
スのとれた特性を有していた。 この繊維の小角X線散乱法による2θ=1゜の小角X
線散乱強度は38cpsであり、広角X線回析法による(11
0)面の結晶サイズは107Åであった。 このテープを2本エァーノズルに供給し、4Kg/cm2の
圧空で交絡させた。 得られた嵩高加工糸をカートリッジフィルターに適用
し、下記条件で循環過して、その性能を評価した。結
果は第1図に示した。 なお、比較として、ポリエステル系繊維を用いて実施
例1と同一条件で嵩加工糸としたものをカートリッジフ
ィルターに適用した。 [循環過条件] ダスト:酸化アルミニウム粉末(#1000、#400、#280
を各2gを水60lに混合したもの) 流 量:5l/min [発明の効果] 本発明は、表面面積が高く、かつ絡合性にすぐれた嵩
高加工糸を提供するものである。 本発明の嵩高加工糸からなる過材料はその過機能
を大幅に改善することができ、さらには、かかる嵩高加
工糸を併用したシート状物は、抗ピル性、易滑性、防汚
性、耐摩擦帯電性の4拍子揃った性能を達成する。 さらに、本発明の加工糸は、各種用途に適用可能であ
り、しかもその製品設計の自由度も極めて高い特徴を有
する。
【図面の簡単な説明】
第1図は嵩高加工糸をカートリッジフィルターに用いた
場合の、使用経過時間に対する圧損を示すグラフであ
る。 図中 A:本発明の嵩高加工糸使いのフィルター B:PET系繊維嵩高加工糸使いのフィルター
場合の、使用経過時間に対する圧損を示すグラフであ
る。 図中 A:本発明の嵩高加工糸使いのフィルター B:PET系繊維嵩高加工糸使いのフィルター
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.実質的にポリテトラフロロエチレン系繊維束で構成
された糸条であって、該繊維束が部分的に融着されてお
り、非融着部は開繊し、かつ、絡合されていることを特
徴とする嵩高加工糸。 2.該ポリテトラフロロエチレン系繊維が、焼結体であ
る特許請求の範囲第1項記載の嵩高加工糸。 3.該ポリテトラフロロエチレン系繊維が、3.5d以下で
ある特許請求の範囲第1項記載の嵩高加工糸。 4.90モル%以上がテトラフロロエチレンであるポリテ
トラフロロエチレン系ポリマのディスパージョンとビス
コースとの混合液を凝固浴中に吐出して凝固した後、こ
の凝固繊維束状物を焼成、延伸して得た融着繊維束を、
複数束集合させて、部分的に開繊し、かつ、絡合し、開
繊、絡合しない部分を融着部分として残したことを特徴
とする嵩高加工糸の製造方法。 5.該延伸工程が、酸化熟成処理の後である特許請求の
範囲第4項記載の嵩高加工糸の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62300459A JP2717247B2 (ja) | 1987-11-27 | 1987-11-27 | 嵩高加工糸およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62300459A JP2717247B2 (ja) | 1987-11-27 | 1987-11-27 | 嵩高加工糸およびその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH01139834A JPH01139834A (ja) | 1989-06-01 |
JP2717247B2 true JP2717247B2 (ja) | 1998-02-18 |
Family
ID=17885049
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62300459A Expired - Fee Related JP2717247B2 (ja) | 1987-11-27 | 1987-11-27 | 嵩高加工糸およびその製造方法 |
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---|---|
JP (1) | JP2717247B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5276483B2 (ja) * | 2009-03-11 | 2013-08-28 | 住友電気工業株式会社 | 接続部の補強方法及び補強構造 |
CN107761186A (zh) * | 2016-08-22 | 2018-03-06 | 湖南景竹新材料开发有限公司 | 一种针织用数码纱线的制备方法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5830406A (ja) * | 1981-08-14 | 1983-02-22 | Kawasaki Heavy Ind Ltd | 炉頂圧回収タ−ビンのダスト付着防止方法及びそのタ−ビン静翼 |
FR2567577B1 (fr) * | 1984-07-12 | 1989-03-03 | Cav Roto Diesel | Perfectionnements aux pompes d'injection de combustible pour moteurs a combustion interne |
-
1987
- 1987-11-27 JP JP62300459A patent/JP2717247B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH01139834A (ja) | 1989-06-01 |
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