JP2714064B2 - 空燃比測定用検出器 - Google Patents

空燃比測定用検出器

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JP2714064B2 JP63283634A JP28363488A JP2714064B2 JP 2714064 B2 JP2714064 B2 JP 2714064B2 JP 63283634 A JP63283634 A JP 63283634A JP 28363488 A JP28363488 A JP 28363488A JP 2714064 B2 JP2714064 B2 JP 2714064B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、空燃比測定用検出器に係り、特に、内燃機
関の制御に用い、低空燃比(リツチ領域)から高空燃比
(リーン領域)までの広範囲にわたる使用に好適な空燃
比測定用検出器に関するものである。
〔従来の技術〕 一般に、空燃比測定用検出器を用いた自動車用燃焼シ
ステムは、排気ガス中の酸素や未燃ガスの濃度を測定す
ることにより燃焼状態を把握し、燃料すなわちガソリン
の供給量と空気量を制御する回路に情報をフイードバツ
クし、空気とガソリンとの混合比、すなわち空燃比A/F
を制御するものである。
なお、空気中の酸素がガソリンともつとも効率よく反
応する空燃比が理論空燃比(A/F=14.7)である。
従来、理論空燃比を検出するストイツクセンサ、ある
いは理論空燃比以上の領域の空燃比を検出するリーンセ
ンサとしては、ガス拡散層がマグネシアスピネル粉末を
用いたプラズマ溶射により50〜450μmの厚さで形成さ
れており、その気孔率は約5〜10%、平均細孔径では水
銀ポロシメータによる測定で約200〜500Åの性質を有す
るものであつた。
自動車の燃焼効率を高めるためには、燃料が多い低空
燃比の領域(リツチ領域という)から燃料が比較的少な
い高空燃比の領域(リーン領域という)まで幅広い領域
にわたつて、すなわちワイドレンジに空燃比を制御する
必要がある。
ところが、リツチ領域の空燃比を測定するためには、
上述した従来のガス拡散層より拡散抵抗を大きくする必
要が或る。その理由を、第3図ないし第5図を参照して
説明する。
第3図は、排ガスの空燃比とガス成分との関係を示す
線図、第4図は、一般的な限界電流式空燃比測定用検出
器の原理説明図、第5図は、空燃比と電気特性との関係
を示す線図である。
第3図に示すように、空燃比が理論空燃比より大きい
領域、すなわちリーン領域では、排ガス中の成分はほと
んど窒素(N2)と酸素(O2)であり、未燃ガスである一
酸化炭素(CO),ハイドロカーボン(HC),水素(H2
はきわめて微量である。
この場合、O2は、第4図で示されるように、ガス拡散
層3を通つて外側の反応電極2bで触媒反応によりイオン
化し、酸素イオンO2-は固体電解質1を通り大気側へ移
動する。この際、ガス拡散層を通過するO2を律速させる
必要がある。ここで律速とは、ガス拡散層を通過するO2
の利用を制限することを意味する。このガス拡散層3に
はある程度の緻密さが要求される。反応電極2bに到達し
たO2は、前述のようにイオン化するが、空燃比によつて
排ガス中の酸素濃度が異なるため、出力としては第5図
に示すように、それぞれの空燃比A/Fに対応した限界電
流値を有する特性を示す。
第5図では、横軸に電極間電圧Vをとり、縦軸にポン
プ電流IP(mA)をとつて、それぞれの空燃比A/Fに対応
して、ポンプ電流が一定となる実線をもつて限界電流値
を示している。
この限界電流値は次の理論式(1)で表わされること
が知られている。
F:フアラデー定数 R:気体定数 T:ガスの絶対温度 S:ガス拡散層の空孔の等価断面積 l:ガス拡散層の厚さ αi:変換定数 Di:分子の拡散係数 Pi:ガス分圧 この(1)式における各項の値により第5図の限界電
流値が定まるのであるが、各定数をまとめて示すと
(1)式は(2)式のように表わされる。
すなわち、限界電流IP*は、ガス拡散層の緻密さに相
当する空孔の等価断面積Sとガス拡散層の厚さlによつ
て決まるものである。
ガス拡散層の厚さlが大きいと、限界電流IP*は低く
なるが、あまり大きいと応答性や耐久性に影響するた
め、ある厚さ以下にしなければならない。そこで、限界
電流IP*はガス拡散層の空孔の等価断面積Sに左右され
ることとなり、Sが小さいほど、すなわちガス拡散層が
緻密であるほど、IP*は小さくなり、リツチ領域での検
出制御に有効となるものである。
リツチ領域では、第3図に示すように排ガス中の酸素
濃度は少なく、未燃ガスのCO,HC,H2が多い、したがつ
て、第4図の中のガス拡散層3にはこれらの未燃ガスが
通過し、酸素イオンO2-はリーン領域の場合とは逆に大
気側から固体電解質1を通り、外側電極2b上で未燃ガス
成分の分子の大きさは、酸素分子よりはるかに小さいた
め、ガス拡散層を通過する量を従来のガス拡散層では律
速することができず、リツチ側の制御ができなくなる。
すなわち、リツチ側の制御を行なうためには、未燃ガス
の拡散を律速しうる緻密なガス拡散層が必要となる。
こうした点を考慮し、ガス拡散層をプラズマ溶射法を
用いて密度の異なる2層構成とすることが、例えば、特
開昭53-13980号公報および特開昭53-116896号公報に記
載されている。
前者の技術では、プラズマ溶射法で酸化アルミニウム
(アルミナ)を電極に近い第1層は密に30μm、その外
側の第2層は同じ方法で粗に80μmの厚さに形成してい
る。
一方、後者の技術では、同じくプラズマ溶射法で、マ
グネシアスピネルを第1層は粗に300μm、第2層は密
に2mmの厚さに形成している。
上記プラズマ溶射法以外にも、ガス拡散層の形成法と
して、厚膜プロセスやグリーンシート法などの焼結を用
いる方法が、例えば、SAE Technical Poper 850378に記
載されている。
この方法では、電極はペースト塗布法で、そして、固
体電解質とガス拡散層はグリーンシートを用いて積層
し、最後にプレスや焼結によつて強固なセンサ素子を得
ている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記のプラズマ溶射法は、ガス拡散層の厚さや緻密さ
と、耐熱性,生産性、あるいは応答性との関係について
配慮されておらず、前者の例では、外側の粗で厚い層が
冷熱サイクルによつてクラツクを生じるという問題があ
つた。また、後者の例では、外側の密で厚い層を形成す
るのが難しく、拡散抵抗が大きくなりすぎて応答性が悪
くなるため実用的ではなかつた。
さらに、プラズマ溶射法を用いる場合、装置が高価な
上に生産歩留まりが低くコスト高になるという問題があ
つた。
一方、焼結法には生産コストが低くできるという利点
はあるが、焼結時の収縮および熱ひずみによりクラツク
が発生しやすいという問題があつた。
酸化ジルコニウムの焼結を十分に進行させ、緻密な焼
結体を形成すると、焼結後の寸法は焼結前の約80%に収
縮することが知られている。したがつて、ガス拡散層を
緻密にするほどクラツクが発生しやすくなる。
さらに、固体電解質に用いられる酸化ジルコニウムに
は、耐熱衝撃性を向上させるために酸化イツトリウムな
どを少し添加することにより部分安定化処理が施されて
いる。このような酸化ジルコニウムは単斜晶,正方晶、
および立方晶の3種混合の結晶構造を有し、その結果と
して、900℃〜110℃の高温下で単斜晶から正方晶への相
変態を起こす性質を有する。この相変態は体積変化を伴
うために、その熱膨張曲線を第6図に示すようなヒステ
リシス曲線を描く。すなわち、第6図において、固体電
解質酸化ジルコニウムを室温から加熱すると、その伸び
は曲線(A)のような温度依存性を示し、単斜晶から正
方晶への変態温度領域(900〜1100℃)で収縮するため
伸びの増加が純化する。そして、逆に変態が完了する温
度(1100℃)から冷却していくと、伸びは曲線(B)に
従つた温度依存性を示し、正方晶から単斜晶に戻る変態
温度領域(300〜600℃)で膨張するため伸びがほぼ一定
になる。
このように複雑な熱膨張特性を有する固体電解質の上
に多孔質のガス拡散層を焼結により形成する場合、冷却
の際の固体電解質の膨張によりガス拡散層に引張り方向
の熱ひずみが発生しやすく、センサとしての信頼性が不
十分になる傾斜にあつた。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためにな
されたもので、最適なガスの拡散機能を有する多孔質焼
結体のガス拡散層を備え、耐熱性に優れ、かつ、応答性
が良く、リーン領域からリツチ領域まで広範囲に適用し
うる、生産性の良い空燃比測定用検出器を提供すること
を、その目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、本発明に係る空燃比測定
用検出器の構成は、酸素イオン伝導性金属酸化物からな
る固体電解質素子の内外面に多孔質の薄膜状の電極を設
け、前記固体電解質素子の外側の電極を多孔質の電気絶
縁性金属酸化物からなるガス拡散層で覆い、前記の両電
極間に一定電圧を印加することにより前記固体電解質素
子が置かれる雰囲気中の酸素をイオン化し、かつ前記固
体電解質素子内部に拡散させ、酸素イオンの流量に対す
る限界電流値を求めることにより空燃比を測定する空燃
比測定用検出器において、少なくとも前記外側の電極の
全表面を覆うべきガス拡散層を、平均粒径1μm以下の
電気絶縁性金属酸化物を主成分とする粉末の多孔質焼結
体で構成し、かつ、前記ガス拡散層の厚み方向に対する
少なくとも一部分の層の材料として、酸化ジルコニウム
にケイ酸塩かアルミノケイ酸塩のいずれかあるいは混合
物を加えたものを用いたものである。
より望ましくは、前記ケイ酸塩はケイ酸マグネシウ
ム,ケイ酸カルシウム、およびケイ酸塩ジルコニウムの
いずれかあるいは混合物で、また、前記アルミノケイ酸
塩はアルミノケイ酸マグネシウム,アルミノケイ酸リチ
ウム、アルミノケイ酸ナトリウムのいずれかあるいは混
合物である。
〔作用〕
上記のように構成された空燃比測定用検出器において
は、プラズマ溶射を用いず、平均粒径1μm以下の酸化
ジルコニウム粉末の焼結によりガス拡散層を形成してい
るので、そのガス拡散層は薄いにもかかわらず気孔率が
小さくて十分な拡散律速機能を発揮する。
この層を薄くしたことにより、ガス拡散層全体の厚さ
が薄くなり、固体電解質素子との熱膨張特性のずれによ
る熱ひずみの発生が少なくなる。
また、酸化ジルコニウムに添加されるケイ酸塩やアル
ミノケイ酸塩は1200〜1600℃の融点を有する物質である
ので、酸化ジルコニウム粉末同士の拡散による焼結の初
期段階において、酸化ジルコニウム粉末同士を固着させ
る結合剤として作用する。したがつて、焼結が十分に進
行しない温度でも強固な焼結体が得られ、その結果とし
て、焼結時の収縮が抑制される。
このように、熱ひずみや収縮が抑制された結果、クラ
ツクが発生しにくくなるとともに、応答性,生産性が向
上する。
〔実施例〕
以下、本発明の各実施例を第1,2図および、第7図な
いし第11図を参照して説明する。
まず、ガス拡散層に関する一実施例を第7図を参照し
て説明する。
第7図は、本発明の一実施例に係る空燃比測定用検出
器のガス拡散層を示す要部断面図で、この検出器は自動
車の制御に用いられる。
第7図において、1は、酸素イオン伝導性金属酸化物
からなる固体電解質素子(以下単に固体電解質という)
で、本例では、この固体電解質1は酸化イツトリウム
(イツトリア)を固溶させることにより部分安定化させ
た酸化ジルコニウム(ジルコニア)である。2(2a,2b
の総称)は、固体電解質1の内外面に白金メツキされた
多孔質の薄膜状の反応電極である。外側の反応電極2b
は、先の理論式(1)における特性に影響を及ぼす空孔
断面積Sに関わるため、白金メツキの際、マスキングに
より精度良く形成されている。
3は、外側の反応電極2bを覆うように形成した電気絶
縁性金属酸化物からなるガス拡散層、4はリード電極、
6は、固体電解質1を加熱するためのヒータである。
より詳しくは、外側の反応電極2bにつながるリード電
極4は、同時にマスキングした白金メツキにより形成さ
れ、排気ガスとの反応を完全に遮断するため緻密なガラ
ス絶縁層8で覆われている。この外側に多孔質焼結体の
ガス拡散層3が形成される。そこで、その焼結体の材質
は固体電解質1と同じイツトリア部分安定化ジルコニア
が好適である。
次に、第8図は、本発明の他の実施例に係る空燃比測
定検出器のガス拡散層を示す要部断面図である。図中、
第7図と同一符号のものは同等部分であるから、その説
明を省略する。
第8図の実施例が、第7図の実施例と異なるところ
は、ガス拡散層3Aの形成状態である。ガス拡散層3Aは、
必ずしも固体電解質1の外側の全領域を被覆する必要は
なく、少なくとも外側の反応電極2bの全表面を被覆して
いれば、本発明の目的は達せられる。
上記第7,8図の実施例におけるガス拡散層の焼結法に
ついて具体的に説明する。
まず、平均粒径1μm以下(例えば、0.3〜0.5μm)
のイツトリア部分安定化ジルコニア粉末にケイ酸マグネ
シウム(ステアタイトと呼ばれる)と適当な解こう剤お
よび結合剤と水を混合し、ボールミルで18時間以上分散
させる。こうしてできた分散液に素子をデイツピング
(浸漬)し、自然乾燥させたのち、1100〜1300℃で1時
間焼成した。この工程で約50〜100μmの厚さの膜が形
成される。この場合、前記ジルコニアとケイ酸マグネシ
ウムの重量比は1:1〜3:1であることが望ましい。なお、
分散液の塗布方法としてはデイツピング法に限らず、ハ
ケ塗り法,スプレー法,スピンコート法,ブレード法な
ど、種々の方法が用いられる。
ケイ酸マグネシウム以外にも、ケイ酸カルシウムとケ
イ酸ジルコニウム(ジルコン)は、ともに1550℃程度の
融点を有し、アルミノケイ酸ナトリウムは約1500℃、ア
ルミノケイ酸マグネシウム(コーデイエライト)は約14
50℃、アルミノケイ酸リチウム(スポジユメン)は約13
00℃の融点を有するので、いずれも酸化ジルコニウムの
焼結時の結合剤として効果的な材料である。
第9図はイツトリア部分安定化ジルコニア単独、第10
図はイツトリア部分安定化ジルコニアとケイ酸マグネシ
ウムの3:1混合物をそれぞれ1300℃で焼結した多孔体表
面の電子顕微鏡写真である。両者の比較から明らかなよ
うに、ケイ酸マグネシウムを添加することにより、クラ
ツクの発生を効果的に防止できた。
第7,8図の実施例は、ガス拡散層が単一層からなるも
のであつたが、さらに好適には層の緻密さが厚み方向に
対して変化する構成の方がよい。
そのような複合構成のものの例を次に説明する。
第11図は、本発明のさらに他の実施例に係るガス拡散
層の複合構成を示す要部断面図であり、図中、第7図と
同一符号のものは同等部分を示す。
第11図に示す外側の反応電極2b上の第1ガス拡散層3a
は、焼結によつて形成されたイツトリア部分安定化ジル
コニアである。この第1ガス拡散層3aは比較的粗である
ことが重要で、特に電極上での触媒反応と密接な関係が
あり、また検出器としての応答性を良くするために適度
な密度が必要である。その目安としては、最適な尺度で
はないが、気孔率として5〜10%程度、水銀ポロシメー
タによる平均細孔径が300〜400Åである。
また、第1ガス拡散層3aの厚さ(膜厚)は200μm以
下であり、不用意に厚くすることは固体電解質1との熱
膨張係数の違いによりクラツクが発生しやすくなること
や、応答性の低下にもつながるので、望ましくは100μ
m以下が適当である。
この上に、さらに第2ガス拡散層3bを焼結により形成
する。この層は特にリツチ(低空燃比)領域の検出を行
うために、未燃ガスであるCO,HC,H2の微細な分子の拡散
を制限律速させるのに好適である。膜厚は厚すぎるとガ
ス拡散が行なわれにくくなるので、0.01〜20μm望まし
くは0.01〜5μmである。
第2ガス拡散層3bの製法について次に説明する。第1
ガス拡散層3aの焼成後、平均粒径0.1μm以下(例え
ば、0.02μm)のシリカ粉末、あるいはジリコニア粉末
を含む分散液を塗布し、乾燥後、700℃〜900℃で30分焼
成した。この工程を2回繰返すことにより、膜厚を約1
μmとした。
以上の工程により、ガスの拡散を律速し得る緻密な層
を最外層に有し、その下に適度なガス拡散が可能で白金
電極との反応速度を迅速にするのに有効がガス拡散層が
完成する。
上記の各実施例のガス拡散層では、従来のプラズマ溶
射を焼結に置き換えたことにより、コストの低減のみな
らず、膜厚が薄くなり熱ひずみに対する耐久性および応
答性が向上した。また、特性のばらつきも少なくなり歩
留りが向上した。さらにガス拡散層の粗な層を固体電解
質素子本体と同じイツトリア部分安定化ジルコニアで形
成したことにより、熱膨張係数の違いが少なく、熱ひず
みの発生が少ないという効果もある。
次に、このようなガス拡散層を有する限界電流式空燃
比測定用検出器の全体構成および出力特性について第1
図および第2図を参照して説明する。
第1図は、本発明の一実施例に係る限界電流式空燃比
測定用検出器の縦断面図、第2図は、第1図の検出器に
よつて得られる出力特性図である。
第1図において、固体電解質1は栓体5に固定されて
いる。栓体5の先には、各実施例で説明した如きガス拡
散層3を排気ガス中の不純物から保護するための外筒7
が備えられてあり、また、固体電解質1の内部には素子
を600〜700℃に加熱し素子材質のジルコニアを電解質た
らしめるためのヒータ6が内蔵されている。さらに、内
側の反応電極2a,外側の反応電極2b,ヒータ6のそれぞれ
に電気的信号の取り出しや電圧を印加するためのリード
線9a,9b,9cが結線されている。
このようにして製作された限界電流式空燃比測定用検
出器を自動車の排気管に取付け、ヒータ6を通電して素
子本体の固体電解質1を約700℃に加熱して素子に電圧
を印加していくと、本実施例の空燃比測定用検出器の出
力特性は、第2図に実線で示す出力電流Vのように理論
空燃比(A/F=14.7)よりリツチ領域側までリニアな出
力として空燃比を検出できることになる。従来の拡散膜
での特性は破線で示すようにリツチ領域ではA/F=12ま
での検出しかできず、より燃料濃度の高いリツチ領域で
は出力が急減するという不具合のあつたものが大幅に改
善されている。
これにより運転性に置き換えると、平地での通常走行
(40〜60km/h)ではリーン領域制御で経済運転となり、
山間道路などの登り走行ではリツチ領域制御で出力が向
上し、全体として運転性が改善できることになる。
また、酸素センサ(ストイツクセンサ)で3元フイー
ドバツク制御(排ガス中のCO,HC,NO制御)を行なつてい
る現行エンジンでは、コールドスタート時や、急加速時
には、空燃比A/Fが9程度までリツチになる場合がある
ため、本実施例による空燃比測定用検出器は、リーンバ
ーンエンジン(高空燃比,希薄燃焼制御用エンジン)の
みならず、現行のエンジンにおけるワイドレンジ空燃比
制御にも使用可能となり、燃費の向上,運転性の向上、
さらには安全性の向上等に有効となる波及効果がある。
なお、前述の実施例では、ガス拡散層の粗な層にイツ
トリア部分安定化ジルコニア粉末を用いたが、本発明は
これに限るものではなく、材質には特に制限はなく、焼
成後の膜が、例えば気孔率では2〜20%,水銀ポロシメ
ータでの平均細孔径では200〜500Åであれば、本発明の
効果を発揮することができるものである。すなわち、粉
末がアルミナやマグネシア,シリカ,チタニア,カルシ
ア等のセラミツクスの単体、あるいは複合粉末であつて
も有効である。
また、ガス拡散層の緻密な層にシリカ粉末を用いた
が、これもアルミナやマグネシア,ジルコニア,チタニ
ア,カルシア等でも同じ効果が期待できることはいうま
でもない。
さらに、緻密な層を電極上に形成したのち、その外側
に粗な層を形成しても同様の効果が得られる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、最適なガスの拡散機能を有する多孔
質焼結体のガス拡散層を備え、耐熱性に優れ、かつ、応
答性が良く、リーン領域からリツチ領域まで広範囲に適
用しうる、生産性の良い空燃比測定用検出器を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施例に係る限界電流式空燃比測
定用検出器の縦断面図、第2図は、第1図の検出器によ
つて得られる出力特性図、第3図は、排ガスの空燃比と
ガス成分との関係を示す線図、第4図は、一般的な限界
電流式空燃比測定用検出器の原理説明図、第5図は、空
燃比と電気特性との関係を示す線図、第6図は固体電解
質ジルコニアの熱膨張特性を示す線図、第7図は、本発
明の一実施例に係る空燃比測定用検出器のガス拡散層を
示す要部断面図、第8図は、本発明の他の実施例に係る
空燃比測定用検出器のガス拡散層を示す要部断面図、第
9図は、ジルコニア単独焼結体の粒子構造を示す電子顕
微鏡写真、第10図は、ジルコニアとケイ酸マグネシウム
の3:1混合物の焼結体の粒子構造を示す表面の電子顕微
鏡写真、第11図は、本発明のさらに他の実施例に係るガ
ス拡散層の複合構成を示す要部断面図である。 1……固体電解質、2a……内側の反応電極、2b……外側
の反応電極、3,3A……ガス拡散層、3a……第1ガス拡散
層、3b……第2ガス拡散層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上野 定寧 茨城県勝田市大字高場2520番地 株式会 社日立製作所佐和工場内 (56)参考文献 特開 昭57−48648(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸素イオン伝導性金属酸化物からなる固体
    電解質素子の内外面に多孔質の薄膜状の電極を設け、前
    記固体電解質素子の外側の電極を多孔質の電気絶縁性金
    属酸化物からなるガス拡散層で覆い、前記の両電極間に
    一定電圧を印加することにより前記固体電解質素子が置
    かれる雰囲気中酸素をイオン化し、かつ前記固体電解質
    素子内部に拡散させ、酸素イオンの流量に対する限界電
    流値を求めることにより空燃比を測定する空燃比測定用
    検出器において、少なくとも前記外側の電極の全表面を
    覆うべきガス拡散層を、平均粒径1μm以下の電気絶縁
    性金属酸化物を主成分とする粉末の多孔質焼結体で構成
    し、かつ、前記ガス拡散層の厚み方向に対する少なくと
    も一部分の層の材料として、酸化ジルコニウムにケイ酸
    塩かアルミノケイ酸塩のいずれかあるいは両者を加えた
    ものを用いたことを特徴とする空燃比測定用検出器。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載のものにおい
    て、前記ケイ酸塩はケイ酸マグネシウム,ケイ酸カルウ
    ム、およびケイ酸ジルコニウムのいずれかあるいは混合
    物で、また、前記アルミノケイ酸塩はアルミノケイ酸マ
    グネシウム,アルミノケイ酸リチウム、およびアルミノ
    ケイ酸ナトリウムのいずれかあるいは混合物である空燃
    比測定検出器。
JP63283634A 1988-11-11 1988-11-11 空燃比測定用検出器 Expired - Lifetime JP2714064B2 (ja)

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