JP2704116B2 - 電界吸収効果を有する光半導体装置 - Google Patents

電界吸収効果を有する光半導体装置

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JP2704116B2
JP2704116B2 JP16768594A JP16768594A JP2704116B2 JP 2704116 B2 JP2704116 B2 JP 2704116B2 JP 16768594 A JP16768594 A JP 16768594A JP 16768594 A JP16768594 A JP 16768594A JP 2704116 B2 JP2704116 B2 JP 2704116B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電界吸収効果を有する
光半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図8に第1の従来例の電気光微分装置の
構成を示す。図8に示すように、入射した光パルスを一
旦ホトダイオード等の光電変換素子30により電気信号
に変換した後、それを電気微分回路31によって電気的
に微分する。次いで、電気微分回路31から出力される
電気信号を増幅器32を介して別のレーザーダイオード
等の発光素子33(又は光変調器)を駆動することによ
り、光微分出力を得ることができる。
【0003】図9に第2の従来例の電気光間引き装置の
構成を示す。図9に示すように、入射した光パルス列を
一旦ホトダイオード等の光電変換素子30により電気信
号に変換した後、それを、分周器などの電気的なパルス
間引き回路34によって電気的に間引きする。次いで、
パルス間引き回路34から出力される電気信号を増幅器
32を介して別のレーザーダイオード等の発光素子33
(又は光変調器)を駆動することにより、入射した光パ
ルス列の周期が間引かれた、すなわちより長い周期を有
する光パルス列を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述の第1の従来例で
は、次のような欠点があり、問題点があった。 (a)電気回路の部品点数が増え、装置規模が比較的大
きい。 (b)消費電力が比較的大きい。 (c)電気回路31,32で処理した後、発光素子33
又は光変調器を駆動するため、光微分出力を得るまでの
遅延時間が大きく、また時間応答が遅い。
【0005】上述の第2の従来例では、次のような欠点
があり、問題点があった。 (a)電気回路の部品点数が増え、装置規模が比較的大
きい。 (b)消費電力が比較的大きい。 (c)電気回路34,32で処理した後、発光素子33
又は光変調器を駆動するため、光パルス列の出力を得る
までの遅延時間が大きく、また入射される高速パルス列
に追従することができない。
【0006】本発明の第1の目的は以上の問題点を解決
し、入射光を微分することができる装置であって、従来
例に比較し構成が簡単であってかつ消費電力が小さく、
しかも時間応答が速い光半導体装置を提供することにあ
る。本発明の第2の目的は以上の問題点を解決し、入射
されるパルス列を間引くことができる装置であって、従
来例に比較し構成が簡単であってかつ消費電力が小さ
く、しかも高速パルスに追従することができる光半導体
装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る請求項1記
載の電界吸収効果を有する光半導体装置は、ワニエシュ
タルク局在効果を有する超格子構造の真性半導体i層を
含む1個のpin型ダイオード、又は量子閉じ込めシュ
タルク効果を有する多重量子井戸構造の真性半導体i層
を含む1個のpin型ダイオードにてなり、印加電界を
変化することによって光吸収量が変化する電界吸収効果
を有する光半導体素子と、上記光半導体素子に接続さ
れ、上記光半導体素子において所定の光吸収量が生じる
ように、上記光半導体素子に所定の印加電界を印加する
ための逆バイアス電圧印加用直流電源とを備え、上記光
半導体素子に光微分すべき信号光を入射することによっ
て、上記光半導体素子における電界スクリーニング効果
により、当該信号光を入射した上記光半導体素子から上
記信号光を光微分した微分光を得ることを特徴とする。
【0008】
【0009】また、請求項2記載の光半導体装置は、請
求項1記載の光半導体装置において、上記電界スクリー
ニング効果の動作速度は、上記光半導体素子に入射され
る複数個の光からなる光列の周期よりも十分に遅くなる
ように設定されたことを特徴とする。さらに、請求項3
記載の光半導体装置は、請求項1記載の光半導体装置に
おいて、上記電界スクリーニング効果の動作速度は、上
記光半導体素子に入射される複数個の光からなる光列の
周期よりも十分に速くなるように設定されたことを特徴
とする。
【0010】
【作用】請求項1記載の光半導体装置においては、上記
直流電源は、上記光半導体素子において所定の光吸収量
が生じるように、上記光半導体素子に所定の印加電界を
印加する。このときの印加電界は、例えば、光半導体素
子が超格子構造の真性半導体i層を有するpin型ダイ
オードである場合、図3の(b)のエネルギー準位図に
示す状態、すなわち量子井戸内の電子の波動関数の結合
が弱くなって孤立した量子井戸におけるサブバンド状態
による光吸収状態となるような状態の電圧となるように
設定される。図3の状態では、図3の(b)に示すよう
に、光半導体素子に対して比較的高い電界E12が印加
されて、伝導帯Ecと価電子帯Evの傾斜が大きくな
る。このとき、比較的高い電界E12の吸収端の波長よ
りも長い波長λ0のパルス光が入射したとき、図3の
(c)に示すように光半導体素子による光吸収量は比較
的小さいので、上記パルス光は光半導体素子を通過して
出力される。すなわち、図3の(d)に示すように比較
的高いレベルを有する出力光が出力される(時刻t1
1)。
【0011】この波長λ0の光パルスの入射によって、
光吸収により生成された電荷の光キャリア41が光半導
体素子に発生して、その光キャリア41が空間電荷とし
て光半導体素子に残留する。このとき、空間電荷による
電界スクリーニング効果又は電界遮蔽効果により光半導
体素子に印加される電界は残留光キャリアの密度に比例
して弱められる。これによって光半導体素子に印加され
る電界が自動的に低下し、例えば電界Eが電界E12か
ら電界E11となったとする。この状態を図4に示す。
【0012】従って、このとき電界Eが比較的高いとき
に生じていた光吸収端は電界Eの弱まりによって長波長
側へとシフトしなおし、光吸収量が増大する。するとま
すます光吸収による光キャリア41が光半導体素子に多
く発生して、このとき空間電荷効果によって電界をスク
リーニングして弱める方へと正帰還を起こすように働
く。これによって光半導体素子に印加される電界Eは瞬
時に弱まり、光吸収端は瞬時に図4の(c)の電界E=
E11の状態に遷移し、光半導体素子による光吸収量が
瞬時に増加して、光半導体素子を透過して出力される出
力光は、図4の(d)に示すように低下する(時刻t1
2)。さらに、電界がスクリーニングされると、光吸収
端は図5の(c)の電界E=E0の状態(すなわち、ほ
とんど無電界の状態)に遷移し、光半導体素子による光
吸収量は最大値近傍となって、当該光半導体素子からほ
とんど光は出力されない(時刻t13)。従って、上記
光半導体素子に光微分すべき信号光を入射することによ
って、上記光半導体素子における電界スクリーニング効
果により、当該信号光を入射した上記光半導体素子から
上記信号光を光微分した微分光を得ることができる。
【0013】ここで、上記光半導体素子は、ワニエシュ
タルク局在効果を有する超格子構造の真性半導体i層を
含む1個のpin型ダイオード、又は量子閉じ込めシュ
タルク効果を有する多重量子井戸構造の真性半導体i層
を含む1個のpin型ダイオードである。
【0014】また、請求項2記載の光半導体装置におい
ては、上記電界スクリーニング効果の動作速度は、上記
光半導体素子に入射される複数個の光からなる光列の周
期よりも十分に遅くなるように設定される。ここで、複
数個の光は当該光半導体装置によってそれぞれ光微分す
ることできる。
【0015】さらに、請求項3記載の光半導体装置にお
いては、上記電界スクリーニング効果の動作速度は、上
記光半導体素子に入射される複数個の光からなる光列の
周期よりも十分に速くなるように設定される。複数個の
光のうちの少なくとも1個の光のみを当該光半導体装置
によってそれぞれ光微分することできる。言い換えれ
ば、図9の第2の従来例の光間引き装置と同様に、光列
を間引くことができ、光間引き装置を構成することがで
きる。
【0016】
【実施例】以下、図面を参照して本発明による実施例に
ついて説明する。図1は本発明の一実施例である、超格
子構造の真性半導体i層16を有するpin型ダイオー
ド10を用いた光半導体装置の構成を示す断面図及び回
路図である。
【0017】本実施例の光半導体装置は、図1に示すよ
うに、光半導体素子である超格子構造の真性半導体i層
16を有し逆バイアス電圧を変化することによって光吸
収端付近の波長領域で光吸収量が変化するヘテロ接合p
in型ダイオード10の両端の電極11,12に逆バイ
アス電圧印加用の可変電圧源30が接続され、電極11
側から例えばパルス光を印加することによって、電極1
2側から光微分された信号光を得ることを特徴としてい
る。
【0018】本実施例のpin型ダイオード10は、図
1に示すように、裏面にリング形状のAu電極12が形
成され、同じくリング形状であってSiにてなるn型不
純物イオンが注入量1018/cm3だけ注入されたn−
GaAsにてなる厚さ350μmのn型半導体基板20
上に、以下の各層が順次、n型半導体基板20から近接
した側から積層されて形成される。 (a)Siにてなるn型不純物イオンが注入量1×10
18/cm3だけ注入されたn−GaAsにてなる厚さ
0.2μmのn型バッファ層19; (b)Siにてなるn型不純物イオンが注入量1×10
17/cm3だけ注入されたn−Al0.4Ga0.6Asにて
なる厚さ0.2μmのn型クラッド層18; (c)i−Al0.4Ga0.6Asにてなる厚さ100nm
のi型クラッド層17; (d)超格子構造を有する厚さ約0.4μmの真性半導
体i層(i−SL)16; (e)i−Al0.4Ga0.6Asにてなる厚さ100nm
のi型クラッド層15; (f)Beにてなるp型不純物イオンが注入量1×10
18/cm3だけ注入されたp−Al0.4Ga0.6Asにて
なる厚さ0.2μmのp型クラッド層14; (g)Beにてなるp型不純物イオンが注入量5×10
18/cm3だけ注入されたp−GaAsにてなる厚さ5
0nmのp型キャップ層13;並びに、 (h)リング形状のAu電極11。
【0019】なお、Au電極12とn型半導体基板20
とAu電極11とをリング形状にするのは、上記の積層
を行った後に所定のエッチングにより行われる。また、
上記真性半導体i層16は、GaAsにてなり12原子
層の厚さ34Åの井戸層21と、AlAsにてなり3原
子層の厚さ8.5Åの障壁層22とを交互に、例えば1
00周期で積層されて形成される。そして、電極11は
逆バイアス電圧Vbの可変電圧源30の負極に接続さ
れ、電極12は可変電圧源30の正極に接続されること
によって、pin型ダイオード10の電極11,12間
に所定の電界が印加されることになる。
【0020】上記pin型ダイオード10の真性半導体
i層16は、障壁層22の厚さが井戸層21の厚さに比
較して薄い半導体超格子構造を有しており、その量子井
戸内の電子状態は、印加電界が弱い場合は薄いバリアー
を浸透した波動関数どうしの結合によってミニバンド状
態になる一方、印加電界が強い場合は波動関数の結合が
弱くなって孤立した量子井戸におけるサブバンド状態と
なる。この真性半導体i層16内の電界による吸収率変
調効果、すなわち印加電界を変化することによって光吸
収率又は光吸収量が変化する効果(以下、電界吸収効果
という。)によって図2に示すような光吸収特性を示す
ことがワニエ・シュタルク局在効果として知られてお
り、電界が強くなるに従い、光吸収端は短波長側にシフ
トする(例えば、J.Bluese et al. Applied Physics Le
ttrer,Vol.53,No.26,pp.2632-2634,1988年参照。)。
【0021】図2における波長に対する光吸収量の特性
において、入射光の波長が長くなるにつれて光吸収量が
ある波長で急激に低下するが、その低下する傾斜のほぼ
中間領域を一般に「光吸収端」と呼んでいる。ここで、
電界が印加されていないときと比較的高い電界E2が印
加されたときとの間の電界E1が印加された場合の光吸
収端の波長をλ0としており、この光半導体装置では入
射光の波長をこの波長λ0に設定する。図2の特性から
明らかなように、この光吸収端の波長は、さらに電界の
強度を大きくすることによって波長が青色波長に向かう
方向、すなわち波長のより短い方向にシフトされる。こ
れを電界による光吸収端のブルーシフトと呼んでいる。
【0022】図7は本発明者の実験によって得られた波
長に対する光吸収量の特性を示すグラフである。図7か
ら明らかなように、逆バイアス電圧Vbを高し、これに
よって、真性半導体i層16に印加される電界を大きく
することによって、光吸収端がブルーシフトすることが
わかる。本実施例の光半導体装置は、以下に示すよう
に、この電界による光吸収端のブルーシフトを使用し
て、光微分装置と光間引き装置を構成する。
【0023】図3乃至図5は、本実施例の光半導体装置
において光パルスを入射したときの光微分動作を示す図
であって、図3は時刻t11における各図であり、図4
は上記時刻t11より後の時刻t12における各図であ
り、図5は上記時刻t12よりも後の時刻t13におけ
る各図である。図3乃至図5を参照して、この光微分動
作について説明する。
【0024】図1に示した、上記の超格子構造による電
界吸収効果を有したpin型ダイオード10に、逆バイ
アス電圧Vb=V12を印加する直流電源30を接続し
た回路を構成する。ここで、逆バイアス電圧Vb=V1
2は、図3の(b)のエネルギー準位図に示す状態、す
なわち量子井戸内の電子の波動関数の結合が弱くなって
孤立した量子井戸におけるサブバンド状態による光吸収
状態となるような状態の電圧となるように設定される。
図3の状態では、図3の(b)に示すように、超格子構
造を有する真性半導体i層16に対して比較的高い電界
E12が印加されて、伝導帯Ecと価電子帯Evの傾斜
が大きくなる。このとき、波長λ0のパルス光が入射し
たとき、図3の(c)に示すようにpinダイオード1
0による光吸収量は比較的小さいので、上記パルス光は
pinダイオード10を通過して出力される。すなわ
ち、図3の(d)に示すように比較的高いレベルを有す
る出力光が出力される(時刻t11)。
【0025】この波長λ0の光パルスの入射によって、
光吸収により生成された電荷の光キャリア41が真性半
導体i層16の井戸層21に発生し、その数が量子井戸
から掃き出されるレートより十分大きければ光キャリア
16が空間電荷として真性半導体i層16内の光吸収を
起こす量子井戸内に残留する。本実施例においては、光
キャリア41の掃き出しレートを弱めるために、GaA
sの井戸層21とのエネルギー差が比較的大きなバリア
ーであるAlAs障壁層22を使用して、薄い障壁層2
2でありながら高い障壁層22として光キャリア41の
掃き出しを抑圧している。このとき、空間電荷による電
界スクリーニング効果又は電界遮蔽効果(詳細後述す
る。)により超格子構造を有する真性半導体i層16に
印加される電界は残留光キャリアの密度に比例して弱め
られる。これによって超格子構造を有する真性半導体i
層16に印加される電界が自動的に低下し、例えば電界
Eが電界E12から電界E11となったとする。この状
態を図4に示す。なお、空間電荷スクリーニング効果に
よって電界を弱める光キャリア41が蓄積する場所は、
その光キャリア41のうちのホールがi型クラッド層1
5の近傍の複数の井戸層21に蓄積する一方、その電子
がi型クラッド層17の近傍の複数の井戸層21に蓄積
する。ここで、AlAs障壁層22の障壁は比較的高い
が薄いので、トンネル効果によって光キャリアがよく流
れ、最後にi型クラッド層15又は17近傍まで到達す
る。i型クラッド層15又は17近傍まで到達した光キ
ャリアは、このi型クラッド層15,17の厚さが50
nm以上あるので、トンネル効果によってi型クラッド
層15,17を抜けることができないために、また、i
型クラッド層15,17はある程度の比較的高いエネル
ギー準位の高さがあるので、光キャリアがのり越えるこ
とが難しいために、各i型クラッド層15,17に近
い、超格子構造を有する真性半導体i層16内の井戸層
21内にそれぞれホールと電子とが蓄積することにな
る。このホールと電子の蓄積によって、詳細後述する電
界スクリーニング効果が生じることになる。
【0026】従って、このとき電界Eが比較的高いとき
に生じていた上記ワニエシュタルク局在効果によって短
波長側にシフトしていた光吸収端は電界Eの弱まりによ
って長波長側へとシフトしなおし、光吸収量が増大す
る。するとますます光吸収による光キャリア41が井戸
層21に多く発生して、このとき空間電荷効果によって
電界をスクリーニングして弱める方へと正帰還を起こす
ように働く。これによって超格子構造を有する真性半導
体i層16に印加される電界Eは瞬時に弱まり、光吸収
端は瞬時に図4の(c)の電界E=E11の状態に遷移
し、pin型ダイオード30による光吸収量が瞬時に増
加して、pin型ダイオード30を透過して出力される
出力光は、図4の(d)に示すように低下する(時刻t
12)。さらに、電界がスクリーニングされると、光吸
収端は図5の(c)の電界E=E0の状態(すなわち、
ほとんど無電界の状態)に遷移し、pin型ダイオード
30による光吸収量は最大値近傍となって、pin型ダ
イオード30からほとんど光は出力されない(時刻t1
3)。なお、図4の(b)及び図5の(b)においてサ
ブバンド42がハッチングで描かれているのは、そのミ
ニバンドが比較的大きな幅を有していることを示す。
【0027】図2もしくは図3の(c)及び図4の
(c)に示す光吸収曲線が、電界E=E12のときから
電界E=E11までに遷移するまでに、結果として瞬間
的に高い透過状態のpin型ダイオード10を抜けて来
た光出力を得ることができる。すなわち、図5の(d)
に示すように、時間的に比較的長い幅を持った光パルス
の前縁を微分した時間幅の狭い光パルスがpin型ダイ
オード10を透過してくる。従って、光吸収量に反比例
する光透過率の大きい状態から小さい状態への正帰還の
かかった瞬間的なスイッチングによって光微分が可能で
あることを示している。さらに、当該pin型ダイオー
ド10を放置した場合は、井戸層21内の光キャリア4
1が当該pinダイオード10に接続された回路を介し
て放電され、元の図3の状態に自動的に戻ることにな
り、再び光が入射されれば再び光微分の動作を繰り返す
ことになる。
【0028】図6は本発明者の実験によって得られた光
微分動作示すタイミングチャートである。図6から明ら
かなように、パルス状の光を入射することによって、微
分された出力光が得られることがわかるとともに、光微
分の後に光が入射されている間は比較的弱い光が透過し
かつpin型ダイオード10に光電流が流れていること
がわかる。本発明者の実験によれば、図6の例における
光微分部分のFWHM(full width half width;光強
度の最大値の半分の点における時間軸の幅)は、約10
0ナノ秒であって、これは実験に使用した音響光変調器
の仕様、すなわち立ち上がり時間=50ナノ秒でかつ立
ち下がり時間=50ナノ秒であることによって制限され
ていると考えられる。
【0029】例えば、上記電界スクリーニング効果によ
り電界が弱まる速度である電界スクリーニング効果の動
作速度が、例えば入射される複数個の光パルス列からな
るバースト光列の周期よりも十分に遅い場合は、そのバ
ースト光列の複数個の光パルスは当該光半導体装置によ
ってそれぞれ光微分することできる。一方、電界スクリ
ーニング効果の動作速度が、例えば入射される複数個の
光パルス列からなるバースト光列の周期よりも十分に早
い場合は、そのバースト光列の複数個のうちの少なくと
も1個の光パルスのみを当該光半導体装置によってそれ
ぞれ光微分することできる。言い換えれば、図9の第2
の従来例の光間引き装置と同様に、パルス列を間引くこ
とができ、光間引き装置を構成することができる。な
お、スクリーニング効果の動作速度を変更するために
は、例えば、以下の方法を用いることができる。 (a)i型クラッド層15,17のAlの組成を変更す
ることにより、i型クラッド層15,17のバリアの高
さを変更し、蓄積する光キャリアの空間電荷量を変更す
る。もしくは、 (b)入射光をpin型ダイオード10に入射する前段
に、減光フィルタを挿入して、当該pin型ダイオード
10内に生成される光キャリア量を変更して、蓄積する
光キャリアの空間電荷量を変更する。ここで、減光フィ
ルタの減光量を変更してもよい。
【0030】ここで、上述の空間電荷による電界スクリ
ーニング効果について、図10を参照して説明する。い
ま、図10(a)に示すように、2つの対向する電極5
1,52に直流電源50によって電圧V0を印加する。
ここで、電極52が接地される。このとき、2つの電極
51,52間に電荷Qが無いときの電位分布は図10
(b)に示すように、電極52から電極51に向かって
電位ψが距離に比例して上昇する特性となる。一方、2
つの電極51,52間であって電極52から距離x0
ところに電荷Qをおいた場合、電荷Q自身が作る電位分
布は図10(c)に示すように、電位ψが電荷Qの位置
から電極51に向かって距離に比例して減少するととも
に、電位ψが電荷Qの位置から電極52に向かって距離
に比例して減少する。従って、2つの電極51,52間
であって電極52から距離x0のところに電荷Qをおい
た場合の電位分布は図10(d)に示すように、電極5
2の位置から距離x0の位置までの電位の傾斜は距離x0
の位置から電極51までの電位の傾斜よりも大きく折れ
線特性を有する。すなわち、電圧が印加された2つの電
極51,52間に電荷Qを置くと、その電荷Qが発生す
る電界によってもともと何もなかった場合の電位分布と
は異なる電位分布となることがわかる。
【0031】図10(d)から明らかなように、距離x
0から電極51側の電位ψの傾斜は小さくなる。電界は
電位ψを距離xで微分して表わすことができるので、距
離x0から電極51側では電界が弱められていることに
なる。すなわち、電荷が存在することによって、電界が
遮蔽され弱められるという効果がある。これを空間電荷
による遮蔽効果又はスクリーニング効果と呼んでいる。
【0032】実際には、1個の電子で生じるスクリーニ
ング効果は非常に小さいために、数V以上をμmのオー
ダーの間隔に印加するような半導体素子において、十分
なスクリーニング効果を実現するためには、1017個以
上の電荷が必要となり、かつその電荷が電極に走行して
いってなくならないようにどこかに蓄積することができ
る構造が必要となる。図10(a)の回路図では、正の
電荷Qについて描いているが、半導体素子においては、
電子とホールの+と−のチャージがそれぞれ、別の方向
に電界に寄与して分離されるために、このような場合の
実際のスクリーニング領域の電位分布は図10(e)の
ようになる。この例では、距離x1の位置にホールの蓄
積がある一方、距離x2(>x1)の位置に電子の蓄積が
ある場合に、距離x1の位置と距離x2の位置との間に電
界が弱められたスクリーニング領域が存在することにな
る。
【0033】以上説明したように、光透過のスイッチン
グ動作は、pinダイオード10を比較的高い電界の状
態(電界E=E2又はE12)の光吸収曲線に設定する
ための逆バイアス電圧印加用直流電源30以外は全く外
部回路を必要とせず、また、pin型ダイオード10の
内部に特有の現象を使用したものであり、図8や図9の
示すように複雑な回路を有する従来の電気回路装置とは
全く異なる新しい原理に基づくものである。このため本
発明においては最初、比較的高い光透過状態にあった図
1のpin型ダイオード10が当該pin型ダイオード
10自身に入射される光パルスによって動的に自己の内
部に発生する光キャリア41によってセルフスイッチ
し、比較的高い透過状態から比較的低い透過状態に遷移
する時間の間だけ光パルスが素子を突き抜けてくるとい
う新しい動的過程を利用して光微分動作を行なうもので
ある。これは、従来にはなかった動作であり、新しい素
子を用いた方式である。本方式の長所は、以上のように
簡単な構成で光微分が可能である他に、素子内部の微小
な部分で動作を起こしているため従来の方法に比べて非
常に高速に光微分動作を可能とできる点にある。
【0034】すなわち、本発明に係る実施例の効果をま
とめると、広い強度範囲の光入射に対してその微分動作
を可能にすることができるという特有の利点を有する。
また、従来例に比較して以下の利点を有する。 (a)従来例に比較し構成が簡単である。 (b)pin型ダイオード10に印加する逆バイアス電
圧を印加するための直流電源30のみが必要であるの
で、従来例に比較して消費電力が小さい。 (c)信号光は1個のpin型ダイオード10を通過す
るだけであり、従来例のように複数の回路を通過しない
ので、従来例に比較して時間応答が速く、例えば光間引
き装置を構成した場合は、入射される高速パルス列に追
従することができる。
【0035】以上の実施例において、光半導体装置とし
て、ワニエシュタルク局在効果を有する超格子構造超格
子構造の真性半導体i層を有するpinダイオード10
を用いているが、本発明はこれに限らず、図2に示すよ
うに、青色波長の光吸収量が低下する領域における光吸
収端が印加電界をよってシフトする特性(いわゆる、光
吸収のブルーシフト特性)を持つ電界吸収効果を有する
以下のような光半導体素子であればよい。 (A)pinダイオード型の半導体素子であって、ショ
ットキー電極を有してi層に電界を印加することがで
き、光吸収のブルーシフト特性を持つ電界吸収効果を有
する素子であり、ここで、i層として例えば以下に示す
構造を有するもの。 (A1)QCSE(量子閉じ込めシュタルク効果)によ
るエキシトンピークの短波長側の端部を利用することに
よる、光吸収量のブルーシフト特性を利用した多重量子
井戸構造。 (A2)光吸収量が電界を印加することによって減少す
る電界吸収効果を有する量子細線及び量子ドット構造。 (B)2つの対向する透明電極間に有機物を挟設し、そ
の有機物が電界吸収効果を有し、かつ光吸収のブルーシ
フト特性を有する素子。
【0036】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、ワ
ニエシュタルク局在効果を有する超格子構造の真性半導
体i層を含む1個のpin型ダイオード、又は量子閉じ
込めシュタルク効果を有する多重量子井戸構造の真性半
導体i層を含む1個のpin型ダイオードにてなり、印
加電界を変化することによって光吸収量が変化する電界
吸収効果を有する光半導体素子と、上記光半導体素子に
接続され、上記光半導体素子において所定の光吸収量が
生じるように、上記光半導体素子に所定の印加電界を印
加するための逆バイアス電圧印加用直流電源とを備え、
上記光半導体素子に光微分すべき信号光を入射すること
によって、上記光半導体素子における電界スクリーニン
グ効果により、当該信号光を入射した上記光半導体素子
から上記信号光を光微分した微分光を得る。従って、本
発明に係る光半導体装置は、以下の特有の利点を有す
る。 (a)従来例に比較し構成が簡単である。 (b)pin型ダイオードに印加する逆バイアス電圧の
供給のみであるので、従来例に比較して消費電力が小さ
い。 (c)信号光は1個のpin型ダイオードを通過するだ
けであり、従来例のように複数の回路を通過しないの
で、従来例に比較して時間応答が速い。例えば、光間引
き装置を構成した場合は、入射される高速パルス列に追
従することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である、超格子構造の真性
半導体i層を有するpin型ダイオードを用いた光半導
体装置の断面図及び回路図である。
【図2】 図1の半導体半導体装置の波長に対する光吸
収量の特性を示すグラフである。
【図3】 図1の半導体半導体装置における時刻t11
の光微分動作を示す図であって、(a)は入射光を示す
タイミングチャートであり、(b)は超格子層のエネル
ギー準位図であり、(c)は光吸収量の波長特性を示す
グラフであり、(d)は出力光のタイミングチャートで
ある。
【図4】 図1の半導体半導体装置における時刻t12
の光微分動作を示す図であって、(a)は入射光を示す
タイミングチャートであり、(b)は超格子層のエネル
ギー準位図であり、(c)は光吸収量の波長特性を示す
グラフであり、(d)は出力光のタイミングチャートで
ある。
【図5】 図1の半導体半導体装置における時刻t13
の光微分動作を示す図であって、(a)は入射光を示す
タイミングチャートであり、(b)は超格子層のエネル
ギー準位図であり、(c)は光吸収量の波長特性を示す
グラフであり、(d)は出力光のタイミングチャートで
ある。
【図6】 図1の半導体半導体装置における光微分動作
を示す図であって、(a)入射光の光強度と(b)出力
光の光強度と(c)素子の光電流とを示すタイミングチ
ャートである。
【図7】 図1の半導体半導体装置における波長に対す
る光吸収量の実験結果のグラフである。
【図8】 第1の従来例の電気光微分装置の構成を示す
ブロック図である。
【図9】 第2の従来例の電気光間引き装置の構成を示
すブロック図である。
【図10】 図1の半導体半導体装置におけるスクリー
ニング領域を説明するための図であって、(a)は直流
電源の電圧が印加された2つの対向電極間に電荷Qが存
在するときの回路の一例を示す回路図であり、(b)は
電荷Qが無いときの電位分布を示すグラフであって、
(c)は電荷Q自身が作る電位分布を示すグラフであっ
て、(d)は電荷Qが有るときの電位分布を示すグラフ
であり、(e)はホールと電子の蓄積があるときの電位
分布を示すグラフである。
【符号の説明】
10…pin型ダイオード、 11,12…電極、 13…p型キャップ層、 14…p型クラッド層、 15…i型クラッド層、 16…超格子構造を有する真性半導体i層、 17…i型クラッド層、 18…n型クラッド層 19…n型バッファ層、 20…n型半導体基板、 21…井戸層、 22…障壁層、 41…光キャリア、 42…光吸収を起こす量子井戸内のサブバンド、 E0,E1,E2,E11,E12…電界、 Ec…伝導帯、 Ev…価電子帯。
フロントページの続き (72)発明者 渡辺 敏英 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷 5番地 株式会社エイ・ティ・アール光 電波通信研究所内 (56)参考文献 特開 平6−67244(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワニエシュタルク局在効果を有する超格
    子構造の真性半導体i層を含む1個のpin型ダイオー
    ド、又は量子閉じ込めシュタルク効果を有する多重量子
    井戸構造の真性半導体i層を含む1個のpin型ダイオ
    ードにてなり、印加電界を変化することによって光吸収
    量が変化する電界吸収効果を有する光半導体素子と、 上記光半導体素子に接続され、上記光半導体素子におい
    て所定の光吸収量が生じるように、上記光半導体素子に
    所定の印加電界を印加するための逆バイアス電圧印加用
    直流電源とを備え、 上記光半導体素子に光微分すべき信号光を入射すること
    によって、上記光半導体素子における電界スクリーニン
    グ効果により、当該信号光を入射した上記光半導体素子
    から上記信号光を光微分した微分光を得ることを特徴と
    する電界吸収効果を有する光半導体装置。
  2. 【請求項2】 上記電界スクリーニング効果の動作速度
    は、上記光半導体素子に入射される複数個の光からなる
    光列の周期よりも十分に遅くなるように設定されたこと
    を特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
  3. 【請求項3】 上記電界スクリーニング効果の動作速度
    は、上記光半導体素子に入射される複数個の光からなる
    光列の周期よりも十分に速くなるように設定されたこと
    を特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
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