JP2697703B2 - 有機非線形光学材料 - Google Patents

有機非線形光学材料

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美穂 世良
昌巳 坂本
昭次 渡辺
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光情報処理や光通
信などで用いられる有機非線形光学材料に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】高調波発生、和周波発生、カー効果、ポ
ッケルス効果のようなさまざまな効果をうみだす非線形
光学現象を用いることにより、波長変換素子、光変調
器、光スイッチさらには、光論理ゲート・光トランジス
タ等の光コンピュータ実現のための基本素子等さまざま
な機能素子が可能となる。
【0003】従来、非線形光学材料は燐酸2水素カリウ
ム(KDP)・ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )・ヒ
化ガリウム(GaAs)等の無機材料及び半導体材料が
おもに開発されてきた。
【0004】ところが近年、それらの材料に比べ、非線
形光学性能に優れ光応答速度が非常に速い有機材料が発
見され、以来有機材料を用いた有機非線形光学素子の開
発が活発に行われるようになった。
【0005】このような有機非線形光学材料の例とし
て、パラニトロアニリン(pNA)、2−メチル−4−
ニトロアニリン(MNA)(エー・シー・エス シンポ
ジウムシリーズ(ACS Symposium Ser
ies),233,1(1983))や、4−(N,N
−ジメチルアミノ)−3−アセタミドニトロベンゼン
(DAN)(アプライド・フィジクス・レターズ(Ap
pl.Phys.Lett.),51(19),148
4(1987))等があげられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、pNA
のような化合物は、分子としては大きな非線形性を有す
るが、結晶では分子間の双極子−双極子相互作用が大き
いため中心対称となり、第二次高調波発生(SHG)を
発現しない。
【0007】また、MNA,DAN等は非中心対称性の
結晶を形成し、かつ大きな非線形性を有するが、紫外・
可視吸収の吸収端がMNAでは530nm,DANでは4
80nmにあり、半導体レーザ光(λ=700nm〜100
0nm)を透過型で波長変換する場合には、化合物自身に
よる第二高調波の再吸収による変換効率の低下や化合物
劣化等が問題となる。より短波長での第2高調波発生を
目的とした化合物には、3,5−ジメチル−1−(4−
ニトロフェニル)ピラゾール(DMNP)(株式会社シ
ーエムシー発行「新・有機非線形光学材料I」第76〜
81頁(1991))が挙げられるが、DMNPの吸収
端は402nmであり、青色光変換用の材料としての利用
は可能であるが、紫外光変換には適していない。
【0008】本発明の目的は、以上のような問題を解決
し、結晶レベルにおいても大きな非線形性を有し、か
つ、紫外光領域での第二高調波発生が可能となる有機非
線形光学材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、短波長側の吸
収端をもつ有機化合物すなわち下記構造式(1)で示さ
れるカンファー不飽和エステル誘導体からなることを特
徴とする有機非線形光学材料である。
【0010】
【化2】
【0011】上記化合物において、R1 〜R5 は水素,
フッ素,塩素,臭素等のハロゲン元素、メチル基,エチ
ル基,プロピル基等の炭素数が1から6のアルキル基、
ベンジル基,フェネチル基等の炭素数が7から11のア
ラルキル基、フェニル基,ナフチル基等の炭素数が6か
ら12のアリール基、メトキシ基,エトキシ基,プロポ
キシ基等のアルコキシ基、ニトロ基、メトキシカルボニ
ル基,エトキシカルボニル基等のエステル基、アセチル
基,プロピオニル基ベンゾイル基等のアシル基、メチル
チオ基等のアルキルチオ基、メチルアミノ基,ジメチル
アミノ基等のアルキルアミノ基、シアノ基等を示すが、
この限りではない。
【0012】本発明のカンファー誘導体からなる有機非
線形光学材料は、熱的に安定であり、耐候性にも優れて
いる。
【0013】本発明のカンファー誘導体は分子内に光学
活性なボルナン骨格を有することにより、分子及び結晶
の中心対称性をなくしたものである。さらに、分子内に
官能基としてヒドロキシ基,カルボキシル基等を導入す
ることによって、大きな非線形性を有するものである。
また、基本骨格に共役系のないボルナン骨格を有するこ
とにより、吸収端を短波長側にしたものである。
【0014】この有機化合物は市販の有機化合物を用い
て容易に合成することが可能であり、工業的にも充分利
用が可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の内容を実施例と共に詳細
に説明する。
【0016】
【化3】
【0017】側管付滴下ロートを付けた300mlのナ
ス型フラスコに1′,7′,7′−トリメチルビシクロ
[2.2.1]ヘプチリデン酢酸3.15g,ベンゼン
100mlを入れ、滴下ロートから塩化チオニル4.5
7gを15分で滴下した。室温で30分攪拌した後、5
0℃でさらに4時間攪拌した。ベンゼンを減圧下にて留
去して、1′,7′,7′−トリメチルビシクロ[2.
2.1]ヘプチリデン酢酸クロリドを合成した。側管付
き滴下ロートを付けた100mlのナス型フラスコにフ
ェノール0.57g,ピリジン0.40g,テトラヒド
ロフラン50mlを入れ、滴下ロートから1′,7′,
7′−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン
酢酸クロリド1.14gを5分で滴下した。室温で4時
間攪拌した後、イソプロピルエーテルで抽出,乾燥を行
った。溶媒を減圧下留去して1′,7′,7′−トリメ
チルビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン酢酸フェニル
エステル0.86g(収率60%)を得た。
【0018】融点は、54.5〜56℃であり、アセト
ニトリル溶液中での吸収端は280nmであった。
【0019】 元素分析値 C H 理論値 79.96% 8.20% 実測値 80.1 8.1 1 H−NMRスペクトル(CDCl3 ) δ 0.95(ppm) (3H,s,CH3 ) 1.02 (3H,s,CH3 ) 1.2−2.9 (7H,m,CH,CH2 ×3 ) 5.73 (1H,br,CH ) 6.6−7.6 (5H,m,ベンゼン環 ) 赤外吸収スペクトル νmas. 1720cm-1 1640 1580 1450 紫外・可視吸収スペクトル(アセトニトリル溶液) λmax. 233.4(ε23000)nm 旋光度 [α]D 20=−67.40(c=2.0) SHG強度の測定は、粉末法により行い、光源は、LD
レーザー励起のNd:YLFレーザー(波長1047n
m)を用い、試料は乳鉢により50μm以下に粉砕した
ものを使用し、ウレアと同程度の強度を有した。
【0020】同様にして合成した化合物について、YL
Fレーザー(波長1047nm)のSHG強度とエタノー
ル溶液中での吸収端波長について表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】本発明により、紫外光領域での第二高調
波発生を透過型で可能であり、かつ大きな光非線形性を
有する有機非線形光学材料を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 昭次 千葉県千葉市稲毛区弥生町1−33 千葉 大学内 (72)発明者 藤田 力 千葉県千葉市稲毛区弥生町1−33 千葉 大学内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(1)で示される不飽和エステ
    ルからなることを特徴とする有機非線形光学材料。 【化1】 (式中、R1 〜R5 は水素,ハロゲン元素,炭素数が1
    から6のアルキル基,炭素数が7から11のアラルキル
    基,炭素数が6から12のアリール基,アルコキシ基,
    ニトロ基,エステル基,アシル基,アルキルチオ基,ア
    ルキルアミノ基,シアノ基のいずれかを示す。)
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