JP2697579B2 - 純亜鉛電気めっき鋼板 - Google Patents

純亜鉛電気めっき鋼板

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JP2697579B2 JP28500193A JP28500193A JP2697579B2 JP 2697579 B2 JP2697579 B2 JP 2697579B2 JP 28500193 A JP28500193 A JP 28500193A JP 28500193 A JP28500193 A JP 28500193A JP 2697579 B2 JP2697579 B2 JP 2697579B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加工性、化成処理性、
塗装後外観に優れた純亜鉛電気めっき鋼板、特に、自動
車車体用に好適な純亜鉛電気めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、防錆用電気めっき鋼板の用途が多
岐にわたり、多方面で使用されるようになってきた。特
に、防錆性の向上要求の拡大に伴い、電気亜鉛めっき鋼
板が自動車車体に広く使用されるに至った。
【0003】純亜鉛電気めっき鋼板は、その製造時のコ
ストの安さ、製造上の制御の容易さから広く使用されて
いるが、自動車車体への使用にあたっては、プレス加工
時において、焼付き現象による亜鉛の金型付着に起因す
るプレス割れ、外観不良が問題となる場合が多い。
【0004】この点を改良するために、亜鉛のめっき結
晶方位の優先配向を規定したものには、例えば、特開平
1−142097号公報、特開平4−110489号公報、特開平4
−259394号公報等に開示されている電気亜鉛めっき鋼板
がある。
【0005】特開平4−325665号公報等には、亜鉛めっ
き鋼板上に積極的に酸化皮膜を形成させることで、プレ
ス成形性の向上を図る方法が開示されている。
【0006】車体防錆性の向上の観点から、めっき目付
量を多くした厚目付指向があるが、電気亜鉛めっき鋼板
においては、塗装後にブツ状の欠陥が発生することが非
常に多く、自動車車体外板用として使用する際の問題と
なっている。
【0007】このような塗装欠陥には、母材の欠陥だけ
でなく化成処理の欠陥に起因しているものが多くある。
一般的に、純亜鉛電気亜鉛めっき鋼板にはホワイトスポ
ットと称される化成不良が発生しやすいことは公知事実
であるが、この原因は、アルカリ脱脂や化成処理時の局
部的なエッチングであると考えられている。このためホ
ワイトスポットの発生は、化成処理液側要因とされるこ
とが多く、めっき鋼板側での要因は十分に解明されてい
ない。したがって、純亜鉛電気めっき鋼板そのものにお
いて、積極的に化成処理性および塗装性を向上させるよ
うな方法は明らかにされていない。
【0008】純亜鉛電気亜鉛めっき鋼板の加工性に関し
ては、めっき皮膜の亜鉛結晶の方位に着目した事例は非
常に多いが、そのほとんどの場合が亜鉛結晶のすべり面
である(0 0・2)面との関係で検討されている。しかし、
実際の自動車車体外板のプレス条件では、加工性を母材
側の要因を無視して亜鉛結晶の(0 0・2)面の優先配向性
のみで整理することは不十分であり、むしろ不可能に近
い。すなわち、配向性指数が同程度のものでも、加工時
の高面圧条件では、金型と鋼板との摺動性不良からプレ
ス割れが発生したり、成形できなかったりするものが存
在する。
【0009】加工性に及ぼすめっき皮膜中の不純物金属
の影響については、特開平1−142097号公報に、Ni、F
e、Pb等が(0 0・2)面の結晶方位に影響を及ぼすことが
示されているが、めっき皮膜中のNiそのものが不純物と
して加工性に影響を及ぼすことは明確にされていない。
【0010】塗装性、化成処理性に関しては、純亜鉛電
気めっき鋼板では、結晶方位面によって、またはめっき
皮膜中の不純物の存在によって、化成処理性が変動する
と考えられ、その結果、塗装後外観も変動すると予測さ
れる。しかし、めっき結晶の優先方位やめっき皮膜中に
存在する不純物が化成処理性にどのような影響を及ぼす
かは、十分に検討されていない。
【0011】さらに実際には、プレス成形した後、化成
処理と塗装が施されるが、プレス時の摺動、疵付きによ
っても化成処理性が変化し、化成処理不良、塗装欠陥と
なる場合がある。このようなプレス時の摺動、疵付きに
対しては、プレス成形性が大きな影響を及ぼし、プレス
成形性と化成処理性とは関係があると予想される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の課題を
解決するためになされたものであり、本発明の目的は、
特に自動車車体用の鋼板として要求される加工性、化成
処理性および塗装性に優れ、塗装後外観を満足させる純
亜鉛電気めっき鋼板を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の
(1)および(2) の鋼板にある。
【0014】(1)めっき目付量が30g/m2以上の純亜鉛電
気めっき鋼板において、このめっき皮膜直下のめっき母
材表面に存在する開口クラックが、幅0.3 μm 未満、ま
たは長さ1.5 μm 未満であり、かつそのめっき皮膜の亜
鉛結晶構造の(1 0・0)面の配向性指数が0.2 以上、(1 1
・0)面の配向性指数が 0.5〜1.5 であることを特徴とす
る加工性、化成処理性および塗装後外観に優れた純亜鉛
電気めっき鋼板。
【0015】(2)めっき皮膜中の不可避的不純物のうち
のNiが、めっき皮膜総重量の0.3 %以下、かつこの皮膜
最表面のNiおよびFeが、実質的に0%であることを特徴
とする上記(1) に記載の加工性、化成処理性および塗装
後外観に優れた純亜鉛電気めっき鋼板。
【0016】「配向性指数」は、K.S.Willson らが提唱
した測定方法による。その方法は、純亜鉛めっき鋼板、
亜鉛粉末 (標準試料) を試料としてX線回析を行い、各
々の結晶方位面のピーク配分比率の比で面配向性指数を
求めるものである。
【0017】すなわち、(k l・m)面配向性指数は次の式
で表される。
【0018】(k l・m)面配向性指数 =〔めっき鋼板の(k l・m)面配向比率〕/〔亜鉛粉末の
(k l・m)面配向比率〕 ここで、 めっき鋼板の(k l・m)面配向比率=〔I(k l・m)〕/
〔ΣI(k l・m)〕 ただし、I(k l・m):めっき鋼板の(k l・m)面の強度 ΣI(k l・m):めっき鋼板のZn全配向面強度の総和 亜鉛粉末の(k l・m)面配向比率=〔Istd (k l・m)〕/
〔ΣIstd (k l・m)〕 ただし、Istd (k l・m):亜鉛粉末の(k l・m)面の強度 ΣIstd (k l・m):亜鉛粉末のZn全配向面強度の総和 この際のX線回析条件は、次のとおりである。
【0019】ターゲット:Mo、ただし、モノクロメータ
使用 加速電圧 :40 kV 加速電流 :200mA 2θ :10〜55度 測定面積 :530mm 「めっき皮膜最表層」とは、表面から約1000Å程度
の深さまでを指し、「実質的に0%」とは、XPS(X
線光電子分光法)装置(島津製 ESCA750、X線源=MgK
α,8kV−30 mA、真空度=10-8Torr 、Arスパッタ=
2keV)を用いて、0〜60秒間スパッタしたとき、Feお
よびNiエネルギーピークが検出されないことを意味す
る。
【0020】
【作用】本発明の鋼板を前記のように限定した理由を説
明する。
【0021】まず、母材に存在するクラック、すなわち
母材欠陥であるが、幅で0.3 μm を超えるか、または長
さで1.5 μm を超えるクラックが表面に開いて存在する
場合は、適正にめっき処理しても、クラック部を埋めて
めっき皮膜が形成されないためにクラック相当部の表面
が凹み、水分あるいはガス成分が溜まりやすい。その結
果、塗装欠陥を起こし、塗装後の外観不良となる。
【0022】この塗装欠陥の発生機構は、次のように考
えられる。クラック相当部に溜まった水分あるいはガス
成分は、塗装した後急激に焼き付けた場合に揮発成分と
して蒸発していくが、その際に塗装表面がまず硬化する
と、クラック相当部から発生した揮発成分が塗膜外に蒸
発できなくなり、さらに焼き付けられた場合に揮発成分
が膨張し、塗膜の硬化の最後に塗膜を破ることによっ
て、ピンホール状の塗装欠陥に至る。
【0023】特に、自動車車体用の鋼板として供される
場合は、化成処理および電着塗装工程で水が洗浄剤とし
て使用されるために、クラックが存在する凹み部に水分
が溜まりやすく、その後電着塗装すると、焼き付け段階
でその水分が凹み部から急激に蒸気となり、蒸発してい
く現象によって、上記と同様のピンホール状の塗装欠陥
が発生しやすくなると考えられる。
【0024】このような母材クラックに関しては、圧延
時のロール疵に起因するもの、母材結晶粒界が酸洗時の
オーバーピックリングによって選択的に溶解されて発生
するもの等が考えられ、これらは母材鋼板の製造上の留
意でなくすことができる。
【0025】次に、めっきの目付量であるが、特に純亜
鉛めっきでは目付量の増大にしたがい、めっき皮膜が緻
密に形成されはじめるため、母材クラック相当部の凹み
から発生するガスのガス抜けが悪くなる。
【0026】実際の自動車車体用の鋼板の加工ラインで
は、プレスした後に化成処理、電着塗装を施す工程にな
る。このとき、幅で0.3 μm を超えるか、または長さで
1.5μm を超えるクラックが母材表面に開いて存在し、
これにめっき処理して目付量を30g/m2以上に厚くした鋼
板を、プレスした後化成処理し、さらに電着塗装した場
合には、母材クラック相当部の凹みから発生したガス
が、めっき層を通して抜けにくくなってめっき層中に局
部的にガスが溜まり、その後塗装皮膜の弱いところから
急激にガス抜けが起こり、塗装欠陥が発生しやすくなる
と考えられる。
【0027】このため、後述する実施例の図1で示すよ
うに、目付量を30g/m2以上に厚くすることができるの
は、母材表面に開いて存在するクラック状欠陥が幅で0.
3 μm以下、または長さで1.5 μm 以下の場合のみであ
る。目付量が30g/m2以上に厚い場合においては、塗装欠
陥が発生しない最も望ましい領域は、母材表面の欠陥が
幅で0.3 μm 以下、かつ長さで1.5 μm 以下を同時に満
たす範囲であることになる。
【0028】次いで、亜鉛結晶の配向性指数の限定理由
を述べる。
【0029】自動車車体外板のプレス時には、非常に高
い面圧がめっき鋼板表面にかかると考えられる。その面
圧は、成形部位にもよるが 4.9N/mm2以上となる。この
ときの電気亜鉛めっき鋼板の加工性については、広範囲
で金型と接触した場合の面圧下での摺動性が問題になっ
てくる。亜鉛がこのような高面圧下で金型と接触すると
きの焼付きが、急激にプレス成形性を阻害させるためで
ある。
【0030】このような状況下でのプレス成形性(加工
性)は、従来行われている亜鉛結晶の(0 0・2)面方位の
配向性のみから説明することは不可能であり、配向性指
数が同程度のものでも高面圧下では、摺動性不良からプ
レス割れなどの成形不良が発生する。
【0031】種々の亜鉛結晶方位を有する材料を用い
て、高面圧下での摺動性を調査した結果によると、(1 0
・0)面の優先配向が大きいほど、加工性が良好になる傾
向が認められる。基底面に対し、この(1 0・0)面が優先
配向した亜鉛結晶は、剪断すべりに対し非常に強くなる
ため摺動性が向上すると考えられる。また、高面圧で押
さえた場合の変形に対しても強いため、めっき潰れ現象
を起こしにくくなり、加工性が向上するものと考えられ
る。
【0032】また、(1 0・0)面の優先配向性が高いと化
成処理欠陥が発生し難く、これによる塗装仕上がり外観
不良を起こしにくい。この理由は、摺動時のめっき損傷
が軽減されて摺動による表面活性化が抑制され、アルカ
リ脱脂時、化成処理時の極度の部分的エッチングを抑制
させるため、ホワイトスポットのような化成処理欠陥が
抑制されるからである。
【0033】(1 0・0)面の配向性指数が0.2 未満では、
上記の効果が得られない。十分な化成処理性、特に、実
プレスで微細な疵を受けた場合の化成処理性を満足させ
ることができない。
【0034】(1 1・0)面の配向性も高面圧下での摺動性
に寄与する。(1 1・0)面は、(1 0・0)面と同様に剪断す
べりに対しては強いが、めっき潰れに対しては強くな
い。したがって、(1 1・0)面の配向性指数が0.5 未満で
は十分な摺動性が得られず、摺動時にめっきが疵付きや
すく、摺動性不良を起こしやすいとともに、この疵は化
成処理不良、塗装不良の原因になる。一方、(1 1・0)面
の配向性指数が1.5 を超えると、逆にめっき潰れが大き
くなり、プレス加工時において高面圧下でプレス金型と
めっきとが直接接触する面積が大きくなり、摺動性が低
下する。
【0035】このような、亜鉛結晶方位の優先配向性
は、めっき浴中の不純物および電析条件により影響を受
ける。さらに、亜鉛めっき結晶の優先配向性を強めるた
めには、めっき浴中に、あるいはめっき前処理段階で、
ノニオン系、両性イオン系、また、酸性浴中で安定した
イオン分解し発泡性の心配の少ない陰イオン系の界面活
性剤、あるいは水溶性高分子等を添加し、めっき母材表
面に添加成分を吸着させ、強制的に亜鉛めっき結晶方位
を揃えることが有効である。
【0036】次に、不純物金属としてのNiの影響につい
て説明する。
【0037】一般に、同一電気めっきラインで純亜鉛め
っき鋼板とZn−Ni合金めっき鋼板を製造している場合
は、Niが不純物として純亜鉛めっき浴に混入するのをど
うしても避けることができない。また、Niは配管系にス
テンレス鋼を使用している場合も、このステンレス鋼か
ら混入してくる可能性がある。めっき浴中に微量に混入
してくるこのようなNiは、電析時にめっき皮膜に取り込
まれるために皮膜中不純物として存在することになる。
【0038】めっき皮膜中の不純物Niが亜鉛結晶の配向
性にどのような影響を及ぼすかについて調査した結果に
よれば、十分に(0 0・2)面の配向性指数が低下している
めっき結晶状態では、Ni自体はめっき結晶方位に大きな
影響を及ぼさない。しかし、加工性において、特に高面
圧時の摺動性に非常に大きな影響を及ぼす。
【0039】めっき皮膜中の不純物Niが加工性に影響を
及ぼす理由は不明確であるが、次のように推定される。
すなわち、実際のめっきラインでは、数セルのめっきセ
ルで電析されるため、めっきセル間では無通電状態にな
り、めっき液によるZnとNiの置換析出が起こる。したが
って、各セル毎にめっき層間にNiリッチ層が形成され、
このNiリッチ層はめっき層間の密着力不良をもたらす。
上記のように、ほとんどめっき結晶方位に影響を及ぼさ
ない状態では、密着力不良によりこの層間ですべり現象
を起こしやすくなるため、高面圧時の摺動性が低下する
と考えられる。
【0040】特に、不純物Niがめっき皮膜総重量の0.3
%を超えると、セル間でのNiリッチ層が顕著に形成され
るため、摺動性が低下する。
【0041】このようなめっき皮膜中のNi含有量は、基
本的にはめっき浴中のNi量を管理することで制御するこ
とができる。実際には、めっき浴中のNi量として100ppm
以下に管理することが好ましい。また、無通電時の置換
析出がめっき皮膜中に含まれてくるNiの主原因であるこ
とから、めっき浴管理だけでなく、できるだけ無通電時
間を少なくすることが重要である。
【0042】次に、めっき最表面の不純物元素の限定理
由を説明する。
【0043】めっき皮膜の最表面、特に最表面から約10
00Åの範囲までに、NiおよびFeが、特に1μm 程度の大
きさで局部的に存在する場合、化成処理異常を起こし、
塗装外観を損ねることがある。すなわち、化成結晶成長
時に、このNiおよびFeと周囲のZnとの間で電池を形成
し、初期のZnのアノード反応が周囲の部分よりも促進さ
れ、化成結晶異常が起こる。
【0044】このため、NiおよびFeが前記XPSによっ
て、めっき皮膜の最表面に実質的に検出されない程度ま
で、NiおよびFeを低減するのがよい。このための方法と
しては具体的には、めっき時の最終セルでの無通電浸漬
によって亜鉛からの置換析出を抑制し、めっき完了後、
直ちに水洗することが考えられる。これ以外に、最終セ
ルで逆電解させ、強制的にめっき最表面層を薄く溶解、
あるいは表層を薄く酸化させて不純物金属を置換析出さ
せないようにする方法も考えられる。
【0045】
【実施例】まず、塗装欠陥に及ぼす母材クラック形状の
影響を明確にするため、各種の純亜鉛電気めっき鋼板を
用意し、中アルカリ脱脂材FC−4480 (日本パーカライ
ジング社製) を用いて標準条件で脱脂した後、PB−L
3080 (日本パーカライジング社製) により標準条件で浸
漬化成処理を施した。これらの鋼板に、PTU−80( 日
本ペイント社製 )を用いるカチオン電着法で、厚さ40μ
m の電着塗装を施した。
【0046】上記の電着塗装鋼板を230 ℃で2分間急激
に焼付けた後、さらに180 ℃で10分間焼付ける2段焼付
けを実施し、塗装欠陥が発生した場合、その欠陥部の塗
膜とめっきを剥離して母材クラックの状態を観察した。
【0047】図1は、純亜鉛めっき鋼板の塗装欠陥発生
に及ぼす目付量、母材表面の最大クラック幅および最大
クラック長さの影響を示す例である。一部、実ラインで
塗装欠陥が発生しているものについての調査結果も加え
ている。
【0048】図1に示すように、めっき目付量が25g/m2
未満では、塗装欠陥は発生せず、母材クラックの形状と
塗装欠陥とは無関係であることがわかる。しかし、母材
欠陥としてのクラックの開口部が、幅で0.3 μm 以上、
または長さで1.5 μm 以上あるようなものが存在する場
合は、目付量が30g/m2以上では塗装欠陥が発生している
ことがわかる。実際には、母材欠陥としてのクラックが
ないことが理想であるが、クラックの幅が 0.3μm 未
満、または長さが 1.5μm 未満であれば、母材要因とな
る塗装欠陥は問題にならないと考えてよい。
【0049】次に、母材クラックがないことを確認した
冷延鋼板に、表1に示すようなめっき浴組成を基本とし
て電気亜鉛めっき処理を施した。このとき、めっきの結
晶方位の優先配向性を変更させるために、めっき浴にFe
とNiイオンを不純物として下記のように添加した。さら
に、強制的にめっきの結晶方位を変更させるために、基
本めっき浴中に、添加剤として乳酸を下記のように投入
した。
【0050】
【表1】
【0051】 (不純物金属添加量) (添加剤投入量) Ni2+=0〜100ppm 乳酸=0〜5000ppm Fe2+=0〜2000ppm 電解条件は、電流密度を60A/dm2、相対流速を 1.0m/
秒、目付量を60g/m2に統一した。
【0052】めっき処理後は、最表面の不純物量の影響
をみるために、上記所定のめっき完了後、直ちに水洗、
乾燥した通常めっき品と、めっき完了後も、そのまま一
定時間めっき液に浸漬させた最表層不純物付着めっき品
との二種類のサンプルを作製した。
【0053】評価項目のうち、めっき結晶配向性指数
は、前記のX線回折法により、表2の条件で亜鉛の各結
晶方位面ピーク強度を測定し、さらに演算により(1 0・
0)面、(1 1・0)面および(0 0・2)面について求めた。
【0054】
【表2】
【0055】同じく加工性は平面摺動試験装置を使用
し、防錆油(出光社製SK油)を 2.0g/m2以上塗布した
状態で、〔面圧(=抑え圧P)〕/〔サンプル接触面
積〕を変化させて、摺動距離100mm 、引抜き速度200mm/
min で引抜いた時の最大引抜き荷重(F)から、最大摩
擦係数(F/P)を求める方法で評価した。
【0056】図2は、上記の平面摺動試験方法を示す概
略の断面図である。図中、1がめっき鋼板のサンプル、
2が抑え金具であり、塗油量はサンプルを防錆油に浸漬
した後、2時間立てかけて放置する方法により調節し
た。
【0057】実プレスにおいては、面圧が7.4 N/mm2
上でも最大摩擦係数が0.6 未満であれば、非常に厳しい
成形であっても適切な母材を選定することにより、成形
可能である。しかし、最大摩擦係数が0.6 以上では、金
型への焼付きの影響が大きいため、母材の機械特性値の
みで対応することが困難であることが確認できている。
そこで、加工性の評価基準値を、平面摺動での面圧が7.
4 N/mm2のときでの最大摩擦係数で0.6 未満とした。
【0058】化成処理性は、平板状態で化成処理不良の
発生有無を確認し、これを平板化成処理性として評価し
た。
【0059】さらに、実際のプレスラインでのプレス状
況を再現するために、摺動を受けた後の化成処理性を調
査した。荷重が100 g、先端径が0.3mm φの針で長さ 1
00mmをけがき処理した後、前述と同様の中アルカリ脱
脂、浸漬化成処理を施し、化成外観を観察し、目視上の
化成欠陥有無を加工後化成処理性として評価した。その
際、化成処理性の評価基準を、摺動を受けた部分でも化
成欠陥が出ないこととした。
【0060】めっき皮膜全体中のNi含有量の測定は、酸
洗した後、めっき皮膜を化学分析で定量する方法とし
た。ただし、酸洗が不十分な場合、Niの溶け残りが発生
する可能性があるため、酸洗が十分行われているかどう
かを、酸洗後、蛍光X線回析を用いてNiの有無で確認
し、めっき皮膜中のNiが完全に溶解しているサンプルを
対象とした。
【0061】めっき最表面のNiとFeの有無は、前述のX
PSで調査した。以上の調査結果を、表2および図3〜
図6に示す。
【0062】表2に、めっき終了後、めっき液浸漬時間
を変化させることにより最表層不純物量を変化させたサ
ンプルについて、表面残留不純物と化成処理性の関係を
示したが、表層にNi、Feが検出される場合、化成処理性
が低下することがわかる。
【0063】図3は、目付量が60g/m2の場合の、最大摩
擦係数に及ぼすめっき結晶方位の(00・2)面の配向性指
数の影響を示す図である。図示するように、(0 0・2)面
の配向性指数と最大摩擦係数(平面摺動性)との間に
は、明確な関係が認められず、高面圧下での加工性は(0
0・2)面のみでは完全に整理できないことがわかる。
【0064】図4は、目付量が60g/m2の場合の、最大摩
擦係数と(1 0・0)面および(1 1・0)面の各配向性指数と
の関係を示す図である。図5は、同じく、加工後化成処
理性と(1 0・0)面および(1 1・0)面の各配向性指数との
関係を示す図である。
【0065】図4と図5の結果から、望ましい最大摩擦
係数と加工後化成処理性を共に満たす範囲は、配向性指
数が(1 0・0)面で0.2 以上、かつ(1 1・0)面で 0.5〜1.
5 の範囲であることがわかる。なお、平板化成処理試験
で化成異常の発生しているものは全て、加工後化成処理
試験で加工異常が発生していた。
【0066】めっき皮膜中のNi含有量は、前記のように
めっき浴中にNi2+を添加していく方法で変化させたが、
Niを添加していない時のめっき皮膜中のめっき結晶面の
配向性指数は、次のとおりであった。
【0067】(0 0・2)面配向指数:0.03 (1 0・0)面配向指数:1.26 (1 1・0)面配向指数:0.92 図6は、目付量が60g/m2の場合の、加工後化成処理性、
最大摩擦係数およびめっき皮膜中のNi含有量の関係を示
す図である。図中の白丸印は加工後化成処理欠陥が発生
しなかったもの、黒丸印は加工後化成処理欠陥が発生し
たものを表している。
【0068】図6から、望ましい加工性と化成処理性の
両者を共に満たすためには、めっき皮膜中のNi含有量で
180mg/m2、すなわち、めっき皮膜総重量中のNi比率に換
算して0.3 %以下に抑制すべきであることがわかる。
【0069】
【発明の効果】本発明の鋼板は、めっき母材鋼板のクラ
ックを適正な形状にし、かつめっき結晶の配向性指数
と、めっき中または最表面の不純物量を制御した加工
性、化成処理性および塗装性に優れた純亜鉛めっき鋼板
である。この鋼板は、自動車車体外板用として重要な性
能であるプレス成形性が優れ、かつ塗装欠陥が発生せ
ず、塗装後外観が良好なものであり、家電、建材などの
用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】純亜鉛めっき鋼板の塗装欠陥発生に及ぼす目付
量、母材表面の最大クラック幅および最大クラック長さ
の影響を示す例である。
【図2】平面摺動試験方法を示す概略の断面図である。
【図3】目付量が60g/m2の場合の、最大摩擦係数に及ぼ
すめっき結晶方位の(0 0・2)面の配向性指数の影響を示
す図である。
【図4】同じく、最大摩擦係数と(1 0・0)面および(1 1
・0)面の各配向性指数との関係を示す図である。
【図5】同じく、加工後化成処理性と(1 0・0)面および
(1 1・0)面の各配向性指数との関係を示す図である。
【図6】同じく、加工後化成処理性、最大摩擦係数およ
びめっき皮膜中のNi含有量の関係を示す図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】めっき目付量が30g/m2以上の純亜鉛電気め
    っき鋼板において、このめっき皮膜直下のめっき母材表
    面に存在する開口クラックが、幅0.3 μm 未満、または
    長さ1.5 μm 未満であり、かつそのめっき皮膜の亜鉛結
    晶構造の(1 0・0)面の配向性指数が0.2 以上、(1 1・0)
    面の配向性指数が 0.5〜1.5 であることを特徴とする加
    工性、化成処理性および塗装後外観に優れた純亜鉛電気
    めっき鋼板。
  2. 【請求項2】めっき皮膜中の不可避的不純物のうちのNi
    が、めっき皮膜総重量の0.3 %以下、かつこの皮膜最表
    面のNiおよびFeが、実質的に0%であることを特徴とす
    る請求項1に記載の加工性、化成処理性および塗装後外
    観に優れた純亜鉛電気めっき鋼板。
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