JP2693248B2 - 光学活性グリシド酸エステルの製法 - Google Patents

光学活性グリシド酸エステルの製法

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JP2693248B2 JP1511470A JP51147089A JP2693248B2 JP 2693248 B2 JP2693248 B2 JP 2693248B2 JP 1511470 A JP1511470 A JP 1511470A JP 51147089 A JP51147089 A JP 51147089A JP 2693248 B2 JP2693248 B2 JP 2693248B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本出願は、1989年2月10日出願の先行の同時係属米国
特許出願第07/309,769号(この出願は1988年10月26日出
願の“光学活性グリシド酸エステルの製法”と題する先
行の同時係属米国特許出願第07/265,171号の一部継続出
願である)の一部継続出願である。これらの同時係属米
国出願の開示全部が本明細書に参考して含まれる。
1.序論 トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸
のエステルは、ジルチアゼム(diltiazem)の化学合成
における前駆体としての用途を有する。更に、これらの
化合物は、ジルチアゼムに至る全合成経路に於いて、ラ
セミ体のグリシド酸エステルの分割および正確な光学的
に精製された前駆体エステルの使用により所望の立体化
学をジルチアゼム前駆体に導入するための非常に魅力的
な個所である。本発明は、トランス−3−(4−メトキ
シフェニル)グリシド酸の(2,3)−および(2
,3)−鏡像異性体のエステルのラセミ混合物を分割
するための新規な酵素法に関する。本発明はまたこの分
割工程をとり込んだジルチアゼム製造方法およびこのジ
ルチアゼム中間体の酵素的分割の効率を改良するための
膜リアクター手段にも関する。また、水性反応相中に供
給された薬剤との付加物形成による、反応過程の阻害性
アルデヒド副生物の作用の改善も本発明の一局面であ
る。更に、光学活性グリシド酸エステル中間体の選択さ
れた有機溶液が開発され、これらの溶液は溶液からの中
間体の直接単離または更に化学的に変換するための新規
な試薬を導入するための溶液の使用を伴なう後続工程に
おいて特に有用である。
2.発明の背景 2.1.ジルチアゼムおよびその類似体 ジルチアゼム(その化学構造を図1に示す)は、光学
活性医薬化合物である。更に詳しくは、ジルチアゼム
(その化学名は(+)−5−〔2−(ジメチルアミノ)
エチル〕−シス−2,3−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−2
−(p−メトキシフェニル)−1,5−ベンゾチアザピン
−4(5)−オンアセテート(エステル)である)は、
二つのキラル炭素原子が絶対立体配置を有する置換ベ
ンゾチアザペンからなる(H.Inoueら、米国特許第3,56
2,257号)。ジルチアゼムは、冠状動脈痙攣によるアン
ギナおよび労作性アンギナの治療に有用であることが判
明している。ジルチアゼムにより得られる有益な治療効
果は、心筋および平滑筋の両方における細胞膜の脱分極
中のカルシウムイオン流入抑制に由来すると考えられ
る。ジルチアゼムは、自然発生性およびエルゴノビン誘
発性の両方の冠状動脈痙攣を抑制し、そして末梢血管抵
抗を減少させることが知られている。ジルチアゼムは、
タナベおよび米国のMarion Laboratories(米国では商
品名Cardizemの下に販売)により市販されている。ま
た、ジルチアゼムの類似体が存在することも知られてお
り、例えば、その類似体ではベンゾチアザペン部分は芳
香環に一個の塩素置換基を有する。
ジルチアゼムは、図2に示される方法と同様の方法に
より現在製造されている。合成順序の第一工程は、鏡像
異性体混合物としてのメチルトランス−3−(4−メト
キシフェニル)グリシデートに対するo−ニトロチオフ
ェノールのルイス酸触媒求核攻撃による、示されたトレ
化合物の生成を包含する(H.Inoueら、J.Chem.Soc.Pe
rkin Trans.I、1984、1725;H.Inoueら、J.Chem.Soc.Per
kin Trans.I、1985、421;H.Inoueら、米国特許第4,420,
628号)。次に、このトレオ化合物は、光学活性最終生
成物(ジルチアゼム)に到達するために、合成経路に於
ける後続工程で分割される必要がある。
ジルチアゼムに至る代替製造経路は、オキシラン環の
開環およびその環への付加を伴なう工程でo−ニトロチ
オフェノールに代えてo−アミノチオフェノールを利用
するものである(S.Nagaoら、米国特許第4,416,819
号)。かかる代替法はまたはメチルトランス−3−(4
−メトキシフェニル)グリシデートを中間体として利用
し、従って本発明の方法における改良を受ける。
2.2.ジルチアゼムおよびその前駆体の立体化学 上記の薬理効果は、ジルチアゼムの二つの鏡像異性体
の一方、即ちα−鏡像異性体のみに存在する(Merck In
dex、第10版、1986、466頁;Physician's Desk Referenc
e、第41版、1987年、1173頁)。従って、ジルチアゼム
を正確な立体化学で生成させ、そして光学的に精製され
立体化学的に正確な中間体または前駆体の生成により、
全合成中の効果的な時点でかかる正確な立体化学を導入
する必要が存在する。先に論じたように、ジルチアゼム
は3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸エステル中
間体から製造し得る。現在、この中間体はそのラセミ形
で形成される、即ち、それは光学活性ではない。
図3に示される3−(4−メトキシフェニル)グリシ
ド酸エステルは、炭素原子2および3の位置で二つのキ
ラル中心を含有しており、これらの両者がまたは
対配置をとり得る。一般的に伝えば、n個のキラル中心
を有し、そして反射対称の要素をもたない分子は、2n
の立体異性体を有しよう。2個のキラル中心を有する分
子中には、従って22即ち4個の立体異性体が存在しよ
う。更に、わずかに2個のキラル中心を有する分子の場
合、これらの4種の立体異性体は鏡像異性体のジアステ
レオマー対として関係しよう、即ち2種のジアステレオ
マーそれぞれがその鏡像異性体の混合物として存在しよ
う。3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸エステル
の特別な場合には、二つのジアステレオマー形はシス
性体およびトランス異性体として記載される。シス異性
体は、オキシラン環の炭素原子、即ち炭素原子2および
3に結合された二個の水素原子が互に重なり、即ちその
分子のオキシラン環サブ構造により特定される平面の同
じ側にあるジアステレオマーとして定義される。トラン
異性体は、炭素原子2および3に結合された水素原子
がオキシラン環の平面の反対側にあるジアステレオマー
として定義される。従って、炭素原子2および3の相対
配置はそれぞれのジアステレオマー中で固定されるが、
それぞれのジアステレオマーは依然対の鏡像異性体とし
て存在しよう。ジアステレオマー化合物は物理的に別々
の実体であり、全分子について行なわれる対称操作に関
係しないが、それらは物理的に区別でき、適当な慣用の
化学方法により別々に生成し得る。
所定の3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸エス
テルの熱力学的に有利なトランスジアステレオマーはダ
ルツェンス(Darzen)グリシド酸エステル縮合により合
成でき、慣用の精製方法によりシスジアステレオマーを
含まないようにすることができる。トランスジアステレ
オマーは二種の鏡像異性体形で存在し、一方は炭素原子
2で絶対配置を有し、炭素原子3で絶対配置を有す
る。この鏡像異性体は(2,3)異性体として記載さ
れる。トランスジアステレオマーの他の鏡像異性体は絶
対配置(2,3)を有しよう。シスジアステレオマー
の鏡像異性体は、絶対配置(2,3)および(2,3
)を示す。絶対配置(2,3)を有する特定のグリ
シド酸エステル鏡像異性体が、ジルチアゼムの光学的に
精製された合成前駆体として所望される化合物である。
2.3.グリシデートエステルの分割に関する技術 (2,3)−3−(4−メトキシフェニル)グリシ
ド酸メチルエステルの製造は、二つの基本的に異なる方
法により従来行なわれている。第一の操作は、キラル酸
化試薬を使用する特定の反応中にアキラル性の前駆体か
らキラリティの形成を伴ったキラルグリシド酸メチルエ
ステルの合成を包含する。従って、トランスシンナミル
アルコールは非対称的にエポキシド化されて所望のエキ
シラン環構造を生じ、正確な立体化学が炭素原子2およ
び3で同時に形成される(K.Igarashiら、米国特許第4,
552,695号)。
第二の操作(これは一般に更に古典的であると考えら
れる)は、化学量論量で使用される光学的に純粋な試薬
の使用を必要とし、トランス−3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシド酸のラセミエステルまたは塩の鏡像異性
体とのジアステレオマー付加物を生成する(M.Hayashi
ら、特開昭第61-145160号(1986);M.Hayashiら、特開
昭第61-145160号(1986))。これらの付加物は物理的
に区別でき、分別結晶化のような慣用の操作により分離
し得る。次に、こうして分離された付加物を制御条件下
で分解して分離された鏡像異性体および回収された分割
試薬をもたらす。
しかしながら、これらの操作の両方共に欠点を有す
る。特に、第一の操作は、独特の触媒、即ち、ジアルキ
ルタートレートチタン(IV)イソプロポキシドの使用を
必要とし、この触媒は無水条件および付随する取扱い操
作を伴なう(K.B.Sharplessら、J.Amer.Chem.Soc.、198
0、102、5974;K.B.Sharplessら、Pure Appl.Chem.、198
3、55、589)。更に重要なことに、所望の立体化学を生
じる反応は、メチルエステルを直接に生成しない。グリ
シド酸そのものの生成(アルコールの酸化による)およ
びエステル化を伴なう二つの更なる反応がキラリティが
導入される時点を越えて必要とされ、この酸は不安定な
化合物であり特別な取扱いを要する。第二の操作は、化
学量論量の前もって分割されたキラル物質またはα−メ
チルベンジルアミンのような分割剤を必要とする点が問
題である(S.Nagaoら、米国特許第4,416,819号)。かか
る分割剤が出費となるゆえ、分割工程後にこれらの物質
を定量的に回収するという必要がまた存在する。加え
て、大規模な結晶化法はエネルギーおよび溶媒を必要と
するため、それらが魅力のないものとなっている。
2.4.ラセミ混合物の酵素的分解 キラル化合物のラセミ混合物を分割する別の方法は、
ラセミ化合物を種々の酵素の鏡像異性体選択的作用にか
けることを包含する。酵素的分割はエステルを含む多く
の光学的に純粋な化合物の実験規模、準備規模、および
工業規模の生産に広く使用されているが、グリシデート
エステルの製造にはこれまで使用されていない。
多くの異なる種類の酵素が準備規模の立体異性体の分
割に使用されており、それらにはヒドロラーゼ(特にリ
パーゼ、プロテアーゼ、およびキモトリプシンの如きエ
ステラーゼ)、リアーゼおよびオキシドレダクターゼ
(例えば、アミノ酸オキシダーゼおよびアルコールレダ
クターゼ)が包含される。一般的に云えば、分割用の酵
素は理想的には広い基質特異性を示して広範囲の“自然
でない”基質の反応を触媒できるべきであり、そしてそ
れらは一方の異性体の反応を触媒して他の異性体を排除
するために高度の立体選択法を示すべきである。
ヒドロラーゼ(例えばリパーゼ、プロテアーゼおよび
エステラーゼ)は分割用に一層魅力的な酵素である。何
となれば、それらは妥当な価格で市販されており、それ
らは高価なコファクターを必要とせず、しかもそれらの
幾つかは有機溶媒に対してかなりの耐性を示すからであ
る。更に、キラル化学はキラル炭素を有するアルコー
ル、カルボン酸、エステル、アミドおよびアミンをしば
しば伴ない、そしてカルボキシルヒドロラーゼがかかる
種の反応の立体選択的触媒として好ましい選択である
(Cambou、B.およびA.M.Klibanov、Biotechnol Bioen
g.、1984、26、1449)。多くの医薬品およびそれらの中
間体が非常に低い水溶解度を示し、それ故酵素媒介光学
分割の多数が多相反応条件下で行なわれている。
酵素的処理がアミノ酸エステルのラセミ混合物の分割
に応用されている。例えば、Stauffer(米国特許第3,96
3,573号)は、−アシル−D,L−メチオニンエステルを
微生物プロテアーゼで処理し、生成物の酸を反応混合物
から分離することにより光学的に純粋な−アシル−L
−メチオニンを製造した。同様に、Bauer(米国特許第
4,262,092号)は、−アシル−D,L−フェニル−アラニ
ンエステルのラセミ混合物をセリンプロテアーゼの作用
にかけ、未変化の−アシル−D−フェニルアラニンエ
ステルを分離し、そしてN−アシル基およびエステル基
を除去するこにとより光学的に純粋なD−フェニルアラ
ニンエステルを調製した。Mattaら(J.Org.Chem.、197
4、39、2291)は、薬剤3−(3,4−ジヒドロキシフェニ
ル)アラニンまたはドーパの前駆体の分割にキモトリプ
シンを使用した。
酵素はまた、時として二相反応系中において、農薬の
ような他の化合物の分割に研究されている。特に、Camb
ouおよびKlibanov(Biotech.Bioeng.、1984、26、144
9)は、()−2−(p−クロロ−フェノキシ)
プロパン酸(その異性体は除草剤である)およびその
種々のエステルの混合物の酵素的分割に関し多孔質ビー
ズ中に固定化されたリパーゼの使用を調べた。それらの
研究に使用された酸およびエステルの溶解度が相異する
ので、固定化された固相酵素、水性緩衝剤、並びに溶媒
および反応体を含有する水非混和性有機相を含有する混
合物の分散および撹拌‐‐比較的に効率の悪い方法‐‐
を必要とした。
たとえジルチアゼム前駆体の酵素的分割ではなくと
も、光学的に精製された医薬品の製造に適用されるもの
として酵素媒介分割の現在の技術の付加的な例が提供さ
れ得る。Sih(米国特許第4,584,270号)は、L−カルニ
チン調製における枢要中間体である光学的に純粋な
)−4−アミノ−3−ヒドロキシ−ブタン酸の製造
に関する酵素的手段を開示している。更に、或種の光学
的に純粋なD−アミノ酸(特に、フェニルグリシンおよ
び4−ヒドロキシフェニルグリシンのようなD−アリー
ルグリシン)が、半合成ペニシリンおよびセファロスポ
リンの製造に於いて側鎖として使用される。Schuttら
(Biotechnol.Bioeng.、1985、27、420)は、光学的に
精製されたD−アミノ酸を得る目的で、かかる非極性N
−アシル−D,L−アミノ酸エステルのラセミ混合物を二
相系中においてズブチリシンの加水分解作用にかけてい
る。更に別の文献では、微生物由来の酵素がナプロキセ
ンおよびイブプロフェンのエステルの分割に利用され
た。C.J.Sihら(Tetrahedron Letters、1986、27、176
3)は、イブプロフェンおよびナプロキセンのエステル
が微生物由来のリパーゼを使用して立体特異的に分割さ
れ得ることを記載している。
要するに、光学的に精製されたジルチアゼムおよびそ
の類似体の製造に一層効率的な方法、特にトランス−3
−(4−メトキシフェニル)グリシド酸のエステルを含
むラセミジルチアゼム前駆体の改良された光学分割方法
が当業界で要求されている。更に、酵素的分割技術が任
意の光学的に純粋な医薬品およびそれらの前駆体の製造
に使用されているが、この技術はジルチアゼム製造にお
けるキラル中間体であるグリシデートエステルの分割に
は未だ開示されておらず、しかも成功裡に適用されてい
ない。本発明は、かかる酵素的分割法を提供するもので
ある。
3.発明の要約 本発明の分割方法は、所定のグリシド酸エステルの二
つの鏡像異性体の一方の加水分解を優先的に触媒しても
とのグリシド酸を生成させ、所望の絶対配置を有する鏡
像異性体をグリシド酸エステルとして無傷で残す酵素の
使用により行なわれる。本発明の詳細な実施態様は加水
分解酵素に関するものであり、特に好ましい酵素はメチ
ルメトキシフェニルグリシデートの相当する(2,3
)鏡像異性体の加水分解速度よりも速い速度で(2
,3)メトキシフェニルグリシデートの簡単なアルキ
ルエステル(例えば、メチルエステル)を優先的に加水
分解して、ジルチアゼムの製造に於いて光学分割された
中間体として使用するための光学的に精製された形態の
(2,3)鏡像異性体種の回収を可能にし得るリパー
ゼおよびプロテアーゼから選ばれる。
また、酵素的分割工程を効率良く実施する方法も本発
明に包含され、かつ本明細書に記載され、この方法には
生体触媒反応の効率を改良するための多相の抽出膜リア
クターの使用、並びに、さもなければ阻害性のやっかい
なアルデヒド副生物との付加物を生成させる目的で、水
性反応相中における重亜硫酸アニオンの提供も包含され
る。
本発明は、グリシド酸エステルの光学活性ジアステレ
オマーを含有する有機溶液を得る方法を提供するもので
あり、この方法は水非混和性有機溶媒中における、鏡像
異性体の混合物として存在しうるジアステレオマーを含
有する有機溶液の調製を包含する。次に、この溶液を
水、および所望せざるグリシジルエステルの鏡像異性体
選択的加水分解を触媒する酵素を含有する水性混合物と
接触させ、こうして有機溶液に所望の鏡像異性体を富化
させる。次に、生成物鏡像異性体は富化溶液から直接結
晶化できるしあるいはこの同じ溶液中で後続の反応に使
用することもできる。
図面の簡単な説明 本発明は、下記の発明の詳細な説明および図面を参照
することにより更に容易に理解できよう。
図1は、ジルチアゼム分子の化学構造を示す。
図2は、ジルチアゼムの従来技術製法を示す模式図で
ある。
図3は、光学的に精製された前駆体(2,3)−3
−(4−メトキシフェニル)グリシデートメチルエステ
ルの使用に基づく医薬上活性なジルチアゼム立体異性体
の製法を示す模式図であり、前記の前駆体は図示された
方法の工程2でラセミ−トランス混合物から分割
される。
図4は、3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸エ
ステルのシス−およびトランス−異性体の化学構造を示
し、ここでジルチアゼム製造に特に好ましいのは(2
,3)−トランス立体異性体であり、図中、Rはエス
テル化アルコール部分を表わす。
明瞭にする目的で、キラル炭素原子に関して特定の絶
対配置を有する特定の立体異性体、およびジルチアゼム
製造に一般に好ましい配置が上記の図面に示されてい
る。しかしながら、図2に示された方法のような現行の
従来技術のジルチアゼム法は、その方法の最初の工程で
ラセミ中間体(例えば、トランス−3−(4−
メトキシフェニル)−グリシド酸メチルエステル)が使
用されることに注目すべきである。
図5は、本発明の酵素的分割工程を示す模式図であ
り、ここで3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸の
エステルのトランス鏡像異性体の二成分ラセミ
混合物が立体選択的酵素の作用を受け、その結果、所望
せざる(2,3)−鏡像異性体がそのもとの酸の相当
する鏡像異性体に優先的に加水分解されて、未反応エス
テルの化学形態における所望の(2,3)絶対配置を
有する鏡像異性体が無傷で残る。
図6は、本発明の方法による酵素的分割を受け易い置
換グリシデートエステルを示す模式図である。
図7は、ラセミメチル3−(4−メトキシフェニル)
−グリシデートエステル(MMPG)の有機相供給路、(2
,3)−3−(4−メトキシフェニル)グリシデート
塩およびその分解生成物を含む水溶性酵素反応生成物の
水相取出し口、および未反応の所望の(2,3)−3
−(4−メトキシフェニル)グリシデートメチルエステ
ルの有機相取出し口を備えた中空繊維多相/抽出酵素膜
リアクターを示す模式図である。
図8は、本発明の好ましい実施態様を示す模式図であ
り、ここで酵素は非対称、疎水性、微孔質の中空繊維膜
中に可逆的に含有される。
図9は、グリシド酸前駆体からのアルデヒド副生成物
の形成に関与する化学、並びにアルデヒドの二つの後続
反応、即ち重亜硫酸アニオンとの付加物形成および酸化
の化学を要約する図である。
図10は、膜の一面で水非混和性有機溶媒中のメチル3
−(4−メトキシ−フェニル)グリシデートエステル
(MMPG)のラセミ供給混合物が供給され、膜の反対面に
重亜硫酸アニオン含有水溶液が供給される中空繊維多相
/抽出酵素膜を示す模式図である。水溶性反応生成物
(特に、重亜硫酸塩と阻害性アルデヒド副生成物との反
応により形成される付加物を含む)は、流出する水性プ
ロセス流により取り出されることが示され、一方、未反
応かつ所望の(2,3)−3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシデートメチルエステルは流出する有機プロセ
ス流により取り出される。
5.発明の詳細な説明 本発明の目的は、光学的に純粋なジルチアゼムの合成
に後程有用である、分割されたグリシド酸エステルの改
良された製法を提供することである。詳しくは、本発明
は、トランスエステルのラセミ混合物の酵素的
分割による、光学的に純粋な中間体、即ち(2,3
−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエス
テルおよびその他の簡単なアルキルエステルの製造に関
する。これはサブトラクティブ(subtractive)分割法
で行なわれ、この方法では所望せざる(2,3)−グ
リシデートエステルが酵素的に加水分解され、そして所
望の(2,3)−鏡像異性体から除去され、正味の結
果として、所望の鏡像異性体化合物がその方法で光学的
に精製される。
ジルチアゼムの製法に於いては、−ニトロチオフェ
ニルによる当初の求核攻撃を受けてトレオ化合物を生成
するグリシド酸エステルそのものが光学的に精製される
場合には、トレオ−2−ヒドロキシ−3−(4−メトキ
シフェニル)−3−(2−ニトロフェニル−チオ)プロ
ピオン酸メチルエステルの分割を回避できる。本発明の
酵素的分割法により、所望の光学活性中間体、即ちトラ
ンス−(2,3)−3−(4−メトキシフェニル)グ
リシド酸エステルの鏡像異性体選択的調製手段が提供さ
れる。
グリシド酸は或種の条件下以外では不安定であること
が知られている。しかしながら、グリシド酸のエステル
は(それらの加水分解不安定性は別にして)比較的安定
であり、有用な合成中間体である。グリシド酸エステル
をジルチアゼム合成の合成前駆体として使用し、そして
最終生成物中に所望の立体化学を生成させるためには、
絶対配置(2,3)を有するグリシド酸エステルが必
要である。従って、(2,3)絶対配置を有する鏡像
異性体の酵素触媒加水分解を生じ、絶対配置(2,3
)を有する鏡像異性体を未加水分解グリシド酸エステ
ルとして回収可能にする酵素とグリシド酸エステルの好
適な組合せが必要とされる。
5.1.多相酵素反応法 グリシド酸エステルの現在の分割方法は、ラセミグリ
シド酸エステル基質中に存在する所望せざる鏡像異性体
がエステル官能基の加水分解により、既知の物理的方法
で残りのグリシド酸エステル鏡像異性体から容易に分離
される種類に選択的に変換される方法である。詳しく
は、本発明の場合には、所望のエステル鏡像異性体は水
非混和性である有機溶媒に可溶性であり、一方、所望せ
ざるグリシド酸エステルの加水分解生成物の少なくとも
一つはかなりの水溶性を有する。(本明細書で使用され
る“非混和性”なる用語は、水と完全に非混和性、実質
的に非混和性、または部分的に非混和性である溶媒、即
ち水と接触して置かれた場合に分離した有機相を形成す
る溶媒を包含することを意味する。)本明細書に記載さ
れる分割方法は、ラセミ基質混合物のそれぞれの鏡像異
性体が酵素的加水分解に対して幾分かの感受性を示す
が、前記の鏡像異性体の一方は適当な酵素触媒の存在下
で他方よりも迅速に加水分解される動力学的分解法であ
る。この状況下で、二つの競合反応性鏡像異性体の間を
区別する酵素の能力は、C.S.Chenら(J.Am.Chem.Soc.、
1982、104、7294)により記載されているように、鏡像
異性体選択値Eにより量化し得る。サブトラクティブ動
力学的分割法の場合のEの計算式は、以下のように示さ
れる。
E={ln[(1−X)(1−ee(S))]/ ln[(1−X)(1+ee(S))]} 〔式中、Xは出発基質の全量の変換度(小数として表
わされる)であり、そしてee(S)は残りの未加水分解
基質鏡像異性体の鏡像異性体過剰量(これも小数として
表わされる)である〕。この式は、異なる変換度まで進
行した酵素反応の比較を可能にし、この場合、残りのグ
リシド酸エステル基質の鏡像異性体過剰量の直接の比較
は可能ではない。また、このE値および相当する計算を
使用して種々の条件下で操作した同じ酵素の見掛選択性
を比較することも可能である(項目5.5.1を参照のこ
と)。
酵素に及ぼすエポキシドの既知の不活性効果にもかか
わらず、本発明により教示されるように、酵素を使用し
て一般にグリシド酸として知られているエポキシド含有
化合物のカルボン酸エステルの加水分解を鏡像異性体選
択的様式で触媒することが可能である。もとのグリシド
酸のラセミカルボン酸エステルには、図6に示される一
般構造を有するものが包含され、ここで式中R1はフェニ
ルおよび置換フェニルの群から選ばれた置換基であり、
そしてR2はアルコールから誘導された基である。置換フ
ェニル基は、ヒドロキシ、メトキシ、フェノキシ、ベン
ジルオキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリールア
ルコキシ、およびハライドを含む種々の基で置換されて
もよい。特に重要なR1基は4−メトキシフェニルであ
る。なぜならジルチアゼム製造に関係があるのはこの基
だからである。フェニル基の置換基はグリシド酸エステ
ル部分に対してオルト位、メタ位、またはパラ位の一つ
またはそれ以上を占めてもよい。アルコール部分R2に関
しては、この基は1〜8個の炭素原子を有する直鎖アル
キル、3〜8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル、置
換アルキル、アリール、置換アリール、およびアルコキ
シアルキルより成る群から選ばれよう。好ましいアルキ
ル置換基には、メチル、エチル、イソプロピル、および
イソブチルが包含され、一方、好ましいアルコキシアル
キル置換基にはメトキシエチル基およびエトキシエチル
基が包含される。
本発明の好ましい実施態様は、R1がパラ−メトキシフ
ェニル基であり、R2がメチル基であり、R1基およびR2
の相対配置がトランスであり、そして酵素的分割後の所
望のグリシド酸エステル生成物の絶対配置が(2,3
)である場合に相当する。R1基およびR2基がエポキシ
ド環の平面の同じ側にある、相当するシスグリシド酸エ
ステルジアステレオマーもまた分割でき、そして生成す
る(2,3シス−3−(4−メトキシ−フェニル)
グリシド酸エステルもまた後続のジルチアゼムの製造に
使用し得ることに注目すべきである。
本発明に於いて、酵素触媒は水相中に溶解または分散
して存在する。本明細書に記載されたグリシド酸エステ
ルは一般に水にほとんど不溶性であるが、エポキシド環
は、酵素の非存在下でさえも、ヒドロキシイオンおよび
水分子のような種による求核攻撃により開環を受け易
い。有機溶媒または酵素製剤の非存在下、pH7.0の水性
リン酸ナトリウム緩衝溶液に上記の本発明の好ましい基
質を暴露(周囲温度で18時間)すると、グリシド酸の損
失、および水溶性化合物の形成がもたらされる。しかし
ながら、同じ水相と1対1の相比のトルエンの存在下で
は、同じ期間でグリシド酸の損失が全くなく、グリシド
酸エステルの100%が有機相の分離および蒸発により回
収できた。それ故、水、ヒドロキシドイオン、または水
溶性緩衝系による望ましからぬ変換から基質を保護する
方法としての有機相の使用が本発明の重要な一局面であ
る。これらの実験上の観察によれば、本明細書に開示さ
れた酵素媒介分割法を効率良く行なうためには、二相系
の必要性、そして好ましくは下記の多相/抽出膜リアク
ターの必要性が示される。
本発明においては、加水分解酵素の多種の市販製剤お
よびその他の入手し得る製剤を直接用いて、図6におけ
る構造により表わされるグリシド酸に対して鏡像異性体
選択的加水分解を行なうことができる。かかる製剤中に
含まれる酵素は、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアー
ゼ、ヘプチダーゼ、およびアシラーゼとして記載される
一般的な種類の加水分解酵素のいずれからのものであっ
てもよい。加えて、かかる製剤は、真核細胞および原核
細胞の両方から誘導でき、それらには下記の哺乳類供給
源;ブタ肝臓、ブタ膵臓、ブタ腎臓、およびウシ膵臓;
植物源小麦胚芽からの細胞;並びに下記の微生物属:ア
スペルギルス(Aspergillus)、カンジダ(Candida)、
ゲオトリクム(Geotrichum)、フミコラ(Humicola)、
ムコール(Mucor)、ペニシリウム(Peni-cillium)、
リゾプス(Rhizopus)、ストレプトミセス(Streptomyc
es)、バチルス(Bacillus)、クロモバクテリウム(Ch
romobacterium)、およびシュードモナス(Pseudomona
s)からの細胞が包含されるが、それらに限定されな
い。本発明の好ましい実施態様に於いては、微生物ムコ
ーム・ジャバニクス(Mucor Javanicus)、ムコール・
ミーハイ(Mucor miehei)、およびその他のムコーム
種、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindrace
a)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas f
luorescens)由来のリパーゼを含有する市販の製剤、並
びにバチルス種からのプロテアーゼBPN′として知られ
るプロテーアゼを含有する市販の製剤が加水分解触媒と
して使用される。
酵素的加水分解の反応条件には、酵素製剤が水相中に
溶解または分散され、そしてグリシド酸エステルが水と
かなり非混和性であると知られる有機溶媒から選ばれた
有機相に溶解される二相系の使用が包含される。水相の
pHは、使用中の酵素製剤のpH最適値に応じて5〜9の範
囲であり得るが、選ばれるpHがグリシド酸エステルに有
害な作用をもたないことを条件とする。水相のpHを、緩
衝系または自動滴定装置もしくはその他のpH制御装置の
使用により加水分解期間中所望の範囲内に維持すること
が望ましい。同様に、加水分解が行なわれる温度は広範
囲にわたって変動できるが、水相および有機相の両方が
液体のままであり、選ばれる酵素がその使用ができない
程早い速度で変性を受けず、そしてグリシド酸エステル
が安定のままであることを条件とする。水相と有機相の
相対量は重要ではなく、広範囲にわたって変動しうる。
同様に、水相中の酵素製剤の濃度、有機相中のグリシド
酸エステルの濃度、およびこれらの濃度の比は重要では
なく、広範囲にわたって変動しうる。本発明の好ましい
実施態様に於いては、有機相体水相の比、温度、水相の
pH、並びに水相中の酵素製剤の濃度および有機相中のグ
リシド酸の濃度は、加水分解の速度と鏡像異性体選択性
の最適の組合せが実現されるように選ばれる。
ラセミグリシド酸エステル基質は有機相に可溶であ
り、そして水相に殆ど不溶性であるので、それ程容易に
は加水分解されないラセミ基質混合の鏡像異性体は、そ
れより容易に加水分解されるグリシド酸エステル鏡像異
性体よりも高濃度で有機相中に存在し、こうして所望の
グリシド酸エステル鏡像異性体の有機溶液が生成され、
それが加水分解の程度および鏡像異性体選択度の値Eの
関数として分割の程度(即ち、鏡像異性体過剰)を高め
る。全ラセミグリシド酸エステル基質の加水分解の程度
は、任意の所望レベルの鏡像異性体過剰に於ける所望の
グリシド酸エステルの回収を可能にするように調整し得
る。より高い転化率は、より多量の光学純度を有する有
機相生成物エステルを生じる。
本発明のサブトラクティブ分割法の場合、最適の状況
は酵素が限りなく大きいE値を示す状況である。この場
合、全出発物質の50%の加水分解で、未加水分解物質の
100%が反応後に100%の鏡像異性体過剰の光学純度で有
機相中に残存しよう。しかしながら、所定の酵素が比較
的低いE値を示す場合、加水分解の全程度は、Chenらに
より誘導された式により測定され、そして上記のように
再現される程度まで、50%を越えて進行させる必要があ
る。好ましくは、酵素触媒は、できるだけ最大のE値を
示すように選ばれ、従って所定の度合いの鏡像異性体過
剰に関して最大値の所望のグリシド酸エステル鏡像異性
体が回収できよう。次に、この物質は既知の方法で有機
溶媒を除去することにより回収できよう。
好ましい酵素分割法は、酵素の存在下に互いに激しく
接触された非混和性の水相と有機相より成る分散相系中
で行なわれる。これは攪拌タンクリアクターまたはミキ
サー沈降タンクのようなかかる慣用の液−液接触装置中
で行なうことができる。反応経済性を改良するため、酵
素の回収および再使用を容易にするために酵素を固相の
高表面積支持体に固定化することが有利であろうし、そ
して酵素が粒状担体(例えば、微孔質粒子、ゲル型ビー
ズ、およびイオン交換樹脂)に固定化される方法は本発
明の範囲内にある。かかる場合、固定化された酵素粒子
は水相および有機相と一緒に分散されてもよく、あるい
はそれらは水相および有機相が流されるカラム中に充填
されてもよい。同様に、本発明は生体触媒としての分離
酵素の使用に限定されず、そして固定化された全細胞お
よびその他の微生物製剤もまた本発明の範囲内にあるこ
とは当業者に明らかであろう。
本発明の別の好ましい実施態様は、酵素的分割法を多
相/抽出酵素膜リアクター中で行なうことに関する。か
かる多相の抽出膜リアクターはMatsonにより米国特許第
4,800,162号明細書に記載されており、この特許は参考
文献として本明細書に含まれる。多相酵素膜リアクター
は、酵素の基質に関連する反応操作上の問題、例えばそ
の不充分な水溶性および/または限られた加水分解安定
性に対処するのに特に有利である。水中における低い溶
解度および安定性は、本発明の実施により分割されるグ
リシド酸エステルの二つの特性である。同様に、抽出酵
素膜リアクターは、酵素反応の生成物と関連する反応操
作上の問題、例えば熱力学的に有利でないか、または可
逆的である反応プロセス中の阻害性生成物による酵素阻
害(不活化を含む)または転化率限定を処理するのに特
に有用である。ここでもまた、項目5.2および5.4に記載
される実施例に後で示されるように、生成物阻害は、こ
こに関係するグリシド酸エステルの酵素的分割により示
される特徴である。従って、多相/抽出膜リアクターは
酵素反応の効率を改良するのにかなりの実用性を有す
る。
一般的に云えば、本発明の膜リアクター法に於ける酵
素活性化膜は代表的には多孔質の親水性(即ち、水湿潤
性)の膜より成っており、この膜は種々の手段によりそ
の中に、またはその表面の一つ以上に適当な酵素を組込
むことにより適当に活性化される。この酵素活性膜の一
表面は、第一プロセス流、即ち供給流と接触して置か
れ、この供給流は代表的には水難溶性(即ち、水非混和
性の)酵素基質を含む。代表的には、この水非混和性
(有機系)供給流は、担体液として役立てられる水非混
和性有機溶媒中に溶解された反応体を含有する。
同時に、酵素活性膜の第二表面は、水性プロセス流と
接触している。このプロセス流は下記の目的、即ち、:
反応の水を供給または除去するため;反応pHの調節(そ
して、幾つかの場合には膜中に含まれる酵素への接近)
のための手段を与えるため;および水溶性かつ阻害性の
反応生成物の除去のための手段を与えるため:の一つ以
上の目的に利用できる。適切に操作される場合、水相/
有機相の境界は、水非混和性の有機供給流と接触してい
る水湿潤性の酵素活性膜の表面に存在し、それにより実
質的に水性の環境が親水性の水湿潤性の膜中の酵素の操
作のために与えられる。こうして、二つの流入(即ち、
供給)流および二つの流出(即ち、生成物)流が本発明
の方法に於ける膜リアクターモジュールに供給され、そ
こから除去され、こうして膜リアクターモジュールは必
ず二つの入口および二つの出口を備えた形状にされる。
これらの一対の入口/出口は有機相プロセス流の供給お
よび取出しにあてられ、別の対は水性プロセス流の供給
および除去にあてられる。
親水性もしくは水湿潤性の酵素活性膜を使用する場
合、この有機プロセス流は、膜の反対の表面と接触する
水性のプロセス流に対して小さい正圧のもとに置かれる
ことが好ましい。膜中のこの得られる小さい有機相対水
相の差圧により、膜を横断する水性プロセス流の一部の
限外濾過的な流れを防止される。同時に、その方法をこ
の様に操作することにより、有機相は、それと接触する
膜の表面に作用する毛管力により水湿潤性酵素膜の細孔
中に侵入することから防止される。
本発明の実施に際し、不充分な水溶性の加水分解不安
定な反応体は水非混和性有機プロセス流中で膜リアクタ
ーに供給され、そこでそれは酵素活性膜の第一表面と接
触させられる。その後、反応体の分子は、膜の第一表面
に位置する有機相/水相界面に拡散し、そこでそれらは
膜の水性領域中に分配し、生成物への酵素触媒による変
換を受ける。反応生成物の少なくとも一つがかなりの水
溶性を示す場合、特にそれが反応体よりも非常に水溶性
である場合、この生成物種は膜から拡散して出て酵素活
性膜の第二の表面と接触する水性プロセス流中に拡散
し、その後、リアクターから除去される。
要するに、この連続多相バイオリアクター法に於ける
酵素活性膜は、三つの役割:即ち、高表面積の有機相/
水相接触装置として、有機相/水相セパレーターとし
て、そして界面生体触媒として利用できる。親水性膜
を、高い膜面積充填密度を特徴とする膜モジュール中で
非混和性の水性プロセス流と有機プロセス流の界面に置
くことにより、通常の実施の場合のように一つの非混和
性相を別の相中に分散させるという必要なしに、大きな
有機相/水相および液体/膜接触面積を与えることが可
能である。
更に詳しくは、3−(4−メトキシフェニル)グリシ
ド酸エステルのラセミd,l−トランスメチルエステル
を、第7の方法に示されたように水非混和性有機溶媒中
の基質の溶液の形態で多相/抽出膜リアクターに供給す
ることは、幾つかの理由で有利である。一方、多相膜リ
アクターは、膜に含まれる酵素と不充分な水溶性基質エ
ステルとの有効な接触を促進し、このような反応の非膜
分散相操作中に代表的に存在する正味の水相に関連する
拡散抵抗を最小にする。更に、酵素と基質のこの有効な
接触は基質の望ましくない非触媒副反応、例えばグリシ
ド酸エステルのオキシラン環の加水分解(ジオール化合
物を生成する)を最小にする。基質のこのような望まし
くない加水分解副反応は、酵素的分割法の収率を低下さ
せるので、それは最小にされるべきであり、そのこと
は、本発明の多相/抽出膜リアクターを用いることによ
り可能となる。多相/抽出膜リアクターは、有機相/水
相界面に高濃度の酵素を提供し、それにより(2,3
)−グリシド酸エステルの所望の酵素的加水分解の速
度対(2、3)−グリシド酸エステルのオキシラン
環の所望されない非触媒加水分解の速度の比を最大に
し、そしてその方法に於ける所望の(2,3)−グリ
シド酸エステルの収率を最大にする。
図7の多相/抽出膜リアクター中で酵素的分割法を行
なうことの別の利点は、酵素触媒を不必要に希釈そして
/または損失することなく、阻害性反応生成物を反応帯
域から選択的に、そして効率良く除去または“抽出”す
る能力に関している。一種以上の水溶性エステル加水分
解生成物〔即ち、アルコールまたはグリシド酸種(グリ
シド酸から生成されるアルデヒドの如き、その後の分解
生成物を含む)のいずれかまたは両方〕を水性プロセス
流によりリアクターから除去することより、酵素と接触
する阻害性生成物の局所濃度が任意の低水準(水相から
それを回収し、そして/または廃棄する経済性により決
定される)に維持し得る。本質的に、酵素活性膜中に生
成される反応生成物は、それを通過して流れる水性プロ
セス流により低濃度に希釈される。こうして、阻害性生
成物はリアクターから除去され、同時に酵素が膜中で高
濃度に保たれる。この手法により、反応は、他の手法に
より得られるよりも高い転化率に“引き上げ”られる。
一般的な膜リアクター操作パラメーターは、上述した
米国特許第4,800,162号明細書に開示されており、ま
た、メチル3−(4−メトキシフェニル)グリシデート
エステルの酵素的分割に関する更に特別なパラメーター
および反応条件は、その方法の操作についての実施例を
詳述する下記の項目5.2および5.4に示される。
可逆的な酵素閉込めの好ましい手段が、米国特許第4,
795,704号および1986年10月1日に出願され、“Method
and Apparatus for Catalyst Containment in Multipha
se Membrane Reactor System"と題する米国特許願第91
2,595号明細書に於いてMatsonにより記載されており、
これらの特許が参考として本明細書に含まれる。しかし
ながら、当業界では公知の膜への、または膜内の酵素固
定化の多くのその他の手段がまた使用し得る。図8は、
酵素が多相/抽出膜リアクターの非対称の微孔質の親水
性の中空繊維内に含まれる方法を示す。さらに他の詳細
は以下の実施例に示される。
5.2.多相酵素的分割の実施例 本発明の幾つかの実施例およびその要素は、以下のと
おりである。これらの実施例は本発明の性質を更に充分
に説明することを意味し、本発明の範囲の限定として作
用するものではない。
5.2.1.実施例1〜6に関する操作 下記の実施例1〜6の酵素的分割実験は、連続水相中
の有機相基質の分散液より成る二相系中で行なった。更
に詳細には、関係するトランスグリシド酸エステル鏡像
異性体のラセミ混合物を適当な水非混和性有機相に溶解
し、次に所定の酵素製剤を含む水相と接触させた。全反
応混合物を激しく攪拌して相間に大きな界面表面積を
得、相間で基質エステルおよび酸加水分解生成物の迅速
な分配を可能にし、そして使用中の酵素の界面活性の増
強を可能にした。その結果、酵素は活性の増強を示し
た。水相のpHを、緩衝系により使用中の酵素に応じた水
準に保った。
適当な時間の後、攪拌を停止し、有機相を除去し、水
相を、有機相を生成するのに使用したのと同じ有機溶媒
またはジエチルエーテルの多量で抽出した。有機相を合
わせ、水洗し、乾燥し、そして蒸発させた。得られた物
質を、次に、旋光分析により光学活性に関して調べた。
ラセミトランス−3−(4−メトキシフェニル)グリ
シド酸の幾つかの簡単なアルキルエステルを、種々の酵
素に関して基質としてスクリーニングした。特に、ラセ
トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸
のメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエス
テル、−ブチルエステル、およびイソプチルエステル
を、Darzenのグリシド酸エステル縮合(Annalen der Ch
emie、583(1953)110;Organic Reactions、5巻、413
頁、John Wiley & Sons、NY、413頁、1968)により合
成した。次に、それぞれのエステルを、以下の一般操作
に従い、市販の酵素製剤による鏡像異性体特異的加水分
解に対する感受性に関して分析した。
ラセミグリシド酸エステル10ミリモル(例えば、メチ
ルエステルの場合には2.08g)を有機溶媒、トルエンま
たはtert−ブチルメチルエーテル50mlに溶解し、pH7.0
の200mMのリン酸ナトリウム緩衝液50ml+分析される酵
素100mgを含むフラスコに入れた。フラスコをしっかり
と閉じ、リスト・アクション・シェーカーに周囲温度
(22〜25℃)で18時間入れた。次に、攪拌を停止し、フ
ラスコの内容物を分析ロートに注入した。有機層を除去
し、水層を多量の同有機溶媒またはジエチルエーテルで
洗浄した。有機層を合わせ、水で逆洗し、無水硫酸マグ
ネシウムで乾燥した。次に、有機溶媒を減圧下で除去
し、残存物質の量を記録した。次に、この物質の試料を
100ml当り1gの濃度(即ち、C=1.0)でエタノールに溶
解し、旋光分析で光学活性に関して調べた。
二種の有機溶媒中において幾つかの酵素/エステル組
合せに適用されたこの操作の結果を下記の実施例1〜6
に示す。分離酵素および酵素製剤の市販源を、酵素名の
他に示す。
5.2.2.実施例1--tert−ブチルメチルエーテル中のトラ
ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチル
エステルの立体選択的加水分解 表1は、tert−ブチルメチルエーテルに溶解したメチ
ルエステル化合物の酵素的加水分解の結果を表わす。合
計20の異なる酵素製剤をこれらの実験に使用した。酵素
的分割にかけたラセミメチルエステルの量は、これらの
試験で2.08gであった。使用した実験プロトコルは、項
目5.2.1に記載されたものである。
5.2.3.実施例2--トルエン中のトランス−3−(4−メ
トキシフェニル)グリシド酸メチルエステルの立体選択
的加水分解 表2は、トルエンに溶解したメチルエステル化合物の
酵素的加水分解の結果を示す。合計25の異なる酵素およ
び酵素製剤を、これらの実験に使用した。酵素的分割に
かけたラセミメチルエステルの量は、これらの試験で2.
08gであった。使用した実験プロトコルは、項目5.2.1に
記載されたものである。
5.2.4.実施例3−tert−ブチルメチルエーテル中のトラ
ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸エチル
エステルの立体選択的加水分解 表3は、tert−ブチルメチルエーテルに溶解したエチ
ルエステル化合物の酵素的加水分解の結果を表わす。3
種の異なる酵素製剤を、これらの実験に使用した。酵素
的分割にかけたラセミエチルエステルの量は、これらの
試験で2.22gであり、これらの試験を項目5.2.1に記載さ
れた操作に従って行なった。
5.2.5.実施例4--tert−ブチルメチルエーテル中のトラ
ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸n−ブ
チルエステルの立体選択的加水分解 表4は、tert−ブチルメチルエーテルに溶解したn−
ブチルエステル化合物の酵素的加水分解の結果を表わ
す。3種の異なる酵素製剤を、これらの実験に使用し
た。酵素的分割にかけたn−ブチルエステルの量は、こ
れらの試験で2.50gであり、これらの試験を項目5.2.1に
記載された操作に従って行なった。
5.2.6.実施例5--tert−ブチルメチルエーテル中のトラ
ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸イソプ
ロピルエステルの立体選択的加水分解 表5は、tert−ブチルメチルエーテルに溶解したイソ
プロピルエステル化合物の酵素的加水分解の結果を表わ
す。4種の異なる酵素製剤を、これらの実験に使用し
た。酵素的分割にかけたラセミイソプロピルエステルの
量は、これらの試験で2.36gであり、これらの試験を項
目5.2.1に記載された操作に従って行なった。
5.2.7.実施例6--tert−ブチルメチルエーテル中のトラ
ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸イソブ
チルエステルの立体選択的加水分解 表6は、tert−ブチルメチルエーテルに溶解したイソ
ブチルエステル化合物の酵素的加水分解の結果を表わ
す。一種の酵素製剤を、これらの実験に使用した。酵素
的分割にかけたラセミイソブチルエステルの量は、この
試験で2.50gであり、この試験を項目5.2.1に記載された
実験プロトコルに従って行なった。
メチル3−(4−メトキシ−フェニル)グリシデート
の(2,3)鏡像異性体の立体選択的加水分解に特に
好ましい酵素は、Amanoから入手し得る“リパーゼMP"と
称されるリパーゼ、Meito Sangyoから入手し得る“カン
ジダ・リパーゼOF"と称されるリパーゼ、及びSigma Che
mical Co.から入手し得る“プロテアーゼ27"と称される
プロテアーゼを含む。これらの酵素は、それらが簡単な
メチルエステル基質に対して良好な活性を有するという
理由から魅力的である。更に、これらの二つの酵素は、
(2,3)−グリシデートエステルの加水分解に関し
て、その(2,3)相対物に優先して、特に良好な立
体選択性を示す。リパーゼMAPおよびプロテアーゼ27の
両方は、酵素的反応の完結後に有機相中に主として負に
回転する種を残し、そのことは、有機相中において比較
的非反応性の負に回転する(2,3)−グリシデート
エステルが富化したことを意味する。メチルエステル化
合物に対するプロテアーゼ27、リパーゼMAP、およびリ
パーゼOF酵素の比較的高い立体選択性は、表1および表
2にそれぞれ示される比較的高い旋光度により実証され
る。
表1〜表6に要約されるデータは、検討した5種の簡
単な直鎖および分枝鎖のアルキルエステルの全てが、実
際に、酵素的加水分解に対して少なくとも或る程度の感
受性を示したことを示す。しかしながら、研究した幾つ
かの基質/酵素の組合せで得られる反応速度および旋光
は、かなり巾があることがわかった。例えば、n−ブチ
ルエステルを用いる実験(表4参照)は、酵素作用およ
び/または立体選択性が殆どないか、または全くないこ
とを示す非常に小さい旋光を有する生成物を示し、一
方、メチルエステルを用いる実験は幾つかの酵素に関し
て約−0.8°程度に高い旋光を示した(表2)。3−
(4−メトキシフェニル)グリシデートのメチルエステ
ルは特に好ましい基質エステルである。何となれば、メ
タノールは安価であり、しかも容易に入手し得るからで
ある。また、ジルチアゼムの製造の既存の商業的方法
は、その他のアルキルおよびアリールグリシデートエス
テルを使用することとは反対に、メチルグリシデートエ
ステルを中間体として直接使用する。この理由から、ジ
ルチアゼム製造法に於いて分割メチルグリシデートエス
テル中間体の製造および使用は、その他の分割グリシデ
ートエステル前駆体で得られるよりも簡単かつ経済的な
方法をもたらす。
5.2.8.見掛鏡像異性体選体性Eに関する補助溶媒の効
果:実施例7 本発明の別の特徴は、水相への少量の有機補助溶媒の
添加による、そして水非混和性相として使用される有機
溶媒の慎重な選択による、酵素鏡像異性体選択性の増強
に関する。
水混和性有機溶媒は、酵素の鏡像異性体選択性に関し
て有意ではあるが予測し得ない効果をもち得ることが一
般に知られている。ある種の市販の酵素製剤の場合に
は、水相の5%としてのメタノールの存在は見掛E値を
著しく増加した。この効果を調べるのに用いた操作を以
下に記載し、かつ結果を表で示す。
実施例7に於いて、トルエン50mlに溶解された10ミリ
モルのラセミトランス−3−(4−メトキシフェニル)
グリシド酸メチルエステル+pH7.0の0.2Mのリン酸ナト
リウム緩衝液の水相を有する二つのフラスコのそれぞれ
にAmanoからのリパーゼMAP 100mgを添加した。一方のフ
ラスコ中では、水相は全て緩衝液(50ml)からなり、別
のフラスコ中では水相は緩衝液47.5ml+メタノール2.5m
lから構成された。それぞれのフラスコを周囲温度で18
時間攪拌し、その後、有機相を分離し、乾燥し、蒸発さ
せて固体物質を残した。この固体物質を計量し、加水分
解の程度“X"を計算した。旋光(即ち、[α])をc=
1の濃度でエタノール中で測定し、残存グリシド酸エス
テルの鏡像異性体過剰(即ち、ee(S))を計算した。
これらの結果が表7に要約される。
表 7 見掛鏡像異性体選択性Eに関するメタノールの効果 x [α] ee(S) E 0% MeOH .35 −0.804° 41% 11 5% MeOH .20 −0.811° 41% >200 5.2.9.見掛鏡像異性体Eに関する水非混和性有機溶媒の
効果E:実施例8 ラセミエステル基質に対する水非混和性有機溶媒の選
択は、また別の多様な反応を示す。比較の基準としてE
値を用いて、所定の酵素の見掛鏡像異性体選択性に関す
る水非混和性溶媒の効果を定量化し得る。この効果を調
べるのに従った操作を、以下に概説する。
実施例8に於いて、酵素製剤100mgをpH7.0の0.2Mのリ
ン酸ナトリウム緩衝液50mlに溶解または分散した。これ
に、ラセミトランス−3−(4−メトキシフェニル)グ
リシド酸メチルエステル10ミリモルを溶解した水非混和
性有機溶媒50mlを添加した。反応フラスコに栓をし、周
囲温度で18時間攪拌した。次に、有機層を分離し、乾燥
し、未加水分解グリシド酸エステルを回収するために蒸
発させた。この残存物質を計量して全加水分解の程度を
決定し、そしてその旋光をエタノール中で測定してその
鏡像異性体過剰を決定した。3種の異なる水非混和性有
機相の存在下で種々の酵素について計算した見掛E値
を、表8に要約する。
5.2.10.酵素鏡像異性体選択性Eに関するpHの効果:実
施例9 酵素挙動に重要な別の因子は、その水性環境のpHであ
る。酵素の活性は、大きくpHに依存しており、或るpH範
囲では触媒活性が増強し、その範囲外では活性が低下す
ることが公知である。しかしながら、特に酵素活性が立
体効果により生じると一般に考えられているから酵素が
鏡像異性体選択性並びに活性に関してpH最適値を示し得
るという事実について、十分認識されておらず、また正
しく理解されていない。ラセミトランス−3−(4−メ
トキシフェニル)グリシド酸メチルエステルの分割に関
するこの効果を調べるため、反応系中の水相を種々のpH
値に調節した。行った操作を、以下に記載する。
ラセミトランス−3−(4−メトキシフェニル)グリ
シド酸メチルエステル10ミリモルをトルエン50mlに溶解
し、それをAmanoから入手したリパーゼMAP100mgと共に
種々のpH値の20mMのリン3ナトリウム緩衝液50mlを含む
フラスコに入れた。フラスコをきつく閉じ、周囲温度で
リスト−アクション・シェーカーに18時間入れた。次
に、攪拌を止め、反応混合物を上記のように処理した。
結果を表9に要約する。この表は、酵素鏡像異性体選択
性に関する最適pHが約8.0であることを示している。
従って、本発明の好ましい実施態様に、5容量%のメ
タノール(および、明らかに、その他の濃度)を含む水
相の使用、水非混和性有機溶媒としてトルエンの使用、
および水相pH約8での反応の実施が含まれる。
5.2.11.リパーゼMAPにより触媒作用されるメチルエステ
ル加水分解‐‐実施例10および11 種々の反応パラメーターの効果を更に検討し、そして
分割法を効率に関するそれらの影響を良く理解するため
に、好ましい基質(即ち、メチルエステル)および好ま
しい酵素の一つ(即ち、AmanoのリパーゼMAP)を用い
て、別の実施例を行なった。
実施例10 加水分解実験を、以下のようにして行なった。0.01M
のリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.00)50mlにリパーゼMA
P(Amano)276mgを溶解することにより酵素溶液を調製
した。ラセミメチル3−(4−メトキシフェニル)グリ
シデート(MMPG)2.23g(10.74ミルモル)およびトルエ
ン25mlを含む基質溶液を酵素溶液に添加した。pHを、水
酸化ナトリウム溶液(1モル/l)の添加により“pHスタ
ット”中で7.00に調製した。合計0.97mlの塩基を添加し
た後にNaOHの添加を停止した。これはエステルから酸へ
の転化率9.03%(即ち、100×0.97/10.74)に相当し
た。酵素的活性の損失が、この時点での反応の停止の理
由であるか否かを試験するため、更に127mgの酵素を添
加した。酵素添加後、塩基の消費は観察されなかった。
変換の程度に関する反応生成物の存在の効果を試験する
ために、更に50mlの水を反応混合物に導入して反応生成
物の濃度を希釈した。その直後に、塩基の消費が始ま
り、NaOHの添加総量が1.31mlとなった後に停止した。こ
の合計の酸生成/塩基消費に相当する転化率は12.2%
(即ち、100×1.31/10.74)であった。
実施例11 別の加水分解実験を、以下にようにして行なった。0.
01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.00)1000mlにリパ
ーゼMAP(Amano)537mgを溶解することにより酵素溶液
を調製した。ラセミメチル3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシデート(MMPG)2.18g(10.51ミリモル)およ
びトルエン25mlを含む基質溶液を酵素溶液に添加した。
pHを、水酸化ナトリウム溶液(1モル/l)の添加により
“pHスタット”中で7.00に調節した。合計3.38mlの塩基
を添加した後に、NaOHの添加を停止した。これはエステ
ル転化率32.16%(即ち、100×3.38/10.51)に相当し
た。酵素活性の損失が、反応がこの時点で停止する理由
であるか否かを試験するため、更に490mgの酵素を添加
した。酵素の添加後に、塩基の消費は観察されなかっ
た。変換の程度に関する生成物種の濃度の効果を試験す
るために、トルエン25ml中の更に2.25gのMMPG(10.81ミ
ルモル)を反応混合物に導入した。その直後に、塩基消
費が始まり、NaOHの添加総量が5.71mlとなった後に停止
した。この時点の最終転化率は26.78%(即ち、100×5.
71/(10.51+10.81))であった。
有効な“擬似平衡”の概念が、反応方法、特に“平
衡”変換に関する種濃度の抑制効果を説明するために本
明細書に使用される。或る濃度の阻害生成物が系中に累
積した時に酵素的加水分解反応が停止することが観察さ
れたことから、反応生成物または副生物による反応阻害
の特別な機構について限定される訳ではないとしても、
この反応は、反応が熱力学的に“可逆的な”反応である
かのように説明し得る。即ち、その反応は、阻害性生成
物または副生物の濃度に依存する或る“平衡”転化率ま
で進行すると考えることができる。
5.2.12.リパーゼOFにより触媒作用されるメチルエステ
ル加水分解‐‐実施例12 リパーゼOF酵素を用いる別の加水分解実験を、以下の
ように行なった。64mgのリパーゼOF(カンジダ・シリン
ドラセアから誘導され、Meito Sangyo Co.により供給さ
れる)をpH8.00の0.05Mのリン酸ナトリウム緩衝液100ml
に溶解することにより酵素溶液を調製した。ラセミメチ
ル3−(4−メトキシフェニル)グリシデート(MMPG)
2.6g(12.5ミリモル)およびトルエン25mlを含む基質溶
液を酵素溶液に添加した。pHを、水酸化ナトリウム溶液
(0.1モル/l)の添加により“pHスタット”中で8.0に調
節した。合計46.3mlの塩基を添加した後(エステルの40
%の加水分解に相当する)、残存エステルを上記のよう
に単離した。単離したエステル生成物の鏡像異性体過剰
は、HPLCにより測定して87.3%であった。回収したエス
テルの量は1.34gであり、収率52%に相当する。
5.2.13. pH7に於ける膜リアクター中のラセミメチル3
−(4−メトキシフェニル)グリシデートの分割‐‐実
施例13 この平衡制限される酵素的分割法のための多相/抽出
膜リアクターを、以下の手法によりpH7.0で操作でき
る。また、使用する膜に関する文献に報告された通常の
方法のいずれか一つにより酵素を膜に固定しうる。好ま
しい実施態様に於いては、酵素は、Matsonの米国特許第
4,795,704号および係属中の米国特許出願第912,595号に
記載されているような非対称の親水性の微孔質の中空繊
維膜の内部にその可逆的な閉込めにより固定されうる。
更に詳細には、この分割法に使用される多相/抽出膜リ
アクターは、血液透過分野に使用される型のポリアクリ
ロニトリル中空繊維で加工された0.75m2の特注の耐溶媒
性の膜モジュール(例えば、Asahi Co.から入手し得
る)より成りうる。Amano International Enzymesから
購入した酵素、リパーゼMAPは、酵素製剤1mg当り毎時6
モルのMMPGが加水分解されるという活性をもつことを示
した。また、この酵素は3−(4−メトキシフェニル)
グリシド酸の簡単なアルキルエステルを立体選択的に加
水分解することを示した。
膜を酵素で活性化するため、酵素5.0gを蒸留水1に
溶解する。次に、酵素溶液を、シェルからルーメンヘ、
そしてリザーバに戻して限外濾過方式で30分間循環す
る。リザーバが空になるまで限外濾過液を集め、その
後、トルエン250mlをシェルにポンプ輸送し、5〜7psig
のシェル圧力で400〜450ml/分で循環してリアクター・
モジュール中のシェル側の空間から残存酵素溶液を除去
する。
酵素をリアクターに充填した後、トルエンで前もって
飽和させたpH7.00の10mMのリン酸塩緩衝液を、400〜500
ml/分の流量でルーメン側で循環させる。上記のよう
に、pH7に於ける分配/反応プロセスの“可逆性”を解
決するためには、この大容量の緩衝水溶液が必要とされ
る。大容量の水溶液を与えることにより、阻害性生成物
を低い水相濃度まで稀釈することができ、こうして反応
“平衡”を許容し得る程高い転化率まで変位させること
ができる。次に、ラセミメチル3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシデート(MMPG)20.8g(0.1モル)をトルエ
ンリザーバに添加する。水溶液リザーバのpHを1.0MのNa
OHの添加により7.00に保つ。エステル加水分解の程度が
65%に達するまで、即ち1MのNaOH 65mlを添加するま
で、リアクターを連続運転する。この時点で、有機相を
膜リアクターから排出し、残存MMPGを上記のようにして
有機相から単離する。
3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸エステルの
ラセミトランスメチルエステルを水不混和性有
機溶媒中の基質の溶液の形態で多相/抽出膜リアクター
に供給することは、幾つかの理由で有利である。一方、
多相膜リアクターは、膜に含まれる酵素と不充分な水溶
性基質エステルの有効な接触を促進し、このような反応
の非膜分散相操作中に代表的に存在する正味の水相に関
連する拡散抵抗を最小にする。一方、酵素と基質とこの
有効な接触は基質の望ましくない非触媒副反応、例えば
グリシド酸エステルのオキシラン環の加水分解(ジオー
ル化合物を生成する)を最小にする。基質のこのような
望ましくない加水分解副反応は、酵素的分割法の収率を
低下させることから、そのような反応は最小にされるべ
きである。そのことは本発明の多相/抽出膜リアクター
を用いることにより可能となる。多相/抽出膜リアクタ
ーは、有機相/水相界面で高濃度の酵素を提供し、それ
により(2,3)−グリシド酸エステルの所望の酵素
加水分解の速度対(2,3)−グリシド酸エステルの
オキシラン環の所望されない非触媒加水分解の速度の比
を最大にし、そしてその方法に於ける所望の(2,3
)−グリシド酸エステルの収率を最大にする。
多相/抽出膜リアクター中で酵素的分割法を行なうこ
との別の利点は、酵素触媒を不必要に希釈そして/また
は損失することなく、阻害性反応生成物を反応帯域から
選択的に、そして効率良く除去する能力にある。一方、
これは、水溶性の阻害性生成物を水性プロセス流中の希
釈により除去することにより、またはその中の化学反応
(例えば、項目5.3および5.4に説明された重亜硫酸塩付
加物生成)により行ない得る。また、有機溶媒にかなり
の溶解性を示す阻害性反応生成物は、それらを通常の液
液接触装置または膜溶媒抽出装置中で有機相から抽出す
ることにより反応系から除去し得る。或種の阻害性生成
物(例えば、項目5.3および5.4に説明されるアルデヒド
反応副生物)は水溶液および有機溶液の両方に或る程度
可溶性であり、従っていずれかのアプローチによっても
処理され易い。
5.2.14. pH8に於ける膜リアクター中のラセミメチル3
−(4−メトキシフェニル)グリシデートの分割‐‐実
施例14〜17 4つの膜リアクター分割実験(実施例14〜17に相当)
をpH8(実施例13に使用されるpH値7とは異なる)で行
なった。
実施例14 この分割方法のための多相膜リアクターを、以下のよ
うにして操作した。膜リアクターは、ポリアクリロニト
リル限外濾過用中空繊維で加工された0.75m2の耐溶媒性
の膜モジュールより成る。Amano International Bnzyme
sから購入した酵素リパーゼMAPは、1mg当り毎時6μモ
ルのMMPGを加水分解するという活性をもつことが示され
ている。また、この酵素は3−(4−メトキシフェニ
ル)−グリシド酸のエステルを立体選択的に加水分解す
ることが示されている。
膜リアクターに、項目6.6および6.7に記載したように
して酸素を充填した。詳しくは、酵素5.0gを蒸留水1
に溶解した。次に酵素溶液を、シェルからルーメンへ、
そしてリザーバに還流する液体で限外濾過方式で30分循
環環させた。次に、リザーバが空になるまで限外濾過液
を回収し、その後、トルエン250mlをシェルにポンプ輸
送し5〜7psigのシェル圧力で400〜450ml/分で循環させ
て残存酵素溶液をシェルから除去した。
こうして酵素をリアクターに充填した後、0.2Mのリン
酸塩緩衝液(pH8.00)1をルーメン側で400〜500ml/
分の速度で循環させた。実験を開始するに当たり、メチ
ル3−(4−メトキシフェニル)グリシデート(MMPG)
20.8g(0.1モル)をトルエンリザーバに添加した。水溶
液リザーバのpHを0.9MのNaOHの添加により8.00に保っ
た。エステル加水分解の程度が苛性ソーダの消費量を基
準として57.5%に達するまで、リアクターを連続運転し
た。この時点で、有機相を排出し、残存MMPGを単離し
た。単離したエステル生成物の鏡像異性体過剰は、旋光
分析により測定して96%であった。回収したエステルの
量は4gであり、19%の収率に相当した。
実施例15 実施例14に記載した多相膜リアクターを以下の実験に
再使用した。トルエン375mlをシェルにポンプ輸送し、
5〜7psigのシェル圧力下400〜450ml/分で循環させて残
存酵素溶液をシェルから除去した。0.2Mのリン酸塩緩衝
液(pH8.00)の水溶液容量1.5lをルーメン側で400〜500
ml/分の速度で循環させた。実験を開始するに当たり、
メチル3−(4−メトキシフェニル)グリシデート(MM
PG)31.2g(0.15モル)をトルエンリザーバに添加し
た。水溶液リザーバのpHを0.9MのNaOHの添加により8.00
に保った。エステル加水分解の程度が苛性ソーダの消費
量を基準として53%に達するまで、リアクターを連続運
転した。この時点で、有機相を排出し、残存MMPGを単離
した。単離したエステル生成物を鏡像異性体過剰は、旋
光分析により測定して99%であった。回収したエステル
の量は5.9gであり、19%の収率に相当した。
実施例16 実施例14に記載した多相膜リアクターを以下の実験に
再使用した。トルエン375mlをシェルにポンプ輸送し、
5〜7psigのシェル圧力下400〜450ml/分で循環させて残
存酵素溶液をシェルから除去した。0.2Mのリン酸塩緩衝
液(pH8.00)の水溶液容量1.5lをルーメン側で400〜500
ml/分の速度で循環させた。実験を開始するに当たり、
メチル3−(4−メトキシフェニル)グリシデート(MM
PG)31.2g(0.15モル)をトルエンリザーバに添加し
た。水溶液リザーバのpHを0.9MのNaOHの添加により8.00
に保った。エステル加水分解の程度が苛性ソーダの消費
量を基準として52.4%に達するまで、リアクターを連続
運転した。この時点で、有機相を排出し、残存MMPGを単
離した。単離したエステル生成物の鏡像異性体過剰は、
旋光分析により測定して99%であった。回収したエステ
ルの量は9.0gであり、28.8%の収率に相当した。
実施例17 実施例14に記載した多相膜リアクターを以下に実験に
再使用した。トルエン375mlをシェルにポンプ輸送し、
5〜7psigのシェル圧力下400〜450ml/分で循環させて残
存酵素溶液をシェルから除去した。0.2Mのリン酸塩緩衝
液(pH8.00)の水溶液容量1.5lをルーメン側で400〜500
ml/分の速度で循環させた。実験を開始するに当り、メ
チル3−(4−メトキシフェニル)グリシデート(MMP
G)31.2g(0.15モル)をトルエンリザーバに添加した。
水溶液リザーバのpHを0.9MのNaOHの添加により8.00に保
った。エステル加水分解の程度が苛性ソーダの消費量を
基準として41.2%に達するまで、リアクターを連続運転
した。この時点で、有機相を排出し、残存MMPGを単離し
た。単離したエステル生成物の鏡像異性体過剰は、旋光
分析により測定して92%であった。回収したエステルの
量は7.7gであり、24.8%の収率に相当した。
5.3.重亜硫酸塩との付加物生成によるアルデヒド副生物
の処理 図9の基質化合物A--トランス−3−(4−メトキシ
フェニル)グリシド酸メチルエステル‐‐のエステル官
能基の酵素触媒加水分触は、苛性ソーダによる酵素的反
応混合物の滴定、そしてその後にHPLC法による基質の枯
渇を行なうことにより観察し得る。しかしながら、相当
するグリシド酸である図9の化合物Bは、反応混合物の
処理中において小量しか単離することができない。反応
性基質鏡像異性体を比較的高い値まで転化することが可
能な酵素的反応の場合において、有機相反応生成物混合
物から有機溶媒を除去することにより、所望の生成物、
化合物Aの(2,3)鏡像異性体の他に生成物が残存
した。このような別の生成物の存在は所望の生成物の純
度を低下させるとともに、所望の生成物の回収を更に難
しくした。
図9に示された化合物Bの如きグリシド酸は、容易に
脱カルボキシル化を受け、続いて相当するアルデヒドに
転位することが一般に知られている。この反応の2工程
機構が提案されている(SinghおよびKagan、J.Org.Che
m.1970、53、2203)。また、得られた化合物C、4−メ
トキシフェニルアセトアルデヒドは、大気酸素により或
る程度の空気酸化を受け、相当するカルルボン酸化合物
D、4−メトキシフェニル酢酸を生じることが予想され
る。
化合物Aの酵素触媒加水分解後および化合物Aの残存
する所望の(2,3)鏡像異性体の除去後に残存す
る、有機相から回収された物質を分光分析した結果、4
−メトキシフェニルアセトアルデヒド、および4−メト
キシフェニル酢酸‐‐即ち、それぞれ、化合物Cおよび
D--の両方の存在が示された。
化合物CおよびDは、化合物Aのメチルエステル官能
基の酵素触媒または塩基触媒のいずれかによる加水分解
により化合物Aからのみ生成し得る。更に、アルデヒド
化合物Cは更に反応し得る。このような更なる反応は、
分光分析法により経験的に観察される対応するカルボン
酸化合物Dへの酸化の特別な例を含むだけでなく、付加
物生成反応、gem--ジオールへの水和、オリゴマー化
(例えば、ホルムアルデヒドにより生成される三量体に
似た三量体化合物の生成)、酸性条件または塩基性条件
下のアルドール縮合を含みうるものであり、それにより
多数の可能なオリゴマー生成物またはポリマー生成物を
もたらす。更に、アルデヒドは、公知の化学反応である
シッフ塩基生成に関与し得る(J.March、Advanced Orga
nic Chemistry、McGraw-Hill Co.、第2版、1977;Hendr
ickson、Cramm、およびHammond、Organic ChemistryMcG
raw-Hill Co.、第3版、1970)。一般的に、殆どのシッ
フ塩基は中性pH付近で安定であり、酸性条件または塩基
性条件下で加水分解する。しかしながら、生成の機構は
当該カルボニル化合物、例えばアルデヒドの非プロトン
化アミン窒素の求核攻撃を伴ない、こうして、シッフ塩
基生成はpH7より高いpHで更に速く進行する。
アルデヒドとリシン残基のε−アミノ基との間のシッ
フ塩基が公知である〔T.E.Creighton、Protein:Struct
ures and Molecular Properties、Freeman and Co.、19
83〕が故に、反応系中にアルデヒド化合物Cが存在する
ことは、それが酵素反応に関係しているので、関心事で
ある。酵素の得られる変性は、所定の反応を触媒作用す
る酵素の能力に関して可逆的および不可逆的の有害な効
果の両方を生じ得る。
本明細書に使用されるように、“阻害”および“阻害
性”という用語は、化学化合物‐‐更に詳細には反応生
成物がまたは副生物"--が所定の反応を触媒作用する酵
素の能力の低下をひき起こす何らかのプロセスまたは現
象を表現することを意味する。例えば、この種の阻害に
は、酵素動力学の公知のMichaelis-Mentenモデルにより
記載される阻害も含まれる。酵素に関する化合物のこの
阻害効果は、阻害化合物が反応中に酵素と接触している
間に明らかに生じていることもあり、また、その阻害効
果は、前記の阻害化合物が酵素と接触し、続いて除去さ
れた後にも持続し得るかも知れない。例えば、この種の
阻害性としては、酸素タンパク質のアミノ酸残基の官能
基を化学的に修飾する化合物に関連する阻害性を含み得
る。こうして、可逆的形態および不可逆的形態の両方の
阻害の軽減は、本発明の実施に含まれる。
所定の組の反応条件下で短縮された酵素寿命をもたら
す阻害効果は、その酵素を長い寿命を有する酵素の場合
よりも更に頻繁に交換することを必要とする。酵素活性
の目安として平均反応速度を採用することにより、表10
は、実施例18および19に記載された反応条件下で操作さ
れる市販の酵素製剤リパーゼOFが、アルデヒド副生物を
重亜硫酸塩の添加により除去する場合に、長期間にわた
ってその活性を維持することを明示している。
アルデヒド副生物の存在は、3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシデートのエステルの分割に使用される膜バ
イオリアクターの操作に重要な結果を有する。実施例18
に記載されたリアクター条件下に行なわれた二つの分割
に於いて、仕込んだエステルの15%が滴定された後に白
色の懸濁液になった。限外濾過膜によるこの白色の懸濁
液の濾過アリコートは、白色の沈澱を除去した。しかし
ながら、1時間放置後に、白色の懸濁液が透明な濾液中
にもう一度現われた。限外濾過による沈澱が実際に保持
されたことは、膜がこの物質により内部および外部の両
方で汚損し得ることを示唆する。膜を酵素で活性化しな
い以外は実施例18の条件と同じ条件下で行なわれた実験
では、白色の懸濁液が24時間後でさえも観察されなかっ
た。如何なる特別な機構または説明に拘束されることを
望まないが、白色沈澱の生成は、制限されるが有限の水
溶性を有するアルデヒドが水不溶性の生成物に変換され
ることに一致する。
実施例18に記載された条件下で行なわれた別の実験で
は、水相中に存在する固体の沈澱が観察された。この固
体は膜の内表面を汚損し、こうしてその酵素活性を低下
し得る。実施例18に記載された条件下で行なわれた一つ
の実験では、繊維ルーメン中の水相の流れ方向を反転す
ることは、水性流中の黄色粒子の突然の出現そしてまた
酵素活性の突然の増加(酸滴定率の増加により確かめら
れる)を生じた。
また、アルデヒド副生物(化合物C)の存在は、最終
生成物の単離操作に関して重要な意味を有する。アルデ
ヒドはかなり有機可溶性であるので、それは所望の生成
物、化合物Aの(2,3)鏡像異性体の回収を妨害し
得る。反応混合物の最終有機相中でのアルデヒド(化合
物C)の増加量は、アルデヒド不純物からの最終生成物
の完全な分離を更に困難にし、不経済にする。
グリシデートエステルの酵素的分割の特別な場合に関
して、反応混合物中のアルデヒド副生物、化合物Cの存
在は、酵素反応の最終の所望生成物の品質を改良する精
製方法を示唆する。この方法は、重亜硫酸塩付加物の選
択的生成による酵素反応混合物の有機相からのアルデヒ
ド化合物Cの選択的除去を伴なう。この付加物は、酵素
反応混合物の有機相を重亜硫酸塩の水溶液と接触させ、
続いて重亜硫酸塩付加物を水相中に抽出することにより
生成される。
アルデヒド化合物への重亜硫酸塩の添加は公知であ
り、殆どの有機化学の本に記載されている。一般に、殆
どのアルデヒド、および或種のケトンのカルボニル基は
重亜硫酸アニオンによる求核攻撃を受け、図9に示され
たα−ヒドロキシスルホネート化合物Eをもたらす。こ
のような化合物は一般に重亜硫酸塩付加物として知られ
ている。このような付加物の安定性および生成の安易さ
は、求核攻撃を受けるカルボニル基の化学的性質により
決定されると考えられる。立体効果はこのような付加物
の生成の容易さを決定すると考えられ、それらはpH5付
近のわずかに酸性の条件下で一般に生成され(Fieser a
nd Fieser、Reagents for Organic Synthesis、1巻、J
ohn Wiley、1967)、この場合、求核性HSO3 -アニオンが
水溶性中の主要な種であり、そしてカルボニル基がわず
かにプロトン化されて、求核攻撃を促進する。しかしな
がら、このような付加物の生成および安定性の両方に最
適な条件は一般に経験的なものと考えられており、また
重亜硫酸塩付加物は温和な塩基性条件下で生成されるこ
とが知られている。
それ故、エステル加水分解が所望の程度に達した後で
あって、所望の(2,3)鏡像異性体が富化された化
合物Aの回収のために正味の有機相を含む有機溶媒を除
去する前に、重亜硫酸塩溶液を分散相酵素反応の有機相
を洗浄する目的で使用し得る。所望のグリシデートエス
テル生成物から汚染アルデヒドを除去するこの方法は、
実施例20に記載される。
しかしながら、10%の重亜硫酸溶液はまた、その他の
加水分解反応生成物の不在下でおそらく重亜硫酸イオン
によるエポキシド官能基の攻撃により化合物Aを分解
し、それにより反応処理中に化合物Aの両鏡像異性体の
損失をもたらすことがわかった。この問題は、実施例21
に示されている。この実施例は、最終生成物の収率を悪
化させることなしには越えることができない反応プロセ
ス中の重亜硫酸塩濃度の上限を示唆している。
実施例22は、化合物Cの存在下に於いて化合物Aの酵
素触媒加水分解の速度が低下すること、および化合物D
の存在下に於いてこのような阻害効果がかなり欠如する
ことを示している。この実施例に示されるリパーゼOFに
よる加水分解の速度が化合物Dにより見掛上促進される
ことは再現性があり、そして化合物Dが阻害効果をもた
ないことは、注目されるべきである。加えて、重亜硫酸
塩付加物、化合物Eは阻害性ではなく、これらの条件下
の重亜硫酸塩付加物の安定性は、化合物Cがその阻害効
果を発揮しないようにするのに充分であることを示して
いる。
上記の情報および実施例に鑑みて、阻害性化合物C
を、化合物Aのエステル官能基の酵素加水分解物中にそ
の重亜硫酸塩付加物を生成することによりその場で除去
する可能性が存在する。基質(化合物A)の安定性、所
望の酵素活性および酵素安定性、並びに化合物Cの重亜
硫酸塩付加物の生成の容易さおよび安定性が全て最高に
されるように反応条件を選択するのには、幾つかの因子
を考慮する必要がある。このような研究は必ず実験を必
要とするが、一定の情報が公開された文献中に存在す
る。即ち、エステル官能基は一般に中性pH付近で最も安
定であることが知られているが、エポキシドは一般にpH
8〜9.5の間で水溶液中で最も安定である(Y.Pocker、B.
P.Ronald、およびK.W.Anderson、J.Amer.Chem.Soc.、19
88、110、6492)。アルデヒド−重亜硫酸塩付加物は一
般にpH5〜9の間で安定であることが知られている。
表11に示される実験結果は、重亜硫酸付加物、化合物
EがpH8で充分安定性であり化合物Cの抑制効果を軽減
することを示す。適切な重亜硫酸塩濃度を選択すること
に関して、実施例21からの結果は、約10%w/vが生成物
収率を悪化させない上限であることを示唆する。別の極
限では、重亜硫酸塩の不存在により化合物Cの抑制効果
が現われるようになる。アルデヒド−重亜硫酸塩化学反
応の化学量論量は1対1であるので、水相中に使用され
る重亜硫酸アニオンの好ましい量は、反応中に生成され
ると予想されるアルデヒド副生物の量と等モル量であ
り、但し、水相の容量は重亜硫酸塩濃度が上記の上限を
越えないような容量であることを条件とする。
中性pH付近で水溶液中に存在する重亜硫酸アニオン
は、亜硫酸、即ちH2SO3(それ自体は水中の二酸化硫黄
の溶解および水和により生成し得る)から一つのプロト
ンの除去により生成し得ることが注目されるべきであ
る。亜硫酸は、相当するカチオン種(例えば、Na+)と
してのアルカリ金属と塩を生成する。このような塩のア
ニオン種は、重亜硫酸根(HSO3 -)、亜硫酸根(S
O3 -)、およびメタ重亜硫酸根(S2O5 -2)を含む。更
に、水溶液中では、全てのこのような形態の亜硫酸とそ
の塩の混合物は平衡混合物として存在し、その組成は溶
液のpHに依存することが注目されるべきである。溶媒和
された重亜硫酸アニオンと亜硫酸ジアニオンとの間の平
衡は5〜9のpH範囲にわたって水溶液中で存在し、重亜
硫酸アニオンのpkaは約7である。この平衡の他に、1
分子のメタ重亜硫酸塩が水和され、水中で不均化して2
分子の重亜硫酸塩を生じる。全ての塩は種々の程度まで
溶解して、溶媒和された重亜硫酸アオニン種、亜硫酸ア
ニオン種、およびメタ重亜硫酸アニオン種と一緒に溶媒
和されたアルカリ金属カチオン種を生じ、これらは全
て、その後、平衡混和物の生成に関与する。重亜硫酸ア
ニオンが関与し得る複雑な平衡に鑑みて、本明細書に使
用される“重硫酸塩濃度”および“重亜硫酸アニオ濃
度”という用語は、個々のアニオン性重亜硫酸種HSO3 -
そのものの濃度のみを云うのとは反対に、亜硫酸種、重
亜硫酸種、およびメタ重亜硫酸種の平衡混合物‐‐即
ち、水溶液中の亜硫酸から誘導し得る全ての種々のプロ
トン化種およびイオン化種を含む、全ての塩および溶媒
和された種‐‐の全濃度を云うことを意味する。上記の
種の全てが結局二酸化硫黄から誘導し得るので、水溶液
中の重亜硫酸塩の濃度はまた溶液の“二酸化硫黄含量”
という用語で記載し得る。
有機相容量対水相容量の比は、重要ではなく、そして
あらゆる便利な値で設定でき、好ましい実施態様では反
応中に加水分解される化合物A(これは有機相中に供給
される)1モル当り少なくとも1当量の重亜硫酸塩(水
相中)を与えることと合致し、そして基質分解を生じる
濃度‐‐例えば、約10%w/v--を越えない水相中の重亜
硫酸塩の濃度と合致する。
上記の考慮事項に鑑みて、重亜硫酸塩の濃度を実施例
23〜26については水相の0.5%w/w(0.048Mの重亜硫酸ナ
トリウム)に設定した。この値は、加水分解された化合
物Aのすべてが化合物Cに変換され、そして有機相中の
ラセミエステル各0.094モルに対して1の水相が使用
されるものと仮定して、ラセミ化合物Aの50%の加水分
解でわずかにモル過剰の重亜硫酸塩を与える。分散相酵
素反応に選択された、結果として生じた条件は、周囲押
動で0.5%w/wの重亜硫酸ナトリウムを含む50mMのpH8.0
のリン酸ナトリウム緩衝液より成る水相および約1:10の
有機相対水相の比より成るものであった。これらの条件
は、化合物Aの所望の(2,3)鏡像異性体の改良さ
れた収率を与え、そして化合物Cの抑制効果を最小にす
ることが示された。これらの実験からの結果が実施例23
〜26および表12に要約される。
実施例18〜19、実施例23〜26、および表10〜12に示さ
れたデータは、3−(4−メトキシフェニル)グリシデ
ートのエステルの酵素的分割中に水相中に重亜硫酸塩が
存在することがリパーゼOFの酵素活性に極めて有益な効
果をもたらし、そして同様に生成物の収率並びに化学的
な鏡像異性体純度に顕著な効果をもたらすことを示す。
この分割法に使用し得る代表的な酵素の安定性に関し
て0.093Mの全濃度の重亜硫酸アニオンの効果を測定し、
結果を以下に要約する。
上記の結果は、全ての酵素が重亜硫酸アニオンの存在
下でそれらの安定性に関して必ずしも同等ではないこと
を示唆する。別の根拠が表13に示され、この表は実施例
27からの結果を要約している。重亜硫酸アニオンの存在
下でのリパーゼOFについての表10に示された結果と比較
することにより、重亜硫酸塩がパラターゼMの触媒活性
を増強しなかったことが明らかになる。
重亜硫酸塩が或種の酵素に関してもち得る有害な影響
を減少する目的から、重亜硫酸根含有種の全てを反応の
開始時に水相に仕込まずに、重亜硫酸塩を反応したエス
テルの量の関数として水相に連続的に添加することが可
能である。即ち、酵素的反応により生成される量のアル
デヒドと反応するのに必要とされる量の重亜硫酸塩を徐
々に添加することは本発明の範囲内にある。この形態の
重亜硫酸塩の添加には、酵素と相互作用するのに有効な
遊離重亜硫酸根の量および濃度を最小に保つという利点
を有する。
5.4.重亜硫酸塩の使用に関する実施例 本発明の幾つかの実施例およびその要素は、以下のと
おりである。これらの実施例は本発明の性質を更に説明
することを意味し、本発明の範囲の限定として作用する
ものではない。
5.4.1.多相酵素膜のリアクター中のトランス−3−(4
−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエステルの分割 5.4.2.実施例18--重亜硫酸塩の不存在下の多相酵素膜リ
アクター中のトランス−3−(4−メトキシフェニル)
グリシド酸メチルエステルの分割 実施例18Aの酵素的分割は、上記の型の多相/抽出酵
素膜リアクター中で行なった。膜をリパーゼOF 10gで活
性化した。膜活性化操作は、米国特許第4,795,704号お
よび1986年10月1日に出願され、“Method and Apparat
us for Catalyst Containment in Multiphase Membrane
Reactor System"と題する米国特許願第912,595号明細
書に於いてMatsonにより記載されている。トランス−3
−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエステル
(化合物A)のラセミ混合物78g(0.375モル)をトルエ
ン375mlに溶解することにより有機相を調製した。次
に、この有機溶液を中空繊維装置のシェル側で循環させ
た。pH8.0の50mMのリン酸ナトリウム緩衝水溶液4lを膜
装置のルーメン側で循環させた。pHを、所定のpHを監視
し維持する装置(“pHスタット”として普通知られてい
る)で水酸化ナトリウムを添加することにより、8.0に
維持した。
11時間後に、有機液体を膜装置から排出した。損失を
減少するため、膜装置を新しいトルエン500mlですす
ぎ、次に二つのトルエン画分を合わせた。続いて、トル
エンを65℃で減圧下に蒸発させた。残存固体に、固体濃
度が20%(w/w)となるように、メタノールを添加し
た。次に、この溶液を3時間にわたって−20℃に冷却し
た。沈澱した結晶を濾過し、乾燥し、そして光学純度に
関して分析した。これらの最終結晶をリアクター生成物
と称する。
結晶化からの母液を減圧下で蒸発させてメタノールを
除去した。次に、残液をエステル濃度に関して分析し
た。この液体の残部は阻害性アルデヒド副生物化合物C
を含む。
実施例18Aに使用したのと同じ酵素を依然として含む
同じ膜リアクター中で行なわれた第二の酵素的分割(実
施例18B)は、最初の分割の終了の13時間後に開始し
た。22時間後に、この第二反応を停止し、有機相を最初
の分割の場合と同様にして処理した。これらの二回の分
割からの結晶を表10に要約する。
5.4.3.実施例19--重亜硫酸ナトリウムを使用する多相酵
素膜リアクター中のトランス−3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシド酸メチルエステルの分割 実施例19Aの酵素分割は、上記と同じ型の多相/抽出
酵素膜リアクター中で行なった。その膜をリパーゼOF 1
0gで活性化した。膜活性化操作は、米国特許第4,795,70
4号および1986年10月1日に出願された“Method and Ap
paratus for Catalyst Containment in Multiphase Mem
brane Reactor System"と題する米国特許願第912,595号
明細書に於いてMatsonにより記載されている。トランス
−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエス
テル(化合物A)のラセミ混合物78g(0.375モル)をト
ルエン375mlに溶解することにより有機相を調製した。
次に、この有機溶液を中空繊維装置のシェル側で循環さ
せた。0.2mMのリン酸ナトリウムおよび0.375モルの重亜
硫酸ナトリウムを含むpH8.0の緩衝水溶液4lを膜装置の
ルーメン側で循環させた。
7.5時間後に、反応を止め、有機液体を膜装置から排
出した。損失を減少するため、膜装置を新しいトルエン
500mlですすぎ、次に二つのトルエン画分を合わせた。
続いて、トルエンを65℃で減圧下に蒸発させた。残存固
体に、固体濃度が20%(w/w)となるように、メタノー
ルを添加した。次に、この溶液を3時間にわたって−20
℃に冷却した。沈澱した結晶を濾過し、乾燥し、そして
光学純度に関して分析した。これらの最終結晶をリアク
ター生成物と称する。
結晶化からの母液を減圧下で蒸発させてメタノールを
除去した。次に、残液をエステル濃度に関して分析し
た。この液体の残部は阻害性アルデヒド副生物化合物C
を含む。
実施例19Aに使用され、依然として同酵素を含む同じ
膜リアクター中で行なわれた第二の酵素的分割(実施例
19B)は、最初の分割の終了の16時間後に開始した。7.5
時間後に、この第二反応を停止し、有機相を最初の分割
の場合と同様にして処理した。
実施例19Aおよび19Bに使用され、依然として同酵素を
含む同じ膜リアクター中で行なわれた第三の酵素分割
(実施例19C)は、第二の分割の終了の16時間後に開始
した。7.5時間後に、この第三反応を止め、第一および
第二の分割の場合と同様にして有機相を処理した。全て
の3回の分割からの結果を表10に要約する。
定義: 転化率は、反応器に仕込まれたラセミエステルの初期
量(78g、0.375モル)で割られた、反応したグリシデー
トエステルの量として定義される。
平均反応速度は、全反応時間で割られた、反応したグ
リシド酸エステルの量である。
生成物収率は、反応器に仕込まれたラセミエステルの
量(78g、0.375モル)で割られた、反応器から単離され
た(実施例18に記載された操作に従う)分割物質の量で
ある。
抑制性アルデヒド生成物の重量は、反応器から単離さ
れた非エステル物質の量である。
5.4.4.実施例20--重亜硫酸ナトリウムを使用するトラン
ス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエ
ステルの酵素的分割から反応生成物の富化 ラセミ化合物A10ミリモルを含むトルエン50mlを、リ
パーゼMAPとして知られているAmanoからの市販の酵素製
剤100mgを含むpH8.0の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液50ml
と共に周囲温度で18時間振とうした。次に、反応混合物
を水で400mlの容量に希釈し、ジエチルエーテル400mlで
2回抽出した。次に、合わせた有機相を水400mlで2回
逆抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させると、
粗生成物1.5g(7.2モリミル)が残った。c=1.0でエタ
ノール中のこの物質の旋光は−68.0度であり、34.7%の
鏡像異性体過剰を示す(−196.2度の値を、エタノール
中で測定して(2,3)鏡像異性体の100%鏡像異性
体過剰に関する標準として使用した)。次に、粗生成物
をジエチルエーテル300mlに再溶解し、有機溶液を10%
重亜硫酸ナトリウム溶液100mlで2回洗浄した。次に、
有機相を水で逆洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発
させると更に純粋な生成物1.4g(6.7ミリモル)が残っ
た。c=1.0でエタノール中のこの物質の旋光は−117.5
度であり、化合物Aの所望の(2,3)鏡像異性体の
59.9%の鏡像異性体過剰を示す。
5.4.5.実施例21--濃重亜硫酸ナトリウムを使用するトル
エンからのトランス−3−(4−メトキシフェニル)グ
リシド酸メチルエステルの回収 純粋なラセミ化合物A 2.0gをジエチルエーテル200ml
に溶解した。次に、この有機溶液を10%重亜硫酸塩溶液
250mlで1回洗浄し、水250mlで洗浄し、硫酸マグネシウ
ムで乾燥し、蒸発させると、ラセミ化合物A 1.8g(これ
は物質の10%の損失を示す)が残った。重亜硫酸塩洗浄
の不在下の物質の回収は殆ど定量的であった。
5.4.6.実施例‐‐反応生成物による代表的な酵素に関す
る抑制の程度 50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)12mlおよび純
粋なラセミ化合物Aの400mMトルエン溶液8mlを含む反応
混合物を迅速に攪拌し、そして反応速度を“pHスタッ
ト”として知られている装置により監視した。次に、所
定量の所定の市販の酵素製剤を反応混合物に添加し、初
期の加水分解速度を計算した。その反応を、化合物C1ミ
リモル(50mM)の存在下、化合物D1ミリモル(50mM)の
存在下、そして化合物E1ミリモル(50mM)の存在下で繰
り返した。結果を表11に示す。
5.4.7.実施例23--重亜硫酸ナトリウムを使用するトラン
ス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエ
ステルの分割 0.5w/v%の重亜硫酸ナトリウムを含むpH8.0の50mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液の溶液400mlを、600mlビーカー中
で7.8g(37.5ミリモル、約0.88M)を含むトルエン42.5m
lと一緒に攪拌し、そしてpHを8.0に保つために水酸化ナ
トリウムで反応を滴定するように装備されたpHスタット
により監視した。これに市販の製剤リパーゼOF 100mgを
添加し、反応を90分間進行させた。次に、反応混合物を
分液ロートに注ぎ、ジエチルエーテル400mlで2回抽出
し、合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した。エ
ーテルを蒸発すると、所望の(2,3)鏡像異性体が
富化された化合物Aが残った。次に、この粗生成物を最
小量の熱メタノールから常法で1回再結晶し、再結晶生
成物を濾過により回収した。種々の粗生成物および再結
晶生成物の鏡像異性体過剰を、(2,3)鏡像異性体
の100%鏡像異性体過剰として−196.2度の標準値を使用
して、c=1.0でエタノール中で測定した。示された%
収率は、基質の最初の量の%で表わされる生成物の収率
である。(2,3)鏡像異性体の%収率は、ラセミ基
質中に最初に存在するこの鏡像異性体量の%で表わさ
れ、そして収率(%)×e.e.(%)の積である。結果を
表12に要約する。
5.4.8.実施例24--重亜硫酸ナトリウムの不在下のトラン
ス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエ
ステルの分割 pH8.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液の溶液400mlを、
600mlビーカー中で7.8g(37.5ミリモル、約0.88M)を含
むトルエン42.5mlと一緒に攪拌し、そしてpHを8.0に保
つために水酸化ナトリウムで反応を滴定するように装備
されたpHスタットにより監視した。これに市販の製剤リ
パーゼOF 100mgを添加し、反応を90分間進行させた。次
に、反応混合物を分液ロートに注ぎ、ジエチルエーテル
400mlで2回抽出し、合わせた有機相を硫酸マグネシウ
ムで乾燥した。エーテルを蒸発すると、所望の(2,3
)鏡像異性体が富化された化合物Aが残った。次に、
この粗生成物を最小量の熱メタノールから常法で1回再
結晶し、再結晶生成物を濾過により回収した。種々の粗
生成物および再結晶生成物の鏡像異性体過剰を、(2
,3)鏡像異性体の100%鏡像異性体過剰として−19
6.2度の標準値を使用して、c=1.0でエタノール中で測
定した。示された%収率は、基質の最初の量の%で表わ
される生成物の収率である。(2,3)鏡像異性体の
%収率は、ラセミ基質中に最初に存在するこの鏡像異性
体量の%で表わされ、そして収率(%)×e.e.(%)の
積である。結果を表12に要約する。
5.4.9.実施例25--重亜硫酸ナトリウムおよび延長された
反応時間を使用するトランス−3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシド酸メチルエステルの分割 0.5w/v%の重亜硫酸ナトリウムを含むpH8.0の50mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液の溶液400mlを、600mlビーカー中
で7.8g(37.5ミリモル、約0.88M)を含むトルエン42.5m
lと一緒に攪拌し、そしてpHを8.0に保つために水酸化ナ
トリウムで反応を滴定するように装備されたpHスタット
により監視した。これに市販の製剤リパーゼOF 100mgを
添加し、反応を4時間進行させた。次に、反応混合物を
分液ロートに注ぎ、ジエチルエーテル400mlで2回抽出
し、合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した。エ
ーテルを蒸発すると、所望の(2,3)鏡像異性体が
富化された化合物Aが残った。次に、この粗生成物を最
小量の熱メタノールから常法で1回再結晶し、再結晶生
成物を濾過により回収した。種々の粗生成物および再結
晶生成物の鏡像異性体過剰を、(2,3)鏡像異性体
の100%鏡像異性体過剰として−196.2度の標準値を使用
して、c=1.0でエタノール中で測定した。示された%
収率は、基質の最初の量の%で表わされる生成物の収率
である。(2,3)鏡像異性体の%収率は、ラセミ基
質中に最初に存在するこの鏡像異性体量の%で表わさ
れ、そして収率(%)×e.e.(%)の積である。結果を
表12に要約する。
5.4.10.実施例26--大規模で重亜硫酸ナトリウムを使用
するトランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド
酸メチルエステルの分割 0.5w/v%の重亜硫酸ナトリウムを含むpH8.0の50mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液の溶液1200mlを、2000mlビーカー
中で23.4g(112.5ミリモル、約0.88M)を含むトルエン1
27.5mlと一緒に攪拌し、そしてpHを8.0に保つために水
酸化ナトリウムで反応を滴定するように装備されたpHス
タットにより監視した。これに市販の製剤リパーゼOF 3
00mgを添加し、反応を90分間進行させた。次に、反応混
合物を分液ロートに注ぎ、ジエチルエーテル1200mlで2
回抽出し、合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し
た。エーテルを蒸発すると、所望の(2,3)鏡像異
性体が富化された化合物Aが残った。次に、この粗生成
物を最小量の熱メタノールから常法で1回再結晶し、再
結晶生成物を濾過により回収した。種々の粗生成物およ
び再結晶生成物の鏡像異性体過剰を、(2,3)鏡像
異性体の100%鏡像異性体過剰として−196.2度の標準値
を使用して、c=1.0でエタノール中で測定した。示さ
れた%収率は、基質の最初の量の%で表わされる生成物
の収率である。(2,3)鏡像異性体の%収率は、ラ
セミ基質中に最初に存在するこの鏡像異性体量の%で表
わされ、そして収率(%)×e.e.(%)の積である。結
果を表12に要約する。
5.4.11.実施例27--パラターゼMを使用する多相酵素膜
リアクター中でのトランス−3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシド酸メチルエステルの分割 実施例27Aの酵素分割は、上記と同じ型の多相/抽出
酵素膜リアクター中で行なった。膜をパラターゼM溶液
(Novo)150mlで活性化した。膜活性化操作は、米国特
許第4,759,704号および1986年10月1日に出願された“M
ethod and Apparatus for Catalyst Containment in M
ultiphase Membrane Reactor Sytem"と題する米国特許
出願第912,595号明細書においてMatsonにより記載され
ている。トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリ
シド酸メチルエステルのラセミ混合物78g(0.375モル)
をトルエン375mlに溶解することにより有機相を調製し
た、次に、この有機溶液を中空繊維装置のシェル側で循
環させた。0.2モルのリン酸ナトリウムおよび0.375モル
の重亜硫酸ナトリウムを含むpH8.0の緩衝液4lを膜装置
のルーメン側で循環させた。
7.5時間後に、有機液体を膜装置から排出した。損失
を減少するため、膜装置を新しいトルエン500mlですす
ぎ、次に二つのトルエン画分を合わせた。続いて、トル
エンを65℃で減圧下に蒸発させた。残留固体にメタノー
ルを添加して、固体濃度を20%(w/w)となした。次
に、この溶液を3時間−20℃に冷却した。沈澱した結晶
を濾過し、乾燥し、そして光学純度に関して分析した。
これらの最終結晶をリアクター生成物と称する。
結晶化からの母液を減圧下で蒸発させてメタノールを
除去した。次に、残留した液体をエステル濃度に関して
分析した。この液体の残部は抑制性アルデヒド生成物で
あると推定される。
実施例27Aと同じであって、同じ酵素を含む膜リアク
ター中で行なわれた第二の酵素分割(実施例27B)は、
最初の分割の終了の16時間後に開始された。7.5時間後
に、この第二反応を停止し、有機相を最初の分割の場合
と同様にして処理した。
実施例27Aおよび27Bと同じであって同じ酵素を含む膜
リアクター中で行なわれた第三の酵素分割(実施例27
C)は、第二の分割の終了の16時間後に開始された。7.5
時間後に、この第三反応を停止し、第一および第二の分
割の場合と同様にして有機相を処理した。全ての3回の
分割からの結果を表13に要約する。
5.4.12.実施例28--トルエン中のバッチ反応、それに続
トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸
エステル(GLOP)の直接結晶化 ここに記載されるバッチ反応は、上記と同様の多相−
抽出酵素膜リアクター中で行なった。また、リアクター
の形状および操作は、生成物結晶化(更に、以下を参
照)からの母液が循環され、こうして本発明の酵素的鏡
像異性体選択的分割法をよりいっそう経済的に魅力ある
ものにするように工夫された。しかしながら、この多相
酵素分割はまた、攪拌、音波処理により、または分散剤
もしくは乳化剤の存在下で誘導される分散条件下で、こ
れらの付加の成分が基質(例えば、ラセミGLOP)の分割
を実質的な方法で妨害しない限り、行ない得ることはも
ち論である。
膜をリパーゼOF 10gで活性化した。上記のように、米
国特許第4,795,704号および1986年10月1日に出願され
た同時係属米国出願第912,595号明細書にMatsonにより
記載された膜活性化操作を使用し得る。トランス−3−
(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチルエステル
(化合物A)のラセミ混合物239.6g(純度97.5%、1.12
モル)をトルエン814.6gに溶解することによた有機相を
調製した。次に、この有機溶液を中空繊維膜装置のシェ
ル側で循環させた。カルボニル付加物生成剤としての重
亜硫酸ナトリウム1.14モルを含む緩衝液(pH8)約12lを
中空繊維のルーメン側で循環させた。
23時間後に反応を停止し、有機液体を膜装置から排出
した。損失を減少するため、膜装置を新しいトルエン50
0mlですすいだ。二つのトルエン画分をHPLCで別々に分
析してそれぞれ中のGLOPの濃度および鏡像異性体過剰を
測定した。(2,3)エステルおよびラセミエステル
の合計量を、以下のようにして測定した。
ラセミエステルを4℃で溶解するのに必要なトルエン
の量は、ラセミエステルの重量をこの温度におけるトル
エンへのエステルの溶解度(トルエン1g当り約0.13gの
ラセミエステル)で割ることにより決定した。その場
合、必要なトルエンの重量は19.07/0.13=146.7gであっ
た。二つの有機画分を合わせ、次に、トルエン+エステ
ルの合計重量が146.7+109.5即ち256.2gに等しくなるま
でトルエンを蒸発させた。次いでエステルおよびトルエ
ンを含む有機濃縮液を、エステルの(2,3)鏡像異
性体を結晶化させるために、4℃に18時間冷却した。次
に沈澱した結晶を濾過して分析する一方、母液を循環用
に保存した。回収した固体の量は91.9gであった。HPLC
分析は、分割エステルが99%の鏡像異性体過剰で少なく
とも99%の純度であることを示した。分割エステルの収
率は38.6%であった。
トルエンおよび緩衝水溶液中のエステルの新しい溶液
を循環させることにより新たな実験を開始した。こうし
て、合計7回の実験を行なった。表14に要約される結果
は、このバッチ法がラセミグリシド酸エステル1kg当り
0.41kgのGLOPを製造することができ、分割GLOPが99%の
化学純度および99%のe.e.を有することを示す。
5.4.13.実施例29--高い光学純度の溶液を与えるベンチ
スケールの分散相酵素的分割 ラセミエステル(31.2g)のトルエン(170ml)溶液
を、Na2SO3(9.44g、0.075モル)およびリパーゼOF 360
(0.4g、Meito Sangyo)を含む水性混合物(pH8に調
節)と合わせた。合わせた混合物を室温で1.5時間激し
く攪拌した。分散液を遠心分離器中で分離し、トルエン
相はキラルHPLC分析により光学的に純粋な(2,3
エステル14gを含むことがわかった。光学的に純粋なGLO
Pを含むこのトルエン溶液は、GLOPおよび少なくとも一
種の他の試薬を伴なう更なる化学変換に適する。図面に
記載したように、これらの反応は、典型的には、求核性
物質の付加に伴なわれる開環反応に関連する。下記の実
施例(項目5.4.14)から得られた溶液は、同様に、後続
の反応に有用である。
しかしながら、また、所望のGLOPの約80%以上の鏡像
異性体過剰を有する富化された溶液は後続の変換に適し
得るが、そのe.e.値がわずかに約50%以上である試料を
結晶化し、単離したのち、その後続の反応に使用するこ
とが最良であることに注目することも重要である。この
ようにして、50%e.e.溶液を常法で結晶化して100%e.
e.を有する(2,3)鏡像異性体が選択的に得られ
た。
5.4.14.実施例30--高度に分割されたGLOPの有機溶液を
与える大規模膜リアクター法 項目5.4.2(実施例19)に概説された操作により、12m
2の表面積を有する膜、リパーゼOF(Meito Sangyo)150
g、ラセミエステル(純度97.5%、10.96モル)2340g、
およびトルエン約10lを使用して酵素的膜分割法を行な
った。水相は当モル量の重亜硫酸ナトリウムを含んでい
た。約15時間の反応期間後に、有機層を分析し、有機層
は99.0%の鏡像異性体過剰を有する分割GLOP 823gを含
むことがわかった。
5.4.15.幾つかの代表的な型の溶媒中のGLOPの安定性 周囲温度に数日間にわたり保たれた芳香族溶媒中の分
割GLOPの溶液は、物質または光学活性の損失に対して安
定であることに注目するべきである。
対照的に室温に数日間保たれたラセミエステルの飽和
メタノール溶液は、経時的にエステル含量の著しい減少
を示した。2日後に、HPLC分析は、最初の量の約9%の
エステルが分解して、おそらく開環化合物になったこと
を明らかにした。この場合、メタノールはベンジル炭素
に結合する。6日目には、エステルの最初の量の約半分
しか残らなかった。
別の実験では、膜リアクター系中で2種類の溶媒、ト
ルエンおよびメチルイソブチルケトンを使用して、異な
る濃度のグリシジルエステルにおいて測定した。これら
の有機溶液を50mMリン酸塩緩衝液(pH8.0)と別々に接
触させて酵素的分割条件を模擬した。有機溶液中に存在
するエステルの量を数時間にわたって監視した。その結
果は、MIBK溶液中のエステルがトルエン中のエステルの
分解速度定数の値の約3倍である速度定数で分解するこ
とを示す。
それ故、グリシジルエステルは求核性溶媒、特にメタ
ノールのような酸性プロトンを有する溶媒中ではあまり
安定でないことが明らかである。MIBK、メチル−t−ブ
チルエーテル、ジエチルエーテル、ブチルエーテル等の
ようなあまり求核性でない官能基を有する他の型の溶媒
は、酵素的反応および/または結晶化段階用の溶媒とし
ていっそう望ましい。
ジクロロメタン、クロロホルム、フレオン、ヘキサ
ン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン等のよう
な比較的に非極性の溶媒も、グリシジルエステルの安定
性および溶解性に関して好適であることがわかった。実
用上の問題として、有機反応溶媒中の酵素基質の最低溶
解度は少なくとも約50g/lであるべきである。より希薄
な溶液が許容し得る場合には、有機溶媒中の基質の溶解
度は殆ど問題にならない。最も好ましい溶媒は非求核性
の芳香族溶媒であることが明らかである。これらの溶媒
の例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベン
ゼン、ジクロロベンゼン、またはこれらの混合物が含ま
れるがこれらに限定されるものではない。トルエンが特
に好ましい。
メタノール中で行なわれた結晶化実験の予測不可能性
(再現不可能性でさえも)の更なる証明として、下記の
表15中の結果が提示される。これらの結果により示され
るように、メタノールからの所望の物質の回収は非常に
良好であり得る。同時に、同じ操作は分割生成物を与え
ない。対照的に、トルエン中で行なった結晶化は、一貫
して優れた結果を与えた。
5.5.溶媒の選択に関する更なる考察 有機相は、エステルおよびエポキシド官能基の両方の
加水分解に対して基質分子にある程度の保護を与えるこ
とが既に示された。このような保護は、ラセミ基質だけ
でなく、3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチ
ルエステルの全ての立体異性体におよぶ。しかしなが
ら、多相反応における有機相としての溶媒の選択はま
た、酵素触媒の反応速度および立体選択性の両方におけ
る活性に影響を与え得る。幾つかのモデル酵素の性能に
おける幾つかの型の溶媒の効果を明らかにするため、追
加の研究を行なった。
5.5.1.酵素活性に及ぼす溶媒の効果 有機相の組成が所定の酵素の活性に影響を与えるかど
うかを決めるために、水混和性有機溶媒、1,4−ジオキ
サンを含む多くの有機溶媒を選択した。pHの変化の効果
もこれらの実験で考慮した。二種の酵素、リパーゼM-AP
(Amano Enzyme Corp.)およびリパーゼOF 360(Meito
Sangyo)を、この研究のために選択した。このデータを
得るための一般的操作を、以下に記載する。
ラセミ3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチ
ルエステル(10.0ミリモル、2.08g)を、選択された有
機溶媒50mlに溶解した。次いで、この溶液を250mlの振
とうフラスコ中の選択されたpH、即ちpH7.0またはpH8.0
の200mMリン酸ナトリウム緩衝液50mlに添加した。次
に、選択された市販の酵素製剤(100mg)、リパーゼM-A
PまたはリパーゼOF 360を添加した。フラスコを閉じ、
周囲温度(20〜25℃)で18時間攪拌した。次に、反応混
合物を分液ロートに注ぎ、有機層を除去し(水と混和性
である1,4−ジオキサンの場合は例外である)、そして
水層をジエチルエーテルで洗浄した。次に、有機層を合
わせ、水で逆洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
有機溶媒を減圧下で蒸発させた。次に、回収したエステ
ルを計量し、更に精製しないで光学純度(鏡像異性体過
剰、即ちe.e.)に関して調べた。酵素的反応から回収さ
れたエステル物質の光学活性をc=1.0でエタノール中
で測定し、このために、[α]D=−196.2°の値を(2
、3)異性体の100%のe.e.として使用した。鏡像
異性体選択性値Eappは、基質の非酵素非特異的分解につ
いて未修正の計算E値である。50を越えると計算された
値は、“大”として任意に表わされる。
種々の酵素/pH/有機溶媒の組合せに適用されるこの操
作を使用して得られた結果を、下記の表に示す。
5.5.2.基質エステルの非酵素的分解の測定 これらの実験の後に、別の因子を考察した。あらゆる
化合物の界面活性は表面活性剤、例えばタンパク質によ
り影響されるので、酵素の存在は基質化合物の非酵素的
非特異的分解に影響を与えると予想し得る。この命題を
試験するため、反応混合物中の加水分解酵素に代えてウ
シ血清アルブミン(BSA)を使用する対照実験を行なっ
た。便宜のため、塩素化炭素水素およびp−キシレンを
省いた。このデータを得るための一般的方法を、以下に
記載する。
ラセミ3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチ
ルエステル(10.0ミリモル、2.08g)を、選択された有
機溶媒50mlに溶解し、250ml振とうフラスコ中で選択さ
れたpH(7.0、8.0または8.5)の200mMリン酸ナトリウム
緩衝液50mlに添加した。次に、ウシ血清アルブミン(BS
A、100mg)を添加した。フラスコを閉じ、周囲温度(20
〜25℃)で18時間攪拌した。次に、反応混合物を分液ロ
ートに注ぎ、有機層を除去し(水と混和性である1,4−
ジオキサンの場合は例外である)、水層をジエチルエー
テルで洗浄した。次に、有機層を合わせ、水で逆洗し、
無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機溶媒を減
圧下で除去し、回収したエステルを計量して非酵素的分
解の程度を測定した。
種々のBSA/pH/有機溶媒の組合せに適用されたこれら
の実験の結果を表20に示す。
このデータを使用して、表16〜19に示されたデータを
修正して基質の酵素触媒加水分解の速度および特異性の
みを反映させることが可能である。この修正データを下
記の表に示す。
先のデータから、三つの有機溶媒、MIBK、ベンゼンお
よびトルエンは、リパーゼM-APおよびリパーゼOF 360の
両方で観察された最高の鏡像異性体選択性を与える物理
化学的特性を有する魅力的な水相/有機溶媒界面を与え
ることがわかる。そのデータは、MIBKおよびトルエンが
基質の非酵素触媒分解に対してほぼ同じ程度の保護を与
えることを示す。
5.6.カルボニル付加物生成剤を用いる抽出による粗反応
生成物の酵素的分割後浄化 ラセミ基質の有効な酵素的分割を行なう好ましい方法
は、カルボニル付加物生成剤が水相中に既に存在する多
相系を伴なうが、事状(例えば、付加物生成剤に対する
酵素の極度の感受性)によってはこれらの好ましい条件
下で分割を行なうことが不可能であることがある。
驚くべきことに、化合物A(GLOP)の鏡像異性体選択
的エステル加水分解の場合には、加水分解副生物物、p
−(メトキシ)フェニルアセトアルデヒドは粗有機溶液
をカルボニル付加物生成剤の水溶液で抽出することによ
り簡単に首尾良く除去し得ることがわかった。このよう
“洗浄”工程が未処理の初期の粗有機層に対する洗浄さ
れた溶液の旋光により測定されるより高い光学活性を有
する分割生成物(これは有機層中に残存する)を生じる
という発見は、更に驚くべきことである。
更に、カルボニル付加物生成剤の添加は通常可逆的で
あるので、カルボニル副生物は洗浄水溶液から回収して
分離目的に利用し得る。重亜硫酸付加物およびシッフ塩
基は、例えば、酸性条件下で容易に分解でき、こうして
有機溶媒可溶性カルボニル化合物を簡単な有機溶媒抽出
工程により水層から回収し得る。
本発明の上記の特色は、以下の実施例により良く説明
される。
5.6.1.実施例34--水性重亜硫酸アニオンによる抽出によ
る粗有機溶液の精製 10ミリモルのラセミ化合物Aを含むトルエン(50ml)
を、リパーゼM-APとして知られるAmanoからの市販酵素
製剤100mgを含むpH8.0の0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液50
mlと共に周囲温度で18時間振とうした。次に、反応混合
物を水で400mlの容量まで希釈し、ジエチルエーテル400
mlで2回抽出した。次に、合わせた有機相を水(2×40
0ml)で逆洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させ
ると、粗生成物1.5g(7.2ミリモル)が残った。c=1.0
でエタノール中のこの物質の旋光は−68.0°であり、3
4.7%の鏡像異性体過剰を示した。旋光に関する−196.2
°の値は、エタノール中で測定された(2,3)異性
体に等しい。次に、粗生成物をジエチルエーテル300ml
に再溶解し、有機溶液を10%重亜硫酸ナトリウム溶液10
0mlで2回洗浄した。次に、有機相を水で逆洗し、硫酸
マグネシウムで乾燥し、蒸発させると、洗浄生成物1.4g
(6.7ミリモル)が残った。c=1.0でエタノール中のこ
の物質の旋光は−117.5°であり、所望の化合物Aの59.
9%の鏡像異性体過剰をした。
しかしながら、10%重亜硫酸塩溶液はまたその他の潜
在的な求電子試薬の不在下で化合物Aのエポキシド官能
基を攻撃し、したがって反応処理中の化合物Aの損失を
生じることがわかった。この潜在的な問題は、純粋なラ
セミ化合物2.0gをジエチルエーテル(200ml)に溶解
し、10%重亜硫酸塩水溶液250mlで1回抽出する実験に
より説明された。次に、有機層を常法で処理してラセミ
化合物A 1.8gを得た。重亜硫酸塩の不在下の水洗は、出
発ラセミ体のほぼ定量的な回収を与える。
多数の他の試薬を有効なカルボニル付加物生成剤とし
て利用し得ることにも注目すべきである。これらの化合
物は水混和性であってよく、そしてイオン化できるかま
たは電荷を支持できることが好ましい。重亜硫酸塩によ
り生成される付加物の他に、シッフ塩基、オキシム、ヒ
ドラゾン、カルバゾン、アセタール、チオアセタール、
イミダゾリン、ヒドロキシルイミン、ハロヒドリン、シ
アノヒドリン、アミノニトリル等の他の付加物を生成さ
せてもよく、これらは水層に対して更に有利な溶媒相分
配係数を有し得る。このような付加物は、電荷を支持
し、したがって水層中のその溶解性を増大するように設
計することが最も有利である。このような付加物生成剤
の代表例には、数種をあげるとグリニヤール試薬、N−
(カルボキシメチル)ピリジニウムクロリドヒドラジ
ド、(カルボキシメチル)トリメチルアンモニウムクロ
リドヒドラジド、N,N−ジメチルヒドラジン、セミカル
バジド、ヒドロキシルアミンおよびアミノ酸等が含まれ
るが、これらに限定されるものではない。
5.7.オキシラン環の反応性 グリシジルエステル基質中のエポキシド環の不安定性
は、分割された高光学純度の生成物の良好な収率を確保
するための多段階法の各段階に及ぶことが明らかであ
る。この方法の各段階において、本発明では、熟慮され
た開環反応、好ましくは立体化学的に予測できる様式で
進行する開環反応が意図される時点まで、エポキシド環
が存在される条件が見出された。こうして、多相反応条
件から始めて、好適な有機反応溶媒の同定、結晶化条
件、粗混合物の精製、および後続のホモキラル中間体の
利用という本発明の目的の全てを、本発明は越えた。加
えて、本発明は、経済性および便宜の両方で前例のない
光学活性のグリシジルエステル中間体の大規模な製造方
法を提供する。
先に検討したように、これらの中間体は、再結晶物質
として、あるいはきわめて好都合には、分割法から得ら
れる溶液中で使用することができる。これらのその後の
変換の化学は、この論議において強調されていないが、
それにもかかわらず非常に重要である。関心のあるキラ
ル中間体を伴なうその後の化学変換の更に詳しい説明に
関しては、例えば下記の既存の文献が参照される。Inou
eらに付与された米国特許第4,420,628号明細書(特に、
オキシランのルイス酸触媒開環に関する説明);Hashiya
maら、J.Chem.Soc.Perkin Trans.11984、1725および同
文献、1985、421(GLOPとチオフェノールの反応におけ
る立体化学的考察およびレギオ化学的考察)。これらの
文献のすべての開示は参考として本明細書に含まれる。
本発明は、上記の実験により、または使用した反応関
与体、溶媒、溶液、膜もしくは触媒により、その範囲を
限定されない。何となれば、それぞれのものは本発明の
説明としてのみ意図されるからである。加えて、請求の
範囲に記載の方法に利用され、そして本明細書に記載さ
れた方法の機能上の均等物は本発明の範囲内にある。本
明細書に示され、記載された変更の他に、本発明の種々
の変更は、以上の説明および明細書から当業者に明らか
になる。このような変更は請求の範囲の範囲内に入る。
フロントページの続き (72)発明者 ゼップ,チャールズ,エム. アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01503,ベルリン,ハイランド ストリ ート 19 (72)発明者 ブランド,スティーヴン アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01752,マールボロー,ブロードメドウ ストリート 116シー (72)発明者 ロッシ,リチャード,エフ. アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 02766,ノートン,リザヴォワール ス トリート 272

Claims (58)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有する光学活性
    トランス−グリシド酸エステル化合物を含有する有機溶
    液を得るに当たり、 (a)水非混和性有機溶媒中に溶解した、第1および第
    2の鏡像異性体(但し、第1の鏡像異性体は(2S,3R)
    鏡像異性体である)の混合物として存在する式Iの化合
    物のトランス−グリシド酸エステルを含有する有機溶液
    を調製し、そして、 (b)前記トランス−グリシド酸エステルの有機溶液
    を、前記第2の鏡像異性体が富化された有機溶液を生成
    させるに有効な条件下に、前記第1の鏡像異性体の鏡像
    異性体選択的加水分解を触媒し得る、エステラーゼおよ
    びパンクレアチンからなる群より選択される哺乳動物由
    来の加水分解酵素および水を含有する水性混合物と接触
    させる、 ことを含んでなる方法。
  2. 【請求項2】前記富化された有機溶液から、前記第2の
    鏡像異性体を単離することをさらに含んでなる、請求項
    1記載の方法。
  3. 【請求項3】前記第2の鏡像異性体が、前記有機溶液中
    に約50%またはそれ以上の鏡像異性体過剰率で存在す
    る、請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】前記水非混和性有機溶媒が、メチルイソブ
    チルケトン、メチルt−ブチルエーテル、ジエチルエー
    テル、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ヘプ
    タン、イソオクタン、シクロヘキサン、およびそれらの
    混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方
    法。
  5. 【請求項5】前記酵素が精製酵素、部分精製酵素、細胞
    抽出物、細胞溶解物、および細胞全体からなる群から選
    択された形態で提供される加水分解酵素である、請求項
    1記載の方法。
  6. 【請求項6】R1が4−メトキシフェニル基である、請求
    項1記載の方法。
  7. 【請求項7】R2がメチル基である、請求項1記載の方
    法。
  8. 【請求項8】前記トランス−グリシド酸エステルがトラ
    ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチル
    エステルである、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】前記第1の鏡像異性体が(2S、3R)−トラ
    ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチル
    エステルであり、前記第2の鏡像異性体が(2R、3S)−
    トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メ
    チルエステルである、請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】前記有機溶液および前記水性混合物を、
    工程(b)において該有機溶液または該水性混合物の一
    方の他方中における分散物を形成させることにより接触
    させる、請求項1記載の方法。
  11. 【請求項11】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有する光学活性
    トランス−3−(アリール)グリシド酸エステル化合物
    を含有する有機溶液を得るに当たり、 (a)ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキ
    サン、ジクロロベンゼンおよびそれらの混合物からなる
    群より選択される溶媒中に溶解した、第1および第2の
    鏡像異性体(但し、第1の鏡像異性体は(2S,3R)鏡像
    異性体である)の混合物として存在する式Iのトランス
    −3−(アリール)グリシド酸エステル化合物を含有す
    る有機溶液を調製し、そして (b)前記化合物の有機溶液を、前記第2の鏡像異性体
    が富化された有機溶液を生成させるに有効な条件下に、
    前記第1の鏡像異性体の鏡像異性体選択的加水分解を触
    媒し得る酵素および水を含有する水性混合物と接触させ
    る、 ことを含んでなる方法。
  12. 【請求項12】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、そして
    OR2はアルコールから誘導された基である)を有するト
    ランス−グリシド酸エステル化合物のラセミ混合物を分
    割するにあたり、 (a)第1および第2の立体異性体(但し、第1の立体
    異性体は(2S,3R)鏡像異性体である)を含有する式I
    のラセミ化合物を水非混和性有機溶媒中に溶解させるこ
    とにより、該ラセミ化合物の有機溶液を調製し、そして (b)前記第1および第2の立体異性体の有機溶液を、 水、酵素、およびカルボニル付加物形成剤を含有する水
    性混合物と接触させ、ここで前記酵素は該第1の立体異
    性体の加水分解を立体選択的に触媒して、式R2OHのアル
    コール化合物および下記式III: R1-CH2-CHO (III) を有するアルデヒド副生物を形成させるものであり、こ
    こで前記式IIIのアルデヒドは前記カルボニル付加物形
    成剤と反応して水溶性付加物を形成するものである、 ことを含んでなり、それにより前記第1の立体異性体に
    対して前記第2の立体異性体が富化された有機溶液を得
    るものである方法。
  13. 【請求項13】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、そして
    OR2はアルコールから誘導された基である)を有するト
    ランス−グリシド酸エステル化合物のラセミ混合物を分
    割するにあたり、 (a)第1および第2の立体異性体(但し、第1の立体
    異性体は(2S,3R)鏡像異性体である)を含有する式I
    の化合物を水非混和性有機溶媒中に溶解させることによ
    り、該式Iの化合物の有機溶液を調製し、そして (b)前記第1および第2の立体異性体の有機溶液を、
    水、酵素および重亜硫酸アニオンを含有する水性混合物
    と接触させ、ここで前記酵素は該第1の立体異性体の加
    水分解を立体選択的に触媒して、式R2OHのアルコール化
    合物および下記式III R1-CH2-CHO (III) のアルデヒド副生物を形成させるものであり、また前記
    式IIIのアルデヒドは前記重亜硫酸アニオンと反応して
    下記式IV R1-CH2-CHOH-SO- 3 (IV) の水溶性付加物を形成するものである、 ことを含んでなり、それにより前記第1の立体異性体に
    対して前記第2の立体異性体が富化された有機溶液を得
    るものである方法。
  14. 【請求項14】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルからなる群から
    選択され、そしてOR2はアルコールから誘導された基で
    ある)を有するトランス−グリシド酸エステル化合物の
    ラセミ混合物を分割するにあたり、 (a)水非混和性有機溶媒と、第1および第2の立体異
    性体(但し、第1の立体異性体は(2S,3R)鏡像異性体
    である)を含有する式Iのラセミ化合物を含有する有機
    溶液を膜の第1面に供給し、そして、 (b)膜の第2面には、水、酵素、および重亜硫酸アニ
    オンを含有する水性混合物を供給し、ここで前記酵素は
    該第1の立体異性体の加水分解を立体選択的に触媒して
    式R2OHのアルコール化合物と下記式III R1-CH2-CHO (III) のアルデヒド副生物を形成するものであり、また前記式
    IIIのアルデヒドは前記重亜硫酸アニオンと反応して下
    記式IV R1-CH2-CHOH-SO- 3 (IV) の水溶性付加物を形成するものである、 ことを含んでなり、それにより前記第1の立体異性体に
    対して前記第2の立体異性体が富化された有機溶液を得
    るものである方法。
  15. 【請求項15】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルからなる群から
    選択され、そしてOR2はアルコールから誘導された基で
    ある)を有するトランス−グリシド酸エステル化合物の
    ラセミ混合物を分割するにあたり、 (a)水非混和性有機溶媒および第1および第2の立体
    異性体(但し、第1の立体異性体は(2S,3R)鏡像異性
    体である)を含有する式Iのラセミ化合物を含有する有
    機溶液を、酵素活性化膜の一方の側面に供給し、ここで
    該膜を活性化する該酵素は該第1の立体異性体の加水分
    解を触媒して式R2OHのアルコール化合物および下記式II
    I R1-CH2-CHO (III) のアルデヒド副生物を形成するものであり、そして (b)同時に、重亜硫酸アニオンを含有する、前記有機
    溶液と実質的に非混和性である水溶液を前記酵素活性化
    膜の反対側に供給し、ここで該式IIIのアルデヒドは該
    重亜硫酸アニオンと反応して下記式IV R1-CH2-CHOH-SO- 3 (IV) の水溶性付加物を形成するものである、 ことを含んでなり、それにより該有機溶液の該ラセミ化
    合物が少なくとも部分的に分割されて、前記式Iの第2
    の立体異性体が主に該有機溶液中に残存するものである
    方法。
  16. 【請求項16】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、そして
    OR2はアルコールから誘導された基である)を有するト
    ランス−グリシド酸エステル化合物の光学純度を高める
    にあたり、 (a)第1および第2の鏡像異性体(但し、第1の鏡像
    異性体は(2S,3R)鏡像異性体である)の混合物として
    存在する前記式Iの化合物のトランス−グリシド酸エス
    テルを水非混和性有機溶媒中に溶解させることにより、
    該トランス−グリシド酸エステルの有機溶液を調製し、
    そして (b)前記トランス−グリシド酸エステルの有機溶液
    を、水、酵素、およびカルボニル付加物形成剤を含有す
    る水性混合物と接触させ、ここで前記酵素は該第1の鏡
    像異性体の加水分解を鏡像異性体選択的に触媒して式R2
    OHのアルコール化合物および下記式III R1-CH2-CHO (III) のアルデヒド副生物を形成するものであり、また前記式
    IIIのアルデヒドは前記カルボニル付加物形成剤と反応
    して水溶性付加物を形成するものである、 ことを含んでなり、それにより、より高い割合の前記第
    2の鏡像異性体および高まった光学純度を有する前記ト
    ランス−グリシド酸エステルの有機溶液を得るものであ
    る方法。
  17. 【請求項17】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルからなる群から
    選択され、そしてOR2はアルコールから誘導された基で
    ある)を有するトランス−グリシド酸エステル化合物の
    光学純度を高めるにあたり、 (a)水非混和性有機溶媒および式Iのトランス−グリ
    シド酸エステル化合物を含有する有機溶液を調製し、該
    トランス−グリシド酸エステルは膜の第1の面に第1お
    よび第2の鏡像異性体(但し、第1の鏡像異性体は(2
    S,3R)鏡異性体である)の混合物として存在するもので
    あり、そして (b)膜の第2の面には、水、酵素、および重亜硫酸ア
    ニオンを含有する水性混合物を供給し、ここで前記酵素
    は該第1の鏡像異性体の加水分解を立体選択的に触媒し
    て式R2OHのアルコール化合物および下記式III R1-CH2-CHO (III) のアルデヒド副生物を形成するものであり、また、前記
    式IIIのアルデヒドは前記重亜硫酸アニオンと反応して
    下記式IV R1-CH2-CHOH-SO- 3 (IV) の水溶性付加物を形成するものである、 ことを含んでなり、それにより前記有機溶液の前記化合
    物が少なくとも部分的に分割されて、前記式Iの第2の
    立体異性体が主に前記有機溶液中に残存するものである
    方法。
  18. 【請求項18】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルからなる群から
    選択され、そしてOR2はアルコールから誘導された基で
    ある)を有するトランス−グリシド酸エステル化合物の
    光学純度を高めるにあたり、 (a)水非混和性有機溶媒および式Iのトランス−グリ
    シド酸エステル化合物を含有する有機溶液を調製し、該
    トランス−グリシド酸エステルは酵素活性化膜の一方の
    面に第1および第2の鏡像異性体(但し、第1の鏡像異
    性体は(2S,3R)鏡像異性体である)の混合物として存
    在するものであり、ここで該膜を活性化する該酵素は該
    第1の鏡像異性体の加水分解を触媒して式R2OHのアルコ
    ール化合物および下記式III R1-CH2-CHO (III) のアルデヒド副生物を形成するものであり、そして (b)同時に、重亜硫酸アニオンを含有し、前記有機溶
    液と実質的に非混和性である水溶液を、前記酵素活性化
    膜の反対側に供給し、ここで該式IIIのアルデヒドは該
    重亜硫酸アニオンと反応して下記式IV R1-CH2-CHOH-SO- 3 (IV) の水溶性付加物を形成するものである、 ことを含んでなり、それにより該有機溶液の該化合物が
    少なくとも部分的に分割されて、前記式Iの第2の鏡像
    異性体が主に該有機溶液中に残存するものである方法。
  19. 【請求項19】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有する光学活性
    トランス−グリシド酸エステル化合物を含有する有機溶
    液を得るに当たり、 (a)水非混和性有機溶媒中に溶解した、第1および第
    2の鏡像異性体(但し、第1の鏡像異性体は(2S,3R)
    鏡像異性体である)の混合物として存在する式Iの化合
    物のトランス−グリシド酸エステルを含有する有機溶液
    を調製し、そして、 (b)前記トランス−グリシド酸エステルの有機溶液
    を、前記第2の鏡像異性体が富化された有機溶液を生成
    させるに有効な条件下に、前記第1の鏡像異性体の鏡像
    異性体選択的加水分解を触媒し得る酵素および水を含有
    する水性混合物と接触させ、ここで前記有機溶液および
    前記水性混合物は工程(b)において膜の相反する側に
    存在させて接触させる、 ことを含んでなる方法。
  20. 【請求項20】前記酵素の少なくとも一部が前記膜内に
    固定化される、請求項19記載の方法。
  21. 【請求項21】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルからなる群から
    選択され、そしてOR2はアルコールから誘導された基で
    ある)を有するトランス−グリシド酸エステル化合物の
    ラセミ混合物を分割するにあたり、 水非混和性有機溶媒および第1および第2の立体異性体
    (但し、第1の立体異性体は(2S,3R)鏡像異性体であ
    る)を含有する式Iの化合物を含有する有機溶液を、酵
    素活性化膜の一方の面に供給し、そして前記酵素活性化
    膜の反対側に水を供給し、ここで該膜を活性化する該酵
    素は該第1の立体異性体の加水分解を触媒するものであ
    る、 ことを含んでなり、それにより該有機溶液の該化合物が
    少なくとも部分的に分割されて、前記式Iの第2の立体
    異性体が主に該有機溶液中に残存するものである方法。
  22. 【請求項22】R2がメチル基である、請求項11、12、1
    3、14、15、16、17、18、19または21記載の方法。
  23. 【請求項23】前記トランス−グリシド酸エステルがト
    ランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチ
    ルエステルである、請求項11、12、13、14、15、16、1
    7、18、19または21記載の方法。
  24. 【請求項24】前記第1の鏡像異性体が(2S、3R)−ト
    ランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸メチ
    ルエステルであり、前記第2の鏡像異性体が(2R、3S)
    −トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシド酸
    メチルエステルである、請求項23記載の方法。
  25. 【請求項25】前記カルボニル付加物形成剤が水混和性
    である、請求項12記載の方法。
  26. 【請求項26】工程(b)の前記酵素が粒状の固相支持
    体に固定化される、請求項11、12、13、14、16または17
    記載の方法。
  27. 【請求項27】R1が4−メトキシフェニル基である、請
    求項11、12、13、14、15、16、17、18、19または21記載
    の方法。
  28. 【請求項28】R2が1から8個の炭素原子を含有する直
    鎖アルキル、3から8個の炭素原子を含有する分枝アル
    キル、置換アルキル、アリール、置換アリール、および
    アルコキシアルキルからなる群から選択される、請求項
    11、12、13、14、15、16、17、18、19または21記載の方
    法。
  29. 【請求項29】R2がメチル、エチル、イソプロピル、お
    よびイソブチルからなる群から選択されるアルキルであ
    る、請求項28記載の方法。
  30. 【請求項30】R2がメトキシエチルおよびエトキシエチ
    ルからなる群から選択されるアルコキシアルキルであ
    る、請求項28記載の方法。
  31. 【請求項31】R2がトリフルオロエチル、トリクロロエ
    チル、クロロエチル、ベンジル、フェニルエチル、およ
    びナフチルメチルからなる群から選択される置換アルキ
    ルである、請求項28記載の方法。
  32. 【請求項32】R2がフェニルおよびナフチルからなる群
    から選択されるアリールである、請求項28記載の方法。
  33. 【請求項33】前記酵素が加水分解酵素である、請求項
    11、12、13、14、15、16、17、18、19または21記載の方
    法。
  34. 【請求項34】前記加水分解酵素がプロテアーゼ、エス
    テラーゼ、およびリパーゼからなる群から選択される、
    請求項33記載の方法。
  35. 【請求項35】前記加水分解酵素が微生物由来である、
    請求項33記載の方法。
  36. 【請求項36】前記水非混和性有機溶媒がトルエン、キ
    シレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、t−ブチ
    ルメチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチル
    イソブチルケトン、およびエチルアセテートからなる群
    から選択される、請求項12、13、14、15、16、17、18、
    19または21記載の方法。
  37. 【請求項37】膜が親水性膜である、請求項14、15、1
    7、18、19または21記載の方法。
  38. 【請求項38】膜がミクロ多孔質膜である、請求項14、
    15、17、18、19または21記載の方法。
  39. 【請求項39】前記膜を活性化する酵素が該膜の内部に
    位置している、請求項15、18または21記載の方法。
  40. 【請求項40】前記加水分解酵素がカンジダ属由来のリ
    パーゼである、請求項35記載の方法。
  41. 【請求項41】酵素触媒による立体選択的加水分解工程
    後に前記有機溶液から前記水溶性付加物を含有する前記
    水性混合物を分離することをさらに含んでなる、請求項
    12、13、14、または15記載の方法。
  42. 【請求項42】酵素触媒による鏡像異性体選択的加水分
    解工程後に前記有機溶液から前記水溶性付加物を含有す
    る前記水性混合物を分離することをさらに含んでなる、
    請求項16、17または18記載の方法。
  43. 【請求項43】前記カルボニル付加物形成剤が重亜硫酸
    塩、ジラール試薬、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンお
    よびアミノ酸からなる群から選択される、請求項12また
    は16記載の方法。
  44. 【請求項44】前記カルボニル付加物形成剤がN−(カ
    ルボキシメチル)−ピリジニウムクロリドヒドラジド、
    N,N−ジメチルヒドラジン、セミカルバジド、およびヒ
    ドロキシルアミンからなる群から選択される、請求項12
    または16記載の方法。
  45. 【請求項45】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有する光学活性
    トランス−グリシド酸エステルからジルチアゼムを製造
    するに当たり、 (a)水非混和性有機溶媒および第1および第2の鏡像
    異性体(但し、第1の鏡像異性体は(2S,3R)鏡像異性
    体である)の混合物として存在する前記トランス−グリ
    シド酸エステルを含有する有機溶液を調製し、 (b)前記トランス−グリシド酸エステルの有機溶液
    を、前記光学活性トランス−グリシド酸エステルの有機
    溶液を生成させるに有効な条件下に、鏡像異性体選択的
    加水分解の副生物である式III R1-CH2-CHO (III) のアルデヒドと付加物を形成し得るカルボニル付加物形
    成剤、前記トランス−グリシド酸エステルの鏡像異性体
    選択的加水分解を触媒し得る適当な加水分解酵素および
    水を含有する水性混合物と接触させ、そして (c)前記光学活性トランス−グリシド酸エステルを更
    に修飾して前記ジルチアゼムを得る、 ことを含んでなる方法。
  46. 【請求項46】存在し得る非エステルカルボニル含有副
    生物を回収することをさらに含んでなる、請求項11また
    は45記載の方法。
  47. 【請求項47】前記式IIIのアルデヒドがフェニルアセ
    トアルデヒドまたは置換フェニルアセトアルデヒドであ
    る、請求項13、16、17または18記載の方法。
  48. 【請求項48】前記式IIIのアルデヒドが4−メトキシ
    フェニルアセトアルデヒドである、請求項47記載の方
    法。
  49. 【請求項49】前記非エステルカルボニル含有副生物が
    フェニルアセトアルデヒドまたは置換フェニルアセトア
    ルデヒドである、請求項46記載の方法。
  50. 【請求項50】前記非エステルカルボニル含有副生物が
    4−メトキシフェニルアセトアルデヒドである、請求項
    49記載の方法。
  51. 【請求項51】前記4−メトキシフェニルアセトアルデ
    ヒドを4−メトキシフェニル酢酸に変換することをさら
    に含んでなる、請求項48または50記載の方法。
  52. 【請求項52】式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有する光学活性
    トランス−グリシド酸エステル化合物を含有する有機溶
    液を得るに当たり、 (a)水非混和性有機溶媒中に溶解した、第1および第
    2の鏡像異性体(但し、第1の鏡像異性体は(2S,3R)
    鏡像異性体である)の混合物として存在する式Iのトラ
    ンス−グリシド酸エステル化合物を含有する有機溶液を
    調製し、 (b)前記トランス−グリシド酸エステルの有機溶液
    を、前記第2の鏡像異性体が富化された有機溶液を生成
    させるに有効な条件下に、前記第1の鏡像異性体の鏡像
    異性体選択的加水分解を触媒し得る酵素および水を含有
    する水性混合物と接触させ、そして (c)前記非エステルカルボニル含有副生物を回収す
    る、 ことを含んでなる方法。
  53. 【請求項53】(a)式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有し、等しくな
    いモル量の第1および第2の鏡像異性体(但し、第1の
    鏡像異性体は(2S,3R)鏡像異性体である)からなる光
    学活性トランス−グリシド酸エステル化合物;(b)ヘ
    キサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ジ
    クロロベンゼンおよびそれらの混合物からなる群より選
    択される溶媒;および (c)前記第2の鏡像異性体よりも、前記第1の鏡像異
    性体の立体選択的加水分解を触媒し得る加水分解酵素; を含有する化学組成物。
  54. 【請求項54】(a)式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有し、等しくな
    いモル量の第1および第2の鏡像異性体(但し、第1の
    鏡像異性体は(2S,3R)鏡像異性体である)からなる光
    学活性トランス−グリシド酸エステル化合物;(b)前
    記第2の鏡像異性体よりも、前記第1の鏡像異性体の立
    体選択的加水分解を触媒し得る加水分解酵素;および (c)カルボニル付加物形成剤; を含有する化学組成物。
  55. 【請求項55】(a)式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有し、等しくな
    いモル量の第1および第2の鏡像異性体(但し、第1の
    鏡像異性体は、(2S,3R)鏡像異性体である)からなる
    光学活性トランス−グリシド酸エステル化合物;(b)
    前記第2の鏡像異性体よりも、前記第1の鏡像異性体の
    立体選択的加水分解を触媒し得る加水分解酵素;および (c)カルボニル付加物形成剤および非エステルカルボ
    ニル含有副生物から形成された付加物; を含有する化学組成物。
  56. 【請求項56】(a)式I (式中R1はフェニルまたは置換フェニルであり、OR2
    アルコールから誘導された基である)を有し、等しくな
    いモル量の第1および第2の鏡像異性体(但し、第1の
    鏡像異性体は(2S,3R)鏡像異性体である)からなる光
    学活性トランス−グリシド酸エステル化合物;(b)水
    非混和性有機溶媒; (c)前記第2の鏡像異性体よりも優先的に、前記第1
    の鏡像異性体の立体選択的加水分解を触媒し得る加水分
    解酵素;および (d)前記酵素が実質的に固定されているスキン層のあ
    る異方性膜; を含有する化学組成物。
  57. 【請求項57】前記カルボニル付加物形成剤が重亜硫酸
    アニオンを含む、請求項54記載の化学組成物。
  58. 【請求項58】前記非エステルカルボニル含有副生物が
    式III R1-CH2-CHO (III) のアルデヒドを含む、請求項55記載の化学組成物。
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