JP2692002B2 - 車両の動力伝達系路切換機構の制御装置 - Google Patents

車両の動力伝達系路切換機構の制御装置

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、例えば4輪駆動モードと2輪駆動モードの
切換えが可能とされた4輪駆動車等の車両、特に駆動モ
ードの切換操作をアクチュエータによって行うようにし
た車両における動力伝達系路切換機構の制御装置に関す
る。
(従来の技術) エンジン出力により前輪及び後輪を駆動するようにし
た4輪駆動車においては、例えば実公昭63−28646号公
報に記載されているように、運転者の選択により、前輪
及び後輪を駆動する4輪駆動モードと、前輪または後輪
のいずれか一方のみを駆動する2輪駆動モードとの切換
えを可能とすると共に、その切換操作性の向上のため、
該操作をアクチュエータにより行うようにすることがあ
る。この場合、前輪または後輪のいずれか一方の車輪へ
の動力伝達系路上に、被操作部材を移動させて駆動側部
材と従動側部材とを分離しもしくは接続することにより
該系路を断接する切換機構を設けると共に、正逆両方向
に回転可能とされたモータ等のアクチュエータにより、
上記被操作部材を駆動側部材と従動側部材とが接続され
る4輪駆動側、もしくは両部材が分離される2輪駆動側
に移動させるように構成するのが通例である。
そして、このようにアクチュエータにより切換機構を
操作するものにおいては、該アクチュエータを過負荷か
ら保護するため、或は該アクチュエータの操作力を一定
値に制限して良好な操作性を得るため、いずれかの方向
に回転している状態でアクチュエータに設定値以上の負
荷が作用したときに、該アクチュエータのその方向への
回転を停止させると共に、逆方向への回転を許容するこ
とにより、上記のような設定値以上の負荷を一旦解消さ
せる回転方向設定手段を設けることが考えられている。
(発明が解決しようとする課題) ところで、上記のように切換機構を操作するアクチュ
エータの回転方向設定手段を設けた場合、エンジンの始
動時に次のような問題の発生が考えられる。
つまり、切換機構の操作途中でエンジンを停止した場
合に、アクチュエータが設定値以上の負荷が作用してい
る状態で停止してしまうことが起こりうるが、この場
合、次のエンジン始動時にその負荷を解消すべくアクチ
ュエータを回転させようとしたときに、前回いずれの方
向に回転して負荷が設定値を超えたかが不明であるか
ら、アクチュエータを負荷が解消される方向と反対側の
方向に回転させて、負荷を一層増大させる場合があり、
この場合、アクチュエータを過負荷から保護できないこ
とになる。
本発明は、例えば2輪駆動モードと4輪駆動モードと
の切換えが可能とされた4輪駆動車等の車両における上
記のような問題に対処するもので、エンジン始動時にお
けるアクチュエータの回転方向の誤った設定を回避し
て、該アクチュエータを過負荷から確実に保護しうるよ
うにすることを課題とする。
(課題を解決するための手段) 上記課題を解決するため、本発明は次のように構成し
たことを特徴とする。
すなわち、本発明に係る車両の動力伝達系路切換機構
の制御装置は、エンジンから車輪に至る動力伝達系路を
切換えて複数の駆動モードを得る切換機構と、正逆両方
向に回転可能とされて選択された駆動モードとなるよう
に上記切換機構を操作するアクチュエータと、該アクチ
ュエータの負荷が設定値以上となったときに、その時点
での方向へのアクチュエータの回転を停止させると共に
反対方向への回転を許容する回転方向設定手段とが設け
られたものにおいて、エンジン始動時、アクチュエータ
の負荷が上記設定値以上となっている場合に、該負荷が
設定値以下に低下するまで上記回転方向設定手段による
回転の許容動作を禁止する回転方向設定禁止手段を設け
たことを特徴とする。
(作用) 上記の構成によれば、通常の運転中における駆動モー
ドの切換操作時においては、アクチュエータに設定値以
上の負荷が作用したときに該アクチュエータのその時点
での方向の回転が停止されて、この負荷が解消される方
向に回転されるることにより、該アクチュエータが過負
荷から保護され、或は該アクチュエータによる操作力が
一定値で制限されて良好な操作性が得られることにな
る。これに対して、切換機構の操作途中でエンジンが停
止され、次のエンジン始動時にアクチュエータに上記設
定値以上の負荷が作用している場合は、その負荷が設定
値以下に低下するまでアクチュエータの回転方向の設定
動作が禁止されるので、該アクチュエータが負荷の増大
方向に誤って回転されることが防止される。なお、エン
ジン始動時にアクチュエータに作用している設定値以上
の負荷は、エンジンの始動等にともなう当該切換機構或
は動力伝達系路における僅かな状態の変化により解消さ
れ、その後通常の切換制御により、駆動モードが選択さ
れたモードと一致していない場合は該モードと一致する
ようにアクチュエータが作動する。
(実 施 例) 以下、本発明の実施例について説明する。
まず、第1図により本実施例に係る4輪駆動車の概略
の構成とその制御システムを説明すると、この4輪駆動
車には、変速機(図示せず)を介してエンジン出力が入
力されるトランスファ装置10が備えられ、該装置10に前
方へ突出する第1出力軸11と、後方へ突出する第2出力
軸12とが設けられている。そして、第1出力軸11は、プ
ロペラシャフト13、前輪用差動装置14及び左右の前車軸
15,16を介して前輪に至り、また、図示しないが、第2
出力軸12もプロペラシャフト、後輪用差動装置及び左右
の後車軸を介して後輪に至っている。
上記トランスファ装置10は、後述するように、主たる
構成要素として、副変速機20と、センタデフ30と、切換
装置40とを有する(第2,3図参照)。そして、このトラ
ンスファ装置10は、上記副変速機20からの動力を第2出
力軸12から後輪側へのみ伝達する2輪駆動状態と、第
1、第2出力軸11,12から前輪側及び後輪側へそれぞれ
出力する4輪駆動状態との切換えが可能とされ、また4
輪駆動状態においては、上記センタデフ30を差動動作さ
せて前、後輪間の回転速度差の発生を許容するセンタデ
フフリーの状態と、該センタデフの差動動作を阻止して
前、後輪を均等に駆動するセンタデフロックの状態との
切換えが可能とされ、これらの切換えを上記切換装置40
によって行うようになっている。
また、上記前輪差動装置14には、一方の前車軸16への
動力の伝達を断接するフリーホイール装置50が設けら
れ、該装置50を駆動する負圧式のアクチュエータ51が備
えられている。このアクチュエータ51には、第1、第2
負圧通路52,53が接続されていると共に、これらの負圧
通路52,53にフリーホイール接続用ソレノイド54及び切
断用ソレノイド55がそれぞれ配置され、接続用ソレノイ
ド54がON、切断用ソレノイド55がOFFのときにフリーホ
イール装置50が接続され、また接続用ソレノイド54がOF
F、切断用ソレノイド55がONのときにフリーホイール装
置50が切断されるようになっている。
そして、この4輪駆動車には、上記トランスファ装置
10における切換装置40とフリーホイール装置50の作動を
制御するコントローラ60が備えられ、このコントローラ
60に、センタデフ30のロック、フリーの切換えを行うス
イッチ(センタデフ切換スイッチ)61からの信号aと、
2輪駆動、4輪駆動の切換えを行うスイッチ(2−4切
換スイッチ)62からの信号bと、上記切換装置40の状態
を検出するポジションスイッチやリミットスイッチ等か
らの信号cと、上記フリーホイール装置50の状態を検出
するセンサ63からの信号dとが入力されると共に、該コ
ントローラ60から、上記切換装置40のアクチュエータ
と、上記フリーホイール装置50のアクチュエータ51を駆
動する接続用及び切断用ソレノイド54、55とにそれぞれ
制御信号e,f,gが出力されるようになっている。
次に、第2,3図により上記トランスファ装置10の構造
について説明する。
上記のように、このトランスファ装置10は、エンジン
出力が変速機により変速段に応じて減速された上で入力
される副変速機20と、該副変速機20の出力を前輪側と後
輪側とに分割するセンタデフ30とを有する。
これらのうち、副変速機20は、第3図に骨子を示すよ
うに、変速機出力軸21が切換スリーブ22によりサンギヤ
23またはピニオンキャリヤ24に選択的に接続されるプラ
ネタリギヤ機構によって構成されている。そして、この
プラネタリギヤ機構のリングギヤ25が固定され、且つ上
記ピニオンキャリヤ24がセンタデフ30に動力を伝達する
中間軸26に連結されていることにより、実線で示すよう
に、変速機出力軸21がピニオンキャリヤ24に接続された
ときには、該軸21の回転をそのまま中間軸26に伝達し、
また変速機出力軸21がサンギヤ23に接続されたときに
は、該軸21の回転を減速して中間軸26に伝達するように
なっている。
また、上記センタデフ30もプラネタリギヤ機構で構成
され、上記中間軸26が該プラネタリギヤ機構のピニオン
キャリヤ31に連結されていると共に、リングギヤ32が後
輪側へ動力を出力する上記第2出力軸12に連結されてい
る。また、該プラネタリギヤ機構のサンギヤ33は、上記
切換装置40を構成するクラッチ機構41と、上記中間軸26
と第1出力軸11との間に設けられたチェーン式伝動機構
を構成する駆動側スプロケット71、チェーン72及び従動
側スプロケット73とを介して、上記第1出力軸11に連結
されるようになっている。
一方、切換装置40は、上記のクラッチ機構41と、これ
を操作する操作機構42と、アクチュエータとしてのモー
タ43と、該モータ43による操作力を設定する操作力設定
機構44とで構成されている。
これらのうち、クラッチ機構41は、上記センタデフ30
におけるサンギヤ33の延長部に結合されたクラッチハブ
81と、リングギヤ32に一体的に設けられた第1クラッチ
ギヤ82と、上記チェーン式伝動機構の駆動側スプロケッ
ト71に一体的に設けられた第2クラッチギヤ83と、これ
らに跨ってスライド可能にスプライン嵌合された切換ス
リーブ84とで構成されている。
ここで、このクラッチ機構41における切換スリーブ84
の位置と動力伝達状態との関係を説明すると、まず、ス
リーブ84が図面上、左側のストローク端に位置する場合
は、クラッチハブ81と第2クラッチギヤ83とが結合され
ることにより、上記センタデフ30のサンギヤ33がチェー
ン式伝動機構の駆動側スプロケット71に結合される。こ
れにより、上記センタデフ30は、一方の出力要素である
サンギヤ33が第1出力軸11から前輪に、他方の出力要素
であるリングギヤ32が第2出力軸12から後輪にそれぞれ
連結されて、ピニオンキャリヤ31から入力される動力を
前、後輪にそれぞれ伝達する4輪駆動状態となると共
に、この場合は、上記サンギヤ33とリングギヤ32との相
対回転が許容されて、前、後輪間の回転速度差の発生が
可能なセンタデフフリーの4輪駆動状態(以下、4WFと
記す)となる。
また、この状態から上記スリーブ84が図面上、右側へ
一定量だけスライドされたストローク中間位置において
は、該スリーブ84により上記クラッチハブ81とその両側
の第1、第2クラッチギヤ82,83の3者が結合されるこ
とにより、センタデフ30のピニオンキャリヤ31に入力さ
れる動力がサンギヤ33から前輪側へ、リングギヤ32から
後輪側へそれぞれ出力されて、上記の場合と同様に、
前、後輪が駆動される4輪駆動状態となるが、この場合
は、サンギヤ33とリングギヤ32とが結合されることによ
り、これらの差動動作が阻止されて、前、後輪が均等に
駆動されるセンタデフロックの4輪駆動状態(以下、4W
Lと記す)となる。
さらに、この状態から上記スリーブ84が図面上、右側
にスライドして、第2、3図に示すように右側のストロ
ーク端に位置すると、該スリーブ84がクラッチハブ81と
第1クラッチギヤ82のみに跨って嵌合した状態となっ
て、該クラッチハブ81と第2クラッチギヤ83との結合が
解除される。そのため、センタデフ30がロックされたま
ま、該センタデフ30から第1出力軸11ないし前輪側への
動力の伝達が遮断されることになり、これにより後輪側
へのみ動力が伝達される2輪駆動状態(以下、2Wと記
す)となる。
なお、切換スリーブ84が図に示す2W位置から4WL位置
にスライドして、第2クラッチギヤ83に噛み合うとき
に、クラッチハブ81と第2クラッチギヤ83との回転を同
期させる必要上、該クラッチハブ81と第2クラッチギヤ
83との間に介設されたシンクロナイザリング85等でなる
同期機構が設けられている。
また、このクラッチ機構41を作動させる操作機構42
は、モータ43により上記操作力設定機構44を介して回転
される円筒カム91と、該カム91におけるカム溝91aに係
合されたフォロワー92を有するシフトロッド93と、該シ
フトロッド93に固設されて上記クラッチ機構41における
切換スリーブ84に係合されたシフトフォーク94とで構成
されている。そして、上記モータ43による円筒カム91の
回転により、シフトロッド93及びシフトフォーク94を介
して切換スリーブ84が上記のように左右のストローク端
とその中間位置とにスライドされるようになっている。
次に、第4,5図により、切換装置40における上記操作
力設定機構44について説明する。
この操作力設定機構44は、上記モータ43の回転軸上の
ギヤ101に噛合された絶縁体でなる駆動ギヤ102と、該ギ
ヤ102と同軸上で互いに対向状に配置され且つ減速ギヤ1
03,104を介して上記円筒カム91の回転軸91b上のギヤ105
に連結された同じく絶縁体でなる従動ギヤ106と、該駆
動ギヤ102及び従動ギヤ106の共通の軸107に巻回され且
つ両端の脚部108a,108aが駆動ギヤ102における従動ギヤ
106との対向面に突設された一対のピン102a,102aにそれ
ぞれ係止されたコイルスプリング108とで構成されてい
る。そして、従動ギヤ106における駆動ギヤ102との対向
面にも一対のピン106a,106aが突設されて、上記コイル
スプリング108の脚部108a,108aにそれぞれ当接されてお
り、上記駆動ギヤ102が回転したときに、該コイルスプ
リング108のいずれか一方の脚部108aが従動ギヤ106側の
一方のピン106aを押すことにより、該コイルスプリング
108の弾性力を介して従動ギヤ106に回転が伝達されるよ
うになっている。そのとき、従動ギヤ106側の負荷に応
じてコイルスプリング108が撓むことにより、該負荷に
対応する量だけ駆動ギヤ102と従動ギヤ106とが相対回転
する。
また、駆動ギヤ102における従動ギヤ106との対向面に
は、半径方向に位置を異ならせて第1、第2ブラシ109
a,109bが取り付けられていると共に、第6図に示すよう
に、従動ギヤ106における駆動ギヤ102との対向面には、
上記ブラシ109a,109bとでリミットスイッチを構成する
導板110が貼り付けられている。この導板110には、上記
両ギヤ102,106間に相対回転がないときに上記ブラシ109
a,109bが位置する中立位置を中心とし且つ半径方向外側
の第1ブラシ109aに対応する幅の狭い第1切欠き部110a
と、上記中立位置を中心とし且つ半径方向内側の第2ブ
ラシ109bに対応する幅の広い第2切欠き部110bとが設け
られており、また該導板110は所定の電位(電源のプラ
ス電位もしくはマイナス電位)に保持されている。これ
により、第1ブラシ109aと第1切欠き部110aとで構成さ
れて、駆動ギヤ102と従動ギヤ106との相対回転に対応す
る上記モータ43による操作力が比較的小さな第1設定値
P1(例えば40Kg)以上で導通する第1リミットスイッチ
111と、第2ブラシ109bと第2切欠き部110bとで構成さ
れて、上記操作力が大きな第2設定値P2(例えば80Kg)
以上で導通する第2リミットスイッチ112とが構成され
ている。
さらに、第4図に示すように、上記円筒カム91の回転
軸91bには絶縁体でなる円板113が固着されて、該円板11
3上に3つの円弧状導板114a,114b,114cが同心状に貼付
けられていると共に、これらの導板にそれぞれ対応させ
て3つのブラシ115a,115b,115cが設けられ、これらによ
って円筒カム91の回転角、つまり上記クラッチ機構41に
おけるスリーブ84の位置を検出する第1〜第3ポジショ
ンスイッチ116,117,118が構成されている。これらのポ
ジションスイッチ116〜118は、そのON,OFFの組合わせに
より、第7図に示すように、上記スリーブ84の右側のス
トローク端の2W位置、ストローク中央の4WL位置、及び
左側のストローク端の4WF位置の3ポジションと、これ
ら各位置の間の第1、第2中間位置α,βの合計5ポジ
ションを検出することができるようになっている。
なお、第1図に示すセンタデフ切換スイッチ61は、第
8図に示すように運転席におけるハンドルの近傍に設け
られた切換レバーによって構成され、また2−4切換ス
イッチ62は該レバーに設けられた切換ボタンによって構
成されている。そして、切換レバー61が実線で示す中間
位置にあるときに、4輪駆動状態でセンタデフ30がロッ
クされ(4WL)、また切換レバー61が鎖線で示す上方位
置にある状態で切換ボタン62が操作されたときに、セン
タデフフリーの4輪駆動状態(4WF)と2輪駆動状態(2
W)との切換えが行われるようになっている。また、該
切換レバー61を鎖線で示す下方位置に操作することによ
り、4WL状態で副変速機20が低変速段側に操作されるよ
うになっている。
次に、上記コントローラ60による切換制御動作を示す
第9図以下のフローチャートにしたがって本実施例の作
用を説明する。
第9図はこの切換制御動作のメインルーチンを示すも
ので、コントローラ60は、まずステップS1で所定のシス
テム初期化を行った上で、ステップS2,S3で、第1〜第
3ポジションスイッチ116〜118からの信号を入力し、こ
れらの信号が示すON,OFFの組合せと、第7図に示す予め
設定された各ポジションについてのON,OFFの組合せとを
比較する。そして、実際の組合せが設定されているいず
れの組合せにも該当しないときに、ポジションスイッチ
116〜118のいずれかに故障が発生したものと判定して、
ステップS4によるポジションスイッチ故障モードの制御
を実行する。
また、2−4切換スイッチ62からの信号に基いて2輪
駆動状態から4輪駆動状態への切換えが検出された場合
には、ステップS5でクラッチ機構41におけるクラッチハ
ブ81と第2クラッチギヤ83との同期状態を検出し、この
同期動作が正常に行われなかったと判定したときに、ス
テップS6からステップS7を実行して同期不良モードの制
御を行う。
そして、上記のようなポジションスイッチの故障及び
同期不良が発生していないときには、ステップS8による
通常の切換制御を実行する。
この通常の切換制御は第10図のフローチャートにした
がって行われ、まずステップS11でポシションスイッチ1
16〜118からの信号によって切換スリーブ84の現在のポ
ジションを判定し、またステップS12でセンタデフ切換
スイッチ61及び2−4切換スイッチ62からの信号によ
り、運転者が選択した駆動モードを実現する目標ポジシ
ョンを判定する。
そして、ステップS13,S14で切換装置40におけるモー
タ43の回転方向及び操作力を設定すると共に、ステップ
S15で、これらの設定動作によって得られた方向及び操
作力となるようにモータ43の駆動制御を行う。
上記ステップS13によるモータの回転方向の設定は第1
1図のフローチャートにしたがって、次のように行われ
る。
まず、ステップS21でエンジンのイグニッションスイ
ッチがON操作された直後か否かを判定し、直後であれば
次にステップS22,S23で第1、第2リミットスイッチ11
1,112がON状態にあるか否かを判定する。そして、いず
れのリミットスイッチもOFFであれば、ステップS24で方
向設定フラグF0を1に、いずれか一方のリミットスイッ
チがONであれば、ステップS25で該フラグF0を0にセッ
トする。
次に、ステップS26により上記方向設定フラグF0の値
を判定し、F0=0のとき、つまり、少なくとも第1リミ
ットスイッチ111がONとなっていてモータ43に第1設定
値P1以上の負荷が作用しているときは、ステップS27
下のモータ回転方向の設定動作を行わない。そして、上
記負荷が第1設定値P1未満となって、第1、第2リミッ
トスイッチ111,112ともOFFとなることにより、方向設定
フラグF0が1となった時点で、ステップS27以下のモー
タ回転方向の設定動作を行う。
この動作においては、まずステップS27,S28で第1、
第2リミットスイッチ111,112がON状態にあるか否かを
再び判定し、両リミットスイッチともOFFの場合はステ
ップS29でX方向への回転許可フラグFAX、及びY方向へ
の回転許可フラグFAYをいずれも0にリセットする。こ
こで、X方向とは第2図に示すクラッチ機構41における
スリーブ84が図面上、右側から左側へ、すなわち2W→4W
L→4WF方向へスライドする方向であり、またY方向とは
上記スリーブ84がその逆方向にスライドする方向であ
る。
一方、第1、第2リミットスイッチ111,112の少なく
とも一方がON状態にあるときは、上記ステップS27また
はステップS28からステップS30を実行し、モータ43のY
方向の回転を示すY方向回転フラグFYの値を判定する。
そして、FY=1のとき、すなわちモータ43がY方向に回
転しているときは、ステップ31で上記Y方向の回転許可
フラグFAYが0であることを確認した上で、ステップS32
でX方向の回転許可フラグFAXを1にセットする。ま
た、Y方向回転フラグFY=0のときは、ステップS33
モータ43のX方向の回転を示すX方向回転フラグFXの値
を判定し、FX=1のとき、すなわちモータ43がX方向に
回転しているときは、ステップS34で上記X方向の回転
許可フラグFAXが0であることを確認した上で、ステッ
プS35でY方向の回転許可フラグFAYを1にセットする。
このようにして、モータ43がX方向またはY方向に回転
している状態で、第1、第2リミットスイッチ111,112
の少なくとも一方がON状態となったときに、現に回転し
ている方向に対する回転許可フラグFAXまたはFAYが0に
リセットされていることを条件として、反対方向の回転
に対する回転許可フラグFAYまたはFAXを1にセットす
る。これにより、リミットスイッチ111,112がOFFになる
方向(負荷が解消される方向)へのモータ43の回転が可
能とされると共に、両方向の回転が同時に許可されるこ
とが防止される。
また、第10図のフローチャートのステップS14による
操作力の設定動作は第12図のフローチャートにしたがっ
て行われ、まずステップS41でX方向及びY方向の操作
力制限フラグFIX,FIYを1にセットする。次いで、ステ
ップS42で、第2リミットスイッチ112がONであるか否か
を判定し、ONの場合は、上記両操作力制限フラグFIX,F
IYを1に保持する。この第2リミットスイッチ112は、
モータ43の操作力が第2設定値P2(80Kg)以上のときに
ONとなるので、このような大きな操作力が生じた場合に
は、該第2リミットスイッチ112からの信号でモータに
対する通電が停止されることになり、該モータ43に過負
荷が作用することが防止される。また、第2リミットス
イッチ112がOFFの場合は、ステップS43で第1リミット
スイッチ111がONであるか否かを判定し、該第1リミッ
トスイッチ111もOFFの場合、すなわち上記モータ43の操
作力が第1設定値P1(40Kg)未満のときはステップS44
で上記X方向及びY方向の操作力制限フラグFIX,FIY
共に0にリセットする。これにより、両リミットスイッ
チ111,112ともOFFの場合は、これらのスイッチ111,112
からの信号にかかわらずモータ43のX方向及びY方向の
通電が許容される。
さらに、第2リミットスイッチ112がOFFで、第1リミ
ットスイッチ111がONの場合、すなわちモータ43の操作
力が第1設定値P1から第2設定値P2までの範囲(40〜80
Kg)にある場合は、ステップS45で切換スリーブ84の現
ポジションが4WL位置よりY方向側、すなわち2W位置も
しくは第1中間位置αのいずれかであるか否かを判定
し、これらの位置である場合にはステップS46でX方向
の操作力制限フラグFIXを0にリセットする。また、切
換スリーブ84の現ポジションが4WL位置のY方向側でな
い場合は、ステップS48で現ポジションが4WF位置である
か否かを判定し、この4WF位置にある場合に、ステップS
49でY方向の操作力制限フラグFIYを0にリセットす
る。
これにより、第13図に×印で示すように、X方向に対
しては2W位置及び第1中間位置αで第1リミットスイッ
チ111からON信号が無視され、またY方向に対しては4WF
位置で第1リミットスイッチ111からのON信号が無視さ
れ、これらのポジションではモータ43の操作力が、第2
リミットスイッチ112がONになる第2設定値P2(80Kg)
まで許容されることになり、また、これ以外のポジショ
ン(第13図の○印)では、第1リミットスイッチ111がO
Nとなる第1設定値P1(40Kg)で操作力が制限されるこ
とになる。
そして、以上のようにしてモータ43の回転方向及び操
作力が設定されると、第10図のフローチャートのステッ
プS15によるモータの制御が第14図のフローチャートに
したがって次のように行われる。
この制御においては、まずステップS51で切換スリー
ブ84の現ポジションが目標ポジションに一致しているか
否かを判定し、一致している場合は、ステップS52でX
方向及びY方向の回転フラグFX,FYを0にリセットす
る。つまり、この場合はモータ43を回転させない。
一方、切換スリーブ84の現ポジションが目標ポジショ
ンに一致していない場合は、ステップS53で現ポジショ
ンが目標ポジションのX方向側であるか否かを判定し、
X方向側である場合、つまりY方向に操作したい場合に
は、ステップS54でX方向の回転フラグFXを0にリセッ
トした上で、ステップS55でY方向の回転許可フラグFAY
が1であるか否かを判定する。そして、FAY=1の場合
は、ステップS56でY方向の回転フラグFYを1にセット
する。また、FAY=0の場合は、ステップS57でY方向の
操作力制限フラグFIYの値を判定し、FIY=0であれば上
記ステップS56でY方向の回転フラグFYを1に、FIY=1
であればステップS58でY方向の回転フラグFYを0にセ
ットする。つまり、Y方向への操作時に、その方向への
モータ43の回転が許可されておれば該方向にモータ43を
駆動し、許可されていない場合は、第1,第2リミットス
イッチ111,112の状態に応じてモータ43を駆動もしくは
停止させるのである。
また、切換スリーブ84の現ポジションが目標ポジショ
ンのX方向側でない場合、つまりX方向に操作したい場
合は、ステップS59で第1図に示すフリーホイール装置5
0の断接状態を判定し、切断状態にある場合は、さらに
ステップS60で現ポジションが4WL位置のY方向側である
か否かを判定する。そして、4WL位置のY方向側、すな
わち2W位置もしくは第1中間位置αである場合には、上
記ステップS54〜S58を実行して、現ポジションからのX
方向への操作を禁止すると共に、フラグFAY,FIYの状態
によっては反対側のY方向にモータ43を駆動する。これ
は、上記フリーホイール装置50が切断されている状態で
2輪駆動から4輪駆動へ切換えるのを防止するためであ
る。
そして、X方向へ操作したい場合において、フリーホ
イール装置50が接続されており、また該装置50が切断さ
れていても現ポジションが4WL位置(もしくは該位置よ
りX方向側)である場合には、ステップS61でY方向の
回転フラグFYを0にリセットする共に、ステップS62
X方向の回転許可フラグFAXの値を判定して、FAX=1で
あればステップS63でX方向の回転フラグFXを1にセッ
トする。また、FAX=0の場合は、ステップS64でX方向
の操作力制限フラグFIXの値を判定し、FIX=0であれば
ステップS63でX方向の回転フラグFXを1に、FIX=1で
あればステップS65で該回転フラグFXを0にセットす
る。これにより、上記のY方向への操作時と同様に、X
方向へのモータ43の回転が許可されておれば該方向にモ
ータ43が駆動され、許可されていない場合は、第1,第2
リミットスイッチ111,112の状態に応じてモータ43が駆
動もしくは停止されることになる。
以上のようにして、モータ43が駆動されて、クラッチ
機構41における切換スリーブ84が現ポジションから目標
ポジションにスライドされることになるが、その場合
に、2W位置から4WL位置までのX方向の操作時、及び4WF
位置から第2中間位置βまでのY方向の操作時には、モ
ータ43の操作力が第2設定値P2(80Kg)まで許容され
て、これらの操作が確実且つ速かに行われると共に、こ
れら以外の操作時には上記操作力が第1設定値P1(40K
g)で制限されて急激な操作によるショックの発生が防
止され、このようにして、各切換操作に応じた操作力に
より良好な操作性が得られると共に、上記モータ43が過
負荷から保護されることになる。
そして、特にエンジン始動時において、モータ43に少
なくとも上記第1設定値P1以上の負荷が作用している場
合は、この負荷が第1設定値P1以下に低下するまでモー
タ43の回転方向設定動作が禁止されるので、該モータ43
がエンジン始動直後に負荷がさらに増大する方向に誤っ
て回転することが防止される。
(発明の効果) 以上のように本発明によれば、4輪駆動車等の複数の
駆動モードを設定し、これをアクチュエータによって操
作される切換機構により切換えるようにした車両におい
て、切換機構の操作途中でエンジンが停止され、次のエ
ンジン始動時に上記アクチュエータに設定値以上の負荷
が作用している場合に、該アクチュエータが負荷の増大
方向に誤って回転されることが防止される。これによ
り、このような誤った方向への回転でアクチュエータに
過負荷が作用することが未然に防止される。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の実施例を示すもので、第1図は4輪駆動
車の切換制御システム図、第2図は該4輪駆動車におけ
るトランスファ装置の要部断面図、第3図は同じく骨子
図、第4図は操作力設定機構の斜視図、第5図は該機構
の要部斜視図、第6図は該機構における従動ギヤの正面
図、第7図はポジションスイッチの作動説明図、第8図
は操作レバーを示す当該車両の運転席の正面図、第9図
は制御動作のメインルーチンを示すフローチャート図、
第10図は通常時の制御動作を示すフローチャート図、第
11図はモータの回転方向設定動作を示すフローチャート
図、第12図は操作力設定動作を示すフローチャート図、
第13図は該動作によって設定される操作力の説明図、第
14図はモータの制御動作を示すフローチャート図であ
る。 41……切換機構(クラッチ機構)、43……アクチュエー
タ(モータ)、60……回転方向設定手段、回転方向設定
禁止手段(コントローラ)。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジンから車輪に至る動力伝達系路を切
    換えて複数の駆動モードを得る切換機構と、正逆両方向
    に回転可能とされて選択された駆動モードとなるように
    上記切換機構を操作するアクチュエータと、該アクチュ
    エータの負荷が設定値以上となったときに、その時点で
    の方向へのアクチュエータの回転を停止させると共に反
    対方向への回転を許容する回転方向設定手段とが設けら
    れた車両の動力伝達系路切換機構の制御装置であって、
    エンジン始動時において、アクチュエータの負荷が上記
    設定値以上のときに、該負荷が設定値以下に低下するま
    で上記回転方向設定手段による回転の許容動作を禁止す
    る回転方向設定禁止手段を設けたことを特徴とする車両
    の動力伝達系路切換機構の制御装置。
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