JP2690121B2 - 変圧器タンクの製造方法 - Google Patents

変圧器タンクの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、タンクの側壁を構成する金属板自体に波付
け加工を施して放熱フィン部を形成する波付け形の変圧
器タンクの製造方法に関するものである。
[従来の技術] この種の変圧器タンクでは、波付け加工により多数の
中空放熱フィン部を形成した金属板と、該金属板の幅方
向の両端縁に溶接された上部枠体及び下部枠体とにより
タンクの側壁を構成し、下部枠体に底板を、また上部枠
体に蓋板をそれぞれ取付けて密閉したタンクを構成する
ようにしている。
この様な波付け形の変圧器タンクは、側壁を薄い金属
板により形成して所定の強度を得ることができるため、
小形軽量に構成することができる。またこの種のタンク
は側壁の表面積が著しく大きく、しかも油道抵抗が小さ
いため、大きな冷却効果を得ることができ、容量が数百
KVAまでの変圧器であれば、外付きの放熱器を用いない
で冷却を図ることができる。従ってこの種のタンクを用
いれば変圧器の小形軽量化を図ることができ、中形及び
小形の油入変圧器の容器として広く用いられている。
従来波付け形の変圧器タンクを製造する場合には、先
ず金属板をその長手方向に山部と谷部とが交互に並ぶよ
うに波付け成形する。次いで該金属板の各山部の両端を
溶接により密封することにより中空放熱フィン部を形成
して、長手方向に多数の放熱フィン部が並んだタンク側
壁構成用波付け板を形成する。その後この波付け板をタ
ンクの側壁の形状に適合した形に折曲げ加工し、この折
曲げ加工された波付け板の幅方向の両端縁部に、同じく
タンクの側壁の形状に適合する形に折曲げ加工された上
部枠体及び下部枠体を溶接してタンクの側壁部を構成し
ていた。
上記のように、波付け板と枠体とをそれぞれタンクの
側壁の形状に適合した形に折曲げ加工してから溶接する
方法をとった場合には、溶接の際に波付け板と枠体とを
位置合わせする作業が非常に面倒になり、タンクの製造
能率が低下するのを避けられなかった。
そこで、特公昭62−48363号に見られるように、タン
ク側壁構成用波付け板と枠体形成用の枠部材とを折曲げ
加工する前に突合せて突合せ部を全長に亘って溶接し、
しかる後に折曲げ加工を施してタンクの側壁部を構成す
る方法が提案された。
尚上部枠体及び下部枠体は通常波付け板の3倍程度の
板厚を有しているが、一般にそれぞれの剛性は等しくな
い。即ち、上部枠体は後で蓋板を取付ける都合上、その
端部が外側に大きくカーリング加工されており、大きな
剛性を有している。これに対し下部枠体は、底板を溶接
するための僅かな溶接代分だけ端部を直角に折曲げただ
けの形状を有しているため、その剛性は上部枠程大きく
ない。
[発明が解決しようとする課題] 上記のように、波付け板に枠部材を溶接した後に折曲
げ加工を施す方法をとれば、溶接の際に波付け板と枠部
材とを位置決めする作業を容易に行うことができるた
め、作業性を向上させることができる。
しかしながらこの方法による場合には、波付け板と枠
部材とを溶接する際に溶接により生ずる応力の為、剛性
が低い方の枠部材側でタンク側壁構成体に変形が生じ、
これによりタンク側壁構成体が大きくねじれるように変
形することがあった。このような変形はタンク側壁構成
体の寸法が小さい程顕著に現れる傾向にある。
上記のような変形が大きいとタンク側壁構成体をロー
ラコンベア等により後の折曲げ工程に搬送する際にタン
ク側壁構成体に横ずれや回転が生じて該構成体が途中で
ひっかかり、搬送を円滑に行うことができなくなる。こ
の様な状態になると人手によりタンク側壁構成体の姿勢
を修正する等の操作が必要になり、作業能率が低下す
る。
本発明の目的は、上記のような問題点の原因となるタ
ンク側壁構成体の変形を低減し、波付け形の変圧器タン
クを能率良く製造する方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明は、側壁構成体形成工程と折曲げ工程とを行っ
て変圧器タンクを製造する方法に係わるものである。こ
の方法の側壁構成体形成工程では、タンク側壁構成用波
付け板と、上部枠部材及び下部枠部材とを用意する。タ
ンク側壁構成用波付け板は、薄板をその長手方向に山部
と谷部とが交互に並ぶように波付け成形して各山部の両
端を溶接により密封することにより中空放熱フィン部を
形成したものである。上部枠部材及び下部枠部材は剛性
を異にする。これらの枠部材は波付け板の幅方向の両端
縁にそれぞれ重ね合わせ、両枠部材と波付け板との重合
せ部に沿って溶接トーチを走行させて両枠部材と波付け
板とを溶接することによりタンク側壁構成体を形成す
る。
折曲げ工程では、上記タンク側壁構成体をタンクの側
壁に適合する形状に折曲げ加工する。
本発明は、このような方法の側壁構成体形成工程にお
いて、剛性の低い方の枠部材に対してのみ歪み取り処理
を行うことにより、タンク側壁構成体の変形を抑制した
ものである。
即ち本発明の方法の側壁構成体形成工程では、上部枠
部材及び下部枠部材の内の剛性が小さい方の一方の枠部
材を波付け板に溶接する溶接トーチの後方からガストー
チを移動させ、該ガストーチにより一方の枠部材を後加
熱する。
上記の後加熱は剛性が低い枠部材の全体に亘って行っ
てもよく、変形が生じ易い部分に対してのみ行ってもよ
い。
[作用] 波付け板と枠部材とを溶接してタンク側壁構成体を形
成すると、該タンク側壁構成体には溶接により生じた応
力を解放しようとする力が働き、この力はタンク側壁構
成体を変形させようとする。この変形に対向するのは主
として波付け板の3倍程度の厚さを有し剛性が大きい上
部及び下部枠部材である。
ところが上部枠部材と下部枠部材とは剛性を異にして
おり、溶接歪みが大きい場合には、剛性が弱い方の枠部
材に変形が生じ易い。
尚タンク側壁構成体の寸法が小さい(一般に波部の高
さも低い)場合に変形が生じ易いのは、波付け板の重量
が枠部材にかかることにより生じる拘束力が小さい為と
考えられる。
本発明のように、剛性が小さい方の一方の枠部材を波
付け板に溶接する溶接トーチの後方からガストーチを移
動させて、該ガストーチにより剛性が小さい方の枠部材
を後加熱するようにすると、該後加熱により剛性が小さ
い方の枠部材の歪みを除去することができるため、剛性
が小さい方の枠部材を変形させようとする力を低減する
ことができる。従ってタンク側壁構成体をフリーな状態
(例えばコンベア上に乗った状態)にしたときのタンク
側壁構成体の変形は、後加熱を行わない場合に比べて著
しく少なくなる。
なお、他方の枠部材には溶接歪みが残留しているが、
この枠部材は剛性が大きいため、変形に抗することがで
き、その変形は少ない。
このように、本発明によれば、タンク側壁構成体が溶
接歪みにより変形するのを抑制することができるため、
該側壁構成の次工程への搬送及び次工程での折曲げ加工
を円滑に行わせることができ、波付け形変圧器タンクの
製造能率を向上させることができる。
[実施例] 以下第1図ないし第8図を参照して本発明の実施例を
説明する。
第7図及び第8図は本発明の実施例により製造された
変圧器タンク1を示したもので、第7図は蓋板を取外し
た状態を示している。
この変圧器タンク1は側壁部1Aと底板1Bと蓋板1Cとに
より構成される。側壁部1Aは折曲げ加工が容易な比較的
薄い金属板(通常は鋼板を用いる。)を波付け成形して
多数の放熱フィン2a,2a,…形成した波付け板2からなる
放熱壁部3と、この壁部3の幅方向の両端に溶接された
上部枠体4及び下部枠体5とからなっている。この例で
は第6図に示すような断面コの字形のタンク半部1aを2
つ突合せて、溶接部6により接合することにより側壁部
1Aを構成している。第8図に見られるように、上部枠体
4及び下部枠体5はそれぞれカーリング部4a及びフラン
ジ部5aを有していて、下部枠体5のフランジ部5aに底板
1Bが溶接され、上部枠体4のカーリング部4aに蓋板が取
付けられる。
以下この変圧器タンクを製造する本発明の方法を説明
する。
上記の変圧器タンクを製造するには、先ず金属板に波
付け加工を施すことにより第3図及び第4図に示すよう
に長手方向に交互に並ぶ山部mと谷部vとを形成し、各
山部mの長手方向の両端ma及びmbをスクイズ溶接により
密封して各山部により中空の放熱フィン部2aが形成され
たタンク側壁構成用波付け板2を製造する。この波付け
板は、一平面に沿うように展開させた状態で配置してお
く。尚第4図において斜線部分は放熱フィン部の中空部
(油道)を示している。
また上記波付け板とは別に上部枠体4を形成する上部
枠部材4′と下部枠体5を構成する下部枠部材5′とを
用意する。
上部枠部材4′は、第5図(C)に示したように、一
方向に直線的に伸びる帯板の幅方向の一端に、その断面
を円弧状とするようにカーリング加工を施してカーリン
グ部4a′を連続的に形成したものである。この上部枠部
材4′は、第5図(B)に示したように、一平面に沿う
ように展開配置された波付け板2の幅方向の一端に沿わ
せて、該波付け板2の端部と一部重ね合せた状態で配置
する。
また下部枠部材5′は、第5図(A)に示したよう
に、直線的に伸びる帯板の幅方向の一端に折曲げ加工を
施して平担な帯状フランジ部5a′を連続的に形成したも
のである。下部枠部材5′は第5図(B)に示したよう
に波付け板2の幅方向の一端に沿わせて、該波付け板の
端部に一部を重ね合せた状態で配置する。
波付け板2の幅方向の両端縁にそれぞれ上部枠部材
4′及び下部枠部材5′を溶接することにより、第5図
(B)に示すタンク側壁構成体7を形成する工程(側壁
構成体形成工程)を行う。
まず波付け板2を上側に、上部枠部材4′及び下部枠
部材5′を下側に配置して所定の寸法(数mm程度)重ね
合せ、波付け板2の両端部において数ケ所仮付け溶接を
行う。
この仮付け溶接を行った後、第1図及び第2図に示す
ように、波付け板2の幅方向の両端においてそれぞれの
溶接線に沿って本溶接を行う。第1図は側壁構成体形成
工程中の概略を示す上面図、第2図は第1図の正面図で
ある。
この本溶接の際には、上部枠部材4′及び下部枠部材
5′の下側に長方形の平面を上部に有する図示しない支
持台(機械的な支持手段と溶接電流の帰還回路とを兼ね
る。)を配置しておき、波付け板2の山部の頂部の両端
部付近を数ケ所図示しないプレスで押え付けておく。こ
れにより上部枠部材4′及び下部枠部材5′を、それぞ
れの長手方向に沿って直線状態を保持させるように拘束
する。
このように波付け板2と上部枠部材4′及び下部枠部
材5′とを拘束した後、波付け板2と上部枠部材4′及
び下部枠部材5′を、溶接線にそって自動走行する溶接
トーチ8,8′よって溶接(例えば自動ミグ溶接)する。
Wはこの側壁構成体形成工程で形成された溶接部を示し
ている。
この実施例では、下部枠部材5′が上部枠部材4′よ
りも小さな剛性を有している。そこでこの実施例では、
下部枠部材5′側を溶接する溶接トーチ8′の後方か
ら、該溶接トーチ8′に追従させてガストーチ9を移動
させ、このガストーチ9によるガス炎9aによって下部枠
部材5′を後加熱する。ガストーチ9は、下部枠部材
5′側の溶接トーチ8に対し、その進行方向と反対側に
(後方に)数cm離して配置しておく。溶接トーチ8,8′
及びガストーチ9は第1図に矢印で示す方向に同速度で
自動走行させる。
ガストーチ9には例えばプロパンガスと酸素との混合
ガス、または都市ガスと酸素との混合ガスを供給する。
下部枠部材5′は、溶接直後で溶接余熱がかなりある間
に、ガス炎9aにより後加熱されるため、その溶接歪みが
解放される。
図示してないが、溶接トーチ8,8′の進行方向の前方
には、波付け板2の幅方向の両端の下端(波付け板の幅
方向の一端が上部枠部材4′の上面と接する部分、及び
波付け板の幅方向の他端が下部枠部材5′の上面と接す
る部分)の位置を検出する倣いセンサの触針が配設さ
れ、更にその前方には上部枠部材4′及び下部枠部材
5′の長手方向の端部を検出する近接スイッチが配設さ
れている。またガストーチ9の近傍には、着火用の補助
トーチが配設されている。倣いセンサの触針、近接スイ
ッチ及び補助トーチは、溶接トーチ8,8′と同速度で走
行するが図示は略している。
溶接は上部枠部材4′及び下部枠部材5′の全長にわ
たって行うが、ガス炎9aによる後加熱は必ずしも下部枠
部材5′の全長にわたって行う必要はない。例えば下部
枠部材5′の長手方向の中央部帯のみの後加熱でよい場
合もある。必要な後加熱部分はタンク側壁構成体の種類
毎に実験的に求めることができ、予め実験により求めた
後加熱部分のみを加熱するようにガストーチ9へのガス
の供給及び点火時間帯を調整することによりガス使用量
の節減を図ることができる。
上記の溶接及びガス炎による後加熱を終了した後、波
付け板2の両端部を数ケ所押え込んでいた図示しないプ
レスによる押え込みを解く。
上記のようにして側壁体形成工程を完了した後、得ら
れたタンク側壁構成体7を図示しないローラコンベアで
次の工程に送り、該タンク側壁構成体をベンダーにより
折曲げてタンクの側壁の形状に適合した形に成形する折
曲げ工程を行う。この例では、タンクの側壁部1Aを2つ
のタンク半部1a,1aにより構成するため、タンク側壁構
成体7を各タンク半部1aの形(第6図参照)に折曲げ成
形する。
このタンク半部1aを2つ突合せて突合せ部を溶接する
ことによりタンクの側壁部1Aを構成する。
その後第8図に示すように下部枠体5のフランジに底
板1Bを溶接して変圧器タンクを完成する。蓋板1Cはタン
ク内に絶縁油とともに変圧器本体を収納した後に、上部
枠体4のフランジ部にパッキン10を介して取付ける。
上記の実施例では、タンクの側壁部を2つのタンク半
部1a,1aにより構成したが、1枚の波付け板と該波付け
板の両端に溶接された枠部材とからなる1個のタンク側
壁構成体を折曲げ加工してその両端を突き合わせ溶接す
ることにより側壁部1Aを形成することもできる。
[発明の効果] 以上のように、本発明によれば、側壁構成体形成工程
において、剛性が小さい方の一方の枠部材を波付け板に
溶接する溶接トーチの後方からガストーチを移動させ
て、該ガストーチにより剛性が小さい方の枠部材を後加
熱するようにしたので、該後加熱により剛性が小さい方
の枠部材の歪みを除去することができる。従って剛性が
小さい方の枠部材を変形させようとする力を低減するこ
とができ、タンク側壁構成体をフリーな状態(例えばコ
ンベア上に乗った状態)にしたときのタンク側壁構成体
の変形を、後加熱を行わない場合に比べて少なくするこ
とができる利点がある。また後加熱は一方の枠部材に対
してのみ行うため、ガス使用量を節減することができ
る。これにより波付け形変圧器タンクの生産性を高め、
製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例の側壁構成体形成工程における
溶接及びガス炎による後加熱方法を示す上面図、第2図
は第1図の正面図、第3図は本発明の実施例で用いる波
付け板を示す斜視図、第4図は同波付け板の要部拡大断
面図、第5図(A)は本発明の実施例で用いる下部枠部
材を示す斜視図、第5図(B)は本発明の実施例の側壁
構成体形成工程で得られるタンク側壁構成体を示す斜視
図、第5図(C)は同実施例で用いる上部枠部材を示す
斜視図、第6図は本発明の実施例でタンクの側壁を構成
するタンク半部を示す斜視図、第7図は製造された変圧
器タンクの蓋板を外した状態を示す斜視図、第8図は本
発明の実施例により得られる変圧器タンクの構造を概略
的に示した断面図である。 1…変圧器タンク、1A…側壁部、1B…底板、1C…蓋板、
2…タンク側壁形成用波付け板、2a…放熱フィン部、3
…放熱壁部、4…上部枠体、5…下部枠体、4′…上部
枠部材、5′…下部枠部材、7…タンク側壁構成体、8,
8′……溶接トーチ、9…ガス炎トーチ、10…パッキ
ン。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属板をその長手方向に山部と谷部とが交
    互に並ぶように波付け成形して各山部の両端を溶接によ
    り密封することにより中空放熱フィン部を形成したタン
    ク側壁構成用波付け板と、剛性が異なる上部枠部材及び
    下部枠部材とを用意して、該波付け板の幅方向の両端縁
    にそれぞれ上部枠部材及び下部枠部材を重ね合わせ、両
    枠部材と波付け板との重合せ部に沿って溶接トーチを走
    行させて両枠部材と波付け板とを溶接することによりタ
    ンク側壁構成体を形成する側壁構成体形成工程と、 前記タンク側壁構成体をタンクの側壁に適合する形状に
    折曲げ加工する折曲げ工程とを行って変圧器タンクを製
    造する方法において、 前記側壁構成体形成工程では、前記上部枠部材及び下部
    枠部材の内の剛性が小さい方の一方の枠部材を前記波付
    け板に溶接する溶接トーチの後方からガストーチを移動
    させ、該ガストーチにより前記一方の枠部材を後加熱す
    ることを特徴とする変圧器タンクの製造方法。
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