JP2686381B2 - 半導体式アンモニアガスセンサ - Google Patents

半導体式アンモニアガスセンサ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体式アンモニアガ
スセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のアンモニアを検知するセ
ンサとしては、隔膜電極を用いた電解方式のもの、アン
モニアイオン電極を用いたもの、pH電極を用いたもの
等があるが、何れも電解液等液体を用いるため、装置が
大型、複雑となり、液の補充、交換等の保守管理を頻繁
に行わなければならない等の問題があった。また乾式の
半導体式ガスセンサとしては原子価制御された酸化スズ
半導体にPdを添加したセンサがあるが、アンモニアに
対する感度が低く、水素、一酸化炭素、炭化水素等に対
する選択性が悪いという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本願の目的は酸化スズ
半導体を用い、アンモニアガスに対して高感度であり、
かつ、水素、一酸化炭素、炭化水素等に優れたガスの選
択性を有する半導体式ガスセンサを得ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
の本発明による半導体式アンモニアガスセンサの特徴構
成は、原子価制御された酸化スズ半導体に、バナジウ
ム、鉛の夫々の酸化物を添加物として添加した金属酸化
物半導体部を設けたことにあり、その作用・効果は次の
通りである。
【0005】
【作用】つまり、本願の半導体式アンモニアガスセンサ
の基本的構成は従来の半導体式のガスセンサの構成にほ
ぼ等しく、原子価制御された酸化スズ半導体に添加物を
添加した金属酸化物半導体部が主な構成部となってい
る。ここに、検知対象のガス(具体的にはアンモニアガ
ス)が吸着すると、この部位の電気伝導度・熱伝導度等
が変化し、これをセンサに備えられている電極部により
電気的に取り出すことによりガスの検出が可能となる。
ここで、本発明の半導体式アンモニアガスセンサにおい
てはバナジウムによりアンモニアガスに対する感度が高
くなっており、鉛によって水素、一酸化炭素、炭化水素
ガス等の他のガスに対する選択性を良化させている(実
施例に示す実験結果参照)。
【0006】
【発明の効果】従って、本願においては半導体式のガス
センサの金属酸化物半導体部に、バナジウム、鉛を添加
することにより、アンモニアガスに対して感度が高いと
ともに、他のガスとの選択性に於いて優れ、実用上問題
のない半導体式アンモニアガスセンサが得られた。さら
にこのセンサは、従来の半導体式ガスセンサの構成をほ
ぼそのまま踏襲したものであるため、構造が簡単で、保
守・点検も非常に簡単なものとなっている。
【0007】さらに上記の構成において、前記金属酸化
物半導体部の外周部に、アルミナ、シリカ、シリカアル
ミナ、ゼオライトの中から選択された少なくとも1種を
担体とする担体層を設け、この担体層にタングステンも
しくはモリブデンの酸化物の一方もしくは両方を担持物
として担持させた触媒層を設けたものとすると、この触
媒層において、アルコールは脱水反応を受け、このアン
モニアガスセンサに於けるその感度の低いエチレンに変
換され、このセンサがアルコールを検知することはなく
なり、アルコールに対する選択性も向上することが可能
である。
【0008】
【実施例】以下に本願の半導体式アンモニアガスセンサ
の実施例を図面に基づいて説明する。説明にあたって
は、センサの構造、センサの製作方法、センサの使用形
態とその性能、センサにおける添加物の配合割合と感度
特性、触媒層とその感度特性の順に説明する。 〔センサの構造〕図1に本願の半導体式アンモニアガス
センサ1が示されている。図においては、このセンサ1
の内部構成を示すために一部が断面で表示されている。
図示するように、このセンサ1は、白金線コイル2上に
酸化スズの金属酸化物半導体部3を備えたものであり、
さらにこの金属酸化物半導体部3の外層側に触媒層4を
設けたものである。さらに詳細に各部位について説明す
ると、金属酸化物半導体部3は酸化スズの焼結体で形成
されるとともに、この焼結体にバナジウム及び鉛の酸化
物が添加されている。ここで、バナジウム酸化物の役割
はアンモニアに対する感度を良化させることであり、鉛
の酸化物のそれはアンモニア以外のガスに対するアンモ
ニアガスの選択性を良化させることである。次に触媒層
4について説明すると、この層4はアルミナを担体とす
る担体層に、タングステン酸化物を担持物として担持さ
せたものである。このタングステン酸化物によりアルコ
ールは分解(いわゆる酸性金属酸化物によるアルコール
の分子内脱水反応と呼ばれるもの)を受ける。この化学
反応式を以下に示す。 C25OH→C24+H2
【0009】この反応は比較的高温(300℃程度以
上)で起こるものであり、このときエチレンが生成され
るが、このガスに対する本願のセンサの感度は非常に低
く、これが誤検出されることはない。従って本願のセン
サにおいてはアルコールを誤検出することはなく、この
触媒層4がこの役割を担う。
【0010】〔センサの製作方法〕以下にセンサの作成
過程を順を追って説明する。 (イ) 四塩化スズを用い、一定濃度の水溶液を調整
し、所定量の塩化アンチモンを添加する。この水溶液に
アンモニア水を滴下して得た水酸化スズの沈殿物を乾燥
後、電気炉で700℃で2時間焼成して、酸化スズを得
る。これを粉砕して微粉末とし水で練ってペースト状と
しこのペーストをガスセンサの検出電極としての貴金属
コイル(具体的には白金)へ付着させる。 (ロ) 添加物としてのバナジウムはバナジン酸アンモ
ニウム、及び鉛は硝酸鉛の水溶液を、前述の酸化スズに
対して、バナジウムにおいては0.5〜5mol%(最
適添加量2mol%)に、鉛においては0.05〜3m
ol%(最適添加量1mol%)になるように調整し
て、それぞれ1種づつ又は混合液を焼結体に含浸する。
さらに、これを室温で乾燥後600℃で1時間加熱し、
それぞれの酸化物を得る。 以上の工程において、金属酸化物半導体部3の作成が完
了する。
【0011】(ハ) 次に触媒層4の作成にあたって
は、この触媒層はアルミナの粉末にタングステン酸アン
モニウムの水溶液を含浸法によりアルミナの粉末に対し
て0.1〜5mol%(最適添加量2mol%)になる
ように添加した後、乾燥後、電気炉で700℃で2時間
焼成する。これを粉砕し、水で練ってペースト状とし前
述の金属酸化物半導体部表面全周に塗布する。さらに室
温で乾燥後、600℃で1時間加熱し、焼結させ形成す
る。
【0012】〔センサの使用形態とその性能〕以下に、
上記のようにして作成されたセンサの使用形態及びその
性能について説明する。 〔センサ回路〕このセンサ1は、図2に示されるホィー
ストン回路5に組み込まれて使用される。図中直列抵抗
5aはこのセンサ1のための負荷抵抗としてこれに直列
に接続された抵抗であり、抵抗5b、5cはこの回路の
基準電位を定めるため互いに直列に接続された基準抵抗
である。センサ1と直列抵抗5aは他の基準抵抗5b、
5cに対して電源5dに関し並列とされ、各々抵抗の中
間点A,Bの間の電位差により、このセンサの出力を電
圧(mV)の形で得ることができる。
【0013】〔性能説明〕 (イ) 以下に本願の半導体式アンモニアガスセンサ
(適正添加量 バナジウム:2mol%、鉛:1mol
%、触媒層のタングステン:2mol%を添加)1のア
ンモニア感度とセンサ動作温度との関係について説明す
る。この関係が図3に示されており、同図においてはア
ンモニア(50ppm)及び水素、イソブタン、エチレ
ン、エタノール(各500ppm)に対する感度が示さ
れている。同図からも明らかなように、このセンサのア
ンモニアに対する感度は、340℃付近で最も高く、そ
れ以上の温度域においては次第に低下している。一方他
のガスにおいては、概して温度の上昇とともに感度も低
くなっている。図4においてさらに詳細に説明するが、
このセンサにおけるアンモニアと他のガスとの選択性は
充分に満足できるものである。即ち、水素、イソブタ
ン、エチレン、エタノールに対しては、ほぼ300℃を
こえた温度範囲では、感度が十分に抑えられている。
【0014】(ロ) 次に本願のセンサ(適正添加量
バナジウム:2mol%、鉛:1mol%、触媒層 タ
ングステン:2mol%を添加)の感度とガス濃度との
関係について説明する。この関係が図4に示されてお
り、その検知温度は、図3で本願のアンモニアガスセン
サ1が最大感度に近い350℃である。アンモニア及び
水素、イソブタン、メタン、一酸化炭素、エタノールに
関するデータが示されている。図からも明らかなように
アンモニアガスに対しては、非常に高感度であるととも
に、そのガス濃度に対して良好な線形性を保っている。
また、他の検知対象ガスに対して充分な選択性を示して
いる。
【0015】(ハ) 次に本願のセンサ(適正添加量
バナジウム:2mol%、鉛:1mol%、触媒層 タ
ングステン:2mol%を添加)1のアンモニアガスに
対する時間応答曲線(NH320ppm)について説明
する。この関係が図5に示されており、センサ温度は3
50℃、アンモニア濃度は20ppmである。結果、応
答が速く、また回復も同様に速いことがわかる。90%
応答は20sec程度であり、実用上望ましい特性を有
している。
【0016】〔センサにおける添加物の配合割合と感度
特性〕以上の説明においては、本願の最適実施例として
の半導体式アンモニアガスセンサ(金属酸化物半導体部
3に添加物(2種)を加え、触媒層4を設けたもの)の
性能について説明したが、以下に夫々の添加物の本願の
センサに於ける役割を明らかとする実験例を説明する。 (イ) バナジウム 白金コイル2上に酸化スズのみの金属酸化物半導体部3
を設けたもの(第一試験センサと呼ぶ)に、単に添加物
としてバナジウムを添加した構成の第二試験センサに於
ける、添加量と感度(最高感度を100とした。)の関
係が、図6に示されている。ここで、実験温度は380
℃である。結果、図からも明らかなように、アンモニア
に対する感度が最も高いのはバナジウムの添加量が約2
mol%の場合である。さて、この最高感度(2mol
%)に対してアンモニアに対する感度が60%となるバ
ナジウムの添加量の範囲(0.5〜5mol%)が、ほ
ぼ本願の半導体式アンモニアガスセンサ1が有効な範囲
である。いっぽう、この第二試験センサでは他のガスに
対する選択性が悪く、他のガスの併存下においてはこれ
を誤検出する場合もあった。
【0017】引き続いて、金属酸化物半導体の添加物と
しての鉛と触媒層に於けるタングステンの添加量につい
て説明する。先ず、これらの添加量の検討にあたりその
判断基準となるデータの整理手法について説明する(こ
れらの添加物はセンサの選択性に影響を与えるため、以
上に説明した手法とは別の整理手法を採用する)。
【0018】整理手法 感度は下記の式で定義する。 ΔV(NH3)=Vg(NH3)−Va ここで、Vaは清浄空気中での出力電圧であり、Vg
(NH3)は添字に示すガス(この場合はアンモニア)
存在下での出力電圧である。
【0019】さらに、このようにして定義される感度に
対してΔV(NH3)/ΔV(H2)によりアンモニアに
対する水素の感度比を表示する。以下に示す実験におい
て、ガス濃度は、アンモニアガスの場合は50ppm
に、水素、イソブタン、エタノールの場合はその10倍
の500ppmとされている。そのため、前述の感度比
が1であっても対アンモニアガス感度は他のガスに対す
る感度の10倍となっている。
【0020】(ロ) 鉛 第二試験センサの構成の金属酸化物半導体部に、鉛を添
加した場合の感度比(ΔV(NH3)/ΔV(H2)、Δ
V(NH3)/ΔV(i−C410))を表1に示した。
この表においては、バナジウムの添加量を最適量である
2mol%にするとともに、さらに、0.5及び5mo
l%ともした。
【0021】
【表1】
【0022】結果、表1より水素との最良の感度比を与
えるのは鉛添加量が約1mol%である。また、鉛添加
量が0.05〜3mol%の範囲であれば水素との感度
比は1以上に保つことができる。一方イソブタンとの感
度比においても、約1mol%の添加量で最良となる。
この場合もまた、鉛添加量が0.05〜3mol%の範
囲であればイソブタンとの感度比は実用上問題のない1
以上に保つことができる。
【0023】〔触媒層〕以下に触媒層4に於ける添加物
の添加量及びその層厚さと、感度比ΔV(NH 3)/Δ
V(C25OH)との関係について説明する。 (ハ) タングステン 表2に添加物(担持物)としてタングステンを選択した
場合の、添加量と感度比の関係が示されている。
【0024】
【表2】
【0025】結果、最良の感度比を与えるのは、タング
ステン添加量が約2mol%の場合である。ここで、タ
ングステン添加量が0.5〜5mol%の範囲であれば
アルコールとの感度比は1以上に保つことができ、その
選択性が確保される。
【0026】次に、以上のように得られた最適のタング
ステン添加量(2mol%)の時、この触媒層(タング
ステン酸化物触媒層)の厚さを変化させて得られるアル
コールとの感度比の変化を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】結果、最良の感度比を得るためには、タン
グステン酸化物触媒層の厚さが約50〜200μm程度
のときである。但し、この触媒層は300μm程度以上
の厚さになると機械的強度が低下してしまう。よって、
50〜200μm程度とすることが最適である。
【0029】〔別実施例〕本願の別実施例を以下に箇条
書きする。 (イ) 金属酸化物半導体部3におけるバナジウム、鉛
の添加方法としては、実施例において説明した含浸法以
外に、上記酸化スズを得る過程で塩化スズ溶液にそれぞ
れの溶液を混合しておきアンモニア水により一緒に共沈
させる方法により添加を行うことも可能であり、いかな
る方法によってもよい。さらに、このような金属の添加
段階において上記の実施例においてはアンモニウム塩や
硝酸塩を使用したが、使用する塩としては硝酸塩等要す
るに水溶性の塩であればいかなるものでもよい。 (ロ) さらに、前述の実施例において触媒層4の担体
として、これがアルミナである場合を示したが、アルミ
ナの他、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトのいずれ
か、あるいはこれらの複数からこの担体を構成してもよ
い。 (ハ) 前述の実施例において触媒層4に担持される担
持物としてタングステンの場合を示したが、これはモリ
ブデンであってもよい。 表2に示すタングステンの感度結果に相当するモリブデ
ンの結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】結果、最良の感度比を与えるのはモリブデ
ン添加量が約2mol%の場合である。又、添加量が
0.5〜5mol%の範囲であればアルコールとの感度
比は1以上に保つことができ、その選択性が確保され
る。 (ニ) さらに、上記の実施例においては図1に示すよ
うに熱線型のセンサ構成を示したが、図7、図8に示す
ようにセンサ構成を基板型としてもよい。図7は前述の
熱線型の構成に於ける貴金属コイルの代わりに矩形波形
状に成型した電極10を採用し、この電極10に対して
その下面側に基板部11と上面側に金属酸化物半導体部
12を形成し、さらにその上面に触媒層13を形成した
ものである。この例の場合は、センサ1の加熱は電極1
0の発熱によっておこなわれる。一方、図8に示すもの
は図7の構成においてセンサの加熱用に、特別の加熱用
ヒータ14を設けたものである。
【0032】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を
便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は
添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の半導体式アンモニアガスセンサの構成を
示す図
【図2】アンモニアガス検出用回路の構成を示す図
【図3】本願の半導体式アンモニアガスセンサの温度特
性を示す図
【図4】本願の半導体式アンモニアガスセンサのガス濃
度特性を示す図
【図5】本願の半導体式アンモニアガスセンサの応答性
を示す図
【図6】第二試験センサの感度特性を示す図
【図7】本願の半導体式アンモニアガスセンサの別実施
例の構成を示す図
【図8】本願の半導体式アンモニアガスセンサのさらな
る別実施例の構成を示す図
【符号の説明】
3 金属酸化物半導体部 4 触媒層

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原子価制御された酸化スズ半導体に、バ
    ナジウム、鉛の夫々の酸化物を添加物として添加した金
    属酸化物半導体部(3)を備えた半導体式アンモニアガ
    スセンサ。
  2. 【請求項2】 前記金属酸化物半導体部(3)の外周部
    に、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトの
    中から選択された少なくとも1種を担体とする担体層を
    設け、前記担体層にタングステンの酸化物もしくはモリ
    ブデンの酸化物の一方もしくは両方を担持物として担持
    させた触媒層(4)を設けた請求項1記載の半導体式ア
    ンモニアガスセンサ。
  3. 【請求項3】 前記金属酸化物半導体部(3)に於ける
    前記酸化スズ半導体に対する前記添加物の割合が、前記
    バナジウムについて0.5〜5mol%、前記鉛につい
    て0.05〜3mol%である請求項1記載の半導体式
    アンモニアガスセンサ。
  4. 【請求項4】 前記触媒層(4)に於ける前記担持物の
    前記担体に対する割合が、0.1〜5mol%である請
    求項2記載の半導体式アンモニアガスセンサ。
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