JP2686232B2 - 太さ変化を有する釣糸及びその製造方法 - Google Patents

太さ変化を有する釣糸及びその製造方法

Info

Publication number
JP2686232B2
JP2686232B2 JP6153419A JP15341994A JP2686232B2 JP 2686232 B2 JP2686232 B2 JP 2686232B2 JP 6153419 A JP6153419 A JP 6153419A JP 15341994 A JP15341994 A JP 15341994A JP 2686232 B2 JP2686232 B2 JP 2686232B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fishing line
change
thickness
polyester
fineness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP6153419A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH089847A (ja
Inventor
勝男 菅野
仁志 岸本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Gosen Co Ltd
Original Assignee
Gosen Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Gosen Co Ltd filed Critical Gosen Co Ltd
Priority to JP6153419A priority Critical patent/JP2686232B2/ja
Publication of JPH089847A publication Critical patent/JPH089847A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2686232B2 publication Critical patent/JP2686232B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステル系繊維か
らなるフィラメントを用いた太さ変化を有する釣糸及び
その製造方法に関する。さらに詳しくは、長さ方向に太
さが変化しており、結節強力を改善し、表面光沢を低減
させたポリエステル系繊維からなるフィラメントを用い
た釣糸及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、釣糸素材としては、ナイロン6、
ナイロン6,6、またはこれらの共重合ナイロン、ポリ
エステル、ポリフッ化ビニリデンなどが一般的であり、
最近になってからは超高分子量ポリエチレンが用いられ
るようになってきた。この中で、とくにポリエチレンテ
レフタレートなどのポリエステルからなる釣糸は、ポリ
マー自体が疎水性であるため、ナイロンのように湿潤下
(水中)での強力低下はない点が有利である。また、ポ
リエステルは、ポリフッ化ビニリデンよりは高強力で、
超高分子量ポリエチレンよりは透明性に優れ、有用な釣
糸用素材である。
【0003】しかしながら、ポリエステルは釣糸として
は弾性率が高過ぎ、特にモノフィラメントとしては硬過
ぎるという問題点があった。これは釣糸の太さを細くす
る(すなわち、号数を小さくする)ことにより、ある程
度の対応ができる。しかしながら、号数を小さくすれ
ば、当然のことながら強力、特に釣糸の重要特性である
結節強力が低下する問題という新たな問題が生ずる。こ
の問題を解決するため、長さ方向に太さ変化をつけた釣
糸(テーパー糸)が提案されている(実公昭57−10
531号公報、実開平3−10770号公報、同3−1
2761号公報)。このテーパー糸は、ポリエステルの
溶融紡糸の段階で巻取速度を変化させるか、または延伸
速度を変化させて製造していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記実
公昭57−10531号公報等で提案されているテーパ
ー糸は、溶融紡糸の段階で巻取速度を変化させるか、ま
たは延伸速度を変化させ、長さ方向に太さ変化をつける
ので、巻取速度または延伸速度を正確に制御しなければ
ならず、安定生産が極めて困難であるという問題があっ
た。そのうえ、短いピッチで太い部分と細い部分を作る
ことは不可能であり、強力が十分にでない部分が生じた
り、同一の太さのものを均一に製造することが困難であ
るという問題があった。加えて、屈折率が高く表面反射
光りが高いという問題は、以前として改善されていない
という問題もあった。この様な問題から、ポリエステル
の使用される比率は、前記素材の中ではあまり高くなか
った。
【0005】本発明は、ポリエステル製釣糸の良好な特
性、すなわち低吸湿性、高強力性、高透明性などのポリ
エステル本来の特性を維持したまま、長さ方向に所定の
太さ変化を有する釣糸を提供することを目的とする。本
発明の第2の目的は、結節強力を改善し、表面光沢を低
減させたポリエステル系繊維からなるフィラメントを用
いた釣糸を提供することである。本発明の第3の目的
は、長さ方向に所定の太さ変化を有する釣糸を効率良く
合理的に製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の太さ変化を有する釣糸は、ポリエステル系
フィラメント繊維からなる釣糸であって、前記釣糸は長
さ方向に繊度の太い部分と細い部分とを有し、前記少な
くとも繊度の細い部分には加水分解痕跡が存在すること
を特徴とする。
【0007】前記構成においては、繊度の太い部分が、
釣糸の結節部を形成する位置に存在することが好まし
い。また前記構成においては、繊度の細い部分の表面
が、加水分解されていないポリエステル系フィラメント
繊維表面に比較して、光沢度が低下していることが好ま
しい。
【0008】また前記構成においては、加水分解による
浸蝕痕跡に微細孔が存在することが好ましい。また前記
構成においては、繊度の細い部分が太い部分に比較して
10%以上細いことが好ましい。
【0009】また前記構成においては、繊度の細い部分
の表面が、加水分解されていないポリエステル系フィラ
メント繊維表面に比較して、水濡性が高いことが好まし
い。また前記構成においては、ポリエステル系フィラメ
ント繊維が、モノフィラメント繊維であることが好まし
い。
【0010】また前記構成においては、繊度の太い部分
と細い部分とが、連続的テーパー状または段階的に変化
していることが好ましい。次に本発明の太さ変化を有す
る釣糸の製造方法は、ポリエステル系フィラメント繊維
からなる釣糸の製造方法であって、ポリエステル系フィ
ラメント繊維をアルカリ性水溶液に浸漬して、繊維表面
を加水分解し、長さ方向に繊度の太い部分と細い部分と
を形成することを特徴とする。
【0011】前記構成においては、アルカリ性水溶液
が、アルカリ金属水酸化物を水に溶解させた溶液である
ことが好ましい。また前記構成においては、加水分解処
理が、室温以上100℃以下の温度範囲であることが好
ましい。
【0012】また前記構成においては、ポリエステル系
フィラメント繊維をアルカリ性水溶液に連続的もしくは
段階的に浸漬、及び/または、連続的もしくは段階的に
引き上げることが好ましい。
【0013】また前記構成においては、ポリエステル系
モノフィラメント繊維を複数本束ねてアルカリ性水溶液
に浸漬することが好ましい。
【0014】
【作用】前記した本発明の構成によれば、ポリエステル
系フィラメント繊維からなる釣糸であって、前記釣糸は
長さ方向に繊度の太い部分と細い部分とを有し、前記少
なくとも繊度の細い部分には加水分解痕跡が存在するこ
とにより、ポリエステル製釣糸の良好な特性、すなわち
低吸湿性、高強力性、高透明性などのポリエステル本来
の特性を維持したまま、長さ方向に所定の太さ変化を有
する釣糸を実現できる。これは、溶融紡糸−延伸−熱処
理段階までは一定の条件で均一な品質のフィラメント繊
維を作り、通常の釣糸とした後、アルカリ水溶液などを
用いてフィラメント繊維の表面を加水分解して溶出処理
するので、ポリエステル本来の特性を維持したまま、長
さ方向に所定の太さ変化を有する釣糸を実現できる。ま
た、太い部分は結節強力が高いので、結節強力を改善で
きる。さらに、アルカリ加水分解するとポリエステルフ
ィラメント表面は、浸蝕痕跡のような加水分解痕跡が存
在するため、表面光沢を低減できる。すなわち、ポリエ
ステル系繊維フィラメントは、通常キラキラ光沢を有し
ているが、前記加水分解痕跡は微細な凸凹を有している
ので、キラキラ光沢は改善される。この結果、魚釣り作
用も向上される。
【0015】前記において、繊度の太い部分が、釣糸の
結節部を形成する位置に存在するという好ましい一例に
よれば、結節強力を高く維持できる。なお、繊度の太い
部分は、加水分解する必要はないが、加水分解されてい
てもよい。
【0016】また前記において、繊度の細い部分の表面
が、加水分解されていないポリエステル系フィラメント
繊維表面に比較して、光沢度が低下しているという好ま
しい一例によれば、ポリエステル繊維特有のキラキラ光
沢は改善される。なお、この光沢度は、加水分解の条
件、例えばアルカリ物質の濃度、界面活性剤などの添加
剤、処理温度、処理時間を選択することにより、所望の
ものを作ることができる。例えば処理条件が厳しけれ
ば、加水分解痕跡は強く残り表面の凸凹は高くなり、穏
やかであれば微細な凸凹となる。
【0017】また前記において、加水分解による浸蝕痕
跡に微細孔が存在するという好ましい一例によれば、さ
らにキラキラ光沢を改善できる。また前記において、繊
度の細い部分が太い部分に比較して10%以上細いとい
う好ましい一例によれば、実用的に十分に使用できる。
前記「10%以上」は、用途によって異なるが、ハリス
糸であれば、10〜50cmの長さ当りであり、道糸で
あれば、1〜5mの長さ当りである。もちろん、10%
以上であれば、いかなる範囲でも採用することができ、
極端な場合、先端が尖鋭化した釣糸でも作成できる。
【0018】また前記において、繊度の細い部分の表面
が、加水分解されていないポリエステル系フィラメント
繊維表面に比較して、水濡性が高いという好ましい一例
によれば、本質的に疎水性繊維であるポリエステルの水
への馴染みを良好にし、水中に沈み易くすることができ
る。これは、加水分解することにより、ポリエステル鎖
のエステル結合がカルボキシル末端基になり、繊維表面
のみが水に対して親和性が高くなるからである。
【0019】また前記において、ポリエステル系フィラ
メント繊維が、モノフィラメント繊維であるという好ま
しい一例によれば、ハリス糸、道糸など釣糸の汎用用途
に適用できる。もちろん、モノフィラメント繊維以外に
も、編組み品、撚糸品などにも適用できる。
【0020】また前記において、繊度の太い部分と細い
部分とが、連続的テーパー状または段階的に変化してい
るという好ましい一例によれば、目的と用途に適した太
細釣糸を提供できる。たとえば、ハリス糸で結節部の強
力を高く保つだけであれば、結節部以外の部分のみ一様
に加水分解する。この場合は段階的変化である。また複
数のハリス糸を用いる場合で、根元部の腰を強く(太
く)し、先端方向(釣り針に近い部分)をしなやかに
(細く)する場合は、連続的テーパー状または多段階的
に変化させる。
【0021】次に本発明の太さ変化を有する釣糸の製造
方法の構成によれば、ポリエステル系フィラメント繊維
をアルカリ性水溶液に浸漬して、繊維表面を加水分解
し、長さ方向に繊度の太い部分と細い部分とを形成する
ことにより、太細釣糸を効率よくかつ合理的に製造でき
る。前記において、アルカリ性水溶液とは、ポリエステ
ルを加水分解するものであればいかなるものでもよい。
前記において、アルカリ性物質は、phが10以上のも
のが好ましい。また、水溶液は水分が少量でも含まれて
いればよい。例えば、アルコールやグリコールなどの溶
液中に少量の水分を含んでいてもよい。
【0022】前記において、アルカリ性水溶液が、アル
カリ金属水酸化物を水に溶解させた溶液であるという好
ましい一例によれば、ポリエステルを加水分解するのに
都合が良い。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナ
トリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどが好ま
しい。加水分解速度は多少低下するが、アルカリ性物質
としては、アルカリ土類金属、第4級アンモニア溶液も
使用できる。
【0023】また前記において、加水分解処理が、室温
以上100℃以下の温度範囲であるという好ましい一例
によれば、加水分解速度を実用的に十分なものとし、し
かも安全に処理できる。
【0024】また前記において、ポリエステル系フィラ
メント繊維をアルカリ性水溶液に連続的もしくは段階的
に浸漬、及び/または、連続的もしくは段階的に引き上
げるという好ましい一例によれば、連続的テーパー状ま
たは段階的に変化している釣糸を効率よく製造できる。
【0025】また前記において、ポリエステル系モノフ
ィラメント繊維を複数本束ねてアルカリ性水溶液に浸漬
するという好ましい一例によれば、均一な品質のものを
大量に製造できる。
【0026】
【実施例】以下実施例を用いて本発明を具体的に説明す
る。本実施例でいうポリエステル繊維とは、現在一般に
市販、流通しているポリエチレンテレフタレート、ポリ
エチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、
ポリシクロヘキシレンテレフタレートなどのポリエステ
ル系繊維である。このうち、ポリエチレンテレフタレー
ト系繊維(共重合体を含む)がコスト的に最も優れてい
る。また、上記ポリエステルに第3成分を添加し、共重
合又は混合ポリエステルとして合成されたものを使用し
ても良い。これらの第3成分としては、アジピン酸など
の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカル
ボン酸などの脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフ
ェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などであ
る。これら繊維は、フィラメント(長繊維)状で使用さ
れる。主に、モノフィラメント状で使用される。
【0027】本実施例でいう加水分解処理とは、ポリエ
ステル繊維を加水分解しうるアルカリ金属化合物又は亜
鉛化合物を用いて、繊維表面から細くする処理である。
ポリエチレンテレフタレート繊維を例に取れば、テレフ
タル酸とエチレングリコールとの重縮合で得られている
が、加水分解処理はこれの逆の反応である。すなわち、
ポリエステル鎖のエステル結合を加水分解して、カルボ
キシル末端基にするのである。かかる金属化合物は、例
えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ム、重炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、塩化亜鉛、臭
化亜鉛などが挙げられる。エチルアミンなどのアミン類
と併用しても良い。また、加水分解の促進剤としてのセ
チルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級ア
ンモニウム塩を添加して処理しても良い。促進剤の添加
量としては0.1〜0.5重量%(対溶液比)で十分で
ある。
【0028】アルカリ金属などの加水分解剤の濃度は、
通常の衣料用などのポリエステル繊維などでは通常2〜
3重量%でも分解されうるが、本実施例で対象とする高
強力糸である釣糸では、ポリマーの粘度が高く、高分子
量であるため、10〜50重量%(対溶液比)、望まし
くは30〜50重量%(対溶液比)のアルカリ金属濃度
が好ましい。加水分解する温度は、常温で長時間放置し
ても可能であるが、釣糸のゲージ(太さ)を管理しなが
ら処理するには、60℃以上、望ましくは80℃以上で
処理する。処理後は、温水で十分洗浄し、分解物を釣糸
表面から除去する。必要に応じて中和処理(酸洗い)を
しても良い。その後、必要によっては、シリコーンオイ
ルなどの平滑剤を塗布して製品とする。
【0029】次に図面を用いて説明する。図1は本発明
の一実施例の太さがテーパー状に変化した釣糸の部分拡
大図である。図1において、1は釣糸、2は太い部分、
3は細い部分、4は加水分解痕跡(浸蝕痕跡)、5は微
細な孔(凹部)である。加水分解痕跡(浸蝕痕跡)4と
微細な孔5(凹部)により、釣糸1の表面は微細な凸凹
があり、乱反射するのでキラキラ光沢しない。
【0030】次に図2〜4は本発明の製造方法の一実施
例を示すものであり、図2はアルカリ減量処理前の工程
を示す斜視図、図3〜4はアルカリ減量処理中の工程を
示す断面図である。図2において、10は複数本(例え
ば数十本〜数千本)のポリエステル繊維モノフィラメン
トを束ねたものである。11はポリエステル繊維モノフ
ィラメント束10の上部で、アルカリ減量処理を行わな
い部分である。12は同束10の下部で、アルカリ減量
処理を行う部分である。13は結束糸である。結束糸を
用いてモノフィラメント束を複数個所を縛ってもよい。
14はガラス製試験管、15は水酸化ナトリウムなどを
水に溶解させたアルカリ水溶液である。ポリエステル繊
維モノフィラメント束10は矢印16の方向に浸漬す
る。ポリエステル繊維モノフィラメント束10は一気に
試験官の底近辺まで浸漬させ、所定時間アルカリ減少処
理した後、取り出して水洗することもできる。この場合
は、アルカリ水溶液15に浸漬させた部分が細くなり、
アルカリ水溶液15に接触しなかった部分は最初の太さ
のままで残る(一段変化)。アルカリ水溶液15に接触
した部分と非接触部分との境界部分はテーパー状とな
る。図2においては複数本のモノフィラメントを束ねて
処理したが、この処理は1本ずつ行うこともできる。複
数本のモノフィラメントを束ねてアルカリ溶液に浸漬す
ると、毛細管現象によりアルカリ溶液が上部に伝達する
ので、太さがテーパー状に変化する釣糸が得られる。ま
た、毛細管現象がおこらないようにモノフィラメントを
1本づつ単独にアルカリ溶液に浸漬すると、太さに段差
のある釣糸が得られる。
【0031】太さを多段に変化させるかまたは連続的テ
ーパー状に変化させる他の手段は、図3及び/または図
4に示す方法である。図3はアルカリ水溶液への浸漬手
順を示すもので、矢印16,16´,16”のように所
定時間ごとに3段階で浸漬すると、太さ変化が3段階に
変化するものが得られる。すなわち、浸漬時間が長い部
分はアルカリ減量が多くなるから、より細くなる。連続
的に浸漬させれば、太さは連続的テーパー状に変化す
る。図4はアルカリ水溶液からの取り出し手順を示した
ものである。矢印17の位置までモノフィラメント束1
0を浸漬させた後、矢印18,18´のように段階的に
引き上げてもよい。連続的に引き上げれば、太さは連続
的テーパー状に変化する。
【0032】以上のようにして得られた太細釣糸の一例
によれば、太い部分(例えば結節部)は加水分解処理さ
れていないか、または程度の軽い減量処理であってゲー
ジ(太さ)大きく、他の部分は加水分解して表面を細く
しているので、ポリエステル繊維基材そのものはなんら
化学的変質を受けていない。したがって、ゲージ(太
さ)に相当する強度特性を維持している。また、結節部
以外の部分が、加水分解処理されてゲージが細くなって
いるので、柔軟でしなやかな風合いを呈しており、また
加水分解処理されて表面に微細孔が生成され、光沢度が
低下し、キラキラ光沢が低減出来るのである。同時に、
上記の処理により吸水率の低さを維持したまま、濡れ
性、水との馴染み良さをも大幅に改善されることも見出
された。よって、釣糸として大事な部分の風合いは良好
で、釣りの操作性に優れ、キラキラ光沢もなく魚にも嫌
われることはない釣糸が可能となる。また、吸水率も
0.4重量%と低い値を維持したまま、濡れ性、水との
馴染み良さをも改善できた。
【0033】以下本発明を具体的実施例によりに説明す
る。 (実施例1)極限粘度1.10のポリエチレンテレフタ
レート(三菱化成工業(株)製、ノバペット1110
B)ペレット80重量部、およびテレフタル酸ユニット
とイソフタ酸ユニットのモル比がテレフタル酸ユニッ
ト:イソフタ酸ユニット=90:10の混合物とエチレ
ングリコールとを重縮合させて得た、極限粘度0.73
の共重合エチレンテレフタレートペレット20重量部を
混合し、常法に従って溶融紡糸し、直径0.233mm
のモノフィラメントを得た。このものの引張強力は4.
11kg、結節強力3.73kg、伸度20.1%であ
った。
【0034】このものを10cmにカットし、1000
本束ねた。これを図2に示す方法で結節部として3cm
を残して、他の部分を水酸化ナトリウム50重量%水溶
液中に浸漬し、温度95℃、2時間30分間加水分解処
理した。得られたハリス糸の概略図を図5に示す。図5
において、20はハリス糸、21はアルカリ減量処理さ
れていない部分、22はアルカリ加水分解された部分で
ある。アルカリ減量処理されていない部分21の直径は
0.233mm、アルカリ減量処理された部分22の直
径は、0.106mmであった。このものの全体の引張
強力は、1.05kgであった。加水分解処理された部
分の表面状態は、粗面化されており、未処理品に比べキ
ラキラ光沢が解消されていた。上記10cmの釣糸を、
あゆハリスとして未処理部(太い部分)をハリス止めに
固定した。
【0035】従来のナイロンおよびポリエステルからな
る同じ太さのもので比較したところ、いずれもハリス止
めに固定し、加水分解された細い部分に掛け鉤(本針)
を固定し、実際にあゆの友釣りを行った。100匹釣る
までテストを繰り返したが、ハリス止め部での切断は、
皆無であった。また加水分解された部分での切断は、2
回程度であった。従来のナイロンおよびポリエステルか
らなる同じ太さのもので比較したところ、いずれもハリ
ス止め部分で切断し、その頻度は前者では27回、後者
では15回であった。また本実施例の釣糸は、良好な釣
り成果が得られた。
【0036】(実施例2)極限粘度1.10のポリエチ
レンテレフタレート(三菱化成工業(株)製、ノバペッ
ト1110B)ペレットを、常法に従って溶融紡糸し、
直径0.330mmのモノフィラメントを得た。このも
のの引張強力は7.89kg、結節強力7.00kg、
伸度20.4%であった。このものを35cmにカット
して10本束ねた。結節部として10cmと他方の2.
5cmを残して、他の部分を水酸化ナトリウム30重量
%とセチルトリメチルアンモニウムクロライド0.2重
量%からなる水溶液中に浸漬し、95℃、2時間加水分
解処理した。加水分解処理された部分の直径は、0.2
86mmと細くなった。さらに、真ん中部の7.25c
mの部分を上記処理液に浸漬し、95℃、1時間30
分、加水分解処理した。加水分解処理された部分の直径
は、0.233mmと細くなった。このものの全体の引
張強力は、4.23kgであった。
【0037】このものでメバルの釣り胴付き仕掛けを作
製した。現行の全体が直径0.330mmなるものと比
較した結果、幹糸との絡まりが無く、釣り針部の弾性も
向上し、良好な結果が得られた。このものを10cmに
カットし、結節部として3cmを残して、他の部分を水
酸化ナトリウム50重量%水溶液中に浸漬し、95℃、
2時間30分間加水分解処理した。加水分解処理された
部分の直径は、0.106mmと細くなった。このもの
の全体の引張強力は、1.05kgであった。加水分解
処理された部分の表面状態は、図1に示す通り粗面化さ
れており、未処理品に比べキラキラ光沢が解消されてい
た。
【0038】(実施例3)極限粘度1.10のポリエチ
レンテレフタレート(三菱化成工業(株)製、ノバペッ
ト1110B)ペレットを、常法に従って溶融紡糸し、
直径0.330mmのモノフィラメントを得た。このも
のの引張強力は7.89kg、結節強力7.00kg、
伸度20.4%であった。このものを35cmにカット
して10本束ね、一方の端を10cmの部分に結束糸を
巻き付けた。また、他方の端2.5cmの部分までをポ
リエチレンフィルムで覆い、同様に結束糸で強く結束し
た。そして、ポリエチレンフィルムで覆った部分を下に
して、図3に示した方法でアルカリ減量処理した。減量
処理条件は、水酸化ナトリウム30重量%とセチルトリ
メチルアンモニウムクロライド0.2重量%からなる水
溶液中に、下から10cmの部分まで浸漬し、95℃、
1.5時間加水分解処理した。次いで下から25cmの
部分までを浸漬し、95℃、2時間加水分解処理した。
その後水洗処理してアルカリを除去した。得られた釣糸
の概略図を図6に示す。図6において、30は太さが4
段に変化した釣糸、31,34はアルカリ減量処理され
ていない部分、32はアルカリ減量処理を2時間行った
部分、33はアルカリ減量処理を3.5時間行った部分
である。またそれぞれの部分の長さl1 は10cm、l
2は15cm、l3 は7.5cm、l4 は2.5cmで
あり、それぞれの部分の太さ(直径)d1 は0.330
mm、d2 は0.286mm、d3 0.233mmは、
4 は0.330mmである。このものの全体の引張強
力は、4.23kgであった。
【0039】得られた釣糸30を用いてメバルの釣り胴
付き仕掛けを作製した。これを図7に示す。現行の全体
が直径0.330mmなるものと比較した結果、幹糸と
の絡まりが無く、釣り針部の弾性も向上し、良好な結果
が得られた。釣糸切れも皆無で、高強力化も実証出来
た。
【0040】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、通
常のポリエステル系モノフィラメント製釣糸では得られ
難かった、柔軟な風合いを有し、キラキラ表面光沢が無
く、水濡れ性が優れた釣糸が、従来の優れた高強力、低
吸水性、高透明性を維持したまま可能になった。
【0041】また、これらの製造法は、加水分解の採用
により、特殊な機械、特殊な紡糸方法なども必要なく、
容易に簡単に安価に製造出来る。また、本発明の応用に
より、釣糸に必要とされる、段々と太くなったり、また
細くなったりするテーパー型釣糸など、任意の形状のも
のを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の太さがテーパー状に変化し
た釣糸の部分拡大図。
【図2】本発明の製造方法の一実施例を示すものであ
り、アルカリ減量処理前の工程を示す斜視図。
【図3】同アルカリ減量処理中の工程を示す断面図。
【図4】同アルカリ減量処理中の工程を示す断面図。
【図5】本発明の実施例1で得られた鮎釣り用ハリス糸
の概略図。
【図6】本発明の実施例3で得られたメバルの釣り胴付
き仕掛け用釣糸の概略図。
【図7】同メバルの釣り胴付き仕掛けの概略図。
【符号の説明】
1 釣糸 2 釣糸の太い部分 3 釣糸の細い部分 4 釣糸の加水分解痕跡(浸蝕痕跡) 5 釣糸の微細な孔(凹部) 10 複数本のポリエステル繊維モノフィラメント束 11 ポリエステル繊維モノフィラメント束の上部 12 ポリエステル繊維モノフィラメント束の下部 13 結束糸 14 ガラス製試験管 15 アルカリ水溶液 16,16´,16”,17 浸漬方向 18,18´ 引き上げ方向 20 太さ変化しているハリス糸 21 アルカリ減量処理されていない部分 22 アルカリ加水分解された部分 30 太さが4段に変化した釣糸 31,34 アルカリ減量処理されていない部分 32,33 アルカリ減量処理を行った部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−128814(JP,A) 実開 平3−10770(JP,U) 実開 平2−67767(JP,U) 実開 昭61−105476(JP,U) 実開 昭60−51984(JP,U) 実開 昭55−42927(JP,U) 実開 昭48−24978(JP,U)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステル系フィラメント繊維からな
    る釣糸であって、前記釣糸は長さ方向に繊度の太い部分
    と細い部分とを有し、前記少なくとも繊度の細い部分に
    は加水分解痕跡が存在することを特徴とする太さ変化を
    有する釣糸。
  2. 【請求項2】 繊度の太い部分が、釣糸の結節部を形成
    する位置に存在する請求項1に記載の太さ変化を有する
    釣糸。
  3. 【請求項3】 繊度の細い部分の表面が、加水分解され
    ていないポリエステル系フィラメント繊維表面に比較し
    て、光沢度が低下している請求項1に記載の太さ変化を
    有する釣糸。
  4. 【請求項4】 加水分解による浸蝕痕跡に微細孔が存在
    する請求項1に記載の太さ変化を有する釣糸。
  5. 【請求項5】 繊度の細い部分が太い部分に比較して1
    0%以上細い請求項1に記載の太さ変化を有する釣糸。
  6. 【請求項6】 繊度の細い部分の表面が、加水分解され
    ていないポリエステル系フィラメント繊維表面に比較し
    て、水濡性が高い請求項1に記載の太さ変化を有する釣
    糸。
  7. 【請求項7】 ポリエステル系フィラメント繊維が、モ
    ノフィラメント繊維である請求項1に記載の太さ変化を
    有する釣糸。
  8. 【請求項8】 繊度の太い部分と細い部分とが、連続的
    テーパー状または段階的に変化している請求項1に記載
    の太さ変化を有する釣糸。
  9. 【請求項9】 ポリエステル系フィラメント繊維からな
    る釣糸の製造方法であって、ポリエステル系フィラメン
    ト繊維をアルカリ性水溶液に浸漬して、繊維表面を加水
    分解し、長さ方向に繊度の太い部分と細い部分とを形成
    することを特徴とする太さ変化を有する釣糸の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 アルカリ性水溶液が、アルカリ金属水
    酸化物を水に溶解させた溶液である請求項9に記載の太
    さ変化を有する釣糸の製造方法。
  11. 【請求項11】 加水分解処理が、室温以上100℃以
    下の温度範囲である請求項9に記載の太さ変化を有する
    釣糸の製造方法。
  12. 【請求項12】 ポリエステル系フィラメント繊維をア
    ルカリ性水溶液に連続的もしくは段階的に浸漬、及び/
    または、連続的もしくは段階的に引き上げる請求項9に
    記載の太さ変化を有する釣糸の製造方法。
  13. 【請求項13】 ポリエステル系モノフィラメント繊維
    を複数本束ねてアルカリ性水溶液に浸漬する請求項9に
    記載の太さ変化を有する釣糸の製造方法。
JP6153419A 1994-07-05 1994-07-05 太さ変化を有する釣糸及びその製造方法 Expired - Fee Related JP2686232B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6153419A JP2686232B2 (ja) 1994-07-05 1994-07-05 太さ変化を有する釣糸及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6153419A JP2686232B2 (ja) 1994-07-05 1994-07-05 太さ変化を有する釣糸及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH089847A JPH089847A (ja) 1996-01-16
JP2686232B2 true JP2686232B2 (ja) 1997-12-08

Family

ID=15562094

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6153419A Expired - Fee Related JP2686232B2 (ja) 1994-07-05 1994-07-05 太さ変化を有する釣糸及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2686232B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4754095B2 (ja) * 2001-05-21 2011-08-24 有限会社よつあみ テーパー状マルチフィラメント糸条およびその製造方法
EP1980574B1 (en) 2006-01-31 2014-06-04 Bridgestone Corporation Oil-extended natural rubber, method for producing same, rubber composition using same and tire
KR100945974B1 (ko) * 2008-01-10 2010-03-09 최성률 낚시 채비
EP2423252B1 (en) 2009-04-21 2014-04-30 Bridgestone Corporation Process for producing resin-extended isoprene rubber, rubber composition obtained by the process, and pneumatic tire

Also Published As

Publication number Publication date
JPH089847A (ja) 1996-01-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4834859B2 (ja) モノフィラメント様製品の製造方法
JP2686232B2 (ja) 太さ変化を有する釣糸及びその製造方法
FR2471427A1 (fr) Procede de fabrication de files de fibres preoxydees de polyacrylonitrile
EP1312702A1 (en) Biodegradable fibers and fabrics, and method for controlling their biodegradability
EP0978579B1 (en) Vinylidene fluoride resin monofilament and fishing line prepared therefrom
JP4754095B2 (ja) テーパー状マルチフィラメント糸条およびその製造方法
KR100216556B1 (ko) 폴리에스테르계 인조모발용 섬유의 제조방법
JPH10110332A (ja) 生分解性モノフィラメントおよびその用途
JP2585820B2 (ja) 漁網用ポリエステル繊維
JPH10280229A (ja) 太物ポリアミドモノフィラメント、その製造方法およびその用途
JP2691957B2 (ja) 水産資材用複合糸とその製法
JPH08214745A (ja) 釣 糸
JPH09262046A (ja) 釣 糸
JPS584816A (ja) ポリエステル表面加工繊維及びその製造方法
KR100252396B1 (ko) 페인트브러쉬용합성수지모노필라멘트의제조방법
SU1229239A1 (ru) Способ получени модифицированной поликапроамидной мононити
JPH0763287B2 (ja) 釣 糸
JP2003189772A (ja) 釣り糸
JPH09154457A (ja) 延縄用幹縄および釣糸
JPH03137229A (ja) 漁網用原糸および漁網
JPS5836267A (ja) 先細ポリエステル繊維の製造法
JPH09250037A (ja) ポリエステル繊維トウおよびその製造方法
JPH1098996A (ja) 鮎釣り用下ハリス
JPH06128830A (ja) 高級綿様風合を有する長短複合糸の製造方法
JPS63315633A (ja) 刺しゅう用ポリエステルミシン糸及びその製造法

Legal Events

Date Code Title Description
S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees