JP2675737B2 - 全反射蛍光x線分析方法および分析装置 - Google Patents

全反射蛍光x線分析方法および分析装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、試料表面に一次X線
を微小な入射角度で照射して、試料の表面層からの蛍光
X線を分析する全反射蛍光X線分析方法および分析装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、全反射蛍光X線分析装置は、
試料表面層に付着した不純物を検出する装置として用い
られている(たとえば、特開昭63-78056号公報参照)。
この種の装置の一例を図8に示す。
【0003】図8において、X線管球のようなX線源5
3の光源53aから出たX線B1は、スリット52を介し
て、湾曲型の分光結晶(分光素子)54で回折され、回
折X線(一次X線)B2が試料50の表面51に微小な入
射角度α (たとえば、0.05°〜0.10°程度) で照射され
る。入射した回折X線B2は、その一部が全反射されて反
射X線B3となり、他の一部が一次X線として試料50を
励起して、試料50を構成する元素固有の蛍光X線B4を
発生させる。蛍光X線B4は、試料表面51に対向して配
置したX線検出器60に入射する。この入射した蛍光X線
B4は、X線検出器60において、そのX線強度が検出され
た後、X線検出器60からの検出信号aに基づき、多重波
高分析器61によって目的とするX線スペクトルが得られ
る。
【0004】この種の全反射蛍光X線分析装置は、回折
X線( 一次X線) B2の入射角度αが微小であることか
ら、反射X線B3および散乱X線がX線検出器60に入射し
にくく、X線検出器60により検出される蛍光X線B4の出
力レベルに比べてノイズが小さいという利点がある。つ
まり、大きなS/N 比が得られ、そのため、分析精度が良
く、たとえば、微量の不純物でも検出できるという利点
がある。このようなことから、この分析方法は、シリコ
ンウェハの表面汚染の分析方法として有効であり、広く
採用されている。
【0005】また、この従来技術では、分光結晶54を
用いて一次X線B1を単色化しており、更に、湾曲型の分
光結晶54を用いていることから、回折X線B2が試料表
面51に集光されて、励起X線の強度が大きくなり、そ
のため、分析精度がより一層向上するという利点もあ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、X線B1を
単色化すると、回折X線B2の強度が低下することか
ら、X線源53から出射する立体角φを大きくして、試
料50に入射する回折X線B2の強度を大きくしたい。
しかし、回折X線B2は、異なる入射角度αで集光して
いることから、入射する回折X線B2の光路の傾が若干
異なるので、立体角φを大きくするに従い入射角度αの
変化Δαも大きくなる。ここで、上記入射角度αは前述
のように0.05°〜0.10°程度の小さな角度に設定する必
要があり、そのため、立体角φを大きくすることはでき
ない。そこで、従来は、回折X線B2の強度を大きくすべ
く高輝度のX線源53を用いて分析を行っている場合が
ある。
【0007】この発明は上記従来の問題に鑑みてなされ
たもので、高輝度のX線源を用いなくても、より精度の
高い分析を行い得る全反射蛍光X線分析方法および分析
装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用】上記目的を達
成するための本発明の分析方法および分析装置の原理を
図1を用いて説明する。まず、請求項1の分析方法の原
理について説明する。図1において、平面ABCDは試
料表面51を含む平面であり、この平面ABCDに対
し、平面GHIJが辺GHにおいて、微小な角度αで交
差している。今、上記平面GHIJに沿って、一次X線
B20 ,B21 を異なる光路から、試料表面51上であ
って辺GH上の一点Oに集光させる。一次X線B20
入射角度αで試料表面51に入射すると、上記一次X線
B20 と平面的な角度βをなす一次X線B21 の入射角
度α1は、下記の(1)式で表わされる。 sinα1= sinα・ cosβ …(1) ここで、角度βが小さい、20°以下の範囲では cosβ
が1に近い値となるから、入射角度α1は入射角度αに
近似した微小な値となる。したがって、角度βが小さい
範囲でO点に一次X線B2n を集光させれば、入射角度
αnを小さな、たとえば0.05°〜0.10°程度の範囲に設
定することができる。
【0009】なお、各一次X線B2n は、一次X線B2
01またはB211のように、平面GHIJに対し微小な角
度の広がりΔφを有していてもよい。また、集光点Oは
必ずしも試料表面51上に厳格に設定する必要はない。
【0010】請求項2〜5の分析装置は、上記原理を応
用したもので、その構成および作用は以下の実施例にお
いて説明する。
【0011】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面にしたがって
説明する。図1〜図3は、この発明の第1実施例を示
す。図2において、X線管のようなX線B1を発生する
光源Fと、試料表面51(図1)上に設定した集光点O
を通る1つのローランド円RO を、上記光源Fおよび集
光点Oを通る弦OFのまわりに回転して、ラグビーボー
ル状の1つの回転面Qを形成する。上記集光点Oを通る
1つの平面GHIJ(以下、この平面を「平面P」とい
う。)と、上記回転面Qとが交差してできる流線形状の
曲線Qp(破線で示す)上には、図3(a)の平面図の
ように、複数の分光結晶(分光素子)1n を配設する。
【0012】図3は分光器(照射装置)5を示す。各ロ
ーランド円Rn 上において、各分光結晶1n の反対側に
光源Fと集光点Oとの中点Nn をとる。各分光結晶1n
の反射面における一次X線B2n を出射する反射点1a
と、上記各中点Nn とを結んだ直線Ln が、当該分光結
晶1n の網面(図示せず)と直交するように、分光結晶
n が配設されている。このように分光結晶1n を配設
することで、光源Fから出射されたX線B1は、各分光
結晶1n により回折されて一次X線(回折X線)B2n
として集光点Oに集まる。なお、網面とは、X線B1を
回折させる結晶の格子面をいう。その他の構成は、従来
例と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を
付して、その詳しい説明を省略する。
【0013】上記構成において、各分光結晶1n は、図
2のローランド円RO を回転した回転面Q上に配設され
ており、そのため、図3(b)の各ローランド円Rn
直径は互いに等しいので、各分光結晶1n における回折
角が互いに等しくなる。したがって、集光点Oには、単
色化された一次X線B2n が集光する。
【0014】一方、各分光結晶1n における反射点1a
が1つの平面P上に配設されているから、一次X線B2
n は、側面から見た入射角度αが等しくなる。そのた
め、図1のように、各一次X線B2n の真の入射角度
α,αnは、平面的な広がりの角度βが小さい範囲で
は、微小な値(0.05°〜0.10°) になり得る。したがっ
て、微小な入射角度α,αnを持つ一次X線B2n が集
光点Oに集まるので、高輝度のX線源を用いなくても、
一次X線B2n の強度が大きくなるから、より精度の高
い分析を行い得る。
【0015】図4は、この発明の第2実施例を示す。こ
の第2実施例は、光源F1および集光点O1がライン状
である場合を示す。図4(b)の光源F1は、図4
(c)の弦O1F1に対して直交する方向に長いライン
状で、かつ、試料表面51を含む平面上に設定されてい
る。各分光結晶1An は、その反射面1bが上記ライン
状の光源F1に対して平行に設定されている。また、上
記各分光結晶1An は、図4(a)の網面1cが図4
(c)の各中点Nn に直交する方向に設定されており、
つまり、反射点1aと中点Nn を結んだ直線に直交する
方向に網面1cが設定されており、これにより、図4
(b)のライン状の光源F1から出射されたX線B1
が、各分光結晶1An で回折され一次X線B2n とし
て、試料表面51(図1)上にライン状に集光する。
【0016】なお、ライン状の集光点O1は、図4
(b)では直線で示しているが、図4(c)のように、
入射角度αが微小であることから、実際には一次X線B
n が入射する方向にも長くなるので、集光点O1はほ
ぼ方形になる。その他の構成は第1実施例と同様であ
り、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その
説明および図示を省略する。
【0017】図5および図6は、この発明の第3実施例
を示す。図5の光源Fを通る平面IJKLと、集光点O
を通る平面P(平面GHIJ)とが交差してできる直線
IJに沿って、図6(b)の分光結晶1Bの反射線1d
を配設する。この反射線1d上の任意の点から、つま
り、上記図5の直線IJの任意の点から、上記光源Fま
での距離と、上記集光点Oまでの距離とは、互いに等し
くなるように設定されている。たとえば、線分P0Fと線
分P0Oは長さが等しく、また、線分P1Fと線分P1Oは長
さが等しく、また、線分P2Fと線分P2Oは長さが等し
い。
【0018】図6(a)の分光素子1Bの網面1cは、
図6(c)のローランド円Ro の弦OFの中点Mに向う
ように湾曲している。つまり、図6(b)の反射線1d
における図6(a)の網面1cの法線は、全て図6
(c)の中点Mを通る。このように、分光素子1Bの網
面1c(図6(a))を設定することにより、光源Fか
ら出射されたX線B1は、分光結晶1Bの反射線1dに
おいて回折されて、一次X線(回折X線)B2n として
集光点Oに集まる。なお、その他の構成は、上記第1実
施例と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号
を付して、その詳しい説明を省略する。
【0019】上記構成においては、分光結晶1Bの反射
線1dがO点を通る図5の平面P上にあるので、図1の
微小な入射角度αをなす平面P上において、異なる光路
から一次X線B2n がO点に集光する。したがって、一
次X線B2n の強度が大きくなって、分析精度が向上す
る。
【0020】また、この実施例では、図6(a)の分光
素子1Bの網面1cが、図6(c)の弦OFの中点Mに
向うように湾曲させればよいから、所定の厚さの分光結
晶1Bを一定の曲率に曲げ、その表面を平滑に研磨する
ことにより、分光結晶1Bを容易に制作することができ
る。
【0021】ここで、図5において、点O,Fを通る直
径の異なる無数のローランド円(図示せず)と、平面P
とが交差して、上記平面P上には無数の流線形状の曲線
Opn (破線で示す)が存在しているので、集光点Oに
集まる一次X線B2n は、たとえば、12Kev 〜18Ke
v 程度の連続X線を含んでおり、単色化されていない。
しかし、検出すべき蛍光X線B4(図1)のエネルギ
が、一次X線B2n のレベルよりも低くければ、図1の
多重波高分析器61で波高分析できるから、分析精度は
低くならない。
【0022】図7は第4実施例を示す。図7(b)のよ
うに、第4実施例は光源F1および集光点O1がライン
状である。3つの分光結晶1C0 ,1C1 ,1C2 は、
反射線1dに沿って設けられている。図7(a)の各分
光結晶1Cn の網面1cは、中点Mに向っており、その
法線が中点Mを通るようになっている。つまり、左右の
分光結晶1C1 ,1C2の網面1cは、中央の分光結晶
1C0 の網面1cに対して傾斜している。その他の構成
は、第3実施例と同様であり、同一部分または相当部分
に同一符号を付して、その説明および図示を省略する。
【0023】なお、上記各実施例では、説明を分かり易
くするために各分光結晶1n ,1An ,1B,1Cn
平板型の分光結晶としたが、分光結晶を図8のように湾
曲させて、図1のように立体角φを持たせてもよい。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、全反射蛍光X線分析において試料表面に対し微小な
入射角度をなす平面上において、20°以下の角度をな
異なる光路から一次X線を集光させて試料に照射する
ので、高輝度のX線源を用いなくても、より精度の高い
分析を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の原理を示す全反射蛍光X線分析装置
を示す斜視図である。
【図2】第1実施例の原理を示す斜視図である。
【図3】(a)は第1実施例の分光器の平面図、(b)
は同側面図である。
【図4】図4は第2実施例の分光器を示し、(a)は図
4(b)のIVa−IVa線断面図、(b)は平面図、
(c)は側面図である。
【図5】第3実施例の原理を示す斜視図である。
【図6】図6は第3実施例の分光器を示し、(a)は図
6(b)のVIa−VIa線断面図、(b)は平面図、
(c)は側面図である。
【図7】図7は第4実施例の分光器を示し、(a)は図
7(b)のVIIa−VIIa線断面図、(b)は平面図で
ある。
【図8】従来の全反射蛍光X線分析装置の概略構成図で
ある。
【符号の説明】
n ,1An ,1B,1Cn …分光結晶、1c…網面、
1d…反射線、5…照射装置、50…試料、51…試料
表面、60…X線検出器、α,αn…入射角度、B1…
X線、B2n …一次X線、F…光源、F1…ライン状の
光源、O…集光点、O1…ライン状の集光点、P…集光
点を通る平面、IJKL…光源を通る平面、IJ…直
線、Rn …ローランド円、Q…回転面、Qp…曲線。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料表面に向って集光する一次X線を微
    小な入射角度で試料表面に照射し、上記試料表面に対向
    するX線検出器により、上記一次X線を受けた試料から
    の蛍光X線を検出して、上記X線検出器での検出結果に
    基づいて上記蛍光X線を分析する全反射蛍光X線分析方
    法であって、 上記試料表面に対し微小な入射角度をなす平面上におい
    て、20°以下の角度をなす異なる光路から上記一次X
    線を集光させる全反射蛍光X線分析方法。
  2. 【請求項2】 光源からのX線を分光素子で回折させ一
    次X線として試料表面に向って集光させるとともに上記
    一次X線を微小な入射角度で試料表面に照射する照射装
    置と、上記試料表面に対向し上記一次X線を受けた試料
    からの蛍光X線を検出するX線検出器とを備え、このX
    線検出器での検出結果に基づいて上記蛍光X線を分析す
    る全反射蛍光X線分析装置において、 上記光源と集光点を通る1つのローランド円を、上記光
    源および集光点を通る弦のまわりに回転して回転面を形
    成し、上記集光点を通る1つの平面と上記回転面とが交
    差してできる曲線上に、複数の分光素子が配設され、 上記光源から出射されたX線が、上記分光素子により回
    折されて上記一次X線として上記集光点に集まるよう
    に、上記分光素子の網面が設定され 上記各分光素子から上記集光点に向かう複数のX線が、
    上記平面上において、上記集光点を中心として20°以
    下の角度をなし ていることを特徴とする全反射蛍光X線
    分析装置。
  3. 【請求項3】 請求項2において、上記光源および集光
    点がライン状である全反射蛍光X線分析装置。
  4. 【請求項4】 光源からのX線を分光素子で回折させ一
    次X線として試料表面に向って集光させるとともに上記
    一次X線を微小な入射角度で試料表面に照射する照射装
    置と、上記試料表面に対向し上記一次X線を受けた試料
    からの蛍光X線を検出するX線検出器とを備え、このX
    線検出器での検出結果に基づいて上記蛍光X線を分析す
    る全反射蛍光X線分析装置において、 上記光源を通る平面と集光点を通る平面とが交差してで
    きる直線に沿って分光素子の反射線を配設し、上記反射
    線上の任意の点から上記光源までの距離と上記集光点ま
    での距離とが互いに等しく設定されており、 上記光源から出射されたX線が、上記分光素子により回
    折されて上記一次X線として上記集光点に集まるよう
    に、上記分光素子の網面が設定されていることを特徴と
    する全反射蛍光X線分析装置。
  5. 【請求項5】 請求項4において、上記光源および集光
    点がライン状で、分光素子が反射線に沿って複数個設け
    られている全反射蛍光X線分析装置。
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