JP2674375B2 - 静止型水中音響模擬標的装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ソーナー装置の試験用
として使用される静止型水中音響模擬標的装置に関し、
特に、水中発音体からの発射音波を受信するとともにそ
の受信音波の周波数を変換した音波を送出する静止型水
中音響模擬標的装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】ソーナー装置は水中の発音体から音波を
送波し、水中の移動物体からの反射音を受信して目標を
検出する。この際、移動物体からの反射音は移動速度に
よるドップラー効果によって周波数変移をともなうた
め、静止型水中音響模擬標的装置は受信した音波の周波
数を変換し、変換後の周波数の音波を水中に送出してい
る。

【０００３】図２は、従来の静止型水中音響模擬標的装
置をブロック図により示している。受波器１は水中発音
体２が水中に送出した発射音波を受信し、同じ周波数の
電気信号（周波数Ｆｔ）に変換する。一方、発振器３は
ドップラー効果による周波数変移分の周波数信号（周波
数Ｆ２）を出力するものであり、当該発振器３の発振出
力と上記受波器１から出力される電気信号とは信号乗算
回路４に入力されている。

【０００４】信号乗算回路４は入力される二信号を乗算
するものであり、両信号の周波数の和である周波数（Ｆ
ｔ＋Ｆ２）の信号と、両信号の周波数の差である周波数
（Ｆｔ−Ｆ２）の信号とを出力する。

【０００５】信号乗算回路４の出力信号は帯域フィルタ
５に入力されており、当該帯域フィルタ５は周波数（Ｆ
ｔ＋Ｆ２）の信号と周波数（Ｆｔ−Ｆ２）の信号とのい
ずれかを出力する。従って、周波数（Ｆｔ＋Ｆ２）の信
号を出力すればドップラー周波数”＋Ｆ２”が得られ、
周波数（Ｆｔ−Ｆ２）の信号を出力すればドップラー周
波数”−Ｆ２”が得られる。

【０００６】帯域フィルタ５の出力信号は送波器６に入
力されており、同送波器６は音波に変換して水中に出力
する。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところで、水中の移動
物体から反射される信号の周波数（Ｆｓ）は、水中の発
音体からの発射周波数（Ｆｔ）と水中の移動物体の速度
（Ｖ）と水中の音速（Ｃ）とにより、

【０００８】Ｆｓ＝（１＋Ｖ／Ｃ）×Ｆｔ

【０００９】なる関係で表される。従って、ＦｓはＦｔ
に正比例することになるので、水中の発音体からの発射
周波数が異なる場合には、ドップラー効果による周波数
変移も変化することになる。

【００１０】しかし、上述した従来の静止型水中音響模
擬標的装置においては、変移される周波数が±Ｆ２と固
定であったため、水中の発音体からの発射周波数が異な
った場合にも変移周波数が変化せず、水中の移動物体の
模擬が正確にはできないという課題があった。

【００１１】本発明は、上記課題にかんがみてなされた
もので、水中の発音体からの発射周波数にかかわらず正
確に水中の移動物体の模擬を行なうことが可能な静止型
水中音響模擬標的装置の提供を目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項１にかかる発明は、水中において水中発音体
から出力される音波を受信し、同受信した音波の周波数
を所定量だけ変換せしめた音波を出力する静止型水中音
響模擬標的装置において、上記水中発音体から出力され
る音波を受信して電気信号に変換する受波手段と、この
受波手段で変換された電気信号に基づいて受信した音波
の周波数を検出する周波数検出手段と、この周波数検出
手段にて検出された周波数を所定の割合で増減せしめた
周波数の電気信号を出力する発振手段と、上記受波手段
と発振手段とから出力される電気信号とを入力して乗算
せしめる乗算手段と、この乗算手段の出力信号における
所定の周波数成分をろ過するフィルタ手段と、このフィ
ルタ手段の出力信号を音波に変換して水中に出力する送
波手段とを備えた構成としてある。

【００１３】

【作用】上記のように構成した請求項１にかかる発明に
おいては、受波手段が水中発音体から出力される音波を
受信して電気信号に変換すると、周波数検出手段はこの
受波手段で変換された電気信号に基づいて受信した音波
の周波数を検出し、発振手段はこの周波数検出手段にて
検出された周波数を所定の割合で増減せしめた周波数の
電気信号を出力する。すると、乗算手段は上記受波手段
と発振手段とから出力される電気信号とを入力して乗算
せしめることにより、受波器にて受信された音波の周波
数を所定の割合だけ増減せしめることとなり、フィルタ
手段はこの乗算手段の出力信号における所定の周波数成
分をろ過するので増加された周波数帯域か低減された周
波数帯域のいずれかを一方を選択してドップラー効果を
再現し、送波手段はこのフィルタ手段の出力信号を音波
に変換して水中に出力する。

【００１４】

【実施例】以下、図面にもとづいて本発明の実施例を説
明する。図１は、本発明の一実施例にかかる静止型水中
音響模擬標的装置のブロック図である。

【００１５】同図において、受波器１１は水中発音体１
２が水中に送出した発射音波を受信し、同じ周波数の電
気信号（周波数Ｆｔ）に変換して乗算回路１３における
一の入力端に入力せしめる。

【００１６】一方、周波数検出回路１４は受波器１１が
出力する電気信号の周波数を検出して同周波数に応じた
電圧信号を電圧減衰回路１５に出力する。電圧減衰回路
１５は周波数検出回路１４が出力する電圧信号を任意の
減衰率で減衰し、同減衰せしめた電圧信号を電圧制御型
可変周波数発振回路（ＶＣＯ）１６に出力して同ＶＣＯ
１６における発振周波数を制御する。なお、これらの電
圧減衰回路１５とＶＣＯ１６とにより発振手段を構成し
ている。

【００１７】ＶＣＯ１６が出力する周波数信号（周波数
Ｆ３）は乗算回路１３における他の入力端に入力され、
乗算回路１３は二信号の乗算することにより周波数がＦ
ｔ±Ｆ３の信号を出力する。

【００１８】乗算回路１３の出力信号は帯域フィルタ１
７に入力され、当該帯域フィルタ１７からは周波数がＦ
ｔ＋Ｆ３かＦｔ−Ｆ３のいずれか一方の周波数信号のみ
が送波器１８に出力され、同送波器１８は入力される周
波数信号に基づいて同じ周波数の音波を水中に発射す
る。

【００１９】次に、上記構成からなる本実施例の動作を
説明する。受波器１１にて受信される音波の周波数がＦ
ｔであると、受波器１１は周波数Ｆｔの電気信号を出力
し、周波数検出回路１４は同周波数Ｆｔに応じた電圧信
号を出力する。電圧減衰回路１５の減衰率をαとする
と、ＶＣＯ１６に入力される電圧はα×Ｆｔであり、Ｖ
ＣＯ１６の出力周波数Ｆ３は、

【００２０】Ｆ３＝ｋ×α×Ｆｔ で表される。従って、

【００２１】ｋ×α＝Ｖ／Ｃ となるように設定すると、帯域フィルタ１７が高い側の
周波数帯域を選択していればその出力周波数は

【００２２】 となり低い側の周波数待機を選択していればその出力周
波数は

【００２３】 となる。

【００２４】すなわち、水中の発音体１２からの発射周
波数Ｆｔに正比例しており、かつ、周波数変移は水中の
移動物体から反射される信号の周波数Ｆｓと等しくなっ
て正確な模擬を果たすことができる。

【００２５】

【発明の効果】以上説明したように本発明は、水中の発
音体からの発射音波の周波数に応じて変移される周波数
が定まるので、同発射音波の周波数にかかわらず正確に
水中移動物体における速度の模擬を行なうことが可能な
静止型水中音響模擬標的装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例にかかる静止型水中音響模擬
標的装置のブロック図である。

【図２】従来の静止型水中音響模擬標的装置のブロック
図である。

【符号の説明】

１１…受波器 １２…水中発音体 １３…乗算回路 １４…周波数検出回路 １５…電圧減衰回路 １６…電圧制御型可変周波数発振回路 １７…帯域フィルタ １８…送波器

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水中において水中発音体から出力される
   音波を受信し、同受信した音波の周波数を所定量だけ変
   換せしめた音波を出力する静止型水中音響模擬標的装置
   において、 上記水中発音体から出力される音波を受信して電気信号
   に変換する受波手段と、 この受波手段で変換された電気信号に基づいて受信した
   音波の周波数を検出する周波数検出手段と、 この周波数検出手段にて検出された周波数を所定の割合
   で増減せしめた周波数の電気信号を出力する発振手段
   と、 上記受波手段と発振手段とから出力される電気信号とを
   入力して乗算せしめる乗算手段と、 この乗算手段の出力信号における所定の周波数成分をろ
   過するフィルタ手段と、 このフィルタ手段の出力信号を音波に変換して水中に出
   力する送波手段とを具備することを特徴とする静止型水
   中音響模擬標的装置。