JP2671894B2 - 走査用レンズ - Google Patents

走査用レンズ

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JP2671894B2
JP2671894B2 JP8132951A JP13295196A JP2671894B2 JP 2671894 B2 JP2671894 B2 JP 2671894B2 JP 8132951 A JP8132951 A JP 8132951A JP 13295196 A JP13295196 A JP 13295196A JP 2671894 B2 JP2671894 B2 JP 2671894B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はレーザービームプリ
ンタ等に用いられる光走査装置の走査レンズ系に関す
る。 【0002】 【従来の技術】レーザービーム等を高速に偏向走査して
画像情報を記録するレーザービームプリンタは、高速、
高解像度、低騒音という優れた特徴を有しており、小型
化低価格化が進むにつれ急速にその需要を増やしてきて
いる。そこで、その重要な構成要素である光書き込みヘ
ッドとして、光走査装置に対しても小型化低価格化の要
求は大きい。光走査装置は大きくわけて光源と偏向器と
走査レンズ系とから成るが、中でも走査レンズ系の単純
化は小型化低価格化に有効である。 【0003】走査レンズ系は偏向器の回動特性にあわせ
て走査面上で光スポットが等速で移動するような歪み、
例えば偏向器が回転多面鏡であって光ビームが等角速度
偏向されている時は偏向角θと像高Yが比例するような
歪みを有し、かつ走査平面上のいたる所で光スポットを
所望の径に均一に結像する機能を有さなければならな
い。さらに回転多面鏡偏向器の場合には多面鏡の各面の
傾きのばらつき(面倒れ誤差)を補償するための面倒れ
補正機能も必要となる。これらの機能を兼ね備えた解像
力の高い高性能な走査用レンズは従来必然的に大型・複
雑で高価なものにならざるを得なかった。 【0004】そこで特開昭54−98627、特開昭5
5−7727、特開昭58−5706等に開示されてい
るように走査用レンズの単玉化が試みられている。とこ
ろが、特開昭54−98627では正弦振動特性を有す
る偏向器に対してはその回動特性を利用して形状等のパ
ラメータの種々の値について幅広く良好に収差補正が可
能であるが、高速性等の点から現在も広く使用されてい
る回転多面鏡偏向器の等角速度回動特性に対してはそれ
に対応するために非球面化しているものの特殊な場合と
してきわめて限られた条件でしか使用できず、光学系の
寸法、光源、必要とするドット径等の種々の要求に柔軟
に対応することができない。 【0005】また、特開昭55−7727では平凸レン
ズでfθレンズを構成しているが、像面湾曲等の点で良
好な結像性能を有しているとはいい難い。また、特開昭
58−5706では正のパワーを有するメニスカスレン
ズでfθレンズを構成しているが、球欠像面湾曲の点で
問題があり、これを解消するために面倒れ補正光学系を
兼ねる円筒レンズを付加しなくてはならない。さらに、
上記3例はすべて面倒れ補正機能を付与するためには新
たにレンズを付加しなければならず、結局単玉レンズで
はなくなってしまう。また光軸長を長くとって偏向角を
狭めることによって収差を許容範囲内に収めることは可
能であるが、光学系全体が大型するため好ましくない。 【0006】ところで、小型化低価格化を考えるうえで
レンズの材質も重要な問題である。従来走査用レンズの
材質にはガラスが用いられるているが回折限界の性能を
要求される光学系であって要求精度が高いため、研磨等
の製造コストが高くつく。そこでポリメチルメタクリレ
ート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン等
のプラスチックをレンズ媒質に用いれば、射出成形によ
る大量生産が可能となるため極めて安価に製造できる。
ことろが光学プラスチック材料は種類が少なくしかもガ
ラスに比べ高屈折率のものがない。従ってレンズ枚数の
削減や光学系の小型化がガラスに比べより困難である。 【0007】これらの点を総合して、材質の屈折率によ
らず単玉でしかも光軸長が短くても収差を良好に補正で
きるような、自由度の大きなレンズ形状が望まれること
がわかる。 【0008】 【発明の解決しようとする課題】本発明は上述のような
問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型で低
価格、しかも高性能な光走査装置用の走査用レンズを提
供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段】 【0010】上記目的を達成する本発明の走査用レンズ
は、偏向器によって偏向された細い光束を被走査平面上
に結像させる走査用レンズにおいて、単玉レンズで構成
され、前記偏向器の固有の回動特性で偏向された光束が
被走査平面上では等速で移動する歪み特性を有し、か
つ、被走査平面上の任意の位置における光束の子午方向
の像面湾曲収差を補正するように、子午平面内の両面の
形状が、両面の非円弧量が走査位置と結像点の2自由度
を拘束するように独立に定められた形の非円弧状に形成
されてなると共に、球欠方向の像面湾曲収差を補正する
ように、前記単玉レンズの両面の少なくとも何れか一方
の子午平面内での非円弧曲線に沿った位置の球欠方向の
曲率が子午方向の曲率とは相関なく変化するように定め
られてなることを特徴とするものである。 【0011】本発明のもう1つの走査用レンズは、偏向
器によって偏向された細い光束を被走査平面上に結像さ
せる走査用レンズにおいて、単玉レンズで構成され、子
午平面内における前記光束が入射する側の面の曲率半径
の符号が、前記子午平面内における前記光束の入射位置
に応じて途中から反転することを特徴とするものであ
る。 【0012】この場合、曲率中心がレンズ面より光束射
出側にあるとき曲率半径が正、光束入射側にあるとき曲
率半径が負とすると、上記の符号の反転は光線高が大き
くなるにつれて途中から正から負に反転することが望ま
しい。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明の原理を図1、図2、図
3、図4を用いて以下に説明する。走査用レンズは、前
述したように偏向器によって等角速度あるいは正弦振動
等の回動特性で偏向されている光束を被走査平面上に像
面湾曲なく結像しまた被走査平面上で像点が等速で走査
されるような歪みを与える機能を有する。例えば偏向器
が回転多面鏡であれば、図1に示されるように光源から
出射した光束は鏡面SM によって多面鏡5の回転に応じ
た偏向角θで反射されている。走査用レンズ1はこの光
束を被走査平面上で座標値Yが偏向角θと比例した点T
I に結像するよう設定される。本発明の走査用レンズは
以下に述べる原理に基づいて図1に示すS1 、S2 の両
面において非球面の特長が高度に利用された、収差が少
なくしかも広角偏向が可能な単玉レンズである。 【0014】本発明に係るレンズ面形状の第1の構成原
理は、走査される光束が非常に細いと仮定して、光束を
主光線の位置と方向と結像距離のパラメータのみで表
し、レンズ面上のある一点はそこを通る主光線のみにつ
いて方向あるいは結像距離を変化させるべく傾きと曲率
が定められている、ということである。これを収差補正
の考え方でいえば、球面収差とコマ収差を無視して像面
湾曲収差と歪曲収差を高次の項まで含めて完全に補正す
るということを意味する。上述の仮定はレーザービーム
プリンタ等の走査光学系では一般に十分成立する。 【0015】さらに走査レンズ系は、任意の偏向角で偏
向された光束の主光線は必ず同一平面上にある(これを
子午面と呼ぶ)から、光束が非常に細いこととあわせ
て、面上で傾きと曲率が指定される点は、子午面とレン
ズ面が交わった曲線上だけでよいことがわかる。従って
本発明の第2の構成原理は子午面上に曲線を創成して、
その曲線上の任意の点において子午面内の傾きと曲率と
が前述の走査用レンズの目的を達しており、さらに曲線
上の任意の点において主光線を含み子午面に垂直な断面
(球欠断面と呼ぶ)の曲率が与えられれば面が形成でき
たとすることである。 【0016】ただし、子午方向の傾きと曲率はそれを連
続的に接続して子午面内のレンズ面位置を形成するため
それぞれ独立には定められないが、球欠断面曲率はそれ
らとは独立に扱える。従って、子午面内のレンズ面形状
のみについて上記第1、第2の構成原理を適用した光学
系も当然本発明の範囲に含まれることは明らかである。 【0017】以下、図2の斜視図を用いて本発明に係る
レンズの構成原理を具体的に説明する。図2において光
束{Li-1 }は面Si によって光束{Li }に変換され
る。光束{Li }のTi から測った結像距離は子午光束
でgmi、球欠光束でgsiとする。一般にgmiとgsiは等
しくない。前述したように光束は非常に細いので光束
{Li }を扱うとき、主光線Lciと子午、球欠それぞれ
の結像距離gmi、gsiだけを考えればよい。さて、面S
i を通過後の主光線Lciの方向は面Si のTi における
法線方向ei で制御することができる。また面Si を通
過後の結像距離gmi、gsiは面Si のTi における子午
断面曲率半径Rmiと球欠断面曲率半径Rsiで制御するこ
とができる。従ってある角度で偏向された光束1本を走
査平面上で等速走査が実現できる位置に結像させる機能
をレンズ面上の1点の位置とその微分量(法線方向と曲
率)で持たせることでできたわけで、それを連結させて
任意の角度で偏向された光束に対応したレンズ面上の各
点に上記の機能を持たせれば目的とする走査用レンズ形
状が定まるわけである。これが前述の第1の構成原理で
ある。 【0018】さて、前述したように主光線Lci等は子午
面上を離れないため、面Si の法線方向ベクトルei
子午面内にあり面の傾きを表す自由度として図2に示す
光軸と法線ベクトルのなす角αi の1自由度でよい。ま
た面Si の子午断面曲率は面の傾きαi の微分量であ
り、面の傾きαi は面Si の子午面上の位置の微分量で
あるから、結局子午面の方向の面の傾きと曲率を指定す
ることは微分方程式を解いて子午面上の2次元曲線を創
成することと同じ意味を持つことがわかる。また、球欠
断面曲率は上記曲線に影響を与えず決定されるものであ
るから、曲線が創成された後その曲線上の各点について
それぞれ決定される。これが第2の構成原理である。 【0019】以上述べた構成原理より走査用レンズが実
現できるわけであるが、それが両非球面の単レンズで実
現可能であることを図3の原理図を用いて説明する。図
3において紙面は子午面を表している。 【0020】まず子午面について考える。いま拘束した
いのは主光線Lciと被走査平面SIの交点TI の座標値
I とTI が結像点であることの2自由度である。例え
ば任意の角度θで偏向されている光束の走査位置YI
拘束するために面の傾きα1を面上の全位置で指定し、
それに従って滑らかに面を接続した形状は境界条件(例
えば光軸との交点P1 の座標値X1 とそこでの傾きが0
であること)を指定すれば、S1 のように1通りに定ま
り、その面での曲率半径Rm1を指定することはできず、
光束は被走査平面上にない点TI ’で結像してしまう。
逆に、結像点を拘束するために面の曲率半径Rm1を面上
の全位置で指定すれば同様に面の傾きα1 を指定するこ
とはできない。このように光線の持つパラメータのうち
ある1つの自由度を偏向角θの任意の値で拘束するため
には1つの面が必要であるから、今、上述の2自由度を
拘束するために、最低2面のレンズ面が必要となる。 【0021】次に球欠光束について考えると、拘束した
いのは球欠方向結像位置gsiの一自由度であって、これ
は子午面内で拘束した状態すなわち曲線の形状を保存し
たまま、子午面上の曲線にそれと垂直な方向に曲率をつ
けることで制御できるため、前述の2面に新たに面を付
け加える必要はない。 【0022】従って必要なレンズ面は2面で、単玉レン
ズでよいことがわかる。また2面ともレンズ面の全位置
で傾き、曲率が指定された面であるから単玉レンズは両
非球面でなければならない。 【0023】さて、ここで上述の構成の単玉非球面レン
ズの面の対称性について考えてみる。子午面内に創成さ
れた2曲線を光軸等何らかの軸を中心にして回転させる
と球欠方向の曲率半径の自由度が失われてしまう。従っ
て回転対称性を持たせると球欠光束の結像を制御できず
球欠像面湾曲収差が生じる。面対称性については、光束
が常に子午面上にあるので明らかに子午面については対
称であり、また光軸を通る光束を偏向角0として偏向角
がθの光束と−θの光束とは同じ条件であるから光軸を
含み子午面と垂直な平面についても対称である。このよ
うに本発明の走査用レンズは対称面が2面ある以外は対
称性がないことによって球欠像面湾曲収差、子午像面湾
曲収差、歪曲特性収差の完全な補正が可能となってい
る。 【0024】以下本発明の走査用単玉両非球面レンズの
形状を実現する具体的方法を図4の原理図を用いて説明
する。まず、子午面上の2曲線の創成方法を説明する。
図4に示すようにレンズ面S1 、S2 はそれぞれ光軸と
の交点P1 、P2 から曲線に沿った距離s1 、s2 とそ
の点での光軸に垂直な方向からの傾き角α1 、α2 との
関係で規定されている。これを直交座標で表現し直す
と、面S1 、S2 について、それぞれP1 、P2 を原点
として光軸をx軸、レンズの高さ方向をy軸とすると、
点T1 、T2 の座標値(x1 ,y1 ),(x2 ,y2
となる。 【0025】いま、図4に示すように、光軸上の出射点
M から偏向角θ、子午結像距離gm0で出射した光束L
i (i=0,1,2)が面S1 、S2 とそれぞれT1
2で、像面SI とTI で交わるとし、以下のように光
束の出射位置、出射方向を表す。すなわち ベクトルPM 1 =(a0 cosθ ,a0 sinθ ) ベクトルT1 2 =(a1 cosθ1 ,a1 sinθ1 ) (2) ベクトルT2 I =(a2 cosθ2 ,a2 sinθ2 ) とする。さらに面S1 、S2 のT1 、T2 での子午断面
曲率半径をそれぞれRm1、Rm2とし、また、光束L1
2 の子午結像距離をgm1、gm2とする。 【0026】以上の記述方法に従って、前述したレンズ
形状の構成原理を定式化することができる。定式化を以
下に示す6項目に分けて説明する。 面S1 、S2 と光束の交点において面の傾きによっ
て光束の方向を制御する。 面S1 、S2 と光束の交点において面の曲率によっ
て光束の結像距離を制御する。 面の光束の交点の座標が等しい。 面上の各点は滑らかに連続している。 光束は走査平面上に結像する。 走査平面上で結像点は等速走査される。 【0027】の屈折面の傾きと光束の方向の関係は、
よく知られた屈折の法則をS1 、S2 面とL1 、L2
交点について適用することによって sin(α1 −θ)=nsin(α1 −θ1 ) :S1 面 (3) nsin(α2 −θ1 )=sin(α2 −θ2 ) :S2 面 (4) と表せる。ただしnはレンズ媒質の屈折率である。 【0028】の面の曲率と光束の結像距離の関係は、
細い光束がある曲率を持った面に斜め入射した時の子午
結像距離の関係式をS1 面、S2 面に適用して ncos2 (α1 −θ1 )/gm1 =cos2 (α1 −θ)/(gm0−a0 )+ {ncos(α1 −θ1 )−cos(α1 −θ)}/Rm1 (5) S1 面 cos2 (α2 −θ2 )/gm2 =ncos2 (α2 −θ1 )/(gm1−a1 )+ {cos(α2 −θ2 )−ncos(α2 −θ1 )}/Rm2(6) S2 面 が得られる。 【0029】については、前出の(1)式で計算され
る面位置の直交座標値と前出の(2)式をもとに計算さ
れる光線の屈折点の直交座標値が等しいとおいて、 の関係がある。ただしX1 は面S1 と光軸の交点のx座
標値、X2 は面S2 と光軸の交点のx座標値である。 【0030】について、面が連続している条件は、
(7)〜(10)式中の積分が可能であるということで
ある。また面が滑らかである条件は、面の傾きα1 、α
2 が微分可能であるということであって dα1 /ds1 =−1/Rm1 (11) dα2 /ds2 =−1/Rm2 (12) なる関係がある。 【0031】の走査平面上で像点が等速走査される条
件は像面と光束の交点(XI ,YI)が XI =a2 cosθ2 +a1 cosθ1 +a0 cosθ (13) YI =a2 sinθ2 +a1 sinθ1 +a0 sinθ (14) の関係があって、かつ走査点位置YI は、偏向器の回動
特性 θ=F(τ) (15) を用いて YI =K・F-1(θ) (16) となる。ただしF-1はFの逆関数、τは時間のパラメー
タ、Kは適当な比例定数である。例えば今、回動特性が
等角速度偏向であった場合、 F(τ)=ωτ ω:角速度 (17) であるから YI =K・θ/ω=f・θ f=K/ω:定数 (18) と書ける。また(13)式のXI は走査面のx座標で光
軸長を表している。 【0032】の走査平面上で結像する条件は、(6)
式中の子午光束結像距離gm2が(13)、(14)式で
表されるa2 に等しければ満足される。即ち gm2=a2 (19) 以上のようにして本発明に係るレンズ形状の構成原理が
(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、
(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、
(14)、(16)、(19)の14式で定式化された
わけだが、以下にこれらを計算することによって実際に
レンズ面形状が何らかの形で直接表現できることを述べ
る。式中に現れた変数のうち偏向角θ、初期子午結像距
離gm0は出射時に与えられており既知である。また光軸
長XI 、面S1 、S2 の光軸との交点位置X1 、X2
等速走査の定数Kは偏向角θによらない定数値である。
従って未知数は残ったθ1 ,θ2 ,α1 ,α2 ,s1
2 ,gm1,gm2,a0 ,a1,a2 ,Rm1,Rm2,Y
I の14個であって、前出の14式はすべて独立である
から、連立方程式は解けて上記14変数は例えば偏向角
θの関数として表現できる。従って例えば面S1 を表現
する時は傾きα1 と光軸から面に沿った距離s1の関係
を偏向角θをパラメータとして対応させればよい。 【0033】ところで、上述の14元連立方程式は非線
形でかつ微分項と積分項を含んでいるため、直接解くこ
とはできず数値解法を用いなければならない。数値解法
としては種々考えられ本発明はそれを限定するものでは
ないが、ここでは一実施例として、微分ベクトル場にお
ける数値積分の方法で実際にこの方程式が数値計算で解
けレンズ形状が決定できることを示しておく。 【0034】微分ベクトル場で解くとは、方程式をすべ
て微分形式で表して現在の変数の値はすべて既知として
それぞれの変数の増分(微分変数)を計算して次の変数
の値を求めるというものである。前出14式を整理して
微分形で表すと、(3)、(4)式は (dα1 −dθ)cos(α1 −θ) =n(dα1 −dθ1 )cos(α1 −θ1 ) (20) n(dα2 −dθ1 )cos(α2 −θ1 ) =(dα2 −dθ2 )cos(α2 −θ2 ) (21) (5)、(6)式と(11)、(12)式をあわせて {ncos2 (α1 −θ1 )/gm1}ds1 ={cos2 (α1 −θ)/(gm0−a0 )}ds1 − {ncos(α1 −θ1 )−cos(α1 −θ)}dα1 (22) {cos2 (α2 −θ2 )/a2 }ds2 ={ncos2 (α2 −θ1 )/(gm1−a1 )}ds2 − {cos(α2 −θ2 )−ncos(α2 −θ1 )}dα2 (23) ただし、gm1は(22)、(23)式を連立させて消去
する。 【0035】また(7)〜(10)式は da0 cosθ−a0 sinθdθ=−sinα1 ds1 (24) da0 sinθ+a0 cosθdθ=cosα1 ds1 (25) da1 cosθ1 −a1 sinθ1 dθ1 +da0 cosθ −a0 sinθdθ=−sinα2 ds2 (26) da1 sinθ1 +a1 cosθ1 dθ1 +da0 sinθ +a0 cosθdθ=cosα2 ds2 (27) (13)、(14)式は 0=da2 cosθ2 −a2 sinθ2 dθ2 +da1 cosθ1 − a1 sinθ1 dθ1 +da0 cosθ−a0 sinθdθ (28) dYI =da2 sinθ2 +a2 cosθ2 dθ2 +da1 sinθ1 + a1 cosθ1 dθ1 +da0 sinθ+a0 cosθdθ (29) (16)式は dYI =K{F-1(θ)}dθ (30) となる。(19)式は単に代入すれば良い。(20)〜
(30)式のうち未知である微分変数はdθ1 ,d
θ2 ,dα1 ,dα2 ,ds1 ,ds2 ,da0 ,da
1 ,da2 ,dYI であって、上記(20)〜(30)
式は(22)、(23)式を連立させて1個の式にした
ものが2次の方程式である以外はすべて1次であるから
容易に解けて、既知の微分変数dθによって例えば dθ1 =Fθ1 (θ1 ,θ2 ,α1 ,α2 ,s1 ,s2 ,a0 ,a1 ,a2 )dθ (31) のように表現できる。これより例えばθ1 は、 と積分すれば偏向角θをパラメータとして表現できる。
ただしθ0 1は初期値である。実際の計算は初期値を
θ1 ,θ2 ,α1 ,α2 ,s1 ,s2 については0、a
0 ,a1 ,a2 については前出のX1 ,X2 ,XI の値
を用いて a0 0=X1 0 1=X2 −X1 (33) a0 2=XI −X2 として、数値積分によって計算できる。 【0036】さて、以上のようにして本発明のレンズ形
状の子午面上曲線が具体化されるわけだが、具体化する
過程で現れた定数n,X1 ,X2 ,XI ,gm0,Kはそ
のまま本発明のレンズ形状のとりうる自由度となる。す
なわち、ある適当な定数の組{X1 * ,X2 *
I * ,gm0 * ,K* }の1つについて1つのレンズ形
状が存在するわけであり、当然本発明はこれらのすべて
のものを含んでいる。 【0037】なお、子午初期結像位置gm0 * を無限大に
設定する、すなわち走査用レンズに入射する前の子午光
束を平行光束としておけば、ビーム径等が制御し易く取
扱い易い光学系となる。本発明の走査用レンズは上述の
ように平行光束に対しても当然適用可能である。 【0038】さて次に、球欠結像距離を制御する球欠断
面曲率半径Rs1、Rs2の決定方法を説明する。(5)、
(6)式に細い光束が斜めに入射した時の子午結像距離
の関係式を示したが、球欠結像距離については、 n/gs1=1/(gs0−a0 )+ {ncos(α1 −θ1 )−cos(α1 −θ)}/Rs1 :S1 面 (34) 1/gs2=n/(gs1−a1 )+ {cos(α2 −θ2 )−ncos(α2 −θ1 )}/Rs2 :S2 面 (35) が成り立つ。被走査平面上に球欠方向の結像点がある条
件は gs2=a2 (36) である。(34)、(35)、(36)式によって球欠
断面曲率半径Rs1,Rs2が決定されるわけであるが、式
中でa0 ,a1 ,a2 ,α1 ,α2 ,θ,θ1 ,θ2
前述の方法によって子午面曲線がすでに決定されている
ため既知であり、gs0は与えられているため未知数はg
s1,gs2,Rs1,Rs2の4個である。従って方程式3個
に対し冗長自由度があることになり、未知数のうち1つ
は適当に定めてよいことがわかる。例えば面形状の簡単
化のため、Rs1を常に無限大にして(34)式の右辺第
2項を0にすれば第1面は球欠方向に曲率を持たない面
になる。 【0039】なお初期球欠結像距離gs0は任意に与えて
よいが偏向器が回転多面鏡の場合、gs0=0ととれば鏡
面の反射点と走査点とが共役像点となって面倒れ補正機
能を持たせることができる。 【0040】 【発明の実施の形態】本発明に係るレンズ形状の構成原
理に基づいてレンズ面形状を計算した実施例を表1から
表9までと図5から図12までに示す。 【0041】前述したように本発明のレンズ形状は、レ
ンズ媒質の屈折率n、初期結像距離g0 、レンズの第1
面、第2面が光軸と交わる位置X1 、X2 、光軸長
I 、走査速度定数Kの6個のパラメータをそれぞれ独
立に変化させることができ、1つのパラメータの値の組
に対して1つのレンズ形状が存在する。従って一見して
全く異質の形状と思われるような実施例が極めて多数存
在し、それらすべてを掲げることは不可能であるため、
ここには代表的な実施例を示すにとどめる。 【0042】以下に示す実施例に共通する計算条件は、 ・レンズ媒質の屈折率 n=1.486 ・偏向点から被走査平面までの光軸長 XI =200mm ・偏向器は回転多面鏡偏向器で等角速度偏向 ・初期子午結像距離gm0は無限大。すなわち走査用レン
ズに入射する前の光束は平行光束である。 ・球欠断面曲率は第2面にのみ付与してある。 ・初期球欠結像距離gs0は0。従って回転多面鏡の反射
点と走査点は共役像点となり、面倒れ補正機能が付与さ
れている。である。 【0043】なお本発明によるレンズ形状は簡単な数値
や数式では表現されず、例えば数値例として結果が求ま
る。そこで便宜上、子午面上の曲線形状については周知
の非球面係数を用いた式 x=(y2 /R)/[1+√{1−(y/R)2 }]+
By4 +Cy6 +Dy8 +Ey10 :ただしxは光軸をx軸、面と光軸の交点を原点にとっ
たときのx座標値。で表し、第2面の球欠断面曲率半径
s2については Rs2=Rs2 0 +Ay2 +By4 +Cy6 +Dy8 +Ey
10 で表す。このように近似した時の真の形状からの誤差は
0.001%〜0.01%程度である。 【0044】表1、表2、表3に第1面S1 の子午平面
上の曲線形状を示す係数Rm1,B1,C1 ,D1 ,E1
を、表4、表5、表6に第2面S2 の子午平面上の曲線
形状を示す係数Rm2,B2 ,C2 ,D2 ,E2 を、表
7、表8、表9に球欠断面方向の曲率半径変化を示す係
数Rs 0 ,As ,Bs ,Cs ,Ds ,Es を、パラメー
タθe ,X1 ,X2 を変化させて計算した値を掲げる。
ただし有効偏向角θe は、前出(18)式の走査速度係
数Kのかわりに用いたパラメータで、有効走査幅を20
0mmと定めると、 θe =200/K (rad) である。X1 ,X2 は前出のとおり、第1面S1 、第2
面S2 が光軸と交わる点の位置である。なお、前述の共
通の計算条件のもとで、パラメータの組θe ,X1 ,X
2 の値が同じものは同一のレンズとなる。 【0045】さらに、表に示した実施例中のいくつかの
ものについて、子午面上の曲線形状の概観を、光路図と
ともに図5から図12までに示した。だだし曲線は光軸
について対称であるため、光軸の逆側は省略してある。
ここで掲載された実施例はすべて本発明の構成原理に従
って、球欠像面湾曲収差、子午像面湾曲収差は完全に除
去されており、また歪み特性は走査点が等速移動するよ
うに完全に定められている。 【0046】だだし、完全というのは理想的な状態であ
って実際のレンズ形状には形状を算出する時の数値計算
誤差、あるいは製造誤差等のため像面湾曲収差、歪曲特
性収差が多少は生じる。もちろんそれらの収差にはある
程度の許容範囲があり、その範囲内であれば走査用レン
ズとして有効であるから、本発明はそれらを除外するも
のではない。 【0047】 【表1】 【0048】 【表2】【0049】 【表3】 【0050】 【表4】【0051】 【表5】【0052】 【表6】 【0053】 【表7】 【0054】 【表8】【0055】 【表9】【0056】図13に本発明に基づくレンズ形状の一実
施例を用いたレーザービームプリンタの光学系の全体像
を表す斜視図を示す。半導体レーザー2から出射した光
束はコリメータレンズ3で平行光束となり、シリンドリ
カルレンズ4によって球欠方向にのみ収束させられて回
転多面鏡偏向器6の鏡面付近で線状で結像する。光束は
多面鏡5の回転によって子午平面内で等角速度偏向さ
れ、本発明による走査用レンズ1を通過した後、感光ド
ラム7上に結像する。球欠方向については鏡面と感光ド
ラム面が共役結像点となっており面倒れ補正系をなして
いる。像点は本発明の走査用レンズ1によって感光ドラ
ム7の軸方向に等速走査され、像面湾曲なく直線上に結
像する。この走査1回につき感光ドラムが1ピッチだけ
回転してそれが繰返されることによって感光ドラム上に
潜像が形成される。 【0057】 【発明の効果】以上述べてきたように、本発明の走査用
レンズは、単玉レンズで構成され、偏向器の固有の回動
特性で偏向された光束が被走査平面上では等速で移動す
る歪み特性を有し、かつ、被走査平面上の任意の位置に
おける光束の子午方向の像面湾曲収差を補正するよう
に、子午平面内の両面の形状が、両面の非円弧量が走査
位置と結像点の2自由度を拘束するように独立に定めら
れた形の非円弧状に形成されてなると共に、球欠方向の
像面湾曲収差を補正するように、単玉レンズの両面の少
なくとも何れか一方の子午平面内での非円弧曲線に沿っ
た位置の球欠方向の曲率が子午方向の曲率とは相関なく
変化するように定められてなり、被走査平面上における
光束の像面湾曲収差が零またはほとんど零となる如く両
面が非球面である単玉レンズであるため、単玉であって
もほとんど収差がなくきわめて良好な結像スポットが得
られまた広角偏向で光軸長の短い走査用レンズが構成で
きる。また同じ理由によりレンズ媒質が低屈折率であっ
ても設計上の何らの支障にならず、従ってレンズ媒質の
プラスチック化が可能となる。また、図1、図8のよう
に、本発明による走査用レンズの入射側の面の曲率半径
の符号が光線高が大きくなるにつれて途中から正から負
に反転するものの場合、走査用レンズをより小型化する
ことができる。従って小型で低価格、しかも高性能な記
録装置を提供することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の光走査装置の概略の構成を示す原理図
である。 【図2】本発明のレンズ形状を構成する原理を説明する
ための原理図である。 【図3】本発明の走査用レンズが単玉両非球面レンズで
実現可能であることを説明するための原理図である。 【図4】本発明の走査用レンズの形状を算出する方法を
説明するための原理図である。 【図5】本発明のレンズ形状の1実施例を示した図であ
る。 【図6】本発明のレンズ形状の別の実施例を示した図で
ある。 【図7】本発明のレンズ形状の別の実施例を示した図で
ある。 【図8】本発明のレンズ形状の別の実施例を示した図で
ある。 【図9】本発明のレンズ形状の別の実施例を示した図で
ある。 【図10】本発明のレンズ形状の別の実施例を示した図
である。 【図11】本発明のレンズ形状の別の実施例を示した図
である。 【図12】本発明のレンズ形状の別の実施例を示した図
である。 【図13】本発明の光走査装置全体の実施例を示す斜視
図である。 【符号の説明】 1…走査用レンズ 2…半導体レーザー 5…多面鏡 6…回転多面鏡偏向器 7…被走査面(感光ドラム)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.偏向器によって偏向された細い光束を被走査平面上
    に結像させる走査用レンズにおいて、単玉レンズで構成
    され、前記偏向器の固有の回動特性で偏向された光束が
    被走査平面上では等速で移動する歪み特性を有し、か
    つ、被走査平面上の任意の位置における光束の子午方向
    の像面湾曲収差を補正するように、子午平面内の両面の
    形状が、両面の非円弧量が走査位置と結像点の2自由度
    を拘束するように独立に定められた形の非円弧状に形成
    されてなると共に、球欠方向の像面湾曲収差を補正する
    ように、前記単玉レンズの両面の少なくとも何れか一方
    の子午平面内での非円弧曲線に沿った位置の球欠方向の
    曲率が子午方向の曲率とは相関なく変化するように定め
    られてなることを特徴とする走査用レンズ。 2.偏向器によって偏向された細い光束を被走査平面上
    に結像させる走査用レンズにおいて、単玉レンズで構成
    され、子午平面内における前記光束が入射する側の面の
    曲率半径の符号が、前記子午平面内における前記光束の
    入射位置に応じて途中から反転することを特徴とする走
    査用レンズ。 3.曲率中心がレンズ面より光束射出側にあるとき曲率
    半径が正、光束入射側にあるとき曲率半径が負とする
    と、前記の符号の反転が光線高が大きくなるにつれて途
    中から正から負に反転することを特徴とする請求項
    載の走査用レンズ。
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