JP2670942B2 - 気体中の帯電微粒子の電気的中和方法及び装置 - Google Patents

気体中の帯電微粒子の電気的中和方法及び装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気体中の帯電微粒子を
電気的に中和する方法に係り、特に家庭、事務所、病
院、実験室、研究室や半導体、薬品、食品、農林、医
薬、精密機械、原子力等各種産業の事業場における、エ
アロゾルその他気体中の帯電微粒子を中和する方法及び
中和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エアロゾルをはじめ気体中の微粒子は帯
電状態にあるものが多く、微粒子同志が凝集したり他の
物体に付着したりしてその取扱いや除去を困難にしてい
た。例えば超微粉体による被覆を行なおうとする場合の
不均一化や、電子製品の基板への付着、接触角の増加等
の問題、家庭や事業所、病院においてはホコリ、菌体、
アレルゲン等の吸着集積等の問題を生じていた。この様
な気体中の微粒子の中和方法として従来は、放電による
方法、放射性同位元素(R.I.)を用いる方法があ
り、主に研究室等で用いられて来た。
【0003】例えばR.I.を用いる方法は、α線源(
241Am、 210Po)或いはβ線源(85Kr、 210
b)などを用いていた。図5に85Krを用いた空気の中
和装置の例を示す。被処理空気中の帯電エアロゾル1は
中和装置2に導入され、支持体3に支持された85Kr4
により周辺に放出された陰イオンと陽イオンにより中和
される。この方法及び装置はR.I.を用いるため、取
扱いに難があり、安全性に問題があった。また法的規制
対象となり、届出承認が必要であり自由に使用できなか
った。また放電による方法も、必ずしも安全とは言えず
一般的な使用には不向きであった。このため、気体中の
微粒子の中和処理は一部の用途に限られていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに帯電微粒子の
問題は前述の様に広範囲に渡っており、その取扱いが容
易で安全な中和方法及び装置があれば、様々な分野にお
いて用いることができる。本発明は、取扱いが容易で安
全性に富み、自由に使用できる帯電微粒子の電気的中和
方法及び装置を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、気体中の帯電微粒子を電気的に中和す
る方法において、帯電微粒子が存在する気体を、該気体
の電荷状態によって、紫外線を照射することにより発生
る陽イオン発生量と、光電子放出材に紫外線を照射す
ることにより放出する光電子放出量とを、それぞれ調整
することにより中和処理することとしたものである。ま
た、本発明では、気体中の帯電微粒子を電気的に中和す
る装置において、紫外線源及び該紫外線の照射により光
電子を放出する光電子放出材と、気体中に陽イオンを発
生させる紫外線源とを処理空間中に備えたこととしたも
のである。
【0006】上記において、光電子(陰イオン)の放出
量を調整するために処理空間中に電場を発生させるため
の電場用電極を設けるのがよい。そして、電場による光
電子放出量と、紫外線の波長及び/又は強度による陽イ
オン発生量とを同時に又は別個に制御して、中和工程で
のイオンバランスを調整することができる。また、紫外
線源は、直接イオン化用と光電子放出用を別々に設けて
も良いが、低波長UVと適当な光電子放出材を選定すれ
ば兼用しても良い。直接イオン化工程と光電子処理工程
を同一の処理容器で行っても、別々に行っても、両工程
のいずれが先でも後でも良い。
【0007】次に、本発明の夫々の構成を詳細に説明す
る。光電子放出材は、紫外線照射により光電子を放出す
るものであれば何れでも良く、光電的な仕事関数が小さ
なもの程好ましい、効果や経済性の面から、Ba,S
r,Ca,Y,Gd,La,Ce,Nd,Th,Pr,
Be,Zr,Fe,Ni,Zn,Cu,Ag,Pt,C
d,Pb,Al,C,Mg,Au,In,Bi,Nb,
Si,Ti,Ta,U,B,Bu,Sn,P,Wのいず
れか又はこれらの化合物又は合金又は混合物が好まし
く、これらは単独で又は二種以上を複合して用いられ
る。複合材としては、アマルガムの如く物理的な複合材
も用いうる。
【0008】例えば、化合物としては酸化物、ほう化
物、炭化物があり、酸化物にはBaO,SrO,Ca
O,Y2 5 ,Gd2 3 ,Nd2 3 ,ThO2 ,Z
rO2 ,Fe2 3 ,ZnO,CuO,Ag2 O,La
2 3 ,PtO,PbO,Al23 ,MgO,In2
3 ,BiO,NbO,BeOなどがあり、またほう化
物には、YB6 ,GdB6 ,LaB5 ,NdB6 ,Ce
6 ,BuB6 ,PrB6,ZrB2 などがあり、さら
に炭化物としてはUC,ZrC,TaC,TiC,Nb
C,WCなどがある。
【0009】また、合金としては黄銅、青銅、リン青
銅、AgとMgとの合金(Mgが2〜20wt%)、C
uとBeとの合金(Beが1〜10wt%)及びBaと
Alとの合金を用いることができ、上記AgとMgとの
合金、CuとBeとの合金及びBaとAlとの合金が好
ましい。酸化物は金属表面のみを空気中で加熱したり、
或いは薬品で酸化することによっても得ることができ
る。さらに他の方法としては使用前に加熱し、表面に酸
化層を形成して長期にわたって安定な酸化層を得ること
もできる。この例としてはMgとAgとの合金を水蒸気
中で300〜400℃の温度の条件下でその表面に酸化
膜を形成させることができ、この酸化薄膜は長期間にわ
たって安定なものである。
【0010】また、本発明者が、すでに提案したように
光電子放出材を多重構造としたものも好適に使用できる
(特開平1−155857号)。また、適宜の母材上に
薄膜状に光電子を放出し得る物質を付加し、使用するこ
ともできる(特願平2−278123号)。この例とし
て、紫外線透過性物質(母材)としての石英ガラス上に
光電子を放出し得る物質として、Auを薄膜状に付加し
たものがある(特願平2−295423号)。これらの
材料の使用形状は、棒状、綿状、格子状、板状、プリー
ツ状、曲面状、金網状等何れの形状でもよいが、紫外線
の照射面積及び処理空間との接触面積の大きな形状のも
のが好ましい。
【0011】光電子放出材からの光電子の放出は、本発
明者がすでに提案したように、反対面、曲面状の反射面
等を適宜用いることで効果的に実施することが出来る
(特開昭63−100955号公報)。光電子放出材や
反射面の形状や構造は、装置の形状、構造あるいは希望
する効果等により異なり、適宜決めることができる。次
に、本発明の特徴である紫外線について述べる。
【0012】紫外線の種類は、その照射により光電子放
出材が光電子を放出し、かつ、微粒子(エアロゾル)や
媒体への紫外線の直接照射により該微粒子や媒体を陽に
帯電させるものであれば何れでも良く、適用分野によっ
ては、殺菌(滅菌)作用を併せてもつものが好ましい。
紫外線の種類は、適用分野、作業内容、用途、装置規
模、形状などにより決めることができる。該紫外線源と
しては、紫外線を発するものであれば何れも使用でき、
適用分野、装置の形状、構造、効果、経済性等により適
宜選択し用いることができる。例えば、水銀灯、水素放
電管、キセノン放電管、ライマン放電管などを適宜使用
できる。バイオロジカル分野では、殺菌(滅菌)波長2
54nmを有する紫外線を用いると、殺菌(滅菌)効果
が併用でき好ましい。
【0013】電場は、光電子放出材からの光電子放出
(陰イオン)を効率良く行うためのものであり、一般的
には2V/cm〜2KV/cmの範囲である。用いる電
極材は、光電子放出材からの光電子放出を電場下で行う
ためのものであり、該材質や形状は電場が形成できるも
のであれば何れでも良く、周知のものが適宜に使用でき
る。電極材の材質は、荷電装置における電極材が好適に
使用でき、例としてはタングステン、Cu−Zn材があ
る。電極材の形状は、装置構造形状、紫外線源の種類や
位置、光電子放出材の種類や形状、位置により適宜に決
めることができる。
【0014】
【作用】微粒子の中和状態は、入口微粒子の正・負の電
荷量に対する光電子放出量(陰イオン)と、紫外線の波
長・強さによる陽イオン発生量のバランスにより決める
ことができる。すなわち、前者(光電子放出量)が相対
的に多い程負に傾き、逆に後者(陽イオン発生量)が相
対的に多い程正に傾く。これらのバランス、即ち光電子
放出量と陽イオン発生量のバランスは、入口微粒子の電
荷状態及び希望する中和の程度により、適宜予備試験等
を行って決めることができる。例えば、陰イオンの相対
割合を多くしたい場合は、一般的には電場を強くする
か、あるいは電場を強くし、更に波長の長い紫外線を用
いると効果的である。一方、陽イオンを多くしたい場合
は、上記の電場を弱くするか、あるいは電場を弱くし、
更に波長の短い紫外線を用いるか、又は媒体ガスをイオ
ン化が容易なガス、例えばN2 、Ar等に変更すると効
果的である。
【0015】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれに限定されない。 実施例1 図1は、本発明の荷電微粒子の電気的中和装置の一例を
示す概略断面図である。図1では同一装置内で陽・陰両
イオンを放出させて荷電微粒子(エアロゾル)を中和す
る装置を示す。図1において、入口からの電荷を有する
微粒子12は、光電子放出材13、紫外線ランプ14、
電極材15からなる中和装置11により中和されて、電
位が低い微粒子16となって排出される。即ち、入口の
電荷を有する微粒子12は電場下で紫外線ランプ14の
照射を受けた光電子放出材3から放出される陰イオンで
ある光電子17及び紫外線ランプ14からの紫外線の直
接的照射作用による陽イオンの発生により電荷が奪われ
中和される。
【0016】この実施例1では、光電子放出材としてC
u−Zn材に金メッキしたものを、紫外線源として重水
素ランプを用い、該ランプに波長選択フィルタ(例、2
20nm以下のカットや250nm以下のカットができ
る低波長紫外線カットフィルタ)を設置し、適宜使用で
きるようにしたものを、また電場の強さとして20V/
cm〜200V/cm可変なものとし、予め測定した入
口の微粒子の電荷状態により適宜夫々を出口の微粒子が
中和するよう設定できるようにしている。また、この中
和装置11は図2のように構成しても当然良い。このよ
うに光電子放出材13は必ずしも被処理気体層をはさん
でUVランプ14と対向する必要はない。図1の中和装
置では、同一装置内で陽、陰両イオンを同時に放出させ
て中和させるものであるが、図4のように夫々のイオン
を個別に放出させて中和させるものであっても良い。
【0017】例えば、このような実施形態として上流で
陰イオンの放出を行い、下流で紫外線照射のみを行うも
の、あるいは、上流で紫外線照射を行い、下流で陰イオ
ンの放出を行うものでも良い。これらの装置の形態、光
電子放出材、紫外線源の種類、及び電場の強さは適用分
野、試料の種類、装置の規模、試料微粒子の電荷の状
態、希望する中和の程度などにより適宜予備試験や検討
を行い、決めることができる。
【0018】実施例2 図3は、紫外線源を内部に設置した中和装置11の例で
ある。夫々の記号は12:入口の電荷を有する微粒子、
13:光電子放出材、14:紫外線ランプ、15:電
極、16:中和微粒子、17:光電子であり、その機能
は実施例1と同じである。
【0019】実施例3 前記、図1及び図3の例では、中和器の中に被中和物を
導入して中和を行っているが、被中和物を中和器の出口
に導入し、中和器からの放出イオンに暴露することによ
っても同様に中和(除電)できる。(図示せず)
【0020】実施例4 図1に示した中和装置の出口に帯電プレートモニタを設
置し、該モニタ上の金属板で、先ず残留電位が0Vにな
るように予め中和装置の放出イオンのバランスを調節し
た。次に、中和装置出口に予め帯電させた試験片を置
き、中和器からの放出イオンを暴露させ、電位を調べ
た。 光電子放出材 : Cu−Zn板に金メッキ 紫外線ランプ : 重水素ランプ 電 極 : Cu−Zn(網状) 電場強さ : 35V/cm 中和器大きさ : 1リットル 試 料 :予め銅製のローラで摩擦して帯電させた
アクリル樹脂、PVC 試料の電位の測定: 表面電位計 結果
【0021】
【表1】
【0022】実施例5 実施例2の中和装置に粒子発生器より発生させた微粒子
を1リットル/minで導入し、除電について調べた。 光電子放出材 : Cu−Zn板に金メッキ 紫外線ランプ : 重水素ランプ 電 極 : Cu−Zn(網状) 電場強さ : 35V/cm 中和装置大きさ: 1リットル 粒子発生器 : アトマイザ(懸濁液の噴霧式) 発生微粒子 : 0.5μmアクリル粒子、0.5μ
mPSL 微粒子の帯電量の測定: 帯電プレートモニタ
【0023】除電効果の測定は、紫外線の点灯並びに電
場の印加のoffとONの場合の中和装置出口の微粒子
を含むガス流を帯電プレイトに暴露させ、それらの帯電
量を比較することにより行った。 結果
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】本発明により、次のような効果を奏す
る。 (1)取扱いが容易で、且つ安全な中和方法及び装置が
提供された。 (2)R.I.を使用せず、高圧電流も不要なためどこ
でも自由に使用できる。 (3)帯電微粒子の性状に合わせた中和(除電)ができ
る。 (4)従って、微粒子の単分散性、ハンドリング、除去
の容易性が向上し、帯電微粒子の中和技術の適用分野が
拡大する。例えば、次の様な分野への適用が考えられ
る。 超微粉体精製装置(ひいてはそのコーティング技
術) エアロゾル発生器 空間の清浄装置及び/又はクリーンルーム技術(電
子部品、半製品、基材等の製造空間や無菌室等) 空気清浄機の性能向上等
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中和装置の一例を示す概略断面図。
【図2】本発明の中和装置の他の例を示す概略断面図。
【図3】本発明の中和装置の他の例を示す概略断面図。
【図4】本発明の中和装置の他の例を示す概略断面図。
【図5】公知のR.I.を用いた中和装置の概略断面
図。
【符号の説明】
11:中和装置、12:荷電微粒子、13:光電子放出
材、14:紫外線ランプ、15:電極材、16:中和微
粒子、17:光電子

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気体中の帯電微粒子を電気的に中和する
    方法において、帯電微粒子が存在する気体を、該気体の
    電荷状態によって、紫外線を照射することにより発生す
    る陽イオン発生量と、光電子放出材に紫外線を照射する
    ことにより放出する光電子放出量とを、それぞれ調整す
    ることにより中和処理することを特徴とする気体中の帯
    電微粒子の電気的中和方法。
  2. 【請求項2】 気体中の帯電微粒子を電気的に中和する
    装置において、紫外線源及び該紫外線の照射により光電
    子を放出する光電子放出材と、気体中に陽イオンを発生
    させる紫外線源とを処理空間中に備えたことを特徴とす
    る気体中の帯電微粒子の電気的中和装置。
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