JP2666822B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2666822B2
JP2666822B2 JP8160221A JP16022196A JP2666822B2 JP 2666822 B2 JP2666822 B2 JP 2666822B2 JP 8160221 A JP8160221 A JP 8160221A JP 16022196 A JP16022196 A JP 16022196A JP 2666822 B2 JP2666822 B2 JP 2666822B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気記録媒体、特に
磁性層の乾燥膜厚みが1.0 μm 以下である超薄層の磁気
記録媒体に関し、更に、詳しくは非常に電磁変換特性に
優れ、かつ歩留りが良好な生産特性の優れた磁気記録媒
体に関する。特に本発明は磁気記録媒体、特に磁性層厚
みが1.0 μm 以下の高密度な薄層磁気記録媒体に関し、
更に詳しくは本発明は下層として非磁性層を有する磁気
記録媒体、特に電磁変換特性、走行性及び耐久性が改良
された磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ビデオテープ、オーディオテー
プ、磁気ディスク等の磁気記録媒体としては、強磁性酸
化鉄、Co変性酸化鉄、CrO2 、強磁性合金粉末等を
結合剤中に 分散した磁性塗布液を非磁性支持体に層設
して成る記録媒体が広く用いられている。近年、記録の
高密度化に伴って記録波長が短くなる傾向があり、その
結果、磁性層の厚さが厚いと出力が低下する等の記録再
生時の厚み損失の問題が大きくなっている。このため磁
性層の厚さを薄くすることが行われているが、磁性層厚
みを約2μm 以下に薄くすると磁性層表面に支持体の表
面性の影響が現れ易くなり、電磁変換特性が悪化する傾
向があった。
【0003】そのため非磁性支持体表面に非磁性の厚い
下層を設けた後、磁性層を上層として設けることによ
り、前述した支持体の表面粗さによる問題を解消すると
共に磁性層を薄層とすることによって、厚み減磁を減ら
し高出力を達成しようとする試みが提案された。例え
ば、特開昭 62-154225号公報では磁性層の厚さを 0.5μ
m以下にするとともに磁性層の表面電気抵抗が高くなる
のを防止するため、磁性層と基体との間に、該磁性層の
厚さ以上の厚さを有する導電性微粉末を含む下塗り層を
設けた磁気記録媒体が提案されている。又、特開昭 62-
222427号公報には支持体と、該支持体上に設けられた平
均粒径が 0.5〜3μm の研磨剤を含有する下塗り層と、
該下塗り層の上に設けられた強磁性粉末を含有した膜厚
1μm 以下の磁性層を具備した磁気記録媒体が提案さて
いるが、これは下塗り層中の研磨剤の一部分を磁性層に
突出させることにより、磁気記録媒体の磁気ヘッドクリ
ーニング作用を併せ持つようにしたものである。このよ
うに磁性層を薄くして高密度記録を達成し、同時に下層
の非磁性層に帯電防止を図るためのカーボンブラックを
含ませたり、クリーニング特性や耐久性の向上を図るた
めに研磨材を添加したりしている。
【0004】しかながら、従来の技術は、非磁性支持体
に先ず下層の非磁性層を塗布し、乾燥してから場合によ
って、カレンダー処理をしてから上層の磁性層を設けて
いるため、製造工程が煩雑であると共に以下のような問
題があった。即ち、磁性層を薄層化するためには、塗布
量を減らす、もしくは磁性塗布液に溶剤を多量に加えて
濃度を薄くすることが考えられる。前者の場合、塗布量
を減らすと塗布後に十分なレベリングの時間がなく、乾
燥が始まるために、塗布欠陥、例えばスジや刻印のパタ
ーンが残るといった問題が発生し、歩留まりが非常に悪
くなる。後者の場合、磁性塗布液の濃度が希薄である
と、乾燥膜に多数の微細孔から成る空隙が多く形成さ
れ、十分な強磁性粉末の充填度が得られないこと、又、
該空隙が多いために塗膜の強度が不十分であること等、
種々の弊害をもたらす。これらの問題を解決する一つの
手段に、特開昭63-191315 号公報に記載されているよう
に、同時重層塗布方式を用いて下層に非磁性の層を設
け、濃度の高い磁性塗布液を薄く塗布する方法が提案さ
れた。
【0005】この同時重層塗布方式又は逐次湿潤塗布方
式、即ち下層が湿潤状態にある間に上層を同時又は逐次
に塗布する所謂 WET on WET 塗布方式は、既に磁性層の
重層塗布で様々な検討が為されている。しかしながら下
層の非磁性層にこの技術を応用しても同じように良好な
結果が得られなかった。つまり、 WET on WET 塗布方式
により下層の非磁性層と上層の磁性層を層設すると、こ
れら両層の界面に乱れが生じ、表面粗さを大きく劣化さ
せた。
【0006】又、支持体表面に非磁性の厚い下層を設け
た後、上層として磁性層を層設すると、支持体の表面粗
さの影響を解消することができるが、ヘッド摩耗や耐久
性が改善されないという問題があった。その要因とし
て、非磁性下層に熱硬化系(硬化系)樹脂を結合剤とし
て用いているので、下層が過剰に硬化し、その結果、磁
性層とヘッドや他の部材との接触が無緩衝状態で行われ
ることや、このような下層を有する磁気記録媒体全体の
可撓性がやや低い等のことが考えられる。これを解消す
るために、下層に非硬化性(熱可塑性)樹脂を結合剤と
して用いることが考えられるが、従来の方式では、下層
の塗布乾燥後に磁性層を上層として塗布すると、下層が
上層の塗布液の有機溶剤により膨潤し、上層の塗布液に
乱流を起こさせる等の影響を与え磁性層の表面性を悪く
し、電磁変換特性を低下させる等の問題を生じる。
【0007】又、磁気記録媒体の記録密度を向上させる
ために、短波長記録が進んでおり、8mmビデオテープで
記録波長は0.54μm に達している。これに対応する磁気
記録媒体として強磁性金属薄膜を用いたものが実用化さ
れている。金属薄膜磁気記録媒体は磁性層の厚みが非常
に薄いため、厚みによる損失が小さく、このため非常に
出力の高い媒体を得ることができる。しかし、これらの
媒体は金属を非磁性支持体上に蒸着して製造するため、
従来の塗布型磁気記録媒体に較べて大量生産性に劣り、
又、金属薄膜であるため、酸化され易いなど長期保存性
の面で問題を持っている。これらの問題を回避するため
に、従来の塗布型磁気記録媒体の磁性層を薄層化するこ
とが望まれてきた。
【0008】しかしながら、上層の磁性層の厚みを 1.0
μm 以下の薄層になるように塗布、乾燥しようとする
と、磁性液を大量の溶剤で希釈せねばならず、その結
果、磁性液が凝集し易くなる。又、乾燥時に大量の有機
溶媒が蒸発するので、強磁性粉末の配向性が乱れ易く、
磁気記録媒体では配向性が悪く、薄層化を達成しても、
配向性悪化と表面性悪化のために充分な電磁変換特性を
確保することが困難である。又、乾燥過多により多くの
微細孔から成る空隙が発生するために、磁性膜の強度が
弱く、走行耐久性の面でも良好な結果が得られなかっ
た。配向性を向上させ、乾燥膜の空隙を少なくするため
に、希釈する有機溶剤を減らすと塗布安定性が悪化して
しまう。
【0009】この様な問題に対処する手段として非磁性
の粒状研磨剤、またはフィラーを下塗層に含ませること
が特開昭 62-222427号、特開平2-257424号等の各公報に
提案されている。しかしながら、これらの技術の問題点
として、磁性層と非磁性層を同時に塗布し、配向処理す
ると、配向磁場による磁性体の回転運動のため両層の界
面での混合が発生し、その結果、表面性の低下と配向不
足が生じて、充分な電磁変換特性が得られない。
【0010】非磁性の鱗片状粒子として、グラファイト
を用いた導電性中間層を形成させることによって、上層
の磁性粒子の配向性を改善することが特開昭55-55438号
公報に提案されている。しかしながら、この中間層は、
配向性の改善がなされるが、グラファイト自身には膜の
補強効果がなく、耐久性が不十分であるため、モース硬
度5以上の無機粉体を混合することが特開昭 60-125926
号公報に提案されている。又、非磁性の針状粒子として
針状の蓚酸塩を用いた補強層を形成させることによっ
て、上層の磁性粒子の配向性を改善することが特公昭58
-51327号公報に提案されている。
【0011】これら提案により配向性向上と耐久性の確
保はなされるが、実際に媒体を製造する場合、鱗片状粒
子はスタッキングを起こし易く、又、蓚酸塩のような針
状粒子は結合剤への分散性が低く、磁性面の平滑性を損
なうことが判明した。又、磁気記録媒体は高密度化、高
出力化のためにヘッドとのスペーシングロスを低減させ
る必要があり、非常に平滑な表面性が望まれている。こ
のため、直接表面に出ていない下層の非磁性層も極力分
散性の向上が望まれ、前述したように磁性層を薄層化す
ると、下層の非磁性層の分散性は同時重層した場合の表
面性に寄与する割合がさらに増してきている。鋭意検討
した結果、同時重層において、単に下層のみの分散性を
向上させても、表面が荒れることが判明した。
【0012】又、磁性層の保磁力HCが低いと自己減磁損
失が大きく、短波長記録には適さないので、相当の保磁
力HCを有することが必要である。この様な目的に適応で
きる手段として、非磁性支持体と磁性層の間に厚さが
0.5μm 〜5.0 μm の下塗層を設け、磁性層の保磁力HC1
000Oeにすることが、特開昭 57-198536号公報に提案さ
れている。しかしながら、従来公知の技術では、この目
的を達成するには次にあげる問題がある。前述の特開昭
57-198536号公報に開示されているような、上下両層の
同時重層塗布を行なうと、両層の混合が起きて表面性が
悪くなるばかりか配向が乱れる。又、同時重層塗布にお
ける配向性の向上技術として、特開平 3-49032号公報に
カーボンブラックを分散した層を下層に用い、多段配向
をすることが開示さているが、カーボンブラックのよう
な真比重の小さなフィラーは、配向時の磁性体の回転運
動によって、同時重層塗布直後の配向処理で両層の界面
が乱れ、面内方向に測定した角形比は高いものの、同発
明の目的である磁性層法線方向の残留保磁力の改善は不
十分であった。
【0013】この様な技術に対する公知技術は、特開昭
62-1115号公報に開示されているが、しかしながら、同
時重層塗布において、この公知技術を適応すると次のよ
うな問題がある。即ち、非磁性の下層に低比重のカーボ
ンブラックを用いて同時重層塗布をすると、塗布過程あ
るいは、配向過程において該非磁性下層と上層の磁性層
との混合、あるいは乱流により両層界面の乱れを引き起
こす。このような両層間の混合、乱れは磁性層中の磁性
体の配向性を極度に低下させる。
【0014】更に長軸長が短く、且つ針状比の小さい磁
性体は流動配向し難いので、磁性体の配向性は更に低下
し、充分な電磁変換特性が得られなくなる。近年、磁性
層に含まれる磁性体は高密度化のために微粒子化が進ん
でいる。微粒子にすることにより、磁性層の強度が劣る
ようになり、例えば製造工程やビデオデッキ内で高いテ
ンションを与えられるとテープが伸びてしまい、スキュ
ー(Skew)歪が大きくなる。このSkew歪対策のために、支
持体の熱収縮率を小さくしたり強度を高くすることが図
られているが、それにも限界がある。又、同時重層塗布
方式を採用すると、逐次重層塗布方式に比べて熱収縮率
が大きくなりSkew歪が増加することも問題になってい
る。これは、逐次重層塗布の場合、下層塗布後カレンダ
ーや硬化処理して下層を硬くして媒体の伸縮を抑制した
が、同時重層塗布方式では下層と上層を一度に塗布する
ため、下層によって媒体の伸縮を抑制することができな
いからである。特開昭 63-187418号、特開昭 63-191315
号等の各公報に同時重層塗布方式による発明が開示され
ているが、このような欠点があった。
【0015】又、同様に長時間記録及び又は再生を図る
ためにテープ厚みを薄くしている傾向もある。テープ厚
みを薄くするとテープスティフネスが低下して、ヘッド
との良好な接触が保てなくなり、電磁変換特性の低下を
来すことになる。特に、近年普及している8mmビデオテ
ープや VHSの長時間テープでは全厚みが14μm 以下のよ
うに薄いため、ヘッド当りを確保することが困難になっ
ている。従来、媒体厚みが厚い場合、むしろ下層の非磁
性層の強度を下げて滑らかな接触状態を保つことが効果
的であったが、近年の記録再生装置に使用される薄手テ
ープは、下層の非磁性層のスティフネスを高くしない
と、回転ヘッドに対する接触所謂ヘッド当りを確保でき
難くなっている。非磁性支持体の延伸方法でこのスティ
フネスを制御する方法もあるが、幅方向スティフネスが
低下して走行耐久性に好ましくない。
【0016】特開昭 63-191315号公報に示されているよ
うにヘッド当りを良好にするために、下層の非磁性層に
ポリイソシアネートを含ませないことに効果を認めた
が、そのため高温高湿の保存性に劣る結果となってい
る。従って、保存性を重視しないシステムでは有効であ
るが、業務用やデータ保存のような保存性を重視するシ
スムでは使用し難い方法である。特開昭63-187418 号公
報についても同様に磁性層を薄層化し、電磁変換特性を
向上させることが開示されているが、該発明では電磁変
換特性上未だ不十分なものがあった。特開昭50-803号公
報にもモース硬度6以上の細粒状非磁性顔料を磁性層と
支持体との間に設けるという発明があるが、この発明の
骨子はアルミニウム基盤をモース硬度6以上の非磁性粉
体で研磨して基盤の平面性を増すことを目的としてい
る。又、高C/N を達成するために、40 m2 以上の比表面
積を有する強磁性粉末を、遊離一塩基性脂肪酸を含有す
るバインダー中に分散せしめて9nm以下の RMS表面粗さ
の磁性層を層設することが特開昭 61-253633号公報に開
示されているが、この記録媒体は磁性層のみの単層構造
で、しかもその磁性層の厚さの記載が認められないもの
であった。
【0017】又、これらの方法では、近年の磁気記録の
長時間化及び高密度化に伴う磁気記録媒体の薄層化の要
請に答えることが困難であり、且つ優れた電磁変換特性
と走行耐久性を両立することが不十分であった。特に薄
手テープで走行耐久性を向上させるにはテープエッジダ
メージを少なくすることが必要であり、特開昭 63-1913
15号、特開昭 63-187418号等の各公報に開示された発明
では不十分であった。
【0018】次に、上層が磁性層で下層が非磁性層で、
且つ WET on WET 塗布方式で磁気記録媒体を得ることに
ついて、種々の特許出願がされている。例えば特開昭 5
0-104003号公報では、WET on WET 塗布方式を示唆する
記載はあるが非磁性層はカーボンブラックのみの例であ
り、構造粘性が強すぎて、界面の乱れが激しかった。
【0019】又、特開昭 62-212922号公報(米国特許第
916024号明細書)に、導電性層(中間層)にカーボンブ
ラックの5%〜25%の強磁性粉末を含有する磁気記録媒
体が開示されている。これはカーボンブラックの分散性
を改良するために加えているものであるが、中間層に加
える強磁性粉末は磁性層中のものと同程度のものを使用
しているため、界面の乱れは良好に防止することができ
なかった。又, 特開昭62-214524号公報に、隣接した複
数層の各塗布液組成の溶媒及び溶質に対し相互溶解性を
有するように各塗布液組成を選定し、WET on WET 塗布
方式で塗布、乾燥する磁気記録媒体の製造方法が開示さ
れている。しかしながら、上層が磁性層、下層が非磁性
層の組合せの例示はあるが、結合剤のみの例であり、又
カーボンブラックも中間層に含むことを示唆はしている
が、このような開示に基づいては界面の乱れを解消する
ことができなかった。又、特開昭 62-241130号公報(米
国特許第 4839225号明細書)に、中間層が水酸基及び又
はアミノ基を含む結合剤の少なくとも1つを含み且つ該
磁性層がイソシアネート化合物を含む磁気記録媒体であ
り、これは両層を化学的に結合させて中間層と磁性層の
密着強度を向上させることを開示している。中間層には
カーボンブラックを添加してもよいこと及び WET on WE
T 塗布方式により塗布しても良いとしているが、このよ
うな開示では界面変動を解決することができなかった。
【0020】更に、特開昭63-88080号公報(米国特許第
4854262号明細書)に、ドクターエッジを改良した塗布
装置が開示されている。この中には高剪断速度(104
ec -1)での粘度の開示はあるが、単に上層液及び下層
液の粘度を示したに過ぎず、このような開示では界面変
動を充分抑えることができなかった。又、特開昭 63-14
6210号公報に、下層の磁性層又は非磁性層の結合剤が非
硬化系結合剤であり、最上層の磁性層の結合剤が電子線
硬化型樹脂である磁気記録媒体が開示されている。しか
しながら、下層非磁性塗料にはカーボンブラックを含ん
だ例のみであり、界面の乱れを解決することができなか
った。更に、特開昭 63-164022号公報に、エクストルー
ジョン型塗布ヘッドのスロット内で磁性液層を中央に磁
性液層より低粘度の非磁性液層をスロット前後壁面側に
形成して多重層の押出塗布をする磁性液の塗布方法が開
示されている。高い粘度の磁性層液を低い粘度の非磁性
層のバインダー溶液で包み、高速薄層塗布適性の増進を
図ったものであり、磁性層塗布液ビードと塗布ヘッド間
の間隙を少なくする目的である。このような開示のみで
は界面の乱れを充分解決することができなかった。又、
特開昭 63-187418号公報(米国特許第 4863793号明細
書)に、上層磁性層に含まれる強磁性粉末の透過型電子
顕微鏡による平均長軸長が0.30μm 未満、X線回折法に
よる結晶子サイズが 300Å未満である磁気記録媒体が開
示されている。下層の非磁性層にはカーボンブラック、
グラファイト、酸化チタンなどを含むことができると開
示され、具体例としてはα−Fe2 3 を100 重量部と
導電性カーボン10重量部の組合せが開示されている。し
かしながら、カーボンの使用量が少ないこと、α−Fe
2 3 の粒子サイズが記載されていないため、これら公
報の開示では界面の乱れを十分解決することができなか
った。
【0021】更に、特開昭 63-191315号公報(米国特許
第 4963433号明細書)に、下層の結合剤が熱可塑性結合
剤であり、且つ下層の厚さが乾燥厚みで0.5 μm 以上で
ある磁気記録媒体が開示されている。下層非磁性層に含
まれる非磁性粉の具体例としては、前記特開昭63-18741
8 号公報と同じくα−Fe2 3 を100 重量部と導電性
カーボン10重量部の組合せが開示されている。しかしな
がら、カーボンの使用量が少ないことやα−Fe2 3
の粒子サイズが記載されていないため、これらの公報の
開示では界面の乱れを解決することができなかった。
【0022】更に、特開平2-254621号公報に、カーボン
ブラックを主成分とする非磁性層を設け、その上にFe
−Al系強磁性粉末を含む磁性層を WET on WET 塗布方
式で形成した磁気記録媒体が開示されている。しかしな
がら、下層の例示はカーボンブラックのみであり、これ
では構造粘性が強すぎて、界面の乱れを解決することが
できなかった。
【0023】更に、特開平2-257424号公報に、非磁性層
に平均粒径が50 mμ以上のフィラーを含む磁気記録媒体
が開示されている。フィラーとしては、カーボンブラッ
クやAl2 3 ,SiCのような研磨剤を挙げている。
しかしながら、その具体例はカーボンブラックのみ、A
2 3 のみ、SiCのみの使用であり、このような組
合せでは界面の乱れを解決することができなかった。
【0024】次に、特開平2-257425号公報に、動摩擦係
数が0.25以下で、且つ表面比抵抗が1.0 ×109 Ω/sq 以
下である複数の層を設けた磁気記録媒体が開示されてい
る。しかしながら, 下層の非磁性粉の例示はSnO2
み、カーボンブラックのみであり、界面の乱れを解決す
ることができなかった。又, 特開平2-260231号公報に、
非磁性支持体上に第1の非磁性層と、第1の磁性層と、
第2の非磁性層と、第2の磁性層とがこの順に積層され
ている磁気記録媒体が開示されている。この非磁性層は
結合剤のみの例示であり、界面の乱れを解決することが
できなかった。
【0025】更に、特開平 3-49032号公報(米国特許第
5051291号明細書)に、磁性層の膜厚が1.5 μm 以下
で、且つ該磁性層の角形比が0.85以上である磁気記録媒
体が開示されている。これは多段配向により角形比を向
上させるものであるが、下層はカーボンブラックのみを
使用する層であり、構造粘性が強すぎて界面乱れを解決
することができなかった。
【0026】近年、Hi8 テープの研究がされ、その究極
のニーズはME(蒸着)テープとMP(メタル)テープのメ
リットの両立にあり、それをMPテープで実現するにはMP
テープの本来の優れた走行性、耐久性、生産適性を維持
すると共に、如何に蒸着テープのような短波長領域(高
域の輝度信号)の高C/N 化を達成するかであり、最も重
要な課題であった。
【0027】従来、重層塗布技術は、VTR の信号記録メ
カニズム、すなわち各信号の記録深さに着目し、それぞ
れに最適な上、下磁性層を設計することで性能向上を図
ってきた。VHS の重層塗布は上層と下層にそれぞれサイ
ズや磁気特性の異なる強磁性粉末を採用した2層構造で
輝度、色、音の全ての帯域における高出力、低ノイズが
実現されてきた。
【0028】そして、重層構造のHi8 MPテープにおける
上層の磁性層に、高密度記録に適応可能な金属磁性体を
用い、下層の磁性層には、中、低域特性に優れた酸化鉄
磁性体を用い、全く種類の異なる磁性体を用いた所謂ハ
イグリッドダブルコーティングが開発され、鮮鋭度高い
映像と、鮮やかな色が再現するなど大幅な画質向上が図
られた。
【0029】しかしながら、Hi8 MPテープにおける更な
る超高密度記録を追求し、高域特性を飛躍的に向上させ
るためには従来の技術や考え方だけでは限界があった。
そこで、本発明者らは磁気記録そのものの原理、メカニ
ズムまで踏み込んで解析、研究を行ない、蒸着テープ以
上の高域特性を実現するために鋭意検討を行なった。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、塗布型磁気記録媒体を歩留り良くかつ生産効率を確
保して出力、C/N 等の電磁変換特性の優れた薄層磁気記
録媒体を提供することであり、またヘッド当りが良好で
かつ保存安定性が良好な薄層磁気記録媒体を提供するこ
とである。本発明の第2の目的は、塗布型でありながら
蒸着テープに匹敵する高域の出力を発揮すると同時に走
行耐久性、保存性を有する高密度磁気記録媒体を提供す
ることである。
【0031】本発明の第3の目的は電磁変換特性が良好
で走行耐久性に優れる磁気記録媒体を提供することであ
る。とりわけ、短波長記録における出力が高く、また、
生産における歩留まりのよい磁気記録媒体を提供するこ
とである。本発明の第4の目的は、RF出力が高く、かつ
走行耐久性に優れドロップアウトが少なく、ビットエラ
ーレート(BER) が低い磁気記録媒体を提供することにあ
る。
【0032】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討し
た結果、従来同時重層塗布技術を部分的には、基本とし
ながらも、その枠を越え、短波長記録になるほど大き
くなる信号損失を徹底的に少なくすることとそのための
磁性層の薄層化する、磁性層の磁気エネルギーを限り
なく高めるために新磁性体の開発と高密度充填化する、
と言う2点が重要点であることを見出した。先ず、第1
に信号損失の徹底低減を行なった。磁気記録ではその記
録再生の過程で様々な損失が発生するが、本発明者らは
今までMPメタルテープでは避け難いと考えていた自己減
磁損失を低減することによって高域特性を向上させると
言う従来にない全く新しい考え方を見出した。
【0033】即ち、本発明の第1のポイントは、上層の
磁性層と下層の非磁性層の各塗布液のチキソトロピー性
を同一もしくは近似したものにすること、又は、下層用
非磁性粉末の形状を調節することによって界面に混合領
域をなくすことにより、上層の磁性層の乾燥厚み平均値
(d) を1μm 以下、且つ上記界面の乱れを極めて低く押
さえると共に上層の磁性層の強磁性粉末のサイズ、形状
と下層の非磁性層用非磁性粉末のサイズ、形状を調整
し、又, 非磁性粉末自体に分散性を向上する発明を加え
ることにより、より均一な変動の少ない界面と共に超平
滑な磁性層表面を完成した。この平滑な磁性層表面が
「スペース損失」を徹底追放し、高域出力が向上した。
更に、必要に応じて、その乾燥厚み平均値(d) を最短記
録波長λに対しλ/4≦d ≦3λとし、且つ、その表面
粗さRaをRa≦λ/50 とする従来にない均一で超薄層の磁
性層を実現し、短波長領域での自己減磁損失を大幅に低
減したものである。
【0034】又、本発明の第2のポイントは、磁性層の
高エネルギー化である。上層の磁性層にHr及びHcを共に
高くした微粒子の強磁性粉末を用いることにより高磁気
エネルギー化、高抗磁力化を図り、ME(蒸着)テープ同
等以上の高域出力を発揮することを見出した。
【0035】本発明の第3のポイントは、前記磁気記録
媒体の長手方向のスティフネスSMDと幅方向のスティフ
ネスSTDとの比SMD/STDが1.0 〜1.9 であれば、前述
したヘッド当たりが良好に維持され、電磁変換特性が向
上することを見出した。
【0036】本発明の第4のポイントは、高密度充填で
ある。従来の技術では磁性層を単に薄層化すると低域出
力が低下し、カラー特性が悪化するが、本発明では厚み
方向の剛性が極めて高い微粒子無機粉末がカレンダー処
理による充填効果を大幅に向上し、高エネルギー強磁性
粉末を高密度充填することにより、優れた中、低域特性
も実現できることを見出した。
【0037】先ず、本発明の第1のポイントについて述
べる。即ち、本発明の上記目的は、支持体上に少なくと
も非磁性粉末を結合剤に分散した下層の非磁性層を設
け、その上に強磁性粉末を結合剤に分散した上層の磁性
層を設けた少なくとも二層以上の複数の層を有する磁気
記録媒体において、前記上層の磁性層の乾燥厚み平均値
(d) が1μm 以下であり、前記上層の磁性層の表面の走
査型トンネル顕微鏡(STM) 又は原子間力顕微鏡(AFM )
により6μm×6μmの範囲を走査して得た2乗平均
粗さRrmsが,前記上層の磁性層の乾燥厚み平均値(d)
との間に30≦d/Rrmsの関係があることを特徴とする磁気
記録媒体によって達成される。
【0038】即ち、本発明の第1のポイントは、超薄層
の磁性層を実現したものである。自己減磁の原理から磁
性層の断面積が小さくなるほど損失が小さくなることが
知られているので、短波長信号の出力アップのために
は、磁性層の超薄層化が不可欠であることを見出したも
のである。しかも、1μm 以上の厚みでは効果が小さ
く、一般に記録波長の1/4 と言われている有効記録厚み
に近づくほど、即ち、飽和記録に近づくほど、その効果
が大きくなるため、サブミクロン単位の超薄層化が必要
である。
【0039】従来の単層塗布技術では、サブミクロン領
域の薄層塗布自体が難しい上、薄層にすればするほど均
一な厚みの確保や超平滑化が難しく、また、安定して大
量に生産することが極めて困難であった。そこで、従来
の重層塗布技術を革新し、下層に微粒子無機粉末を含む
非磁性層を、上層に磁性層を WET on WET 塗布方式で設
け、磁性層の厚み平均値(d) が1μm 以下、且つ、前記
上層の磁性層の表面の走査型トンネル顕微鏡(STM) 又は
原子間力顕微鏡(AFM )により6μm×6μmの範囲を
走査して得た2乗平均表面粗さRrmsが、前記上層の磁性
層の乾燥厚み平均値(d) との間に30≦d/Rrmsの関係を有
し、更に、必要に応じて、前記平均値(d) が最短記録波
長λに対しλ/4≦d≦3 λ、且つ前記磁性層の表面粗さR
aがRa≦λ/50 の関係にあるように改良したことによ
り、従来の一般的な Hi8MPテープの 1/3〜1/10以下と言
う画期的な超薄層の磁性層を以て自己減磁損失を低減さ
せ、輝度信号出力の大幅な向上を実現させたものであ
る。
【0040】自己減磁の原理は以下のようである。磁化
された磁石の磁極は、磁石の外部だけでなく内部にも磁
界を作る。磁石内部の磁界は、磁化の方向と逆向きであ
り、磁化を減少させる方向に働く。この内部磁界のこと
を「反磁界」と言い、これによって生じる磁化の減少が
「自己減磁」である。
【0041】そして、その大きさは、磁石の形状に依存
する。つまり、断面積が小さいほど、また磁極間の距離
が大きいほど反磁界が小さくなり、自己減磁が起き難く
なる。全く形状の異なる、縫い針とパチンコ玉を例にと
って説明すると、いずれも鉄製で、磁石に吸着される
が、縫い針は自己減磁が小さいのでそれ自体が磁石にな
り易く、一方、パチンコ玉は自己減磁が大きいので、自
分自身は磁石にはなり難い性質を持っている。
【0042】これを磁気テープに置き換えた場合、長波
長(低域)記録で反磁界は小さいが、短波長(高域)記
録になるほど、磁化の磁極間距離が小さくなって反磁界
が増大し、自己減磁による損失が大きくなる。これが、
テープの高域特性を劣化させる一つの大きな要因であ
る。この自己減磁損失を小さくするために、自己減磁の
原理に従って、断面積を小さくすること、即ち、磁性層
の厚みを薄くすることが有効である。しかも、自己減磁
損失は、飽和記録に近づくほど小さくなって出力が向上
するため、記録波長の1/4 と言われる有効磁性層厚みに
近づけるサブミクロン領域の超薄層化が必要である。
【0043】Hi8MPテープの最短記録波長は0.49μm の
極めて短波長であり、これが約0.2μm と言う極めて薄
い磁性層厚みを有するMEテープと同様に優れた高域特性
をもつ理由の一つである。一方、従来の塗布型MPテープ
の磁性層厚みは約3μm であり、これまでの塗布方式で
は記録波長よりかなり厚くならざるを得ず、自己減磁損
失による高域特性の劣化が大きな壁であった。
【0044】しかし、本発明はこのような壁を大きく打
ち破ったのである。又、スペース損失も重要な要因であ
る。自己減磁と並び、高域特性劣化のもう一つの大きな
原因となっているのがスペース損失である。短波長にな
る程テープ表面に出る磁束が弱まるので、テープとビデ
オヘッドの極く僅かなスペーシングでも、大きな出力損
失となる。スペース損失には、磁性層表面の粗さに起因
するミクロ的なものと、テープの剛性に起因するマクロ
的なものがある。前者は、如何に超平滑性を実現しなが
ら安定した走行性を確保するかが課題であり、特に Hi8
MPテープのように、最短記録波長が VHSの約40%という
高密度記録では、その重要性がきわめて高くなる。後者
は、所謂「ヘッド当り」と言われているもので、優れた
テープ強度としなやかさを如何に両立させるかが課題で
ある。これは短波長記録に限らず画質への影響が非常に
大きくなるものである。本発明は、このスペース損失の
問題も一挙に解決したものである。
【0045】本発明の第1のポイントは、更に、磁性層
表面の超平滑化にある。重層塗布技術は、元来、優れた
平滑性を実現できる技術である。それは、ベースフィル
ム表面の凹凸を下層の磁性層が吸収し、上層の磁性層に
対しその凹凸の影響を伝え難くするからである。しか
し、0.5 μm 以下のより短波長において極く僅かなスペ
ース損失をも問題にし、更なる平滑性を目指す場合、従
来重層塗布技術だけでは限界があった。
【0046】記録メカニズム上、上層には高域特性に優
れた超微粒子磁性体を使用する必要があり、比較的大き
な下層用非磁性粉末によって生じる粒子サイズ単位の極
く微小な上下層界面の乱れさえも、徹底的に追求する必
要があるからである。特に、上層を超薄層にする程界面
の平滑性が上層にある磁性層表面の平滑性に与える影響
が大きくなり、この課題の解決が一段と重要であった。
【0047】本発明では、上下層界面の超平滑化を図る
ため、下層に含まれる非磁性粒子の超微粒子化と、その
高密度充填化を追求した。しかしながら、超微粒子であ
るため、そのまま使用すると均一、且つ高密度に充填さ
せることが困難であり、そこで超微粒子の表面に特殊表
面処理を施し、分散性を高めることで高密度充填を実現
し、上下層界面の平滑性を飛躍的に高めたものである。
【0048】又、この非磁性層は高密度充填層であるた
め、テープの面方向に対する可撓性が高く、優れたしな
やかさを持ちながら厚み方向の力に対して、極めて高い
剛性を発揮し、カレンダー処理による平滑化効果を一段
と高めるものである。その結果、従来の重層型 Hi8MPテ
ープに比べ、更にこの平滑度を20%も向上させ、磁性層
の表面粗さRaが2.7 nmを達成した。下層に非磁性層を設
けた WET onWET 塗布方式で実現できた超平滑性が、短
波長領域におけるスペース損失を大幅に低減させ、高域
特性を向上させることができたものである。
【0049】次に、本発明の第2のポイントについて述
べる。即ち、本発明は、前記上層の磁性層に含まれる強
磁性粉末の長軸長が 0.3μm以下で、且つその保磁力Hc
が1500Oe以上の針状強磁性合金粉末、あるいは板径が0.
3μm 以下の粉末で、且つその保磁力Hcが1000Oe以上の
板状強磁性粉末であることが好ましい。本発明の第2の
ポイントの目的は、磁気テープの性能向上技術の基本で
ある磁性層の高出力化及び低ノイズ化にある。短波長で
の特性向上を徹底追求するために、信号損失の極小化と
ともに磁性体の超微粒子化、高エネルギー化及びその高
密度充填化による磁性層自体の高出力及び低ノイズ化が
不可欠である。
【0050】次に、本発明の第3のポイントについて述
べる。本発明の媒体は、前記磁気記録媒体の長手方向ス
ティフネスSMDと幅方向のスティフネスSTDとの比SMD
/STDが 1.0〜1.9 であることが好ましい。具体的に
は、前記下層の非磁性層に含まれる無機質粉末のモース
硬度が6以上、平均粒径が0.15μm 以下の球状から立方
体状までの多面体状無機質粉末からなることが好まし
い。又、本発明の媒体は、80℃×30分間に於ける前記磁
気記録媒体の熱収縮率が0.4 %以下であることが好まし
く、具体的には前記下層の非磁性層の乾燥厚みが前記上
層の磁性層の乾燥厚みの1倍〜30倍で、且つ前記下層の
非磁性層の粉体体積比率と前記上層の磁性層の粉体体積
比率との差が、-5%〜+20%の範囲内にあることが好ま
しい。
【0051】又、本発明の第4のポイントは高密度充填
化にあり、本発明の磁性体の高密度充填化を可能にした
のが下層の非磁性層である。平滑で、且つ厚み方向に対
してきわめて剛性の高い非磁性層が、スーパーHDP(High
Density Packing) カレンダーにより付与される超高圧
のニップ圧力を効果的に受け止め、従来にない画期的な
高密度充填を実現した。
【0052】一方、磁性層の超薄層化によって高域特性
を徹底追求すると、従来の技術では中・低域特性が低下
し、優れたカラー特性が得られなくなる。しかし、本発
明の下層の非磁性層は、この問題点を解決するため高エ
ネルギー磁性体を画期的に高充填化することを可能に
し、高域出力の大幅な向上と同時に、高い中・低域特性
を確保し、優れたカラー出力を得ることができたもので
ある。
【0053】ここで言う上層磁性層の厚み平均値(d)
は、下記のように求められる。先ず、磁気記録媒体を長
手方向にわたってダイアモンドカッターで約 0.1μmの
厚みに切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率 10000〜1000
00倍、好ましくは 20000〜50000 倍で観察し、それを写
真撮影をする。写真のプリントサイズはA4〜A5とする。
その後、上層の磁性層及び下層の非磁性層に含まれる磁
性体や非磁性粉末の形状差異に注目しながら、界面を目
視確認して黒く縁取り、さらに、磁性層表面も同様に黒
く縁取る。その後、Zeiss 社製画像処理装置 IBAS2にて
縁取りした線の間隔の長さを測定する。これにより上層
の磁性層厚みの平均値を求める。間隔の長さは、長さ21
cmの間隔を 100〜300 にセグメント化してその長さを測
定する。
【0054】なお、前記下層及び上層の界面変動を定量
的に把握することにより、前記界面での乱れ現象を良好
に制御することも可能になる。前記界面変動値の求め方
としては、前記両層の界面における厚み変動の平均値Δ
d として捕らえ、長さ20μm(実長)中の前記磁性層と
前記非磁性層の前記縁取りをした界面が形成する山の頂
と谷の底部の厚さ方向の距離( Δ di ) を10〜20箇所(
20μm 中全て)求め、その総和の平均値とした。即ち、
本発明においては、前記界面を形成する曲線は、理想的
には dが一定な直線であることが最も好ましい態様であ
るが、現実的には従来界面に比べ振幅が小さく且つ山と
谷の間隔が長い滑らかなサイン曲線に類似した曲線が形
成されたものが好ましく、山と谷の数は、20μm 長さに
最大各10〜20個程度に制限されることが好ましい。(図
1参照) 即ち、Δd =( Δ d1 +Δ d2 +…+Δ dm )/m
(m =10〜20) 又、前記界面が形成する曲線の山−山間の距離(L) は、
好ましくは1μm 以上、特に好ましくは2μm 以上であ
る。又、前記 100〜300 にセグメント化した各磁性層厚
みの値を統計処理と同様に標準偏差σを求めることがで
きる。この標準偏差σは、0.2 μm 以下であることが好
ましい。なお、前記磁性層の厚み平均値d と前記界面に
おける厚み変動の平均値Δd との関係は、Δd ≦d/2 が
好ましい。
【0055】本発明の第1のポイントである、非磁性支
持体上に少なくとも非磁性粉末を結合剤に分散した下層
の非磁性層を設け、その上に強磁性粉末を結合剤に分散
した上層の磁性層を設けた少なくとも二層以上の複数の
層を有する磁気記録媒体において、前記上層の磁性層の
乾燥厚み平均値(d) が1μm 以下であり、前記上層の磁
性層の表面の走査型トンネル顕微鏡(STM) 又は原子間力
顕微鏡(AFM )により6μm×6μmの範囲を走査して
得た2乗平均表面粗さRrmsが、前記上層の磁性層の乾燥
厚み平均値(d) との間に30≦d/Rrmsの関係を有し、更
に、必要に応じて、前記平均値(d) が最短記録波長λに
対しλ/4≦d ≦3λ、且つ前記磁性層の表面粗さRaがRa
≦λ/50 の関係にあることを特徴とする磁気記録媒体を
達成するための具体的手段は次の通りである。第1の実
施態様は、上層の磁性層用磁性塗料と下層の非磁性層用
塗料の各分散液におけるチキソトロピー性を互いに近似
するように制御することであり、第2の態様は、下層の
非磁性層と上層の磁性層に含まれる各粉末のサイズ及び
形状を規定して、力学的に上層及び下層に混合領域が生
じないように制御することである。
【0056】第1の実施態様の具体的方法としては、非
磁性粉末を結合剤中に分散してなる分散液が、チキソト
ロピー性を持ち、剪断速度104 sec- 1 での剪断応力
A104 と剪断速度10sec- 1 での剪断応力 A10との比A
10 4 /A10を、100 ≧A10 4/A10≧3に調整することであ
る。このようなチキソトロピー性を有するための具体的
な手段として、以下の(A)〜(D)項に示す方法があ
る。本発明の磁気記録媒体は、これらの各項に限定され
るものではなく、あくまでもその本質とするところは、
前記各分散液のチキソトロピー性を同一又は近似した値
にすることにあり、更に、具体的には A10 4/A10の上述
した数値範囲内とすることにある。 (A)前記下層の非磁性層に含まれる前記粉末が少なく
ともカーボンブラックと、前記下層の非磁性層の乾燥厚
みより小さい平均一次粒子径の無機粉末を含み、且つ前
記下層の非磁性層と上層の磁性層に熱硬化系ポリイソシ
アネートを結合剤中に10〜70重量%含むこと。 (B)前記下層の非記録層の粉末サイズが平均一次粒子
径0.08μm 以下である非金属無機粉末を含むこと。 (C)前記上層の磁性層の乾燥厚みが 1.0μm 以下で、
且つ前記下層の非磁性層の飽和最大磁束密度Bmが30〜50
0 ガウスであるようにチキソトロピー性を付与する磁性
粉末を使用すること。但し、前記下層の非磁性層は記録
に関与しない。 (D)前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末の長軸長
が 0.3μm 以下、結晶子サイズが 300以下であり、前
記下層に非磁性粉末として非磁性金属酸化物粉末と平均
粒径が20nm未満のカーボンブラックを95/5〜60/40 の割
合で含み、且つ少なくとも前記下層に一分子中に3個の
OH基を有するポリウレタンとポリイソシアネート化合
物を含むこと。
【0057】これら(A)〜(D)項は、A10 4 /A10を
前述した範囲内に調整するための好適な手段を示したも
のであるが、これらは、例えば、下記の因子とも互いに
関係(重複した記載も含む)があり、種々選定すること
により、所望のA10 4 /A10Aを有する分散液あるいは磁
性塗料が得られ、その結果、所望の特性を有する磁気記
録媒体を製造することができる。
【0058】前述した因子としては、例えば、分散され
る無機粉末あるいは磁性粉末に関して、(1)粒子サイ
ズ(比表面積、平均一次粒子径等)、(2)構造(吸油
量、粒子形態等)、(3)粉体表面の性質(pH 、加熱減
量等)、(4)粒子の吸引力(σS 等) 等、が挙げられ
る。一方、結合剤に関しては(1)分子量、(2)官能
基の種類等が、又、溶剤に関しては(1)種類(極性
等)、(2)結合剤溶解性、(3)溶剤処方量、(4)
含水率等が挙げられる。
【0059】次に、第2の実施態様の具体的手段として
は、下記(E)〜(G)項に示す方法が挙げられるが、
あくまでもその本質とするところは前記下層の非磁性層
と上層の磁性層の間に混合領域をなくすことにあり、こ
れらは単なる例示に過ぎない。 (E)前記下層に含有される非磁性粉末の最も長い軸長
1 と最も短い軸長r 2 との比r1 / r2 を2.5 以上に
すること。 (F)前記非磁性粉末の針状比が2.5 以上であり、且つ
前記強磁性粉末の最も長い軸長の平均径を 0.3μm 以下
とすること。 (G)前記下層の非磁性層に鱗片状の非磁性粉末と分子
量3万以上のエポキシ基を含む結合剤を含ませ、且つ前
記上層の磁性層に針状の強磁性粉末又は板状の強磁性粉
末を含ませること。
【0060】これら(E)〜G)項は、前記下層の非磁
性層と前記上層の磁性層との界面において混合領域が生
じないようにするため、前記下層の非磁性層に針状非磁
性粉末あるいは鱗片状非磁性粉末を用いている。従来の
粒状の非磁性粉末に比べ、針状の非磁性粉末が整列して
存在すると未乾燥状態でも強固な塗膜を形成し、前記上
層の磁性層の強磁性粉末が回転しても、その界面で混合
を生じない。又、混合領域が生じないようにするための
別の手段は、前記下層の非磁性層に鱗片状の非磁性粉末
を用いて、いわばタイル状に敷きつめることにより、上
述したような前記上層の磁性層の強磁性粉末が回転して
もその界面で混合が生じない。
【0061】このようにタイル状に敷き詰めて、分散性
を改良するために、分子量3万以上のエポキシ基を含む
結合剤を用いることが好ましい。このように下層の非磁
性層に形状的に特徴のある非磁性粉末を用い、その上に
上層の磁性層を設けることにより、界面に混合領域が生
じず、従って、極めて薄く、且つ平滑な磁性層が得られ
る。
【0062】又、本発明の磁気記録媒体は、磁性層の乾
燥厚み平均値d が最短記録波長λに対してλ/4≦d ≦3
λ、且つ前記磁性層の表面粗さRaがRa≦λ/50 の関係に
あることが好ましい。このための好適な粉末構成とし
て、磁性層中の前記強磁性粉末はその長軸長が0.3μm
以下の針状強磁性粉末あるいは板径が 0.3μm 以下の板
状強磁性粉末であること、前記下層の非磁性層中の非磁
性粉末は、その平均粒径がλ/4以下の粒状粒子、もしく
は長軸長が0.05〜1.0 μm で針状比が5〜20の針状粒
子、又は板径が0.05〜1.0 μm で、かつ板状比が5〜20
の板状粒子であることが好ましい。
【0063】このような本発明媒体の表面性を達成する
ためには、他に次の(H)〜(K)項の各手段も寄与す
るものである。 (H)前記下層の非磁性層に含まれる非磁性粉末がモー
ス硬度3以上の無機質粉末を含み、前記上層の磁性層に
含まれる強磁性粉末が針状の強磁性粉末であり、前記無
機質粉末の平均粒径が針状の強磁性粉末の結晶子サイズ
の 1/2〜4倍であること。 (I)前記下層の非磁性層に含まれる非磁性粉末がモー
ス硬度3以上の無機質粉末を含み、前記上層の磁性層に
含まれる強磁性粉末が針状の強磁性粉末であり、前記無
機質粉末の平均粒径が針状の強磁性粉末の長軸長の 1/3
以下であること。 (J)前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末の磁化容
易軸が平板の垂直方向にある六角板状の強磁性粉末であ
り、且つ前記下層の非磁性層に含まれる非磁性粉末が無
機質粉末を含み、その平均粒径が前記上層の磁性層に含
まれる強磁性粉末の板径以下であること。 (K)前記下層の非磁性層に含まれる無機質粉末が無機
質酸化物で被覆された表面層を有する無機質非磁性粉末
を含むこと。
【0064】前記(H)〜(K)項の作用効果は以下の
通りである。先ず、(H)について述べる。前記上層の
磁性層を1μm 以下の極薄層に塗布、乾燥するために
は、前記下層の非磁性層に含まれる無機質粉末の粒子径
と、前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末の結晶子サ
イズとが関連して細かい表面粗さが決定される。結晶子
サイズは針状の強磁性粉末の場合、概ね短軸径に対応す
る。前記下層の非磁性層の無機質粉末の平均粒径が、針
状の強磁性粉末の結晶子サイズの 1/2以下であると分散
そのものが困難になり、平滑な下層表面が得られないの
で、磁気記録媒体の最終膜面の平滑性も不十分になる。
逆に、前記下層の無機質粉末の平均粒径が強磁性粉末の
結晶子サイズの4倍を越えると、前記下層粉末粒子の粒
子間距離が広がるために、前記上層の強磁性粉末が前記
下層の表面性の影響を受けるので十分な表面性を得るこ
とができない。実施例に示すように十分な表面性を得る
ためには、前記上層の針状強磁性粉末結晶子サイズの 1
/2〜4倍、更に好ましくは 2/3〜2倍の平均粒径を有す
る無機質粉末が好ましいのである。無機質粉末の形状と
しては、球状、サイコロ状が好ましい。又、モース硬度
は3以上、好ましくは4以上、更に好ましくは6以上で
ある。
【0065】又、無機質粉末の前記下層における体積充
填率が20〜60%、更に好ましくは25〜55%の範囲であ
る。上記のような前記下層の非磁性粉末粒子径と前記上
層の強磁性粉末の結晶子サイズとの関係で、表面粗さを
小さくするためには前記下層粉末の体積充填率に好まし
い範囲がある。体積充填率が20%以下であると前記下層
粉末粒子間の距離が大きくなり、前記上層の磁性層表面
が前記下層粉末表面の粗さの影響を被るようになり、
又、前記下層に前記上層の強磁性粉末が混入することに
もなり、非常に激しく表面が粗くなり、角形比も低下す
ることにもなる。又、体積充填率が60%以上であると分
散液の粘度が非常に高くなり、実質的に塗布することが
不可能になる。塗布されても走行耐久性の面で粉落ち等
の問題を生ずる。又、無機質粉末は、非磁性粉末のうち
重量比率で60%以上含むことが好ましく、無機質粉末と
しては、金属酸化物、アルカリ土類金属塩等であること
が好ましい。又、カーボンブラックを添加することによ
り公知の効果(例えば、表面電気抵抗を低減する)を期
待できるので、上記無機質粉末と組み合わせて使用する
ことが好ましいが、カーボンブラックは分散性が非常に
悪いので、カーボンブラック単独では十分な電磁変換特
性を確保することができない。良好な分散性を得るため
には重量比率で60%以上を金属酸化物、金属、アルカリ
土類金属塩から選択する必要がある。無機質粉末が非磁
性粉末の重量比率で60%未満、カーボンブラックが非磁
性粉末の40%以上であると、分散性が不十分となり所望
の電磁変換特性を得ることができなくなる。
【0066】次に、(I)について以下に説明する。重
層塗布方式による磁気記録媒体においては、電磁変換特
性を良好に保つために角形比を大きくする必要がある
が、前記上層用強磁性粉末に対して前記下層の非磁性層
用無機質粉末の平均粒径が大きいと、前記下層粒子間の
距離が大きくなり、特に上下両層の界面で強磁性粉末の
配向の乱れが生じ、前記(H)項と同様に磁性層の表面
性を悪化させる。配向の乱れを少なくするためには、前
記強磁性粉末の長軸方向にわたり細かい非磁性粉末を並
べるようにして、前記強磁性粉末の長手方向にわたり配
向が乱れないように支持する必要がある。そのための要
件を実験的に確認したところ、角形比が単層磁性層と同
等になるのは針状強磁性粉末の場合、長軸長の1/3 以
下、更に好ましくは、 1/3〜1/20の無機質粉末を使用す
ると、良好な表面性と角形比を得ることができることが
分かった。
【0067】又、前記(J)項では前記針状強磁性粉末
に代わって、同様な考え方で6角板状強磁性粉末を使用
すると、垂直方向に配向して界面の乱れが少なくなり、
角形比を高くすることができる。前記下層に使用する無
機質粉末は、その板径以下、更に好ましくは板径以下か
ら板径の1/5 以上にする。前記(I)及び(J)項で
は、前記(H)項と同様な理由から、無機質粉末の前記
下層における体積充填率は20〜60%が好ましい。又、磁
性層の厚みが前記強磁性体の長軸長の5倍以下である
と、カレンダーによる充填度向上がめざましく、より電
磁変換特性の優れた磁気記録媒体が得られる。無機質粉
末の好ましい種類、性質は、前記(H)項と同様であ
る。
【0068】次に、前記(K)項について説明する。前
記下層の非磁性層に含まれる無機質粉末の表面に被覆さ
れる無機質酸化物としては、Al2 3 、SiO2 、T
iO2 、ZrO2 、SnO2 、Sb2 3 、ZnO等が
好ましく、更に好ましくはAl2 3 、SiO2 、Zr
2 である。これらは、組み合わせて使用しても良く、
単独で用いることもできる。又、目的に応じて共沈させ
た表面処理槽を用いても良いし、先ずアルミナで処理し
た後にその表層をシリカで処理する構造、その逆の構造
を取ることもできる。又、表面処理層は、目的に応じて
多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般
には好ましい。
【0069】例えば、前記非磁性無機質粉末の表面処理
は、前記非磁性無機質粉末素材を乾式粉砕後、水と分散
剤を加え、湿式粉砕、遠心分離により粗粒分級が行われ
る。その後、微粒スラリーは表面処理槽に移され、ここ
で金属水酸化物の表面被覆が行われる。先ず、所定量の
Al、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、Zn等の塩類水
溶液を加え、これを中和する酸、又はアルカリを加え
て、生成する含水酸化物で無機質粉末粒子表面を被覆す
る。副生する水溶性塩類は、デカンテーション、濾過、
洗浄により除去し、最終的にスラリーpHを調節して濾
過し、純水により洗浄する。洗浄済みケーキは、スプレ
ードライヤー又はバンドドライヤーで乾燥される。最後
に、この乾燥物はジェットミルで粉砕され、製品にな
る。又、水系ばかりでなくAlCl3 、SiCl4 の蒸
気を前記非磁性無機質粉末に通し、その後水蒸気を流入
してAl、Si表面処理を施すことも可能である。
【0070】その他の表面処理法については、「Charac
terization of Powder Surfaces 」, Academic Pressを
参考にすることができる。本態様は、記録波長に応じた
前記磁性層の最適厚み範囲、及び前記下層の非磁性層と
前記上層の磁性層との界面における厚み変動(即ち、該
界面の厚み方向における変動幅)を特定することによ
り、前記磁性層の表面粗さが特定且つ改善され、更に、
前記磁性層の厚みを薄く且つ均一に形成されるので記録
波長が短くなっても再生出力変動、振幅変調ノイズを防
止し、高再生出力、高C/N を実現することができる。
【0071】本発明媒体の効果を別の視点から見れば、
従来、磁性層を薄層化して短波長記録すると、前記磁性
層全層が記録再生に寄与するので、前記磁性層の厚さが
変動すると再生出力が直接的に変動し、振幅変調ノイズ
がみられたが、本発明はこの欠点を解決したものであ
る。
【0072】本発明において、最短記録波長λは、磁気
記録媒体の種類により種々異なるが、例えば、8mm メタ
ルビデオでは 0.7μm 、デジタルビデオでは 0.5μm 、
デジタルオーディオでは0.67μm が挙げられる。
【0073】本発明によって、真空中での処理が前提で
あり、腐食に弱い金属薄膜媒体のような生産性及び信頼
性に関する問題がなく、電磁変換特性が前記金属薄膜に
匹敵し、しかも生産性に優れた高性能塗布型磁気記録媒
体を得ることができる。本発明の第1ポイントを達成す
る実施態様は、磁性層表面の走査型トンネル顕微鏡(ST
M) 法による2乗平均粗さRrmsが前記磁性層の乾燥厚み
平均値d との間に30≦d/Rrmsの関係があることである。
【0074】磁性層厚味が薄くなると、自己減磁損失が
低減して出力向上が図れるはずであるが、磁性層厚みの
低減により押され代が少なくなるために、カレンダー成
形性が悪くなり、表面粗さが粗くなる。自己減磁損失低
減による出力向上を図るためには上式の関係を満たす S
TMによる表面粗さが好ましい。AFM による Rrms は、10
nm以下が好ましい。3d-MIRAUで測定した光干渉表面粗さ
Raが1〜4nm、P-V 値(Peak-Valley) 値が80nm以下であ
ることが好ましい。なお、磁性層表面の光沢度は、カレ
ンダー処理後で 250〜400 %が好ましい。
【0075】更に、本発明の第1ポイントに属する本発
明の磁性層の厚み平均値d の範囲は、λ/4≦d ≦3λ、
好ましくは、λ/4≦d 2λ(即ち、0.25≦d/λ≦2)で
ある。又、本発明の磁性層の厚み平均値d は、通常0.05
μm ≦d ≦1μm 、好ましくは、0.05μm ≦d ≦0.8 μ
m の範囲である。
【0076】前記磁性層厚み平均値d は、前述の通り実
測して求められるが、蛍光X線で磁性層中に特有に含ま
れる元素について、既知の厚みの磁性層サンプルを測定
し、検量線を作成し、次いで、未知資料のサンプルの厚
みを蛍光X線の強度から求めることもできる。本発明
は、表面粗さRaをRa≦λ/50 、即ちλ/ Raを50以上、好
ましくは75以上、更に好ましくは80以上に特定すること
ができる。又、本発明における表面粗さRaは、光干渉粗
さ計を用いて測定した中心線平均粗さを指す。
【0077】本発明の磁気記録媒体は、前記下層の非磁
性層が湿潤状態の内に前記上層の磁性層を塗布する方式
に限定されるものでなく、同時重層塗布でも逐次重層塗
布方式でも良い。
【0078】本発明において、磁性層の厚みに関して
は、単に薄くすればよいとは言えず、本発明者らは、最
短記録波長λに対して最適な範囲があることを見出し
た。即ち、前記磁性層厚み平均値d がλ/4より薄くなる
と、再生に寄与する磁束が減少し出力は低下する。又、
前記平均値d が3λを越えると、同時に記録する記録波
長が長い成分の深層記録磁界により短波長成分が減磁さ
れるので出力が低下する。従って、前記磁性層厚み平均
値dはd≦3λ、好ましくは、d≦2λが良い。
【0079】又、媒体の基本性能であるC/N をとらえた
場合には、従来の比較的厚膜の磁性層で問題とされた磁
性層表面の凹凸(所謂、表面粗さ)に加えて、非磁性層
と磁性層界面での厚み変動が問題となり、これは前記磁
性層厚み平均値d がλ/4≦d≦3λの範囲になると、再
生出力は磁性層全体の磁束量の影響を受けるようになる
ためで、従来の厚膜の磁性層では問題ではなかったこと
である。本発明は、この問題に対して、従来の厚膜の磁
性層以上に平滑なことが要求され、その表面粗さRaは、
Ra≦λ/50 の関係を満たすことが必要である。
【0080】又、本発明の第2のポイントを達成するた
めには、前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末の長軸
長が 0.3μm 以下で、且つその保磁力Hcが1500Oe以上の
針状強磁性合金粉末あるいは板径 0.3μm 以下で、且つ
粉末であり、且つその保磁力Hcが1000Oe以上の板状強磁
性粉末であることが好ましい。
【0081】前記強磁性粉末としては、針状強磁性合金
粉末、及び板状の六方晶フェライト系強磁性体(Baフ
ェライト、Srフェライト等)、及び板状Co合金粉末
が使用できる。保磁力Hc,飽和磁化σS 、は適宜選択し
てよいが、特に最短記録波長が1μm 以下の短波長記録
には、保磁力Hcが1500Oe以上が好ましい。磁性体のサイ
ズは、一般的に高密度記録に対して適合するための針状
のもので長軸長 0.3μm 以下、板状のもので板径 0.3μ
m 以下のものを用いる。
【0082】本発明の第3のポイントを達成するために
は、前記磁気記録媒体の長手方向スティフネスSMDと幅
方向のスティフネスSTDとの比SMD/STDが 1.0〜1.9
であることが好ましい。前記スティフネス比を上述の値
とするためには、前記下層の非磁性層に含まれる無機質
粉末のモース硬度が6以上、平均粒径が0.15μm 以下の
球状から立方体状までの多面体状無機質粉末のものを使
用することが好ましい。
【0083】本発明の前記スティフネスの作用効果は以
下の通りである。前述したように磁気記録媒体のSMD/
STDを制御することにより、該磁気記録媒体の力学的特
性を制御して、前記磁気記録媒体のヘッド当たりを改善
すると共に、特に短波長記録における電磁変換特性を改
善したものである。即ち、本実施態様は、SMD/STDを
1.0〜1.9 に制御するものである。
【0084】前記長手方向のスティフネスSMD及び幅方
向のスティフネスSTDは、共に市販のスティフネステス
ターを使用して測定できる。例えば、東洋精機社製ルー
プスティフネステスターを使用し、製造した磁気記録媒
体を幅8mm 、長さ50mmに裁断して得られた試料を、SMD
の測定用には試料長さ方向が磁気記録媒体の塗布方向と
同じになるように、STDの測定用には試料長さ方向が磁
気記録媒体の幅方向と同じになるように切り出してこれ
を円環として、内径方向に変位速度3.5mm/秒で変位5mm
を与えるに要する力をmgで表した値を各SMD及びSTDと
することができる。
【0085】ここで、SMD/STDは、 1.0〜1.9 、好ま
しくは 1.1〜1.85に制御される。又、全厚み13.5±1μ
m の磁気記録媒体において、SMDは50〜200mg 、好まし
くは50〜150mg 、STDは40〜150mg 、好ましくは50〜13
0mg である。SMD/STDの値を制御する手段は特に制限
はないが、好ましくは下層無機質粉末の形状及びモース
硬度を選択することが望ましく、前記下層に含まれる無
機質粉末として、モース硬度が6以上、好ましくは 6.5
以上、平均粒径が0.15μm 以下、好ましくは0.12μm 以
下の球状から立方体状までの多面体状無機質粉末を選択
する。
【0086】前記磁気記録媒体のヘッド当たりを良好に
するためには、テープの各スティフネスをある程度高く
することが必要であり、そのために、配合する各粉末の
硬さは硬い方が好ましい。モース硬度が6未満であると
各スティフネスが低くなり、良好なヘッド当たりが確保
できない。又、0.15μm 以下の平均粒径はヘッド当たり
が良好である。これは、結合剤との接触界面が増加する
ために変形に強くなり、各スティフネスSMD、STDが向
上するためと考えられる。本発明においては、このSMD
/STDを上述の範囲に調整する。
【0087】特に、電磁変換特性に効果が高いのは、S
TDがSMDに近いこと、即ち、1に近いことである。前記
下層に含まれる無機質粉末を球状から立方体までの多面
体形状にすると塗膜の力学物性が等方的になるので、S
TDを向上させるのに都合が良い。ここで、多面体形状と
は、具体的には球状、一面が正方形、正5角形、正6角
形等の正n角形あるいは単なるn角形等から1種以上選
択される正多面体あるいは非正多面体等が例示できる
が、好ましくは任意に選択した2つの軸比が 0.6〜1.4
、好ましくは 0.7〜1.3 の範囲とする。
【0088】本発明の第3のポイントを達成するための
他の実施態様としては、前記磁気記録媒体の80℃×30分
間に於ける熱収縮率が 0.4%以下であることであり、具
体的には前記下層の非磁性層の乾燥厚みが前記上層の磁
性層の乾燥厚みの1倍〜30倍であり、且つ前記下層の非
磁性層の粉体体積比率と前記上層の磁性層の粉体体積比
率との差が−5%〜+20%の範囲にあること、前記上層
の磁性層に含まれる強磁性粉末の結晶子サイズが 300Å
以下であり、且つ前記下層の非磁性層に含まれる無機質
粉末の平均粒子サイズが0.15μm 未満である粒状物、も
しくは平均長軸径 0.6μm 未満である針状物であるこ
と、前記下層の非磁性層に含まれる無機質粉末が酸化チ
タン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸ストロンチ
ウム、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、α酸化鉄から選ば
れた少なくとも1種であること、前記下層の非磁性層が
平均粒径 30mμ以下であり、且つDBP 吸油量が30〜300
ml/100g で、 BET法による比表面積が 150〜400m2 /gで
あるカーボンブラックを第二成分として前記無機質粉末
100重量部に対し、50重量部未満の割合で含むことであ
る。
【0089】本実施態様は、磁性層厚み平均値d が1μ
m 以下で、自己減磁損失が改善された塗布型磁気記録媒
体をピンホール、すじ等の塗膜欠陥がなく、高い生産性
を以て製造し、且つ磁気記録媒体の熱収縮を所定の値以
下に抑制したものである。即ち、本実施態様は、70℃×
48時間保存後における熱収縮率を 0.4%以下に制御した
ことにより、Skew歪みを改善、低減し、しかも強磁性金
属薄膜に匹敵する電磁変換特性を有する磁気記録媒体を
提供するものである。
【0090】言い換えれば、本実施態様は、磁性層が極
めて薄い磁気記録媒体を高い生産性を以て製造し、且つ
Skew歪みを小さくする適切な磁気記録媒体の強度を上記
熱収縮率で特定できることを見出したものである。ここ
で、前記熱収縮率は、 100×(加熱前の室温における磁
気記録媒体の長さ−70℃の環境下48時間磁気記録媒体を
テンションを与えずに保持した後の長さ)÷(加熱前の
室温における磁気記録媒体の長さ)で示される値であ
る。
【0091】本実施態様において、前記熱収縮率を制御
する手段としては特に制限なく、任意の方法が適用でき
る。該制御手段として、具体的には下記に挙げる例が好
ましい。前記下層の非磁性層の乾燥厚みを前記上層の磁
性層の乾燥厚みの1倍〜30倍、好ましくは2〜20倍に制
御し、前記磁気記録媒体の伸び縮みを前記下層及び上層
の膜強度で制御することが挙げられる。該厚味比が1倍
以下であると、前記磁性層の微粒子化に伴う強度劣化に
よる熱収縮率の増大を防ぐことができない。又、前記厚
味比が30倍以上では塗布厚みが厚くなるために、残留溶
剤が増加し、膜が可塑化する等の弊害がでる。
【0092】又、前記下層及び上層の膜強度を調整する
手段としては、前記下層の非磁性層の粉体体積比率と前
記上層の磁性層の粉体体積比率との差を−5%〜+20
%、好ましくは0〜15%の範囲に制御することが挙げら
れる。ここで、−5%以下であると前記磁性層の熱収縮
率増大を抑止できず、又、20%以上増量すると媒体自体
が硬くなり過ぎて、粉落ちが多くなり好ましくない。
【0093】又、本発明において、前記上層の粉末体積
比率は10〜50%、好ましくは20〜45%の範囲が例示さ
れ、前記下層の粉末体積比率は20〜60%、好ましくは25
〜50%の範囲が例示される。この各層の粉末体積比率
は、添加する粉末と結合剤の各量を変更すること、各層
の粉末の粒子サイズ、形状で制御できる。結合剤量を増
量すると相対的に粉末体積比率が減少する。又、粉末の
粒子サイズは細かい程前記熱収縮率の低減に効果がある
が、細かすぎると分散が困難になる。なお、この粉末体
積比率の計算においては、その粉末としてカーボンブラ
ックを用いる場合は、非磁性粉末にカーボンブラックを
含める。
【0094】本実施態様において、好ましい粒子サイズ
の範囲を挙げると、例えば、前記強磁性粉末の粒子サイ
ズとしては、結晶子サイズが 300Å以下、好ましくは 1
00〜250 Å、平均長軸径が 0.005〜0.4 μm 、好ましく
は 0.1〜0.3 μm の範囲とし、平均長軸径/結晶子サイ
ズは、3〜25、好ましくは5〜20の範囲が挙げられる。
前記強磁性粉末をBET 法による比表面積で表せば25〜80
m 2 /gであり、好ましくは30〜70m 2 /gである。25m 2
/g以下ではノイズが高くなり、80m 2 /g以上では表面性
が得にくく好ましくない。
【0095】又、前記下層の無機質粉末の粒子サイズ及
び形状としては、平均粒径が0.15μm 未満、好ましくは
0.005〜0.7 μm である粒状物、平均長軸径が 0.6μm
未満、好ましくは 0.1〜0.3 μm であり、平均長軸径/
短軸長で表される針状比が4〜50、好ましくは5〜30で
ある針状物等が例示される。無機質粉末としては、ルチ
ル型酸化チタン、α酸化鉄、ゲータイトが好ましい。
【0096】又、前記下層に使用される粉末としては、
カーボンブラックが挙げられる。このカーボンブラック
としては、平均粒径が30 mμ以下、好ましくは5〜28 m
μであり、且つDBP 吸油量が30〜300ml/100g、好ましく
は50〜250ml/100gで、BET 法による比表面積が 150〜40
0m2 /g、好ましくは 170〜300m2 /g、pHは2〜10、含水
率は 0.1〜10%、タップ密度は 0.1〜1g/ccが好まし
い。
【0097】前記カーボンブラックは、前記無機質粉末
100 重量部に対し、50重量部未満、好ましくは13〜40重
量部の割合で前記下層に添加される。前記カーボンブラ
ックは、前記磁気記録媒体の帯電防止、膜強度の強化等
の機能の他、空隙率を制御することにより前記下層の粉
末体積比率を制御するためにも使用される。即ち、空隙
率が高いと相対的に粉末体積比率は低下するためであ
る。このような空隙率を制御するためのカーボンブラッ
クとしては、構造を持ったカーボンブラックや中空状カ
ーボンブラックを使用すると効果がある。前記下層の空
隙率は、前記上層の空隙率±10%の範囲が好ましい。
又、前記下層の空隙率は、10〜30%の範囲にあることが
好ましい。
【0098】以下、本発明が選択可能な一般的事項につ
いて述べる。本発明に使用できる前記非磁性無機質粉末
は、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸
塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の非磁性無
機質粉末が挙げられる。具体的には、TiO2 (ルチ
ル、アナターゼ)、TiOX 、酸化セリウム、酸化ス
ズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2 、SiO2
Cr2 3 、α化率90%以上のるαアルミナ、βアル
ミナ、γアルミナ、α酸化鉄、ゲータイト、コランダ
ム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、
窒化硼素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3 、C
aCO3 、BaCO3、SrCO3 、BaSO4 、炭化
珪素、炭化チタン等が単独又は組み合わせて使用され
る。これら無機質粉末の形状、サイズ等は任意であり、
これらは必要に応じて異なる無機質粉末を組み合わせた
り、単独の非磁性粉末でも粒径分布等を選択することも
できる。
【0099】前記粒子サイズは、前記(A)〜(K)項
までの具体的方法に基づくことが好ましいが、一般的に
は、粒状、球状、多面体状の場合、0.01〜0/7 μm であ
り、最短記録波長λの1/4 以下にすることが好ましい。
針状又は板状の場合、長軸長0.05〜1.0 μm 、好ましく
は0.05〜0.5 で針状比が5〜20、好ましくは5〜15、あ
るいは板径0.05〜1.0 μm 、好ましくは0.05〜0.5 μm
、板状比(板径と厚みの比)が5〜20、好ましくは10
〜20のものが用いられる。
【0100】前記無機質粉末としては、次のものが好ま
しい。タップ密度は0.05〜2g/cc、好ましくは 0.2〜1.
5g/cc 、含水率は 0.1〜5%、好ましくは 0.2〜3%、
pHは2〜11、特に4〜10が好ましい。比表面積は1〜10
0m2 /g、好ましくは5〜70m 2 /g、更に好ましくは7〜5
00m2 /gである。結晶子サイズは0.01〜2μm が好まし
い。DBP を用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは
10〜80ml/100g 、更に好ましくは20〜60ml/100g であ
る。SA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m 2 、更
に好ましくは2〜15μmol/m 2 である。粉体表面のラフ
ネスファクターは0.8〜1.5 が好ましく、更に好ましく
は2〜15である。25℃での水への湿潤熱は 200〜600 er
g/cm2 が好ましい。又、この湿潤熱の範囲にある溶媒を
使用することができる。 100〜400 ℃での表面の水分子
の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点の
pHは3〜9の間にあることが好ましい。比重は1〜12、
好ましくは3〜6である。前記各無機質粉末の好ましい
モース硬度は、TiO2 が 5.5〜6.0 、α−Fe 2 3
が 5.0〜6.0 、BaSO4 が 3.0〜3.5 、α−Al2
3 が9.0 、ZnOが4.0 、SiO2 が 7.0である。
【0101】上記の無機質粉末は必ずしも100 %純粋で
ある必要はなく、目的に応じて表面を他の化合物、例え
ば、Al、Si、Ti、Zr、Sn、Sb、Zn等の各
化合物で処理し、それらの酸化物を表面に形成してもよ
い。その際、純度は70%以上であれば効果を減ずること
にはならない。強熱減量は20%以下であることが好まし
い。
【0102】本発明に用いられる無機質粉末の具体的な
例としては、昭和電工社製UA5600、UA5605、住友化
学社製AKP-20 、AKP-30 、AKP-50 、HIT-5
5 、HIT-100、ZA−G1、日本化学工業社製G5、
G7、S−1、戸田工業社製TF-100、TF-120、TF
-140、R516 、石原産業社製TTO-51 B、TTO-55
A、TTO-55 B、TTO-55 C、TTO-55 S、TT
O-55 D、FT-1000、FT-2000 、FTL-100、FT
L-200、M−1、S−1、SN-100、R-820、R-830、
R-930、R-550、CR-50 、CR-80 、R-680、TY-5
0 、チタン工業社製ECT-52 、STT-4D、STT-3
0 D、STT-30 、STT-65 C、三菱マテリアル社製
T−1、日本触媒社製NS−O、NS-3Y、NS-8Y、
テイカ社製MT-100S、MT-100T、MT-150W、MT
-500B、MT-600B、MT-100E、堺化学社製FINE
X-25 、BF−1、BF-10 、BF-20 、BF-1L、B
F-10 P、同和工業社製DEFIC−Y、DEFIC−
R、チタン工業社製Y−LOP及びそれを焼成した物で
ある。
【0103】本発明に使用される前記非磁性無機質粉末
としては、特に酸化チタン(特に二酸化チタン)が好ま
しい。以下、この酸化チタンの製法を詳しく記す。酸化
チタンの製法は主に硫酸法と塩素法がある。硫酸法は、
イルミナイトの原鉱石を硫酸で蒸留し、Ti、Feなど
を硫酸塩として抽出する。硫酸鉄を晶析分離して除き、
残りの硫酸チタニル溶液を濾過精製後、熱加水分解を行
って、含水酸化チタンを沈殿させる。これを濾過洗浄
後、夾雑物質を洗浄除去し、粒径調節剤などを添加した
後、80〜1000℃で焼成すれば粗酸化チタンとなる。ルチ
ル型とアナターゼ型は、加水分解の時に添加される核材
の種類に選り分けられる。この粗酸化チタンを粉砕、整
粒、表面処理などを施して作成する。塩素法は原鉱石天
然ルチルや合成ルチルが用いられる。鉱石は高温還元状
態で塩素化され、TiはTiCl4 にFeはFeCl2
となり、冷却により固体となった酸化鉄は液体のTiC
4 と分離される。得られた粗TiCl4 は精留により
精製した後、核生成剤を添加し、1000℃以上の温度で酸
素と瞬間的に反応させ、粗酸化チタンを得る。この酸化
分解工程で生成した粗酸化チタンに顔料的性質を与える
ための仕上げ方法は硫酸法と同じである。
【0104】又、本発明は前記下層にカーボンブラック
を使用することができ、公知の効果であるRs(表面電気
抵抗)等を下げることもできる。このカーボンブラック
として、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用
ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができ
る。比表面積は 100〜500m2 /g、好ましくは 150〜400
、DBP 吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml
/100gである。平均粒径は5 mμ〜80 mμ、好ましくは1
0〜50 mμ、更に好ましくは10〜50 mμである。pHは2
〜10、含水率は 0.1〜10%、タップ密度は 0.1〜1g/cc
が好ましい。
【0105】本発明に用いられる前記カーボンブラック
の具体的な例としては、キャボット社製、BLACKP
EARLS2000、1300、1000、900 、800 、880 、700
、VULCAN XC-72 、三菱化成工業社製#305
0、#3150、#3250、#3750、#3950、#2400B、#230
0、#1000、#970 、#950 、#900 、#850 、#650
、#40、MA40、MA-600、コロンビアカーボン社
製、CONDUCTEX SC、RAVEN社製8800、
8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、15
00、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC
などが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表
面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても表面の
一部をグラファイト化したものを使用しても構わない。
又、カーボンブラックを非磁性塗料に添加する前に予め
結合剤で分散しても構わない。これらのカーボンブラッ
クは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0106】本発明で使用できる前記カーボンブラック
は、例えば(「カーボンブラック便覧」、カーボンブラ
ック協会編)を参考にすることができる。本発明に使用
される非磁性有機質粉末は、アクリルスチレン系樹脂粉
末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、
フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン
系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹
脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹
脂粉末が使用される。その製法は、特開昭62-18564号、
同 60-255827号の各公報に記載されているようなものが
使用できる。
【0107】これらの非磁性粉末は、通常、結合剤に対
して、重量比率で20〜0.1 、体積比率で10〜0.1 の範囲
で用いられる。なお、一般の磁気記録媒体においては下
塗層を設けることが行われているが、これは支持体と磁
性層等の接着力を向上させるために設けられるものであ
って、厚さも0.5 μm 以下で本発明の下層非磁性層とは
異なるものである。本発明においても下層と支持体との
接着性を向上させるために下塗層を設けることが好まし
い。
【0108】本発明の前記磁性層に使用する前記強磁性
粉末としては、磁性酸化鉄FeOx(x=1.33〜1.5
)、Co変性FeOx(x=1.33〜1.5 )、Fe又
はNi又はCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金
粉末、バリウムフエライト、ストロンチウムフエライト
等の公知の強磁性粉末が使用できるが、強磁性合金粉末
が更に好ましい。。これらの強磁性粉末には所定の原子
以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、
Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、B
a、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、
Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、S
r、B等の原子を含んでも構わない。これらの強磁性粉
末には、後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防
止剤等で分散前に予め処理を行っても構わない。具体的
には、特公昭44-14090号、特公昭45-18372号、特公昭47
-22062号、特公昭47-22513号、特公昭46-28466号、特公
昭46-38755号、特公昭 47-4286号、特公昭47-12422号、
特公昭47-17284号、特公昭47-18509号、特公昭47-18573
号、特公昭39-10307号、特公昭48-39639号等の各公報、
及び米国特許第 3026215号、同 3031341号、同 3100194
号、同 3242005号、同 3389014号等の各明細書に記載さ
れている。
【0109】上記強磁性粉末の中で強磁性合金粉末につ
いては少量の水酸化物、または酸化物を含んでも良い。
強磁性合金粉末の公知の製造方法により得られたものを
用いることができ、下記の方法を挙げることができる。
複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素等の還元性
気体で還元する方法、酸化鉄を水素等の還元性気体で還
元してFeあるいはFe−Co粒子等を得る方法、金属
カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶
液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒ
ドラジン等の還元剤を添加して還元する方法、金属を低
圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法等であ
る。このようにして得られた強磁性合金粉末は、公知の
徐酸化処理、即ち有機溶剤に浸漬した後に乾燥させる方
法、有機溶剤に浸漬した後に酸素含有ガスを送り込んで
表面に酸化膜を形成し、しかる後、乾燥させる方法、有
機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して
表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したもので
も用いることができる。
【0110】本発明の前記上層の磁性層の強磁性粉末を
BET 法による比表面積で表せば25〜80m 2 /gであり、好
ましくは40〜70m 2 /gである。25m 2 /g以下ではノイズ
が高くなり、80m 2 /g以上では表面性が得にくく好まし
くない。本発明の前記上層の磁性層の強磁性粉末の結晶
子サイズは、 450〜100 Åであり、好ましくは 350〜10
0 Åである。前記酸化鉄磁性粉末の飽和磁化σS は50em
u/g 以上、好ましくは70emu/g 以上であり、強磁性金属
粉末の場合、100 emu/g 以上が好ましく、更に好ましく
は 110〜170emu/gである。保磁力Hcは1100Oe以上、2500
Oe以下が好ましく、更に好ましくは1400Oe以上、2000Oe
以下である。強磁性粉末の針状比は18以下が好ましく、
更に好ましくは12以下である。
【0111】前記強磁性粉末のr1500は1.5 以下である
ことが好ましい。更に好ましくはr1500は1.0 以下であ
る。r1500とは、磁気記録媒体を飽和磁化したのち反対
の向きに1500Oeの磁場をかけたとき、反転せずに残って
いる磁化量の%を示すものである。前記強磁性粉末の含
水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類に
よって強磁性粉末の含水率は最適化するのが好ましい。
γ酸化鉄のタップ密度は0.5g/cc 以上が好ましく、0.8g
/cc 以上が更に好ましい。合金粉末の場合、 0.2〜0.8g
/cc が好ましく、0.8g/cc 以上を使用すると強磁性粉末
の圧密過程で酸化が進み易く、充分な飽和磁化σS を得
ることが困難になる。0.2g/cc 以下では分散が不十分に
なり易い。
【0112】γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の
鉄に対する比は好ましくは0〜20%であり、更に好まし
くは5〜10%である。又、鉄原子に対するコバルト原子
の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。前記強磁
性粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化す
ることが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好まし
くは6〜10である。前記強磁性粉末は必要に応じ、A
l、Si、P又はこれらの酸化物等で表面処理を施して
も構わない。その量は強磁性粉末に対し 0.1〜10%であ
り、表面処理を施すと脂肪酸等の潤滑剤の吸着が100mg/
m 2 以下になり好ましい。前記強磁性粉末には可溶性の
Na、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む
場合があるが、500ppm以下であれば特に特性に影響を与
えない。
【0113】又、本発明に用いられる前記強磁性粉末は
空孔が少ない方が好ましく、その値は20容量%以下、更
に好ましくは5容量%以下である。又、形状については
先に示した条件を満足するように針状、粒状、米粒状、
板状等から選択される。前記強磁性粉末のSFD 0.6 以下
を達成するために、強磁性粉末のHcの分布を小さくする
必要がある。そのために、ゲータイトの粒度分布を良く
する、γ−ヘマタイトの焼結を防止する、コバルト変性
の酸化鉄についてはコバルトの被着速度を従来より遅く
する等の諸方法がある。
【0114】本発明には、又、磁化容易軸が平板の垂直
方向にある六角板状の強磁性粉末として、板状六方晶フ
エライト等が例示され、バリウムフエライト、ストロン
チウムフエライト、鉛フェライト、カルシウムフェライ
トの各置換体、Co置換体等、六方晶Co粉末が使用で
きる。具体的にはマグネトブランバイト型のバリウムフ
ェライト及びストロンチウムフェライト、更に一部スピ
ネル相を含有したマグネトブランバイト型のバリウムフ
ェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、
特に好ましいものとして、バリウムフェライト、ストロ
ンチウムフェライトの各置換体がある。又、保磁力を制
御するために上記六方晶フェライトにCo−Ti、Co
−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、
Ir−Zn等の元素を添加した物を使用することができ
る。
【0115】前記バリウムフェライトを用いる場合、板
径は六角板状の粒子の板の幅を意味し、電子顕微鏡を使
用して測定する。本発明ではこのを板径を 0.001〜1μ
m 、板厚を直径の 1/2〜1/20とすると良い。比表面積
(SBET )は、1〜60m 2 /gが好ましく、比重は4〜6
が好ましい。本発明の前記下層の非磁性層及び前記上層
の磁性層に使用される結合剤として、従来公知の熱可塑
系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が
使用される。前記熱可塑系樹脂として、ガラス転移温度
が−100 〜150 ℃、数平均分子量が1000〜20000 、好ま
しくは1000〜100000、重合度が約50〜1000程度のもので
ある。このような例として、塩化ビニル、酢酸ビニル、
ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル
酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタ
クリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエ
ン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、
ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体又は共
重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
又、前記熱硬化性樹脂又は反応型樹脂として、フエノー
ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素
樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹
脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ
−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネート
プレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリ
イソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシア
ネートの混合物等があげられる。
【0116】これらの樹脂については、朝倉書店発行の
「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されてい
る。又、公知の電子線硬化型樹脂を下層、または上層に
使用することも可能である。これらの例とその製造方法
については特開昭 62-256219号公報に詳細に記載されて
いる。
【0117】以上の樹脂は単独または組合せて使用でき
るが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル
酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコー
ル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体
の群から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の
組合せ、又はこれらにポリイソシアネートを組合せたも
のが挙げられる。
【0118】前記ポリウレタン樹脂の構造は、ポリエス
テルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエ
ーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポ
リウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタ
ン、ポリカプロラクトンポリウレタン等公知のものが使
用できる。ここに示した全ての結合剤について、より優
れた分散性と耐久性を得るために必要に応じ、−COO
M、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM1
(OM2 )、−OP=O(OM1 )(OM2 )、−NR
4 X(ここで、M、M1 、M 2 は、H、Li、Na、
K、−NR4 、−NHR3 を示し、Rはアルキル基もし
くはHを示し、Xはハロゲン原子を示す。)、OH、N
2 、N+ 3 、(Rは炭化水素基)、エポキシ基、S
H、CN等から選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を
共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ま
しい。このような極性基の量は10-1〜10-8mol/g であ
り、好ましくは10-2〜10-6mol/g である。
【0119】前記塩化ビニル系共重合体としては、好ま
しくは、エポキシ基含有塩化ビニル系共重合体が挙げら
れ、塩化ビニル繰返し単位と、エポキシ基を有する繰返
し単位と、所望により−SO3 M、−OSO3 M、−C
OOMおよび−PO(OM) 2 (Mは水素原子、又はア
ルカリ金属)等の極性基を有する繰返し単位とを含む塩
化ビニル系共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する
繰返し単位との併用では、−SO3 Naを有する繰返し
単位を含むエポキシ基含有塩化ビニル系共重合体が好ま
しい。
【0120】前記極性基を有する繰返し単位の共重合体
中における含有率は、通常 0.01 〜5.0mol%(好ましく
は、 0.5〜3.0 mol %)の範囲内にある。エポキシ基を
有する繰返し単位の共重合体中における含有率は、通常
1.0〜30mol %(好ましくは1〜20mol %)の範囲内に
ある。そして、塩化ビニル系重合体は、塩化ビニル繰返
し単位1モルに対して通常 0.01〜0.5 モル(好ましく
は01〜0.3 モル)のエポキシ基を有する繰返し単位を含
有するものである。
【0121】前記エポキシ基を有する繰返し単位の含有
率が1mol %より低いか、あるい塩化ビニル繰返し単位
1モルに対するエポキシ基を有する繰返し単位の量が0.
01モルより少ないと、塩化ビニル系共重合体からの塩酸
ガスの放出を有効に防止することができないことがあ
り、一方、 30mol%より高いか、あるいは塩化ビニル繰
返し単位1モルに対するエポキシ基を有する繰返し単位
の量が 0.5モルより多いと、塩化ビニル系共重合体の硬
度が低くなることがあり、これを用いた場合、磁性層の
走行耐久性が低下することがある。
【0122】又、特定の極性基を有する繰返し単位の含
有率が 0.01mol%より少ないと、強磁性粉末の分散性が
不充分となることがあり、 5.0 mol%より多いと、共重
合体が吸湿性を有するようになり耐候性が低下すること
がある。通常、このような塩化ビニル系共重合体の数平
均分子量は、1.5 万〜6万の範囲内にある。
【0123】このようなエポキシ基と特定の極性基を有
する塩化ビニル系共重合体は、例えば、次のようにして
製造することができる。例えば、エポキシ基と、極性基
として−SO3 Naとが導入されている塩化ビニル系共
重合体を製造する場合、反応性二重結合と、極性基とし
て−SO3 Naとを有する2−(メタ)アクリルアミド
−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(反応性二
重結合と極性基とを有する単量体)及びジグリシジルア
クリレートを低温で混合し、これと塩化ビニルとを加圧
下に、 100℃以下の温度で重合させることにより製造す
ることができる。
【0124】上記の方法による極性基の導入に使用され
る反応性二重結合と極性基とを有する単量体の例とし
て、上記の2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプ
ロパンスルホン酸ナトリウムの外に2−(メタ)アクリ
ルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスル
ホン酸及びそのナトリウムあるいはカリウム塩、(メ
タ)アクリル酸−2−スルホン酸エチルおよびナトリウ
ムあるいはカリウム塩、(無水)マレイン酸及び(メ
タ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−2−リン酸エス
テルを挙げることができる。
【0125】又、エポキシ基の導入には、反応性二重結
合とエポキシ基とを有する単量体として一般にグリシジ
ル(メタ)アクリレートを用いる。なお、上記の製造法
の外に、例えば、塩化ビニルとビニルアルコール等との
重合反応により多官能−OHを有する塩化ビニル系共重
合体を製造し、この共重合体と、以下に記載する極性基
および塩素原子を含有する化合物とを反応(脱塩酸反
応)させて共重合体に極性基を導入する方法を利用する
ことができる。
【0126】ClCH2 CH2 SO3 M、ClCH2
2 OSO3 M、ClCH2 COOM、ClCH2 PO
(OM)2 又、この脱塩酸反応を利用するエポキシ基の導入には、
通常、エピクロルヒドリンを用いる。
【0127】なお、前記塩化ビニル系共重合体は、他の
単量体を含むものであっても良い。他の単量体の例とし
て、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル、イソ
ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル)、α
−モノオレフィン(例、エチレン、プロピレン)、アク
リル酸エステル(例、(メタ)アクリル酸メチル、ヒド
ロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を含有す
る(メタ)アクリル酸エステル)、不飽和ニトリル
(例、(メタ)アクリロニトリル)、芳香族ビニル
(例、スチレン、α−メチルスチレン)、ビニルエステ
ル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)が挙げら
れる。
【0128】本発明に用いられるこれらの結合剤の具体
的な例として、ユニオンカーバイト社製:VAGH、V
YHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、V
YES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、P
KHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業
社製:MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TA
L、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、
MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製:1000
W、DX80、DX81、DX82、DX83、100 FD、日本
ゼオン社製:MR105 、MR110 、MR100 、400 X11
0 A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN23010、N
2302、N2304、大日本インキ社製:パンデックスT−51
05、T−R3080、T−5201、バーノックD−400 、D−
210-80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製:バイロン
UR8200、UR8300、UR8600、UR5500、UR4300、
RV530 、RV280 、大日精化社製:ダイフエラミン40
20、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社
製:MX5004、三洋化成社製:サンプレンSP−150 、
旭化成社製:サランF310 、F210 等が挙げられる。
【0129】本発明の前記上層の磁性層に用いられる結
合剤は、強磁性粉末に対し5〜50重量%の範囲、好まし
くは10〜35重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹
脂を用いる場合、5〜30重量%、ポリウレタン樹脂を用
いる場合、2〜20重量%、ポリイソシアネートは2〜20
重量%の範囲でこれらを組合せて用いるのが好ましい。
【0130】本発明の前記下層の非磁性層に用いられる
結合剤は、非磁性粉末に対し合計で5〜50重量%の範
囲、好ましくは10〜35重量%の範囲で用いられる。又、
塩化ビニル系樹脂を用いる場合、3〜30重量%、ポリウ
レタン樹脂を用いる場合、3〜30重量%、ポリイソシア
ネートは0〜20重量%の範囲でこれらを組合せて用いる
のが好ましい。
【0131】又、本発明において分子量3万以上のエポ
キシ基含有樹脂を非磁性粉末に対し3〜30重量%使用す
る場合、エポキシ基含有樹脂以外の樹脂を非磁性粉末に
対し3〜30重量%使用でき、ポリウレタン樹脂を用いる
場合、3〜30重量%、ポリイソシアネートは0〜20重量
%使用できるが、エポキシ基は結合剤(硬化剤を含む)
全重量に対し4×10-5〜16×10-4eq/gの範囲で含まれる
ことが好ましい。
【0132】本発明において、ポリウレタン樹脂を用い
る場合はガラス転移温度は -50〜100 ℃、破断伸びは 1
00〜2000%、破断応力は0.05〜10kg/cm 2 、降伏点は0.
05〜10kg/cm 2 が好ましい。本発明の磁気記録媒体は、
少なくとも二層から成る。従って、結合剤量、結合剤中
に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイ
ソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を
形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは、先に述
べた樹脂の物理特性等を必要に応じ下層の非磁性層と上
層の磁性層で変えることが勿論可能である。
【0133】本発明に用いる前記ポリイソシアネートと
しては、トリレンジイソシアネート、4−4′−ジフエ
ニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシ
アネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−
1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンイソシアネ
ート、イソホロンジイソシアネート、トリフエニルメタ
ントリイソシアネート等のイソシアネート類、又、これ
らのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、
又、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソ
シアネート等を使用することができる。これらのイソシ
アネート類の市販されている商品名として、日本ポリウ
レタン社製:コロネートL、コロネートHL、コロネー
ト2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネ
ートMTL、武田薬品社製:タケネートD-102、タケネ
ートD-110N、タケネートD-200、タケネートD-202、
住友バイエル社製:デスモジュールL、デスモジュール
IL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があ
り、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つも
しくはそれ以上の組合せで前記下層の非磁性層及び前記
上層の磁性層に用いることができる。
【0134】本発明の前記上層の磁性層に使用される前
記カーボンブラックは、ゴム用フアーネス、ゴム用サー
マル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用
いることができる。比表面積は5〜500m2 /g、DBP 吸油
量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμ〜300mμ、pHは2〜
10、含水率は 0.1〜10%、タップ密度は 0.1〜1g/ccが
好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体
的な例として、キャボット社製:BLACKPEARL
S2000、1300、1000、900 、800 、700 、VULCAN
XC-72 、旭カーボン社製:♯80、♯60、♯55、♯50、
♯35、三菱化成工業社製:♯2400B、♯2300、♯900 、
♯1000、♯30、♯40、♯10B、コンロンビアカーボン社
製:CONDUCTEX SC、RAVEN150 、50,
40,15等が挙げられる。カーボンブラックを分散剤等で
表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表
面の一部をグラフアイト化したものを使用しても構わな
い。又、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前に予
め結合剤で分散しても構わない。これらのカーボンブラ
ックは単独又は組合せで使用することができる。カーボ
ンブラックを使用する場合、強磁性粉末に対する量の
0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラック
は磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強
度向上等の働きがあり、これらは用いるカーボンブラッ
クにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカ
ーボンブラックは、下層及び上層でその種類、量、組合
せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pH等の先に示
した諸特性をもとに、目的に応じて使い分けることは勿
論可能である。本発明の上層で使用できるカーボンブラ
ックは、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボン
ブラック協会編)を参考にすることができる。
【0135】本発明の前記上層の磁性層に用いられる前
記研磨剤としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β
−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、
α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪
素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化
珪素、窒化ホウ素等を主とし、モース硬度6以上の公知
の材料が単独又は組合せで使用される。又、これらの研
磨剤同士の複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理した
もの)を使用しても良い。これらの研磨剤には主成分以
外の化合物又は元素が含まれる場合もあるが、主成分が
90%以上であれば効果に変わりがない。これら研磨剤の
粒子サイズは0.01〜2 μm が好ましいが、必要に応じて
粒子サイズの異なる研磨剤を組合せたり、単独の研磨剤
でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもで
きる。タップ密度は 0.3〜2g/cc 、含水率は 0.1〜5
%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m 2 /gが好ましい。
本発明に用いられる前記研磨剤の形状は針状、球状、サ
イコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有す
るものが研磨性が高く好ましい。
【0136】本発明に用いられる前記研磨剤の具体的な
例として、住友化学社製:AKP−20,AKP-30 ,A
KP-50 ,HIT-50 、日本化学工業社製:G5 ,G7
,S-1、戸田工業社製:TF-100、TF-140、100 E
D、140 ED等が挙げられる。本発明に用いられる前記
研磨剤は下層及び上層で種類、量および組合せを変え、
目的に応じて使い分けることは勿論可能である。これら
の研磨剤は予め結合剤で分散処理した後、磁性塗料中に
添加しても構わない。
【0137】本発明に使用される前記添加剤として、潤
滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果等をもつも
のが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステ
ン、グラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコー
ンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコ
ーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、
フッ素含有エステル、ポリオレフイン、ポリグリコー
ル、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ア
ルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフエ
ニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそ
のアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不
飽和結合を含んでも、又分岐していても構わない)、及
びこれらの金属塩(Li,Na,K,Cu等)又は、炭
素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アル
コール(不飽和結合を含んでも、又、分岐していても構
わない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素
数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、ま
た分岐していても構わない)と炭素数2〜12の一価、二
価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ
(不飽和結合を含んでも、又、分岐していても構わな
い)とから成るモノ脂肪酸エステル又はジ脂肪酸エステ
ル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物
のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜
22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン等が使
用できる。これらの具体例として、ラウリン酸、ミリス
チン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステ
アリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン
酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン
酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オ
クチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソル
ビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステ
アレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オ
レイルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられ
る。
【0138】又、アルキレンオキサイド系、グリセリン
系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキ
サイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、
エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイ
ン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム
類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォ
ン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性
基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスル
ホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル
類、アルキルベダイン型等の両性界面活性剤も使用でき
る。これらの界面活性剤について、「界面活性剤便覧」
(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。こ
れらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも 100%純粋では
なく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解
物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの
不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下
である。
【0139】本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面
活性剤は前記下層の非磁性層及び上層の磁性層でその種
類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、
前記下層の非磁性層及び前記上層の磁性層で融点の異な
る脂肪酸を用いて表面への滲み出しを制御する、沸点や
極性の異なるエステル類を用いて表面への滲み出しを制
御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を
向上させる、潤滑剤の添加量を前記下層の非磁性層で多
くして潤滑効果を向上させる等が考えられ、勿論ここに
示した例のみに限られるものではない。
【0140】又、本発明で用いられる前記添加剤の全て
又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加しても
構わない。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する
場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加
する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する
場合、塗布直前に添加する場合等がある。本発明で使用
されるこれら潤滑剤の商品例として、日本油脂社製:N
AA-102,NAA-415,NAA-312,NAA-160,NA
A-180,NAA-174,NAA-175,NAA-222,NAA
-34 ,NAA-35 ,NAA-171,NAA-122,NAA-1
42,NAA-160,NAA-173K,ヒマシ硬化脂肪酸,N
AA-42 ,NAA-44 ,カチオンSA,カチオンMA,
カチオンAB,カチオンBB,ナイミーンL-201,ナイ
ミーンL-202,ナイミーンS-202,ノニオンE-208,ノ
ニオンP-208,ノニオンS-207,ノニオンK-204,ノニ
オンNS-202,ノニオンNS-210,ノニオンHS-206,
ノニオンL-2,ノニオンS-2,ノニオンS-4,ノニオン
O-2,ノニオンLP-20 R,ノニオンPP-40 R,ノニ
オンSP-60 R,ノニオンOP-80 R,ノニオンOP-8
5 R,ノニオンLT-221,ノニオンST-221,ノニオン
OT-221 ,モノグリMB,ノニオンDS-60 ,アノン
BF,アノンLG,ブチルステアレート,ブチルラウレ
ート,エルカ酸、関東化学社製:オレイン酸、竹本油脂
社製:FAL-205,FAL-123、新日本理化社製:エヌ
ジエルブLO,エヌジョルブIPM,サンソサイザーE
4030、信越化学社製:TA-3,KF-96 ,KF-96L,
KF-96 H,KF410 ,KF420 ,KF965 ,KF54,
KF50,KF56,KF-907,KF-851,X-22-819 ,X
-22-822 ,KF-905,KF-700,KF-3393,KF-85
7,KF-860,KF-865,X-22-980 ,KF-101,KF-
102,KF-103 ,X-22-3710,X-22-3715,KF-910,
KF-3935 、ライオンアーマー社製:アーマイドP,ア
ーマイドC,アーモスリップCP、ライオン油脂社製:
デュオミンTDO、日清製油社製:BA-41 G、三洋化
成社製:プロフアン2012E,ニューポールPE61,イオ
ネットMS-400,イオネットMO-200,イオネットDL
-200,イオネットDS-300,イオネットDS-1000,イオ
ネットDO-200等が挙げられる。
【0141】本発明で用いられる前記有機溶媒は、任意
の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブ
チルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、
イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタ
ノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソ
ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシ
クロヘキサノール、などのアルコール類、酢酸メチル、
酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸
エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジ
メチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオ
キサン等のグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族
炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライ
ド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリ
ン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−
ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用でき
る。これら有機溶媒は必ずしも100 %純粋ではなく、主
成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化
物、水分等の不純分が含まれても構わない。これらの不
純分は30重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量
%以下である。本発明で用いる有機溶媒は必要ならば上
層と下層で同じ種類であることが好ましい。その添加量
は変えても構わない。下層に表面張力の高い溶媒(シク
ロヘキサノン、ジオキサン等)を用いて塗布の安定性を
向上させ、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が下層
溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。
分散性を向上させるために、ある程度極性が強い方が好
ましく、前記下層の非磁性層と前記上層の磁性層の塗布
液に用いた各溶剤の溶解パラメーターが8〜11であり、
20℃で15以上の誘電率の溶剤が15%以上含まれることが
好ましい。
【0142】本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、非磁
性支持体が1〜100 μm 、好ましくは4〜80μm 、下層
が 0.5〜10μm 、好ましくは1〜5μm 、上層は0.05μ
m 以上1.0 μm 以下、好ましくは0.05μm 以上 0.6μm
以下、更に好ましくは0.05μm 以上、 0.3μm 以下であ
る。前記上層の磁性層は、前記下層の非磁性層より薄い
ことが好ましい。上層と下層を合わせた厚みは前記非磁
性支持体の厚みの 1/100〜2倍の範囲で用いられる。
又、前記非磁性支持体と下層の間に密着性向上のための
下塗り層を設けても構わない。これらの厚みは0.01〜2
μm 、好ましくは0.05〜0.5 μm である。又、前記非磁
性支持体の磁性層側と反対側にバックコート層を設けて
も構わない。この厚みは 0.1〜2 μm 、好ましくは 0.3
〜1.0 μm である。これらの下塗り層及びバックコート
層は公知のものが使用できる。
【0143】本発明に用いられる前記非磁性支持体は、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレー
ト、等のポリエステル類、ポリオレフイン類、セルロー
ストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポ
リイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミ
ド、芳香族ポリアミド等の公知のフイルムが使用でき
る。これらの支持体には予めコロナ放電処理、プラズマ
処理、易接着処理、熱処理、除塵処理等を行っても良
い。本発明の目的を達成するには、非磁性支持体として
中心線平均表面粗さが0.03μm 以下、好ましくは0.02μ
m 以下、更に好ましくは0.01μm 以下のものを使用する
必要がある。又、これらの非磁性支持体は単に中心線平
均表面粗さが小さいだけではなく、1 μm 以上の粗大突
起がないことが好ましい。又、表面の粗さ形状は、必要
に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量によ
り自由にコントロールされるものである。これらのフィ
ラーの一例として、Ca、Si、Tiなどの酸化物や炭
酸塩の他、アクリル系等の有機微粉末が挙げられる。
【0144】又、前記非磁性支持体のテープ走行方向の
F−5値は、好ましくは5〜50kg/mm 2 、テープ幅方向
のF-5値は、好ましくは3〜30kg/mm 2 であり、テープ
長手方向のF-5値がテープ幅方向のF-5値より高いのが
一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があ
るときはその限りではない。又、前記非磁性支持体のテ
ープ走行方向及び幅方向の 100℃×30分での熱収縮率
は、好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5 %以下、
80℃×30分での熱収縮率が好ましくは1%以下、更に好
ましくは0.5 %以下である。その破断強度は両方向とも
5〜100kg/mm 2、弾性率は 100〜2000kg/mm 2 が好まし
い。
【0145】本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造す
る工程は、少なくとも混練工程、分散工程及びこれらの
工程の前後に必要に応じて設けた混合工程から成る。個
々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていても構わな
い。本発明に使用する強磁性粉末、結合剤、カーボンブ
ラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤等全ての原
料はどの工程の最初又は途中で添加しても構わない。
又、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加しても
構わない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工
程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入
しても良い。
【0146】本発明の目的を達成するために、従来の公
知の製造技術を一部の工程として用いることができるこ
とは勿論であるが、混練工程で連続ニーダや加圧ニーダ
等の強い混練力をもつものを使用することにより、本発
明のような残留磁束密度Brが高い磁気記録媒体を得るこ
とができる。前記連続ニーダ又は加圧ニーダを用いる場
合、強磁性粉末と結合剤の全て又はその一部(但し全結
合剤の30重量%以上が好ましい)及び強磁性粉末100 部
に対し15〜500 部の範囲で混練処理される。これらの混
練処理の詳細について、特開平1-106338号及び特開昭64
-79274号の各公報に記載されている。又、前記下層の非
磁性層液を調製する場合、高比重の分散メディアを用い
ることが望ましく、ジルコニアビーズ、金属ビーズ等が
好適である。
【0147】本発明では、特開昭 62-212933号公報に示
されるような同時重層塗布方式を用いることにより、よ
り効率的に生産することができる。しかしながら、本発
明媒体はこれらの同時重層塗布方式以外の塗布方式、例
えば、従来の逐次 WET on DRY 塗布方式、逐次 WET on
DRY 塗布方式、あるいは略同時 WET on WET 塗布方式で
あっても、前述したような強磁性体、非磁性粉末、結合
剤、非磁性支持体等の材質、形状、サイズ等を適宜選択
し組み合わせることにより、その生産性が若干の見劣り
することがあっても、重層塗布製品としての品質が維持
されたテープの提供が可能であることは容易に理解され
るであろう。前述したような重層構成の磁気記録媒体を
塗布する装置、方法の具体例として、以下のような構成
を提案できる。 1)磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗
布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗
布装置等により、先ず下層を塗布し、下層が湿潤状態の
うちに特公平 1-46186号、特開昭 60-238179号、特開平
2-265672号等の各公報に開示されている支持体加圧式エ
クストルージョン型塗布装置により上層を塗布する。 2)特開昭63-88080号、特開平 2-17921号、特開平2-26
5672号等の各公報に開示されているような塗布液通過ス
リットを二つ内蔵する塗布ヘッドにより上層及び下層を
略同時に塗布する。 3)特開平2-174965号公報に開示されているバックアッ
プロール付きエクストルージョン型塗布装置により上層
及び下層を略同時に塗布する。 なお、強磁性粉末の凝集による磁気記録媒体の電磁変換
特性等の低下を防止するため、特開昭62-95174号、特開
平1-236968号等の各公報に開示されているような方法に
より塗布ヘッド内部の塗布液に剪断を付与することが望
ましい。更に、塗布液の粘度については、特願平1-3126
59号公報に開示されている数値範囲を満足することが好
ましい。
【0148】本発明の一実施態様として、上記の下層用
塗布液の湿潤状態に上層塗布液を重畳して塗布する、所
謂 WET on WET 塗布方式によって、非磁性支持体上に各
塗布層を層設する。本発明において下層と上層を層設す
るために用いる WET on WET 塗布方式とは、初め下層を
塗布した後、湿潤状態にある該下層の上に可及的速やか
に次の上層を塗布する所謂逐次塗布方法、あるいは同時
にエクストルージョン塗布方式で塗布する方法等をい
う。この塗布方式としては、特開昭 61-139929号公報に
示した磁気記録媒体塗布方法が使用できる。
【0149】図2は、本発明の一実施態様に基づき上下
両層を塗布するのに用いられる逐次塗布方式の一例を示
す説明図であって、連続的に走行するポリエチレンテレ
フタレート等の可撓性支持体1に、ローラコート方式の
塗布機3にて下層用塗布液2を塗布し、その直後にスム
ージングロール4にて該塗布面を平滑化し、該塗布液2
から成る下層塗布膜が湿潤状態にある内に、更に、下流
側に配設されたエクストルージョン方式の塗布機6によ
り上層用塗布液5を塗布して上層塗布膜を層設する。
【0150】図3は、本発明の他の実施態様に基づき上
下両層を塗布するのに好ましく用いられるエクストルー
ジョン型の同時多重塗布方式の一例を示す説明図であっ
て、バックアップロール7によりその走行方向が反転、
支持された前記可撓性支持体1上に、エクストルージョ
ン方式の同時多重塗布機8を用いて前記下層用塗布液2
と前記上層用塗布液5とを同時に塗布して上下両層を層
設するものである。両層を塗布した後に、磁場配向、乾
燥、平滑化処理を施して磁気記録媒体とする。
【0151】本発明の媒体を得るために、強力な磁場配
向を行う必要がある。そのために、1000G(ガウス)以
上のソレノイドと、2000G以上のコバルト磁石を併用す
ることが好ましく、更に、乾燥後の配向性が最も高くな
るように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが好
ましい。又、ディスク用媒体の製造のために本発明を適
用する場合、その配向をランダマイズするような方法が
採られる。
【0152】更に、カレンダ処理ロールとしてエポキ
シ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐
熱性のあるプラスチックロールと金属ロール、又は、金
属ロールと金属ロールとの組み合わせで処理する。その
処理温度は、好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃
以上である。処理ロールにおける線圧力は好ましくは20
0 kg/cm 、更に好ましくは 300 kg/cm以上、その速度は
20m/分〜700 m/分の範囲である。本発明のカレンダ
処理効果は、80℃以上の温度で300 kg/cm 以上の線圧力
でより一層向上させることができる。
【0153】前述したカレンダー処理後、磁性層、バッ
ク層、及び非磁性層の硬化を促進させるために、40〜80
℃のサーモ処理を施すこともある。本発明の磁気記録媒
体の上層表面及びその反対面(テープ裏面)のステンレ
ス鋼(SUS 420J)に対する摩擦係数は、好ましくは0.5
以下、更に0.3 以下、磁性層表面固有抵抗は104 〜1011
Ω/sq 、下層を単独で塗布した場合の表面固有抵抗は10
4 〜108 Ω/sq 、BC層の表面電気抵抗は103 〜109 Ω/s
q が好ましい。
【0154】前記上層及び下層が有する空隙率は、とも
に好ましくは30容量%以下、更に好ましくは20容量%以
下である。前記空隙率は高出力を果たすために、小さい
方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が
良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるデ
ータ記録用磁気記録媒体では、前記空隙率が大きい方が
走行耐久性は好ましいことが多い。これらの値を目的に
応じた適当な範囲に設定することは容易に実施できるも
のである。
【0155】本発明の磁気記録媒体の磁気特性は磁場5k
Oeで測定した場合、テープ走行方向の角形比が0.70以上
であり、好ましくは0.80以上更に好ましくは0.90以上で
ある。テープ走行方向に直角な二つの方向の角型比は、
走行方向の角型比の80%以下となることが好ましい。磁
性層の SFDは 0.6以下であることが好ましい。
【0156】本発明の磁気記録媒体は、前記下層と上層
を有するが、目的に応じ前記上層及び下層の物理特性を
変えることができるのは容易に推考されることである。
本発明の磁気記録媒体は基本的には、前記上層の磁性層
と前記下層の非磁性層の二層からなるが、三層以上であ
っても良い。三層以上の構成としては、前記上層の磁性
層を2層以上の複数の磁性層することである。この場
合、最上層の磁性層と下層の磁性層との関係は通常の複
数の磁性層の考え方が適用できる。例えば、前記最上層
の磁性層の方が前記下層の磁性層よりも抗磁力が高く、
平均長軸長や結晶子サイズの小さい強磁性粉末を用いる
等の考え方が適用できる。又、前記下層の非磁性層を複
数の磁性層で形成しても構わない。しかし、大別すれば
前記上層の磁性層及び前記下層の非磁性層と言う構成で
ある。
【0157】
【実施例】次に、実施例と比較例を示し、本発明を更に
具体的に説明する。各例において、「部」は特に指定し
ない限り、「重量部」を意味する。
【0158】(実施例1)以下の処方で前記上層の磁性
層用塗布液及び前記下層の非磁性層用塗布液を調製し
た。 〔下層の非磁性層用塗布液〕 無機質粉末 TiO 2 90部 平均粒径 0.035 μm 結晶系 ルチル TiO 2 含有量 90%以上 表面処理剤 Al2 O 3 BET 法による比表面積 35〜45m 2 /g DBP 吸油量 27〜38g/100g pH 6.5 〜8 カーボンブラック 10部 平均粒径 16 mμ DBP 吸油量 80ml/100g pH 8.0 BET 法による比表面積 250m 2 /g 揮発分 1.5 % 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 12部 −N(CH3 3 + Cl- の極性基を5×10-6eq/g含む 組成比 86:13:1 重合度 400 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3 Na基 1×10-4eq/g含有 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 1部 メチルエチルケトン 200部 シクロヘキサノン 80部 〔上層の磁性層用塗布液〕 強磁性金属微粉末 組成 Fe/Zn/Ni=92/4/4 100部 保磁力Hc 1600Oe BET 法による比表面積 60m 2 /g 結晶子サイズ 195 Å 平均長軸長 0.20μm 、針状比 10 飽和磁化σS :130 emu/g 塩化ビニル系共重合体 12部 −SO3 Na基 1×10-4eq/g含有、重合度300 ポリエステルポリウレタン樹脂 3部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3 Na基 1×10-4eq/g含有 α−アルミナ(平均粒径 0.2 μm ) 2部 カーボンブラック(平均粒径 0.10μm ) 8部 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2部 メチルエチルケトン 200部 上記2種類の塗布液の夫々について、各成分を連続ニー
ダーで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得
られた分散液にポリイソシアネートを、前記下層の非磁
性層の塗布液には1部、前記上層の磁性層の塗布液には
3部を加え、更に夫々に酢酸ブチル40部を加え、1μm
の平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、前記下
層の非磁性層用及び前記上層の磁性層用の塗布液を夫々
調製した。
【0159】得られた前記下層の非磁性層塗布液を乾燥
後の厚さが、3μm になるように更にその直後にその上
に前記上層の磁性層の厚さが 0.5μm になるように、厚
さ7μm で中心平均表面粗さが0.01μm のポリエチレン
ナフタレート支持体上に同時重層塗布を行い、両層がま
だ湿潤状態にあるうちに3000ガウスの磁力をもつコバル
ト磁石と、1500ガウスの磁力をもつソレノイドにより磁
場配向させ、乾燥後、金属ロールのみから構成される7
段のカレンダーで温度90℃にて処理を行い、8mm の幅に
スリットし、実施例 1-1の8mm ビデオテープを製造し
た。
【0160】また、同様に表1〜2に記載の因子を変更
して試料、実施例 1-2〜1-10、比較例 1-1〜1-7 を作成
し、性能を下記により評価し、その結果を表1〜2に示
した。 1.下層無機質粉末の体積比率(充填率) ダイヤモンドカッターで媒体を約 0.1μm に切り出して
試験片を作成し、これを透過型電子顕微鏡で観察した。
この透過型電子顕微鏡写真映像から1μm 2 当たりの無
機質粉末粒子個数を勘定して、切り出した試験片の厚味
を計算に入れて、単位体積当たりに含まれる無機質粉末
の粒子個数を計測し、又、同じ写真から求めた粉体粒子
径より1個当たりの体積を求めて単位体積当たりに含ま
れる無機質粉末粒子個数を乗じて、無機質粉末の体積比
率を求めた。計算式は以下の通りである。
【0161】下層用無機質粉末の体積比率=3 π/3(D/
2) 3 (n/t) ×100 (%) D :切片写真から求めた粉体の粒子径(μm ) n :切片写真から求めた単位面積当たりに含まれる粉体
の個数(個/μm 2 ) t :切片の厚味(μm )
【0162】2.上層の磁性層の粉体体積比率 強磁性粉末密度は下式から求めることができる。 dM=Bm/4πσS ここで、Bm(ガウス):残留磁束密度 dM(g/cc):強磁性粉末密度 σS (emu/g) :強磁性粉末の持つ磁化量 強磁性粉末の上層における体積比率は、上記密度を強磁
性粉末の比重で割ることにより求まる。又、磁性層中の
他の粉体成分及び結合剤の密度は磁性層処方量より算出
し、各粉体成分の比重で割ることにより、各粉体成分の
体積比率が求まり、これらを合計することにより上層の
粉体体積比率が求まる。 3.無機質粉末の平均粒径 透過型電子顕微鏡より長軸の平均粒子径を求めた。 4.強磁性金属粉末の結晶子サイズ X線回折により(1,1,0) 面と(2,2,0) 面の回折線の半値
幅の広がり分から求めた。 5.表面粗さRrms 走査型トンネル顕微鏡(STM) の測定は、Digital Instru
ment社製のNanoscopeIIを用いトンネル電流10A、バイ
アス電圧400mV の条件で6μm ×6μm の範囲をスキャ
ンして下式数1より求めた。
【0163】
【数1】
【0164】6.磁性層厚み平均値d の標準偏差σ テープ断面を透過型電子顕微鏡(TEM) にて撮影(倍率20
000 倍)し、前記の定義に従って求めた。 7.7MHz出力 富士写真フィルム社製FUJIX8 8mmビデオデッキを用いて
7MHzの信号を記録し、この信号を再生したときの7MHz信
号再生出力をオシロスコープで測定した。リファレンス
は富士写真フィルム(株)社内リファレンスである。 8.ピンホール 磁性層塗布後でバック層を塗布する前に透過光で磁性層
を目視観察して100m2当たりのピンホールを測定した。1
00m2 当たり1個以内であることが望ましい。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】表1〜2に示す通り、実施例試料は、前記
下層の非磁性層に含まれる無機質粉末の平均粒径が、前
記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末の結晶子サイズの
1/2〜4倍であるため表面粗さRrms が小さく、且つd/
Rrms が30以上、標準偏差σが0.2 μm 以下と一様且つ
表面性が優れた磁性層が形成され、再生出力が高く、且
つピンホールが極めて少なく優れた磁気記録媒体であっ
た。一方、比較例 1-1は、(無機質粉末の平均粒径/強
磁性粉末の結晶子サイズ)が所定の範囲より大き過ぎる
ためRrms が大きくなり再生出力が改善されなかった。
比較例 1-2は、(無機質粉末の平均粒径/強磁性粉末の
結晶子サイズ)が所定の範囲より小さ過ぎるためにRrm
s が大きくなり再生出力が改善されなかった。比較例 1
-3は、磁性層の厚味d は 1.2μm と厚いため再生出力が
やや劣った。比較例 1-4は、磁性層のみの単層磁気記録
媒体であった。比較例 1-5は、無機質粉末の添加量が少
ないためにRrms が大きくなりσの値も 0.2以上であ
り、電磁変換特性が改善されなかった。比較例 1-6は、
粉体の体積比率が小さ過ぎるため、Rrms が大きく電磁
変換特性が改善されなかった。
【0168】(実施例2)以下の処方で前記上層の磁性
層用塗布液及び前記下層の非磁性層用塗布液を調製し
た。 〔下層の非磁性層〕;実施例 1-1と同じ 〔上層の磁性層用塗布液〕 Co変性γFe2 3 100部 保磁力 Hc 700 Oe BET 法による比表面積 42 m 2 /g 結晶子サイズ 300 Å 飽和磁化σS 75 emu/g 塩化ビニル系共重合体 9部 −SO3 Na基 1×10-5eq/g含有、重合度300 微粒子研磨剤(Cr2 O、平均粒径 0.3 μm ) 7部 トルエン 30部 メチルエチルケトン 30部 上記の組成物をニーダーで約1時間混練した後、更に下
記組成物を加えニーダーで約2時間分散を行った。
【0169】 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3 Na基 1×10-4eq/g含有 平均分子量 35000 トルエン 200部 メチルエチルケトン 200部 次いで、下記カーボンブラック及び粗粒子研磨剤を添
加、サンドグラインダーにて分散処理を行った。
【0170】 カーボンブラック(平均粒径 20〜30 mμ) 5部 ライオンアクゾ社製ケッチェンブラックEC 粗粒子研磨剤 2部 α−アルミナ(住友化学社製AKP-12 、平均粒径 0.5 μm ) 更に、下記組成物を加え、再度サンドグラインダー分散
し、上層磁性層用塗布液を得た。
【0171】 ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 6部 トリデシルステアレート 6部 以上のようにして得られた前記上層の磁性層用塗布液と
前記下層の非磁性層用塗布液を厚さ75μm のポリエチレ
ンテレフタレート上に先ず、前記下層の非磁性層用塗布
液を、次に湿潤状態にある内に前記上層の磁性層用塗布
液を塗布し、裏面にも同様に処理した。乾燥膜厚で前記
下層の非磁性層の厚味が 1.5μm 、磁性層の厚味が 0.5
μm となるようにした。その後、カレンダー処理を施し
て磁気記録媒体を得た。しかる後、この磁気記録媒体を
3.5 吋径に打ち抜き、ライナーが内側に設置済みの3.5
吋カートリッジに入れ、所定の機構部品を付加し、実施
例2-1の3.5 吋フロッピーディスクを得た。又、同様に
表3に記載の因子を変更して試料、実施例 2-2〜2-5 、
比較例 2-1〜2-3 を作成し、性能を下記により評価し、
その結果を表3に示した。 1.下層無機質粉末の体積比率(充填率);実施例1と
同じであった。 2.無機質粉末の平均粒径;実施例1と同じであった。 3.酸化鉄磁性粉の結晶子サイズ;X線回折により、
(4,4,0) 面と(2,2,0) 面の回折線の広がり分から求め
た。 4.表面粗さRrms ;実施例1と同じであった。 5.標準偏差σ;実施例1と同じ方法であった。 6.最内周2F出力相対値(%);実施例 2-1の初期2
F出力値として算出した。使用ドライブは PD211東芝株
式会社製であった。
【0172】
【表3】
【0173】表3より明らかな通り、実施例試料は、前
記下層の非磁性層に含まれる無機質粉末の平均粒径が、
前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末の結晶子サイズ
の 1/2〜4倍であるために表面粗さRrms が小さく、且
つd/Rrmsが30以下、σが0.2μm 以下と一様且つ表面性
が優れた磁性層が形成され、再生出力が高く、且つピン
ホールが極めて少なく優れた磁気記録媒体であった。一
方、比較例 2-1は、(無機質粉末の平均粒径/強磁性粉
末の結晶子サイズ)が所定の範囲より大きすぎるためR
rms が大きくなり出力が改善されなかった。比較例 2-2
は、(無機質粉末の平均粒径/強磁性粉末の結晶子サイ
ズ)が所定の範囲より小さすぎるためにRrms が大きく
なり出力が改善されなかった。比較例2-3は、磁性層の
厚味d は 1.2μm と厚いため再生出力がやや劣った。
【0174】(実施例3)実施例 1-1と同様の前記上層
の磁性層及び前記下層の非磁性層用塗布液組成におい
て、表4〜5に記載の因子(特に前記下層の非磁性層の
無機質粉末平均粒径と前記上層の磁性層の強磁性粉末の
長軸長の比)を変更して各種の試料を作成し、性能を実
施例1と同様に評価し、その結果を表4〜5に示した。
【0175】角形比:振動試料型磁束計(VNM ;東英工
業製)を用いてHm5kOeで測定した時の塗布方向Br/Bm を
角形比とした。
【0176】
【表4】
【0177】
【表5】
【0178】上表から明らかな通り、実施例試料は、前
記下層の非磁性層に含まれる無機質粉末の平均粒径が、
前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末の長軸長の1/3
倍以下であるためにd/Rrmsが30以上であり、Δd がd/2
以下と一様な磁性層が形成され、再生出力が高く、且つ
ピンホールが極めて少なく優れた磁気記録媒体であっ
た。一方、比較例3-1 は、(無機質粉末の平均粒径/強
磁性粉末の長軸長)が所定の範囲より大き過ぎるためΔ
d が大きくなり出力が改善されなかった。比較例3-2
は、磁性層の厚味d が 1.3μm と厚いため再生出力が劣
った。比較例 3-3は、磁性層単層の例であり、前記下層
の非磁性層がなくd が薄いため塗布性、電磁変換特性が
劣悪であった。参考例 3-1は、前記下層乾燥後の逐次重
層であるため塗布性が改善されなかった。比較例 3-4
は、磁性層単層でd が厚いため塗布性が良好であった
が、電磁変換特性が改善されなかった。比較例 3-5は、
下層に無機質粉末を使用していないので、上層及び下層
の界面変動が大きくそのため Δd がく電磁変換特性が
悪かった。比較例 3-6は、下層無機質粉末の体積比率が
低いので、やはりΔd が高くなり電磁変換特性が悪かっ
た。
【0179】(実施例4)実施例 2-1の前記上層の磁性
層用塗布液組成の内、Co変性γFe2 3 を下記強磁
性粉末に変更した他は実施例 3-1と同じ前記上層の磁性
層用塗布液、並びに実施例 2-1の前記下層の非磁性層用
塗布液と同じ塗布液を作成し、実施例 4-1の試料を作成
した。
【0180】強磁性粉末(六方晶バリウムフェライト) 平均板径 0.05μm 、板状比 4 BET 法による比表面積 39 m 2 /g 保磁力 Hc 1100Oe 又、表6に記載の因子(特に前記下層の非磁性層の無機
質粉末平均粒径と前記上層の磁性層の強磁性粉末の平均
板径の比)を変更して試料、実施例 4-2〜4-3、比較例
4-1〜4-2 を作成し、性能を実施例2と同様に評価し、
その結果を表6に示した。
【0181】垂直方向角形比:振動試料型磁束計を用い
て塗布面に対して垂直方向のBr/Bmを測定した。 D50 (kfci):出力が長波長記録再生出力の50%と
なる記録密度を指す。 この D50は装置として実現可能な最大記録密度の目安と
なる。
【0182】
【表6】
【0183】表6より、実施例試料は、前記下層の非磁
性層に含まれる無機質粉末の平均粒径が、前記上層の磁
性層に含まれる板状強磁性粉末の平均板径以下であるた
め垂直方向角形比が高く、Δd がd/2 以下と一様な磁性
層が形成された。従って、実施例試料は、D50 が高く、
且つピンホールが極めて少なく優れた磁気記録媒体であ
った。一方、比較例 4-1は、無機質粉末の平均粒径が強
磁性粉末の平均板径より大きいためΔd が大きくなり D
50が改善されなかった。比較例 4-2は、前記下層の非磁
性層のない磁性層単層の例であり D50が悪かった。
【0184】(実施例5)非磁性支持体として厚味が10
μm 、F5値がMD方向で20kg/mm 2 、TD方向で14kg/m
m 2 、ヤング率がMD方向で750kg/mm2 、TD方向で47
0kg/mm2 のポリエチレンテレフタレート(PET) 、及び厚
味が7μm 、F5値がMD方向で22kg/mm 2、TD方向で1
8kg/mm 2 、ヤング率がMD方向で750kg/mm2 、TD方
向で750kg/mm2 のポリエチレンテレナフタレート(PEN)
を用い、その上に以下の処方でディスパ攪拌機で12時
間攪拌して下塗液を調製した。
【0185】 ポリエステル樹脂(−SO3 Na基含有) 100部 Tg 65℃ Na含量 4600ppm シクロヘキサノン 9900部 得られた下塗液を用いてバーコートにより前記非磁性支
持体上に乾燥厚味0.1μm で塗布した。
【0186】一方、以下の処方で前記上層の磁性層用塗
布液及び前記下層の非磁性層用塗布液を調製した。 〔上層の磁性層用塗布液処方〕 強磁性粉末:Fe合金粉末(Fe-Co-Ni) 100部 組成;Fe:Co:Ni=92:6 :2 焼結防止剤としてAl2 O 3 を使用 保磁力Hc 1600Oe、飽和磁化σS 119 emu/g 長軸長 0.13μm ,針状比 7 結晶子サイズ 172 Å、含水率 0.6 重量% 塩化ビニル共重合体 13部 −SO3 Na 8×10-5eq/g、−OH、エポキシ基含有 Tg 71℃、重合度 300 、数平均分子量(Mn)12000 重量平均分子量(Mw)38000 ポリウレタン樹脂 5部 −SO3 Na 8×10-5eq/g含有 −OH 8×10-5eq/g含有 Tg 38℃、Mw 50000 αアルミナ(平均粒径0.15μm ) 12部 SBET 8/7m2 /g、pH 8.2 、含水率 0.06 重量% シクロヘキサノン 150部 メチルエチルケトン 150 部 上記組成物をサンドミル中で6時間混合分散したのち、
ポリイソシアネート(コロネートL)を5部及びオレイン
酸 1部、ステアリン酸1部、ステアリン酸ブチル1.5
部を加えて上層磁性層用塗布液を得た。
【0187】 〔下層の非磁性層用塗布液処方〕 TiO 2 85部 平均粒径 0.035 μm 結晶系 ルチル TiO 2 含有量 90%以上 表面処理剤 Al2 O 3 BET 35〜45m 2 /g 真比重 4.1 pH 6.5〜8.0 カーボンブラック 5部 平均粒径 16 mμ DBP 吸油量 80ml/100g pH 8.0 SBET 250 m 2 /g 着色力 143 % 塩化ビニル共重合体 13部 −SO3 Na 8×105 eq/g、−OH、エポキシ基含有 Tg 71℃、重合度 300 、数平均分子量(Mn)12000 重量平均分子量(Mw)38000 ポリウレタン樹脂 5部 −SO3 Na 8×10-5eq/g含有 −OH 8×10-5eq/g含有 Tg 38℃、Mw 50000 シクロヘキサン 100 部 メチルエチルケトン 100 部 上記組成物をサンドミル中で4時間混合分散したのち、
ポリイソシアネート(コロネートL)5部、オレイン酸1
部、ステアリン酸1部、ステアリン酸ブチル1.5 部を加
えて前記下層の非磁性層用塗布液を得た。
【0188】上記の塗布液をギャップの異なる2つのド
クターを用いて、湿潤状態で塗布したのち、永久磁石35
00ガウス、次いで、ソレノイド 1600ガウスにて磁場配
向処理した後、乾燥した。その後、金属ロールと金属ロ
ールによるスーパーカレンダー処理を温度80℃で行っ
た。塗布厚みは磁性層 0.3μm 、非磁性層 3.0μm であ
った。
【0189】次いで、以下の処方により塗布液を調製し
た。 〔BC層処方〕 カーボンブラック 100部 SBET 220m/g 平均粒径 17 mμ DBP 吸油量 75ml/100g 揮発分 1.5 % pH 8.0 嵩密度 15 1bs/ft3 ニトロセルロース RS1/2 100部 ポリエステルポリウレタン 30部 ニッポラン(日本ポリウレタン社製) 分散剤 オレイン酸銅 10部 銅フタロシアニン 10部 硫酸バリウム(沈降性) 5部 メチルエチルケトン 500部 トルエン 500部 上記組成を予備混練し、ロールミルで混練した。次に、
上記分散物 100重量部に対して、 カーボンブラック 100部 SBET 200 m 2 /g 平均粒径 200 mμ DBP P吸油量 36ml/100g pH 8.5 α-Al 2 O 3 (平均粒径 0.2 μm ) 0.1部 を添加した組成にてサンドグラインダーで分散を行い、
濾過後、上記分散物 100重量部に対して以下の組成を添
加し、塗布液を調製した。
【0190】 メチルエチルケトン 120部 ポリイソシアネート 5部 得られた塗布液をバーコーターにより、前記磁性層を設
けた非磁性支持体の反対側に乾燥厚み 0.5μm になるよ
う塗布した。このようにして得られた原反を8mm 幅に裁
断し試料1( PET支持体)及び試料2( PEN支持体)の
8mmビデオテープを作成した。
【0191】得られた 8mmビデオテープについて以下の
測定を行い、その測定結果を得た。 (1) TEM (透過型電子顕微鏡) 磁性層の超薄切片を観察した。ダイヤモンドカッターで
媒体を約 0.1μm 厚味に切り出し、これを透過型電子顕
微鏡で観察し、写真撮影した。撮影した写真の上下層の
界面と磁性層表面を隈取りし、IBASII画像処理装置で磁
性層厚みを測定し、その平均値d と標準偏差σとを求め
た。
【0192】磁性層厚みの平均値d は0.45μm であっ
た。実用上は1μm 以下、特に好ましくは 0.6μm 以下
であることが判った。磁性層厚み変動の標準偏差σは、
0.08μm 以下であった。実用上は標準偏差σは 0.2μm
以下、特に好ましくは 0.1μm以下であることが判っ
た。同様に実施例1-4 は、磁性層厚みの平均値d が0.28
μm 、標準偏差σが0.06μm であった。
【0193】前記磁気テープを延伸して磁性層を支持体
から浮いた状態にし、カッター刃でしごいて磁性層を剥
離した。この剥離した磁性層500mg を1N−NaOH/
メタノール溶液 100ml中で2時間環流し、結合剤を加水
分解した。強磁性粉末は比重が大きいために底に沈むの
で上澄み液を除去した。次いで、デカンテーションによ
り3回水洗、その後 THFで3回洗浄した。得られた強磁
性粉末は50℃の真空乾燥機で乾燥した。次に得られた強
磁性粉末をコロジオン中に分散し、TEM を用いて6万倍
で観察した。その結果、強磁性粉末の粒子長軸長0.13μ
m であり、針状比は10であった。同様に実施例 1-2では
長軸長0.25μm で、針状比は15であった。実用上は粒子
長軸長は 0.4μm 以下が必要であり、好ましくは 0.3μ
m 以下であることが判った。又、実用上、針状比は2〜
20が必要であり、好ましくは2〜15であることが判っ
た。 (2) AFM (Atomic Force Micro Scope) 表面粗さRrms を測定した。磁性層表面をDigital Inst
rument社のNanoscopeII を用い、トンネル電流10nAA、
バイアス電圧 400mVで6μm ×6μm の範囲を走査し
た。表面粗さはこの範囲のRrms を求めた。その結果、
Rrms は6nmであった。実用上は20nm以下が必要であ
り、好ましくは10nm以下であることが判った。同様に実
施例1も参考にできる。
【0194】(3) 表面粗さ計 3d-MIRAUを用いた表面粗さを測定した。WYKO社製TOPO3D
を用いてMIRAU 法で約250×250 μm 2 の面積のRa、Pea
k-Valley 値を測定した。測定波長約650nm にて球面補
正、円筒補正を加えた。この方式は光干渉にて測定する
非接触表面粗さ計である。Raは、2.7nm であった。実用
上、Raは1〜4nmが好ましく、更に好ましくは2〜3.5n
m であることが判った。P-V 値は20〜30nmであった。実
用上は80nm以下が好ましく、更に好ましくは10〜60nmで
あることが判った。
【0195】(4) VSM (振動試料型磁束計) VSM を用いて得られた磁気テープの磁性層の磁気特性を
測定した。東英工業社製の振動試料型磁束計を用いてHm
5kOeで測定した。その結果、保磁力Hcは1620Oe、Hr(
90°) は1800Oe、角形比Br/Bm は0.82、SFD は0.583 で
あった。実用上保磁力Hcは1500〜2500Oeが必要で、好ま
しくは1600〜2000Oeであることが判った。Hr( 90°) は
実用上1000〜2800Oeが必要で、好ましくは1200〜2500Oe
であることが判った。角形比Br/Bm は実用上0.75以上が
必要で、好ましくは 0.8以上であることが判った。SFD
は実用上 0.7以下が必要で、好ましくは 0.6以下である
ことが判った。実施例3も同様の結果を得た。
【0196】(5) X線回折 前述の(1) で磁性層より取り出した強磁性粉末を用い
て、X線回折をした。磁気テープを直接にX線回折装置
にかけ、(1,1,0) 面と(2,2,0) 面との回折線の半値幅の
広がりから求めた。その結果、結晶子サイズは180 Åで
あることが判った。実用上好ましくは400 Å以下であ
り、特に好ましくは 100〜300 Åであることが判った。
【0197】(6) 引っ張り試験 引っ張り試験機で得られた磁気テープのヤング率、降伏
応力、降伏伸びを測定した。引っ張り試験機(東洋ボー
ルドウィン社製万能引っ張り試験機STM-T-50BP) を用い
て雰囲気23℃、70%RHで引っ張り速度10%/分で測定し
た。その結果、磁気テープのヤング率は700kg/mm2 、降
伏応力 6〜7kg/mm 2 、降伏伸びが 0.8%であった。
実用上好ましくはヤング率は 400〜2000kg/mm 2 、特に
好ましくは 500〜1500kg/mm 2 であることが判った。降
伏応力は、実用上好ましくは3〜20kg/mm 2 、特に好ま
しくは4〜15kg/mm 2 であることが判った。降伏伸びは
実用上好ましくは 0.2〜8%であり、特に好ましくは
0.4〜5%であることが判った。
【0198】(7) 曲げ剛性、円環式スティフネス ループスティフネステスタを用いて、幅8mm 、長さ50mm
の試料を円環とし、変位速度約3.5mm/秒で変位5mm を与
えるのに要する力をmgで表す。その結果、8mm のp6-12
0 のテープでは厚さが10.5μm であり、スティフネスは
40〜60mmであった。実用上厚さが10.5±1μm では好ま
しくは、スティフネスは20〜90mgであり、特に好ましく
は30〜70mgであることが判った。厚さが11.5μm 以上の
場合、実用上好ましくは40〜200mg であることが判っ
た。厚さが 9.5μm 以下の場合、実用上好ましくは10〜
70mgであることが判った。
【0199】(8) 延伸破壊 クラック発生伸度を23℃×70%RHで測定した。テープ長
さ10cmの試験片の両端を0.1mm/秒の引っ張り速度で引っ
張り、 400倍で磁性層表面を顕微鏡観察して、磁性層表
面に5個以上の明らかな亀裂が発生した伸度を測定し
た。同様にして実施例 8-4は12%であった。その結果、
発生伸度は4%であった。実用上好ましくは20%以下、
特に好ましくは10%以下であることが判った。
【0200】(9) ESCA C1/Fe スペクトルαとN/Feスペクトルβを測定した。α
及びβの測定には、X線光電子分光装置(PERKIN-FLMER
社製)を用いた。X線源はMgアノードを用い、300Wで測
定した。まず、ビデオテープの潤滑剤をn-ヘキサンを用
いて洗い流した後、X線光電子分光装置にセットした。
X線源と試料とも距離は 1cmとした。試料を真空に排気
して5分後から C1-2Pスペクトル、N-1SスペクトルとFe
-2P(3/2)スペクトルを10分間積算し測定した。なお、バ
スエネルギーは100eV で一定とした。測定した C1-2Pス
ペクトルとFe-2P(3/2)スぺクトルとの積分強度比を計算
で求め、αとした。
【0201】又、N-1SスペクトルとFe-2P(3/2)スぺクト
ルとの積分強度比を計算で求めβとした。その結果α
は、0.45であり、βは0.07であった。又、実施例3-5 を
測定すると、αは0.32、βは0.10であった。実用上αは
好ましくは 0.3〜0.6 であり、特に好ましくは0.4 〜0.
5 であることが判った。実用上βは好ましくは0.03〜0.
12であり、特に好ましくは0.04〜0.1 であることが判っ
た。
【0202】(10)ブロックエラーレート(BER) 8mm デッキEV-S700 を用いて、オーディオPCM 信号を記
録、再生してブロックエラーフラッグをカウントし、ブ
ロックエラーレートを測定した。
【0203】(11)レオバイブロン 110Hz の動的粘弾性を測定した。動的粘弾性測定装置
(東洋ボールドウィン社製レオバイブロン)を用い、周
波数 110Hzでテープの粘弾性を測定した。TgはE ′′の
ピーク温度とした。この方法はテープの一端から振動を
加え他端に伝播する振動を測定した。その結果、Tgは73
℃、E ′(50℃)は4×1010dyne/cm 2 、E ′′(50
℃)は1×1011であった。実用上Tgは好ましくは40〜12
0 ℃、特に好ましくは50〜110℃であることが判った。
実用上E ′(50℃)は 0.8×1011〜11×1011dyne/cm 2
であり、特に好ましくは、1×1011〜9×1011dyne/cm
2 であることが判った。実用上E ′′(50℃)は好まし
くは 0.5×1011〜8×1011dyne/cm 2 であり、特に好ま
しくは 0.7×1011〜5×1011dyne/cm 2 であることが判
った。
【0204】(12)密着強度 180 °剥離法により支持体と磁性層との密着強度を測定
した。8mm 幅にスリットしたテープを3M社製粘着テープ
に張り付け、23℃×70%RHで180 °剥離強度を測定し
た。得られた結果は 50gであった。又、実施例 3-1を同
様に測定すると 25gであった。実用上好ましくは密着強
度は 10g以上であり、特に好ましくは 20g以上であるこ
とが判った。
【0205】(13)磨耗 磁性層表面の23℃×70%RHの鋼球磨耗を測定した。プレ
パラートガラス上に試料をその両端を接着テープで張り
付けて固定し、6.25mmφの鋼球に荷重 50gを加えて摺動
させた。その際、20mmの距離を速度20mm/秒で1回走行
させた後、新しい磁性面に鋼球を移動させて同じ操作を
20回繰り返した。その後、鋼球の摺動面を40倍の顕微鏡
で観察し、その面が円であると仮定して直径を求め、そ
の直径から磨耗量を計算した。得られた結果は、 0.7×
10-5〜 1.1×10-5mm3 であった。又、実施例 2-2は4×
10-5mm3 であった。実用上好ましくは 0.1〜10-5〜5×
10-5mm3 であり、特に好ましくは 0.4×10-5〜2×10-5
mm3 であった。
【0206】(14)SEM (Scannin6 Electronic Microscop
e) SEM で磁性層表面状況を観察した。日立製電子顕微鏡 S
-900にて倍率5000倍で5枚撮影して表面の研磨剤を測定
した。その結果、研磨剤個数は0.2 個/ μm 2 であっ
た。又、実施例 3-6を測定すると0.4 個/ μm 2 であっ
た。実用上、研磨剤個数は0.1 個/μm 2 以上であり、
特に好ましくは0.12個/μm 2 〜0.5 個/μm 2 である
ことが判った。
【0207】(15) GC(ガスクロマトグラフィー) GCで磁気テープの残留溶剤を測定した。島津製作所製ガ
スクロマトグラフィーGC-14Aを用いて、20cm2 の試料を
120℃まで加熱して、媒体中の残留溶剤を測定した。そ
の結果、残留溶剤は8mg/m 2 であった。実用上、ゾル分
率は好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以
下であることが判った。
【0208】(16)ゾル分率 磁気テープの磁性層より THFにて抽出された可溶固形分
の磁性層重量に対する比率を求めた。その結果ゾル分率
は7%であった。実用上、ゾル分率は好ましくは15%以
下であり、特に好ましくは10%以下であることが判っ
た。
【0209】(17)磁気現像パターン 得られた8mm 幅の磁気記録媒体をSONY社製VTR EVO-9500
を用い、1MHz の短波長記録をし、記録された部分のみ
5mm 幅にスリットし、フェリコロイド(約100Åφ タ
イホウ工業社製)の液を流して磁気現像し、リグロイン
液中に24時間浸漬処理したものを日本光学(株)製微分
干渉顕微鏡を用い、干渉色をブルーにして10倍で撮影し
た。写真を目視で観察すると、磁性層の厚味の平均した
サンプルは、黒又は白の線は現れないが、磁性層の厚み
変動が大きくなってくると黒又は白の線が現れてくる。
この線は厚みにむらがある部分であり、このような黒又
は白の線は 5mm幅の内に5本以内であることが好まし
い。更にそれらの線をミクロデンシトメーターで測定し
た黒と白の線の濃度差が、好ましくは0.2 以下、特に0.
1 以下が好ましい。
【0210】(18)摩擦係数(μ) 8mm 幅テープとSUS420J 、4mm φの棒とを20g( T 1 )張
力でラップ角約180 °で接触させて、この条件下でテー
プを14mm/ 秒の速度で走行させるのに必要な張力( T 2
)を測定し、下式により求めた。 μ=(1/ π). ln( T 1 /T 2 ) その結果、磁性面のμは0.3 であった。実用上、磁性面
のμは0.15〜0.4 が好ましく、特に好ましくは 0.2〜0.
35であることが判った。又、バック層面のμは0.2 であ
った。実用上バック層面のμは0.15〜0/4 が好ましく、
特に好ましくは0.2 〜0.35であることが判った。この摩
擦係数は、磁性体、研磨剤、カーボンブラック、潤滑
剤、分散剤等が関係して定まる。
【0211】(19)接触角 磁性層上に水、ヨウ化メチレンの液滴を落とし、顕微鏡
でその接触角を測定した。水の場合、90°であった。実
用上60〜130 °であることが好ましく、特に80〜120 °
が好ましいことが判った。又ヨウ化メチレンの場合、接
触角は、20°であった。実用上好ましくは10〜90°であ
り、特に好ましくは10〜70°であった。これら接触角は
特に潤滑剤や分散剤によって定まる値である。
【0212】(20)磁性層及びバック層の表面自由エネル
ギー 特開平3-119513号公報、D. K. 0wens, J. Appl. polyme
r Sci., 13(1969)とJ.Panzer J. Colloid & Interfacia
l Sci., 44, No1に記載されている方法に基づく。この
結果、磁性層及びバック層共に40dyne/cm であった。実
用上10〜100dyne/cmが特に好ましいことが判った。この
表面自由エネルギーは、特に潤滑剤や分散剤によって定
まってくる値である。
【0213】(21)表面電気抵抗 8mm 幅の試料を半径10mmの四分円の断面を持ち8mm の間
隔で置かれた2個の電極に渡して、デジタル表面電気抵
抗計TR-8611A(タケダ理研製)で測定した。その結果、
磁性層表面及びバック層表面共に1×106 Ω/sq であっ
た。実用上1×109 Ω/sq 以下が好ましく、1×108 Ω
/sq 以下が特に好ましいことが判った。この表面電気抵
抗は強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック等によって
定まってくる値である。上述の方法、特性を有する 8mm
ビデオテープを現在市販されているテープと比較し、そ
の結果を表7に示した。
【0214】
【表7】
【0215】尚、評価方法は前記方法もしくは一般的方
法によった。また、判定基準は以下の通りである。 ジッター:○ …… 0.2μsec 未満 × …… 0.2μsec 以上 保存安定性:○ ……60℃、90%RHに10日間保存後の錆
の発生が皆無 × ……60℃、90%RHに10日間保存後の錆の発生がある 走行耐久性: 8mmビデオデッキで50パス走行させた。 ○ …… 30 秒以上続く目詰まりがない。 × …… 30 秒以上続く目詰まりがある。 スリキズ:スチルモードで10分間走行させた。 ○ …… 目視で傷が認められない。 × …… 目視で傷が認められる。
【0216】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体は、非磁性層の上
に極めて薄い磁性層を有し、且つその磁性層の表面が前
記したように良好な表面粗さを有して、極めて平滑であ
ることにより、高域の出力が得られ、例えば4.7MHzや7M
Hzの波長を標準に測定した場合のような短波長の領域に
おいても高い出力が得られ、これは2F出力平均値で測定
しても他の場合に比して高い出力が得られる。又、本発
明は、優れた電磁変換特性が得られ、例えば角型比が大
であり、記録密度も高いなどの効果を有する。更に、ド
ロップアウトが少なく、ブロックエラーレート(BER)が
低いなどの性能を有する。本発明は、特に同時重層塗布
方式によるときには、表面粗さが良好なものとなり、前
記した特性が更に優れたものとなる。このように本発明
は、塗布型でありながら、蒸着テープに匹敵する高域の
出力を発揮すると同時に走行耐久性、保存性を有する高
密度磁気記録媒体である。そして、このものは製造にお
ける歩留りが良く、生産効率が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体のΔd を測定する方法を
説明するための上下両層断面図である。
【図2】本発明で下層及び上層を WET on WET 塗布方式
で層設するための逐次塗布方式の一例を示す説明図であ
る。
【図3】同じく同時重層塗布方式の一例を示す説明図で
ある。
【符号の説明】
1 可撓性支持体 2 塗布液 3 塗布機 4 スムージングロール 5 塗布液 6 塗布機 7 バックアップロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早川 悟 神奈川県小田原市扇町2丁目12番1号 富士写真フイルム株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−187418(JP,A) 特開 平1−109518(JP,A) 特開 平4−238111(JP,A) 特開 平4−283416(JP,A) 特開 平4−321924(JP,A) 特開 平4−325915(JP,A) 特開 平4−325917(JP,A) 特開 平5−197946(JP,A) 特開 平5−12650(JP,A) 特開 平5−182173(JP,A) 特開 平5−182177(JP,A) 特開 平5−182178(JP,A) 特開 平5−73883(JP,A)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体上に少なくとも非磁性粉末及び結
    合剤を含む下層の非磁性層を設け、その上に強磁性粉末
    及び結合剤を含む上層の磁性層を設けた少なくとも二層
    以上の複数の層を有する磁気記録媒体において、前記非
    磁性粉末がモース硬度3以上の無機質粉末であり、前記
    上層の磁性層の乾燥厚み平均値(d) が1 μm 以下であ
    り、前記上層の磁性層の表面の走査型トンネル顕微鏡(S
    TM) 又は原子間力顕微鏡(AFM )により6μm×6μm
    の範囲を走査して得た2乗平均表面粗さRrmsが,前記上
    層の磁性層の乾燥厚み平均値(d) との間に30≦d/Rrmsの
    関係があることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記上層の磁性層の保磁力Hcが、1500〜
    2500Oeであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記
    録媒体。
  3. 【請求項3】 前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末
    が、針状の強磁性粉末であることを特徴とする請求項1
    に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記上層の磁性層に含まれる強磁性粉末
    が、その表面にAl 2 3 ,SiO2 ,TiO2 ,Zr
    2 ,SnO2 ,Sb2 3 ,ZnOのうちの少なくと
    も1種である無機質酸化物により被覆されていることを
    特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 前記下層の非磁性層が湿潤状態にあるう
    ちに上層の磁性層が設けられたことを特徴とする請求項
    1記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記下層の非磁性層に含まれる前記非磁
    性粉末の形状が、球状又はサイコロ状であることを特徴
    とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 前記上層の磁性層に含まれる前記強磁性
    粉末が、Fe,Ni又はCoを含む針状強磁性合金粉末
    であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒
    体。
  8. 【請求項8】 前記支持体が、ポリエチレンテレフタレ
    ート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、
    セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリア
    ミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、
    アラミド、芳香族ポリアミド、から選ばれた少なくとの
    1種であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録
    媒体。
  9. 【請求項9】 前記下層の非磁性層が、チキソトロピー
    性を付与する磁性粉末を含むことを特徴とする請求項1
    に記載の磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】 前記下層の非磁性層の飽和最大磁束密度
    Bmが、500 ガウス以下であることを特徴とする請求項1
    に記載の磁気記録媒体。
  11. 【請求項11】 前記下層の非磁性層が、磁気記録に関与
    しない磁性粉末を含有して成る層であることを特徴とす
    る請求項1に記載の磁気記録媒体。
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