JP2666710B2 - 真空形成方法及び真空装置 - Google Patents

真空形成方法及び真空装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、真空形成方法及び真空
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】薄膜形成、エッチング等のガス導入を伴
うプロセスにおいて、プロセス開始前に十分な真空度に
排気することによって残留気体の影響を除去する目的で
真空装置が用いられている。この様なプロセスに用いら
れる真空装置は一般に、真空容器、排気ポンプ及びその
両者をつなぐ単一の排気ラインから構成される。真空装
置は、ガス導入口や試料加熱機構など、プロセスに必要
な機構を備える。排気ポンプとしては通常荒引きポンプ
と主排気ポンプの2つが設置される。荒引きポンプとし
ては油回転ポンプ、ドライポンプ等が用いられ、真空容
器が大気圧である時の粗排気及び主排気ポンプの後段排
気に使用される。また主排気ポンプとしては油拡散ポン
プやターボ分子ポンプが多く用いられ、荒引きポンプに
よって所定の真空度以下に排気された後の真空排気に使
用される。真空容器と排気ポンプをつなぐ排気ライン
は、真空容器と主排気ポンプ、主排気ポンプと荒引きポ
ンプを単一の管で接続して構成されるが、主排気ポンプ
に油拡散ポンプを用いる場合など、主排気ポンプを大気
圧にする事が好ましくない場合は、荒引き時のための主
排気ポンプをバイパスするラインが設置されることがあ
る。また試料交換の便のため、真空容器にバルブを介し
て真空気密室を接続し、真空容器を大気解放することな
く試料交換が行えるようにする方法も広く採用されてい
る。
【0003】この様な真空装置を用いて、薄膜形成やエ
ッチングを行う方法は以下の通りであった。まず試料を
真空容器内に設置した後、真空排気を行う。この際必要
に応じて、荒引き用のバイパスラインを使用する。主排
気ポンプによる排気で所定の真空度に到達したら、試料
加熱等の必要な操作と共にガスを真空容器に導入し、プ
ロセスを行う。所定の時間が経過したらプロセスを停止
し、その後排気を停止、真空容器を大気解放し試料を取
り出す。真空気密室を備えた装置においては、試料は真
空容器を真空に保持したまま交換される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記の方法で、
室温では固体または液体の物質を加熱し気化させた凝縮
性ガスを使用するプロセスを行うには以下のような問題
があった。
【0005】真空容器に導入した凝縮性ガスは、排気ラ
インを通して真空ポンプにより排気される。しかし通
常、排気ラインの温度は室温であるため、排気ライン内
壁に衝突した気体分子はそこで凝縮し、排気ライン内壁
に液体または固体が付着する。しかしこの様な付着物は
ガス導入を停止しプロセスを終了した後徐々に蒸発また
は昇華するため、真空容器内の真空度がガス導入前のレ
ベルに下がるのには非常に時間がかかる。これはプロセ
スの制御性を劣化させると共に、プロセスを終了した試
料の表面に凝縮性ガス分子が付着するなどの、汚染の原
因となっていた。さらにこの様な付着物が排気ラインに
蓄積すると、到達真空度が悪化する。あるいは所定の真
空度に到達するまでの時間が増大するなど排気能力低下
の原因となっていた。
【0006】またプロセス時に排気される凝縮性気体の
一部は排気ポンプまで到達し、ポンプ内部に付着する。
このポンプ内部の付着物は、排気ライン付着物と同様に
試料に対する汚染や、排気能力低下の原因となってい
た。さらにポンプ内部への付着はポンプの能力を低下さ
せる原因となり、油拡散ポンプの場合は油汚染、または
ターボ分子ポンプにおいてはポンプ回転翼に付着して回
転を阻害し、回転停止等の重大な事故の原因となってい
た。
【0007】このような排気ライン、ポンプの汚染は、
ベーキングや分解クリーニングにより清浄化する必要が
あったため、生産性を低下させる原因となっていた。
【0008】本発明はこのような問題点を鑑みて成され
たものであり、凝縮性気体の排気ライン、ポンプへの付
着を防止する事によって、プロセスの制御性向上、試料
への汚染の低減、さらに真空容器内の清浄度を維持する
ことによる生産性の向上を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の真空装置は、真
空容器、ポンプ、およびその両者をつなぐ排気ラインか
らなる真空装置において、主排気ポンプと真空容器間
に、それぞれ主排気ライン及び凝縮性ガス専用排気ライ
ンとして使用することを可能とするようなバルブを備え
た少なくとも2系統以上の排気ラインを持つことを特徴
とする。
【0010】また本発明の真空排気方法は、真空容器と
ポンプ、その両者をつなぐ排気ラインからなる真空装置
で凝縮性気体を排気する方法において、それぞれにバル
ブを備えた、少なくとも主排気ラインと凝縮性ガス専用
排気ラインの2系統以上の排気ラインを設置し、真空容
器内で凝縮性ガスを扱うときに専用排気ラインを使用
し、それ以外の時には主排気ラインを使用することを特
徴とする真空排気方法である。
【0011】さらに凝縮性ガスの室温での蒸気圧が無視
できない場合は、凝縮性ガス排気ラインに適当な冷却機
構を付加し、ガス導入時にガス専用排気ラインを冷却し
て用いる。
【0012】
【作用】本発明の真空形成方法および真空装置には以下
の作用がある。
【0013】本発明の真空形成方法では、容器内への凝
縮性ガス導入時とそれ以外の時で、異なる排気ラインを
使用する。即ち、凝縮性ガス導入時は専用排気ラインを
通して排気を行い、それ以外の排気時は主排気ラインを
用いる。従って凝縮性ガスが冷却されて凝縮する付着物
は、主排気ラインには付着が起こらない。また凝縮性ガ
スの室温での蒸気圧が比較的高く、ポンプまでガスが到
達するような場合は、ガス専用排気ラインを冷却し蒸気
圧を低くする事によって、ポンプへのガスの流入を防ぐ
ことができる。以上によってプロセス時に導入する凝縮
性ガスを、全てガス専用排気ラインに付着させることが
可能である。従って、ガス導入時以外に用いる主排気ラ
イン及びポンプには汚染が発生せず、排気能力の低下や
試料の汚染等、従来の問題点を解決することができる。
【0014】
【実施例】以下、図1に関連して本発明の実施例を説明
する。図1において装置は、真空容器1、凝縮性ガス発
生機構を含むガス導入口2、主排気ライン3、凝縮性ガ
ス排気ライン4、その冷却機構5、主排気ポンプ6、荒
引きポンプ7より構成されている。
【0015】本実施例においては、真空容器には基板保
持機構及び基板加熱機構を備えたステンレス性チャンバ
を用いた。またチャンバ内壁への凝縮性ガスの付着を防
止するため、ガス導入時にはチャンバをガス付着の起こ
らない温度に加熱するチャンバ加熱機構を備えている。
さらにプロセス毎の大気解放による影響を防ぐため真空
気密室を接続し、真空容器を真空に保持した状態で試料
交換ができる構造とした。主排気ポンプ及び荒引きポン
プにはそれぞれターボ分子ポンプ、油回転ポンプを用い
た。真空容器と主排気ポンプであるターボ分子ポンプの
間は主排気ラインと凝縮性ガス排気ラインで接続した。
それぞれの排気ラインはその両端にバルブを設置し、封
止できる構造とした。主排気ラインのポンプ側バルブは
なくても良いが、凝縮性ガス排気時に主排気ラインへの
付着を完全に防ぐという目的から、あった方が望まし
い。凝縮性ガス排気ラインの冷却機構は、排気管の外部
にパイプを巻き付け、そこに流す冷媒を外部の熱交換器
で冷却する方法をとった。
【0016】上記の装置にテトライソプロポキシチタン
(Ti(i−OC3 7 4 、以下TIPと略す)を導
入し、CVD(化学気相堆積法)によるTiO2 の薄膜
形成を行った。TIPは室温では液体の物質であり、こ
れを約100℃に加熱して蒸気圧を発生させ、質量流量
調節器により流量制御し、ガス導入口から真空容器に導
入した。チャンバはガス導入時は100℃に加熱し、チ
ャンバ内壁でのガスの凝縮を防止した。基板にはシリコ
ン(100)ウエハを使用し、膜形成の条件は基板温度
500℃、成膜時のTIP圧力は1x10-3Torrと
した。凝縮性ガス排気ラインの温度は、冷却機構により
約0℃に保持した。成膜の手順は以下の通りである。あ
らかじめ主排気ラインを用いて真空容器内を1x10-7
Torr以下の十分な真空度に到達させておく。このと
き同時に凝縮性ガス排気ラインも十分真空引きする。そ
の後、真空気密室を通して基板を真空容器に設置し、チ
ャンバ加熱、ガス排気ライン冷却を行う。主排気ライン
前後のバルブを閉じ、ガス排気ライン前後のバルブを開
けて、排気ラインを切り替えた後、基板加熱を行い、そ
の後ガスを導入してCVDを行う。所定の時間終了後は
ガス導入を止め、基板加熱を停止し、排気を主排気ライ
ンに切り替える。基板が十分冷却したら真空気密室を通
して基板を交換し、次の試料のプロセスを行う。比較の
ため凝縮性ガス排気ラインを使用せず、全てのプロセス
を主排気ラインのみで行う実験を行った。
【0017】図2は凝縮性ガス排気ラインを用いた場合
と用いなかった場合の、プロセス終了時の真空容器内真
空度の比較を示している。凝縮性ガス排気ラインを使用
した場合(実線)は、ガス導入停止後の真空度回復は緩
やかであるが、0.5分後に排気ラインを主排気ライン
に切り替えた後は速やかに真空度が向上し、約2分の短
時間でガス導入前の到達真空度に復帰する。一方主排気
ラインのみを用いた場合(破線)では、ガス停止後真空
度は徐々に回復するが、ガス導入前の到達真空度に復帰
するには約1時間の時間がかかる。即ち、凝縮性ガス専
用排気ラインを使用した場合、プロセス終了後の残留ガ
スの影響が非常に低減でき、制御性の向上及び試料の汚
染防止が可能となった。
【0018】図3は上述のプロセスを繰り返し行ったと
きの到達真空度の変化を、ガス導入時の累計に対しプロ
ットしたものである。ここで到達真空度はプロセス終了
1時間後の真空度とした。凝縮性ガス排気ラインを用い
た場合、到達真空度はほとんど変化せず1x10-7To
rr以下を維持するのに対し、主排気ラインのみを用い
た場合は到達真空度は徐々に悪化する。これは排気ライ
ン及び真空ポンプへの原料の付着の為であり、凝縮性ガ
ス排気ラインを用いると原料付着の影響が抑制できる。
さらにそれぞれの実験においてガス導入100時間経過
後に排気ライン及びポンプの状態を調べると、主排気ラ
インのみを用いた場合は主排気ライン及びターボ分子ポ
ンプ吸気口に付着物が認められたが、凝縮性ガス排気ラ
インを用いた場合は主排気ライン及びポンプ内部に付着
物は全く認められなかった。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば真
空装置内での凝縮性ガスの扱いにおいて以下の効果が期
待できる。凝縮性ガスを真空容器に導入する際の排気
に、凝縮性ガス専用排気ラインを用い、必要に応じてこ
れを冷却することによって、ガス分子の付着をこの専用
排気ラインのみに限定することができる。これによって
主排気ライン、真空ポンプの汚染は防止される。またプ
ロセス終了後、清浄に保たれた主排気ラインによって排
気を行うため、試料の汚染が防止できる。さらに排気ラ
イン、真空ポンプの汚染が防止されるため、これらの分
解等によるクリーニング、交換を行う必要がなくなり、
生産性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成概略図
【図2】実施例におけるガス停止時の真空度の変化を従
来法と比較した図
【図3】実施例におけるガス導入時間に対する到達真空
度の変化を従来法と比較した図
【符号の説明】
1 真空容器 2 凝縮性ガス導入口 3 主排気ライン 4 凝縮性ガス排気ライン 5 冷却機構 6 主排気ポンプ 7 荒引きポンプ

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空容器、ポンプ、およびその両者をつ
    なぐ排気ラインからなる真空装置において、主排気ポン
    プと真空容器間に、それぞれ主排気ライン及び凝縮性ガ
    ス専用排気ラインとして使用することを可能とするよう
    なバルブを備えた2系統の排気ラインを持つことを特徴
    とする真空装置。
  2. 【請求項2】 真空容器とポンプ、その両者をつなぐ排
    気ラインからなる真空装置で凝縮性気体を排気する方法
    において、それぞれにバルブを備えた、少なくとも主排
    気ラインと凝縮性ガス専用排気ラインの2系統の排気ラ
    インを設置し、真空容器内で凝縮性ガスを扱うときに専
    用排気ラインを使用し、それ以外の時には主排気ライン
    を使用することを特徴とする真空形成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1の真空装置において、凝縮性ガ
    スの飽和蒸気圧が必要な真空度より十分低くなる温度ま
    で専用排気ラインを冷却することを可能とするような冷
    却機構を凝縮性ガス排気ラインに備えていることを特徴
    とする真空装置。
  4. 【請求項4】 請求項2の真空形成方法において、凝縮
    性ガス排気時に、凝縮性ガスの飽和蒸気圧が必要な真空
    度より十分低くなる温度まで専用排気ラインを冷却する
    ことを特徴とする真空形成方法。
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