JP2658509B2 - 電子部品と電極ペーストおよび端子電極の形成方法 - Google Patents

電子部品と電極ペーストおよび端子電極の形成方法

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JP2658509B2 JP2157977A JP15797790A JP2658509B2 JP 2658509 B2 JP2658509 B2 JP 2658509B2 JP 2157977 A JP2157977 A JP 2157977A JP 15797790 A JP15797790 A JP 15797790A JP 2658509 B2 JP2658509 B2 JP 2658509B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は端子電極部に金属粉を焼き付けた電子部品お
よびその端子電極を形成する際に用いる電極ペーストと
その端子電極の形成方法に関し、特に端子電極部への半
田付け性が良好で半田付け時に素子に対する熱衝撃性の
緩和効果に優れた端子電極部の構成とその安価で簡便な
形成方法、電極ペーストに関する。
従来の技術 近年回路の小型化、高密度化の進展に伴い、これに用
いる電子部品を回路基板上に表面実装して用いることが
一般化しており、特に回路部品などでは表面実装部品が
主流となっている。
このうち、固定抵抗素子や積層コンデンサ素子のよう
な電子部品では、端子電極部は焼結した金属粉末をガラ
ス質フリットで素子本体に固定した構成のメタルグレー
ズ型の構成をとっている。この部分は直接回路基板の配
線金属上に半田付けされるため、半田との濡れ性がよ
く、かつ半田フローの溶融半田によって端子電極部が溶
かし出されて無くなってしまう半田食われ現象が発生し
ないような対策がとられている。
通常このような素子の端子電極用の金属材料としては
空気中で焼成可能な銀電極が用いられてきたが、上述の
問題点を解決するため銀とパラジウム合金をこれに用い
る方法や、焼き付けた銀端子電極の外側にニッケル鍍金
を施しさらにその上に銀−鉛鍍金(半田鍍金)を施すな
どの手法などがとられていた。
また素子と基板上の配線を半田付けする際、溶融した
半田に素子端子部が触れた場合、端子電極部と素子との
温度差による熱膨張の差により素子の一部に大きな引っ
張り応力が発生し素子に亀裂がはいる現象が発生するこ
とがあった。このため必要に応じて半田付け時に予め素
子を予熱して急速な温度差の発生を防ぐなどの対策がと
られていた。
一方素子の低コスト化への要求から、端子金属に銅や
ニッケル等の卑金属を用いる要望があり、内部電極に卑
金属を用いた積層コンデンサ素子のような、もともと素
子自体を低酸素分圧雰囲気下で焼成するものにおいて
は、すでに例えば米国特許3,920,781広報に銅やニッケ
ルなどの卑金属を端子電極に用いることが提案されてい
る。このような卑金属端子電極は比較的半田食われ現象
は少ないが、半田付け性に問題があり、特に端子電極表
面の酸化による半田濡れ性の低下が問題であった。この
ため従来と同様に端子電極の再外層に半田鍍金を施すな
どの手法が考えられていた。また半田付け時の素子中へ
の亀裂発生は従来の銀系の電極同様発生するため、半田
付け時の素子の余熱処理も必要に応じて実施が検討され
ている。
発明が解決しようとする課題 上述のような鍍金法による端子電極最外層への半田層
の形成は、半田付け性を改善しかつ端子電極表面の酸化
を防止する方法であるが、行程が増えるための煩雑さ、
コスト増のほかに、素子を鍍金液相中へいれる必要があ
り、鍍金液による素子の変質、特性劣化をまねくおそれ
があった。
また鍍金法は半田付け時の素子中への亀裂発生を防ぐ
効果はなかった。
本発明はかかる課題に鑑み、メタルグレーズ型の端子
電極を有する電子部品において、低コストであり、かつ
半田付け性が良好で、素子表面の酸化による半田付け性
の低下が少なく、半田付け時に素子に対する熱衝撃性の
緩和効果に優れた端子電極部の構成とその安価で簡便な
製造プロセス、並びに電極ペーストを提供することを目
的とする。
課題を解決するための手段 本発明は金属相と無機ガラス相からなる端子電極部を
有する電子部品において、端子電極部に含まれる金属相
が鉛、錫、亜鉛からなる群の少なくとも1成分を含む、
銅合金もしくはニッケル合金からなる構成とする。
本発明の端子電極の構成においては、端子電極部の断
面が、銅あるいはニッケルを主成分とする金属相、鉛、
亜鉛あるいは錫を主成分とする金属相、およびこれらの
金属間化合物層からなる群より選ばれた少なくとも2種
を含む混合組織相、もしくは固溶体合金相からなる中間
層を有し、さらに平均組成として中間層より鉛、錫ある
いは亜鉛の含有量の多い表面層を有する構成とする。
本発明の端子電極に用いる電極ペーストとしては、電
極ペースト中の金属成分が、焼付け処理中に単独では液
相を生成しない金属成分と、単独で溶融、分解溶融して
液相を生成するか、前者の単独では液相を生成しない金
属成分との共融反応により液相を生成する金属成分の2
種の成分を含み、かつ生成する液相成分の固化した相が
鉛、亜鉛、錫からなる群より選ばれた少なくとも1成分
を含むことを特徴とする電極ペーストとする。
また本発明の端子電極の形成方法は、電極ペースト中
に、焼付け処理中に単独では液相を生成しない金属成分
と、単独で溶融、分解溶融して液相を生成するか、前者
の単独では液相を生成しない金属成分との共融反応によ
り液相を生成する金属成分の2種の金属成分を含み、焼
付け処理時にこれらの金属粉、金属間化合物粉、合金粉
の共融現象若しくは一部の溶融により部分的に金属もし
くは金属間化合物間で液相が形成される温度以上で処理
する形成方法をとる。
作用 端子電極部に含まれる金属相が鉛、錫あるいは亜鉛か
らなる群の少なくとも1成分を含む、銅合金もしくはニ
ッケル合金からなることにより、鉛−錫合金からなる半
田溶融金属との端子電極部の濡れ性が向上し、さらに酸
化反応が抑制されることにより端子電極部の表面酸化に
よる半田付け性低下が改善される。
端子電極部の表面層が鉛、錫あるいは亜鉛からなる群
の少なくとも1成分を主成分として含む金属層からなる
ことにより、鉛−錫合金からなる半田溶融金属と端子電
極部の濡れ性が向上し、さらに表面の酸化反応が抑制さ
れることにより端子電極部の表面の酸化による半田付け
性低下が改善される。
また銅あるいはニッケルを主成分とする金属相、鉛、
亜鉛あるいは錫を主成分とする金属相、およびこれらの
金属間化合物相からなる群より選ばれた少なくとも2種
を含む混合組織相もしくは合金相からなる中間層は、端
子電極部の熱伝導度を低下させるため、半田溶融金属浸
された際の素子のセラミック端子電極界面近傍の熱衝撃
を緩和する働きがある。
また端子電極の形成条件として、焼付け処理時に金属
粉、金属間化合物粉、合金粉による共融現象若しくは一
方の溶融により部分的に金属もしくは金属間化合物の粉
末間で液相が形成される温度以上で処理を行うことによ
り、電極の焼付け過程で一部液相となる鉛、亜鉛あるい
は錫を多く含む成分が表面へ偏析されるため、所期の電
極構成を得ることができる。
また電極ペーストの出発原料として銅あるいはニッケ
ルを主成分とする金属粉、鉛、亜鉛あるいは錫を主成分
とする金属粉、もしくはこれらの金属間化合物からなる
金属粉より選ばれた少なくとも2種の金属粉の混合物、
もしくは合金粉を用いることにより、電極の焼付け過程
で鉛、錫あるいは亜鉛含有量の多い液相が生成され、冷
却過程で液相成分が表面へ偏析されるため所期の電極構
成を得ることが容易になる。
実施例 以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら
説明する。
実施例1 素子として固定抵抗器素子について検討した。
抵抗体はアルミナ基板上に酸化レニウム−亜鉛ホウ珪
酸ガラス系のグレーズ抵抗を850℃で焼き付けたものを
用いた。
端子電極の出発原料としては粒径が1.5μm以下0.5μ
m以上の金属銅、金属鉛、金属錫、金属亜鉛を所定比に
混合した金属粉末に粒径が0.8μmのガラスフリットを1
2wt%混合した粉末を用い、これにアクリル系樹脂と石
油系溶剤を混合してペースト状にしたものを用いた。
端子電極ペーストは抵抗体の両端にディプ法により塗
布し、空気中80℃で乾燥後、窒素ガスを流し酸素濃度が
2ppm程度の電気炉中で280℃まで5時間かけて昇温した
のち550℃〜600℃まで30分かけて昇温し15分保持したの
ち室温まで降温した。
素子は端子電極形成後下記の保持条件A,Bで保持し
た。
A:空気中で14時間保持 B:40℃湿度60%の雰囲気中60時間保持 その後素子は銅配線を施したガラスエポキシ基板に有
機接着剤で仮どめした後、230℃でリフロー半田づけを
実施し、50試料中の半田付け不良発生数を求めた。半田
付け不良はリフロー半田付後目視法で半田付け部を観察
し半田の付着していない部分が明らかに認めるものを不
良とした。
第1表に端子電極組成と保持条件、不良数を示す。
第1表より明らかなように、端子電極に鉛、錫あるい
は亜鉛の何れかを含む銅もしくはニッケル電極を用いた
ものは、これらを含まないものに比べ、半田付け性とく
に端子電極が酸化しやすい条件下で保存した後の半田付
け性が向上する。
各成分の含有率の範囲については、鉛と銅とを含有す
る合金の鉛の含有量が0.3〜70wt%(第1表中No3〜
6)、銅と錫とを含有する合金の錫の含有量が0.8〜65w
t%(第1表中No9〜13)、銅と亜鉛とを含有する合金の
亜鉛の含有量が0.5〜80wt%(第1表中No16〜20)、ニ
ッケルと鉛とを含有する合金の鉛の含有量が1.5〜45wt
%(第1表中No24〜27)、ニッケルと錫とを含有する合
金の錫の含有量が1.5〜55wt%(第1表中No30〜34)も
しくはニッケルと亜鉛とを含有する合金の亜鉛の含有量
が1.5〜65wt%(第1表中No37〜41)が好ましい。
含有率がこれらの範囲より少ないと(第1表中No2,8,
15,23,29及び36)半田付性の改善効果が少なく、含有率
がその範囲より多いと(第1表中No7,14,21,28,35及び4
2)電極金属が部分的に溶融するため、半田づけ以前に
端子電極部と、素子本体の接着性が低下しており、半田
付けによってその部分からの剥離が発生し、半田付け性
そのものは低下しないが不良数は増大する傾向にある。
しかし銅単独の従来例(第1表中No1)と比較すると、
何れの条件下でも半田付け不良は軽減されている。又ニ
ッケル単独の従来例(第1表中No22)と比較すると、条
件Bでは半田付け不良が軽減されているが条件Aでは若
干の増加が見受けられた。しかしニッケル単独での条件
Aでは元々不良数が少ない点と、条件Aよりも酸化され
易い雰囲気中(条件B)で不良数が軽減されている点と
考慮すると、やはりこの範囲においても効果はあるもの
と想定される。
実施例2 素子として銅内部電極セラミック積層コンデンサにつ
いて検討した。
銅内部電極セラミック積層コンデンサ素子の誘電体磁
器にはPb(Mg1/3Nb2/3)O3を主成分とする鉛複合プロブ
スカイト誘電体を用い、これをシート化した後この上に
酸化銅電極ペーストで内部電極層を形成し、積層、空気
中でのバーンアウト後、焼成温度により低い温度の水素
ガス雰囲気中で内部電極層のみを金属化し、窒素雰囲気
中で焼成して素子を作成した。
端子電極は実施例1同様の方法で形成し、又端子電極
形成後素子を下記の保持条件A,Bで保持した。
A:空気中で14時間保持 B:40℃湿度60%の雰囲気中60時間保持 その後素子は銅配線を施したガラスエポキシ基板に有
機接着剤で仮どめした後、230℃でリフロー半田付けを
実施し、50試料中の半田付け不良発生数を求めた。半田
付け不良はリフロー半田付後目視法で半田付け部を観察
し半田の付着していない部分が明らかに認めるものを不
良とした。
第2表に端子電極組成と保持条件、不良数を示す。
第2表より明らかなように、鉛、錫あるいは亜鉛を少
なくとも含む銅もしくはニッケルからなる端子電極を有
する素子は、半田付け性が著しく向上する。
なお本実施例では内部電極として銅を用いた例を示し
たが、他の卑金属を内部電極として用いても効果は同様
であった。
実施例3 素子として固定抵抗器素子について検討した。
抵抗体はアルミナ基板上に酸化レニウム−亜鉛ホウ珪
酸ガラス系のグレーズ抵抗を950℃で焼き付けたものを
用いた。
端子電極の出発原料としては粒径が5.5μm以下、1.5
μm以上の金属銅、金属鉛粉末を所定比に混合し、平均
粒径0.8μmの亜鉛ホウ珪酸ガラスフリットを金属重量
に対し6wt%混合した粉末を用い、これに平均分子量180
0のアクリル樹脂を粉末重量に対し5wt%、αターピネオ
ール、トルエン混合溶媒(6:4)を粉末重量に対し30wt
%加え、乳鉢で混合したのち3本ロールを用い混練し、
さらに溶剤量を調整して20℃の粘度8000センチポイズの
電極ペーストを作成した。
電極ペーストは抵抗体の両端にディップ法により塗布
し、空気中で80℃で乾燥後、窒素ガスを流すことにより
酸素濃度が2ppm程度に調整した管状電気炉炉心管中で、
280℃まで5時間かけて昇温したのち、550〜600℃まで3
0分かけて昇温し、5分保持したのち室温まで30分かけ
て降温した。
作成した素子の端子電極部断面はX線マイクロアナラ
イザ、およびX線微小回折計を用い電極金属の組成分布
を評価した。
模式図を第1図にしめす。抵抗体はセラミック素体11
とグレーズ抵抗15で構成されている。
抵抗体の電極部の最も素体に近い部分は、部分的にセ
ラミック素体11に融着した無機フリットを含む下地層12
からなり、次に銅金属相と鉛金属相が2〜40μm程度の
混合組織相を形成した厚み700μm程度の中間層13があ
り、さらに鉛金属相からなる厚み0.3μm〜60μm程度
の表面層14からなる。
鉛含有量が0.1wt%程度の少ない試料では、中間相13
に鉛金属相はほとんど観測されない。
素子は端子電極形成後下記の保持条件A,Bで保持し
た。
A:空気中で14時間保持 B:40℃湿度60%の雰囲気中60時間保持 その後素子は銅配線を施したガラスエポキシ基板に有
機接着剤で仮どめした後、230℃でリフロ半田付けを実
施し、50試料中の半田付け不良発生数を求めた。半田付
け不良はリフロー半田付け後目視法で半田付け部を観察
し、端子電極表面に明らかに半田の付着していない部分
が認められるものを不良とした。
第3表に端子電極の金属粉混合組成率と保持条件、不
良数を示す。
No63の試料は中間層に鉛金属相はほとんど観測されな
いため、酸化し易い条件下での不良数の低減の効果は少
なかったが、No62よりは不良数の低減は見受けられる。
またこの第3表中のNo66と、端子電極表面に半田鍍金
を施す従来法との比較を行った。即ちNo62の試料の端子
電極表面に、アルカノールスルホン酸を主成分とする半
田鍍金液(pH:1.0)中でバレル鍍金法により半田鍍金層
を形成した。
作製した素子の初期特性を測定し、抵抗値が所期のも
のより50%以上変動があるものを不良とした。第4表に
No62の試料とNo66の試料の初期不良数(100ケ当り)を
示す。
ちなみに表面半田鍍金したNo62の試料を上記の条件A,
条件Bで保存後の半田付け不良は、初期不良品をのぞい
たものでは発生しなかった。
第3表及び第4表より明らかなように、本発明の鉛、
亜鉛あるいは錫の内少なくとも1つを含有する銅あるい
はニッケルを有した中間層よりも鉛、錫あるいは亜鉛の
含有量が多い表面層で構成された端子電極(特許請求の
範囲第10項に記載)で、焼付け処理中に生成する液相成
分の固化した相が、鉛、亜鉛あるいは錫からなる群より
選ばれた少なくとも1成分を含む(特許請求の範囲第17
項に記載)電極ペーストを用い、焼付け処理時に金属成
分の金属粉、金属間化合物あるいは金属粉の共融現象も
しくは一部の溶融により、部分的に金属もしくは金属間
化合物間で液相が形成される温度以上で焼き付け処理す
る(特許請求の範囲第25項に記載)製造プロセスをとる
と、銅電極単体のものに比べ、半田付け性とくに端子電
極が酸化しやすい条件下で保存した後の半田付け性が向
上し、また表面半田メッキ処理を施したものに比べ、初
期特性の劣化、変動が少ない。
また電極ペースト中の鉛の含有量は、0.3wt%以上70w
t%以下が好ましく、含有率がその範囲より少ないと
(第3表中No63)半田付け性の改善効果が少ない。含有
率がその範囲より多いと(第3表中No68)電極金属の溶
融量が大きくなり端子電極部と素子本体の接着性が低下
し、半田付け時にその部分が剥離して不良数が増大す
る。しかし銅単独の従来例(第3表中No62)と比較する
と、何れの条件下でも半田付け不良は軽減されている。
実施例4 素子として実施例1と同様の固定抵抗器素子について
検討した。
抵抗体は酸化レニウム−ホウ珪酸ガラス系のグレーズ
抵抗を1050℃で焼き付けたものを用いた。
端子電極の出発原料としては粒径が6μm以下、1.5
μm以上の金属銅、金属錫粉末、および平均粒径1.5μ
mのCu3Sn粉末を所定比に混合し、平均粒径1.0μmの亜
鉛ホウ珪酸ガラスフリットを金属重量に対し4wt%混合
した粉末を用い、これに平均分子量1800のアクリル樹脂
を粉末重量に対し5wt%、αターピネオール、カルイト
ールアセテート混合溶媒(6:4)を粉末重量に対し30wt
%加え、乳鉢で混合したのち3本ロールを用い混練し、
さらに溶剤を調節して20℃の粘度10000センチポイズの
電極ペーストを作製した。
電極ペーストは抵抗体の両端にディップ法により塗布
し、空気中80℃で乾燥後、窒素ガスを流すことにより酸
素濃度が2ppm程度に調整した管状電気炉炉心管中で、28
0℃まで5時間かけて昇温したのち550〜600℃まで30分
かけて昇温し、5分保持したのち室温まで30分かけて降
温した。
作成した素子の端子電極部断面をX線マイクロアナラ
イザ、X線微小回折計を用いて電極金属の分布を評価し
た。
模式図を第2図にしめす。抵抗体はセラミック素体21
とグレーズ抵抗25で構成されている。
抵抗体の電極部の最も素体に近い部分は部分的にセラ
ミック素体21に融着した無機フリットを含む下地層22か
らなり、次に銅金属相(一部錫が固溶)、錫金属相およ
びCu3Sn、Cu6Sn5金属間化合物相が20μm程度の混合組
織相を形成した厚み700μm程度の中間層23があり、さ
らに錫金属相からなる厚み2μm〜60μm程度の表面層
24からなる。錫含有量が0.1wt%程度の少ない試料では
中間相における錫金属相はほとんど観察されない。
また錫含有量が0.8wt%程度の試料では、中間層23は
銅に錫の固溶した固溶相である。
また出発原料にCu3Snを用いたものは、端子電極の断
面において他の試料に見られる表面層24に示す表面の錫
金属相の形成が確認されない。
素子は端子電極形成後下記の保持条件A,Bで保持し
た。
A:空気中で14時間保持 B:40℃湿度60%の雰囲気中60時間保持 その後素子は銅配線を施したガラスエポキシ基板に有
機接着剤で仮どめした後、230℃でリフロー半田付けを
実施し、50試料中の半田付け不良発生数を求めた。半田
付け不良はリフロー半田付け後目視法で半田付け部を観
察し、端子電極表面に明らかに半田の付着していない部
分が認められるものを不良とした。
第5表に端子電極の金属粉混合組成率と原料粉および
保持条件、不良数を示す。
第5表においてのNo70の試料は、中間層における錫金
属相はほとんど観察されなく、またNo73は表面の錫金属
相の形成が確認されなかったが、第5表に示したように
半田付け不良数は両条件とも減少している。
第5表より明らかなように、本発明の鉛、亜鉛あるい
は錫の内少なくとも1つを含有する銅あるいはニッケル
を有した中間層と、中間層よりも鉛、錫あるいは亜鉛の
含有量が多い表面層で構成された端子電極(特許請求の
範囲第10項に記載)、錫を有した銅の混合組成相あるい
は固溶体金属相を含む中間層と、部分的もしくは全面が
錫を主成分とした金属相もしくは銅と錫との混合組成相
の表面層(特許請求の範囲第12項に記載)の構成をと
り、焼付け処理中に生成する液相成分の固化した相が、
鉛、亜鉛あるいは錫からなる群より選ばれた少なくとも
1成分を含む(特許請求の範囲第17項に記載)電極ペー
ストを用い、焼付け処理時に金属成分の金属粉、金属間
化合物あるいは金属粉の共融現象もしくは一部の溶融に
より、部分的に金属もしくは金属間化合物間で液相が形
成される温度以上で焼き付け処理する(特許請求の範囲
第25項に記載)製造プロセスをとるものは、銅電極単体
のものに比べ、半田付け性とくに端子電極が酸化しやす
い条件下で保存した後の半田付け性が向上する。
また電極ペースト中の鉛の含有量は、0.3wt%以上70w
t%以下が好ましく、含有率がその範囲より少ないと
(第5表中No70)半田付け性の改善効果が少ない。含有
率がその範囲より多いと(第5表中No75)電極金属の溶
融量が大きくなり端子電極部と素子本体の接着性が低下
し、半田付け時にその部分が剥離して不良数が増大す
る。しかし銅単独の従来例(第5表中No69)と比較する
と、何れの条件下でも半田付け不良は軽減されている。
またNo73の試料のように、端子電極の断面において他
の試料のように焼付け処理温度では共融反応、もしくは
一部金属粉の溶融による液相生成は状態図より出現しな
い電極ペーストを使用したものは、表面に偏析する錫金
属相の形成が確認されず、組成的にはNo73と同一である
が液相が形成され表面に錫金属相が偏析するNo72の試料
と比較して、端子電極が酸化しやすい条件下で保存した
時の半田付け性改善効果がやや小さい。
一方No72の試料のように、反応過程時に一次的にせよ
錫金属が溶融する電極ペースト組成物を使用したもの
は、表面錫金属相の形成が確認される。
焼成プロセスにおける焼付け処理時に金属成分の金属
粉、金属間化合物あるいは金属粉の共融現象もしくは一
部の溶融により、部分的に金属もしくは金属間化合物間
で液相が形成される温度以上で焼き付け処理(特許請求
の範囲第25項に記載)の、金属間での部分的液相形成が
表面相の形成に効果があることが明らかになる。
実施例5 素子としてチタン酸バリウム系誘電体とニッケル内部
電極を用いたセラミック積層コンデンサ素子について検
討した。
第3図〜第5図に示したように、素子は厚さ20μmの
誘電性のセラミック素体31,41,51層が、厚さ2.1μmの
ニッケル内部電極35,45,55層を介して積層され、上下に
無効層60μmが積層された構造で、外形3.2mm×1.6mm×
0.7mmの素子を用いた。
端子電極の出発原料としては粒径が6μm以下、1.5
μm以上の金属ニッケル、金属鉛、金属錫、金属亜鉛粉
末を所定比に混合し、平均粒径0.8μmの亜鉛ホウ珪酸
ガラスフリットを金属重量に対し4wt%混合した粉末を
用い、これに平均分子量1800のアクリル樹脂を粉末重量
に対し5wt%、αターピネオール、酢酸カルビトールア
セテート混合溶媒(6:4)を粉末重量に対し30wt%加
え、乳鉢で混合したのち3本のロールを用い混練し、さ
らに溶剤量を調整して20℃の粘度8000センチポイズの電
極ペーストを作成した。
電極ペーストは抵抗体の両端にディップ法により塗布
し、空気中80℃で乾燥後、窒素ガスを流すことで酸素濃
度が0.5ppm程度に調整した管状電気炉炉心管中で、280
℃まで5時間かけて昇温したのち650〜800℃まで30分か
けて昇温し、5分保持したのち室温まで30分およびかけ
て降温した。
作成した素子の端子電極部断面をX線マイクロアナラ
イザ、X線微小回折計を用いて電極金属の分布を評価し
た。
鉛、錫、亜鉛粉末を出発原料に用いたものの模式図を
それぞれ第3図〜第5図に示す。
電極部の最も素体に近い部分は部分的にセラミック素
体31、41、51に融着した無機フリットを含む下地層32、
42、52からなる。
次に第3図ではニッケル金属相、鉛金属相が30μm程
度の混合組織相を形成した中間相33が存在する。
鉛含有量が1.5wt%以下の試料では、ニッケルに鉛が
わずかに固溶した金属相単相として中間層33は確認され
る。
また第4図では、ニッケルを主成分とする金属相(10
wt%程度以下の範囲で錫固溶)、錫金属相およびそれら
の金属間化合物相が20μm程度の混合組成相を形成した
中間相43が存在する。
錫含有量が5wt%以下の試料では、ニッケルに錫が固
溶した金属相単相として中間相43は確認される。
さらに第5図では、ニッケルを主成分とする金属相
(30wt%以下の範囲で亜鉛固溶)、亜鉛金属相およびそ
れらの金属間化合物相が2〜30μm程度の混合組織相を
形成した中間相53が存在する。
亜鉛含有量が5wt%以下の試料では、ニッケルに亜鉛
の固溶した金属相単相として中間相53に確認される。
いずれにおいても中間相33,43,53は、厚み700μm程
度であった。
つぎに第3図では鉛金属相からなる表面層34、第4図
では錫金属相からなる表面層44、第5図では亜鉛金属相
単相もしくは亜鉛金属相と亜鉛、銅の金属間化合物から
なる表面相54がある。
いずれも表面層の厚さは0.5〜60μm程度であった。
鉛、錫、亜鉛を含まない試料および含有量が0.1wt%
程度の少ない試料では表面層が殆ど認められない。
素子は端子電極形成後下記の保持条件A,Bで保持し
た。
A:空気中で14時間保持 B:40℃湿度60%の雰囲気中60時間保持 その後素子は銅配線を施したガラスエポキシ基板に有
機接着剤で仮どめした後、230℃でリフロー半田付けを
実施し、50試料中の半田付け不良発生数を求めた。半田
付け不良はリフロー半田付け後目視法で半田付け部を観
察し、端子電極表面に明らかに半田の付着していない部
分が認められるものを不良とした。
第6表に端子電極の金属粉混合組成率、保持条件によ
る不良数を示す。
また従来法との比較のため、No76の試料の端子電極表
面に、アルカノールスルホン酸を主成分とする半田鍍金
液(pH:1.0)中でバレル鍍金法により半田鍍金層を形成
した。
作成した素子とNo77〜82の素子は、350℃の半田漕の
なかに余熱処理なしでディプしたのち素子を両端子電極
を含む中心線まで研磨し、端子電極の素子側面端部付近
の亀裂の有無を調べ、各50試料中の亀裂不良発生数を求
めた。第7表に亀裂不良発生数(50ケ当り)を示す。
第6表より明らかなように本発明の鉛、亜鉛あるいは
錫の内少なくとも1つを含有する銅あるいはニッケルを
有した中間層よりも鉛、錫あるいは亜鉛の含有量が多い
表面層で構成された端子電極(特許請求の範囲第10項に
記載)で、焼付け処理中に生成する液相成分の固化した
相が、鉛、亜鉛あるいは錫からなる群より選ばれた少な
くとも1成分を含む(特許請求の範囲第17項に記載)電
極ペーストを用い、焼付け処理時に金属成分の金属粉、
金属間化合物あるいは金属粉の共融現象もしくは一部の
溶融により、部分的に金属もしくは金属間化合物間で液
相が形成される温度以上で焼き付け処理する(特許請求
の範囲第25項に記載)製造プロセスをとると、ニッケル
電極単体(第6表中No76)に比べ、半田付け性とくに端
子電極が酸化しやすい条件下で保存した後の半田付け性
が向上する。
また電極ペースト中の鉛が1.5〜45wt%(特許請求の
範囲第22項に記載)、錫が1.5〜55wt%(特許請求の範
囲第23項に記載)、あるいは亜鉛が1.5〜65wt%(特許
請求の範囲第24項に記載)の範囲の含有量が好ましく、
含有率がその範囲より少ないと(第6表中No77,83,89)
半田付け性の改善効果が少なく、含有率がその範囲より
多いと(第6表中No82,88,94)電極金属の溶融量が大き
くなり、端子電極部と素子本体の接着性が低下し、半田
付け時にその部分が剥離して不良数が増大する。
さらに第6表中No95に示したように銅とニッケル系で
も、同様に半田付け不良は減少した。
また第7表より明らかなように特許請求の範囲第10項
に記載した構成とくに金属ニッケルと金属鉛、金属錫、
金属亜鉛およびそれらの金属間化合物が混合組織相を形
成した中間層の存在するNo96、97、103、109以外の試料
は、熱衝撃による亀裂不良が発生しにくいのに対し、No
96、97、103、109のように中間相がニッケル金属単相よ
りなるものは亀裂不良が発生し易い。
従って鉛、錫、亜鉛の含有量は、ここでも鉛の場合1.
5〜45wt%(特許請求の範囲第22項に記載)、錫の場合
1.5〜55wt%(特許請求の範囲第23項に記載)、亜鉛の
場合1.5〜65wt%(特許請求の範囲第24項に記載)の範
囲が好ましい。このことは、本発明の鉛、亜鉛あるいは
錫の内少なくとも1つを含有する銅あるいはニッケルを
有した中間層よりも鉛、錫あるいは亜鉛の含有量が多い
表面層で構成された端子電極(特許請求の範囲第10項に
記載)、鉛を少なくとも含有した中間層と鉛を主成分と
した表面層を有する端子電極(特許請求の範囲第14項に
記載)、錫を少なくとも含有した中間層と錫を主成分と
した表面層を有する端子電極(特許請求の範囲第15項に
記載)、亜鉛を少なくとも含有した中間層と亜鉛を主成
分とした表面層を有する端子電極(特許請求の範囲第16
項に記載)の構成において、従来例との相違点である金
属ニッケルと金属鉛、金属錫あるいは金属亜鉛による混
合組織相よりなる中間相が、素子に対する耐熱衝撃性の
向上に効果があることを示している。
同様なことが第7表No115における銅とニッケルでも
効果があった。
実施例6 鉛複合ペロブスカイト誘電体と銅内部電極を用いたセ
ラミック積層コンデンサ素子について検討した。
第6図及び第7図に示したように、素子は厚さ20μm
の誘電性のセラミック素体61,71層が、厚さ1.8μmの銅
内部電極65,75層を介して積層され、上下に無効層62μ
mが積層された構造で、外形3.2mm×1.6mm×0.7mmの素
子を用いた。
端子電極の出発原料としては粒径が8.5μm以下、1.0
μm以上の金属銅、金属鉛、金属亜鉛粉末もしくはCu1Z
n4の組成をもつ金属間化合物粉を所定比に混合し、平均
粒径0.8μmの亜鉛ホウ珪酸ガラスフリットを金属重量
に対し4wt%混合した粉末を用い、これに平均分子量180
0のアクリル樹脂を粉末重量に対し5wt%、αターピネオ
ール、カルビトールアセテート混合溶媒(6:4)を粉末
重量に対し30wt%加え、乳鉢で混合したのち3本ロール
を用い混練し、さらに溶剤を加え20℃の粘度8000センチ
ポイズの電極ペーストを作成した。
電極ペーストは抵抗体の両端にディップ法により塗布
し、空気中80℃で乾燥後、窒素ガスを流すことで酸素濃
度が2ppm程度に調整した管状電気炉炉心管中で、280℃
まで5時間かけて昇温したのち550〜600℃まで30分かけ
て昇温し、5分保持したのち室温まで30分およびかけて
降温した。
作成した素子の端子電極部断面をX線マイクロアナラ
イザおよびX線微小回折計を用いて電極金属の分布を評
価した。
出発原料に亜鉛、Cu1Zn4を用いたものと、鉛を用いた
ものの断面の模式図をそれぞれ第6図、第7図にしめ
す。
電極部の最も素体に近い部分は部分的にセラミック素
体61、71に融着した無機フリットを含む下地層62、72が
存在する。
次に第6図においては銅を主成分とする金属相、亜鉛
金属相、およびその金属間化合物相が2〜30μm程度の
混合組織相もしくは固溶相を形成した中間層63が存在す
る。
亜鉛金属の含有量が1.5wt%以下の試料は、銅が亜鉛
に固溶した金属層単相として中間相は存在する。
第7図においては銅金属相、鉛金属相が30μm程度の
混合組織相を形成した中間相73が存在する。
鉛含有量が0.1wt%以下の試料については、銅金属相
単相として中間相が確認される。
いずれの中間相も厚み500μm程度でたる。
さらに第6図では亜鉛金属相もしくは鉛、亜鉛の金属
間化合物相と亜鉛金属相の混合組織相からなる表面相64
が存在する。
第7図では鉛金属相からなる表面相74が存在する。
いずれの表面相64,74も厚み0.3μm〜80μm程度であ
る。
亜鉛、鉛の含有量が0.1wt%以下の試料では、表面相6
4,74は確認されない。
素子は端子電極形成後下記の保持条件A,Bで保持し
た。
A:空気中で14時間保持 B:40℃湿度60%の雰囲気中60時間保持 その後素子は銅配線を施したガラスエポキシ基板に有
機接着剤で仮どめした後、230℃でリフロー半田付けを
実施し、50試料中の半田付け不良発生数を求めた。半田
付け不良はリフロー半田付け後目視法で半田付け部を観
察し、端子電極表面に明らかに半田の付着していない部
分が認められるものを不良とした。
第8表に端子電極の金属粉混合組成率と出発組成と保
持条件による不良数を示す。
また従来法との比較のためNo116の試料を、端子電極
表面にアルカノールスルホン酸を主成分とする半田鍍金
液(pH:2.5)中でバレル鍍金法により半田鍍金層を形成
した。
作成した素子とNo116〜128の素子は、350℃の半田漕
のなかに余熱処理なしでディップしたのち、素子を両端
子電極を含む中心線まで研磨し、端子電極の素子側面端
部付近の亀裂の有無を調べ、各50試料中の亀裂不良発生
数を求めた。
第9表に亀裂不良発生数(50ケ当り)を示す。
第8表より明らかなように本発明の鉛、亜鉛あるいは
錫の内少なくとも1つを含有する銅あるいはニッケルを
有した中間層よりも鉛、錫あるいは亜鉛の含有量が多い
表面層で構成された端子電極(特許請求の範囲第10に記
載)の構成をとり、焼付け処理中に生成する液相成分の
固化した相が、鉛、亜鉛あるいは錫からなる群より選ば
れた少なくとも1成分を含む(特許請求の範囲第17項に
記載)電極ペーストを用い、焼付け処理時に金属成分の
金属粉、金属間化合物あるいは金属粉の共融現象もしく
は一部の溶融により、部分的に金属もしくは金属間化合
物間で液相が形成される温度以上で焼き付け処理する
(特許請求の範囲第25項に記載)製造プロセスをとるも
のは、銅電極単体(第8表中No116)のものに比べ、半
田付け性とくに端子電極が酸化しやすい条件下で保存し
た後の半田付け性が向上する。
また電極ペースト中の亜鉛の含有量は特許請求の範囲
第21項に記載したように1.5wt%以上80wt%以下が好ま
しく、鉛の含有量は特許請求の範囲第19項に記載0.3wt
%以上70wt%以下が好ましい。
含有率がその範囲より少ないと(第8表中No117及び1
23)半田付け性の改善効果が少なく、含有率がその範囲
より多いと(第8表中No122及び128)電極金属の溶融量
が大きくなり、端子電極部と素子本体の接着性が低下
し、半田付け時にその部分が剥離して不良数が増大す
る。
また第9表より明らかなように、特許請求の範囲第10
に記載した構成とくに銅金属相、亜鉛金属相、およびそ
の金属間化合物相が混合組織相を形成しているか、銅金
属相、鉛金属相が混合相組織相を形成している厚み700
μm程度の中間層63もしくは73の存在するNo131〜135お
よびNo137〜141の試料は、熱衝撃による亀裂不良が発生
しにくいのに対し、No129、130、136の試料のように、
中間相が銅金属単相よりなるものは亀裂不良が発生しや
すい。
含有量はここでも特許請求の範囲第19項もしくは第21
項に記載したように、亜鉛の場合1.5wt%以上80wt%以
下が好ましく、鉛の場合0.3wt%以上70wt%以下が好ま
しい。
このことは、特許請求の範囲第10に記載した端子電極
部の構成において、従来例との相違点である金属銅と金
属亜鉛およびその金属間化合物による混合組織相または
金属銅と金属鉛による混合組織相よりなる中間相が素子
に対する耐熱衝撃性の向上に効果があることを示してい
る。
実施例7 実施例6同様の銅内部電極を用いたセラミック積層コ
ンデンサ素子について検討した。
端子電極の出発原料としては粒径が3μm以下、1.0
μm以上の金属銅と、粒径が5μm程度の80wt%Pb−20
wt%Znの合金粉末、80wt%Pb−20wt%Snの合金粉末、お
よび75wt%Pb−20wt%Sn−5wt%Biの合金粉末を所定比
に混合し、以下実施例4同様の素子を作成した。
作成した素子の端子電極断面をX線マイクロアナライ
ザおよびX線微小回折計を用いて電極金属の分布を評価
した。
断面の模式図はほぼ実施例4の第6図及び第7図と同
様であるが、中間相は銅を主成分とする金属相、鉛、
錫、亜鉛と銅の金属間化合物相が2〜60μm程度組織の
混合組織相を形成しており、全体で厚み500μm程度で
ある。
さらに表面層には鉛−錫、鉛−亜鉛もしくは鉛−錫−
ビスマスを主成分とする金属相である。
いずれの表面層も0.3μm〜80μm程度の厚さであ
る。
素子は端子電極形成後実施例4と同様の条件で保持
し、実施例4同様の半田付け性試験と熱衝撃試験を実施
した。
第10表に端子電極の金属粉混合組成率と保持条件によ
る不良数を、第11表に亀裂不良発生数(いずれも試料50
個あたり)を示す。
第10表より明らかなように、特許請求の範囲第10項に
記載した構成をとり、特許請求の範囲第17項に記載した
電極ペーストを用い、特許請求の範囲第25項に記載した
製造プロセスをとるものは、銅電極単体のものに比べ、
半田付け性とくに端子電極が酸化し易い条件下で保存し
た後の半田付け性が向上する。
また第11表より明らかなように、特許請求の範囲第10
項に記載した構成とくに銅を主成分とする金属相、鉛、
錫、亜鉛を主成分とする金属相およびそれらの金属間化
合物相が混合組織相を形成した中間相層の存在するNo14
7〜149の試料は、熱衝撃による亀裂不良が発生しにくい
のに対し、No146の試料のように中間相が銅金属単相よ
りなるものは亀裂不良が発生しやすい。
このことは、特許請求の範囲第10項に記載した端子電
極部の構成において、従来例との相違点である混合組織
相よりなる中間相が素子に対する耐熱衝撃性の向上に効
果があることを示している。
またNo145もしくはNo149のように、さらに電極金属と
して鉛、錫、亜鉛以外の新たな成分を含むものでも、主
成分として銅、ニッケル、鉛、錫、亜鉛を含む構成のも
のは、同様の効果が期待できることを意味している。
発明の効果 本発明は、金属相と無機ガラス相とを含む端子電極を
有し、金属相が鉛、錫あるいは亜鉛からなる群の少なく
とも1成分を含有する銅もしくはニッケル合金よりなる
電子部品であるため、低コストであり、かつ半田付け性
が良好で、素子表面の酸化による半田付け性の低下の少
なく、半田付け時に素子に対する熱衝撃性の緩和効果に
優れた端子電極部の構成と、その安価で簡便な製造プロ
セス、電極ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は各々本発明の一実施形態の固定抵抗
器素子の端子電極部の断面模式図、第3図〜第7図は各
々本発明の一実施形態であるセラミック積層コンデンサ
素子の端子電極部の断面模式図である。 11,21,31,41,51,61,71……セラミック素体、12,22,32,4
2,52,62,72……無機フリットを含む下地層、13,73……
銅と鉛が混合組織相を形成した中間相、23……銅と錫の
混合組織相もしくは固溶相を形成した中間層、33……ニ
ッケルと鉛混合組織相もしくは固溶相を形成した中間
層、43……ニッケルと錫金属間化合物の混合組織相ある
いは固溶相を形成した中間層、53……ニッケルと亜鉛金
属間化合物の混合組織相あるいは固溶相を形成した中間
層、63……銅と亜鉛金属間化合物の混合組織相あるいは
固溶相を形成した中間層、14,34,74……鉛金属相を含む
表面層、24,44……錫金属相からなる表面層、54……亜
鉛金属単相またはニッケルとの金属間化合物相を含む表
面層、64……亜鉛金属相単相または銅との金属間化合物
相を含む表面層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01G 4/12 364 H01G 4/12 364 4/232 1/147 A

Claims (26)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属相と無機ガラス相とを含む端子電極部
    を有し、前記金属相が、鉛、錫、亜鉛からなる群の少な
    くとも1成分を含有する銅合金よりなることを特徴とす
    る電子部品。
  2. 【請求項2】端子電極部に含まれる金属相が、銅と鉛と
    を含む合金で、鉛を0.3wt%以上70wt%以下を含むこと
    を特徴とする、請求項1記載の電子部品。
  3. 【請求項3】端子電極部に含まれる金属相が、銅と錫と
    を含む合金で、錫を0.8wt%以上65wt%以下含むことを
    特徴とする、請求項1記載の電子部品。
  4. 【請求項4】端子電極部に含まれる金属相が、銅と亜鉛
    とを含む合金で、亜鉛を0.5wt%以上80wt%以下含むこ
    とを特徴とする、請求項1記載の電子部品。
  5. 【請求項5】金属相と無機ガラス相とを含む端子電極部
    を有し、前記金属相が鉛、錫、亜鉛からなる群の少なく
    とも1成分を含有するニッケル合金よりなることを特徴
    とする電子部品。
  6. 【請求項6】端子電極部に含まれる金属相が、ニッケル
    と鉛とを含む合金で、鉛を1.5wt%以上45wt%以下含む
    ことを特徴とする、請求項5記載の電子部品。
  7. 【請求項7】端子電極部に含まれる金属相が、ニッケル
    と錫とを含む合金で、錫を1.5wt%以上55wt%以下含む
    ことを特徴とする、請求項5記載の電子部品。
  8. 【請求項8】端子電極部に含まれる金属相が、ニッケル
    と亜鉛とを含む合金で、亜鉛を1.5wt%以上65wt%以下
    含むことを特徴とする、請求項5記載の電子部品。
  9. 【請求項9】誘電体セラミック層、卑金属を用いた内部
    電極層と、前記内部電極層に接続し金属相を含有する外
    部電極とを有し、前記内部電極層の内部電極が相当する
    方向に交互に引き出されるように積層した積層コンデン
    サであって、前記外部電極に含まれる前記金属相が鉛、
    錫、亜鉛からなる群の少なくとも1成分を含有する銅合
    金または鉛、錫、亜鉛からなる群の少なくとも1成分を
    含有するニッケル合金であることを特徴とする電子部
    品。
  10. 【請求項10】セラミック素体に直接付着した端子電極
    を有し、前記端子電極の断面が、銅あるいはニッケルを
    主成分とする金属相、鉛、亜鉛あるいは錫を主成分とす
    る金属相もしくは銅、ニッケル、鉛、亜鉛あるいは錫の
    金属間化合物相からなる群より選ばれた少なくとも2種
    を含む混合組織相又は固溶体合金相の内の何れかの中間
    層を有し、さらに平均組成として前記中間層より鉛、錫
    あるいは亜鉛の内の何れかの含有量の多い表面層を有す
    ることを特徴とする電子部品。
  11. 【請求項11】端子電極部の断面が、少なくとも銅を主
    成分とする金属相と鉛を主成分とする金属相との混合組
    織相を含む中間層と、部分的若しくは全面が金属鉛層か
    らなる表面層とを有することを特徴とする、請求項10記
    載の電子部品。
  12. 【請求項12】端子電極部の断面が、銅を主成分とする
    金属相、錫を主成分とする金属相もしくは銅、あるいは
    錫の金属間化合物からなる群より選ばれた少なくとも2
    種の混合組織相又は銅に少なくとも錫が固溶した固溶体
    金属相を含む中間層と、部分的若しくは全面が錫を主成
    分とする金属相又は銅と錫の金属間化合物と錫の混合組
    織相の何れかの表面層とを有することを特徴とする、請
    求項10記載の電子部品。
  13. 【請求項13】端子電極部の断面が、銅を主成分とする
    金属相、亜鉛を主成分とする金属相もしくは銅あるいは
    亜鉛の金属間化合物相からなる群より選ばれた少なくと
    も2種の混合組織相又は銅に少なくとも亜鉛が固溶した
    固溶体金属相を含む中間層と、部分的若しくは全面が亜
    鉛を主成分とする金属相又は銅と亜鉛の金属間化合物と
    亜鉛の混合組織相の何れかの表面層とを有することを特
    徴とする、請求項10記載の電子部品。
  14. 【請求項14】端子電極部の断面が、少なくともニッケ
    ルを主成分とする金属相と鉛を主成分とする金属相との
    混合組織相もしくはニッケルに鉛が固溶した固溶体金属
    相の何れかを含む中間層と、部分的若しくは全面が鉛を
    主成分とする金属層からなる表面層を有することを特徴
    とする、請求項10記載の電子部品。
  15. 【請求項15】端子電極部の断面が、ニッケルを主成分
    とする金属相、錫を主成分とする金属相あるいはニッケ
    ルあるいは錫の金属間化合物相からなる群より選ばれた
    少なくとも2種の混合組織相又はニッケルに錫が固溶し
    た固溶体金属相の何れかを含む中間層と、部分的若しく
    は全面が錫を主成分とする金属相もしくはニッケルと錫
    の金属間化合物相と金属錫との混合組織相の何れかの表
    面層を有することを特徴とする、請求項10記載の電子部
    品。
  16. 【請求項16】端子電極部の断面が、ニッケルを主成分
    とする金属相、亜鉛を主成分とする金属相あるいはニッ
    ケルあるいは亜鉛の金属間化合物からなる群より選ばれ
    た少なくとも2種の混合組織相又はニッケルに少なくと
    も亜鉛が固溶した固溶体金属相の何れかを含む中間層
    と、部分的若しくは全面が亜鉛を主成分とする金属相も
    しくは金属ニッケルと金属亜鉛の金属間化合物と金属亜
    鉛との混合組織相の何れかの表面層とを有することを特
    徴とする、請求項10記載の電子部品。
  17. 【請求項17】セラミック素体に直接焼き付けて形成さ
    れる端子電極用ペーストにおいて、前記ペースト中の金
    属成分が、焼付け処理中に単独では液相を生成しない金
    属成分と、単独で溶融あるいは分解溶融して液相を生成
    する金属成分もしくは前記単独では液相を生成しない金
    属成分の何れかと共融反応により液相を生成する金属成
    分との2種の金属成分を含み、かつ生成する液相成分の
    固化した相が、鉛、亜鉛あるいは錫からなる群より選ば
    れた少なくとも1成分を含むことを特徴とする電極ペー
    スト。
  18. 【請求項18】セラミック素体に直接焼き付けて形成さ
    れる端子電極用ペースト中に含まれる金属粉が、銅ある
    いはニッケルを主成分とする金属粉、鉛、亜鉛あるいは
    錫を主成分とする金属粉もしくは銅、ニッケル、鉛、亜
    鉛あるいは錫の金属間化合物からなる金属粉より選ばれ
    た少なくとも2種の金属粉あるいは合金粉を含むことを
    特徴とする、請求項17記載の電極ペースト。
  19. 【請求項19】電極ペーストが、金属銅粉末、金属鉛粉
    末、無機フリット粉末、有機バインダ及び有機溶剤を含
    み、金属成分における鉛の重量比率が0.3wt%以上70wt
    %以下であることを特徴とする、請求項17記載の電極ペ
    ースト。
  20. 【請求項20】電極ペーストが、金属銅粉末、金属錫粉
    末、無機フリット粉末、有機バインダ及び有機溶剤を含
    み、金属成分における錫の重量比率が0.8wt%以上65wt
    %以下であることを特徴とする、請求項17記載の電極ペ
    ースト。
  21. 【請求項21】電極ペーストが、金属銅粉末、金属亜鉛
    粉末、無機フリット粉末、有機バインダ及び有機溶剤よ
    り構成され、金属成分における亜鉛の重量比率が0.5wt
    %以上80wt%以下であることを特徴とする、請求項17記
    載の電極ペースト。
  22. 【請求項22】電極ペーストが、金属ニッケル粉末、金
    属鉛粉末、無機フリット粉末、有機バインダ及び有機溶
    剤を含み、金属成分における鉛の重量比率が1.5wt%以
    上45wt%以下であることを特徴とする、請求項17記載の
    電極ペースト。
  23. 【請求項23】電極ペーストが、金属ニッケル粉末、金
    属錫粉末、無機フリット粉末、有機バインダ及び有機溶
    剤を含み、金属成分における錫の重量比率が1.5wt%以
    上55wt%以下であることを特徴とする、請求項17記載の
    電極ペースト。
  24. 【請求項24】電極ペーストが、金属ニッケル粉末、金
    属亜鉛粉末、無機フリット粉末、有機バインダ及び有機
    溶剤を含み、金属成分における亜鉛の重量比率が1.5wt
    %以上65wt%以下であることを特徴とする、請求項17記
    載の電極ペースト。
  25. 【請求項25】電極ペーストをセラミック素体に直接焼
    き付けて形成する端子電極の形成方法において、前記電
    極ペースト中に、焼付け処理中に単独では液相を生成し
    ない金属成分と、単独で溶融あるいは分解溶融して液相
    を生成する金属成分もしくは前記単独では液相を生成し
    ない金属成分の何れかと共融反応により液相を生成する
    金属成分との2種の金属成分を含み、焼付け処理時に前
    記金属成分の金属粉、金属間化合物粉あるいは合金粉の
    共融現象若しくは一部の溶融により、部分的に金属もし
    くは金属間化合物間で液相が形成される温度以上で処理
    することを特徴とする、電子部品端子電極の形成方法。
  26. 【請求項26】セラミック素体に直接焼き付けて形成す
    る端子電極の形成方法において、電極金属の出発原料と
    して、銅あるいはニッケルを主成分とする金属粉、鉛、
    亜鉛あるいは錫を主成分とする金属粉もしくは銅、ニッ
    ケル、鉛、亜鉛あるいは錫の金属間化合物粉もしくは合
    金粉からなる粉体を用い、焼付け処理時に前記金属粉、
    前記金属間化合物粉もしくは前記合金粉の共融現象又は
    一部の溶融により部分的に金属もしくは金属間化合物間
    で液相が形成される温度以上で処理することを特徴とす
    る、請求項25記載の端子電極の形成方法。
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